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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20220216BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20220216BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20220216BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220216BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220216BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20220216BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220216BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A01D41/12 R
F01P5/06 504
F02M35/16 R
F01N3/28 301V
F01N3/24 E
F01N3/035 E
B60K13/04 B
B60K13/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017189734
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019062776
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】古井 利武
(72)【発明者】
【氏名】森 敦紀
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084541(JP,A)
【文献】特開2010-083331(JP,A)
【文献】特開2018-153111(JP,A)
【文献】特開2016-088377(JP,A)
【文献】特開2016-106601(JP,A)
【文献】特開2016-032969(JP,A)
【文献】特開2010-059834(JP,A)
【文献】特開2017-112882(JP,A)
【文献】特開2016-104601(JP,A)
【文献】特開平10-084750(JP,A)
【文献】特許第5761402(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 47/00
F01P 5/06
F02M 35/16
F01N 3/28
F01N 3/24
F01N 3/035
B60K 13/04
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを浄化して排出するコンバインであって、
オペレータが乗込む操縦部の下方に形成されたエンジンルーム内に設置されたエンジンと、
エンジンからの排気ガスを浄化する排気側浄化装置と、
エンジンに吸気されるエヤを浄化する吸気側浄化装置とを備え、
前記排気側浄化装置は、エンジンからの排気される排気ガスを浄化する第1浄化部と、該第1浄化部によって浄化された排気ガスをさらに浄化する第2浄化部と、前記第1浄化部によって浄化された排気ガスが前記第2浄化部に導入されるように両者を接続する接続管とを有し、
前記吸気側浄化装置は、エヤクリーナを有し、
前記第1浄化部、前記第2浄化部、前記接続管及びエヤクリーナは、エンジンルーム内に配置され、
前記エヤクリーナ、前記第1浄化部及び前記第2浄化部は、長手方向が機体の幅方向である横方向に向けられ、
前記接続管は、主要部分が上記横方向に延びるように配管され
前記エヤクリーナが、上記エンジン側に設置され且つ該エンジンの冷却を行う冷却ファンの真上側に配置され、
前記第1浄化部、前記第2浄化部及び前記接続管は、上記エヤクリーナよりも前記冷却ファンの送風方向下手寄り位置に配置され
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1浄化部は、上記エヤクリーナの真後ろ側に間隔を空けて配置され、
前記第2浄化部は、上記エヤクリーナの後方斜め上方に配置された
請求項に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1浄化部及び前記第2浄化部は、上下に並べた状態で、上記エンジンの上方に配置され、
