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  • 特許-車両の室内構造 図1
  • 特許-車両の室内構造 図2
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  • 特許-車両の室内構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】車両の室内構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
B60N2/42
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018110483
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019209940
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 一平
(72)【発明者】
【氏名】田村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 満寛
(72)【発明者】
【氏名】川岸 亮平
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-096216(JP,A)
【文献】特開平05-301551(JP,A)
【文献】特開2010-221955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42-2/433
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に設けられ、乗員の上体の左右側方を支持する側方支持部を有するシートであって、シートフレームと、車幅方向において内側の側方支持部内部に位置し、前記シートフレームに固定された側方支持部フレームとを有するシートと、
前記シートより車幅方向内側に、前記シートに隣接して設けられたコンソールボックスと、
を含み、
前記側方支持部フレームと前記コンソールボックスが側方視において少なくとも部分的に重なるよう位置し、
車幅方向において外側の側方支持部内部には、前記側方支持部フレームに相当する構成は設けられていない、
車両の室内構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の室内構造であって、前記コンソールボックスは、当該車両のフロアトンネル上に固定されたコンソールフレームを有する、車両の室内構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の室内構造であって、前記側方支持部フレームと前記コンソールフレームが側方視において少なくとも部分的に重なるように位置している、車両の室内構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の室内構造であって、前記側方支持部フレームは、前記シートフレームのシートバックフレームの側面に固定されている、車両の室内構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の室内構造であって、前記シートは運転席である、車両の室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内構造、特にシートとシートに隣接するコンソールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側面衝突における様々な対策が提案されている。下記特許文献1には、シート(1)側方であってシート(1)の下部クロスメンバ(20)の延長線上に設けられ、コンソールボックス(5)の側面に対向する下部内側荷重伝達ブロック(25)が示されている。側面衝突時にシート(1)に入力した荷重は、下部内側荷重伝達ブロック(25)およびコンソールボックス(5)を介してフロアトンネル(12)に伝達される。なお、上記の( )内の符号は、下記特許文献1において用いられている符号であり、本願の実施の形態で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-230686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
側面衝突時、特に乗員が着席した側とは反対側からの衝突時にこの乗員の上体の移動量を低減することが求められている。上記特許文献1の技術では、シートの移動を制限することができるが、乗員の上体の移動を規制することができない。
【0005】
本発明は、着席側とは反対側からの衝突において、乗員の上体の移動量を低減すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の室内構造は、車両の室内に設けられ、乗員の上体の左右側方を支持する側方支持部を有するシートと、シートより車幅方向内側に、シートに隣接して設けられたコンソールボックスと、を含む。シートは、シートフレームと、車幅方向において内側の側方支持部内部に位置し、シートフレームに固定された側方支持部フレームとを有する。側方支持部フレームとコンソールボックスが側方視において少なくとも部分的に重なるよう位置している。また、車幅方向において外側の側方支持部内部には、内側の側方支持部内部に設けられた側方支持部フレームに相当する構成は設けられていない。
