(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】保護材が積層された樹脂製窓枠
(51)【国際特許分類】
E06B 3/30 20060101AFI20220216BHJP
E06B 1/34 20060101ALI20220216BHJP
E06B 3/22 20060101ALI20220216BHJP
E06B 1/26 20060101ALI20220216BHJP
B32B 3/02 20060101ALI20220216BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20220216BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220216BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220216BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
E06B3/30
E06B1/34 Z
E06B3/22
E06B1/26
B32B3/02
B32B27/08
B32B27/30 A
B32B27/20 A
E06B5/00 D
(21)【出願番号】P 2017168343
(22)【出願日】2017-09-01
【審査請求日】2020-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】300088186
【氏名又は名称】株式会社エクセルシャノン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】岸 真由美
(72)【発明者】
【氏名】下山 英男
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-140543(JP,A)
【文献】特開2007-302772(JP,A)
【文献】特開平10-246067(JP,A)
【文献】特開2004-027109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/04 - 3/46,
3/50 - 3/52
E06B 3/54 - 3/88
E06B 1/00 - 1/70
E06B 5/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に保護材が積層された樹脂製窓枠にして、前記保護材が積層された部位における1/4楕円法試験による臨界ひずみが1.0~3.0%である
、ことを特徴とする樹脂製窓
枠。
【請求項2】
前記保護材がアクリル樹脂を含む
、請求項1記載の樹脂製窓
枠。
【請求項3】
前記保護材がさらに顔料を含む
、請求項1または2記載の樹脂製窓
枠。
【請求項4】
外気接触面の全てに
前記保護材が積層された、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂製窓
枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部に保護材が積層された樹脂製窓枠に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂は、機械的強度、耐候性、断熱性などに優れることから、窓ガラスを保持する樹脂製窓枠として広く利用されている。樹脂製窓枠は、アルミニウム製窓枠と比べて高い断熱性能を有することから、寒冷地の住宅用や高断熱住宅用の窓枠として広く用いられている。上記樹脂製窓枠は、耐候性に優れるものではあるが、住宅用に用いた場合には、10年を超える耐久性が要求されており、長時間の日光照射による変色等を防止する観点から、外気と接触する面に対し、アクリル樹脂等の保護材で被覆された樹脂製窓枠が用いられている(特許文献1及び特許文献2)。さらに保護材に種々の顔料を加えることで、木目調や金属様の外観を有する樹脂製窓枠も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3420527号公報
【文献】特許第3647849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、アクリル樹脂等の保護材で被覆された保護層を有する樹脂製窓枠は広く用いられているが、10年を超える長期間使用された樹脂製窓枠において、該保護層のひび割れや、剥離が生じる現象が発生することが判明した。このような保護層のひび割れや、剥離が生じた樹脂製窓枠は、保護層に直接または該当箇所を削り取った後、アクリル系もしくはウレタン系の塗料を塗工し、外観上目立たなくする方法がとられているが、根本的な解決方法とは言い難く、長期間の使用に耐えうる耐久性に優れた保護材が積層された樹脂製窓枠が望まれていた。