前記第2浄化部は、自身が浄化した排気ガスを上記エンジンルームの上方から排出する構造を有する
請求項1乃至の何れかに記載のコンバイン。
【請求項4】
前記接続管は、エンジンルームにおける開放可能な後壁の近傍に配管された
請求項1乃至の何れかに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを浄化して排出するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが乗込む操縦部の下方に形成されたエンジンルーム内に設置されたエンジンと、エンジンからの排気ガスを浄化する排気側浄化装置と、エンジンに吸気されるエヤを浄化する吸気側浄化装置とを備え、前記排気側浄化装置は、エンジンからの排気される排気ガスを浄化する第1浄化部と、該第1浄化部によって浄化された排気ガスをさらに浄化する第2浄化部と、前記第1浄化部によって浄化された排気ガスが前記第2浄化部に導入されるように両者を接続する接続管とを有する特許文献1に示すコンバインが公知になっている。
【0003】
上記文献のコンバインによれば、第1浄化部及び第2浄化部の機能によって浄化機能が向上するとともに、グレンタンクの周囲の空きスペースを利用して第1浄化部、第2浄化部及び接続管を効率的に配置できる。
【0004】
しかし、該構成のコンバインでは、刈取作業中、グレンタンクの周囲に藁屑等が堆積し易く、この堆積した藁屑が排気ガスによって高温になった排気側浄化装置によって加熱される虞がある。また、上記文献には、吸気側浄化装置の少なくとも一部を構成するエヤクリーナの配置構成については開示も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5761402号公報(第1-22図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、第1浄化部及び第2浄化部と、第1浄化部と第2浄化部とを接続する接続管とを含む排気側浄化装置と、エヤクリーナを含む吸気側浄化装置とを効率良く配置するとともに、刈取作業中に蓄積した藁屑等が排気ガスの熱で加熱されることが防止されるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、排気ガスを浄化して排出するコンバインであって、オペレータが乗込む操縦部の下方に形成されたエンジンルーム内に設置されたエンジンと、エンジンからの排気ガスを浄化する排気側浄化装置と、エンジンに吸気されるエヤを浄化する吸気側浄化装置とを備え、前記排気側浄化装置は、エンジンからの排気される排気ガスを浄化する第1浄化部と、該第1浄化部によって浄化された排気ガスをさらに浄化する第2浄化部と、前記第1浄化部によって浄化された排気ガスが前記第2浄化部に導入されるように両者を接続する接続管とを有し、前記吸気側浄化装置は、エヤクリーナを有し、前記第1浄化部、前記第2浄化部、前記接続管及びエヤクリーナは、エンジンルーム内に配置され、前記エヤクリーナ、前記第1浄化部及び前記第2浄化部は、長手方向が機体の幅方向である横方向に向けられ、前記接続管は、主要部分が上記横方向に延びるように配管されたことを特徴とする。
【0008】
前記エヤクリーナが、上記エンジン側に設置され且つ該エンジンの冷却を行う冷却ファンの真上側に配置され、前記第1浄化部、前記第2浄化部及び前記接続管は、上記エヤクリーナよりも前記冷却ファンの送風方向下手寄り位置に配置されたものとしてもよい。
【0009】
前記第1浄化部は、上記エヤクリーナの真後ろ側に間隔を空けて配置され、前記第2浄化部は、上記エヤクリーナの後方斜め上方に配置されたものとしてもよい。
【0010】
前記第1浄化部及び前記第2浄化部は、上下に並べた状態で、上記エンジンの上方に配置され、前記第2浄化部は、自身が浄化した排気ガスを上記エンジンルームの上方から排出する構造を有するものとしてもよい。
【0011】
前記接続管は、エンジンルームにおける開放可能な後壁の近傍に配管されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、第1浄化部及び第2浄化部並びに両者を接続する接続管と、エヤクリーナとが、エンジンルーム内に横置きでコンパクトに配置されるので、効率的な配置を維持しつつ、刈取作業中に堆積する藁屑等が排気ガスによって加熱されることも防止される。
【0013】
