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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】懸垂型ドローン
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220216BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220216BHJP
   B64C 25/36 20060101ALI20220216BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220216BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220216BHJP
   B62D 57/04 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B64C39/02
E01D22/00 A
B64C25/36
B64C27/08
B64D47/08
B62D57/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017212532
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019084868
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】512326931
【氏名又は名称】株式会社移動ロボット研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 栄次
(72)【発明者】
【氏名】野口 宏実
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】特開2017-61298(JP,A)
【文献】特開2017-124689(JP,A)
【文献】特開2017-089211(JP,A)
【文献】特開2016-078466(JP,A)
【文献】特開2016-043726(JP,A)
【文献】特開2017-001505(JP,A)
【文献】特開2000-043503(JP,A)
【文献】特開昭62-023880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/34-25/36,
27/08,39/02
B64D 47/08
B62D 57/04
B60B 19/00
E01D 22/00
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、ロータ、点検用の検査機器を備えたドローンであって、
本体部は、飛翔状況確認用にレーザ距離計とカメラ、下部に脚、周囲に複数のロータ、上部に建造物の鉄部に磁気吸着して走行する磁石車輪と点検用カメラが装着されており、
点検用カメラを先端に搭載したセンサ取付杆と磁石車輪を取り付ける車輪取付杆が上下に交差して本体上部に取り付けられており、センサ取付杆は車輪の先端よりも下方に配置されており、
磁石車輪は、2個以上であって、一縦列に配置されており、走行駆動機器、操行制御機器、走行用カメラ、レーザセンサを備えており、映像と周辺物体との離間距離に基づいて操行制御できることを特徴とする懸垂型ドローン。
【請求項2】
検査機器は、操作可能であることを特徴とする請求項記載の懸垂型ドローン。
【請求項3】
建造物の鉄部は、建造物の下面の鋼板、H型鋼、ボックス型鋼、鋼製桁材、橋脚の鉄部、トンネル内面鉄部のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の懸垂型ドローン。
【請求項4】
磁石車輪は、車軸と、車軸の中央から両側に向かって磁石挿入孔を備えたゴム製リング、ゴム製リングに挿入された磁石、磁石固定板、ヨーク、外側面板が配置されており、
ゴム製リングは、薄厚ゴム製リングが積層された構成であり、
ヨークは、薄厚ヨーク板が積層された構成であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
【請求項5】
ドローンは、有線コントロールであって、ケーブルは、制御用情報ライン、駆動用電力ライン、測定情報ラインであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
【請求項6】
検査機器は、撮影装置、マイク、測距計、赤外線センサの内少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
【請求項7】
建造物は、高架、橋梁、トンネル、建物庇、倉庫、運動施設、塔状建築物のいずれかであることを特徴とする請求項1~いずれかに記載の懸垂型ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などの老朽化した社会設備点検に適したドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
日本などの先進国では、橋梁や高架の老朽化対策が求められており、特に下面部分の検査手段の検討が求められている。
検査手段は、下面を、下からの目視、高所作業車などのムーヴによって接近した目視、あるいは吊り足場による目視、あるいは、撮影などが用いられている。橋上、高架道路上から橋梁点検車で点検する場合は交通規制が必要であったりして、準備や後片付けに大きな労力が必要であった。
