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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20220216BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20220216BHJP
   H05B 3/18 20060101ALI20220216BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220216BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220216BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/74
H05B3/18
H01L21/302 101G
H01L21/205
H05B3/20 356
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018087990
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019194939
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊哉
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188262(JP,A)
【文献】特開2018-005999(JP,A)
【文献】特開2017-076580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/74
H05B 3/18
H01L 21/3065
H01L 21/205
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなり、上面及び下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設されている静電吸着用電極又は高周波発生用電極としての平面状の電極と、
前記電極よりも前記下面側において前記セラミックス基材に埋設されている第1発熱抵抗体と、
前記第1発熱抵抗体よりも前記下面側において前記セラミックス基材に埋設されている第2発熱抵抗体とを備えたセラミックスヒータであって、
上面視において、前記第1発熱抵抗体は、前記電極の最外周の輪郭線により画定される仮想円の内側領域に設けられた平面状の第1抵抗部と、前記内側領域内であって、前記第1抵抗部よりも前記セラミックス基材の径方向の外側に設けられ前記セラミックス基材の円周方向に沿って延在する線状又は帯状の第2抵抗部と、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部を接続する接続部とを有し、
上面視において、前記第2発熱抵抗体は、前記第2抵抗部の最内周の輪郭線により画定される仮想円よりも内側に配置されることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記第1抵抗部は、上面視において、前記セラミック基材と同心の円の外周に沿った輪郭線を有する複数の部分を含み、
前記第1抵抗部の複数の部分が、前記第2抵抗部及び前記接続部を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記第1抵抗部は、上面視において、前記第1抵抗部の最外周の輪郭線によって画定される仮想円の面積を100%としたときに、前記第1抵抗部の合計面積が50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの被加熱物を加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
成膜又はエッチング等の処理の対象となる半導体ウエハなどの被加熱物が載置されるセラミックス基材が複数のゾーンに区分され、当該複数のゾーンのそれぞれに別個の発熱抵抗体が埋設され、それぞれの発熱抵抗体に流す電流を独立して制御するマルチゾーンヒータが提案されている。
【0003】