前記エヤクリーナが、上記エンジン側に設置され且つ該エンジンの冷却を行う冷却ファンの真上側に配置され、前記第1浄化部、前記第2浄化部及び前記接続管は、上記エヤクリーナよりも前記冷却ファンの送風方向下手寄り位置に配置されたものによれば、エヤクリーナが冷却ファンによって効率的に冷却されるので、エヤクリーナが排気ガスの熱により破損することを防止しつつ、省スペース化を図ることが可能になる。
【0014】
前記第1浄化部は、上記エヤクリーナの真後ろ側に間隔を空けて配置され、前記第2浄化部は、上記エヤクリーナの後方斜め上方に配置されたものによれば、エヤクリーナの上方にスペースを形成することが可能になり、冷却ファンからの冷却風の流れが向上し、エヤクリーナの熱による破損をさらに効率的に防止可能になる。
【0015】
記第1浄化部及び前記第2浄化部は、上下に並べた状態で、上記エンジンの上方に配置され、前記第2浄化部は、自身が浄化したガスを上記エンジンルームの上方から排出する構造を有するものによれば、エンジンの側方を開放可能になり、メンテナンス性が向上する他、排気ガスを効率的に上方に排気することが可能になる。
【0016】
前記接続管は、エンジンルームにおける開放可能な後壁の近傍に配管されたものによれば、接続管へのアクセスが容易になり、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を提供した自脱式のコンバインの右側面図である。
図2】本発明を提供した自脱式のコンバインの左側面図である。
図3】本発明を提供した自脱式のコンバインの平面図である。
図4】キャビン及びその周辺の左側断面図である。
図5】キャビン及びその周辺の背面図である。
図6】コンバインの別実施形態の構成を示す要部斜視図である。
図7】延長排気管の支持構造を示す背断面図である。
図8】別実施形態に係る延長排気管の構成を示す平面図である。
図9】ロック解除レバーの構成を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図3は、本発明を提供した自脱式のコンバインの右側面図、左側面図及び平面図である。図示するコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1L,1Rを有する走行機体(機体)2と、該走行機体2の前部に昇降可能に連結された前処理部3とを備えている。
【0019】
上記走行機体2は、左右のクローラ式走行装置1L,1Rに支持される機体フレーム(車台)2aを備えている。この機体フレーム2a上には、オペレータが乗込むキャビン4と、穀粒を溜めるグレンタンク6と、脱穀装置7とが設置されている。脱穀装置7が走行機体2の左部に配置され、グレンタンク6が走行機体2の右部に配置され、キャビン4がグレンタンク6の前方に配置されている。
【0020】
上記前処理部3は、走行機体2の前進走行中、左右に往復作動するレシプロ式の刈刃8によって圃場の穀稈を刈取り、この刈取った穀稈を搬送機構9により脱穀装置7側まで後方搬送するように構成されている。
【0021】
上記脱穀装置7は、前処理部3の搬送機構9によって後方搬送されてくる穀稈を受取って脱穀・選別処理を行う。脱粒されて排藁になった穀稈は、排藁搬送体11によって、走行機体2の後端部に配置された後処理部12まで搬送され、そのまま機外に排出されるか、或いは前記後処理部12で切断処理されて機外に排出される。穀稈から脱粒された処理物は、藁屑等の排出物と、籾等の穀粒とに選別される。排出物は機外に排出される一方で、穀粒は脱穀装置7からグレンタンク6内に搬送されて貯蔵される。
【0022】
上記グレンタンク6は、その内部に穀粒を貯蔵可能であるとともに、走行機体2後端部から延出されたオーガ13によって、内部に溜めた穀粒を機外に排出させることが可能である。前記オーガ13は、上下方向の縦筒14と、該縦筒14の上端側を基端部とし且つ該基端部から先端部に向かって一直線状に延出された排出筒16とを有している。
【0023】
前記排出筒16の先端部には、グレンタンク6からの穀粒を下方に排出する排出部16aが設けられている。この排出筒16は、その基端側を支点として全体が上下揺動(昇降)可能であるとともに、縦筒14の軸回りに全体が左右揺動(左右旋回)可能である。この昇降及び左右旋回によって、排出部16aの平面位置及び高さを調整し、穀粒の排出箇所を適宜変更調整する。
【0024】