近頃は、撮影手段を搭載したドローンの採用が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平3-260206号公報)では、車両の屋上に、昇降装置を前後方向に移動可能に搭載し、この昇降装置の上端部に設けた基台に、水平方向に折り曲げ可能にしたリンク機構の基端部を水平方向に回動可能に連結し、このリンク機構の先端部に、センサ台を昇降及び水平方向に回転可能に設け、このセンサ台に、レーザヘッドから入射されたレーザ光を所定の振り幅で上方へ向けて走査するレーザスキャナと、このレーザスキャナにて走査されたレーザ光の反射光量を検出する光検出センサからなるレーザ計測装置を支持したことを特徴とする高架橋点検装置が提案されている。
特許文献2(特開2017-95959号公報)には、橋梁などの全体にワイヤを回して、下面側に検査機器を取り付けた点検装置が開示されている。そして、この文献には、ドローンの活用には問題点があるとして次のように指摘している。
構造物の外観点検を行う場合には、作業者やカメラを点検対象面の近くに配置することが困難である場合がある。このような場合には、点検用の足場などを構築することがあるが、足場の構築は時間と労力を要する。また、水上の構造物のように、足場を構築することがそもそも困難であることもあり得る。そこで、近年、ドローンと呼ばれる遠隔操作や自律制御によって飛行できる飛行体などを構造物の点検に利用することが検討されている。
カメラなどを搭載した飛行体を飛行させることにより、作業者などが容易に近づけない箇所の点検を、足場などを構築する必要なく行うことができると考えられている。
しかし、飛行体は、雨や風といった天候の影響により、飛行中の姿勢を安定させることが難しい。従って、構造物における点検位置の精度が低下しやすい。また、構造物に囲まれたような場所では、GPSといった衛星測距システムによる位置精度も低下しやすい。これらのような事情により、飛行体による構造物の点検には種々の制約が存在すると考えられている。一方、特許文献2に開示の点検用ロボットは、構造物に対して物理的に取り付けられるものであるので、飛行体と比べて姿勢の安定性が高くなり、点検位置の精度も向上させやすく、点検用ロボットの運用には、飛行体の操縦のように高い熟練度を必要とせず、さらに、複数のワイヤアームによって本体部が吊り下げられているので、本体部4が落下を防止することが容易であり、安全性が高い。
特許文献3(特開2017-95980号公報)には、車両が走行する橋梁の構成部分から発せられた音を取得する音取得部と、前記音取得部が取得した音を解析して前記構成部分の固有振動数を検出する固有振動数検出部と、前記固有振動数検出部が検出した固有振動数と判定基準振動数とを比較して、前記構成部分に関する異常を判定する判定部とを備えた、音による橋梁点検装置が開示されている。
【0004】
特許文献4(特開2017-138162号公報)には、飛行しながら構造物の画像撮影をする、点検システムに利用するドローンが開示されている。
特許文献5(特開2017-54486号公報)には、赤外線カメラを備えた検査用ドローンが開示されている。
特許文献6(特開2017-89211号公報)には、吸着固定用の磁石と移動用のローラ及び吸着解除用の梃子を備えた点検用ドローン装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-260206号公報
【文献】特開2017-95959公報
【文献】特開2017-95980号公報
【文献】特開2017-138162号公報
【文献】特開2017-54486号公報
【文献】特開2017-89211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高架、橋梁などの既設施設点検用に適したドローンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
安定した点検用データを収集できる高架や橋梁の下面の鉄部に磁気で吸着して走行する磁石車輪を備えた懸垂型ドローンである。
【0008】
本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)本体部と、ロータ、点検用の検査機器を備えたドローンであって、
本体部は、飛翔状況確認用にレーザ距離計とカメラ、下部に脚、周囲に複数のロータ、上部に建造物の鉄部に磁気吸着して走行する磁石車輪と点検用カメラが装着されており、
点検用カメラを先端に搭載したセンサ取付杆と磁石車輪を取り付ける車輪取付杆が上下に交差して本体上部に取り付けられており、センサ取付杆は車輪の先端よりも下方に配置されており、
磁石車輪は、2個以上であって、一縦列に配置されており、走行駆動機器、操行制御機器、走行用カメラ、レーザセンサを備えており、映像と周辺物体との離間距離に基づいて操行制御できることを特徴とする懸垂型ドローン。
(2)検査機器は、操作可能であることを特徴とする(1)記載の懸垂型ドローン。
(3)建造物の鉄部は、建造物の下面の鋼板、H型鋼、ボックス型鋼、鋼製桁材、橋脚の鉄部、トンネル内面鉄部のいずれかであることを特徴とする(1)又は(2)記載の懸垂型ドローン。
(4)磁石車輪は、車軸と、車軸の中央から両側に向かって磁石挿入孔を備えたゴム製リング、ゴム製リングに挿入された磁石、磁石固定板、ヨーク、外側面板が配置されており、
ゴム製リングは、薄厚ゴム製リングが積層された構成であり、
ヨークは、薄厚ヨーク板が積層された構成であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
