(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】通線ツール及び長尺ケーブルの通線方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/08 20060101AFI20220216BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H02G1/08 010
G02B6/46 321
(21)【出願番号】P 2017253590
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518001472
【氏名又は名称】野原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】野原 明
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-74623(JP,U)
【文献】実開平4-134113(JP,U)
【文献】特開2008-187762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/08
G02B 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に長尺ケーブルを通線するための通線ツールであって、
棒状部材に、
上記棒状部材とは別部材からなる柔軟部材を上記
棒状部材に接続するための柔軟部材接続部と、
上記長尺ケーブルの端部を掛け止める掛止部と、
上記掛止部に掛け止められた上記長尺ケーブルを受け入れる、上記棒状部材の外面に形成した受入溝と、
が形成されていることを特徴とする通線ツール。
【請求項2】
請求項1記載の通線ツールにおいて、上記掛止部は貫通穴であり、上記受入溝は上記貫通穴の表裏の開口端に連なる一対の螺旋溝を含んでいる通線ツール。
【請求項3】
請求項2記載の通線ツールにおいて、上記一対の螺旋溝は非対称形状であり、一方の上記螺旋溝は上記棒状部材の上記柔軟部材接続部とは反対側の端部に向けて深さを深くしている通線ツール。
【請求項4】
請求項3記載の通線ツールにおいて、上記一方の螺旋溝は、上記棒状部材の上記柔軟部材接続部とは反対側の端部側において上記棒状部材の軸線と平行な直線溝に連なっている通線ツール。
【請求項5】
請求項3または4記載の通線ツールにおいて、上記一対の螺旋溝を隔てる隔壁には、該一対の螺旋溝を連通させる連通溝が形成されている通線ツール。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の通線ツールにおいて、上記長尺ケーブルは、光ファイバ心線と金属製支持線とを有するドロップケーブルである通線ツール。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1
項記載の通線ツールにおいて、上記柔軟部材接続部には、先端に先端金具を有する第1の柔軟部材が接続されている通線ツールユニット。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1
項記載の一対の通線ツールの上記柔軟部材接続部が、第2の柔軟部材の両端部に接続されている通線ツールユニット。
【請求項9】
請求項
7記載の第1の通線ツールユニットと請求項8記載の第2の通線ツールユニットを用いた長尺ケーブルの通線方法であって、
上記第1の通線ツールユニットの上記掛止部と上記受入溝に、上記長尺ケーブルとして、光ファイバ心線と金属製支持線とを有するドロップケーブルの上記金属製支持線を掛け止めるステップ;
上記第1の通線ツールユニット及びドロップケーブルを、上記先端金具を先端としてこの順番で第一の配管内にその一端開口部から挿通するステップ;
上記第一の配管の他端開口部から突出した上記第1の通線ツールユニットとドロップケーブルをさらに第一の配管とは独立した第二の配管内にその一端開口部から挿通するステップ;
上記第二の配管の他端開口部から突出した上記第1の通線ツールユニットから上記金属製支持線を外すステップ;
上記第2の通線ツールユニットの一対の通線ツールの一方に、上記第1の通線ツールから外した上記金属製支持線を掛け止めるステップ;
