(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ラジオゾンデに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/08 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
G01W1/08 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017230141
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】10 2017 010 587.1
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516236724
【氏名又は名称】ヴァイサラ・オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ハンヌ・ヤウヒアイネン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヴァールン
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-227882(JP,A)
【文献】中国実用新案第205193300(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐第1の紐(4)で気球(3)に接続されたラジオゾンデ(2);及び
‐前記ラジオゾンデ(2)に接続された本体(5)
を備える、システム(1)であって、
前記本体(5)は、前記システム(1)の上昇中の前記ラジオゾンデ(2)の振り子運動(PM)を低減するよう構成され、
前記本体(5)は、リボン(7)、織物又は箔を備え、前記本体(5)は、巻き上げられるように構成される、システム(1)。
【請求項2】
前記本体(5)は、前記気球(3)の移動方向(A)とは異なる少なくとも1つの方向における前記ラジオゾンデ(2)の運動を低減するよう構成される、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記本体(5)は、前記気球(3)の前記移動方向(A)に対して垂直な前記ラジオゾンデ(2)の運動を低減するよう構成される、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記本体(5)は、前記ラジオゾンデ(2)の周期性運動を低減するよう構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記本体(5)は、前記ラジオゾンデ(2)の抵抗係数を増大させるよう構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記本体(5)は、前記ラジオゾンデ(2)に直接接続されるか、又は前記第1の紐(4)若しくは第2の紐(6)で前記ラジオゾンデ(2)に接続される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記第1の紐(4)は、前記ラジオゾンデ(2)の第1の側部に接続され、前記第2の紐(6)は、前記ラジオゾンデ(2)の第2の側部に接続される、請求項6に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記本体(5)は長方形であり、a=m/n>5のアスペクト比を有し、ここでaはアスペクト比であり、mは前記本体(5)の第1の側部(8)の長さであり、nは前記本体(5)の第2の側部(9)の長さであり、前記第2の側部(9)は前記ラジオゾンデ(2)に対面する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記本体(5)に複数の開口(13)が配設される、請求項1又は8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記第1の紐(4)の長さは、5~60mである、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記第1の紐(4)の長さは、10~15mである、請求項10に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記本体(5)は、自動発射システムでの使用のために準備されるよう構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項13】
‐第1の紐(4)で気球(3)に接続されたラジオゾンデ(2)を備えるシステム(1)を提供するステップ;
‐本体(5)を前記ラジオゾンデ(2)に接続するステップであって、前記本体(5)は、前記システム(1)の上昇中の前記ラジオゾンデ(2)の振り子運動(PM)を低減するよう構成される、ステップ;及び
‐前記システム(1)を発射するステップ
を含み、前記本体(5)は、巻き上げられる、方法。
【請求項14】
