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  • 特許-表面保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20220216BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C09J7/00
C09J201/00
B32B27/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018016205
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019131732
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中田 美恵
(72)【発明者】
【氏名】新美 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】森永 総司
(72)【発明者】
【氏名】高山 侃也
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217777(JP,A)
【文献】特開2011-089011(JP,A)
【文献】特開2008-266554(JP,A)
【文献】特開2016-164235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
C09J 201/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを有し、
該粘着剤層の厚みが1μm以上5μm以下であり、かつ、表面粗さSaがnm~nmである、
表面保護フィルム。
【請求項2】
セパレーターを含まず、かつ、ロール状に巻回可能である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
幅が1m以上である、請求項2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層の貯蔵弾性率が、1.0×10Pa~1.0×10Paである、請求項1から3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学積層体(例えば、偏光板、偏光板を含む積層体)には、当該光学積層体が適用される画像表示装置が実際に使用されるまでの間、当該光学積層体(最終的には、画像表示装置)を保護するために表面保護フィルムが剥離可能に貼り合わせられている。実用的には、光学積層体/表面保護フィルムの積層体が表示セルに貼り合わせられて画像表示装置が作製され、その後の適切な時点で表面保護フィルムが剥離除去される。表面保護フィルムは、代表的には、基材としての樹脂フィルムと粘着剤層とを有する。表面保護フィルムは、実用的にはロール状に形成され保管されるところ、粘着剤層に起因してブロッキングが生じるので、ロール形成時にはブロッキングを防止すべくセパレーターが粘着剤層表面に仮着されている。しかし、コストおよび操作性の両方の観点から、セパレーターを用いる必要がない表面保護フィルムが強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-165983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、セパレーターを用いることなくロール形成可能な表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による表面保護フィルムは、基材と粘着剤層とを有し、該粘着剤層の厚みが5μm以下であり、かつ、表面粗さSaが3nm~10nmである。
1つの実施形態においては、上記表面保護フィルムは、セパレーターを含まず、かつ、ロール状に巻回可能である。
1つの実施形態においては、上記表面保護フィルムは、その幅が1m以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の貯蔵弾性率は、1.0×10Pa~1.0×10Paである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、粘着剤層の厚みを5μm以下とし、かつ、粘着剤層の表面粗さSaを3nm~10nmとすることにより、セパレーターを用いることなくロール形成可能な表面保護フィルムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.表面保護フィルムの概略
図1は、本発明の1つの実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。本実施形態の表面保護フィルム100は、基材10と粘着剤層20とを有する。基材10の粘着剤層20と反対側には、必要に応じて任意の適切な処理層(図示せず)が設けられてもよい。本発明の実施形態においては、粘着剤層の厚みは5μm以下であり、かつ、表面粗さSaは3nm~10nmである。粘着剤層の厚みをこのように非常に薄く設定し、ならびに、粘着剤層の表面粗さSaをこのように小さくかつ所定範囲に設定することにより、ロール形成時のブロッキングを顕著に抑制することができる。結果として、セパレーターを用いることなくロール形成可能な表面保護フィルムを実現することができる。したがって、本発明の実施形態の表面保護フィルムは、コストおよび操作性の両方の観点から非常に有用である。さらに、本発明の実施形態によれば、ロール形成しても優れた外観を維持できる表面保護フィルムを実現することができる。具体的には、ロール形成時の打痕および光学積層体との貼り合わせ時の気泡の発生を防止することができる。実用的には、光学積層体/表面保護フィルムの積層体が表示セルに貼り合わせられて画像表示装置が作製され、その後の適切な時点で表面保護フィルムが剥離除去されるところ、表面保護フィルムに打痕や気泡が存在すると、光学積層体が貼り合わせられた表示セル自体には問題がなくても、表面保護フィルムの打痕または気泡に起因して、画像表示装置が出荷前の検査で不良と判断されてしまう場合がある。これにより、画像表示装置の製造から出荷までの効率が低下してしまうという問題がある。本発明の実施形態による表面保護フィルムは、このような問題も解消することができるので、工業的価値は非常に大きい。
【0010】
表面保護フィルム100は、代表的には長尺状であり、ロール状に巻回可能である。上記のとおり、表面保護フィルム100は、セパレーターを用いることなくロール状に巻回可能である。表面保護フィルム100の幅は、好ましくは1m以上であり、より好ましくは1.2m以上であり、さらに好ましくは1.5m以上である。本発明の実施形態によれば、このような広幅のフィルムであっても、ブロッキングを顕著に抑制することができる。なお、幅が1m未満のフィルムであっても本発明の効果が得られることは言うまでもない。
【0011】
B.基材
基材は、任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。樹脂フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。このような材料であれば、弾性率が十分に高く、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても変形が生じにくいという利点がある。
