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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】電子内視鏡装置及び電子内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20220216BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20220216BHJP
   A61B 1/05 20060101ALI20220216BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61B1/00 680
A61B1/06 531
A61B1/05
G02B23/24 B
A61B1/00 630
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017166128
(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2019041881
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 將
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-026134(JP,A)
【文献】特開平05-168588(JP,A)
【文献】特開昭59-069035(JP,A)
【文献】特開2015-021923(JP,A)
【文献】米国特許第05986860(US,A)
【文献】国際公開第2017/130452(WO,A1)
【文献】特開2011-030827(JP,A)
【文献】特開平06-176879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の腔所に挿入される挿入管の先端部から光を照射し、照明された体内を撮像する電子内視鏡装置であって、
体内を照明する光を照射するための発光素子と、
照明された体内を撮像するための撮像素子と
を備え、
前記発光素子及び前記撮像素子の少なくとも一つは前記先端部に設けられており、
前記先端部に設けられた前記発光素子又は前記先端部に設けられた前記撮像素子に給電する複数系統の給電線と、
前記給電線が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアを有し、各系統の前記給電線に流れる電流の差分を検出する電流検出部と、
該電流検出部にて検出された差分に基づいて、前記給電線の異常の有無を判定する判定部と、
該判定部にて異常有りと判定された場合、前記給電線の異常を通知する通知処理部と
を備える電子内視鏡装置。
【請求項2】
各系統の前記給電線の電気抵抗値は略等しく、
前記判定部は、
前記電流検出部にて検出された差分の大きさが閾値以上である場合、前記給電線に異常があると判定する
請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記電流検出部にて検出された差分の大きさ及び前記閾値の比較結果と、前記電流検出部にて検出された差分の正負とに基づいて、異常が有る前記給電線を特定する
請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記複数系統の給電線は、少なくとも正極側の2本の導線と、負極側の2本の導線とを備え、
前記電流検出部は、
正極側の2本の導線に流れる電流の差分と、負極側の2本の導線に流れる電流の差分とを検出する
請求項1~請求項3までのいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記複数系統の給電線は、少なくとも正極側の2本の導線と、負極側の2本の導線とを備え、
前記電流検出部は、
正極側の導線に流れる電流と、負極側の導線に流れる電流との差分とを検出する
請求項1~請求項3までのいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記複数系統の給電線に流れる総電流を検出する総電流検出部と、
該総電流検出部にて検出された総電流及び所定値を比較する比較部と
を備え、
前記判定部は、前記電流検出部にて検出された差分及び前記比較部の比較結果に基づいて、前記給電線の異常の有無を判定する
請求項1~請求項5までのいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項7】
各給電線にパルス電圧が印加され、前記電流検出部は、該パルス電圧が印加された各系統の前記給電線に流れる電流の差分を検出する
請求項1~請求項6までのいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
体内の腔所に挿入される挿入管の先端部から光を照射し、照明された体内を撮像する電子内視鏡であって、
体内を照明する光を照射するための発光素子と、
照明された体内を撮像するための撮像素子と
を備え、
前記発光素子及び前記撮像素子の少なくとも一つは前記先端部に設けられており、
前記先端部に設けられた前記発光素子又は前記先端部に設けられた前記撮像素子に給電する複数系統の給電線と、
前記給電線が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアを有し、各系統の前記給電線に流れる電流の差分を検出し、検出された差分を示す信号を出力する電流検出部と
