(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/22 20060101AFI20220216BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20220216BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220216BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220216BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20220216BHJP
B60K 17/02 20060101ALI20220216BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20220216BHJP
B60K 17/28 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
F16H1/22
B60K6/36 ZHV
B60K6/40
B60L15/20 S
B60K17/12
B60K17/02 C
B60K17/02 D
H02K7/10 C
B60K17/28 D
B60K17/28 C
(21)【出願番号】P 2018028994
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】平野 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 准司
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-055591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/22
B60K 6/36
B60K 6/40
B60L 15/20
B60K 17/12
B60K 17/02
H02K 7/10
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モータ及び第2モータにそれぞれ結合する第1入力軸および第2入力軸と、
前記第1モータの動力を少なくとも出力する出力軸と、
前記第1モータ及び前記第2モータの少なくとも一方の動力を取り出す取出軸と、
前記第1入力軸または前記第2入力軸に結合する結合ギヤと、
前記結合ギヤにかみあうギヤを含み前記結合ギヤの回転を前記取出軸に伝える減速機構と、
前記結合ギヤにかみあう別のギヤを含み前記結合ギヤの回転を前記出力軸に伝える別の
減速機構と、を備える車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1入力軸の動力を前記出力軸に伝達する第1減速機構と、
前記第1入力軸の動力を前記取出軸に伝達する第2減速機構と、を備える請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1減速機構の減速比と異なる減速比で前記第1入力軸の動力を前記出力軸に伝達する第3減速機構と、
前記第3減速機構による動力の伝達および遮断を行う第2クラッチと、を備える請求項2記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1減速機構による動力の伝達および遮断を行う第1クラッチを備え、
前記第1クラッチを切って前記第2クラッチをつなぐと前記第3減速機構は前記出力軸に動力を伝達し、
前記第1クラッチをつないで前記第2クラッチを切ると前記第1減速機構は前記出力軸に動力を伝達する請求項3記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1入力軸および前記第2入力軸は同軸上に配置され、
前記第1クラッチは、前記第1入力軸と前記第2入力軸との間の動力の伝達および遮断を行う請求項4記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用駆動装置に関し、特にモータの出力を出力軸に伝達する車両用駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1モータ及び第2モータの動力を出力軸に伝達する車両用駆動装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される技術では、車両に架装されたクレーンやポンプ等の装置(以下「架装装置」と称す)の動力として、第1モータや第2モータの動力を使えないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、第1モータや第2モータの動力を出力軸以外の駆動力にできる車両用駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の車両用駆動装置は、第1モータ及び第2モータにそれぞれ結合する第1入力軸および第2入力軸と、第1モータの動力を少なくとも出力する出力軸と、第1モータ及び第2モータの少なくとも一方の動力を取り出す取出軸と、第1入力軸または第2入力軸に結合する結合ギヤと、結合ギヤにかみあうギヤを含み結合ギヤの回転を取出軸に伝える減速機構と、結合ギヤにかみあう別のギヤを含み結合ギヤの回転を出力軸に伝える別の減速機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の車両用駆動装置によれば、第1モータの動力を少なくとも出力する出力軸の他に、第1モータ及び第2モータの少なくとも一方の動力を取り出す取出軸を備えている。よって、第1モータや第2モータの動力を取出軸の駆動力にできる。