上記第2の通線ツールユニットの一対の通線ツールの他方の上記掛止部と上記受入溝に、第2の長尺ケーブルを掛け止めるステップ;
及び
上記第2の通線ツールユニットを介して結合された、上記金属製支持線を有するドロップケーブル、上記第2の通線ツールユニット及び上記第2の長尺ケーブルを上記第二の配管の上記他端開口部から上記第二の配管内に引き戻し、上記第二の配管の上記一端開口部から引き出して上記第二の配管内に上記第2の長尺ケーブルを通線するステップ;
を有することを特徴とする長尺ケーブルの通線方法。
【請求項10】
請求項9記載の通線ツールにおいて、上記第2の長尺ケーブルは、LANケーブルである長尺ケーブルの通線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺ケーブル(以下ケーブル)を保護配管内に通線する際に用いる通線ツール(通線治具)及び同通線ツールを用いた長尺ケーブルの通線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような通線ツールは、業界において呼び線と呼ばれており、合成樹脂製モノフィラメントの単線または撚り線からなる螺旋線材(特許文献1)の両端部に、ケーブルの接続部を設けた先端ガイド部材を結合してなっている。先端ガイド部材は、ステンレス線材の撚り線からなるフレキシブルワイヤの先端に、配管内に引き込むケーブルを連結するための貫通穴を有する先端金具(金属塊)を結合して構成するのが一般的である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-352883号公報
【文献】特開平6-165328号公報
【0004】
この従来の呼び線では、先端ガイド部材の先端金具の貫通穴に、ケーブルの端部を挿通して折り返し、脱落しないように、縒っている。しかし、貫通穴を通したケーブルの端部を折り返すと、先端金具と折り返したケーブルを含む全体の径が貫通穴部分で全体として大径になり、あるいは、ケーブルが貫通穴への挿通部分で回転(回動)してしまい、配管に通すときの障害となる。配管内壁あるいは配管内の既存要素と干渉して摩擦抵抗が増加し、ときには通線が不能となる。ケーブルが硬質の線材を含む硬質ケーブルの場合には大径化が著しく(貫通穴部分で著しく太ってしまい)、ケーブルが複数の軟質被覆電線を内蔵している軟質ケーブルの場合には、断線の可能性が増す。なお、本発明の対象とする硬質ケーブルとしては、光ファイバ心線と金属製支持線とを有するドロップケーブルを例示することができ、軟質ケーブルとしてはLANケーブルを例示することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の通線ツールについての以上の問題意識に基づき、ケーブル接続部で大径化することがなく(大径化を抑制することができ)、断線のおそれを小さくすることができる通線ツールを得ることを目的とする。
また、本発明は、大径化を抑制することで、ケーブルが硬質の場合には、螺旋線材を用いることなく、ケーブルを直接配管内に押し込んで通線する押込通線ができる通線ツールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通線ツールの態様では、配管内に長尺ケーブルを通線するための通線ツールであって、棒状部材に、上記棒状部材とは別部材からなる柔軟部材を上記棒状部材に接続するための柔軟部材接続部と、上記長尺ケーブルの端部を掛け止める掛止部と、上記掛止部に掛け止められた上記長尺ケーブルを受け入れる、上記棒状部材の外面に形成した受入溝と、が形成されていることを特徴としている。
【0007】
上記掛止部は具体的には貫通穴とし、上記受入溝は上記貫通穴の表裏の開口端に連なる一対の螺旋溝を含んでいることが実際的である。そして、この一対の螺旋溝は非対称形状であり、一方の上記螺旋溝は上記棒状部材の上記柔軟部材接続部とは反対側の端部に向けて深さを深くしていることが好ましい。さらに、上記一方の螺旋溝は、上記棒状部材の上記柔軟部材接続部とは反対側の端部側において上記棒状部材の軸線と平行な直線溝に連なっていることが好ましい。また、上記一対の螺旋溝を隔てる隔壁には、該一対の螺旋溝を連通させる連通溝を形成することが望ましい。
【0008】
上記長尺ケーブルは、例えば、光ファイバ心線と金属製支持線とを有するドロップケーブルである。