前記気球(3)の移動方向(A)とは異なる少なくとも1つの方向における前記ラジオゾンデ(2)の運動は、前記本体(5)によって低減される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記気球(3)の前記移動方向(A)に対して垂直な前記ラジオゾンデ(2)の運動は、前記本体(5)によって低減される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記ラジオゾンデ(2)の周期性運動は、前記本体(5)によって低減される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ラジオゾンデ(2)の抵抗係数は、前記本体(5)によって増大させられる、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記システム(1)の上昇中、前記ラジオゾンデ(2)は前記気球(3)の下方に位置する、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記本体(5)は、前記ラジオゾンデ(2)に直接接続されるか、又は前記第1の紐(4)若しくは第2の紐(6)で前記ラジオゾンデ(2)に接続される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の紐(4)は、前記ラジオゾンデ(2)の第1の側部に接続され、前記第2の紐(6)は、前記ラジオゾンデ(2)の第2の側部に接続される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
リボン(7)、織物又は箔が、前記ラジオゾンデ(2)に接続される、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
長方形の前記本体(5)が前記ラジオゾンデ(2)に接続され、前記本体(5)は、a=m/n>5のアスペクト比を有し、ここでaはアスペクト比であり、mは前記本体(5)の第1の側部(8)の長さであり、nは前記本体(5)の第2の側部(9)の長さであり、前記第2の側部(9)は前記ラジオゾンデ(2)に対面する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の開口(13)が、前記本体(5)を貫通するように作製される、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の紐(4)は、5~60mの長さを有するように提供される、請求項13~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の紐(4)は、10~15mの長さを有するように提供される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記本体(5)は、自動発射システムでの使用のために準備される、請求項13~25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオゾンデに関連するシステムに関する。更に本発明は、ラジオゾンデに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのラジオゾンデが知られており、これらを用いて、異なる複数の高度における大気のパラメータ、例えば圧力、温度、相対湿度を測定できる。
【0003】
例えば特許文献1は、ラジオゾンデと、浮上を生成するための、上記ラジオゾンデに接続された気球とを備えるシステムが開示されている。ラジオゾンデは、電子測定装置と、通信装置と、上記電子測定装置及び上記通信装置のために使用されるエネルギ供給装置とを備える。測定バーがラジオゾンデに接続され、少なくとも1つのセンサが上記測定バーに接続される。ラジオゾンデは更に、ラジオゾンデに連結されたテンションアームを備える。測定バーは、テンションアームの取り付けに基づいて、テンションアームの端部において所定の角度で傾斜する。
【0004】
理想的には、ラジオゾンデ及び気球は、最適な条件下で、ある移動方向に同時に移動する。換言すれば、ラジオゾンデ及び気球両方の加速、速度及び方向は同一である。
【0005】
実際には、ラジオゾンデ及び気球の加速、速度及び方向は異なり得る。気球の質量は例えば0.3kgであってよく、ラジオゾンデの質量は例えば0.1kgであってよい。気球とラジオゾンデとの間の紐の長さは例えば5mであってよい。ラジオゾンデの上方の気球は、ラジオゾンデを垂直方向に空中へと移動させるために必要な浮上を生成する。例えば風によって、気球に水平方向の力が短期間にわたって印加されると、気球は水平方向にも追加で移動し始め、従ってラジオゾンデを振動させる。ラジオゾンデの振動は、水平方向の上記力の印加が停止しても持続することになる。更に気球は、水平方向へ、及び垂直方向への移動を継続することになる。換言すれば、ラジオゾンデは、気球によって上記移動方向へと浮上させられるだけでなく、更に揺動もする、即ち上記移動方向に対して垂直な少なくとも1つの方向にも移動し得る。高密度の空気中で低高度であれば、この振動運動は、気球の質量及びラジオゾンデの質量のあらゆる組み合わせに関して比較的小さい。上記振動運動は、気球及びラジオゾンデの移動によって発生する空気抵抗力によって減衰させられる。気球の表面積が比較的大きいことが、水平方向の移動に相当な影響を及ぼす。しかしながら高高度では、この系の質量が一定のまま、気球の表面積の影響が低下する。
【0006】
ラジオゾンデは一時的に気球より上方の位置にさえ揺動する場合があり、続いてラジオゾンデはこの位置から、ラジオゾンデと気球とを接続する紐によって自由落下が突然停止するまで、地面に向かって落下することが観察されている。ラジオゾンデのこのような挙動は、ラジオゾンデの重量が比較的小さく、例えば120g未満であり、またラジオゾンデと気球との間の紐の長さが比較的短い、例えば5m~15mである場合、及び空気密度が比較的低い場合に、特に観察され得る。ラジオゾンデ又はラジオゾンデの部品は、ラジオゾンデが自由落下から突然停止することによって損傷する場合がある。
