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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】起振装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20220216BHJP
   G01V 1/02 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
E02D1/00
G01V1/02 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018005884
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019124070
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510189950
【氏名又は名称】市原 道三
(73)【特許権者】
【識別番号】593153406
【氏名又は名称】岩淵 常太郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 道三
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 常太郎
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115397(JP,A)
【文献】特開平02-176011(JP,A)
【文献】特開2007-057472(JP,A)
【文献】特開昭63-277987(JP,A)
【文献】特開2004-347490(JP,A)
【文献】特開平06-109859(JP,A)
【文献】特開2015-090356(JP,A)
【文献】特開2009-074910(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104635110(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持杭が支持層に到達していることを判断するための振動を発生させる起振装置であって、
前記支持杭から平面視で離れた位置に形成され、かつ、前記支持層に到達するボーリング孔に挿入されるロッドと、
前記ロッドに取り付けられた起振手段と、を備えており、
前記起振手段は、前記ロッドと同等の外径を有した筒状の本体部と、前記本体部の内空部分に形成された断面視半円状の柱状体からなる錘部とにより重心が偏心している柱状部材であり、
当該起振手段は、前記ロッドを介して前記支持層内に配設されて、前記ロッドの上部に加えられた回転力を水平力に変換して、前記支持層に水平方向の振動を発生させることを特徴とする、起振装置。
【請求項2】
支持杭が支持層に到達していることを判断するための振動を発生させる起振装置であって、
前記支持杭から平面視で離れた位置に形成され、かつ、前記支持層に到達するボーリング孔に挿入されるロッドと、
前記ロッドに取り付けられた起振手段と、を備えており、
前記起振手段は、前記ロッドの先端に固定される取付部と、前記取付部から間隔をあけて前記取付部の下方に配設される底板と、前記取付部と前記底板との間に介設された球状または円柱状の弾性体と、を備えていて、
当該起振手段は、前記ロッドを介して前記支持層内に配設されて、前記ロッドの上部に加えられた鉛直力を水平力に変換して、前記支持層に水平方向の振動を発生させることを特徴とする、起振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
支持杭は、杭の先端(下端)を支持層に所定長貫入させることで、支持力を確保し、上部構造物等の上載荷重を支持するものである。
支持杭の施工管理としては、杭長や支持層到達の確認、杭の建込精度(角度や位置等)の確認、杭径や鉄筋等の品質確認等を行う必要がある。
【0003】
支持杭の杭長は、支持層に到達し得る長さに設定されている。支持層は、予め実施された地盤調査や既往の地盤データ等に基づいて作成された地層断面図から推定することが多い。
ところが、地層は必ずしも直線ではなく、傾斜や褶曲を伴うことがある。そのため、支持層の実際の位置(深さ)が、地層断面図に示された支持層の位置と異なっている場合がある。支持層の深さが地層断面図と異なっていると、杭を設計通り施工した場合であっても、杭の先端が支持層に到達しないことになる。
【0004】
そのため、支持杭の施工は杭の先端が支持層に到達することを確認しながら行うのが一般的である。例えば、特許文献1では、支持層内で弾性波を発生させて、支持杭の上部で受信した弾性波の到着時間または振幅によって、支持杭が支持層に到達しているか否かを判断している。