従来、発熱抵抗体は、給電端子と接続された第1抵抗要素と、第1抵抗要素と接続され、第1抵抗要素を重畳的に囲む相互に離間している1又は複数の環状区域のそれぞれに配置されている第2抵抗要素と、隣り合う環状区域に配置されている第2抵抗要素同士を接続する第3抵抗要素とにより構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、3つに区分されたゾーンの発熱を独立して制御するために、上下3層に発熱回路(発熱抵抗体)が埋設された加熱ヒータが記載されている。この加熱ヒータにおいては、各層の発熱回路が上述したように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-174713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のセラミックスヒータにおいては、発熱抵抗体における第1抵抗要素の電気抵抗により、この部分に局所的な発熱が生じる。そのため、この部分と重なって配置された発熱抵抗体による発熱を制御したとしても、セラミックス基材を均熱化することは困難であった。
【0007】
そこで、第1抵抗要素による局所的な発熱を抑制するために、第1抵抗要素が占める面積を大きくすることにより、第1抵抗要素による発熱の抑制及び均一化を図ることが想定され得る。
【0008】
しかしながら、このような構成にした場合、静電吸着用電極又は高周波発生用電極を上側の発熱抵抗体より上側に埋設した吸着機能付きのセラミックスヒータにおいて、上側の発熱抵抗体が所望の電気抵抗値を有さず、被加熱物を所望の態様で加熱できないという課題があった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、被加熱物を所望の態様で加熱することが可能なセラミックスヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、セラミックスからなり、上面及び下面を有する円板状のセラミックス基材と、前記セラミックス基材に埋設されている静電吸着用電極又は高周波発生用電極としての平面状の電極と、前記電極よりも前記下面側において前記セラミックス基材に埋設されている第1発熱抵抗体と、前記第1発熱抵抗体よりも前記下面側において前記セラミックス基材に埋設されている第2発熱抵抗体とを備えたセラミックスヒータであって、上面視において、前記第1発熱抵抗体は、前記電極の最外周の輪郭線により画定される仮想円の内側領域に設けられた平面状の第1抵抗部と、前記内側領域内であって、前記第1抵抗部よりも前記セラミックス基材の径方向の外側に設けられ前記セラミックス基材の円周方向に沿って延在する線状又は帯状の第2抵抗部と、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部を接続する接続部とを有し、上面視において、前記第2発熱抵抗体は、前記第2抵抗部の最内周の輪郭線により画定される仮想円よりも内側に配置されることを特徴とするセラミックスヒータ。
【0011】
本発明によれば、第1抵抗部が平面状に配置されているため、第1抵抗部が帯状又は線状に配置されている従来のセラミックスヒータと比較して、第1抵抗部の存在する領域の面積が大きい。これにより、第1抵抗部の抵抗値を小さくして、この部分での発熱が抑制されることにより、セラミックス基材の均熱化を図ることが可能となる。
【0012】
ところで、電極又は発熱抵抗体を埋設したセラッミクス粉末を焼成してセラッミクス基材を製作するが、この焼成時にセラミックス粉末に含まれるカーボン成分が電極や発熱抵抗体と反応することにより、焼成後の発熱抵抗体が所望の抵抗値を有するようになる。
【0013】
第2発熱抵抗体が平面状の電極と平面状の第1抵抗部とに上下を挟まれているセラミックスヒータにおいては、前記第2発熱抵抗体の上下周辺領域のカーボン成分の多くが第1抵抗部及び平面状の電極と反応して消費されるために、第2発熱抵抗体と反応するカーボン成分が少なくなるので、第2発熱抵抗体が所望の抵抗値を有さない。
【0014】
一方、本発明においては、第2発熱抵抗体の下方には平面状の電極も平面状の発熱抵抗体も存在しないので、これらによってカーボン成分が消費されることがなく、カーボン成分と十分に反応して第2発熱抵抗体が所望の抵抗値を有するようになる。
【0015】
本発明において、例えば、前記第1抵抗部は、上面視において、前記セラミック基材と同心の円の外周に沿った輪郭線を有する複数の部分を含み、前記第1抵抗部の複数の部分が、前記第2抵抗部及び前記接続部を介して互いに電気的に接続されている。
【0016】
また、本発明において、例えば、前記第1抵抗部は、上面視において、前記第1抵抗部の最外周の輪郭線によって画定される仮想円の面積を100%としたときに、前記第1抵抗部の合計面積が50%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るセラミックスヒータの模式断面図。
図2】電極が高周波発生用電極である場合における図1のII-II模式断面図
図3】電極が静電吸着用電極である場合における図1のII-II模式断面図。
図4図1のIV-IV模式断面図。
図5図1のIV-IV模式断面図の変形例。
図6図1のIV-IV模式断面図の別の変形例。
図7図1のIV-IV模式断面図のさらに別の変形例。