【0008】
請求項2記載の車両用駆動装置によれば、第1減速機構により第1入力軸の動力が出力軸に伝達され、第2減速機構により第1入力軸の動力が取出軸に伝達される。従って、請求項1の効果に加え、第1モータによって同時に出力軸および取出軸を駆動できる。
【0009】
請求項3記載の車両用駆動装置によれば、第3減速機構により第1減速機構の減速比と異なる減速比で第1入力軸の動力が出力軸に伝達される。第2クラッチは第3減速機構による動力の伝達および遮断を行うので、請求項2の効果に加え、第1モータによる出力軸のトルクを変更できる。
【0010】
請求項4記載の車両用駆動装置によれば、第1クラッチは第1減速機構による動力の伝達および遮断を行う。第1クラッチを切って第2クラッチをつなぐと第3減速機構は出力軸に動力を伝達し、第1クラッチをつないで第2クラッチを切ると第1減速機構は出力軸に動力を伝達する。よって、請求項3の効果に加え、第1モータによる出力軸のトルクの変更を簡易にできる。
【0011】
請求項5記載の車両用駆動装置によれば、第1入力軸および第2入力軸は同軸上に配置される。第1クラッチは、第1入力軸と第2入力軸との間の動力の伝達および遮断を行う。よって、請求項4の効果に加え、第1クラッチをつなぐと第1モータ及び第2モータの動力を同時に出力軸に伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
【
図2】第2実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
【
図3】第3実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
【
図4】第4実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず
図1を参照して第1実施の形態における車両用駆動装置10について説明する。
図1は第1実施の形態における車両用駆動装置10のスケルトン図である。車両用駆動装置10は、クレーンやポンプ等の架装装置を備えた建設機械やトラクター等の農業機械、トラック等の車両に搭載される。
【0014】
図1に示すように車両用駆動装置10は、第1入力軸11、第2入力軸12、第1中間軸13、出力軸14及び取出軸15を備えている。第1入力軸11及び第2入力軸12は同軸上に配置される。第1入力軸11に第1モータ16が結合し、第2入力軸12に第2モータ17が結合する。取出軸15に動力取出装置(PTO)18が結合する。動力取出装置18は、車両に搭載された架装装置(図示せず)を作動させるための装置である。第1入力軸11(第2入力軸12)、第1中間軸13、出力軸14及び取出軸15は平行に配置されている。
【0015】
本実施形態では、第1入力軸11及び第2入力軸12は、それぞれ第1モータ16及び第2モータ17の駆動力を直接受ける主軸である。また、出力軸14は車軸であり、出力軸14の中央に差動装置19が配置され、出力軸14の両端に車輪20がそれぞれ配置されている。車両用駆動装置10を搭載した車両は、車輪20以外に複数の車輪(図示せず)が配置されており、出力軸14及び車輪20の回転駆動により走行できる。
【0016】
第1入力軸11及び第2入力軸12は、パイロットベアリング(図示せず)を介して互いに相対回転可能に連結されている。これにより、第1入力軸11及び第2入力軸12を軸受でそれぞれ支持する場合に比べ、軸受の点数を減らすことができる。
【0017】
第1モータ16及び第2モータ17は、第1入力軸11及び第2入力軸12にそれぞれ回転駆動力を与える装置である。本実施形態では第1モータ16及び第2モータ17は電動モータである。第1モータ16及び第2モータ17は同一のトルク特性を有している。
【0018】
第1減速機構30は、第1クラッチ40及び第1中間軸13を介して第1入力軸11の動力を出力軸14に伝達する機構である。第1減速機構30は、第2入力軸12に結合する第1ギヤ31と、第1ギヤ31にかみ合い第1中間軸13に結合する第2ギヤ32と、第1中間軸13に結合する第3ギヤ33と、第3ギヤ33にかみ合い差動装置19に結合する第4ギヤ34と、を備えている。第1減速機構30は、第1ギヤ31と第2ギヤ32とのかみ合い、第3ギヤ33と第4ギヤ34とのかみ合いによる減速比に設定される。
【0019】
第1クラッチ40は、第1入力軸11及び第2入力軸12の軸上に配置されている。本実施形態では、第1クラッチ40はドッグクラッチ等のかみ合いクラッチである。第1クラッチ40をつなぐと第1入力軸11と第2入力軸12とが連結状態になり、第1クラッチ40を切ると第1入力軸11と第2入力軸12とが連結状態から解除される。従って、第1クラッチ40をつなぐと第1モータ16の動力が出力軸14に伝達され、第1クラッチ40を切ると第1モータ16の動力の出力軸14への伝達が遮断される。第2モータ17は第1減速機構30を介して常に出力軸14に動力を伝達できる。
【0020】
第2減速機構50は、第1入力軸11の動力を取出軸15に伝達する機構である。第2減速機構50は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い取出軸15に結合する第6ギヤ52と、を備えている。第1モータ16は第2減速機構50を介して常に取出軸15に動力を伝達できる。
【0021】