(5)ドローンは、有線コントロールであって、ケーブルは、制御用情報ライン、駆動用電力ライン、測定情報ラインであることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
(6)検査機器は、撮影装置、マイク、測距計、赤外線センサの内少なくとも1種類であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の懸垂型ドローン。
(7)建造物は、高架、橋梁、トンネル、建物庇、倉庫、運動施設、塔状建築物のいずれかであることを特徴とする(1)~(6)いずれかに記載の懸垂型ドローン。
【発明の効果】
【0009】
1.本発明の懸垂型ドローンは、本体部の上面に磁石車輪を取り付けることにより、高架、橋梁などの裏面に磁気吸着して走行して既設施設を点検することができる。本体上部に磁石車輪を設けたので、ドローン飛翔姿勢のまま磁気吸着することができ、磁気吸着力が弱くなったときや磁気吸着が利かなくなったときにはロータの推力を利用して、接触を維持あるいは落下を防止することができる。
特に、アクセスが困難な裏面のH型鋼などに磁気吸着して走行することができるので、ゴンドラや高所作業車などを用いる必要がない。
2.本発明は精度の良い測定データを得ることができる。磁気吸着しているので、直に接触してデータを採取できる。測定箇所までの距離と平面的位置が特定でき、得られるデータの精度は安定し、隣接データとのつなぎ合わせも容易である。例えば、橋脚間にH型鋼などの桁材を渡し、床版を敷設した高架道路などでは、橋脚を原点としてレーザ距離計でドローンの位置を特定でき、桁材であるH型鋼によって床版までの距離も特定できるので、得られた測定データの位置と精度は一定している。
ドローンを飛翔させながら、測定する方法も検討されているが、飛翔姿勢、対象との距離の変動、隣接データとのつなぎ合わせなど、データの後処理が難しいという課題がある。
本発明の懸垂型ドローンによって、作業員による高所作業を必要とせず、高所作業用の仮設足場も必要とせずに、比較的強い風が吹いても、路床の床版の詳細なひび割れ画像などが取得可能となる。
3.点検用検査機器は、モニタリングしながら操作して、重点的に得たい箇所の点検データを収集することができる。磁石車輪を走行制御して測定場所へ誘導し、検査機器の姿勢をコントロールして点検場所の画像などのデータを採取することができる。
飛翔型のデータ採取方法では、ラフな測定後、さらにピンポイントでのデータ採取は困難である。
4.本発明の懸垂型ドローンが特に適用できる箇所は、建造物の下面の鋼板、H型鋼、ボックス型鋼、鋼製桁材、橋脚の鉄部、トンネル内面鉄部などで老朽化対策が求められる建造物の鉄部である。地上部からのアクセスが困難な場所や、足場などの仮設と撤去にかける時間が少ない場所などに適している。
5.磁石車輪は、走行駆動機器及び操行制御機器を備えており、磁気吸着後自力で吸着走行及び操行ができる。
6.ドローンに設置される磁石車輪を2輪以上、1縦列に設置することにより、走行に適した平面が狭くても走行できる。操行制御も1輪で済む。
例えば、4輪の場合は、操行制御する平行に配置された2輪の同期をとる機構が必要になり、複雑で重くなる。走行制御も同調しないと傾くので、精緻な調整が必要になる。
7.磁石車輪は、車軸に積層された磁石挿入孔を備えたゴム製リング、磁石挿入孔に挿入された磁石、磁石固定板、積層されたヨーク、外側面板で構成されている。この構成によって、磁石車輪は、磁力の調整、あるいは、磁石車輪の径を調整することができる。ドローンの重量や搭載する計測機器の重量や大きさに応じてこれらの調整を行う。
ゴム製リングの外面が通常接触面となるので、走行面となる塗装などしてある鉄部材の表面処理を傷つけることがない。また、ヨークが直接に走行鉄部材に接触しないよう小さい径とすると、同様に損傷防止となるとともに、段差での空転防止となる。外側面板と磁石固定板をヨークより大きく、ゴム製リングよりも小さくすると、ゴム製リングがへこんでも外側面板と磁石固定板が被吸着鉄部材に接触するので、ヨークが鉄部材に接触することを回避できる。調査対象を損傷することなく安定した走行ができ、精度の良い測定ができる。
8.ドローンは、有線あるいは無線でコントロールすることができる。本発明のドローンが主にアクセスする高架や橋梁である建造物の高さは、数十メートル以下の高さであって、それほど高い場所でもなく、人間が真下に入ることができる場所が多い。このような場所では有線コントロールが適している。
地上に操縦装置、点検用機器の操作用機器、バッテリーを配置し、これらの機器用のラインを一つのケーブルにまとめてドローンに繋ぐ。
これによって、地上からモニタリングしながら操作することができるとともに、重量が重いバッテリーをドローンに積む必要がなく、磁石車輪の磁気吸着負担を軽減することができる。また、ドローンの活動時間の制限がなくなる。仮に、磁気吸着中にバッテリー切れになると、ドローンは吸着した状態となって、回収が困難になる。
9.ドローンに搭載する検査機器は、カメラなどの撮影装置、集音用マイク、レーザ距離計などの測距計、赤外線センサなどである。
10.本発明の懸垂型ドローンが主に点検対象とする建造物は、高架、橋梁、トンネル、建物庇、倉庫、運動施設、塔状建築物などである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】懸垂型ドローンの例(平面)を示す図
図2】懸垂型ドローンの例(側面)を示す図
図3】磁石車輪の概略図
図4】磁石車輪の例を示す図