【0009】
本発明による第1の通線ツールユニットは、上記通線ツールの上記柔軟部材接続部に、先端に先端金具を有する第1の柔軟部材が接続して構成される。
【0010】
本発明による第2の通線ツールユニットは、一対の上記通線ツールの上記柔軟部材接続部を、第2の柔軟部材の両端部に接続して構成される。
【0011】
本発明による通線ツールユニットを用いた長尺ケーブルの通線方法は、上記第1の通線ツールユニットと第2の通線ツールユニットとを用いる通線方法であって、上記第1の通線ツールユニットの上記掛止部と上記受入溝に、上記長尺ケーブルとして、光ファイバ心線と金属製支持線とを有するドロップケーブルの上記金属製支持線を掛け止めるステップ;上記第1の通線ツールユニット及びドロップケーブルを、上記先端金具を先端としてこの順番で第一の配管内にその一端開口部から挿通するステップ;上記第一の配管の他端開口部から突出した上記第1の通線ツールユニットとドロップケーブルをさらに第一の配管とは独立した第二の配管内にその一端開口部から挿通するステップ;上記第二の配管の他端開口部から突出した上記第1の通線ツールユニットから上記金属製支持線を外すステップ;上記第2の通線ツールユニットの一対の通線ツールの一方に、上記第1の通線ツールから外した上記金属製支持線を掛け止めるステップ;上記第2の通線ツールユニットの一対の通線ツールの他方の上記掛止部と上記受入溝に、第2の長尺ケーブルを掛け止めるステップ;及び上記第2の通線ツールユニットを介して結合された、上記金属製支持線を有するドロップケーブル、上記第2の通線ツールユニット及び上記第2の長尺ケーブルを上記第二の配管の上記他端開口部から上記第二の配管内に引き戻し、上記第二の配管の上記一端開口部から引き出して上記第二の配管内に上記第2の長尺ケーブルを通線するステップ;を有することを特徴としている。
【0012】
上記第2の長尺ケーブルは、具体的には例えばLANケーブルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の通線ツールによれば、ケーブル接続部で大径化することがなく(大径化を抑制することができ)、断線のおそれを小さくすることができる。また、大径化を抑制することで、通線するケーブルが硬質の場合には、螺旋線材を用いることなく、ケーブルを押込通線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による通線ツールの一実施形態の使用態様を示す図である。
【
図2】
図2Aは同通線ツール単体の拡大正面図、
図2Bは同通線ツール単体の拡大平面図、
図2Cは同通線ツール単体の拡大底面図である。
【
図4】本発明による通線ツールを適用する通線対象ケーブルの一例であるドロップケーブルの横断面図である。
【
図5】同ドロップケーブルを本発明による通線ツールに接続する準備状態を示す図である。
【
図6】本発明による通線ツールの使用方法を説明する図である。
【
図7】本発明による通線ツールの別の実施形態の使用態様を示す図である。
【
図8】本発明による通線ツールの別の実施形態を適用する通線対象ケーブルの他の一例であるLANケーブルの拡大縦断面図である。
【
図9】
図9Aは本発明による通線ツール単体を二部材で形成した実施形態の、二部材を結合する前の拡大平面図、
図9Bは同通線ツール単体の別の実施形態の結合前の拡大正面図、
図9Cは同通線ツール単体の別の実施形態の結合前の拡大底面図である。
【
図10】同通線ツール単体の別の実施形態の拡大右側面図である。
【
図11】同通線ツール単体の螺旋溝に沿って切断して二本の溝の関係を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12Aは同通線ツール単体の別の実施形態の二部材を結合した拡大平面図、
図12Bは通線ツール単体の別の実施形態の二部材を結合した拡大正面図、
図12Cは同通線ツール単体の別の実施形態の二部材を結合した拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし
図3は、本発明による通線ツール10の第一の実施形態を示している。この実施形態は、ドロップケーブル20を通線対象ケーブルとして、従来の螺旋線材(呼び線)を用いることなく、押込通線を可能とした実施形態である。ドロップケーブル20は、