図8図1のIV-IV模式断面図のさらに別の変形例。
図9図1のIX-IX模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について図面を参照して説明する。
【0019】
セラミックスヒータ100は、図示しないウエハ(基板)などの被加熱物を吸着保持するためのセラミックスからなるセラミックス基材10と、相互に短絡しないようにセラミックス基材10に埋設されている平面状の電極20、上側発熱抵抗体30及び下側発熱抵抗体40と、セラミックス基材10の下面の中心部に接続された中空のシャフト50とを備えている。なお、上側発熱抵抗体30は本発明の第1発熱抵抗体に相当し、下側発熱抵抗体40は本発明の第2発熱抵抗体に相当する。
【0020】
セラミックス基材10は、上面(表面)10a及び下面(裏面)10bを有する円板状体である。セラミックス基材10の上面10aに被加熱物が載置される。
【0021】
セラミックス基材10は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等からなるセラミックス焼結体からなる。セラミックス基材10は、上記の材料を所定形状の型に入れて成形し、緻密化させるため、例えばホットプレス焼成等によって円板状に作製すればよい。
【0022】
なお、セラミックス基材10の原料であるセラミックス粉末に焼結助剤などの添加剤が添加される。例えば、原料が窒化アルミニウム(AlN)粉末である場合、特に、酸化イットリウム(Y)を添加剤として添加することにより、セラミックス基材10の熱伝導性が向上するので好ましい。原料となるセラミックス粉末の造粒時には有機溶媒に起因するカーボン成分がわずかに残留する。このカーボン成分は焼成後においても残留する。また、原料であるセラミックス粉末に有機バインダを添加してセラミックス基材10となる成形体を製作すると、成形体の脱脂後やその後の焼成時においても有機バインダに起因するカーボン成分が残留する。
【0023】
シャフト50は、大略円筒形状であり、セラミックス基材10の下面10bとの接合部分の外径が他の円筒部51より拡径した拡径部52を有し、拡径部52の上面がセラミックス基材10との接合面となっている。
【0024】
シャフト50の材質は、セラミックス基材10の材質と同等でよいが、断熱性を高めるために、セラミックス基材10の素材より熱伝導率の低い素材から形成されていてもよい。
【0025】
セラミックス基材10の下面10bとシャフト50の上端面とが、拡散接合又はセラミックス若しくはガラス等の接合材を用いた固相接合によって接合されている。なお、セラミックス基材10とシャフト50とは、ねじ止めやろう付けなどによって接続されてもよい。
【0026】
さらに、セラミックスヒータ100は、平面状の電極20に対して電力を供給するための一対の電極用端子61と、上側発熱抵抗体30に対して電力を供給するための一対の上側用端子62と、下側発熱抵抗体40に対して電力を供給するための一対の下側用端子63とをも備えている。
【0027】
端子61~63には、それぞれセラミックス基材10に埋設されている図示しない電流供給部材に接続されている。そして、シャフト50の中空部を通って配線されている図示しない給電線が接続され。この給電線は図示しない電源に接続されている。
【0028】
端子61~63と電流供給部材とはろう付け又は溶接されている。端子61~63は、箔、板、塊状のニッケル(Ni)、コバール(登録商標)(Fe-Ni-Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)及びタングステン(W)を主成分とする耐熱合金などの耐熱金属から構成される。電流供給部材はモリブデン(Mo)又はタングステン(W)などからなる。
【0029】
電極20は、被加熱物をジョンセン-ラーベック力又はクーロン力により上面10aに引き付けるための静電吸着用電極、又はセラミックス基材10の上方にプラズマを発生させるための高周波発生用電極(RF電極)のうち少なくとも一方であってもよい。電極20は、本実施形態では、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)等の耐熱金属などの箔又はメッシュからなり、平面状の形態をしている。
【0030】
上側発熱抵抗体30は、電極20よりも下面10b側においてセラミックス基材10に埋設されており、下側発熱抵抗体40は、上側発熱抵抗体30よりも下面10b側においてセラミックス基材10に埋設されている。
【0031】