第3減速機構60は、第2クラッチ70及び第1中間軸13を介して第1入力軸11の動力を出力軸14に伝達する機構である。第3減速機構60は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い第1中間軸13に配置された第7ギヤ61と、第1中間軸13に結合する第3ギヤ33と、第3ギヤ33にかみ合い差動装置19に結合する第4ギヤ34と、を備えている。第3減速機構60は第1減速機構30を構成する歯車列とは異なる歯車列が設定されている。第3減速機構60は、第5ギヤ51と第7ギヤ61とのかみ合い、第3ギヤ33と第4ギヤ34とのかみ合いにより、第1減速機構30とは異なる減速比に設定される。本実施形態では、第3減速機構60の減速比は第1減速機構30の減速比よりも大きい。
【0022】
第2クラッチ70は第1中間軸13に配置されている。本実施形態では、第2クラッチ70はドッグクラッチ等のかみ合いクラッチである。第2クラッチ70をつなぐと第1中間軸13と第7ギヤ61とが連結状態になり、第2クラッチ70を切ると第1中間軸13と第7ギヤ61とが連結状態から解除される。従って、第2クラッチ70をつなぐと第1モータ16の動力が出力軸14に伝達され、第2クラッチ70を切ると第1モータ16の動力の出力軸14への伝達が遮断される。
【0023】
車両用駆動装置10の動作について説明する。車両用駆動装置10は、高速走行時には、少なくとも第1モータ16を駆動し、第1クラッチ40をつなぎ、第2クラッチ70を切る。第1モータ16の動力は、第3減速機構60よりも減速比の小さい第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達されるので、高速走行時も動力取出装置18を作動できる。
【0024】
この状態で第1モータ16と一緒に第2モータ17を駆動すると、第1モータ16だけを駆動する場合に比べて、出力軸14及び取出軸15のトルクを大きくできる。その結果、高速走行時も十分な駆動トルクを得て安定に加速できる。
【0025】
これに対し低速走行時には、第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40を切り、第2クラッチ70をつなぐ。第1モータ16の動力は、第1減速機構30よりも減速比の大きい第3減速機構60を介して出力軸14に伝達される。これにより、第1減速機構30を介して第1モータ16の動力を出力軸14に伝達する場合に比べて、出力軸14のトルクを大きくできる。このときも第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達されるので、低速走行時も動力取出装置18を作動できる。第1クラッチ40を切ることにより、第1モータ16の動力が第2入力軸12に伝達されないので、第2入力軸12が第2モータ17を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0026】
また、第1モータ16を停止し、第2モータ17を駆動し、第1クラッチ40を切ると、第2モータ17の動力は取出軸15に伝達されない。第2モータ17の動力は第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。その結果、動力取出装置18を作動させずに走行できる。第1クラッチ40を切ることにより、第2モータ17の動力が第1入力軸11に伝達されないので、第1入力軸11が第1モータ16を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0027】
第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40及び第2クラッチ70を切ると、第1モータ16の動力は出力軸14に伝達されない。第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達される。よって、停車時に動力取出装置18を作動できる。第1クラッチ40を切ることにより、第1モータ16の動力が第2入力軸12に伝達されないので、第2入力軸12が第2モータ17を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0028】
このように車両用駆動装置10は、第1モータ16や第2モータ17の動力が伝達される取出軸15を備えている。よって、第1モータ16や第2モータ17の動力を取出軸15から取り出して出力軸14(車軸)以外の動力として使うことができる。
【0029】
第1減速機構30により第1入力軸11の動力が出力軸14に伝達され、第2減速機構50により第1入力軸11の動力が取出軸15に伝達される。従って、第1モータ16によって同時に出力軸14及び取出軸15に動力を伝達できる。
【0030】
第3減速機構60により第1減速機構30の減速比と異なる減速比で第1入力軸11の動力が出力軸14に伝達される。第2クラッチ70は第3減速機構60による動力の伝達および遮断を行うので、第1モータ16の動力による出力軸14のトルクを変更できる。
【0031】
第1クラッチ40は第1減速機構30による動力の伝達および遮断を行う。第1クラッチ40を切って第2クラッチ70をつなぐと第3減速機構60は出力軸14に動力を伝達し、第1クラッチ40をつないで第2クラッチ70を切ると第1減速機構30は出力軸14に動力を伝達する。よって、第1モータ16の動力による出力軸14のトルクの変更を簡易にできる。
【0032】