【0005】
支持層内で振動を発生させる起振装置としては、例えば、ボーリング孔内に配設されて、孔軸と直交する方向に振動する電磁ハンマーがある。また、特許文献2には、圧縮空気によりピストンを孔軸方向に駆動する打撃エネルギー発生部と、ピストンの孔軸方向の突出動作による打撃力を孔軸に直交する方向に変換する回転リンク機構と、回転リンク機構により方向変換された打撃力を孔壁に付与する打撃ハンマー部とを備えた起振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-115397号公報
【文献】特開2011-242340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
弾性波の到達時間による確認方法では、軟弱層中において弾性波速度が遅くなる弾性波の性質を利用して軟弱層の有無を判断するが、軟弱層の層厚が1m以下程度しかない場合には、弾性波速度の遅れの影響が小さいため、その判断が難しかった。一方、弾性波の振幅による確認方法では、振幅の距離減衰を考慮する必要があるが、距離減衰の程度は、地層構成によって異なる。そのため、弾性波の振幅による確認方法では、複数本の支持杭において測定した距離と振幅の関係から判定する必要があり、杭本数が少ない場合には適用することができなかった。
【0008】
また、前記電磁ハンマーは、電力を供給するための装置が必要であるとともに、ボーリング孔内に電線を配線する作業に手間がかかる。同様に特許文献2の起振装置も、圧縮空気を供給するための装置が必要となり、かつ、圧縮空気を輸送するパイプの配管に手間がかかる。
【0009】
このような観点から、本発明は、簡易な設備により、地層構成や支持杭の本数等に関わらず、支持杭が支持層に到達したことを正しく判断することを可能とした起振装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の起振装置は、支持杭が支持層に到達していることを判断するための振動を発生させるものであって、前記支持杭から平面視で離れた位置に形成され、かつ、前記支持層に到達するボーリング孔に挿入されるロッドと、前記ロッドに取り付けられた起振手段とを備えている。前記起振手段は、前記ロッドを介して支持層内に配設されて、前記ロッドの上部に加えられた力(回転力または鉛直力)を水平力に変換して、前記支持層に横方向の振動(せん断波)を発生させるものである。なお、起振手段は、前記ロッドと同等の外径を有した筒状の本体部と、前記本体部の内空部分に形成された断面視半円状の柱状体からなる錘部とにより重心が偏心している柱状部材であってもよいし、前記ロッドの先端に固定される取付部と、前記取付部から間隔をあけて前記取付部の下方に配設される底板と、前記取付部と前記底板との間に介設された球状または円柱状の弾性体とを備えたものであってもよい。
【0012】
なお、前記起振手段が、前記ロッドの軸心に対して重心が偏心した部材である場合には、前記ロッドに回転力を付与することで、起振手段がロッドに対してぶれてボーリング孔の孔壁を打撃することにより横方向の振動が発生する。
【0013】
また、前記起振手段が、前記ロッドの下端に取り付けられた球状または円柱状の弾性体を備えるものである場合には、前記起振手段を前記ボーリング孔の底面に当接させた状態で前記ロッドに鉛直力を付与すればロッドを介して加えられた鉛直力によって、孔壁を打撃してせん断波を発生させる。すなわち、鉛直力によって上下方向で圧縮された前記弾性体が横方向に拡径するように変形するため、前記ボーリング孔の孔壁を打撃して横方向の振動を発生させる。
【0014】
かかる起振装置によれば、支持層に対して直接せん断波を入力することで、支持杭の支持層到達の有無および軟弱層を介在の有無を判断することができる。そして、支持層に入力されたせん断波の減衰の様子を確認することで、軟弱層の存在を正確に判断することができる。そのため、軟弱層等の層厚や、支持杭の本数(測定点の数)等に限定されることなく、正確な判定を行うことが可能となる。また、振動の入力は、ロッドの打撃またはロッドの回転により行うため、通常のボーリング調査で使用する設備を利用すればよく、起振手段以外に特殊な設備を要しない。さらに、起振手段は簡易な構成なため、安価である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の起振装置によれば、各地層の層厚や支持杭の本数等に関わらず、支持杭が支持層に到達したことを正しく判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る支持層到達確認方法の概要を示す断面図である。