また、このグレンタンク6は、後端部側の図示しない上下方向の軸を支点として、左右回動可能に、機体フレーム2a側に支持され、キャビン4の後方側を開放させる開放姿勢と、キャビン4側の真後ろ側に収容される収容姿勢と切換可能に構成されている。グレンタンク6は、刈取作業時やその他の通常時には収容姿勢に切換えられる一方で、メンテナンス時には開放姿勢に切換えられる。
【0025】
図4図5は、キャビン及びその周辺の左側断面図及び背面図である。上記キャビン4は、ルーフ19によって、機体フレーム2a上に設置された操縦部21の上方を覆うとともに、該操縦部21の四方を透明なパネルによって囲繞している。さらに詳しく説明すると、キャビン4の右側面には出入口が開口形成され、この出入口には開閉扉22が開閉自在に設けられている。
【0026】
操縦部21は、オペレータが着座する座席24と、該座席24の前方の低い位置に形成されたフロアステップ(床面)21aと、該座席24の平面視で床面21aよりもさらに前方に配置されたマルチレバー26及び各種設定等を行うタッチパネル27と、前記座席24の側方に配置された変速レバー28とを有している。
【0027】
前方を向いたオペレータは、座席24に着脱するか、或いはフロアステップ21aに起立した状態で、変速レバー28による揺動操作によって、前後進切換と、前進走行時又は後進走行時の変速を行い、マルチレバー26の左右方向への揺動操作によって、前進走行中又は後進走行中の左右旋回を行い、マルチレバー26の前後方向への揺動操作によって、前処理部3を昇降させる。
【0028】
また、オペレータは、オーガ13の左右旋回及び昇降や該オーガ13による穀粒排出の有無の切換等の操作も可能である。
【0029】
該構成の操縦部21(キャビン4)の下方(さらに具体的には座席24の後方斜め下方)には、各部を駆動させる動力を発生させるエンジン29が設置されている。このエンジン29は、さらに具体的にはディーゼルエンジンであり、このエンジン29の動力は、左右のクローラ式走行装置1L.1R、前処理部3及び脱穀装置7等の各部に伝動され、該各部を駆動させる。また、このエンジン29へのエヤの吸気や、該エンジン29からの排気ガスの排出は、キャビン4の背面側のスペースを利用して行う。
【0030】
次に、図1乃至図5に基づき、前記エンジン29及びその周囲の構成を説明する。
【0031】
前記座席24の後方斜め下方(操縦部21の下方)には、エンジンルーム31が形成され、このエンジンルーム31における機体フレーム2a上には、防振装置32を介して、エンジン29が設置され、エンジンルーム31における前記エンジン29の後側には、機体フレーム2aから上方に一体的に突出形成された支持フレーム33が配置され、このエンジンルーム31の外側側方(具体的には、右側方)は着脱自在なエンジンカバー30によって開閉可能にカバーされている。
【0032】
前記エンジン29の上方近傍には、長手方向が走行機体2の幅方向である横方向に向けられた状態(横置きされた状態)のエヤクリーナ34が配置されている。前記エンジン29の上方における該エヤクリーナ34の真後ろ側には、所定の間隔を空けて、長手方向が上記横方向に向けられた状態(横置きされた状態)の粒子状物質除去装置(第1浄化部)36が配置されている。前記エヤクリーナ34の後方斜め上方且つ粒子状物質除去装置36の前方斜め上方には、所定の間隔を空けて、長手方向が上記横方向に向けられた状態(横置きされた状態)の窒素酸化物浄化装置(第2浄化部)37が配置されている。
【0033】
ちなみに、エヤクリーナ34と、上下に並べて配置された粒子状物質除去装置36及び窒素酸化物浄化装置37とは、エンジンルーム29内に収容されるようにして、前記支持フレーム33に支持されている。
【0034】
前記粒子状物質除去装置36は、DPF(登録商標)よって構成される。DPFは、上記排気ガス中に含まれる煤等の粒子状物質(PM)を補足する補足フィルタを有している。通常、DPFは、DOCと捕捉フィルタとが一体化される。DOCは、三元触媒であって、エンジン29から排出された排気ガス中に含まれる有害物質(具体的には炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物)を酸化・還元反応によって浄化するように構成されている。そして、DOC及び捕捉フィルタが一体化されたDPFは、三元触媒による酸化・還元反応によって浄化された排気ガス中のPMを捕捉フィルタによって捕捉するように構成されている
【0035】
この粒子状物質除去装置36は、排気側エンジン接続管38によって、エンジン29と接続されている。
【0036】