第1入力軸11及び第2入力軸12は同軸上に配置されている。第1クラッチ40は、第1入力軸11と第2入力軸12との間の動力の伝達および遮断を行う。よって、第1クラッチ40をつなぐと第1モータ16及び第2モータ17の動力を同時に出力軸14に伝達できる。
【0033】
図2を参照して第2実施の形態について説明する。第2実施形態では、第1入力軸11と取出軸15との間に第2中間軸82が配置される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図2は第2実施の形態における車両用駆動装置80のスケルトン図である。
【0034】
車両用駆動装置80は、第1入力軸11、第2入力軸12、第1中間軸13、出力軸14、取出軸15及び第2中間軸82を備えている。第1入力軸11(第2入力軸12)、第1中間軸13、出力軸14、取出軸15及び第2中間軸82は平行に配置されている。
【0035】
第2減速機構81は、第1入力軸11の動力を取出軸15に伝達する機構である。第2減速機構81は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い第2中間軸82に結合する第8ギヤ83と、第8ギヤ83にかみ合い取出軸15に結合する第9ギヤ84と、を備えている。第1モータ16は第2減速機構81を介して常に取出軸15に動力を伝達できる。
【0036】
車両用駆動装置80によれば、第1入力軸11と取出軸15との間に配置された第2中間軸82により、第1入力軸11と取出軸15との軸間距離を調整して第1モータ16や第2モータ17、動力取出装置18を配置できる。よって、寸法が大きい第1モータ16や第2モータ17、動力取出装置18を採用できる。
【0037】
図3を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、第1中間軸13に第2クラッチ70が配置された場合について説明した。これに対し第3実施形態では、取出軸15に第2クラッチ93が配置される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図3は第3実施の形態における車両用駆動装置90のスケルトン図である。
【0038】
車両用駆動装置90の第3減速機構91は、第2クラッチ93、取出軸15、第2入力軸12及び第1中間軸13を介して、第1入力軸11の動力を出力軸14に伝達する機構である。第3減速機構91は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い取出軸15に結合する第6ギヤ52と、第2クラッチ93が取出軸15に連結状態にする第10ギヤ92と、第10ギヤ92にかみ合い第2入力軸12に結合する第1ギヤ31と、第1ギヤ31にかみ合い第1中間軸13に結合する第2ギヤ32と、第1中間軸13に結合する第3ギヤ33と、第3ギヤ33にかみ合い差動装置19に結合する第4ギヤ34と、を備えている。
【0039】
第3減速機構91は第1減速機構30を構成する歯車列に一部が重複する歯車列が設定されている。第3減速機構91は、第1減速機構30とは異なる減速比に設定される。本実施形態では、第3減速機構91の減速比は第1減速機構30の減速比よりも大きい。
【0040】
第2クラッチ93は取出軸15に配置されている。本実施形態では、第2クラッチ93はドッグクラッチ等のかみ合いクラッチである。第2クラッチ93をつなぐと取出軸15と第10ギヤ92とが連結状態になり、第2クラッチ93を切ると取出軸15と第10ギヤ92とが連結状態から解除される。従って、第2クラッチ93をつなぐと第1モータ16の動力が出力軸14に伝達され、第2クラッチ93を切ると第1モータ16の動力の出力軸14への伝達が遮断される。
【0041】
車両用駆動装置90の動作について説明する。車両用駆動装置90は、高速走行時には、少なくとも第1モータ16を駆動し、第1クラッチ40をつなぎ、第2クラッチ93を切る。第1モータ16の動力は、第3減速機構91よりも減速比の小さい第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達されるので、高速走行時も動力取出装置18を作動できる。
【0042】
この状態で第1モータ16と一緒に第2モータ17を駆動すると、第1モータ16だけを駆動する場合に比べて、出力軸14及び取出軸15のトルクを大きくできる。その結果、高速走行時も十分な駆動トルクを得て安定に加速できる。
【0043】
これに対し低速走行時には、第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40を切り、第2クラッチ93をつなぐ。第1モータ16の動力は、第1減速機構30よりも減速比の大きい第3減速機構91を介して出力軸14に伝達される。これにより、第1減速機構30を介して第1モータ16の動力を出力軸14に伝達する場合に比べて、出力軸14のトルクを大きくできる。このときも第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達されるので、低速走行時も動力取出装置18を作動できる。
【0044】
また、第1モータ16を停止し、第2モータ17を駆動し、第1クラッチ40及び第2クラッチ93を切ると、第2モータ17の動力は取出軸15に伝達されない。第2モータ17の動力は第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。その結果、動力取出装置18を作動させずに走行できる。第1クラッチ40を切ることにより、第2モータ17の動力が第1入力軸11に伝達されないので、第1入力軸11が第1モータ16を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0045】