【0005】
そこで上記保護層のひび割れや剥離が生じる理由について本発明者らが検討を行った結果、樹脂サッシと外壁との隙間を埋めるシーリング材に用いる薬剤や或いは窓枠を清掃する際に用いられる洗剤に含有されるアルコール等の有機溶媒によって誘発されることが判明した。
【0006】
従って、本発明の目的は、有機溶媒によるひび割れや、剥離の発生を抑制し、長期間の使用に耐えうる耐久性に優れた、保護材が積層された樹脂製窓枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。まず最初に有機溶剤による保護層のひび割れや、剥離が生じる要因について詳細に検討を行った。季節変化を再現するため、塩化ビニル層上に保護材を積層し保護層が形成された試験片を作製し、該試験片の保護層上に有機溶剤を塗布した後、メタルウエザーによる光照射による耐光性試験、或いは、該試験片を冷熱衝撃試験機にて冷熱繰り返し実験を行ったところ、いずれの実験においても実環境10年分に相当する試験において保護層のひび割れや剥離が生じないことが判明した。そこでさらに検討を進めた結果、塩化ビニル層上に保護材を積層し保護層が形成された試験片に対し、塩化ビニル層に達する切り込みを入れた後に有機溶剤を塗布した試験片に対して冷熱繰り返し実験を行ったところ、これらの試験片において保護層の剥離が認められることが判明した。
【0008】
あわせて、耐薬品性を定量的に確認するために、成形品から切り出した保護層を含む短冊状の試験片を1/4楕円ジグに沿ってセットし、シーリング材に含まれる可塑剤を試験片に塗布し、保護層にひび割れを生じさせ、楕円の曲率が最も小さい部分で発生したひび割れの位置から歪値(%)を観察したところ、歪値が0.5%より小さい部分でひび割れを生じることが判明した。
【0009】
上記知見を元にひび割れの発生しにくい保護材の検討を行った結果、歪み耐性の高い保護材を用いることで、該保護材により形成された保護層の有機溶剤によるひび割れや剥離を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも一部に保護材が積層された樹脂製窓枠にして、前記保護材が積層された部位における1/4楕円法試験による臨界ひずみが1.0~3.0%である、ことを特徴とする樹脂製窓枠である。該保護材としてアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1/4楕円法試験による臨界ひずみが特定の範囲にある、耐性の高い保護材が積層された樹脂製窓枠が提供され、該保護材により形成された保護層の有機溶剤によるひび割れや剥離を抑制することが可能である。上記効果について詳細は不明であるが、本発明者らは以下のとおり推測している。すなわち、有機溶剤や可塑剤が保護層に付着すると、特に揮発性の低い薬品の場合が保護層に浸透し長期間停滞する。一方、住宅に設置された樹脂サッシは、日射による温度上昇や、室内外の温度差、季節変動による温度変化等による線膨張、収縮や、住宅躯体からの応力、紫外線による劣化等の環境要因の影響を受ける。従って、薬品が保護層に停滞した状態である場合、環境要因の影響により、保護層へ生じる応力が緩和する方向にクラックが発生する。この状況が継続することによって、応力が集中しやすいクラックの先端からクラックが成長するとともに、温度変化による線膨張が加わることで樹脂層(下地)と保護層の界面に、せん断力が生じ剥離するものと推測される。
【0013】
従って、ゴム弾性を付与し歪み耐性に高い保護材を用いることで、該保護材により形成された保護層の環境要因と有機溶剤によるひび割れや剥離を抑制することが可能となり、長期間の使用にも耐えうる高耐久性の窓枠とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂製窓枠の平面図である。
【
図2】上記樹脂製窓枠の
図1のA-A’線に沿った部分断面図である。
【
図3】上記樹脂製窓枠の樹脂サッシの框の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂製窓枠は、保護材が積層された部位の1/4楕円法試験による臨界ひずみが特定の範囲にあり歪み耐性の高いことが特徴である。表1は、樹脂製窓枠上に保護材としてアクリル樹脂を用いて保護層を形成し、1/4楕円法試験による臨界ひずみが0.7%である試験片を作製し、該試験片上に各種の薬剤を塗布した後、-10℃と50℃の冷熱サイクルを3500回繰り返した際の試験結果を示すものである。この冷熱サイクルは実環境のおよそ10年間に相当するものである。またスリットは、アクリル樹脂層のクラックを再現するために試験に先立って、下地層に届く深さで入れたものである。
【0016】
【0017】