を備える電子内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管腔、体腔、鼻口腔等の体内を照明して撮像する電子内視鏡装置及び電子内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の消化管腔、体腔、鼻口腔等を観察する医療用機器として、電子内視鏡装置が実用化されている。電子内視鏡装置は、体内の被写体を照明して撮像する電子内視鏡と、電子内視鏡による照明及び撮像等を制御し、撮像画像を外部モニタへ出力する内視鏡制御装置とを備える。電子内視鏡は、腔所に挿入される挿入管の先端部に撮像素子を備える。また、挿入管の先端部に、LED(Light Emitting Diode )光源を備えた電子内視鏡も実用化されている。電子内視鏡は、内視鏡制御装置に接続されるコネクタ部から挿入管の先端部に至る給電線及び信号伝送線を有する。内視鏡制御装置は給電線にて撮像素子及びLED光源へ給電し、信号伝送線を通じて撮像信号、制御信号等の各種信号を送受信する。
【0003】
ところで、電子内視鏡の挿入管、給電線及び信号伝送線は、患者の負担を軽減するために、その外径寸法を可能な限り小さく設計される。一方、電子内視鏡の用途上、挿入管は繰り返し曲げ伸ばしされるため、給電線に物理的負荷がかかり、断線するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、信号伝送線を2系統有し、いずれかの信号伝送線に異常が発生したことを検知する異常検知手段を備えた電子内視鏡が開示されている。特許文献2には、給電線の断線及び短絡を検知することができる電子内視鏡が開示されている。特許文献3には、グランド線の断線を検知することができる電子内視鏡が開示されている。特許文献4には、手元操作部から挿入管の先端部に至る芯線の断線を簡単に検出することができる電子内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-26134号公報
【文献】特開2008-073346号公報
【文献】特開2001-269309号公報
【文献】特開2012-029719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電子内視鏡においては、給電線と、断線を検出する回路とが電気的に接続されているため、メンテナンス性が悪いという問題があった。例えば、複数の給電線のうち、LED光源の給電線の一部のみが劣化した場合であっても、断線を検出する回路を含め、全ての電気系統を交換ないし修理する必要があった。
【0007】
本願の目的は、複数系統の各給電線に対して、各給電線の異常を検出する電流検出部が着脱可能であり、給電線異常時のメンテナンス性に優れた電子内視鏡装置及び電子内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様に係る電子内視鏡装置は、体内の腔所に挿入される挿入管の先端部から光を照射し、照明された体内を撮像する電子内視鏡装置であって、前記挿入管の先端部に設けられており、体内を照明し又は撮像するための素子と、該素子に給電する複数系統の給電線と、前記給電線が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアを有し、各系統の前記給電線に流れる電流の差分を検出する電流検出部と、該電流検出部にて検出された差分に基づいて、前記給電線の異常の有無を判定する判定部と、該判定部にて異常有りと判定された場合、前記給電線の異常を通知する通知処理部とを備える。
【0009】
本態様に係る電子内視鏡は、体内の腔所に挿入される挿入管の先端部から光を照射し、照明された体内を撮像する電子内視鏡であって、前記挿入管の先端部に設けられており、体内を照明し又は撮像するための素子と、該素子に給電する複数系統の給電線と、前記給電線が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアを有し、各系統の前記給電線に流れる電流の差分を検出し、検出された差分を示す信号を出力する電流検出部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本態様によれば、複数系統の各給電線に対して、各給電線の異常を検出する電流検出部が着脱可能であり、給電線異常時のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る電子内視鏡装置の構成例を示すブロック図である。
図2】電子内視鏡の構成例を示す模式図である。
図3】実施形態1に係る電流検出部の構成例を示す模式図である。
図4】正側電流検出部の構成例を示す斜視図である。
図5】電流検出部の動作を示す模式図である。
図6】正側電流検出部の動作を示す斜視図である。
図7】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図8】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図9】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図10】異常判定の処理手順を示すフローチャートである。
図11】実施形態2に係る給電線並びに第1正側電流検出部及び第2正側電流検出部の構成例を示す模式図である。
図12】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図13】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図14】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図15】給電線の異常判定方法を示す図表である。