図5】駆動部付き磁石車輪の例
図6】桁材(H型鋼)磁気吸着懸垂型ドローンによるコンクリート床版撮影状況を示す模式図
図7】懸垂型ドローンの試験機を示す図
図8】試作機に取り付けた自立走行用磁石車輪を示す図
図9】点検箇所の例(橋梁下面部)を示す図
図10】H型鋼材を桁材とする高架構造を点検する従来例及び高架道路の構造例
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、橋梁や高架などの老朽化した社会設備の下面などを点検する懸垂型のドローンである。建造物の鉄部に磁気吸着して走行する磁石車輪をドローン本体部の上部に装着した懸垂型ドローンである。
ドローンは、ロータが磁石車輪や点検用の検査機器と干渉しない配置であれば使用することができる。ロータは、本体下方に取り付けられているほうが適している。
点検用の検査機器は、吸着したドローンの上部にある走行床版の裏面に生じているひび割れなどを観測するので、ロータよりも上部で、磁石車輪の外径よりも低い位置に配置さることが好ましい。
【0012】
検査対象建造物は、高架、橋梁、トンネル、建物庇、倉庫、運動施設、塔状建築物などである。これらの建造物の下面の鋼板、H型鋼、ボックス型鋼、鋼製桁材、橋脚の鉄部、トンネル内面鉄部、大型建築物の高い天井部にある鉄部など、目視調査が困難な場所に磁気吸着して、点検作業を行う。
ドローンは、無線あるいは有線コントロールする。特に、有線コントロールでは、制御ラインのほか、駆動用電力ライン、点検機器ラインも一つのケーブルに束ねることができ、ドローンにバッテリーを積まずに、ドローンを軽量化できる。
検査機器は、撮影装置、マイク、測距計、赤外線センサなどである。
【0013】
<懸垂型ドローンの概略>
本発明の懸垂型ドローンは、本体部の上面に磁石車輪を取り付けることにより、高架、橋梁などの裏面に磁気吸着して走行して既設施設を点検する。本体上部に磁石車輪を設けたので、ドローン飛翔姿勢のまま磁気吸着することができ、磁気吸着力が弱くなったときや磁気吸着が利かなくなったときにはロータの推力を利用して、接触を維持あるいは落下を防止することができる。特に、アクセスが困難な裏面のH型鋼などに磁気吸着して走行することができるので、ゴンドラや高所作業車などを用いる必要がない。
直に、H型鋼材などに磁気接触してデータを採取するので測定箇所までの距離と平面的位置が特定でき、得られたデータの精度は安定し、隣接データとのつなぎ合わせも容易である。例えば、橋脚間にH型鋼などの桁材を渡し、床版を敷設した高架道路などでは、橋脚を原点としてレーザ距離計でドローンの位置を特定でき、桁材であるH型鋼によって床版までの距離も特定されており、得られた測定データの位置と精度が一定している。本発明で得られたデータの精度はバラツキの少ない良い測定データである。
試験データでは、1470万画素で0.2mmのひび割れを検出した。
ドローンを飛翔させなら得られたデータは、姿勢変化、対象との距離の変動などによって、データの質にバラツキがあって、得たデータの後処理が煩雑で難しい。
本発明の懸垂型ドローンによって、作業員による高所作業を必要とせず、高所作業用の仮設足場も必要とせずに、比較的強い風が吹いても、路床の床版の詳細なひび割れ画像などが取得できる。
走行駆動機器及び操行制御機器を備えた磁石車輪を用いると、磁気吸着後自力で吸着走行及び操行ができる。
また、マニュアル機能を付けると、点検用検査機器をモニタリングしながら操作して、測定場所へ磁石車輪を誘導し、検査機器の姿勢をコントロールして、点検場所の画像データを集中採取できる。
磁石車輪の走行制御では、1mm以内の移動精度を得た。
飛翔型のデータ採取方法では、ラフな測定後、さらにピンポイントへ誘導してデータ採取することは困難である。
【0014】
2輪以上の磁石車輪を1縦列に設置した懸垂型のドローンを開発した。橋桁などに用いられているH型鋼材のフランジは幅が狭い上、接合部に重ねて渡される添接板の端部では、添接板の厚み分の段差ができる。また、添接板はフランジとボルト止めされており、ボルトの頭が飛び出て凸凹になっている。このボルトは、フランジの中央部であるH型鋼のウェブ部分には設けられておらず、フランジの中央部は平坦になっている。一列縦列に磁石車輪を設置して、この狭い平坦部を走行する。
磁石車輪を1縦列にしたので、鉛直方向で姿勢が安定する。そして、風などの影響を受けて左右に振られても、傾いて風を逃がすことができる。傾いても、高架や橋梁の裏面に飛びでている桁材に磁気吸着しているので、桁間の凹部にロータや点検機器が入り込んで衝突するなどの事故は抑制でき、安全性が高い。
また、磁石車輪複数を設けることにより、一つの吸着が外れても、一気に脱落することがなく、ロータによってバックアップする余裕ができる。
さらに、並列に配置した4輪の場合は、操行制御する平行に配置された2輪の同期をとる機構が必要になり、複雑で重くなる。走行制御も等速回動しないと、走行方向が傾くので精緻な調整が必要になる。
ドローンには、飛翔中に用いるカメラ、衝突防止用のレーザ距離センサなどを取り付ける。
また、磁気吸着走行用に用いる、カメラ、距離計であるレーザセンサなどを取り付ける。
さらに、点検用の機器であるカメラなどの撮影装置、集音用マイク、レーザ距離計などの測距計、赤外線センサなどを点検項目に応じて搭載する。
【0015】
点検装置を装着した自走型の磁石車輪を設置した懸垂型のドローンでは、有線制御が適している。点検対象部位は、数十メートル以下の高架や橋梁であって、十分にケーブルを伸ばすことができる。地上に置いた操縦装置、点検用機器の操作用機器、バッテリーからドローンに接続するケーブルには、これらの機器用のラインを一つにまとめてドローンに繋ぐことができる。