この表1の結果からも明らかなように、スリットがない、すなわちクラックがない状態では、薬剤に対して安定であるが、クラックが入った場合には、可塑剤として用いられるフタル酸エステル系の薬剤によってアクリル樹脂保護層の剥離が生じていることが分かる。このことから、クラックが発生した状態で保護層に可塑剤が滞留すると、応力が集中しやすいクラックの先端からクラックが成長するとともに、温度変化による線膨張が加わることで樹脂層(下地)と保護層の界面に、せん断力が生じ剥離するものと推測される。従って、樹脂製窓枠を保護するための保護材として、クラックが発生しにくい、すなわち歪み耐性に高い保護材を用いることで、該保護材により形成された保護層の環境要因と有機溶剤によるひび割れや剥離が抑制することが可能となり、長期間の使用にも耐えうる高耐久性の窓枠とすることが可能となる。以下、本発明の樹脂製窓枠用保護材について詳細に説明する。
【0018】
<樹脂製窓枠用保護材>
本発明の樹脂製窓枠は、保護材が積層された部位の1/4楕円法試験による臨界ひずみが1.0~3.0%であることを特徴である。上記臨界ひずみは、樹脂製窓枠上に保護材により形成された保護層が積層された試験片を作製し該試験片の1/4楕円法試験による臨界ひずみである。1/4楕円試験法は、ABS樹脂等の有機溶媒等の薬品による環境応力割れ(ストレスクラック)を評価する方法である。具体的には、1/4楕円形状の治具に沿って、試験片を固定し応力(ストレス)を試験片に与えた状態で一定時間経過後に発生するクラックの発生箇所を目視で確認することにより、臨界ひずみを評価するものである。例えば、長軸が10cm、短軸4cmである楕円治具を用いて測定した場合、以下の算出式によって臨界ひずみを算出することができる。
【0019】
臨界ひずみ(ε%)= 0.02t{1-0.0084x2}-3/2×100
(ここで、tは試験片の厚さ(cm)、xは、長軸原点からクラック発生点までの距離(cm)を示す。)
本発明において、1/4楕円法試験による臨界ひずみの測定は以下のとおりの方法により行うことができる。すなわち、樹脂製窓枠上に保護材により形成された保護層が積層された成形品より、短冊状の試験片(成形品肉厚2.8mm、幅20mm、長さ130mm)を切り出し、23±2℃にて24時間程度保持した後、同温度環境で1/4楕円治具(長軸が10cm、短軸4cm、)に試験片をセットし、72時間放置した後、試験片に生じているひび割れの状況を観察する。試験片表面の楕円歪のもっとも小さい部分で生じているクラックから、限界ひずみ(%)を算出する。
【0020】
樹脂製窓枠の保護材が積層された部位における臨界ひずみが1.0%未満である場合には、日射による温度上昇や、室内外の温度差、季節変動による温度変化等による膨張、収縮や、住宅躯体からの応力、紫外線による劣化等の環境要因によって、該保護層上にクラックが生じやすく、有機溶剤による該保護層のひび割れや剥離が生じるため好ましくない。また、臨界ひずみが3.0%を超える場合には、上記保護層の柔軟性が高くなりすぎ、硬度が低下する、或いは、後述する樹脂製窓枠上に上記保護層が積層された成形品を製造する際の共押し出し工程時に上記保護層の厚さの偏肉や共押し出し時の保護材の溶融粘度が高くなるため、押出機内で樹脂がスリップし吐出しにくい等の観点から好ましくない。
【0021】
上記の保護材としては、工業的に入手可能な観点、及び、共押し出しにおける成形性の観点等から、保護材により形成された保護層の臨界ひずみが1.5~2.5%の範囲にあることが好ましい。また、本発明の保護層としては、上記臨界ひずみを有するものであれば、その材質に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、ASA樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム共重合体)、ABS樹脂などを好適に用いることができる。特に、配合する顔料によって種々の色彩は模様を形成させて意匠性を向上させやすい点、樹脂枠体に用いる塩化ビニル樹脂との密着性等の観点からアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
<アクリル樹脂>
保護材としてアクリル系樹脂を用いる場合、臨界ひずみを上記範囲とするためには、具体的には、アクリル系樹脂にある程度の柔軟性を付与させることであり、アクリル系樹脂成分として、ゴム弾性を付与する成分を含有させる、さらに、架橋性のアクリル系成分を配合する、アクリル系樹脂の平均分子量を調製する等によって、上記臨界ひずみを有する保護層とすることができる。
【0023】
本発明のアクリル系樹脂に用いる、ゴム弾性を付与する成分とは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルとアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルおよびスチレンなどの芳香族ビニル、アクリルロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体を単独でまたは2種類以上の共重合体等が挙げられる。