図16】実施形態3に係る電流検出部の構成例を示す模式図である。
図17】実施形態4に係る電子内視鏡装置の構成例を示す模式図である。
図18】異常判定の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る電子内視鏡装置1の構成例を示すブロック図である。電子内視鏡装置1は、消化管腔、体腔、鼻口腔等の体内の被写体を照明して撮像する電子内視鏡10及び内視鏡制御装置20を備える。
【0013】
<電子内視鏡の構成>
図2は電子内視鏡10の構成例を示す模式図である。図2中、左図は電子内視鏡10の外観を示し、右図は電子内視鏡10の内部構成部品を示している。右図中、破線で囲まれた部品は、矢印で結ばれる左図中の破線で囲まれた箇所に設けられていることを示している。電子内視鏡10は、患者の消化管腔、体腔、鼻口腔等の腔所に挿入される可撓性の挿入管10aを備える。挿入管10aの一端部には硬質樹脂製の先端部10bが設けられ、挿入管10aの他端部には手元操作部10cが設けられている。挿入管10aと先端部10bとの連結箇所は手元操作部10cの操作によって湾曲自在に構成されている。手元操作部10cにはユニバーサルチューブ10dの一端部が接続され、ユニバーサルチューブ10dの他端部には、電子内視鏡10と、内視鏡装置とを接続するためのコネクタ部10eが設けられている。
【0014】
図1に示すように、電子内視鏡10の先端部10bには、対物レンズ11及び照明レンズ12が設けられている。先端部10bの内部、対物レンズ11の後側には撮像素子13及びアナログフロントエンド13aが収納され、照明レンズ12の後側には発光素子14が収納されている。
【0015】
発光素子14は、例えばLEDであり、少なくとも可視光領域を含む照射光を放射する。照明レンズ12は、発光素子14から放射された照明光を集光し、体内の被写体へ出射する。
【0016】
対物レンズ11は、照明された被写体から反射される反射光を集光し、撮像素子13に結像させる。撮像素子13は、受光面に結ぶ光学像を電気信号に変換して出力するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等である。アナログフロントエンド13aは、撮像素子13から出力された電気信号を増幅し、A/D変換し、撮像素子13の各画素の輝度を示す画像信号を出力する。
【0017】
電子内視鏡10のコネクタ部10eには、内視鏡制御装置20の制御命令に従って撮像素子13を駆動し、発光素子14を発光させる内視鏡駆動部15が設けられている。内視鏡駆動部15は、コネクタ部10eを介して後述する内視鏡制御装置20の駆動制御部22に接続される。
内視鏡駆動部15は、ユニバーサルチューブ10d及び挿入管10aの内部を挿通する制御線及び信号線によって、撮像素子13及びアナログフロントエンド13aに接続されている。内視鏡駆動部15は、クロックパルスに同期したタイミングで撮像素子13を駆動し、画像信号を内視鏡制御装置20へ出力する。
【0018】
また、電子内視鏡10のユニバーサルチューブ10d及び挿入管10aの内部には、内視鏡駆動部15と、発光素子14とを接続する複数系統の給電線16が配線されている。内視鏡駆動部15は、各給電線16を通じて発光素子14に電力を供給し、発光素子14を発光させる。
【0019】
電子内視鏡10は、各系統の給電線16に流れる電流の差分を検出する電流検出部17と、当該電流検出部17にて検出された電流の差分に基づいて、給電線16の劣化及び断線を検出する断線検出回路18とを備える。給電線16の異常検出処理を実行する際、内視鏡駆動部15は、パルス電圧を各給電線16に印加する。給電線16の異常検出処理は、例えば電子内視鏡装置1の電源が投入されたとき、手元操作部10c又は内視鏡制御装置20の図示しない操作パネルにて所定の操作が行われたときに実行されるが、特に限定されるものでは無い。
断線検出回路18は、パルス電圧が各給電線16に印加された際に電流検出部17にて検出された差分の大きさが閾値未満であるか否かを判定することによって、給電線16の異常の有無を判定する判定部18aを有する。判定部18aは、例えば比較器によって構成される。閾値は、給電線16の劣化によって、導線La1及び導線La2の電気抵抗値、又は導線Lb1及び導線Lb2(図3参照)の電気抵抗値に差異が生じているか否かを判定するための値である。更に、判定部18aは、上記判定結果と、差分の正負とに基づいて、給電線16の異常箇所を特定する。断線検出回路18は、給電線16の異常の有無、異常箇所等を示す情報を内視鏡制御装置20へ出力する。
【0020】
<内視鏡制御装置の構成>
内視鏡制御装置20は、電子内視鏡10の各構成部の動作を制御するシステムコントローラ21を備える。システムコントローラ21には、駆動制御部22及び信号処理回路23が接続されている。また、内視鏡制御装置20は、自装置の各構成部及び電子内視鏡10に電力を供給する電源回路24を備える。
【0021】
システムコントローラ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有するマイコン、DSP(Digital Signal Processor)等である。システムコントローラ21は、駆動制御部22及び信号処理回路23へ制御命令を出力することによって、各部の動作を制御する。特に、本実施形態1に係るシステムコントローラ21は、給電線16の異常の有無、給電線16の異常箇所を通知する処理を実行する通知処理部21aを備える。
【0022】