発熱抵抗体30,40は、本実施形態では、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)等の耐熱金属などのメッシュからなる。ただし、発熱抵抗体30,40は、耐熱金属などからなる膜、板、線、箔、繊維、コイル、リボン状などの構成であってもよく、螺旋、折返し状などの形態であってもよい。そして、本実施形態では、発熱抵抗体30,40の厚さは一定となっている。
【0032】
セラミックス基材10の原料となる添加剤が添加されてなるセラミックス粉末の間に電極20及び発熱抵抗体30,40を挟み込んだ状態で焼成されることにより、セラミックス基材10が形成される。
【0033】
電極20が高周波発生用電極である場合、電極20は、図2に示すように、電極用端子61にそれぞれ接続された円板状の電極要素21により構成されている。ただし、電極20は、上面視においてセラミックス基材10の内部の大部分を占め、連続した単一の領域を有する要素から構成されたものであれば、前述した構成、形態に限定されない。
【0034】
電極20が静電吸着用電極である場合、電極20は、図3に示すように、一対の電極用端子61にそれぞれ接続された2つの略半円板状の電極要素21a,21bにより構成されている。ただし、電極20は、上面視においてセラミックス基材10の内部の大部分を占め、電気的に独立した2つの電極要素から構成されたものであれば、前述した構成、形態に限定されない。電極20を構成する電極要素の数は2つに限定されず、上面視においてセラミックス基材10の内部の大部分を占めるものであれば1つでもよい。電極用端子61は電極要素ごとに設けられる。なお、セラミックス基材10を上下方向に貫通する孔が同一円周状に3つ設けられており、電極20は、これらの孔を避けるようにして形成されている。
【0035】
上側発熱抵抗体30は、図1のIV-IV線における断面図を示す図4を参照して、上面視において、電極20の最外周の輪郭線により画定される仮想円O1の内側領域に設けられた平面状の上側第1抵抗部31と、上側第1抵抗部31よりもセラミックス基材10の径方向の外側に設けられ、セラミックス基材10の円周方向に沿って延在する線状又は帯状の上側第2抵抗部32と、上側第1抵抗部31及び上側第2抵抗部32を接続する上側接続部33とを有している。なお、上側第1抵抗部31は本発明の第1抵抗部に相当し、上側第2抵抗部32は本発明の第2抵抗部に相当し、上側接続部33は本発明の接続部に相当する。
【0036】
具体的には、上側第1抵抗部31は、2つの大略半円状からなる上側第1抵抗要素31a,31bから構成されており、上側第1抵抗要素31a,31bはそれぞれ上側用端子62に接続されている。上側第1抵抗要素31a,31bは、それぞれ、上面視において、円板状であるセラミック基材10と同心の仮想円O2の外周に沿った輪郭線を有しており、略半円形となっている。
【0037】
そして、上面視において、上側第1抵抗部31の最外周の輪郭線によって画定される仮想円O2の面積を100%としたときに、上側第1抵抗部31の合計面積が50%以上となっている。
【0038】
上側第2抵抗部32は、セラミックス基材10と同心の円に沿って、図4における上下両端部が欠けた略半円環状に帯状に延在し、且つ上側第1抵抗部31を離間して取り囲む上側第2抵抗要素32aと、セラミックス基材10と同心の円に沿って、図4における上端部が欠けた略円環状に帯状に延在し、且つ上側第2抵抗要素32aを離間して取り囲む上側第2抵抗要素32bと、これら上側第2抵抗要素32aの図4における上端部とこれの外側近傍に位置する上側第2抵抗要素32bの端部とを接続する短い直線状の帯状の上側接続抵抗要素32cとから構成されている。このように、上側第2抵抗部32は、細長い帯状の抵抗要素32a~32cが分岐することなく連続している。
【0039】
上側接続部33は、上側第1抵抗要素31a,31bの図4における下側の端部と、これら端部の外側近傍に位置する上側第2抵抗要素32aの端部とをそれぞれ接続する、短い直線状の帯状の上側接続抵抗要素33a,33bから構成されている。
【0040】
上側第1抵抗部31は、上面視において下側発熱抵抗体40と重なる領域に配置され、上側第2抵抗部32は、上面視において下側発熱抵抗体40の最外周より外側の領域に配置されている。
【0041】
詳細には、上側第1抵抗要素31a,31bは、上側第2抵抗部32又は上側接続部33と同等の幅で直線的に上側用端子62と上側接続部33とを接続する領域以外の領域にも配置されており、その上面視で占める面積は、上側第2抵抗部32の存在する領域から所定の隙間を隔て、且つ、電極用端子61と図示しない電源又は接地とを電気的に接続するための構造と離間させるために必要な距離を離れた領域の略全体を占めている。ただし、上側発熱抵抗体30は、セラミックス基材10に形成された上述の3つの孔を避けるようにして形成されている。
【0042】