図4に示す断面形状を有する一様線材であり、光ファイバ心線21、金属製支持線22及びテンションメンバ23を難燃性樹脂製シース24で被覆したもので(
図4、
図5)、このドロップケーブル20の縦方向と横方向の寸法は、4mmと2mm、金属製支持線22は、直径1.2mm(被覆径2.0mm)である。光ファイバ心線21(テンションメンバ23)と金属製支持線22は、ノッチ25部分から切断(離反)させることができる。光ファイバ心線21、金属製支持線22、及びテンションメンバ23はいずれも断面円形の線材である。ドロップケーブル20は、具体的には、住友電工(株)製の品名『ドロップケーブル、0.25mm素線タイプ、1心型』であり、NTTの屋内配線用光ファイバとして広く用いられている。
【0016】
通線ツール10は、金属製の棒状部材(円柱状素材)11を基本素材とするもので、その長さ方向に順に、一端部の先端ガイド部材接続部(柔軟部材接続部)12、長さ方向の中間部分の薄肉部(偏平部)13、及び受入溝(螺旋溝)15を備えている。薄肉部13にその板厚平面に直交する貫通穴(掛止部)14が形成されている。
【0017】
通線ツール10は、ドロップケーブル20の被覆を含む金属製支持線22を掛け止めるものであり、全体として円柱状をなすその直径は、この実施形態では5mmとしている。受入溝15は、薄肉部13の一方の面を始点として貫通穴14から先端ガイド部材接続部12とは反対側の棒状部材11の端部に延びる主螺旋溝15aと、他方の面を始点として貫通穴14から先端ガイド部材接続部12とは反対側に延びる副螺旋溝15bと、主螺旋溝15aに連なる断面コ字状の直線溝15cを有している。主螺旋溝15aは、棒状部材11の端部側において直線溝(断面U(コ)字状溝)15cとなっている。薄肉部13側における主螺旋溝15aと副螺旋溝15bの幅と深さは、例えば2.5×2.0mmであり、棒状部材11の端部における直線溝15cの幅と深さは、例えば3.0×4.0mmであり、ドロップケーブル20の被覆を含む金属製支持線22(被覆径2mm)を収納可能である。副螺旋溝15bは、棒状部材11の端部には達しておらず、主螺旋溝15aと副螺旋溝15bを隔てる分離壁15dには、連通溝15eが形成されている。主螺旋溝15aのねじれ角、リード、溝長は、主螺旋溝15a形成部分の軸方向長さを勘案し、金属製支持線22を充分な摩擦力で棒状部材11に保持できるように定める。具体例を挙げると、例えば、棒状部材11の主螺旋溝15a形成部分の軸方向長さを20~30mmとしたとき、その軸方向から見た形成角度を180゜~270゜とすることができる。勿論、この軸方向長さ及び形成角度については例示であり、自由度がある。
主螺旋溝15aと副螺旋溝15bは、貫通穴14の表裏の開口端に連なる一対の螺旋溝を構成しており、直線溝15cは、棒状部材11の軸線と平行な溝である。
【0018】
図9ないし
図12は、通線ツール10’の別の形態(通線ツール単体の第2の実施形態)を示している。この通線ツール10’は、共に棒状の柔軟部材接続体12Xと、有溝部材15Xの2部材からなるもので、柔軟部材接続体12Xにはその一端部に、先端ガイド部材接続部(柔軟部材接続部)12が形成され、他端部に、互いに直交させて(交差させて)、有溝部材15X側の端部が開放された共に径方向に貫通した貫通溝14Xと接続溝14Yが形成されている。径方向貫通溝14Xは径方向接続溝14Yより距離aだけ深い。有溝部材15Xには、
図2ないし
図3の形態と同様に、主螺旋溝15a、副螺旋溝15b、直線溝15c、分離壁15d及び連通溝15eが形成されており、その柔軟部材接続体12X側の端部に、接続溝14Yに嵌まる接続偏平部15Yが形成されている。有溝部材15Xの偏平部15Yを柔軟部材接続体12Xの14Yに嵌めた状態で、柔軟部材接続体12Xと偏平部15Xを例えば溶接により固定すると、
図12A、
図12Cに示すように平面矩形の貫通穴14Rが形成される。
【0019】
以上の通線ツール10(10’)の代表的な(主な)使用態様は次の通りである。通線ツール10の先端ガイド部材接続部12には、