駆動制御部22は、システムコントローラ21の制御に従って動作し、発光素子14の発光、撮像素子13による撮像を制御する。また、駆動制御部22は、断線検出回路18から送信された給電線16の異常の有無、給電線16の異常箇所を示す情報を受信し、システムコントローラ21に出力する。システムコントローラ21は、給電線16の異常の有無等を示す情報を取得し、通知処理部21aは、給電線16の異常の有無及び異常箇所を通知する処理を実行する。例えば、通知処理部21aは、信号処理回路23の動作を制御し、給電線16の異常の有無及び異常箇所を示す画像又は文字を、外部モニタMに出力する画像に重畳させる等の処理を実行する。
また、駆動制御部22は、図示しないタイミングコントローラを備え、タイミングコントローラは画像信号等、各種信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡10の内視鏡駆動部15へ出力する。
【0023】
信号処理回路23は、例えばDSPであり、電子内視鏡10から出力された画像信号が、駆動制御部22を通じて入力される。信号処理回路23は、入力した画像信号に対してガンマ補正、補間処理等の各種画像処理、各種文字及び画像の重畳処理等を実行し、所定の規格に準拠した映像信号に変換して外部モニタMへ出力する。特に、給電線16の異常が検出された場合、信号処理回路23は、システムコントローラ21の制御に従って、給電線16の異常及び異常箇所を示す画像又は文字の重畳処理を実行し、重畳処理後の映像信号が外部モニタMへ出力される。外部モニタMには、給電線16に異常があること、給電線16の異常箇所等の情報が表示される。外部モニタMは、内視鏡制御装置20から出力された映像信号に基づいて、電子内視鏡10で撮像された画像を表示する液晶モニタ、有機ELディスプレイモニタ、プラズマディスプレイモニタ、CRTモニタ等である。
【0024】
図3は実施形態1に係る電流検出部17の構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る給電線16は2系統であり、給電線16は、正極側の導線La1及び導線La2と、負極側の導線Lb1及び導線Lb2とを備える。導線La1及び導線La2の一端部は内視鏡駆動部15の正極端子に接続され、他端部は発光素子14のアノードに接続されている。導線La1及び導線La2の電気抵抗値は等しい。また導線Lb1及び導線Lb2の一端部は内視鏡駆動部15の負極端子に接続され、他端部は発光素子14のカソードに接続されている。導線Lb1及び導線Lb2の電気抵抗値は等しい。
【0025】
電流検出部17は、正極側の導線La1及び導線La2に流れる電流の差分を検出する正側電流検出部17aと、負極側の導線Lb1及び導線Lb2に流れる電流の差分を検出する負側電流検出部17bとを備える。
【0026】
図4は正側電流検出部17aの構成例を示す斜視図である。正側電流検出部17aは、導線La1が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアA11と、導線La2が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアA12とを有する。磁性体コアA11及び磁性体コアA12には、それぞれ2次コイルW1、W2が巻回されており、2次コイルW1の一端部と、2次コイルW2の一端部とが接続線W3にて接続されている。各2次コイルW1、W2の他端部は、断線検出回路18に接続されている。つまり、2次コイルW1、W2は直列接続されている。2次コイルW1、W2の巻回方向は逆向きであり、導線La1及び導線La2に同方向の電流が流れた場合、2次コイルW1、W2には電流の大きさに応じた逆向きの誘導電圧が発生するように構成されている。2次コイルW1、W2の巻き数は同数であり、導線La1及び導線La2に同じ大きさの電流が流れた場合、誘導電圧が略ゼロになる。このように構成された正側電流検出部17aは、導線La1及び導線La2に流れる電流の差分に応じた検出電流を断線検出回路18へ出力する。
【0027】
同様に、負側電流検出部17bは、導線Lb1が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアB11と、導線Lb2が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアB12とを有する。磁性体コアB11及び磁性体コアB12には、それぞれ2次コイルが巻回されており、2次コイルの一端部同士が接続され、他端部は、断線検出回路18に接続されている。導線Lb1及び導線Lb2に同方向の電流が流れた場合、各磁性体コアB11、B12の2次コイルには電流の大きさに応じた逆向きの誘導電圧が発生し、導線Lb1及び導線Lb2に流れる電流の差分に応じた検出電流が負側電流検出部17bから断線検出回路18へ出力される。
【0028】
図5は電流検出部17の動作を示す模式図、図6は正側電流検出部17aの動作を示す斜視図である。図5及び図6に示すように、導線La1及び導線La2に1次電流IA1、IA2が流れると、正側電流検出部17aの各2次コイルW1、W2に誘導電圧が発生する。各2次コイルW1、W2に発生した誘導電圧によって、各2次コイルW1、W2には2次電流Ia1及び電流Ia2が流れようとする。ところが、各2次コイルW1、W2は誘導電圧が打ち消し合うように、逆向きに巻回されているため、結果として1次電流IA1と、1次電流IA2との差分に相当する検出電流ΔIaが流れることになる。断線検出回路18は検出電流ΔIa、又は正側電流検出部17aに発生した誘導電圧を検出する。本実施形態1では、検出電流ΔIaは、2次電流Ia1及び電流Ia2を加算して得られる電流値(ΔIa=Ia1+Ia2)である。1次電流IA1が1次電流IA2より小さい場合、検出電流ΔIaを正、1次電流IA1が1次電流IA2より大きい場合、検出電流ΔIaを負とする(図8参照)。