【0007】
更に、ラジオゾンデの振動運動は、測定、例えば風速測定の精度に影響を及ぼし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に鑑みて、紐によって気球に接続されたラジオゾンデを備え、上記ラジオゾンデの自由落下を回避できるか又は少なくとも低減できる、システムを提供することが有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの具体的な実施形態が、従属請求項において定義される。
【0011】
本発明の第1の態様によると、第1の紐で気球に接続されたラジオゾンデと、上記ラジオゾンデに接続された本体とを備えるシステムが提供され、上記本体は、上記システムの上昇中の上記ラジオゾンデの振り子運動を低減するよう構成される。
【0012】
第1の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きのリストからの少なくとも1つの特徴を備えてよい:
・上記本体は、上記気球の移動方向とは異なる少なくとも1つの方向における上記ラジオゾンデの運動を低減するよう構成される;
・上記本体は、上記気球の上記移動方向に対して垂直な上記ラジオゾンデの運動を低減するよう構成される;
・上記本体は、上記ラジオゾンデの周期性運動を低減するよう構成される;
・上記本体は、上記ラジオゾンデの抵抗係数を増大させるよう構成される;
・上記本体は、上記ラジオゾンデに直接接続されるか、又は上記第1の紐若しくは第2の紐で上記ラジオゾンデに接続される;
・上記第1の紐は、上記ラジオゾンデの第1の側部、例えば上部に接続され、上記第2の紐は、上記ラジオゾンデの第2の側部、例えば底部に接続される;
・上記本体は、リボン、織物又は箔を備える;
・上記本体は長方形であり、a=m/n>5のアスペクト比を有し、ここでaはアスペクト比であり、mは上記本体の第1の側部の長さであり、nは上記本体の第2の側部の長さであり、上記第2の側部は上記ラジオゾンデに対面する;
・上記本体に複数の開口が配設される;
・上記本体、特にリボンは、巻き上げられるように構成される;
・上記本体はパラシュートを備える;
・上記第1の紐の長さは、5~60mである;
・上記第1の紐の長さは、10~15mである;
・上記本体は、自動発射システムでの使用のために準備されるよう構成される。
【0013】
本発明の第2の態様によると、第1の紐で気球に接続されたラジオゾンデを備えるシステムを提供するステップ;本体を上記ラジオゾンデに接続するステップであって、上記本体は、上記システムの上昇中の上記ラジオゾンデの振り子運動を低減するよう構成される、ステップ;及び上記システムを発射するステップを含む、方法が提供される。
【0014】
第2の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きのリストからの少なくとも1つの特徴を備えてよい:
・上記気球の移動方向とは異なる少なくとも1つの方向における上記ラジオゾンデの運動は、上記本体によって低減される;
・上記気球の上記移動方向に対して垂直な上記ラジオゾンデの運動は、上記本体によって低減される;
・上記ラジオゾンデの周期性運動は、上記本体によって低減される;
・上記ラジオゾンデの抵抗係数は、上記本体によって増大させられる;
・上記システムの上昇中、上記ラジオゾンデは上記気球の下方に位置する;
・上記本体は、上記ラジオゾンデに直接接続されるか、又は上記第1の紐若しくは第2の紐で上記ラジオゾンデに接続される;
・上記第1の紐は、上記ラジオゾンデの第1の側部に接続され、上記第2の紐は、上記ラジオゾンデの第2の側部に接続される;
・リボン、織物又は箔が、上記ラジオゾンデに接続される;
・長方形の本体が上記ラジオゾンデに接続され、上記本体は、a=m/n>5のアスペクト比を有し、ここでaはアスペクト比であり、mは上記本体の第1の側部の長さであり、nは上記本体の第2の側部の長さであり、上記第2の側部は上記ラジオゾンデに対面する;
・複数の開口が、上記本体を貫通するように作製される;
・上記本体は、巻き上げられる;
・パラシュートが、上記ラジオゾンデに接続される;
・上記第1の紐は、5~60mの長さを有するように提供される;
・上記第1の紐は、10~15mの長さを有するように提供される;
・上記本体は、自動発射システムでの使用のために準備される。
【0015】
本発明の特定の実施形態によって、相当な利点が得られる。ラジオゾンデに関連するシステム及び方法が提供される。上記システムの上昇中にラジオゾンデの振り子運動を低減するよう構成された本体を、ラジオゾンデに接続する。これにより、ラジオゾンデ‐本体複合体の抵抗係数を、ラジオゾンデのみの場合よりも増大させることができる。上記本体は、ラジオゾンデと気球との間の紐にその張力を維持させるよう構成される。
【0016】
これは、ラジオゾンデの重量が比較的小さい場合、及び/又はラジオゾンデと気球との間の紐が比較的短い場合に特に有利である。本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムによって、ラジオゾンデの自由落下を回避できるか、又は少なくとも低減できる。
【0017】