図1に示す先端ガイド部材(柔軟部材)16がかしめリング16cにより結合されて第1の通線ツールユニット100が構成される。先端ガイド部材16は、ステンレス線材の撚り線からなるフレキシブルワイヤ(第1の柔軟部材)16aの先端部(一端部)に先端金具(金属塊)16bを結合してなるもので、他端部に、かしめリング16cが備えられている。先端ガイド部材接続部12には、かしめリング16cをかしめ止めるかしめ溝12aが形成されていて、かしめリング16cが、フレキシブルワイヤ16aと先端ガイド部材接続部12を結合する。先端金具(金属塊)16bは、フレキシブルワイヤ16aより若干大径で先端部が半球状をなしており、長手方向と直交する貫通孔16b1が形成されている。この貫通孔16b1は、従来品と同様に、ケーブルを挿通して結合する使用態様を可能とするものである。
【0020】
この第1の通線ツールユニット100の通線ツール10には、次のようにして、その受入溝15に、ドロップケーブル20の金属製支持線22が結合される。ドロップケーブル20の金属製支持線22は、ノッチ25を分離ラインとして光ファイバ心線21(テンションメンバ23)部分と離間され、受入溝15に掛け止められる。金属製支持線22は、単独で曲折に大きな力を要する硬度を持っており、その先端が、
図5に示すように、ペンチ等の工具を用いてL字形に屈曲加工される。L字形の先端部22aは、貫通穴14(14R)に嵌められ、先端部22aに連続する線状部22bは、曲折させながら受入溝15の主螺旋溝15aから直線溝15cに嵌められる。先端部22aの長さは、貫通穴14(14R)内(棒状部材11の径)内に収まる長さとする(図示例では、2mmとしている)。
【0021】
具体的には、この実施形態では、金属製支持線22の被覆を含む外径は2mmであるのに対し、直線溝15c(主螺旋溝15a)の幅と深さは、3.0×4.0mm(2.5×2.0mm)であるので、少なくとも棒状部材11の直線溝15c側の端部においては、(被覆を含む)金属製支持線22は棒状部材11の外径内に収まる。このようにして、棒状部材11(通線ツール10)の外径内に金属製支持線22を収納したら、必要に応じ、通線ツール10(棒状部材11)の貫通穴14(14R)及び受入溝15の外周に粘着テープを巻いて金属製支持線22の通線ツール10(主螺旋溝15a)からの脱落(部分的な離反)を防ぐ。直線溝15cは、主螺旋溝15aに巻かれた金属製支持線22が棒状部材11の軸線と平行に延びるように矯正している。
【0022】
このようにして、通線ツール10にドロップケーブル20の金属製支持線22を結合した第1の通線ツールユニット100は、先端ガイド部材16の先端金具16bを先頭にして、配管の一端開口部から同配管内に押込挿入される(
図1、
図6)。第1の通線ツールユニット100は、この第一の使用態様では、
図6に示した家屋Hの二階2F外部から家屋H内の一階1Fに連なる配管Pの二階2F側において屋外に開口した開口部(一端開口部)に屋外から押込挿入され、配管P内を通り、配管Pの一階1F側の開口部(他端開口部)から室内に突出し、一階1Fの室内において金属製支持線22から外される。ドロップケーブル20の金属製支持線22は、十分な硬さを有するため、配管P内に押込挿入することが可能である。また、先端部が半球状をなす先端金具16bは、配管P内への挿入を容易にする。先端ガイド部材16の先端金具16bが配管Pの他端開口部から突出したら(顔を出したら)、金属製支持線22(ドロップケーブル20)の一端部を配管Pの他端開口部から引き出す。以上の動作で配管内へのドロップケーブル20の通線は完了するから、第1の通線ツールユニット100(通線ツール10)を金属製支持線22から外す。配管Pは、例えば(現状の家屋では)、14mmの外径を有する合成樹脂製蛇腹パイプ(フレキCD管)であり、建築基準を満たす曲率(一定以上の曲率半径)を有するように、配管される。
【0023】
図6は、同時に、本通線ツール10の別の使用態様を示している。この使用態様は、家屋Hの二階2F外部から家屋H内の一階1Fに連なる第一の配管P1内に家屋H外からドロップケーブル20を通線し(第一の使用態様と同一)、家屋H内において一階1Fから二階2Fに連なる、配管P1とは独立した第二の配管P2内に、LANケーブル(第2の長尺ケーブル)30を通線する態様に、本通線ツール10を有する上述の第1の通線ツールユニット100と、第2の通線ツールユニット200を用いるものである。LANケーブル30は、