図2】第一の実施形態に係る支持層到達確認方法の削孔工程を示す断面図である。
図3図2に続く支持層到達確認方法の施工段階を示す図であって、(a)は据付工程の断面図、(b)は測定工程拡大断面図である。
図4】第一の実施形態の起振手段を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
図5】(a)は第二の実施形態の起振手段を示す断面図、(b)は同起振手段の他の形態を示す断面図である。
図6】(a)および(b)は、第二の実施形態に係る支持層到達確認方法の測定工程を示す断面図である。
図7】支持層到達確認方法について実施したモデル実験における試験モデルを示す断面図であって、(a)は実施例1、(b)は比較例1である。
図8】同モデル実験における測定結果を示すグラフであって、(a)は実施例1の加速度、(b)は比較例1の加速度である。
図9】支持層到達確認方法について実施したモデル実験における試験モデルを示す断面図であって、(a)は実施例2、(b)は比較例2である。
図10】同モデル実験における測定結果を示すグラフであって、(a)は実施例2の加速度、(b)は比較例2の加速度である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一の実施形態>
第一の実施形態では、杭基礎構造の建物を構築する場合において、支持杭1の先端が支持層G1に到達(貫入)しているか否かを確認する(図1参照)。本実施形態の支持層到達確認方法は、削孔工程と、据付工程と、測定工程とを備えている。なお、支持層到達確認方法において支持層G1への到達の確認を行う支持杭1の本数は限定されるものではなく、1本ずつ確認してもよいし複数本に対して同時に確認してもよい。
【0018】
削孔工程では、図2に示すように、支持層G1に到達するボーリング孔2を、支持杭1から平面視(水平方向)で離れた位置に形成する。ボーリング孔2は、支持層G1内に所定長貫入させた状態となるように形成する。本実施形態では、ボーリング孔2を形成した後、ロッド(ボーリングロッド)3を利用した標準貫入試験(ロッド3先端部のN値の測定)を行い、ボーリング孔2が支持層G1(支持杭1を到達させる支持層G1)に到達していることを確認する。なお、支持杭1とボーリング孔2との距離は限定されるものではないが、好ましくは0.2m~100mの範囲内、より好ましくは、0.2m~50mの範囲内とする。また、N値の測定は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
【0019】
据付工程では、図3(a)に示すように、ボーリング孔2内に起振装置5を据え付ける。本実施形態の起振装置5は、ロッド3と、ロッド3の下端部に着脱可能に取り付けられた起振手段4とを備えている。ロッド3をボーリング孔2に挿入することで、ロッド3の下端部に設けられた起振手段4が支持層G1内に配設される(図1参照)。
【0020】
ロッド3は、ボーリング孔2の削孔に利用したボーリングロッドである。削孔工程後、まず、ロッド3をボーリング孔2から一旦抜き出すとともに先端のビットを取り外す。次に、ロッド3の先端部に起振手段4を取り付ける。そして、起振手段4が取り付けられたロッド3をボーリング孔2に挿入する。このとき、起振手段4の先端(下端)をボーリング孔2の底面に当接させ、起振手段4の位置決めを行う。なお、起振手段4は、必ずしもボーリング孔2の底面に当接させる必要はなく、起振手段4とボーリング孔2の底面との間に隙間が形成されていてもよい。また、ロッド3には、複数の起振手段4を取り付けてもよい。また、ロッド3としてボーリングロッドを使用する必要はなく、専用のロッドを使用してもよい。
【0021】
本実施形態の起振手段4は、鋳鉄製の柱状部材である。起振手段4は、図4(a)および(b)に示すように、ロッド3と同等の外径を有した筒状の本体部41と、本体部41の内空部分に形成された錘部42とを備えている。本実施形態の錘部42は、断面視半円状の柱状体であって、本体部41の内空部分の約半分に形成されている。すなわち、本実施形態の起振手段4は、断面視半円状の空洞が形成された円柱状部材である。起振手段4は、内空部分の半分のみに錘部42が形成されているため、本体部41の軸心に対して(ロッド3の軸心に対して)重心が偏心している。なお、起振手段4の構成(形状等)は、重心が偏心していれば、限定されるものではない。例えば、密実な柱状部材の中心からずれた位置に貫通孔を形成したものであってもよいし、柱状部材の一部が欠損した部材であってもよい。また、本体部41の外径は、必ずしもロッド3と同等である必要はない。起振手段4は、密実な柱状部材を削孔することにより形成してもよいし、筒状部材(本体部41)の内空部に錘部42を固定することにより形成してもよい。さらに、起振手段4を構成する材料は、必ずしも鋳鉄である必要はなく、例えば、鋼材や鉄以外の合金であってもよい。