【0012】
基材の厚みは、代表的には10μm~100μmであり、好ましくは20μm~50μmである。このような厚みであれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても変形が生じにくいという利点を有する。本発明の実施形態においては、粘着剤層の厚みが非常に薄いので、表面保護フィルムの厚みに関しては基材の厚みが支配的となる。1つの実施形態においては、表面保護フィルムの厚みは、例えば15μm~60μmであり得る。
【0013】
基材の弾性率は、代表的には、弾性率は、JIS K 7127:1999に準拠して測定される。基材の弾性率は、好ましくは、引張速度100mm/minにおいて100MPa~350MPaである。基材の弾性率がこのような範囲であれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても変形が生じにくいという利点を有する。
【0014】
C.粘着剤層
粘着剤層の厚みは、上記のとおり5μm以下であり、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。厚みの下限は、例えば0.1μmである。粘着剤層の厚みをこのように非常に薄く設定し、ならびに、後述するように粘着剤層の表面粗さSaを小さくかつ所定範囲に設定することにより、ロール形成時のブロッキングを顕著に抑制することができる。結果として、セパレーターを用いることなくロール形成可能な表面保護フィルムを実現することができる。
【0015】
粘着剤層の表面粗さSaは、上記のとおり3nm~10nmであり、好ましくは3nm~8nmであり、より好ましくは4nm~6nmである。粘着剤層の表面粗さSaをこのような範囲に設定し、ならびに、上記のとおり粘着剤層の厚みを非常に薄く設定することにより、ロール形成時のブロッキングを顕著に抑制することができる。結果として、セパレーターを用いることなくロール形成可能な表面保護フィルムを実現することができる。このような表面粗さは、例えば、粘着剤層形成時の粘着剤の乾燥条件を調整することにより実現され得る。乾燥条件は、粘着剤の組成等に応じて変化し得る。乾燥温度は、例えば100℃~150℃であり、乾燥時間は、例えば30秒~180秒であり得る。なお、表面粗さSaは、ISO25178-6(2010)またはJIS B 0681-6:2014に準じて測定され得る。
【0016】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×10Pa~1.0×10Paであり、より好ましくは2.0×10Pa~5.0×10Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、ロール形成時のブロッキングをさらに顕著に抑制することができる。なお、貯蔵弾性率は、例えば、温度23℃および角速度0.1rad/sでの動的粘弾性測定から求めることができる。
【0017】
粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。このようなベース樹脂は、例えば、特開2015-120337号公報または特開2011-201983号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。耐薬品性、浸漬時における処理液の浸入を防止するための密着性、被着体への自由度等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。粘着剤に含まれ得る架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物が挙げられる。粘着剤は、例えばシランカップリング剤を含んでいてもよい。粘着剤の配合処方は、目的および所望の特性に応じて適切に設定され得る。
【0018】
D.処理層
上記のとおり、基材の粘着剤層と反対側には、必要に応じて任意の適切な処理層が設けられてもよい。処理層の具体例としては、帯電防止層、親水層、ハードコート層が挙げられる。
【0019】
帯電防止層は、代表的には、導電性材料およびバインダー樹脂を含む。導電性材料としては、任意の適切な導電性材料が用いられ得る。好ましくは、導電性ポリマーが用いられる。導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリジアセチレン系重合体、ポリイン系重合体、ポリフェニレン系重合体、ポリナフタレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリアントラセン系重合体、ポリピレン系重合体、ポリアズレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリフラン系重合体、ポリセレノフェン系重合体、ポリイソチアナフテン系重合体、ポリオキサジアゾール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリチアジル系重合体、ポリフェニレンビニレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体、ポリアセン系重合体、ポリフェナントレン系重合体、ポリぺリナフタレン系重合体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。バインダー樹脂としては、好ましくは、ポリウレタン系樹脂が用いられる。ポリウレタン系樹脂を用いることにより、柔軟性と偏光板(実質的には、保護層)に対する優れた密着性とを併せ持つ帯電防止層を設けることができる。
【0020】
親水層およびハードコート層については、業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0021】
E.表面保護フィルムの用途
本発明の実施形態による表面保護フィルムは、代表的には、光学積層体(最終的には、画像表示装置)が実際に使用されるまでの間、当該光学積層体を保護するために剥離可能に貼り合わせて用いられる。光学積層体の具体例としては、偏光板、位相差板、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、および、偏光板を含み目的に応じた適切な構成を有する積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板、位相差層付偏光板、プリズムシート一体型偏光板)が挙げられる。
【実施例
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0023】
(1)厚み
粘着剤層の厚みについては、以下のようにして測定した:粘着剤層が形成されたフィルムの断面を切り出し、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、層の厚みを測定した。
帯電防止層の厚みについては、以下のようにして測定した:帯電防止層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H-7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