図8に示すように、複数(例えば8本)の均質な柔軟な金属芯線31をシース内に収納したものである。
【0024】
第2の通線ツールユニット200は、
図7に示すように、フレキシブルワイヤ(第2の柔軟部材)16a’の両端部に、かしめリング16cにより、以上に説明した通線ツール10と同一構造の通線ツール10を向きを逆にして結合したものである。便宜上、一対の通線ツール10の一方を一端通線ツール10X、他方を他端通線ツール10Yとする。
【0025】
まず、上述の第1の使用態様と同様に、配管P1の二階2F屋外側の開口部(一端開口部)から、一端通線ツール10Xにドロップケーブル20(金属製支持線22)を結合した第1の通線ツールユニット100を、先端ガイド部材16(先端金具16b)を先頭にして挿入する。配管P1の一階1F側の開口部(他端開口部)から先端ガイド部材16(先端金具16b)が突出したら、その先端ガイド部材16(先端金具16b)を配管P2の一階1F側の開口部(一端開口部)から挿入し、二階2F側の開口部(他端開口部)に通線する。この状態では、配管P1と配管P2に一連のドロップケーブル20が通線されている。
【0026】
次に、配管P2の二階2F側の開口部から露出したドロップケーブル20から第1の通線ツールユニット100を外す。すなわち、第1の通線ツールユニット100の通線ツール10に結合されているドロップケーブル20(金属製支持線22)を結合時とは逆の動作により離脱させる。配管P2の二階2F側の開口部から室内に露出しているドロップケーブル20(金属製支持線22)には、第2の通線ツールユニット200を結合する。
【0027】
すなわち、第2の通線ツールユニット200の一端通線ツール10Xには、配管P2の二階2F側の開口部から室内に露出しているドロップケーブル20(金属製支持線22)を、上述の第1の通線ツールユニット100に対する作業と同一の作業により接続する。一方、他端通線ツール10Yには、LANケーブル30を結合する。LANケーブル30は、上述のように、複数(図示例では8本)の柔軟な金属芯線31を備えているから、これらの柔軟金属芯線31から選択した複数の芯線(例えば4本)を(2本ずつ)の2束に分け、その一方を他端通線ツール10Yの貫通穴14(14R)に挿通して主螺旋溝15aから直線溝15cに導き、他方を副螺旋溝15bから連通溝15eに通して直線溝15cに合流させ、合流した2束の柔軟金属芯線31を結び部31cで結ぶ(
図7)。2束に分ける芯線数は、最大4本、最小2本とするのが好ましく、他端通線ツール10Yに収納できない余分な芯線は切除する。このようにして、他端通線ツール10YにLANケーブル30の柔軟金属芯線31を結合したら、同他端通線ツール10Y(棒状部材11)の貫通穴14(14R)及び受入溝15の外周に粘着テープを巻いてLANケーブル30の他端通線ツール10Y(主螺旋溝15a)からの脱落(部分的な離反)を防ぐ。
LANケーブル30は、2束の柔軟金属芯線31の一方を他端通線ツール10Yの直線溝15cに嵌め、主螺旋溝15aに巻き付けて先端部を貫通穴14(14R)に挿通し、他方を直線溝15c及び連通溝15eに嵌め、副螺旋溝15bに巻き付けて先端部を貫通穴14(14R)に他方とは反対側から挿通して一方と他方を合流させてもよい。
LANケーブル30は、全束の柔軟金属芯線31の先端部を他端通線ツール10Yの貫通穴14(14R)に挿通してシース側の束を主螺旋溝15aから直線溝15cに導き、貫通穴14(14R)に挿通した先端部側の束を副螺旋溝15bから連通溝15eに通して直線溝15cに合流させ、合流した2束の柔軟金属芯線31を結んでもよい。
【0028】
このようにして、第2の通線ツールユニット200の一端通線ツール10Xに、配管P2に対する通線が終了し第2の配管P2の二階2F側の開口部から室内に露出しているドロップケーブル20(金属製支持線22)を接続し、他端通線ツール10YにLANケーブル30を接続したら、第2の配管P2の一階1F側の開口端部から、第2の通線ツールユニット200に接続されているドロップケーブル20(金属製支持線22)を引く。すると、ドロップケーブル20(金属製支持線22)、第2の通線ツールユニット200(一端通線ツール10X、フレキシブルワイヤ16a、他端通線ツール10Y)、LANケーブル30の順に、配管P2内に引き込まれる。