【0024】
上記ゴム弾性を付与する成分と架橋体を生成する成分として、共重合可能な二重結合を1分子内に2個以上有する、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコールなどのジ(メタ)アクリル酸アルキレングリコールを単独でまたは2種類以上を併せて使用できる。架橋する成分があるほうが、ゴム弾性を付与しつつ、分子間が密になり薬品分子の浸透を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0025】
上記アクリル系樹脂の分子量は、低すぎると溶融時の流動性が良すぎて成形が困難になる傾向があり、また高すぎると溶融時の流動性が悪化し成形が困難になる傾向があることから、数平均分子量Mnは50,000~80,000の範囲が好ましく、さらに、55,000~65,000の範囲であることが好ましい。また多分散度を示す指標である重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.5~1.7の範囲であることが望ましい。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定することができる。
【0026】
さらに上記アクリル系樹脂には、各種添加剤を添加しても良い。添加剤として具体的には、耐候性向上剤、顔料、その他の添加剤等が挙げられる。
【0027】
耐候性向上剤としては、紫外線等の光に対する安定性を向上させるものであれば良く、具体的には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。これら耐候性向上剤は単独、もしくは併用して用いることができる。添加量としては、アクリル系樹脂成分に対し、0.1~0.5質量%の範囲で適宜配合すれば良い。
【0028】
顔料は、アクリル樹脂に添加して様々な色調や風合いを示すために添加される。顔料として具体的には、金属光沢を出すために用いるアルミニウム粉、その他様々な色調を出すために用いる酸化チタン、ベンガラ、酸化クロム等の無機系顔料、ジスアゾオレンジ、酸化クロム、フタロシアニンブルーなど有機系顔料が挙げられる。それぞれ、単独もしくは併用して使用する事ができる。添加量としては、アクリル系樹脂成分に対し、アクリル系樹脂成分に対し、0.01~10質量%の範囲で適宜配合すれば良い。
【0029】
さらにその他の成分としては、マット感など表面意匠性を付与するために、タルク、雲母、シリカなどの無機系増量剤等が挙げられる。添加量としては、アクリル系樹脂成分に対し、0.5~5質量%の範囲で適宜配合すれば良い。
【0030】
<樹脂製窓枠の製造>
上記保護材は、樹脂製窓枠の少なくも一部に積層させて用いる。樹脂製窓枠の保護効果の点から、樹脂製窓枠の外気接触面の少なくとも一部に積層されていることが好ましく、特に、外気接触面の全てに本発明の保護材が積層されることが好ましい。保護材の樹脂製窓枠への積層方法としては、樹脂製窓枠上に該保護材を有機溶剤等に溶解せしめた後を樹脂製窓枠上に塗布し、溶剤を乾燥させて塗工する方法や、樹脂製窓枠と同時に成形する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、樹脂製窓枠と同時に成形する方法は、工程が簡略化される点で好ましい。
【0031】
樹脂製窓枠は通常、塩化ビニル等のペレットを共押出成形によって所望の形状に成形されるが、塩化ビニル等の主材の押出の直後に保護層を形成する樹脂ペレットを押出成形することによって、樹脂製窓枠と同時に成形することができる。
【0032】
上記押出成形には、例えば、60mmφコニカル2軸押出機を用いることができる。この場合、シリンダー温度を170~210℃とし、アダプター温度を180~200℃とし、金型の温度を185~205℃とすることができる。金型出口での樹脂溶融温度は、195~205℃程度であることが好ましい。
【0033】
アクリル樹脂を含む保護材を用いる場合、保護材は共押出成形にて樹脂製窓枠上に被覆される。上記主材の押出条件に加えて、例えばアクリル樹脂の共押出条件として30mmφシングル押出機を用いる事ができる。押出機シリンダー温度を180~220℃、アダプター温度190~220℃とし共押出原料を金型内部に導入し、金型内部で主材を被覆後、金型出口から吐出される。以下本発明の枠体を用いた樹脂サッシの構成について図面を基に説明する。
【0034】
<樹脂サッシ10の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂サッシ10の平面図である。樹脂サッシ10は、矩形の窓1の外枠として構成され、窓ガラス40の外縁部を保持している。樹脂サッシ10は、本発明の枠体で構成される框20及び押縁30を有する。