【0029】
同様に、導線Lb1及び導線Lb2に1次電流IB1及び1次電流IB2が流れると、負側電流検出部17bの各2次コイルに誘導電圧が発生する。各2次コイルに発生した誘導電圧によって、各2次コイルには2次電流Ib1及び電流Ib2が流れようとする。ところが、各2次コイルは誘導電圧が打ち消し合うように、逆向きに巻回されているため、結果として1次電流IB1と、1次電流IB2との差分に相当する検出電流ΔIbが流れることになる。断線検出回路18は検出電流ΔIb、又は負側電流検出部17bに発生した誘導電圧を検出する。本実施形態1では、検出電流ΔIbは、2次電流Ib1及び2次電流Ib2を加算して得られる電流値(ΔIb=Ib1+Ib2)である。1次電流IB1が1次電流IB2より小さい場合、検出電流ΔIbを負、1次電流IB1が1次電流IB2より大きい場合、検出電流ΔIbを負とする(図9参照)。
【0030】
<異常判定方法>
次に、電流検出部17を用いた給電線16の異常の有無の判定方法、異常箇所の判定方法を説明する。図7乃至図9は給電線16の異常判定方法を示す図表である。図表中、RLa1、RLa2、RLb1、RLb2は、それぞれ導線La1、La2、Lb1、Lb2の電気抵抗値を表している。
【0031】
図7に示すように、導線La1及び導線La2の電気抵抗値が略等しい場合、つまり導線La1及び導線La2が正常である場合、正側電流検出部17aの1次電流IA1、IA2は等しく、検出電流ΔIaは略ゼロとなる。つまり、検出電流ΔIaは閾値未満となる。同様に、導線Lb1及び導線Lb2が正常である場合、負側電流検出部17bの1次電流IB1、IB2は等しく、検出電流ΔIbは略ゼロレベルとなる。つまり、検出電流ΔIbは閾値未満となる。
【0032】
また、図8に示すように、導線La1が劣化し、導線La1の電気抵抗値が導線La2の電気抵抗値よりも大きくなった場合、正側電流検出部17aの1次電流IA1、IA2に差異が生じ、検出電流ΔIaの大きさは閾値以上の値となる。検出電流ΔIaは正である。
導線La2が劣化し、導線La2の電気抵抗値が導線La1の電気抵抗値よりも大きくなった場合、正側電流検出部17aの1次電流IA1、IA2に差異が生じ、検出電流ΔIaの大きさは閾値以上の値となる。検出電流ΔIaは負である。
【0033】
更に、図9に示すように、導線Lb1が劣化し、導線Lb1の電気抵抗値が導線Lb2の電気抵抗値よりも大きくなった場合、負側電流検出部17bの1次電流IB1、IB2に差異が生じ、検出電流ΔIbの大きさは閾値以上の値となる。検出電流ΔIbは負である。
導線Lb2が劣化し、導線Lb2の電気抵抗値が導線Lb1の電気抵抗値よりも大きくなった場合、負側電流検出部17bの1次電流IB1、Ib2に差異が生じ、検出電流ΔIbの大きさは閾値以上の値となる。検出電流ΔIbは正である。
【0034】
以上、図7図9に示すように、検出電流ΔIa、ΔIbが閾値未満であるか否か、検出電流ΔIa、ΔIbの正負を判定することによって、各導線La1、La2、Lb1、Lb2の異常の有無、劣化等の異常により電気抵抗値が高くなった導線La1、La2、Lb1、Lb2を特定することができる。断線検出回路18は、給電線16の異常の有無、異常箇所を示す情報を内視鏡制御装置20へ送信する。当該情報は、例えば、検出電流ΔIa、ΔIbが閾値未満であるか否かを示す比較結果と、検出電流ΔIa、ΔIbの正負を示す情報である。そして、内視鏡制御装置20は、電子内視鏡10から送信された情報に基づいて、給電線16の異常及び異常箇所を使用者に通知する。
【0035】
このように構成された実施形態1に係る電子内視鏡装置1及び電子内視鏡10によれば、複数系統の給電線16を構成する導線La1、La2、Lb1、Lb2に対して、各給電線16の異常を検出する正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bの磁性体コアA11、A12、B11、B12が着脱可能に取り付けられている。従って、劣化した給電線16の全部又は一部を取り換える際、導線La1、La2、Lb1、Lb2から磁性体コアA11、A12、B11、B12を取り外し、給電系の部品のみを交換することができる。よって、給電線16の異常時のメンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
また、複数系統の給電線16のいずれか一系統の給電線16の劣化及び断線等の異常を検出することができ、全系統の給電線16が断線してブラックアウトが発生する前に、給電線16の異常を使用者に通知することができる。
【0037】
更に、異常がある導線La1、La2、Lb1、Lb2を特定し、使用者又は業者に通知することができる。
【0038】
更にまた、導線La1及び導線La2の電気抵抗値が略等しいため、各導線La1及び導線La2に流れる1次電流IA1、IA2の差分の大きさが略ゼロであるか否かを判定する簡単な処理で、導線La1及び導線La2の異常を検出することができる。負極側の導線Lb1及び導線Lb1の電気抵抗値も略等しく、同様にして各導線Lb1及び導線Lb2の異常を検出することができる。
【0039】
更にまた、電子内視鏡装置1は、給電線16の異常を検出する際、パルス電圧を給電線16に印加する構成であるため、検出電流ΔIa、ΔIbが閾値未満であるか否か、検出電流ΔIa、ΔIbの正負を複数回検出し、より正確に給電線16の異常の有無を判定することができる。