【0022】
起振手段4(本体部41)の上端には雄ネジ43が形成されている。起振手段4は、上端部(雄ネジ43)をロッド3の下端の雌ネジにねじ込むことにより、ロッド3の下端に固定されている。また、起振手段4(本体部41)の下端には、雌ネジ44が形成されている。本実施形態では、起振手段4の雌ネジ44に底部キャップ(蓋材)45が螺着されている。なお、起振手段4のロッド3への固定方法は限定されるものではなく、例えば、治具を介して固定してもよい。また、起振手段4は、必ずしも底部キャップ45を有している必要はない。
【0023】
測定工程では、ボーリング孔2から発せられたせん断波Sを支持杭1の上端部において受信する。せん断波Sは、ロッド3の上部に力を加え、ロッド3を伝達した力によって起振手段4がボーリング孔2の孔壁を打撃することにより発生する。せん断波Sは、支持杭1の上端部に設けられた受信器6(図1参照)により受信する。このとき、起振手段4の下端部がボーリング孔2の底面に当接しているため、摩擦力により生じたせん断波Sも受信器6により受信する。なお、起振装置5により発生させるせん断波Sは、常時微動以上の大きさとする。支持層G1に入力するせん断波Sの大きさが常時微動よりも小さい場合には、ロッド3に加える力(回転力)を増加させるか、ロッド3に設置する起振手段4の数や重量を増やせばよい。
【0024】
本実施形態では、図3(b)に示すように、ロッド3に回転力を付与することで、起振手段4がボーリング孔2の孔壁を打撃する。起振手段4の重心は、ロッド3の軸心に対して偏心しているため、ロッド3を回転させると、起振手段4の回転が偏心荷重によってロッド3の軸心に対してぶれる(暴れる)。その結果、起振手段4が、支持層G1内においてボーリング孔2の孔壁を打撃する。すなわち、起振手段4は、ロッド3の上部に加えられた回転力を水平力に変換し、支持層G1に水平方向(横方向)の振動(せん断波S)を発生させる。せん断波Sは、支持層G1を介して支持杭1に伝播する。支持杭1に伝播したせん断波Sの加速度の減衰や最大加速度によって支持杭1の支持層G1への到達を確認する。
【0025】
本実施形態の起振装置5を利用した支持層到達確認方法によれば、支持層G1に対して直接せん断波Sを入力するため、支持杭1の支持層G1への到達の有無および軟弱層G2を介在の有無を正確に判断することができる。支持杭1の先端が支持層G1に貫入している(支持杭1と支持層G1との間に異物が介在していない)場合には、加速度が徐々に減衰するのに対し、支持杭1と支持層G1との間に支持層G1以外の層(軟弱層G2等)が介在している場合には、加速度が急激に減速する。そのため、加速度の減衰の様子を確認することで、支持層G1への到達を正確に把握することができる。ゆえに、軟弱層G2等の層厚や、支持杭1の本数(測定点の数)等に限定されることなく、正確な判定を行うことが可能となる。
【0026】
加速度の減衰により支持層G1への到達の有無を確認することができるため、常時微動以上の大きさのせん断波Sを入力することができれば、ロッド3の上端部へ入力する起振力の調節や、受信データに対する細かいデータ処理が不要である。そのため、測定者の技術力に関わらず、正確に判断することができる。また、起振力が既知の場合は、最大加速度により軟弱層G2等の介在の有無を確認することができる。
【0027】
また、振動の入力(せん断波Sの発生)は、ロッド3の回転により行うため、通常のボーリング調査で使用する設備(削孔工程で使用したボーリングマシン)を利用すればよい。そのため、弾性波等を発生させる装置等を別途使用する確認方法に比べて、安価であるとともに、段取り替え等(配線作業や制御手段の設置等)に要する手間や時間を省略することができる。
【0028】
せん断波Sは、起振手段4によって直接的に支持層G1を打撃することにより発生させるため、地下水の湯無に関わらず支持層G1に入力することができる。そのため、地山状況に限定されることなく、正確に判断することができる。
【0029】
<第二の実施形態>
第二の実施形態では、第一の実施形態と同様に、杭基礎構造の建物を構築する場合において、支持杭1の先端が支持層G1に到達(貫入)しているか否かを確認する。第二の実施形態の支持層到達確認方法は、削孔工程と、据付工程と、測定工程とを備えている。なお、第二の実施形態の削孔工程の詳細は、第一の実施形態の削孔工程と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0030】