【0007】
着目するシートが設置された側とは反対側からの側面衝突(以降、ファーサイド衝突と記す。)において、シート、特にそのシートバックの側面とコンソールボックスが衝突する。シートバックの側方支持部内に側方支持部フレームを配置し、ファーサイド衝突時に側方支持部フレームがコンソールボックスに当接するようにすれば、コンソールボックスによって側方支持部フレームの移動が規制される。これにより、該当するシートに着席していた乗員の上体の側方への動きを側方支持部によって抑制することができる。
【0008】
コンソールボックスは、当該車両のフロアトンネル上に固定されたコンソールフレームを有するようにできる。コンソールフレームを設けることによって、コンソールボックスの剛性を高めることができ、ファーサイド衝突時において側方支持部フレームおよび乗員の動きをより抑制することができる。
【0009】
さらに、コンソールフレームを、側方視において側方支持部フレームと少なくとも部分的に重なるよう配置することができる。コンソールフレームによってより直接的に側方支持部フレームを支持することができ、ファーサイド衝突時において側方支持部フレームおよび乗員の動きをより抑制することができる。
【0010】
また、側方支持部フレームは、シートフレームのシートバックフレームの側面に固定するようにできる。これによれば、側方支持部フレームをシートバックフレームの前面に固定する場合に比べ、側方支持部フレームと、コンソールボックスまたはコンソールフレームとの重なり部分を大きくすることができ、ファーサイド衝突時において側方支持部フレームおよび乗員の動きをより抑制することができる。
【0011】
側方支持部フレームは、運転席に設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
シートの側方支持部内に側方支持部フレームを設け、この側方支持部フレームを、ファーサイド衝突時においてコンソールボックスで支持することにより側方支持部フレームの動きを抑制し、乗員の上体の移動量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】運転席(シート)周辺の室内構造を模式的に示す斜視図である。
図2】運転席周辺を側方視した模式図である。
図3】運転席およびセンタコンソールの内部構造を示す図である。
図4】側面衝突時の側方支持部フレームおよび乗員の動きを模式的に示す水平断面図である。
図5】側面衝突時のシートおよび乗員の動きを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1および図2は、車両の進行方向右側のシート10(右ハンドルの車両においては運転席)およびシート10に着座した乗員12を模擬した人体ダミーを示す図である。図1は斜視図、図2は車両の左方から視た側面図である。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。また、車両の左右方向(車幅方向)において車両の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方、矢印INの向きが車幅方向内側である。
【0015】
シート10は、乗員12の尻部を支持するシートクッション14と、乗員の背部を支持するシートバック16を有する。シートバック16の上部には、乗員12の頭部を支持するヘッドレスト18が設けられている。さらに、シートバック16は、左右の側縁近傍に、前方に向けて膨出し、乗員の上体、特に腰部の側方を支持する側方支持部20を有している。なお、図1,2において、シートバック16は、その内部構造を示すために外形を一点鎖線で示し、内部構造の要部を実線で示している。シート10はフロア22上に配置され、フロア22のシート10が配置された領域の車幅方向内側には、フロア22の底面から隆起したフロアトンネル24が設けられている。フロアトンネル24は、左右のシートの間を前後方向に延びている。
【0016】
フロアトンネル24の上方には、つまり運転席と助手席の間には、センタコンソール26が設けられている。センタコンソール26には、例えば、シフトレバー、パーキングブレーキレバー、カップホルダ、各種スイッチ、収納部が備えられる。センタコンソール26の後部、つまり左右の座席のシートバックの間には、小物を収納可能なコンソールボックス28が設けられている。コンソールボックス28は、センタコンソール26の他の部分よりも高い位置に設けられ、側方視したとき、着座した乗員の尻部および腰部の少なくとも一部と重なるよう配置されている。なお、図1,2において、センタコンソール26は、その内部構造を示すために外形を一点鎖線で示し、内部構造の要部を実線で示している。
【0017】
乗員12を模した人体ダミーは、該当する衝突試験ごとに用いる種類が定められており、側面衝突試験では、一般的にAM50、つまり平均的な体格のアメリカ人男性を模したものが用いられる。シート10のスライド位置、シートクッション14の高さ、シートバック16の角度等の各調節機構は、人体ダミーの種類に合わせて調整されている。
【0018】
図3は、シート10のシートフレーム30と、センタコンソール26の内部に配置されたコンソールフレーム32とを示す図である。以下、図1,2と合わせて、シート10およびセンタコンソール26の内部構造を説明する。
【0019】