具体的には、粒子状物質除去装置36と、その前方に配置されたエヤクリーナ34とが、背面視で、互いに上記横方向の位置がずれるようにオフセット配置される。言換えると、エヤクリーナ34が、粒子状物質除去装置36に対し、背面視で上記横方向の一方側(オフセット側)である機体の左右外側(具体的には右側)にずらして配置される。
【0037】
該配置構成によって、エヤクリーナ34のオフセット側部分(走行機体2の左右外側部分であって図示する例では右側)の真後ろには、粒子状物質除去装置36が存在しない配管スペースS1が形成されるとともに、粒子状物質除去装置36の上記オフセット側と反対側(非オフセット側)の部分(走行機体2の左右内側部分であって図示する例では左側)の前方には、エヤクリーナ34が存在しない配管スペースS2が形成される。
【0038】
前記粒子状物質除去装置36の正面における配管スペースS2に接する側には、エンジン29からの排気ガスを導入する導入部36aが形成される。一方、前記粒子状物質除去装置36の上面におけるオフセット側部分(走行機体2の左右外側部分であって図示する例では右側)には、該粒子状物質除去装置36によって浄化した排気ガスを導出する導出部36bが形成される。
【0039】
前記排気側エンジン接続管38は、上記配管スペースS2を利用して、該エンジン29の上部且つ前部における前記非オフセット側部分(走行機体2の左右内側部分であって図示する例では左側部分)に形成された排気マニホールド(排気部)29aと、記粒子状物質除去装置36の導入部36aとの間に配管されて両部分を接続する。このように少なくとも一部(図示する例では大部分)が配管スペースS2に配管された排気側エンジン接続管38は、後方に向かって斜め上方に延出される。
【0040】
ちなみに、粒子状物質除去装置36は、捕捉フィルタが目詰まりを起こし、粒子状物質を補足する機能が低下した場合、前記エンジン29から高温の排気ガスを排出させ、この高温の排気ガスによって、補足フィルタに付着した付着物を燃焼させ、該補足フィルタの機能を再生するフィルタ再生の処理を行うことが可能である。この処理は、補足フィルタの下流と上流の所定以上の圧力差の検出等によって、目詰まりを認識した場合に、ECU等のマイコンによって、自動的に行われるようにしてもよい。
【0041】
前記窒素酸化物浄化装置37は、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)であり、上記横方向位置が、上記粒子状物質除去装置36と略一致している。この窒素酸化物浄化装置37は、アンモニアが窒素酸化物を還元して窒素ガス及び水になることに着目し、尿素タンク35a(図1参照)に溜めた尿素を排気ガス中に噴射してアンモニアガスを生成し、このアンモニアガスによる酸化によって、窒素酸化物を還元して浄化を行う。ちなみに、この尿素タンク35aは、機体フレーム2a上において、グレンタンク6側に配置されている。
【0042】
この窒素酸化物浄化装置37は、エンジンルーム31内において、該窒素酸化物浄化装置37の真後ろ側に配管された接続管39によって前記粒子状物質除去装置36に接続されている。
【0043】
窒素酸化物浄化装置37の背面における非オフセット側部分(走行機体2の左右内側部分であって図示する例では左側部分)には、粒子状物質除去装置36によって浄化された排気ガスが導入される前後方向の導入部37aが形成される。一方、窒素酸化物浄化装置37の上面におけるオフセット側部分(走行機体2の左右外側部分であって図示する例では右側部分)には、自身で浄化した排気ガスを導出する上下方向の導出部37bが形成される。
【0044】
前記接続管39は、上記前記粒子状物質除去装置36の導出部36bと、前記窒素酸化物浄化装置37の導入口37aとの間に配管されて両部分を接続している。この接続管39は、上記導出部36bから上方に延びる縦管(縦部)39aと、縦管39aの上端部から上記横方向における非オフセット側に延びる横管(横部)39bとを有している。
【0045】
この横管39bの非オフセット側端部が上記導入部37aに接続され、該横管39bのオフセット側部分には尿素タンク35aからの尿素を該接続管39内に導入する尿素管35bの端部が接続されている。すなわち、窒素酸化物浄化装置37に導入される前の排気ガス中に尿素が混合される。
【0046】
窒素酸化物浄化装置37の上記導出部37bからは、上方且つ後方に向かってテールパイプ(排気管)41が延出されている。このテールパイプ41の延出側端部である上端部には、前記窒素酸化物浄化装置37によって窒素酸化物の浄化が完了してクリーンになった排気ガスを外部に排出する排気口41aが、排出方向を後方斜め上方に向けた状態で、開口形成されている。この排気口41aは、キャビン4の後方におけるグレンタンク6の直上に配置形成されている。言換えると、テールパイプ41は、平面視で、グレンタンク6と重複する位置まで後方に突出形成されている。