上側第1抵抗要素31a,31bは、上述したように広い領域に配置されているので、電気抵抗値は小さく、電流が印加されて発生するジュール発熱は小さくなる。そのため、上面視で下側発熱抵抗体40が占める領域内は、上側発熱抵抗体30が発生する発熱によっては均熱性が阻害されない。なお、このような作用効果を奏するものであれば、上側第1抵抗要素31a,31bの形状、態様は限定されない。
【0043】
そして、上側発熱抵抗体30も、上述した構成、形態に限定されない。本実施形態では、上側第2抵抗部32は、2つの上側第2抵抗要素32a,32bを有しているが、3以上の抵抗要素が接続抵抗要素によって互いが接続されるものであってもよい。
【0044】
また、図5に示すように、上側発熱抵抗体30Aにおいて、上側第2抵抗部32Aは、一端部が欠けた略円環状の抵抗要素のみからなるものであってもよい。さらに、図示しないが、上側第2抵抗部32A又は上側接続部33Aは、蛇行、屈曲した形態などであってもよい。
【0045】
また、上側第1抵抗部31は、上述したように2つの上側第1抵抗要素31a,31bからなるものに限定されず、3つ以上の上側第1抵抗要素からなるものであってもよい。上側発熱抵抗体30Bにおいて、上側第1抵抗部31Bが4つの上側第1抵抗要素31Ba~31Bdからなる例を図6に示す。この場合、各上側第1抵抗要素31Ba~31Bdは、それぞれ上側用端子62に接続され、且つ、それぞれ外周端部にて上側接続部33Bを構成する上側接続抵抗要素33Ba~33Bdを介して上側第2抵抗部32Bに接続される。上側第1抵抗要素31Ba~31Bdは、それぞれ、上面視において、円板状であるセラミック基材10と同心の仮想円O2の外周に沿った輪郭線を有しており、略扇形となっている。
【0046】
なお、図6では、上側第2抵抗部32Bは、1本の円環状から構成されているが、図4を参照して、複数本の略半円環状、直線状などの抵抗要素からなるものとして構成されていてもよい。
【0047】
また、上側第1抵抗部31を構成する上側第1抵抗要素31a,31bは、それぞれ上述したように上側接続部33を構成する上側接続要素33a,33bのうちの1つのものを介して上側第2抵抗部32と接続されるものに限定されず、2つ以上の上側接続要素によって接続されるものであってもよい。
【0048】
この場合、上側第1抵抗部31Cを構成する各上側第1抵抗要素が2つの上側接続抵抗要素に接続される例を図7に示すように、上側第1抵抗要素31Caの外周端部が2つの上側接続抵抗要素33Ca,33Cbを介して、上側第1抵抗要素31Cbの外周端部が2つの上側接続抵抗要素33Cc,33Cdを介して、それぞれ上側第2抵抗部32Cを構成する上側第2抵抗要素32Ca,32Cbに接続される。
【0049】
なお、図7では、各上側第1抵抗要素31Ca,31Cbは、その略半円状の円弧部分の略中間部が上側接続部33Cを構成する上側接続抵抗要素33Ca~33Cdに接続されているが、接続箇所はこれに限定されず、例えば、図8を参照して、略半円状の円弧部分の端部が上側接続抵抗要素と接続されていてもよい。また、図8に示すように、図4図7に示した形態を組み合わせて、上側第2抵抗部32Dを構成する抵抗要素32Da,32Db,32Dcが分岐しているものであってもよい。
【0050】
下側発熱抵抗体40は、図1のIX-IX線における断面図を示す図9を参照して、一対の下側用端子63とそれぞれ接続された下側第1抵抗部41と、下側第1抵抗部41と接続され、下側第1抵抗部41を取り囲む1又は複数の下側第2抵抗部42と、隣接する下側第2抵抗部42の要素同士を接続する下側接続抵抗部43とから構成されている。そして、下側発熱抵抗体40は、上面視において、上側発熱抵抗体30の上側第2抵抗部32の最内周の輪郭線により画定される仮想円O3よりも内側に配置されている。
【0051】
具体的には、下側第1抵抗部41は、2つの下側第1抵抗要素41a,41bから構成されており、それぞれが波状、折れ曲がり状又は蛇行して配置されており、その端部が下側用端子63に接続されている。なお、下側第1抵抗要素41a,41bは、直線状であってもよいが、ここでは、図9に黒丸で示す温度センサを避けるようにして配置されている。
【0052】
下側第2抵抗部42は、下側第1抵抗部41を重畳的に外側から取り囲み、且つ円板状のセラミックス基材10と同心の円に沿い、図中の上下部が欠けた円環状、すなわち略半円環状に対となって帯状に延在し、相互に径方向に離間している複数対の、ここでは5対の下側第2抵抗要素42a~42eから構成されている。なお、ここでは、下側第2抵抗要素42aは、下側第1抵抗要素41a,41bと同様に、前記温度センサを避けるように、それぞれが波状、折れ曲がり状又は蛇行して配置されている。
【0053】
下側接続抵抗部43は、下側第2抵抗要素42a~42dの端部と、これら端部の外周側近傍に位置する下側第2抵抗要素42b~42eの端部とをそれぞれ交互に接続する短い帯状の4対の下側接続抵抗要素43a~43dから構成されている。