【0035】
框20は、異形押出成形により形成された部材20a,20b,20c,20dを有する。部材20a,20bは相互に対向する長辺部材を構成し、部材20c,20dは相互に対向する短辺部材を構成する。部材20a,20b,20c,20dは溶着により相互に接合されて矩形状とされている。
【0036】
押縁30は、異形押出成形により形成された部材30a,30b,30c,30dを有する。部材30a,30bは相互に対向する長辺部材を構成し、部材30c,30dは相互に対向する短辺部材を構成する。部材30a,30b,30c,30dは嵌合により相互に接合されて矩形状とされている。
【0037】
框20の部材20a,20b,20c,20dの接合方法、及び押縁30の部材30a,30b,30c,30dの接合方法は、溶着や嵌合に限定されず、適宜公知の方法を採用可能である。
【0038】
図2は窓1の
図1のA-A’線に沿った部分断面図であり、
図3は樹脂サッシ10のフレーム材20の拡大断面図である。樹脂サッシ10の框20及び押縁30は、中空構造に形成され、窓ガラス40の外縁部を挟持している。
【0039】
窓ガラス40は、相互に対向する2枚のガラス41a,41bと、ガラス41a,41bの外縁部を機密に封止するスペーサ41と、を有する。窓ガラス40は、ガラス41a,41bの間の空間にアルゴンガスが封入された複層ガラスとして構成される。このような構成の窓ガラス40は、高い断熱性を発揮することができる。
【0040】
なお、窓ガラス40の構成は任意である。例えば、窓ガラス40に封入されるガスは、アルゴンガスでなくてもよく、例えば、クリプトンガス、乾燥空気などであってもよい。また、窓ガラス40は、複層ガラスでなくてもよく、トリプルガラスや単板ガラスなどであってもよい。更に、ガラス41a,41bは、公知のガラスから任意に選択可能であり、表面コーティングが施されて構成されていてもよい。
【0041】
図3に示すように、框20は、窓ガラス40の端面を保持する保持面22と、保持面22に隣接して設けられた第1嵌合部21と、保持面22から略垂直に延びる第1挟持部23と、を有する。第1嵌合部21と第1挟持部23とは保持面22を挟んで相互に反対側に配置されている。
【0042】
図2に示すように、押縁30は、第2嵌合部31と、第2挟持部32と、を有する。第2嵌合部31は、框20の第1嵌合部21に嵌合可能に構成されている。つまり、カバー材30は、第2嵌合部31を第1嵌合部21に嵌合させることにより、框20に取り付けられる。框20に取り付けられた押縁30の第2挟持部32は、フレーム材20の第1挟持部23に対向するように第2嵌合部31から延びている。
【0043】
つまり、押縁30がフレーム材20に取り付けられた樹脂サッシ10は、保持面22及び嵌合部21,31によって窓ガラス40の外縁部を受容するための凹部を形成している。この凹部内には、ガラス受台50と、気密材51a,51bと、が設けられている。ガラス受台50及び気密材51a,51bは樹脂材料で形成されている。
【0044】
ガラス受台50は、窓ガラス40の端面を保持している。気密材51aは、押縁30の第2挟持部32と窓ガラス40のガラス41aとに挟持されている。気密材51bは、框20の第1挟持部23と窓ガラス40のガラス41bとに挟持されている。ガラス受台50及び気密材51a,51bによって、窓ガラス40と樹脂サッシ10との間において、気密性が向上するとともに、がたつきが解消される。
【0045】
また、框20には、その外縁部から突出する固定部24,25が設けられている。固定部24,25の突出方向は相互に直交し、固定部24は外周方向に突出し、固定部25は室内方向に突出している。固定部24,25は、建物の壁や屋根などに形成された開口部に、例えば、ネジなどの固定部材によって固定されている。つまり、窓1が建物の開口部に設置される際、固定部24,25が建物の開口部に固定される。
【0046】
本発明の保護材は樹脂製窓枠の少なくも一部に積層させて用いられるものであり、樹脂製窓枠の保護効果の点から、樹脂製窓枠の外気接触面の少なくとも一部に積層されていることが好ましい。特に樹脂製窓枠の長期間の保護の観点から、外気に接触し、太陽光が当たる部分の全面に保護材が積層されていることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1、比較例1、2)
保護材として以下の樹脂を用意した。
アクリル樹脂A:数平均分子量(Mn)が50,000であるメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルの共重合体