【0040】
更にまた、内視鏡駆動部15と、断線検出回路18とを電気的に別個の回路として構成することができる。内視鏡駆動部15が設けられた回路基板に、断線検出専用の回路を搭載する必要が無いため、当該回路基板の大型化を抑え、省スペース化を図ることができる。
給電線16に対する電流検出部17の取り付け位置は任意に変更することができ、電流検出部17及び断線検出回路18の配置自由度が高く、各種回路の省スペース化を図ることができる。
【0041】
(実施形態1の変形例)
本実施形態1に係る異常判定の処理は、比較器等を用いてハードウェア的に実施しても良いし、ソフトウェア的に実施しても良い。以下、ソフトウェア的に実施する場合の処理手順を説明する。
【0042】
図10は異常判定の処理手順を示すフローチャートである。断線検出回路18は、正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bから出力された1次電流の差分、即ち検出電流Ia、Ibを取得する(ステップS11)。次いで、断線検出回路18は、正側電流検出部17aから出力された1次電流IA1、IA2の差分が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。閾値以上であると判定した場合(ステップS12:NO)、断線検出回路18は、差分が正であるか否かを判定する(ステップS13)。差分が正であると判定した場合(ステップS13:YES)、断線検出回路18は、導線La1に異常があると判定する(ステップS14)。差分が負であると判定した場合(ステップS13:NO)、断線検出回路18は、導線La2に異常があると判定する(ステップS15)。
【0043】
正側電流検出部17aから出力された電流の差分が閾値未満であると判定した場合(ステップS12:YES)、又はステップS14もしくはステップS15の処理を終えた場合、断線検出回路18は、負側電流検出部17bから出力された1次電流IB1、IB2の差分が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS16)。閾値以上であると判定した場合(ステップS16:NO)、断線検出回路18は、差分が負であるか否かを判定する(ステップS17)。差分が負であると判定した場合(ステップS17:YES)、断線検出回路18は、導線Lb1に異常があると判定する(ステップS18)。差分が正であると判定した場合(ステップS17:NO)、断線検出回路18は、導線Lb2に異常があると判定する(ステップS19)。負側電流検出部17bから出力された電流の差分が閾値未満であると判定した場合(ステップS16:YES)、又はステップS18もしくはステップS19の処理を終えた場合、断線検出回路18は、給電線16の異常判定結果を示す情報を内視鏡制御装置20へ送信し(ステップS20)、処理を終える。
【0044】
以上の処理によって、断線検出回路18は、給電線16の異常を判定し、給電線16の異常の有無、異常箇所を示す情報を内視鏡制御装置20へ送信することができる。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2に係る電子内視鏡装置は、3系統の給電線と、3系統に対応した第1正側電流検出部及び第2正側電流検出部と、第1負側電流検出部及び第2負側電流検出部とを備える点が実施形態1と異なるため、以下では主にかかる相違点について説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。また、負極側の3本の導線、図示しない第1及び第2負側電流検出部の構成並びに異常判定方法は、正極側と同様であるため、正極側の構成を説明し、負極側の詳細な説明を省略する。
【0046】
図11は、実施形態2に係る給電線216並びに第1正側電流検出部171a及び第2正側電流検出部172aの構成例を示す模式図である。実施形態2に係る給電線216は、3系統であり、正極側の導線La1、導線La2、導線La3と、図示しない負極側の3本の導線とを備える。
第1正側電流検出部171aは、導線La1及び導線La2に流れる1次電流IA1、IA2の差分を検出するための磁性体コアA11及び磁性体コアA12を備える。磁性体コアA11及び磁性体コアA12には2次コイルが逆向きに巻回されており、導線La1及び導線La2に同方向の1次電流IA1、IA2が流れた場合、誘導電圧が打ち消し合うように構成されている。2次コイルの巻き数は同数であり、導線La1及び導線La2に同じ大きさの1次電流IA1、IA2が流れた場合、誘導電圧が略ゼロになる。このように構成された第1正側電流検出部171aは、導線La1及び導線La2に流れる1次電流IA1、IA2の差分に係る検出電流ΔIa1を断線検出回路18へ出力する。検出電流ΔIa1は、1次電流LA1、LA2によって誘起される2次電流Ia11及び2次電流Ia12を加算して得られる電流値(ΔIa1=Ia11+Ia12)である。
同様に、第2正側電流検出部172aは、導線La2及び導線La3に流れる1次電流IA2、IA3の差分を検出するための磁性体コアA21及び磁性体コアA22を備える。磁性体コアA21及び磁性体コアA22には2次コイルが逆向きに巻回されており、導線La2及び導線La3に同方向の1次電流IA2、IA3が流れた場合、誘導電圧が打ち消し合うように構成されている。2次コイルの巻き数は同数であり、導線La2及び導線La3に同じ大きさの1次電流IA2、IA3が流れた場合、誘導電圧が略ゼロになる。このように構成された第2正側電流検出部172aは、導線La2及び導線La3に流れる1次電流IA2、IA3の差分に係る検出電流ΔIa2を断線検出回路18へ出力する。検出電流ΔIa2は、1次電流LA2、LA3によって誘起される2次電流Ia21及び2次電流Ia22を加算して得られる電流値(ΔIa2=Ia21+Ia22)である。