据付工程では、ボーリング孔2内に起振装置5を据え付ける(図3(a)参照)。本実施形態の起振装置5は、ロッド3と、ロッド3の下端部に着脱可能に取り付けられた起振手段7(図5(a)参照)とを備えている。ロッド3をボーリング孔2に挿入することで、ロッド3の下端部に設けられた起振手段7が支持層G1内に配設される。
【0031】
ロッド3には、ボーリング孔2の削孔に利用したもの(ボーリングロッド)を使用する。削孔工程後、まず、ロッド3を一旦ボーリング孔2から抜き出し、ロッド3の先端部に起振手段7を取り付ける。そして、起振手段7が取り付けられたロッド3をボーリング孔2に挿入する。このとき、起振装置5は、起振手段7の先端(下端)をボーリング孔2の底面に当接させる。なお、起振手段7は、他の部材を介してボーリング孔2の底面に当接させてもよい。
【0032】
本実施形態の起振手段7は、図5(a)に示すように、ロッド3の先端に固定される取付部71と、取付部71から間隔をあけて取付部71の下方に配設される底板72と、取付部71と底板72との間に介設された弾性体73と、底板72から取付部71に至る留め具74とを備えている。
【0033】
取付部71は、底部が遮蔽された柱状部材である。本実施形態の取付部71を構成する材料は、ロッド3と同質のものとする。なお、取付部71を構成する材料は、ロッド3を介して伝達される力に対して十分な強度を有していれば限定されるものではない。取付部71の上端部には、雄ネジ75が形成されている。取付部71は、雄ネジ75をロッド3の下端にねじ込むことにより、ロッド3に固定される。取付部71の底部には、留め具74を挿通するための貫通孔が形成されている。
【0034】
底板72は、円形の鋼板である。なお、底板72は、必ずしも円形である必要はない。また、底板72を構成する材料は限定されるものではない。底板72の中心部には、雌ネジが形成されている。底板72の雌ネジには留め具74が螺合される。なお、底板72は、必要に応じて設ければよく、弾性体73の取付部71への固定方法によっては省略してもよい。
【0035】
弾性体73は、硬質ゴム製の球体である。なお、弾性体73は、必ずしも球体である必要はなく、例えば、円柱状であってもよい(図5(b)参照)。弾性体73を円柱状にした場合には、弾性体73の中心軸がロッド3の中心軸と一致するように配置する。弾性体73の上端は取付部71の底面に当接しており、弾性体73の下端は底板72の上面に当接している。弾性体73には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。弾性体73の貫通孔には、留め具74が貫通している。また、弾性体73を構成する硬質ゴムの高度(弾性係数)は限定されるものではないが、好ましくは、60~90度の範囲内とする。さらに、弾性体73は、密実部材であってもよいし、内部に空洞を有していてもよい。
【0036】
留め具74は、寸切ボルトからなる。留め具74は、弾性体73を貫通しているとともに、上端部が取付部71に係止されていて、下端部が底板72に固定されている。留め具74は、取付部71の底部を挿通した上端部に当該底部の上面においてナット76が螺着されていることで、取付部71に係止されている。また、留め具74の下端は、底板72の雌ネジに螺着されている。こうすることで、留め具74は、取付部71に対して上方に移動可能となる。なお、留め具74の固定方法は限定されるものではなく、例えば、底板72に対して溶接してもよい。また、留め具74は、弾性体73を取付部71と底板72との間に設置することができれば、必ずしも寸切ボルトである必要はない。
【0037】
測定工程では、ボーリング孔2から発せられたせん断波Sを支持杭1の上端部において受信する。せん断波Sは、図6(a)および(b)に示すように、ロッド3の上部に力を加え、ロッド3を伝達した力によって起振手段7がボーリング孔2の孔壁を打撃することにより発生する。せん断波Sは、支持杭1の上端部に設けられた受信器6により受信する。
【0038】
本実施形態では、ロッド3の上端を上方から打撃することで、起振手段7がボーリング孔2の孔壁を打撃する。ロッド3の上端を上方から打撃すると、図6(b)に示すように、ロッド3を介して伝達された鉛直力によって取付部71が下方向に押し下げられる。取付部71が押し下げられると、弾性体73が上下方向で圧縮される。そのため、圧縮された弾性体73は、横方向に拡径して、ボーリング孔2の孔壁を打撃する。すなわち、起振手段7は、ロッド3の上部に加えられた鉛直力を水平力に変換し、支持層G1に水平方向の振動(せん断波S)を発生させる。せん断波Sは、支持層G1を介して支持杭1に伝播する。支持杭1に伝播したせん断波Sの加速度の減衰や最大加速度によって支持杭1の支持層G1への到達を確認する。起振装置5により発生させるせん断波Sは、常時微動以上の大きさとする。支持層G1に入力するせん断波Sの大きさが常時微動よりも小さい場合には、ロッド3に加える打撃力(ロッド3に落下させる錘等)を大きくする。