これによって、地上からモニタリングしながら操作することができるとともに、ドローンの軽量化ができ、加えてバッテリーによる活動制限も無くなる。
磁石車輪の磁気吸着負担を軽減することもできるので、磁石車輪も軽量化できる。磁気吸着中にバッテリー切れになる心配がなく、バッテリー切れに伴いドローンが吸着した状態となって回収が困難になるリスクがなくなる。
試験用ドローンでは、点検用のカメラを搭載して6800gの懸垂型のドローンを開発した。ロータ長を含めて、1100mmで十分な飛翔性を得た。
【0016】
<磁石車輪>
本発明に用いる磁石車輪について説明する。
老朽化した橋梁、鉄道や道路用の高架、送電線用の鉄塔などの危険な点検作業を回避しつつ、効率がよく安全で精度が高い点検方法の開発が求められている。ドローン等を飛翔させて点検用情報を入手する方法も検討されているが、飛行姿勢は傾きや接近距離が一定しないので、安定した精度の良いデータの入手は困難であり、加えて、入手したデータの補正処理が煩雑である。
鉄部に磁気吸着して鉄製構造物の下面や垂直面の走行に適した磁石車輪を提案する。
この磁石車輪は、車軸の中央から両側に向かって、ゴム製リング、磁石固定板、ヨーク、外側面板を配置している。ゴム製リングには複数の磁石挿入用孔を設け、磁石挿入孔に、任意数の磁石が挿入されている。ゴム製リングに設けた孔に磁石を差し込んで固定可能としたので、接着などの磁石固定手段が不必要である。挿入する磁石の数を変更することもできる。磁石固定板には、ゴム製リングと同様の磁石挿入孔が設けられている。磁石固定板が左右両側に配置されていて、磁石が安定する。また、ゴム製リングは、H型鋼などの接合部に生じている段差をクッションとなって乗り越えることができる。ゴムは、天然ゴム、ウレタンなどの樹脂製ゴムを使用する。本例では、ウレタン製ゴムを用いている。
高架や橋梁の桁材にはH型鋼が使用されることが多い。H型鋼は図9(c)に模示するように、縦部材のウェヴWと平面材のフランジFで構成され、複数のH型鋼H1、H2を接続して桁材が構成されている。接続部には接合板Jがあって、ネジでフランジ部に接合されている。H型鋼の桁材には接合板(添接板)Jの厚さ分の段差が発生している。また、フランジ上面にある接合板Jの中央部には、H型鋼のウェヴがあるのでネジを設けることができず、磁石車輪が通過できる平らな部分は中央部dのみとなる。
本発明に用いる磁石車輪にはゴムリングがあるので、接合板の段差を乗り越え中央部を走行するのが容易である。
【0017】
この磁石車輪は、さらにゴム製リングとヨークを薄層板として、積層枚数を変更可能にすることにより、磁石車輪の幅を調整することができる。また、磁力も調整することができる。枚数調整によって磁石車輪の重量も調整することもできる。
また、直径の異なる薄層板を備えておくことにより、磁石車輪の直径も調整することができる。直径変更については、磁石固定板、外側面板も対応する径に応じて複数を備えておく。磁石固定板と外側面板には、例えば、ポリカーボネートなどの合成樹脂板を使用する。
この構成によって、走行路にある段差部や障害物の高さを乗り越えられる大きさの磁石車輪に容易に調整することができる。
なお、磁石車輪の直径は、ドローンなどに点検用の測定装置を取り付ける空間を確保するためにも重要になる。
【0018】
また、磁石車輪は、ゴム製リングを最大径、ヨークを最小径、磁石固定板と外側面板を中間径とすることにより、最小径であるヨークが直接吸着対象の鉄部に接触しない。
磁性部材としては、ヨークが被吸着面の鉄部に近接しているので、接触はしないものの、ヨークと、磁石固定板や外面板との径差は小さくして、被吸着面に接近するように設計する。
これらの径差によって、被吸着面である鉄部材を損傷することなくドローンが安定して走行できる。ゴム製リングの外面が通常接触面となるので、走行面となる塗装などしてある鉄部材の表面処理を傷つけることがない。また、ヨークが直接に走行鉄部材に接触しないよう小さい径とすると、同様に損傷防止となるとともに、段差での空転防止となる。外側面板と磁石固定板をヨークより大きく、ゴム製リングよりも小さくすると、ゴム製リングがへこんでも外側面板と磁石固定板が被吸着鉄部材に接触するので、ヨークが鉄部材に接触することを回避できる。
また、車軸に取り付けられる各構成部材を外側面板から車軸に向けてボルトで固定することにより、それぞれを個別に車軸に取り付けずに一体化でき、各部材の交換や調整が容易にできる。
そして、さらに駆動装置を磁石車輪に設ければ、ドローン本体側に備えてある駆動系を変更する必要がない。さらに、磁石車輪には、操行制御系を設け、磁石車輪の前方側にカメラとレーザセンサなどを配置して、周囲の状況及び障害物や走行した距離などを把握して、自律走行機能を付加することができる。
【0019】
磁石は、永久磁石を使用する。例えば、希土類磁石およびフェライト磁石、アルニコ磁石、Mn-Al-C磁石等の公知の永久磁石材である。希土類磁石としては、R-Fe-B系、R-C05系、R2017系(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上)がある。
例えば、R-Fe-B系の永久磁石(R:Nd,Pr等の希土類元素の1種以上)を使用できる。