【0054】
なお、下側発熱抵抗体40は、上述したものに限定されず、従来のセラッミクスヒータにおいてセラミックス基板に埋設された発熱抵抗体からなるものと形態、態様と同じであってもよい。例えば、下側第2抵抗要素42b~42e又は下側接続抵抗部43は、波状、折れ曲がり状又蛇行して配置されていてもよい。
【0055】
なお、下側発熱抵抗体40を、上下方向の位置を変えた複数段に配置してもよい。このように、下側発熱抵抗体40は、公知のセラミックスヒータの基材に埋設された発熱抵抗体と同じように配置すればよく、その構成、形態などは限定されない。
【0056】
従来のセラミックスヒータにおいては、上側第1抵抗部31は上側用端子62と上側第2抵抗部32a,32bとを上側接続抵抗部33の幅と同程度の幅で直線的に接続する領域に配置されていたので、この部分における不可避なジュール発熱により、セラミックス基材10の均熱化を妨げられていた。
【0057】
しかし、本セラミックスヒータ100においては、上側第1抵抗部31は、従来と比較して広い領域に配置されており、抵抗値が小さくなっているので、発熱が抑制される。これにより、セラミックス基材10の均熱化を図ることが可能となる。また、埋設する上側発熱抵抗体30として金属層をほぼ全面に渡り配置しているので、その金属の反射率が大きいため下側発熱抵抗体40で発熱したジュール熱を反射し、シャフト50への熱逃げを抑制する効果も得られ、あわせて均熱化を図ることができる。
【0058】
さらに、電極20及び発熱抵抗体30,40を埋設したセラッミクス粉末を焼成してセラッミクス基材10を製作するが、焼成時にセラミックス粉末に含まれるカーボン成分が電極20及び発熱抵抗体30,40と反応することにより、これらの抵抗値が所望の値を有することになる。
【0059】
例えば、原料が窒化アルミニウム(AlN)粉末や酸化アルミニウム(Al)粉末である場合、原料となるセラミックス粉末の造粒時には有機溶媒に起因するカーボン成分がわずかに残留する。このカーボン成分は焼成後においても残留する。また、原料であるセラミックス粉末に有機バインダを添加してセラミックス基材10となる成形体を製作すると、成形体の脱脂後やその後の焼成時においても有機バインダに起因するカーボン成分が残留する。
【0060】
平面状の電極20と平面状の上側第1抵抗部31との間に下側発熱抵抗体40と同様な形態を有する発熱抵抗体を配置すると、当該発熱抵抗体の上下周辺領域のカーボン成分の多くが平面状の電極20及び平面状の上側第1抵抗部31と反応するために、上下にその間を挟まれた発熱抵抗体は所望の抵抗値を有さない。
【0061】
一方、本実施形態においては、下側発熱抵抗体40の下方には平面状の電極や平面状の発熱抵抗体が何ら存在しないので、焼成時に下側発熱抵抗体40はカーボン成分と反応して、所望の抵抗値を有するものとなる。
【0062】
なお、本発明の実施形態に係るセラミックスヒータは、上側発熱抵抗体30と下側発熱
抵抗体30との上下2層の発熱抵抗体を備えるものに限定されない。例えば、本発明のセラミックスヒータは、下側発熱抵抗体40より下側にさらに位置する発熱抵抗体、下側発熱抵抗体40と上側発熱抵抗体30との間に位置する発熱抵抗体、上側発熱抵抗体30より上側にさらに位置する発熱抵抗体の何れかが、少なくとも1つ備わるものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…セラミックス基材、 10a…上面、 10b…下面、 20…平面状の電極、 21,21a,21b…電極要素、 30,30A,30B…上側発熱抵抗体(第1発熱抵抗体)、 31,31A,31B,31C…上側第1抵抗部(第1抵抗部)、 31a,31b,31Ba~31Bd,31Ca,31Cb…上側第1抵抗要素(複数の部分)、 32,32A,32B,32C,32D…上側第2抵抗部(第2抵抗部)、 32a,32b,32c,32Ca,32Cb,32Da~32Dc…上側第2抵抗要素、 33,33A,33B,33C,33D…上側接続部(接続部)、 33a,33b,33Ba~33Bd,33Ca~33Cd…上側接続抵抗要素、 40…下側発熱抵抗体(第2発熱抵抗体)、 41…下側第1抵抗部、 41a,41b…下側第1抵抗要素、 42…下側第2抵抗部、 42a~42e…下側第2抵抗要素、 43…下側接続抵抗部、 43a~43d…下側接続抵抗要素、 50…シャフト、 51…円筒部、 52…拡径部、 61…電極用端子、 62…上側用端子、 63…下側用端子、 100…セラミックスヒータ。
図1
図2
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図9