更に、振り子運動の低減によって、ラジオゾンデによる特定の測定を容易に、及び/又はより正確に実施できる。例えばラジオゾンデの振動運動は、上記本体が上記振り子運動を低減することにより、異なる複数の高度における風速の測定に関する不確実性の生成がより少なくなる。
【0018】
更に本発明の特定の実施形態は、リボンの形態の本体を提供する。このリボンは、ラジオゾンデの発射前には巻き上げられていてよい。本発明の特定の実施形態によるシステムは自動発射システムと接続して使用されるよう構成できる。このような自動発射システムでは、ラジオゾンデ及び気球は、気球の膨張前には箱の中で準備できる。リボンの形態の本体は、リボンを巻き上げ、ラジオゾンデ、気球及び本体を上述のような箱の中で準備することによって、自動発射システムでの使用のために容易に準備できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図2は、ラジオゾンデ構成の別の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの本体の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの別の本体の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの更なる本体の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムのまた更なる本体の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の少なくともいくつかの実施形態による別のシステムの概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の少なくともいくつかの実施形態による更なるシステムの概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの本体を備えないラジオゾンデ構成の、時間‐変位グラフの概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの、時間‐変位グラフの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1では、ラジオゾンデ構成の概略図が図示されている。ラジオゾンデ2は、紐4で気球3に接続される。ラジオゾンデ2は、気球3によって移動方向Aへと浮上する。典型的には、上記ラジオゾンデ構成の速度は、約5m/s~6m/sである。更にラジオゾンデ2は、前後に揺動する。即ちラジオゾンデ2は振動し、従って振り子運動PMを行う。ラジオゾンデ2の振り子運動PMは例えば、気球3の外側表面の不規則性によって、又は異なる複数の高度において風速が変化することによって、引き起こされ得る。前後に揺動する代わりに、ラジオゾンデ2は、円形又は楕円形軌跡に沿って揺動する場合もある。このような円形又は楕円形軌跡に沿った揺動もまた、本文書では振動運動、即ち振り子運動と見做す。
【0021】
上記ラジオゾンデの振り子運動PMは、特にラジオゾンデ2の重量が比較的小さく、例えば120g未満であり、かつラジオゾンデ2と気球3との間の紐4の長さが比較的短い、例えば10m~15mである場合に、広範囲となり得る。気球3の重量は例えば300g~1200gとすることができる。
【0022】
図2では、ラジオゾンデ構成の別の概略図が図示されている。ラジオゾンデ2の振り子運動PMは、臨界点を超えるほど広範囲となっており、紐4はその張力を失い、ラジオゾンデ2は、気球3が垂直方向Aに上昇している間に地面11に向かって自由落下FFしている。換言すれば、気球3の移動方向A及びラジオゾンデ2の移動の方向が、例えば一時的に反対となり得る。続いてラジオゾンデ2の自由落下FFは、ラジオゾンデ2と方向Aに移動する気球3とを接続する紐4によって、突然停止することになる。ラジオゾンデ2のこのような急停止により、ラジオゾンデ2が損傷する場合がある。更にラジオゾンデ2が気球3に衝突することによって気球3を損傷させる場合もあり、これは気球3の爆発につながり得る。
【0023】
図3では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステム1の概略図が図示されている。システム1は、第1の紐4で気球3に接続されたラジオゾンデ2を備える。更にシステム1は、ラジオゾンデ2に接続された本体5を備える。この本体5は、システム1が移動方向Aに上昇している間のラジオゾンデ2の振り子運動PMを低減するよう構成される。特に本体5は、気球3の移動方向とは異なる少なくとも1つの方向のラジオゾンデ2の運動を低減するよう構成される。特に本体5は、気球3の移動方向に対して垂直なラジオゾンデ2の運動を低減するよう構成される。例えば気球3の外側表面の不規則性及び/又は風Wによって引き起こされる周期性の振り子運動PMを、本体5によって経時的に低減できる。本体5に接続されたラジオゾンデ2の抵抗係数は、ラジオゾンデ2そのままの抵抗係数より大きい。本体5は、ラジオゾンデ2が臨界位置へ、特に気球3より上方の位置へと揺動するのを防止する。本体5によって紐4にその張力を維持させることにより、ラジオゾンデ2の自由落下を回避できるか、又は少なくとも低減できる。
【0024】
本体5は例えば、リボン7の形態であってよい。