ヨークは、公知の軟質磁性材料を使用する。例えば、公知の鉄鋼材料である、純鉄、軟鉄、炭素鋼や低合金鋼等の普通鋼、構造用の特殊鋼、工具鋼、フェライト系やマルテンサイト系のステンレス鋼等を挙げることができる。また、鋳鉄や鋳鋼等の公知の鉄系鋳物も挙げることができる。Mn-Zn系フェライト等の公知のソフトフェライトおよびパーマロイ等のFe-Ni系合金、コバール等のFe-Ni-Co系合金およびこれらの公知の軟質磁性材料粉末を熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂で結合させたボンド型の軟質磁性材料も使用することができる。
【0020】
この磁石車輪は、懸垂型のドローンの本体に取り付けて高架や橋梁等の裏面や鉄塔などの鉄材に磁力吸着して走行させると、測定センサと被点検部材との距離を安定させることができ、精度の良いデータを得ることができる。
特に、2つ以上の磁石車輪を縦列に配置すると、走行対象のH型鋼や鉄塔用の幅の狭い鉄鋼材に磁気吸着して走行するのに適している。走行場所の幅に応じて、ゴム製リングや、ヨーク用薄板の積層数を変更して磁石車輪の幅を調整できる。また、走行路に存在する突起物やセンサ装置に応じて、磁石車輪の径も変更できるので、調査対象に応じて柔軟に対応できる。そして、磁石車輪はゴム部材が走行用の鉄鋼材に接触するので、鉄鋼材の繋ぎ部にある接合板の段差部を容易に乗り越えることができる。
【0021】
磁石車輪に走行用モータと操舵用モータを取り付け、さらに、走行用カメラとレーザセンサを取り付けて、自律走行ができるように構成することができる。
モータ駆動用電源バッテリーをドローンに搭載することもできるが、現状ではバッテリーは重く、さらに、行動時間も制限される。これらのモータの動力を地上から、ケーブルで供給することによって、ドローン重量を軽減して、点検用機器の搭載余裕が発生する。また、磁石は永久磁石であるので、搭載バッテリーが切れると、ドローンは磁気吸着した状態となり、回収が困難になるが、地上から電源を供給すると、このような事故を抑制することができる。
【0022】
(磁石車輪の例1)
磁石車輪3の例を図3図4に示す。磁石車輪の概略を図3に、磁石車輪の例を図4に示す。
図3は外側面板を取り除いて分かり易くした磁石車輪3の斜視図である。
円盤状に形成されたゴム製リング110、磁石固定板120、ヨーク130、外側面板140が車軸190に装着されている。ゴム製リング110には、磁石挿入孔112、112、・・・が放射状に形成されており、この磁石挿入孔に磁石150が任意数挿入されている。
磁石150はゴム製リング110に設けられた磁石挿入孔112に挿入されて安定するので、磁石固定用の冶具は必要なく、磁石交換も容易で、使用する挿入孔の選択が容易である。
磁石車輪3の接触面は、ゴム面113となるので、H型鋼などの接合部に生じている段差を乗り越えるために必要なトラクションを発生させる。
【0023】
磁石車輪3の正面図(a)、側面図(b)、断面図(c)を図4に示す。
各部材の配置が断面図(c)に良く示されている。車軸190に対して、中央部から外側に向かって、円盤状の各部材が積層されている。薄厚ゴム製リング111が4枚中央部にあり、両側に向かって、薄厚ゴム製リング111より小さい径である磁石固定板120があって、その外側に磁石固定板120よりもやや小径の薄厚ヨーク板131が4枚あって、最外側に磁石固定板120と同径の外側面板140が積層されていて、外側面板140の車軸190寄りには、これらの積層体を車軸に固定するねじ193が取り付けられている。
この磁石車輪が被吸着面と接触する面は、最大径である弾力性のゴム製リングのゴム面113が外周面となる。
これらの径差によって、被吸着面である鉄部材を損傷することなくドローンが安定して走行できる。ゴム製リングの外面が通常接触面となるので、走行面となる塗装などしてある鉄部材の表面処理を傷つけることがない。また、ヨークが直接に走行鉄部材に接触しないよう小さい径とすると、同様に損傷防止となるとともに、段差での空転防止となる。外側面板と磁石固定板をヨークより大きく、ゴム製リングよりも小さくすると、ゴム製リングがへこんでも外側面板と磁石固定板が被吸着鉄部材に接触するので、ヨークが鉄部材に接触することを回避できる。
これらを鑑みて、ゴム面が圧縮された場合でも、鉄よりも柔らかい樹脂製の磁石固定板や外側面板が被吸着鉄部材面に接触するので、傷や段差部での空転を回避できる。
磁石150は、永久磁石であって、薄厚ゴム製リング111に設けられた磁石挿入孔112に挿入される。磁石固定板120にも、磁石が通過する挿入孔が設けられていて、磁石150は磁性体であるヨーク130に接触する。磁石固定板は、弾力性のあるゴム製薄板を狭圧して安定させる。磁石150は、一体物でも薄厚ゴム製リング111の厚さに応じた薄い円盤として積層してもよい。
磁石車輪の車軸190の中央部が大きな径を備えた膨出部191となっており、この膨出部191の側面には雌ネジ部192が形成されている。この雌ネジ部192に対して、外側面板140からねじ193を螺合させて全体を締め付けて固定する。なお、ねじ193の通孔が外側面板140とヨーク130と磁石固定板120に形成されている。
車軸190は円筒形であって、内面にはシャフトと結合するためのキー結合用の欠き部195が設けられており、外面にはベアリング凹部196が設けられている。この磁石車輪は、枠体にベアリングを介して取り付けられ、車軸にシャフトを通して自由回動、あるいは駆動される。
また、この例では薄厚ゴム製リング111は4枚を最小積層枚数とし、増やすことができる例としている。薄厚ゴム製リングの枚数及び薄厚ヨークの枚数を増やした場合でも、薄厚ゴム製リングは磁石固定板を介して、またさらに薄厚ヨーク板は外側面板によって、ねじ193で締められて固定されることとなる。
【0024】