【0047】
また、前記テールパイプ41は、前記窒素酸化物浄化装置37側から上方に向かって後方且つ左右外側(右側)に傾斜し、さらに、その延出側端部は、前記傾斜した部分に対して左右内側且つ下方に屈曲されて後方斜め上方を向いて排気口41aを構成している。この排気口41aは、背面視でキャビン4の左右外側(具体的には右側)の端部側に位置している。
【0048】
上述した排気側エンジン接続管38、粒子状物質除去装置36、接続管39、窒素酸化物浄化装置37及びテールパイプ41によって、排気ガスを浄化する排気側浄化装置42が構成される。
【0049】
一方、エンジン29に吸気されるエヤを浄化する吸気側浄化装置43は、排気口41aと左右に隣接させた状態で配置され且つエヤの吸気部となるプレクリーナ44と、上述のエヤクリーナ34と、該エヤクリーナ34と前記プレクリーナ44とを接続する吸気管46と、該エヤクリーナ34と前記エンジン29とを接続する吸気側エンジン接続管47とを備えている。
【0050】
前記プレクリーナ44は、排気口41aに対して、走行機体2の左右内側(具体的には、左側)に近接させて配置されている。このプレクリーナ44は、外部からのエヤを吸気する際、該吸気に形成される渦状の気流によってエヤ中に含まれる大きな異物を分離する構造を有している。
【0051】
前記吸気管46は、プレクリーナ44から真下に向かって延びる縦部46aと、該縦部46aの下端側から下方に向かって前方且つ左右内側(左側)に傾斜して延びる傾斜部46bと、該傾斜部46bの下端側から真下に向かって延びる縦部46cと、該縦部46cの下端側から上記横方向の非オフセット側に向かって伸びる横部46dとを一体的に有している。
【0052】
前記吸気管46の縦部46a及び傾斜部46bは、前記テールパイプ41の後方に配管され且つ背面視で該テールパイプ41とクロスしている。
【0053】
前記エヤクリーナ34は、上述の配置構成によって、その一部(具合的には非オフセット側部分)が背面視で粒子状物質除去装置36とラップしている。エヤクリーナ34における背面視で粒子状物質除去装置36とラップする部分の背面側に吸気したエヤを導入する導入部34aが形成されている。一方、エヤクリーナ34の非オフセット側の側部には、自身で浄化したエヤを導出する導出部34bが形成されている。
【0054】
また、このエヤクリーナ34は、交換可能なフィルタ等のエレメントによる濾過作用により、吸気管46から導入されるエヤ中の異物を除去するように構成されている。このエヤクリーナ34によって除去される異物は、プレクリーナ44によって除去される異物よりもサイズが小さくなっている。
【0055】
ちなみに、このエヤクリーナ34は、エンジン29の冷却水を冷やすラジエータ48及び該ラジエータ48側を通過させてエンジン29側にエヤを取込む冷却ファン49の真上側に配置されている。この冷却ファン49は、上記横方向のオフセット側が送風方向上手側になり、非オフセット側が送風方向下手側になる。
【0056】
そして、エヤクリーナ34の後方斜め上方に窒素酸化物浄化装置37が配置され、さらにその後方に接続管39及び粒子状物質除去装置36が配置され、該エヤクリーナ34の真上側は少なくとも一部が開放されているため、冷却ファン49によって流動する冷却風がこのエヤクリーナ34を通過して真上側に流動し、該エヤクリーナ34を効率良く冷却する。また、このエヤクリーナ34は、粒子状物質除去装置36、窒素酸化物浄化装置37及び接続管39よりも上記送風方向上手側に位置し、冷却風が効率的に吹き当てられる。
【0057】
さらに、上述した冷却ファン49による冷却風は、エンジンルーム31内においてエヤクリーナ―34の略同一高さで真後ろ側に間隔を空けて配置された粒子状物質除去装置36と、エヤクリーナ―34と粒子状物質除去装置36との間の空間の真上側に間隔を空けて配置された窒素酸化物浄化装置37と、該エヤクリーナ34との間を通過して上方の流動するため、エヤクリーナ34と併せて、粒子状物質除去装置36及び窒素酸化物浄化装置37も効率的に冷却することも可能になる。ちなみに、該配置構成によって、粒子状物質除去装置36及び窒素酸化物浄化装置37は、エンジンルーム31内のエンジン29から離れた側に位置した状態になる。