図3に示すように、リボン7はラジオゾンデ2に直接接続してよい。リボン7は織物製であってよく、例えば長方形のフットプリントを有してよい。特定の実施形態によると、リボン7は、ラジオゾンデ2が前後に周期性運動する場合に、ラジオゾンデ2に直接接続されるリボン7の端部セクション12が湾曲して形成されるよう、一定の剛性を有する。
【0025】
図4では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの本体5の概略図が図示されている。本体5はリボン7の形態である。リボン7の材料は、例えば織物又はプラスティック箔であってよい。上記本体は、第2の紐6でラジオゾンデ(図示せず)に接続できる。
【0026】
本体5は長方形であり、a=m/n>5のアスペクト比を有し、ここでaはアスペクト比であり、mは本体5の第1の側部8の長さであり、nは本体5の第2の側部9の長さであり、第2の側部9はラジオゾンデ2に対面する。例えば上記第1の側部の長さは100cmであってよく、第2の側部9の長さは5cmであってよく、即ちアスペクト比は、a=100cm/5cm=20であってよい。
【0027】
複数の開口13が本体5に配設される。リボン7の粗度は、本体5を貫通するように複数の開口13を設けることによって増大する。本体5は、ラジオゾンデ‐本体複合体の抵抗係数を、ラジオゾンデ2のみの場合より増大させるよう構成される。
【0028】
更に、リボン7の形態の本体5は、巻き上げられるよう構成される。このようにして本体5を、自動発射システム(図示せず)における使用のために準備できる。
【0029】
図5では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの別の本体5の概略図が図示されている。本体5は、パラシュート10の形態である。パラシュート10は従来の形態を有してよく、又は例えば閉鎖された四角錐の形態であってよい。本発明の特定の実施形態によると、パラシュート10は、上記気球によって上向きに浮上する。パラシュート10は、システム1の上昇中に、紐6にその張力を維持させる。
【0030】
図6では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの更なる本体5の概略図が図示されている。本体5は、ラジオゾンデ2の4つの側部を少なくとも部分的に取り囲むように配設された4つのプレート14を備える。プレート14は更に、各プレートの一部がラジオゾンデ2から反対方向を向くように配設される。本体5の各プレート14は、異なる方向を向く。よって、異なる複数の方向へのラジオゾンデ2の揺動運動を、ラジオゾンデ‐本体複合体の抵抗係数がラジオゾンデのみの場合より増大することによって、低減できる。
図6に示す本体5は、例えば環状軌跡を描く振り子運動を平坦化するために有利となり得る。
【0031】
図7では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムのまた更なる本体の概略図が図示されている。4つのプレート14の形態の本体5は、ラジオゾンデ2に接続される。各プレート14は、ラジオゾンデ2の1つの側部に接続され、ラジオゾンデ2から反対方向を向く。よって、異なる複数の方向へのラジオゾンデ2の揺動運動を、ラジオゾンデ‐本体複合体の抵抗係数がラジオゾンデのみの場合より増大することによって、低減できる。
図7に示す本体5は、例えば環状軌跡を描く振り子運動を平坦化するために有利となり得る。
【0032】
図8では、本発明の少なくともいくつかの実施形態による別のシステム1の概略図が図示されている。1つのプレートの形態の本体5は、ラジオゾンデに接続される。上記プレートは、例えば長方形又は正方形であってよい。上記プレートは、紐4に対して略垂直に配向される。このような1つのプレートであっても、本体5がシステム1の上昇中に紐4にその張力を維持させるため、上記ラジオゾンデの振り子運動を低減できる。
【0033】
図9では、本発明の少なくともいくつかの実施形態による更なるシステム1の概略図が図示されている。本体5は、リボン7の形態で提供される。更に複数のポーチ15がリボン7に取り付けられる。ポーチ15は全て、リボン7の片側に取り付けてよく、又はリボン7の両側に取り付けてよい。典型的には、各ポーチ15は、ラジオゾンデ2に向かう方向に開いている。よって、リボン7に取り付けられた各ポーチ15は、ラジオゾンデ2に対して小さなパラシュートの効果を有する。リボン7及びポーチ15を備える本体5は、システム1の上昇中に紐4にその張力を維持させるよう構成される。
【0034】
本発明の特定の実施形態によると、第1の紐4は、ラジオゾンデ2の第1の端部においてラジオゾンデ2に取り付けられ、第2の紐6は、ラジオゾンデ2の第2の端部においてラジオゾンデ2に取り付けられる。
【0035】
図10では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの本体を備えないラジオゾンデ構成の、時間‐変位グラフの概略図が示されている。ラジオゾンデの前後の揺動運動、即ち振動運動が、
図10に示されている。ラジオゾンデの揺動運動は周期性運動であり、ラジオゾンデの変位dは時間tに亘って変化することを確認できる。しかしながら、後続の複数のサイクルにおける変位dの振幅は、時間tに亘って同一又は略同一である。その結果、本発明によるシステムの本体を備えない場合、ラジオゾンデは長期間に亘って振動し続ける。
【0036】
