IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許7025209有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220216BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220216BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
C08G59/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017544044
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2017028025
(87)【国際公開番号】W WO2018030232
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2016155593
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-234421(JP,A)
【文献】特表2013-537247(JP,A)
【文献】特開2016-120683(JP,A)
【文献】特開平06-172510(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199093(WO,A1)
【文献】特開昭64-070516(JP,A)
【文献】特開2005-146038(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019298(WO,A1)
【文献】Guo, Haiqing; Fang, Zhen; Kajiwara, Atsushi; Kamachi, Mikiharu,Block copolymer synthesis of para-methoxystyrene and cyclohexene oxide and 1,2,5,6-diepoxycyclooctan,Gaofenzi Xuebao,中国,2002年,(5),555-559,http://www.gfzxb.org/EN/abstract/abstract9660.shtml
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C09K 3/10
H01L 51/50
H05B 33/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物からなり、
前記カチオン重合性化合物は、下記式(1-1)で表される化合物を含有する
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤
【化1】
式(1-1)中、Rは、結合手、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキレン基、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2~18のアルケニレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキル基である
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物は、さらにその他のカチオン重合性化合物を含有し、
カチオン重合性化合物全体100重量部中における前記式(1-1)で表される化合物の含有量が10重量部以上90重量部以下である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記その他のカチオン重合性化合物が、1分子中にシクロアルケンオキサイド基を2個以上有する化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項4】
E型粘度計を用いて25℃、50rpmの条件で測定した粘度が5mPa・s以上、200mPa・s以下である、請求項1、2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れる硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物からなる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス表示素子(有機EL表示素子)や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた電子デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性にも優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有する。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0004】
ところが、このような有機EL表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題があった。従って、有機EL表示素子においては、安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0005】
特許文献1には、上面発光型有機EL表示素子等において、有機EL表示素子基板の間に光硬化性接着剤を満たし、光を照射して封止する方法が開示されている。しかしながら、このような従来の光硬化性接着剤は、光照射時にアウトガスを発生して素子を劣化させたり、塗布性に劣るものであったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-357973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物からなる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、上記カチオン重合性化合物は、下記式(1-1)で表される化合物、下記式(1-2)で表される化合物、及び、下記式(1-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する硬化性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1-1)中、Rは、結合手、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキレン基、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2~18のアルケニレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキル基である。式(1-2)中、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数3~18のアルキレン基、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数3~18のアルケニレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキル基である。式(1-3)中、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキレン基、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2~18のアルケニレン基であり、R~R12は、それぞれ独立に、水素、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキル基である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、特定のカチオン重合性化合物を用いることにより、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物を含有する。
上記カチオン重合性化合物は、上記式(1-1)で表される化合物、上記式(1-2)で表される化合物、及び、上記式(1-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「本発明にかかるエポキシ化合物」ともいう)を含有する。本発明にかかるエポキシ化合物を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れるものとなる。また、本発明にかかるエポキシ化合物を含有することにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化後の柔軟性に優れ、フレキシブルな電子デバイスにも対応するものとなる。
【0013】
上記式(1-1)中のR、上記式(1-2)中のR、並びに、上記式(1-3)中のR及びRは、他の成分との相溶性や硬化物の硬度の観点から、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~18のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数3~12のアルキレン基であることがより好ましい。
【0014】
上記式(1-1)で表される化合物としては、例えば、1,3-ブタジエンジエポキシド、1,5-ヘキサジエンジエポキシド、1,7-オクタジエンジエポキシド、1,9-デカジエンジエポキシド、1,11-ドデカジエンジエポキシド等が挙げられる。
上記式(1-2)で表される化合物としては、例えば、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロヘプタン、1,2-エポキシシクロオクタン、1,2-エポキシシクロデカン、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロペンタン、5,6-エポキシ-1-シクロオクテン等が挙げられる。
上記式(1-3)で表される化合物としては、例えば、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
本発明にかかるエポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、東京化成工業社製の試薬等が挙げられる。
なかでも、上記カチオン重合性化合物は、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性及び硬化後の柔軟性に特に優れるものとなることから、上記式(1-1)で表される化合物を含有することが好ましく、1,7-オクタジエンジエポキシドを含有することがより好ましい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他のカチオン重合性化合物を含有してもよい。