アクリル樹脂B:アクリル樹脂Aに、数平均分子量(Mn)が90,000であるメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとスチレンの共重合体を混合し、数平均分子量(Mn)が60,000としたもの。
アクリル樹脂C:アクリル樹脂Aに、数平均分子量(Mn)が90,000であるメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとスチレンの共重合体をジ(メタ)アクリル酸エチレングリコールにより架橋させて、数平均分子量(Mn)を70,000としたもの
上記アクリル樹脂A~Cの各平均分子量を以下の表2に示す。なお、分子量の測定は以下のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定にて行った。
【0049】
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定
GPC測定に使用した装置、測定の条件は、以下のとおりである。
装置:株式会社島津製作所社LCシステム(コントローラ:SCL-10A、ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-10AF、カラムオーブン:CTO-10A)
検出器:蒸発光散乱検出器(SofTA社製Model400)
試料の調整:試料の0.1質量%THF溶液を調製し、0.45μmPTFE製フィルターにてろ過を行ったろ液を測定に供した。
分析条件:溶離液:THF
流速:1ml/min
カラム:東ソー株式会社製 TSK-GEL G2500HHR及び同G5000HHR(いずれも内径7.8mm×長さ30cm)を連結。
カラム温度:40℃
解析法:標準物質としてPMMA(Mp=500~2,700,000)にて較正曲線を作成し、試料の溶出時間を分子量に換算した。目的物質のピークを指定し、溶出時間0.25分毎にシグナル強度を求め、平均分子量を算出した。
【0050】
【0051】
塩化ビニル樹脂の主材の押出成形条件を60mmφコニカル2軸押出機を用いて、塩化ビニル樹脂のシリンダー温度を170~195℃とし、アダプター温度を190℃、金型温度を190~200℃、金型出口での樹脂溶融温度195℃と、アクリル樹脂の押出成形条件を30mmφシングル押出機を用いて、シリンダー温度を180~200℃、アダプター温度200℃とし、塩化ビニル樹脂及びアクリル樹脂の共押出原料を金型内部に導入し、金型内部で主材を被覆後、金型出口から吐出することにより、塩ビ樹脂製窓枠上に保護材が積層された押出成形品を製造した。この時、アクリル樹脂Cを用いた場合には、押出時にアクリル樹脂Cは一部スリップしたため、塩ビ樹脂製窓枠上の一部に未被覆層が発生した。
【0052】
次いで、上記押出成形品より、短冊状の試験片(成形品肉厚2.8mm、幅20mm、長さ130mm)を押出方向が長手側になるように切り出し、1/4楕円法試験、冷熱サイクル試験、及び鉛筆硬度試験を以下の方法にて測定した。結果を表3に示す。
【0053】
(1)1/4楕円法試験
塩ビ樹脂製窓枠上に保護材が積層された押出成形品より、短冊状の試験片(成形品肉厚2.8mm、幅20mm、長さ130mm)を押出方向が長手側になるように切り出た。試験片を23±2℃にて24時間程度保持した後、同温度環境下のまま、該試験片を長軸10cm、短軸4cmである1/4楕円治具にセットし、同温度環境下のまま72時間保持した後、試験片に生じているひび割れの状況を観察した。臨界ひずみは、試験片表面の楕円歪のもっとも小さい部分で生じているクラックの位置より下記式にて算出した。
【0054】
臨界ひずみ(ε%)= 0.02t{1-0.0084x2}-3/2×100
(ここで、tは試験片の厚さ(cm)、xは、長軸原点からクラック発生点までの距離(cm)を示す。)
【0055】
2)冷熱サイクル試験
塩ビ樹脂製窓枠上に保護材が積層された押出成形品より、短冊状の試験片(成形品肉厚2.8mm、幅20mm、長さ100mm)を押出方向が長手側になるように切り出し、短冊状の試験片に保護層に下地層に届く深さで5mm間隔にスリットを入れた。その試験片の両端を固定した状態でステンレス製の固定板に設置し、保護材表面にフタル酸系可塑剤DINP(ジイソノニルフタレート)を塗布し、エスペック社製小型冷熱衝撃試験機にて-10℃ 5分→移送2分→50℃ 5分→移送2分の冷熱パターンを1サイクルとして、500サイクル毎に試験機から固定板を取出し、試験片の表面観察と薬剤の再塗布を繰り返しながら、3500サイクル繰り返した(実環境およそ10年に相当する)。冷熱サイクル試験終了後の試験片について、ひび割れの状況を観察した。
【0056】
3)鉛筆硬度試験
鉛筆硬度の試験はJIS K5600-5-4記載の方法にて実施した。
【0057】
【符号の説明】
【0058】
1…窓
10…框
20…押縁
30…窓ガラス
50…ガラス受台
51a,51b…気密材
100…樹脂サッシ