第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40及び第2クラッチ70を切ると、第1モータ16の動力は出力軸14に伝達されない。第1モータ16の動力は第2減速機構50を介して取出軸15に伝達される。よって、停車時に動力取出装置18を作動できる。第1クラッチ40及び第2クラッチ93を切ることにより、第1モータ16の動力が第2入力軸12に伝達されないので、第2入力軸12が第2モータ17を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0046】
第1入力軸11、第2入力軸12、第1中間軸13、出力軸14及び取出軸15の各々に配置されるギヤの最多の数は2つなので、一つの軸に3つ以上のギヤが配置される場合に比べて、軸の長さを短くできる。その結果、車両用駆動装置90の軸方向(
図3左右方向)の長さを短くできる。
【0047】
図4を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施形態では、取出軸15に第2クラッチ93が配置された場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1入力軸11と取出軸15との間に配置された第2中間軸102に第2クラッチ107が配置される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第4実施の形態における車両用駆動装置100のスケルトン図である。第1入力軸11(第2入力軸12)、第1中間軸13、出力軸14、取出軸15及び第2中間軸102は平行に配置されている。
【0048】
車両用駆動装置100の第2減速機構101は、第1入力軸11の動力を取出軸15に伝達する機構である。第2減速機構101は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い第2中間軸102に結合する第11ギヤ103と、第11ギヤ103にかみ合い取出軸15に結合する第12ギヤ104と、を備えている。第1モータ16は第2減速機構101を介して常に取出軸15に動力を伝達できる。
【0049】
第3減速機構105は、第2クラッチ107、第2中間軸102、第2入力軸12及び第1中間軸13を介して、第1入力軸11の動力を出力軸14に伝達する機構である。第3減速機構105は、第1入力軸11に結合する第5ギヤ51と、第5ギヤ51にかみ合い第2中間軸102に結合する第11ギヤ103と、第2クラッチ107が第2中間軸102に連結状態にする第13ギヤ106と、第13ギヤ106にかみ合い第2入力軸12に結合する第1ギヤ31と、第1ギヤ31にかみ合い第1中間軸13に結合する第2ギヤ32と、第1中間軸13に結合する第3ギヤ33と、第3ギヤ33にかみ合い差動装置19に結合する第4ギヤ34と、を備えている。
【0050】
第3減速機構105は第1減速機構30を構成する歯車列に一部が重複する歯車列が設定されている。第3減速機構105は、第1減速機構30とは異なる減速比に設定される。本実施形態では、第3減速機構105の減速比は第1減速機構30の減速比よりも大きい。
【0051】
第2クラッチ107は第2中間軸102に配置されている。本実施形態では、第2クラッチ107はドッグクラッチ等のかみ合いクラッチである。第2クラッチ107をつなぐと第2中間軸102と第13ギヤ106とが連結状態になり、第2クラッチ107を切ると第2中間軸102と第13ギヤ106とが連結状態から解除される。従って、第2クラッチ107をつなぐと第1モータ16の動力が出力軸14に伝達され、第2クラッチ107を切ると第1モータ16の動力の出力軸14への伝達が遮断される。
【0052】
車両用駆動装置100の動作について説明する。車両用駆動装置100は、高速走行時には、少なくとも第1モータ16を駆動し、第1クラッチ40をつなぎ、第2クラッチ107を切る。第1モータ16の動力は、第3減速機構105よりも減速比の小さい第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。第1モータ16の動力は第2減速機構101を介して取出軸15に伝達されるので、高速走行時も動力取出装置18を作動できる。
【0053】
この状態で第1モータ16と一緒に第2モータ17を駆動すると、第1モータ16だけを駆動する場合に比べて、出力軸14及び取出軸15のトルクを大きくできる。その結果、高速走行時も十分な駆動トルクを得て安定に加速できる。
【0054】
これに対し低速走行時には、第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40を切り、第2クラッチ107をつなぐ。第1モータ16の動力は、第1減速機構30よりも減速比の大きい第3減速機構105を介して出力軸14に伝達される。これにより、第1減速機構30を介して第1モータ16の動力を出力軸14に伝達する場合に比べて、出力軸14のトルクを大きくできる。このときも第1モータ16の動力は第2減速機構101を介して取出軸15に伝達されるので、低速走行時も動力取出装置18を作動できる。
【0055】
また、第1モータ16を停止し、第2モータ17を駆動し、第1クラッチ40及び第2クラッチを切ると、第2モータ17の動力は取出軸15に伝達されない。第2モータ17の動力は第1減速機構30を介して出力軸14に伝達される。その結果、動力取出装置18を作動させずに走行できる。第1クラッチ40を切ることにより、第2モータ17の動力が第1入力軸11に伝達されないので、第1入力軸11が第1モータ16を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0056】