上記その他のカチオン重合性化合物としては、例えば、1分子中にシクロアルケンオキサイド基を2個以上有する化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のその他のエポキシ化合物や、オキセタン化合物や、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性により優れるものとなることから、1分子中にシクロアルケンオキサイド基を2個以上有する化合物が好ましく、1分子中にシクロヘキセンオキサイド基を2個以上有する化合物がより好ましい。
【0016】
上記1分子中にシクロヘキセンオキサイド基を2個以上有する化合物としては、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0017】
上記その他のカチオン重合性化合物を含有する場合、カチオン重合性化合物全体100重量部中における本発明にかかるエポキシ化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は90重量部である。本発明にかかるエポキシ化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が、塗布性、アウトガスを抑制する効果、及び、柔軟性により優れるものとなる。本発明にかかるエポキシ化合物の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は80重量部、更に好ましい上限は50重量部である。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カチオン重合開始剤を含有する。
上記カチオン重合開始剤としては、加熱によりプロトン酸又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤や、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生する光カチオン重合開始剤が挙げられ、イオン性酸発生型であってもよいし、非イオン性酸発生型であってもよい。
【0019】
上記熱カチオン重合開始剤としては、BF 、PF 、SbF 、又は、(BX(ただし、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)を対アニオンとする、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、第4級アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、又は、ヨードニウム塩が好ましく、スルホニウム塩がより好ましい。
【0020】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4-メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素等が挙げられる。
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
上記第4級アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウム、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネートヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0021】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4(いずれも三新化学工業社製)、CXC-1612、CXC-1738、CXC-1821(いずれもKing Industries社製)等が挙げられる。
【0022】
上記光カチオン重合開始剤のうちイオン性光酸発生型のものとしては、例えば、アニオン部分がBF 、PF 、SbF 、又は、(BX(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、又は、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0023】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0024】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0025】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0026】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0027】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0028】
上記光カチオン重合開始剤のうち非イオン性光酸発生型のものとしては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
【0029】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、DTS-200(みどり化学社製)、UVI6990、UVI6974(いずれもユニオンカーバイド社製)、SP-150、SP-170(いずれもADEKA社製)、FC-508、FC-512(いずれも3M社製)、IRGACURE290(BASF社製)、PI2074(ローディア社製)等が挙げられる。
【0030】
上記熱カチオン重合開始剤と上記光カチオン重合開始剤との両方に記載されているものについては、上記熱カチオン重合開始剤として用いることもでき、上記光カチオン重合開始剤として用いることもできる。
【0031】
上記カチオン重合開始剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記カチオン重合開始剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性により優れるものとなる。上記カチオン重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化反応が速くなり過ぎず、作業性により優れるものとなり、硬化物をより均一なものとすることができる。上記カチオン重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記カチオン重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0033】
上記増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン系化合物や、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
【0034】
上記増感剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.05重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなり過ぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤を含有してもよい。熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
【0036】
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル-5-イソプロピルヒダントイン)、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、N-(2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル)尿素、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、N,N’-ビス(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)尿素、N,N’-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-アジポアミド、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、SDH(日本ファインケム社製)、ADH(大塚化学社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0038】
上記熱硬化剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱硬化剤の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量が30重量部以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が保存安定性により優れるものとなり、かつ、硬化物が耐湿性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物は、保存安定性を向上させること等を目的として、安定剤を含有してもよい。
上記安定剤としては、例えば、ベンジルアミン等のアミン系化合物やアミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
上記安定剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が2重量部である。上記安定剤の含有量がこの範囲であることにより、硬化阻害を抑制しつつ、得られる硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させる等の効果により優れるものとなる。上記安定剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0042】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤によるブリードアウトを抑制しつつ、得られる硬化性樹脂組成物の接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の塗膜の平坦性を向上させることができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0045】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、BYK-300、BYK-302、BYK-331(いずれも、ビックケミー・ジャパン社製)、UVX-272(楠本化成社製)、サーフロンS-611(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、素子電極の耐久性を向上させるために、硬化性樹脂組成物中に発生した酸と反応する化合物又はイオン交換樹脂を含有してもよい。