この磁石車輪3は、薄厚ゴム製リングの枚数と薄厚ヨーク板の枚数を調整することにより、磁石車輪の幅と磁石の磁力を調整することができる。また、ゴム製リング110、磁石固定板120、ヨーク130、外側面板140は径の異なる組合せを複数種類揃えておくことで、磁石車輪径の設計変更も容易になる。
【0025】
(磁石車輪の例2)
駆動制御装置付き磁石車輪30の例を図5に示す。
磁石車輪3の側面と底面側にコ字状に配置した枠体163を取付け、枠体163の底面枠163aに操舵用サーボモータ162を取付けた枠体163を回転制御して、磁石車輪3の角度を調整して、操舵する。
磁石車輪3の車軸190は、側枠163bにベアリングを介して回動自由に取り付けられている。
側枠163bの一方には、ギアヘッド165が取り付けられ、ギアヘッド165に走行モータ161が装着されている。走行モータ161の出力軸は、磁石車輪3のパイプ状車軸190を貫通し、車軸とキー結合して、走行モータ161で駆動される。
制御枠体163は、本体取付け部167に連結して、ドローンなどの移動体に取り付けられている。枠体163の底面枠163aの下部側に設けられた操舵用サーボモータ162によって、磁石車輪3の中心軸を操舵中心軸166として枠体163を回転制御して、操舵する。
さらに、走行用カメラとレーザセンサを磁石車輪に取り付けた例を図8に示す。磁石車輪30の前方に取り付けた走行用カメラ31とレーザセンサ32である。これを取り付けることによって、前方にある橋脚までの距離、あるいは、後方にある橋脚までの距離がわかる。H型鋼のフランジの側縁などがわかり、走行路の確認ができる。
【実施例1】
【0026】
本実施例は、磁石車輪30を装着した懸垂型ドローン100の例である。
ドローン本体の上面に磁石車輪例2である磁石車輪30を取り付けて、高架や橋梁の下面の鉄部に磁気吸着して走行する懸垂型ドローン100の例である。本体1と、ロータ2を備えた懸垂できるドローンであって、建造物の鉄部に磁力吸着して走行する懸垂型ドローン100である。この懸垂型ドローン100は、点検用の検査機器4の装着に適している。
吸着対象は、建造物の下面にある、鋼板、H型鋼、ボックス型鋼、鋼製桁材、橋脚の鉄部、トンネル内面鉄部等である。建造物は、高架、橋梁、トンネル、建物庇、倉庫、運動施設などの、手が届かず、上方からのぞき込むことができない部位の点検に適している。
点検用の検査機器は、カメラなど撮影装置、打音や交通震動を拾うマイク、赤外線カメラ、レーザ距離計などである。
懸垂型ドローン100の操作は無線あるいは有線で行う。懸垂型ドローン100には、飛翔中あるいは磁気吸着時に周囲情報を取得するため、点検用とは別のカメラが本体に取り付けられている。H型鋼のフランジなどを走行する場合は、磁石車輪30に取り付けられている磁気吸着走行用のカメラ31とレーザセンサ32でフランジを検出して、自動走行ができる。また、このカメラによる情報を、コントローラのモニターに写して操作することもできる。
【0027】
本実施例は、磁石車輪30を2つ縦列に配置している。高架や橋梁の桁にはH型鋼材が用いられることが多い。2輪でぶら下がっているので鉛直方向に姿勢が安定する。機体が安定するので、搭載する計測機器の姿勢も安定し、質の良いデータを得ることができる。
さらに、特許文献1や特許文献3、図9(a)(c)に示されるようにH型鋼のフランジは幅が狭いうえ、接合用鋼板にはボルトの頭が飛び出ており、磁気吸着できる場所は中央部になるので、直列2輪とすることが適している。
なお、本実施例では、ロータを弱回転にしておくと、接合用鋼板との段差などで吸着力が弱くなっても、離れることを防止できる。
懸垂型ドローンのロータは、本体の上面側に磁石車輪や計測機器が搭載されているので、これらと干渉しない下方側に取り付けられる。
懸垂型ドローンの駆動源は、バッテリーあるいは地上から電線ケーブルで供給する。
懸垂型ドローンの操行制御は、ラジコンあるいは有線による。
高架や橋梁下面の点検では、高さが数十メートルよりも低いので、有線操作が適している。有線とした場合、操縦用ラインと電力ライン及び計測機器の制御、計測データ用のラインをまとめて一体としたケーブルを、懸垂型ドローンの本体部に繋げることができる。これによって、懸垂型ドローンバッテリーを積む必要がなく、懸垂型ドローンの重量を軽量化できる。軽量化できるので、磁石車輪による吸着を安定化することができる。あるいは、搭載する計測機器の重量制限が緩和される。
また、懸垂型ドローンの活動時間の制限がなくなる。仮に、磁気吸着中にバッテリー切れになると、懸垂型ドローンは磁気吸着した状態となって、回収が困難になる。
計測データで得られた情報もモニターで確認しながら操縦でき、注意すべき個所では測定機器の操作を重点的に行うことができる。
【0028】
本実施例の磁石車輪3(30)を装着した懸垂型ドローン100の例を図1、2に示す。
懸垂型ドローン100は、通常のドローンと同様に本体1から水平方向に延出したロータ杆12にロータ2を取り付けている。本例では、ロータは6つである。ロータ杆12には脚13を取り付けている。
本体には、操縦用、電力、情報、点検装置操作用のケーブル8が取り付けられており、地上から操縦、操作と電力供給ができるようになっている。また、ドローンの本体には本体センサ111が4個取り付けられており、飛翔中及び吸着時に周囲の状況が確認できると供に、自動走行が可能になっている。