【0039】
本実施形態の起振装置5を利用した支持層到達確認方法によれば、振動の入力(せん断波Sの発生)は、ロッド3の打撃により行うため、通常のボーリング調査(標準貫入試験)で使用する設備を利用すればよい。そのため、弾性波等を発生させる装置等を別途使用する確認方法に比べて、安価であるとともに、段取り替え等に要する手間や時間を省略することができる。
この他の第二の実施形態の支持層到達確認方法および起振装置5による作用効果は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、起振手段4,7の取り付けか所は、支持層G1内に配置することが可能であれば、ロッド3の下端に限定されるものではない。すなわち、支持層G1がボーリング孔2の中間部に位置している場合には、ロッド3の中間部に起振手段4,7を配置してもよい。
【0041】
支持層到達確認は、支持杭1毎に行ってもよいし、複数の支持杭1に対して同時に行ってもよい。すなわち、ボーリング孔2を介して支持層G1に入力したせん断波Sを、1本の支持杭1によって受信してもよいし、複数本の支持杭1によって同時に受信してもよい。
【0042】
<実施例1>
次に、本発明の実施形態に係る支持層到達確認方法について実施したモデル実験について説明する。
まず、せん断波Sの減衰により、支持層到達の有無を確認する方法のモデル実験結果について説明する。実施例1では、図7(a)に示すように、地中に埋設されたコンクリート板81で支持層G1を模擬し、コンクリート製の柱状部材82で支持杭1を模擬した。すなわち、コンクリート板81とコンクリート板81の上面に立設する柱状部材82とを備えた模型を地中に埋設して実験を行った。本実験では、コンクリート板81に対してせん断波Sを入力した際の振動を柱状部材82の上端で受信した。せん断波Sの入力は、コンクリート板81の端面を水平に打撃することにより行った。なお、比較例1として、コンクリート板81と柱状部材82との間に隙間(軟弱層G2)を設けた場合(図7(b)参照)についても同様の実験を実施した。
【0043】
図8(a)および(b)に実施例1および比較例1の試験結果(測定結果)を示す。図8(a)に示すように、実施例1では、加速度が徐々に減少する波形を示している。一方、比較例1の加速度は、図8(b)に示すように、第三波と第四波との間で急激に減少する波形となった。すなわち、支持層G1に支持杭1が到達している場合には、支持杭1で受信した振動の加速度が徐々に減少するに対し、支持層G1と支持杭1との間に軟弱層G2が介在していると、同加速度が急激に減少することが確認できた。そのため、せん断波Sの加速度の波形を確認することで、支持層G1と支持杭1との間に軟弱層G2が介在しているか否かを確認することができる。
【0044】
<実施例2>
次に、最大加速度により支持層到達の有無を確認する方法について実施したモデル実験について説明する。実施例2では、図9(a)に示すように、地中に埋設されたコンクリート板81で支持層G1を模擬し、コンクリート製の柱状部材82で支持杭1を模擬し、さらに柱状部材82から離れた位置に配置した第二柱状部材83で起振手段4を模擬した。すなわち、コンクリート板81と、コンクリート板81の上面に立設する柱状部材82および第二柱状部材83を備えた模型を地中に埋設して実験を行った。本実験では、第二柱状部材83を回転させることで連続的にせん断波Sをコンクリート板81に入力し、その振動を柱状部材82の上端で受信した。また、比較例2として、図9(b)に示すように、コンクリート板81の上面と柱状部材82の下面との間に隙間(軟弱層G2)を設けた場合についても同様の実験を実施した。
【0045】
図10(a)および(b)に実施例2および比較例2の試験結果を示す。図10(a)に示すように、実施例2では、加速度の最大値が42cm/s程度であった。一方、比較例2では、図10(b)に示すように、加速度の最大値が120cm/m程度となり、実施例に比べて3倍近い値となった。したがって、起振力が既知の場合には、最大加速度を判断指標として、支持層G1と支持杭1との間に軟弱層G2が介在しているか否かを確認することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 支持杭(杭)
2 ボーリング孔
3 ロッド
4 起振手段
5 起振装置
6 受信器
7 起振手段
71 取付部
72 底板
73 弾性体
81 コンクリート板
82 支持杭
83 起振手段
G1 支持層
G2 軟弱層
S せん断波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10