【0058】
このような冷却構造によって、エヤクリーナ34、粒子状物質除去装置36、窒素酸化物浄化装置37側に設置される各種センサ類が排気ガスの熱によって破損することも防止される。
【0059】
前記吸気管46の横部46dのオフセット側端部が、エヤクリーナ34の導入部34aに接続固定される。この吸気管46の少なくとも一部(縦部46c及び横部46dの一部)は、上述した配管スペースS1を通過するように配管される。
【0060】
前記吸気側エンジン接続管47は、エヤクリーナ34の導出部34bと、エンジン29の上面における上記横方向の中央部分に形成された吸気部29bとの間に配管され、両部分を接続している。この吸気側エンジン接続管47は、少なくともその一部が上述した配管スペースS2を通過するように配管される。ちなみに、排気側エンジン接続管38は、吸気側エンジン接続管47よりは非オフセット側に配管される。
【0061】
以上のような配管構造によれば、エヤクリーナ34の上方に配置されたプレクリーナ44から外部のエヤを吸気し、該プレクリーナ44で浄化されたエヤは、吸気管46を介して、エヤクリーナ34に導入される。エヤクリーナ34によって浄化されたエヤは、吸気側エンジン接続管47を介して、吸気部29bからエンジン29に導入される。
【0062】
また、横置きにされたエヤクリーナ34、粒子状物質除去装置36及び窒素酸化物浄化装置37と、主要部分である横管39bが上記横方向を向いた接続管39とが、コンパクトにエンジンルーム31内に収容される。
【0063】
また、排気側エンジン接続管38及び吸気側エンジン接続管47も、配管スペースS2を利用して、エンジンルーム31内に効率よく配管される。
【0064】
さらに、テールパイプ41と、プレクリーナ44と、吸気管46と、接続管39の縦管39a(接続管39の粒子状物質除去装置36との接続部分)とが、走行機体2の上記横方向の一方側であるオフセット側(走行機体3の左右外側であって図示する例では右側)に集中的に配置されるため、効率的な配置が可能になる。
【0065】
また、テールパイプ41及び吸気管46も、下側の大部分がエンジンルーム31内に配管され、該エンジンルーム31の上方からエヤの吸気や排気ガスの排気を行う構造を有している。
【0066】
また、粒子状物質除去装置36の真後ろ側近傍と、接続管39の真後ろ側近傍とには、それぞれエンジンルーム31の後壁の一部を構成し且つ機体フレーム2a側(支持フレーう31)に着脱可能に取付けられるカバー体51,52がそれぞれ配設されている。
【0067】
これらのカバー体51,52は、複数(多数)の通気孔が穿設されるか、或いは網状に形成されることにより、通気性が確保され、粒子状物質除去装置36及び接続管39の温度上昇が抑制される。そして、これらのカバー体51,52を取外せば、粒子状物質除去装置36及び接続管39へのアクセスが可能になり、メンテナンス性が向上する。
【0068】
なお、DPFによって構成された粒子状物質除去装置36の代わりに、第1浄化部として、上述したDOCのみを設けてもよい。
【0069】
また、吸気管46の縦部46cを、該吸気管46の他の部分と比べて径が小さい吸気ホースによって構成し、この縦部46cと、排気ガスによって高温になり易い粒子状物質除去装置36及び窒素酸化物浄化装置37との間隔を空けるようにしてもよい。この場合、縦部46cと傾斜部46bとの接続部分は該縦部46cに向かって次第に径が小さくなる形状に成形され、縦部46cと横部46dとの接続部分は該横部46dに向かって次第に径が大きくなる形状に成形される。
【0070】
また、吸気管46及び排気管41が背面視で交差させないように両者を配管してもよい。この場合、走行機体2の左右外側に左右に並べて配置されたプレクリーナ44及び排気口41aについて、並び順が逆になり、排気口41aの左右外側にプレクリーナ44が配置された状態になる。
【0071】
次に、図6及び図7に基づき、コンバインの別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0072】
図6は、コンバインの別実施形態の構成を示す要部斜視図である。本形態では、排気管41を、排気口41aがグレンタンク6の上面側において真後ろ側に向くように配管し、この排気管41の排気口41a側部分からさらに後方に延びる前後方向の延長排気管53を配管している。
【0073】