ドローン100の本体1の上面に2つの支持部材17、17を設けて、該支持部材に車輪取付杆5を取付け、該車輪取付杆に磁石車輪3(30)を取り付けている。磁石車輪3(30)は、ロータ2の上方に位置して、緩衝しない位置関係に配置されている。また、本例では、車輪取付杆5は、直杆であって、本体よりも長く設定されており、磁石車輪3(30)の取付け位置は、車輪取付杆の長手方向に調整できる。
【0029】
また、本例ではセンサ4として、点検用カメラ41を搭載している。本体部1の上面に支柱61を取付け、この支柱にセンサ取付杆6を取り付けて、センサ取付杆の先端にはセンサ装着部62を形成している。本例ではセンサとして、カメラ41をセンサ装着部62に装着している。さらに、本体部の前後にレーザ距離計及びカメラ11を備えており、飛翔状況の確認ができる。
さらに図8に示すように、前方の磁石車輪及び後方の磁石車輪に走行用カメラ31とレーザセンサ32を取り付ける。これを取り付けることによって、前方にある橋脚までの距離、あるいは、後方にある橋脚までの距離がわかり、H型鋼のフランジの側縁などもわかり、測定して走行が自律操行できる。
本例では、点検用であるカメラ41は、磁石車輪30の先端より低くして、磁石車輪の吸着の障害にならないようにしている。センサ取付杆6は車輪取付杆5の上方をクロスしている。あるいは、左右分割するなどしても良く、点検機器が、磁石車輪の吸着高さよりも低い位置になるように工夫する。点検機器の種類によっては、磁石車輪の径を調整して、点検機器を装着する余裕を確保する。
なお、本例では、センサ取付杆6の先端はロータ2と同程度であるが、センサ取付け杆の長さはこれに限るものでは無く、センサの種類や点検箇所に応じて適宜決定される。また、センサの取付け箇所はドローン本体に直接取り付けることも可能であり、センサの種類によって、適宜決めることができる。
図示の例は、H型鋼製の桁材を走行して点検する装置を想定しており(図6参照)、桁と桁の間はH型鋼の高さ分の空間があって、多少左右に傾いても、カメラが接触せず、桁間隔を撮影範囲に納めることができるような長さに設定している。
【0030】
図6にH型鋼材である桁材に磁気吸着した懸垂型ドローンによるコンクリート床版を撮影する状態を示している。
高架路面を形成するコンクリート製床版の下方にH型鋼材製の桁材が配置されており、H型鋼材の下部フランジFに懸垂型ドローン100が磁気吸着しており、懸垂型ドローン100から左右に伸びた杆の先端に取り付けられている点検用のカメラ41で床版の下面を撮影する。
隣接する桁材からそれぞれ撮影範囲S1、S2、S3、S4・・・をそれぞれ重複するように設定して、路面の裏面全体のデータを採取すると供に、隣接データとの接続を容易にしている。
【0031】
図7に本実施例の懸垂型ドローンのテスト機の写真を示す。
この懸垂型ドローン試験機は、磁石車輪30を採用し、長く延ばした杆に点検用のカメラ41を取り付けている。操縦は有線で行い、操縦ラインや給電ラインをまとめたケーブル8を有している。
図8に、この試験機の磁石車輪部を拡大した写真を示す。
磁石車輪の前面に走行用カメラ31とレーザセンサ32が位置するように、走行モータ161を取り付ける側枠163bに取付け部材を設けている。
この例では、点検用のカメラ41はロータよりも外側に設置されている。また、点検用カメラを取り付ける杆は車輪取付杆の上方にある。
図9(b)にH型鋼材を接合して形成した桁材のモデルのフランジ下面に懸垂型ドローン試験機を磁気吸着させた状態を示している。磁石車輪を走行させて、接合板の段差を乗り越えることができることを確認した。この例では、接合板の厚さは20mmである。この試験機は有線操縦であり、写真に示されるようにケーブルが地上方向に伸びており、電源供給ができ、撮影用カメラの映像もモニターでき、操作もすることができる構成にしている。H型鋼材を接合した桁材の裏面の状態を図9(a)(c)に示している。
また、橋梁などの下面に張られた防護網も走破することができた。
この試験機では、磁石車輪の走行による移動精度は1mm以内、桁高さ3000mmであって、1470万画素のカメラを用いて床版測定した場合、ひび割れ検出精度は0.2mm以下を実現できた。
【符号の説明】
【0032】
100・・懸垂型ドローン
1・・・・本体
11・・・本体センサ(カメラ、レーザ距離計)
12・・・ロータ杆
13・・・脚
17・・・支持部材
2・・・・ロータ
22・・・モータ
3・・・・磁石車輪
31・・・走行用カメラ
32・・・レーザセンサ
4・・・・センサ(点検機器、検査機器)
41・・・点検用カメラ
5・・・・車輪取付杆
6・・・・センサ取付杆
61・・・支柱
62・・・センサ装着部
7・・・・操作・動力制御機器
71・・・操縦装置
72・・・操作用機器
73・・・バッテリー
8・・・・ケーブル
81・・・操縦装置のライン
82・・・操作用機器のライン
83・・・バッテリーのライン
30・・・駆動制御装置付き磁石車輪

110・・・ゴム製リング
111・・・薄厚ゴム製リング
112・・・磁石挿入孔
113・・・ゴム面
120・・・磁石固定板
130・・・ヨーク
131・・・薄厚ヨーク板
140・・・外側面板
150・・・磁石
161・・・走行モータ
162・・・操舵用サーボモータ
163・・・枠体
163a・・底面枠
163b・・側枠
165・・・ギアヘッド
166・・・操舵中心軸
167・・・本体取付け部
190・・・車軸
191・・・膨径部
192・・・雌ネジ部
193・・・ねじ
195・・・キー結合欠き部
196・・・ベアリング凹部

d・・・中央部
F・・・フランジ
H・・・H型鋼
W・・・ウェヴ
J・・・接合板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10