【0047】
図12乃至図15は給電線216の異常判定方法を示す図表である。図表中、RLa1、RLa2、RLa3は、それぞれ導線La1、La2、La3の電気抵抗値を表している。
【0048】
図12に示すように、導線La1及び導線La2の電気抵抗値が略等しい場合、つまり導線La1及び導線La2が正常である場合、第1正側電流検出部171aの1次電流IA1、IA2は等しく、検出電流ΔIa1は略ゼロとなる。一方、導線La2及び導線La3が正常である場合、正側電流検出部172bの1次電流IA2、IA3は等しく、検出電流ΔIa2は略ゼロとなる。検出電流ΔIa1、ΔIa2のいずれもが閾値未満である場合、正極側の導線La1、La2、La3は正常であると判定される。
【0049】
図13に示すように、導線La1が劣化し、導線La1の電気抵抗値が導線La2の電気抵抗値よりも大きくなった場合、第1正側電流検出部171aの1次電流IA1、IA2に差異が生じ、検出電流ΔIa1の大きさは閾値以上の値となる。検出電流ΔIa1は正である。一方、導線La2及び導線La3が正常である場合、上記の通り、検出電流ΔIa2は略ゼロとなる。このような場合、導線La1に異常があると判定される。
また、図示しないが、導線La1及び導線La2が正常で、導線La3が劣化している場合、検出電流ΔIa1は略ゼロ、検出電流ΔIa2の大きさは閾値以上の負の値となる。
更に、導線La1及び導線La3が正常で、導線La2に異常がある場合、検出電流ΔIa1の大きさは閾値以上の負の値、検出電流ΔIa2の大きさは閾値以上の正の値となる。
【0050】
図14に示すように、導線La1及び導線La2の双方が劣化し、導線La3が正常である場合、検出電流ΔIa1が略ゼロであり、検出電流ΔIa2が閾値以上の正の値となる。
また、図示しないが、導線La1が正常で、導線La2及び導線La3の双方が劣化した場合、検出電流ΔIa1が閾値以上の負の値であり、検出電流ΔIa2が略ゼロとなる。
【0051】
図15に示すように、導線La1及び導線La3の双方が劣化し、導線La2が正常である場合、検出電流ΔIa1が閾値以上の正の値となり、検出電流ΔIa2が閾値以上の負の値となる。
【0052】
以上、実施形態2に係る電子内視鏡装置1及び電子内視鏡10によれば、図12図15に示すように、検出電流ΔIa1、ΔIa2が閾値未満であるか否か、検出電流ΔIa、ΔIbの正負を判定することによって、各導線La1、La2、La3の異常の有無、劣化等の異常により電気抵抗値が高くなった導線La1、La2、La3を特定し、給電線216の異常及び異常箇所を通知することができる。
【0053】
また、3系統の給電線216を構成する導線La1、La2、La3に対して、各給電線216の異常を検出する第1正側電流検出部171a及び第2正側電流検出部172aの磁性体コアA11、A12、A21、A22が着脱可能であり、給電線216の異常時のメンテナンス性を向上させることができる。
【0054】
(実施形態3)
実施形態3に係る電子内視鏡装置は、電流検出部の構成及び異常判定の方法が実施形態1と異なるため、以下では主にかかる相違点について説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
図16は、実施形態3に係る電流検出部317の構成例を示す模式図である。実施形態3に係る電子内視鏡10は、実施形態1と同様の構成であり、2系統の給電線16を備える。電流検出部317は、導線La1及び導線Lb1が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアAB1と、導線La2及び導線Lb2が挿脱可能に挿通された環状の磁性体コアAB2とを有する。磁性体コアAB1及び磁性体コアAB2には、それぞれ2次コイルが巻回されており、各2次コイルの両端部は断線検出回路18に接続されている。
【0056】
このように構成された電子内視鏡装置1及び電子内視鏡10によれば、正極側の導線La1及び導線La2が同程度に劣化し、電気抵抗値が同じように低下した場合であっても、導線La1及び導線La2の劣化及び断線を検出し、当該劣化及び断線を通知することができる。
同様に負極側の導線Lb1及び導線Lb2が同程度に劣化し、電気抵抗値が同じように低下した場合であっても、導線Lb1及び導線Lb2の劣化及び断線を検出し、当該劣化及び断線を通知することができる。
【0057】
なお、本実施形態3の電流検出部317と、本実施形態1の正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bとを組み合わせても良い。この場合、導線La1、導線La2、導線Lb1及び導線Lb2の任意の2本が同程度に劣化した場合であっても、劣化又は断線した導線La1、La2、Lb1、Lb2を検出することができる。
【0058】
(実施形態4)