第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40及び第2クラッチ70を切ると、第1モータ16の動力は出力軸14に伝達されない。第1モータ16の動力は第2減速機構101を介して取出軸15に伝達される。よって、停車時に動力取出装置18を作動できる。第1クラッチ40を切ることにより、第1モータ16の動力が第2入力軸12に伝達されないので、第2入力軸12が第2モータ17を回転させることによる引き摺り損失を抑制できる。
【0057】
第1入力軸11、第2入力軸12、第1中間軸13、第2中間軸102、出力軸14及び取出軸15の各々に配置されるギヤの最多の数は2つなので、一つの軸に3つ以上のギヤが配置される場合に比べて、軸の長さを短くできる。その結果、車両用駆動装置100の軸方向(
図4左右方向)の長さを短くできる。
【0058】
また、第1入力軸11と取出軸15との間に配置された第2中間軸102により、第1入力軸11と取出軸15との軸間距離を調整して第1モータ16や第2モータ17、動力取出装置18を配置できる。よって、寸法が大きい第1モータ16や第2モータ17、動力取出装置18を採用できる。
【0059】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0060】
実施形態では、第1入力軸11及び第2入力軸12と出力軸14との間に第1中間軸13が1本配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1中間軸13を複数設け、第1中間軸13にそれぞれギヤを配置し、第1減速機構および第3減速機構の一部を構成する歯車列を第1中間軸13に設けることは当然可能である。
【0061】
実施形態では、第1モータ16及び第2モータ17にトルク特性が同一の電動モータを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。トルク特性が異なるモータを用いることは当然可能である。例えば、低速用のトルク特性を有するモータを第1モータ16とし、高速用のトルク特性を有するモータを第2モータ17とする。低速用のトルク特性を有する第1モータ16は、トルクピーク値が低回転側にあるモータである。高速用のトルク特性を有する第2モータ17は、第1モータ16のトルクがピークとなる回転数よりも高回転側にトルクピーク値があるモータである。
【0062】
実施形態では、第1モータ16及び第2モータ17に電動モータを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1モータ16及び第2モータ17のいずれか一方または両方を油圧モータにすることは当然可能である。
【0063】
実施形態では、第1入力軸11及び第2入力軸12が第1モータ16及び第2モータ17の駆動力を直接受ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1モータ16及び第2モータ17と第1入力軸11及び第2入力軸12との間に歯車列やベルト等を介在することは当然可能である。
【0064】
実施形態では、第1減速機構、第2減速機構および第3減速機構がギヤのかみ合いによって動力を伝達する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ギヤの代わりに、ベルトやチェーン等を用いることは当然可能である。
【0065】
実施形態では説明を省略したが、車両用駆動装置10,80,90,100が搭載される車両の前輪、後輪のいずれかを第1モータ16及び第2モータ17で駆動し、残りの車輪をエンジンで駆動する4輪駆動車に適用することが可能である。また、前輪、後輪のいずれかを第1モータ16及び第2モータ17で駆動する2輪駆動車や、前輪および後輪を第1モータ16及び第2モータ17で駆動する4輪駆動車に適用することは当然可能である。
【0066】
実施形態では、第1クラッチ及び第2クラッチがかみ合いクラッチである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1クラッチや第2クラッチを他のクラッチにすることは当然可能である。他のクラッチとしては、例えばディスククラッチ、ドラムクラッチ、円すいクラッチ等の摩擦クラッチが挙げられる。第1クラッチや第2クラッチにシンクロメッシュを組み込むことは当然可能である。
【0067】
実施形態では、低速走行時に第1モータ16を駆動し、第2モータ17を停止し、第1クラッチ40を切り、第2クラッチ70,93,107をつなぐ場合、即ち第1モータ16の動力を車輪20に伝達する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。第1モータ16及び第2モータ17の両方を駆動し、より大きな動力を得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0068】
10,80,90,100 車両用駆動装置
11 第1入力軸
12 第2入力軸
14 出力軸
15 取出軸
16 第1モータ
17 第2モータ
30 第1減速機構
40 第1クラッチ
50,81,101 第2減速機構
60,91,105 第3減速機構
70,93,107 第2クラッチ