図11では、本発明の少なくともいくつかの実施形態によるシステムの、時間‐変位グラフの概略図が示されている。ラジオゾンデの前後の揺動運動、即ち振動運動が、
図11に示されている。ラジオゾンデの揺動運動は周期性運動であり、ラジオゾンデの変位dは時間tに亘って変化することを確認できる。本体がラジオゾンデに連結されており、上記本体がラジオゾンデの振り子運動を低減するよう構成されていることにより、後続の複数のサイクルにおける変位の振幅は、時間tに亘って同一ではない。換言すれば、直接、又は紐でラジオゾンデに接続された本体により、変位dの振幅は時間tに亘って減少する。よって、気球の移動方向に対して垂直な少なくとも1つの方向へのラジオゾンデの運動は、低減される。ラジオゾンデの揺動運動は、ラジオゾンデ‐本体複合体の抵抗係数が増大していることにより、時間tに亘って平坦化される。その結果、ラジオゾンデが臨界位置へ、例えば気球より上方の位置へと揺動している状況を回避できるか、又は少なくとも低減できる。ラジオゾンデの経時的な振動運動の低減は更に、特定の測定の精度を改善する。
【0037】
ここで開示されている本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ又は材料に限定されず、当業者には認識されるように、その均等物へと拡張されることを理解されたい。また本明細書において採用されている術語は、特定の実施形態を説明することのみを目的として使用されており、限定を意図したものではないことを理解されたい。
【0038】
本明細書全体を通しての、一実施形態(one embodiment)又はある実施形態(an embodiment)に対する言及は、当該実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、本明細書全体を通して様々な箇所で現れる「一実施形態では(in one embodiment)」又は「ある実施形態では(in an embodiment)」という句は、全てが必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。例えば「約(about)」又は「略(substantially)」といった用語を用いて数値に対する言及が行われている場合、その数値自体も開示されている。
【0039】
本明細書において使用されている場合、複数の項目、構造的要素、構成要素及び/又は材料は、利便性のために共通のリスト中で提示される場合がある。しかしながらこれらのリストは、上記リストの各メンバーが、別個かつ一意のメンバーとして独立して識別されているかのように解釈されるものとする。従って、そうでないことが指示されていない場合、このようなリストの個々のメンバーのいずれも、これらのメンバーがある共通のグループ内に提示されていることに基づいて、当該リストの他のいずれのメンバーの事実上の等価物として解釈されることはないものとする。更に、本発明の様々な実施形態及び実施例は、本明細書において、その様々な構成部品の代替物と共に言及される場合がある。このような実施形態、実施例及び代替物は、互いの事実上の等価物として解釈されるものではなく、本発明の別個の自律的な表現と見做されることを理解されたい。
【0040】
更に、記載されている特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、いずれの好適な様式で組み合わせてよい。以下の記載では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状等の例といった多数の具体的詳細が提供される。しかしながら当業者であれば、本発明は、これらの具体的詳細のうちの1つ若しくは複数を用いずに、又は他の方法、構成部品、材料等を用いて実施できることを認識するだろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にするのを回避するために、公知の構造、材料又は操作は図示又は詳述されない。
【0041】
上述の実施例は、1つ又は複数の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、当業者には発明的能力を発揮することなく、かつ本発明の原理及び概念から逸脱することなく、形態、使用法及び実装の詳細について多数の修正を実施できることは明らかであろう。従って、以下の請求項による限定を除いて、本発明を限定することは意図されていない。
【0042】
動詞「…を備える(to comprise)」及び「…を含む(include)」は、本文書では、列挙されていない特徴の存在も排除又は要求することのないオープンな限定として使用される。従属請求項に列挙される特徴は、そうでないことが明言されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。更に、本文書全体を通して、「ある(a又はan)」、即ち単数形の使用は、複数を排除するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、ラジオゾンデの産業的応用を見出す。
【符号の説明】
【0044】
1 システム
2 ラジオゾンデ
3 気球
4 第1の紐
5 本体
6 第2の紐
7 リボン
8 本体の第1の側部
9 本体の第2の側部
10 パラシュート
11 地面
12 リボンの端部セクション
13 開口
14 プレート
15 ポーチ
A 移動方向
CoM 重心
d 変位
FF 自由落下
PM 振り子運動
t 時間
W 風