実施形態4に係る電子内視鏡装置は、電流を検出する構成及び異常判定の方法が実施形態1と異なるため、以下では主にかかる相違点について説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図17は実施形態4に係る電子内視鏡装置401の構成例を示す模式図である。実施形態4に係る電子内視鏡装置401は、実施形態1と同様の構成部を備え、更に、各系統の給電線16を流れる総電流を検出する総電流検出部19を備える。総電流検出部19は、全系統の給電線16が挿通する磁性体コアと、当該磁性体コアに巻回された2次コイルとを備える。例えば、総電流検出部19は、正極側の導線La1及び導線La2に挿通する磁性体コアを有する。磁性体コアの2次コイルには、導線La1及び導線La2に流れる1次電流IA1、IA2の総和に相当する電圧が誘起され、2次コイルに誘起された電圧が断線検出回路418に入力される。なお、総電流検出部19は、負極側の導線Lb1、Lb2に設けても良い。
【0060】
断線検出回路418は、総電流検出部19にて検出された総電流と、所定値とを比較する比較部18bを備える。断線検出回路418の判定部18aは、正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bにて検出された電流の差分及び正負と、比較部18bによる比較結果とに基づいて、各給電線16の異常の有無を判定する。
具体的には、断線検出回路418は、正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bにて検出された電流の差分が閾値未満であるか否か、検出電流ΔIa、ΔIbが正であるか否かといった判定結果に基づいて、各導線La1、La2、Lb1、Lb2の劣化及び断線を検出する。
また、上記判定手法では、導線La1及び導線La2が同程度に劣化した場合、あるいは導線Lb1及び導線Lb2が同程度に劣化した場合、給電線16の異常を検出することができない。そこで、断線検出回路418は、総電流検出部19にて検出された総電流が所定値未満であるか否かの比較結果に基づいて、同程度に劣化した場合の導線La1及び導線La2の異常、あるいは導線Lb1及び導線Lb2の異常を検出する。
【0061】
このように構成された電子内視鏡装置1及び電子内視鏡10によれば、正極側の導線La1及び導線La2が同程度に劣化し、電気抵抗値が同じように低下した場合、差分は閾値未満となるが、総電流の値が所定値未満となるため、断線検出回路418は、導線La1及び導線La2の劣化及び断線の有無を判定することができる。
同様に、負極側の導線Lb1及び導線Lb2が同程度に劣化し、電気抵抗値が同じように低下した場合、差分は閾値未満となるが、総電流の値が所定値未満となるため、断線検出回路418は、導線Lb1及び導線Lb2の劣化及び断線の有無を判定することができる。
【0062】
(実施形態4の変形例)
本実施形態1に係る異常判定の処理は、比較器等を用いてハードウェア的に実施しても良いし、ソフトウェア的に実施しても良い。以下、ソフトウェア的に実施する場合の処理手順を説明する。
【0063】
図18は異常判定の処理手順を示すフローチャートである。断線検出回路418は、正側電流検出部17a及び負側電流検出部17bから出力された電流の差分、即ち検出電流Ia、Ibを取得する(ステップS411)。また、断線検出回路418は、総電流検出部19から導線La1及び導線La2を流れる総電流と、導線Lb1及び導線Lb2を流れる総電流とを取得する(ステップS412)。
【0064】
以下、実施形態1の変形例で説明したステップS12~S19と同様の処理、即ち導線La1、La2、Lb1、Lb2における異常を判定する処理をステップS413~ステップS420で実行する。
【0065】
負側電流検出部17bから出力された電流の差分が閾値未満であると判定した場合(ステップS417:YES)、又はステップS419もしくはステップS420の処理を終えた場合、断線検出回路418は、総電流が所定値未満であるか否かを判定する(ステップS421)。総電流が所定値以上であると判定した場合(ステップS421:NO)、断線検出回路418は、給電線16に異常があると判定する(ステップS422)。
【0066】
総電流が所定値未満であると判定した場合(ステップS421:YES)、又はステップS422の処理を終えた場合、断線検出回路418は、給電線16の異常判定結果を示す情報を内視鏡制御装置20へ送信し(ステップS423)、処理を終える。
【0067】
以上の処理によって、断線検出回路418は、給電線16の異常を判定し、給電線16の異常の有無、異常箇所を示す情報を内視鏡制御装置20へ送信することができる。また、断線検出回路418は、導線La1及び導線La2が同程度に劣化した場合、又は導線Lb1及び導線Lb2が同程度に劣化した場合であっても給電線16の異常を検出することができる。
【0068】
なお、上記実施形態1~4及び変形例では、発光素子14に給電する給電線16の異常を検出する電流検出部17を説明したが、撮像素子13に給電する複数系統の給電線を備え、各給電線の異常を検出及び通知する構成であっても良い。
【0069】
また、2系統及び3系統の給電線を説明したが、言うまでも無く、4系統以上の給電線の異常を検出するように構成しても良い。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 電子内視鏡装置
10 電子内視鏡
10a 挿入管
10b 先端部
10c 手元操作部
10d ユニバーサルチューブ
10e コネクタ部
11 対物レンズ
12 照明レンズ
13 撮像素子
13a アナログフロントエンド
14 発光素子
15 内視鏡駆動部
16 給電線
17 電流検出部
18 断線検出回路
18a 判定部
18b 比較部
19 総電流検出部
20 内視鏡制御装置
21 システムコントローラ
21a 通知処理部
22 駆動制御部
23 信号処理回路
24 電源回路
M 外部モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18