配管P2の一階1F側の開口端部からLANケーブル30が露出すれば、配管P2内へのLANケーブル30の通線が終了する。(ドロップケーブル20(金属製支持線22)、第2の通線ツールユニット200、LANケーブル30を第2の配管P2の二階2F側の開口端から第2の配管P2内に引き戻し、第2の配管P2の一階1F側の開口端から引き出して、第2の配管P2内にLANケーブル30を通線する)。その後、第2の通線ツールユニット200をドロップケーブル20(金属製支持線22)から外し、屋外から不要な同ドロップケーブル20を巻き取って通線作業を終了する。家屋Hの一階1F室内に露出したドロップケーブル20、LANケーブル30はそれぞれに応じた端末処理され、光回線終端装置(ONU)、ルータ等に接続される。
【0029】
本発明の第1の通線ツールユニット100及び第2の通線ツールユニット200は、通線ツール10にドロップケーブル20(金属製支持線22)を接続した接続部分の外径が細いので、配管P、P1、P2に押し込み挿通する際に配管P、P1、P2内周面との接触摩擦が小さく、ドロップケーブル20(金属製支持線22)自身による配管への挿通作業を容易に行える。
第1の通線ツールユニット100は、ドロップケーブル20(金属製支持線22)のみによって、ドロップケーブル20自身の挿通を行うことができるので、挿通作業に他の部材が不要であり、作業効率がよい。
本実施形態では、長尺ケーブル(第1の長尺ケーブル)としてドロップケーブル20を図示したが、本発明は図示ドロップケーブル20に限らず、一定の硬さ、柔軟性を有する長尺ケーブル全般に適用可能である。また、以上の実施形態における棒状部材11に形成した主螺旋溝15aの幅と深さは、ドロップケーブル20の被覆を含む金属製支持線22(被覆径2mm)を全て収容できる2.5×2.0mmとしたが、同金属支持線22が棒状部材11から径方向に若干突出する寸法としても同様の効果を得ることができる。さらに、通線ツール10の具体的な寸法は例示であり、通線する長尺ケーブル(ドロップケーブル20)の具体的な寸法に応じて決定できる。
本実施形態では第2の長尺ケーブルとしてLANケーブル30を示したが、本発明はLANケーブル30に限らず、電話線など複数の芯線を有する長尺ケーブルや同軸ケーブルなど柔軟な芯線を有する長尺ケーブル全般に適用可能である。
【0030】
以上の実施形態に示した通線ツール10’は、既存(市販)のドリルビットを加工して形成可能であり、安価に提供できるという利点があるが、本発明は、通線ツール10あるいは通線ツール10’の形成態様を問うものではない。受入溝15(主螺旋溝15a、副螺旋溝15b、直線溝15c)は、通線ツールユニット100として用いる場合には、ドロップケーブル20の金属製支持線22を保持できればその態様を問わず、第1の通線ツールユニット100及び第2の通線ツールユニット200として用いる場合には、ドロップケーブル20の金属製支持線22とLANケーブル30の金属芯線31を保持できればその態様を問わない。
【符号の説明】
【0031】
10 10’ :通線ツール
10X :一端通線ツール
10Y :他端通線ツール
11 :棒状部材
12 :先端ガイド部材接続部(柔軟部材接続部)
12X :柔軟部材接続体
12a :溝
13 :薄肉部
14(14R) :貫通穴(掛止部)
14X :貫通溝
14Y :接続溝
15X :有溝部材
15Y :偏平部
15 :受入溝
15a :主螺旋溝(受入溝)
15b :副螺旋溝(受入溝)
15c :直線溝(受入溝、断面U字状溝)
15d :分離壁
15e :連通溝(受入溝)
16 : 先端ガイド部材
16a :フレキシブルワイヤ(柔軟部材、第1の柔軟部材)
16a’ :フレキシブルワイヤ(第2の柔軟部材)
16b :先端金具
16c :かしめリング
20 :ドロップケーブル(長尺ケーブル、第1の長尺ケーブル)
21 :光ファイバ心線
22 :金属製支持線
22a :先端部
22b :線状部
23 :テンションメンバ
24 :難燃性樹脂製シース
25 :ノッチ
30 :LANケーブル(第2の長尺ケーブル)
31 :金属芯線
31c :結線部
100 :第1の通線ツールユニット
200 :第2の通線ツールユニット
H :家屋
LC :LANケーブル
P :配管
P1 :第一の配管
P2 :第二の配管