延長排気管53は、その前後の各端部が開放され且つ自身の径が排気管41の径よりも大きくなるように形成されている。この延長排気管53の前端の開口部分には、排気管41の排気口41a側の端部が嵌合して挿入される一方で、後端の開口部分からは該排気管41からの排気ガスが排気される。
【0074】
図7は、延長排気管の支持構造を示す背断面図である。この延長排気管53は、左右一対の固定具54、54を一組として、前後複数組(図示する例では、2組)の固定具54,54によって、グレンタンク6の上面側近傍に支持固定されている。各固定具54は、グレンタンク6の上面及び延長排気管53の周面にそれぞれ当接する背面視でL字状に形成されている。
【0075】
ちなみに、この延長排気管53とグレンタンク6の上面との間には、該延長排気管53から熱がグレンタンク6側に伝わるのを防止するスペースが形成されている。
【0076】
また、グレンタンク6の外側の側壁56の上端部を上方に延設されてカバー部56aを形成している。カバー部56aは、中途部及び上部が上方に向かって左右内側に傾斜し、延長排気管53の外側側方及び上側をカバーし、藁屑等が延長排気管53に接触するのを防止している。
【0077】
該構成のコンバインによれば、排気ガスが外部に排出される空間を、吸気側浄化装置43から後方に大きく離して配置されるため、排気ガスの影響をさらに低減できる。
【0078】
次に、図7乃至図9に基づき、コンバインの別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0079】
図8は、別実施形態に係る延長排気管の構成を示す平面図である。本形態では、延長排気管53を、固定筒57と、該固定筒57の前方に配置され且つ自身の軸方向に移動可能な可動筒58とによって構成している。
【0080】
固定筒57及び可動筒58は、前後一直線状に形成され、共に前後両端側が開放されている。この固定筒57は、可動筒58の後端部が嵌合挿入可能なように、該可動筒58に比べて径が大きく設定される。この可動筒53は、自身の開放された前端部に上述の排気管41の排気口41a側の端部を嵌合して挿入可能なように、該排気管41よりも径が大きくなるように形成されている。
【0081】
可動筒58は、自身の前後移動中、その後端部が、常時、固定筒57の前端部の開口部に嵌合して挿入された状態で保持される。一方、排気管41の排気口41a側の端部は、可動筒58の後方位置への移動によって可動筒58の前端側の開口部から抜けた非接続状態に切換えられ、可動筒58の前方位置への移動によって可動筒58の前端側の開口部に嵌合して挿入される接続状態に切換えられる。
【0082】
ちなみに、可動管58は、グレンタンク6の上面側に固定された支持具59によって、自身の軸方向に移動可能に支持されている。支持具59は、グレンタンク6の上面に固定される固定部61と、可動管58を軸方向にスライド可能に嵌合して挿入するように前後に並べられた複数(図示する例では2つの)の環状の支持部62,63とを一体的に有している。
【0083】
この支持具59側には、可動筒58を接続状態への切換側である前方に弾性的に付勢する引張スプリング等の弾性部材64が配置されている。
【0084】
以上のような非接続状態と接続状態との切換によって、グレンタンク6の上述した収容姿勢から開放姿勢への切換も可能になる。ちなみに、グレンタンク6は、開放姿勢から収容姿勢への切換に伴い、図示しないロック機構が自動的にロック状態に切換えられし、グレンタンク6が収容姿勢でロックされる。このロック状態を解除するロック解除レバー(ロック解除操作具)66が、グレンタンク6の前部上面側に設けられている(図9参照)。このロック解除レバー66の揺動操作によって、ロック機構のロックが解除される解除状態に切換えられる。
【0085】
このロック状態から解除状態への切換に連動して、接続状態から非接続状態への切換が行われるように、連係機構67によって、ロック解除レバー66と可動筒58とを機械的に連結させてもよい。図示する例では、この連係機構67はワイヤから構成され、このワイヤ67の端部を可動筒58の取付座部58aに取付け、このワイヤ67の調整機構68を、上述した一の支持部62に設けている。
【符号の説明】
【0086】
2 走行機体(機体)
21 操縦部(運転席)
31 エンジンルーム
29 エンジン
42 排気側浄化装置
43 吸気側浄化装置
36 粒子状物質除去装置(第1浄化部,DPF)
37 窒素酸化物浄化装置(第2浄化部,尿素SCR)
39 接続管
34 エヤクリーナ
49 冷却ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9