(2)表面粗さSa
JIS B 0681-6:2014に準じて測定した。測定機器として3次元非接触表面粗度測定計(Zygo社製、製品名:NewView7300)を用い、対物レンズ50倍、測定面積0.14mm×0.11mmの条件で、算術平均粗さとして測定した。
(3)ロール形成
実施例および比較例で得られた表面保護フィルムを巻回してロールを形成した。ロール形成時の状態を以下の基準で評価した。
○:ブロッキングもシワもなく良好にロール形成できた
△:ブロッキングおよびシワが発生して外観は悪いがロール形成できた
×:ブロッキングおよびシワが発生しロール形成できなかった
(4)打痕
上記(3)と同様にして形成したロールを24時間保管した後、巻き出して1m当たりの打痕の数を目視により確認した。
(5)気泡
実施例および比較例で得られた表面保護フィルムと参考例1で得られた偏光板とを、搬送しながら互いの長手方向を揃えてロールで貼り合わせ、貼り合わせ後の1m当たりの気泡の数を目視により確認した。
【0024】
<参考例1:偏光板の作製>
樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層(偏光子)表面に、紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層厚みが1.0μmとなるように塗布し、保護層を構成するメタクリル樹脂フィルム(厚み:40μm)を貼り合わせ、当該メタクリル系樹脂フィルム側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、紫外線を照射して接着剤を硬化させた。このようにして、樹脂基材(保護層)/偏光子/保護層の構成を有する偏光板を得た。なお、偏光子の厚みは5μm、単体透過率は42.3%であった。
【0025】
<実施例1>
1-1.帯電防止層形成用組成物(塗布液)の調製
バインダーとしての飽和共重合ポリエステル樹脂を25%含む水分散液(東洋紡株式会社製、商品名「バイナロールMD-1480」)(バインダー分散液)を用意した。さらに、滑り剤としてのカルナバワックス(ワックスエステル)の水分散液(滑り剤分散液)を用意した。加えて、導電性ポリマーとしてのポリ(3,4-ジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5%およびポリスチレンスルホネート(数平均分子量15万)(PSS)0.8%を含む水溶液(商品名「Baytron P」、H.C.Stark社製品)(導電性ポリマー水溶液)を用意した。水とエタノールとの混合溶媒に、上記バインダー分散液100部(固形分)、上記滑り剤分散液30部(固形分)および上記導電性ポリマー水溶液50部(固形分)と、メラミン系架橋剤とを加え、約20分間攪拌して十分に混合した。このようにして、NV約0.15%の帯電防止層形成用塗布液を調製した。
【0026】
1-2.帯電防止層の形成
一方の面(第一面)にコロナ処理が施された厚さ38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このPETフィルムのコロナ処理面に上記塗布液をバーコーターで塗付し、130℃で2分間加熱して乾燥させた。このようにして、帯電防止層(10nm)/PETフィルムの積層体を作製した。
【0027】
1-3.粘着剤の調製
2-エチルヘキシルアクリレート92重量部、アクリル酸4重量部、メチルメタクリレート4重量部、反応性界面活性剤(オキシアルキレン基を含まない反応性界面活性剤)3重量部、および、水90重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、および、上記で調製したモノマーエマルションのうち10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.07重量部を添加し、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加して、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液(アクリルエマルション系重合体の濃度:41重量%)を調製した。
【0028】
上記で得られたアクリルエマルション系重合体の水分散液244重量部(アクリルエマルション系重合体100重量部)に対して、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッド-C」、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]2.5量部、HLB値が4のアセチレンジオール系化合物(組成物)[エアープロダクツ社製、商品名「サーフィノール420」、有効成分100重量%]1重量部(アセチレンジオール系化合物として1重量部)、および、ポリプロピレングリコール[(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック25R-1」、Mn2800、PO含有率90重量%]0.3重量部を、攪拌機を用いて、23℃、2000rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、粘着剤を調製した。
【0029】
1-4.表面保護フィルムの作製
上記で得られた粘着剤を液体にて希釈し、上記積層体のPETフィルム表面に、テスター産業(株)製アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンにおいて130℃で2分間乾燥させ、さらに、23℃で5日間養生(エージング)して、帯電防止層(10nm)/PETフィルム(厚み38μm)/粘着剤層(厚み:3μm、表面粗さSa:5nm)の構成を有する表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムを上記(3)~(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0030】
<比較例1>
粘着剤の乾燥条件を表1に示すように変更して粘着剤層の表面粗さSaを1nmとしたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2および比較例2~10>
粘着剤層の厚みおよび/または表面粗さSaを表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
<評価>
表1から明らかなように、本発明の実施例の表面保護フィルムは、セパレーターを用いることなく良好なロール形成が可能である。より具体的には、ブロッキングも打痕も生じることなく、ロールを形成することができる。さらに、本発明の実施例の表面保護フィルムは、光学積層体との積層時における気泡の発生も顕著に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の表面保護フィルムは、光学積層体(最終的には、画像表示装置)が実際に使用されるまでの間、当該光学積層体を保護するために用いられる。
【符号の説明】
【0035】
10 基材
20 粘着剤層
100 表面保護フィルム

図1