【0047】
上記発生した酸と反応する化合物としては、酸と中和する物質、例えば、アルカリ金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩、又は、アルカリ土類金属の炭酸塩若しくは炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が用いられる。
【0048】
上記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型、両イオン交換型のいずれも使用することができるが、特に塩化物イオンを吸着することのできる陽イオン交換型又は両イオン交換型が好適である。
【0049】
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、残存した溶剤により有機発光材料層が劣化したりアウトガスが発生したりする等の問題が生じるおそれがあるため、溶剤を含有しないことが好ましい。
なお、粘度調整等を目的として溶剤を用いる場合は、溶剤の含有量が1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0050】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、硬化遅延剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃、50rpmの条件で測定した全体の粘度の下限が5mPa・s、上限が200mPa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物がインクジェット塗布性により優れるものとなり、かつ、有機EL表示素子の面内封止剤としてより好適なものとなる。上記粘度のより好ましい下限は8mPa・s、より好ましい上限は30mPa・sである。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、電子デバイスの封止、接着、コーティング等に好適に用いられ、電子デバイス用封止剤としてより好適に用いられる。なかでも、有機EL表示素子用封止剤として特に好適に用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物からなる有機EL表示素子用封止剤もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物からなる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0056】
(実施例1~9、比較例1~5)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1~9、比較例1~5の硬化性樹脂組成物を作製した。
【0057】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0058】
(1)粘度
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用いて、25℃、50rpmの条件における粘度を測定した。
【0059】
(2)塗布性
ピペットを用いて実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物0.1mLをガラス基板上に塗布し、1分後に広がった直径を測定した。直径が15mm以上だった場合を「◎」、12mm以上15mm未満であった場合を「○」、10mm以上12mm未満であった場合を「△」、10mm未満であった場合を「×」として、塗布性を評価した。
【0060】
(3)硬化性
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について、紫外線照射装置(クオークテクノロジー社製、「QEL-15SQ3W」)を用いて395nmの紫外線を1500mJ/cm照射して硬化させた。硬化前後の発熱量をDSC装置(リガク社製、「Thermo Plus2/DSC8230」)を用いて測定し、エポキシ基の反応率を下記式から導出した。なお、実施例8で得られた硬化性樹脂組成物については、紫外線照射に代えて100℃で30分間加熱を行って硬化させた。
エポキシ基の反応率(%)=100×(硬化前の発熱量-硬化後の発熱量)/硬化前の発熱量
エポキシ基の反応率が95%以上であった場合を「◎」、90%以上95%未満であった場合を「○」、70%以上90%未満であった場合を「△」、70%未満であった場合を「×」として硬化性を評価した。
なお、上記「硬化前の発熱量」は、未反応の硬化性樹脂組成物を高温での加熱により反応させ完全硬化した場合の発熱量を意味し、上記「硬化後の発熱量」は、硬化させた後の硬化性樹脂組成物の残留官能基の反応による発熱量を意味する。
【0061】
(4)柔軟性
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、2枚のPET樹脂の間に100μmの厚みで挟み、硬化性樹脂組成物に紫外線照射装置(クオークテクノロジー社製、「QEL-15SQ3W」)を用いて395nmの紫外線を1500mJ/cm照射して硬化し、厚み100μmの試験フィルムを作製した。なお、実施例8で得られた硬化性樹脂組成物については、紫外線照射に代えて100℃で30分間加熱を行って硬化させ、試験フィルムを作製した。
得られた試験フィルムを直径1cmの曲率に曲げた際、樹脂フィルムが割れなかった場合を「○」、樹脂フィルムが割れた場合を「×」として柔軟性を評価した。
【0062】
(5)低アウトガス性
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、バイアル瓶中に100mg計量して封入し、硬化性樹脂組成物に紫外線照射装置(クオークテクノロジー社製、「QEL-15SQ3W」)を用いて395nmの紫外線を1500mJ/cm照射して硬化させた。更に、このバイアル瓶を85℃の恒温オーブンで100時間加熱し、バイアル瓶中の気化成分を、ガスクロマトグラフ質量分析計(日本電子社製、「JMS-Q1050」)を用いて測定した。なお、実施例8で得られた硬化性樹脂組成物については、紫外線照射に代えて100℃で30分間加熱を行って硬化させた。
気化成分量が50ppm未満であった場合を「○」、50ppm以上100ppm未満であった場合を「△」、100ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
【0063】
(6)有機EL表示素子の表示性能
(有機発光材料層を有する積層体が配置された基板の作製)
ガラス基板(長さ30mm、幅30mm、厚さ0.7mm)にITO電極を1000Åの厚さで成膜したものを基板とした。上記基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV-オゾンクリーナ(日本レーザー電子社製、「NL-UV253」)にて直前処理を行った。
次に、この基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10-4Paまで減圧した。その後、α-NPDの入った坩堝を加熱し、α-NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いで、Alqの入った坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの有機発光材料層を成膜した。その後、正孔輸送層及び有機発光材料層が形成された基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mgを、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空蒸着装置の蒸着器内を2×10-4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、有機発光材料層を有する積層体が配置された基板を取り出した。
【0064】
(無機材料膜Aによる被覆)
得られた積層体が配置された基板の、該積層体全体を覆うように、開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Aを形成した。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成された無機材料膜Aの厚さは、約1μmであった。
【0065】
(樹脂保護膜の形成)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「ナノプリンター300」)を用いて、ガラス基板にインクジェット方式で80pLの吐出量で塗布した。塗布時には膜厚が20μm以下になるよう調整した。次いで、硬化性樹脂組成物に紫外線照射装置(クオークテクノロジー社製、「QEL-15SQ3W」)を用いて395nmの紫外線を1500mJ/cm照射した後、80℃で30分加熱して硬化させ、樹脂保護膜を形成した。なお、実施例8で得られた硬化性樹脂組成物については、紫外線照射に代えて100℃で30分間加熱を行って硬化させた。
【0066】
(無機材料膜Bによる被覆)
樹脂保護膜を形成した後、該樹脂保護膜の全体を覆うように、開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Bを形成して有機EL表示素子を得た。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成された無機材料膜Bの厚さは、約1μmであった。
【0067】
(有機EL表示素子の発光状態)
得られた有機EL表示素子を温度85℃、湿度85%の条件下にて100時間暴露した後、10Vの電圧を印加し、素子の発光状態(発光及びダークスポットの有無)を目視で観察した。ダークスポットや周辺消光が無く均一に発光した場合を「○」、ダークスポットや周辺消光が認められた場合を「△」、非発光部が著しく拡大した場合を「×」として評価した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、アウトガスの発生を抑制することができ、塗布性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物からなる有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することができる。