シートフレーム30は、シート10の骨格を形成する強度部材であり、典型的には、パイプ、プレス鋼板、樹脂材料等を組み合わせて形成される。シートフレーム30は、シートクッション14とシートバック16のそれぞれの骨格部材となるシートクッションフレーム34とシートバックフレーム36を有する。シートバックフレーム36は、略四角形の枠形状を有し、四角形の内側には、シートバックスプリング38が配置される。シートバックフレーム36およびシートバックスプリング38は、軟質ウレタンフォーム等の柔軟な材料からなるシートカバーパッド(不図示)に覆われ、更にその外側をシート表皮材が覆っている。
【0020】
シートバックフレーム36の四角形の縦辺、つまり上下方向に延びる部材のうち車幅方向内側の部材(以下、内側縦材と記す。)40には、側方支持部フレーム42が固定されている。側方支持部フレーム42は、硬質の樹脂製とすることができ、図4に示されるように複数のリブを有し、リブ先端により包絡的に外形を規定する構造とすることができる。また、側方支持部フレーム42は中空構造または中実構造としてもよい。側方支持部フレーム42は、内側縦材40の車幅方向内側を向いた面に装着され、例えば、側方支持部フレーム42に頭部が埋められたボルトと、このボルトにねじ結合するナットによって締結固定される。側方支持部フレーム42は、車幅方向内側の側方支持部20内に位置し、シートカバーパッドよりも剛性が高く、側方支持部20の剛性を高めている。側方支持部フレーム42は、側方視においてコンソールボックス28と少なくとも部分的に重なるように配置されている。側方支持部フレーム42のコンソールボックス28に対向する面は、シートバックフレーム36の内側縦材40よりもコンソールボックス28に近接している。シートバックフレーム36のもう一つの縦材、つまり車幅方向外側の縦材には、側方支持部フレーム42は設けられていない。
【0021】
フロアトンネル24上には、コンソールフレーム32がボルト等の締結要素により、または溶接により固定されている。コンソールフレーム32は、コンソールボックス28の内部に位置し、コンソールボックス28の剛性を高めている。コンソールフレーム32は、プレス鋼板製とすることができる。コンソールフレーム32は、フロアトンネル24の上面に固定された下部フレーム44と、下部フレーム44上に固定された上部フレーム46をから構成することができる。また、コンソールフレーム32は一体に構成することができる。
【0022】
図2に示されるように、コンソールフレーム32の上端は、側方支持部フレーム42の下端より高い位置にある。さらに、コンソールフレーム32と側方支持部フレーム42は、側方視において、少なくとも部分的に重なるように配置されている。図2の斜線を施した部分が、側方視において、コンソールフレーム32と側方支持部フレーム42が重なる部分である。
【0023】
図4,5は、ファーサイド衝突時のシート10および乗員12の動きを示す図である。図4はシート10の側方支持部フレーム42を含む水平断面を示す図であり、図5はシート10を後方視した図である。
【0024】
ファーサイド衝突によって、車体に、図4,5において矢印Fで示す荷重が加わると、シート10および乗員12は慣性によりその場に留まろうとし、車体に対して相対的に移動する。図4においては、乗員12の上体、特に側方支持部20に支持される部分は、一点鎖線で示す位置12Bのように移動する。また、図5においては、乗員12は、一点鎖線で示す位置12B、さらに二点鎖線で示す位置12Cのように移動する。側方支持部20および側方支持部フレーム42は、移動する乗員12からの力を受け、車幅方向内側に移動する。この移動によって、側方支持部フレーム42はコンソールボックス28に当接し、コンソールボックス28およびその内部に位置するコンソールフレーム32に支持され、これ以上の移動が抑制される。コンソールボックス28等に支持された状態で、側方支持部フレーム42は、乗員12の上体を支持し、上体の移動を抑制する。これにより、ファーサイド衝突時において、乗員12、特に乗員の頭部の移動量を低減することができる。また、側方支持部フレーム42は、シートバックフレーム36よりもコンソールボックス28に近い位置にあり、ファーサイド衝突時において、より早期にシート10のフレームがコンソールボックス28に当接するようになる。これによっても、乗員12の上体の移動量を低減することができる。
【0025】
コンソールボックス28がコンソールフレーム32を内蔵しない場合であっても、コンソールボックス28が十分な剛性を有していれば、コンソールボックス28によって側方支持部20を支持し、乗員12の移動量を低減することができる。また、コンソールフレーム32と側方支持部フレーム42が側方視において重ならない場合であっても、コンソールフレーム32を内蔵することによりコンソールボックス28の剛性が高くなり、コンソールフレーム32がない場合に比べより確実に側方支持部20を支持することができ、乗員12の移動量を低減することができる。
【0026】
側方支持部フレーム42は、運転席に限らず他の席、例えば助手席のシートに設けることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 シート、12 乗員、14 シートクッション、16 シートバック、18 ヘッドレスト、20 側方支持部、22 フロア、24 フロアトンネル、26 センタコンソール、28 コンソールボックス、30 シートフレーム、32 コンソールフレーム、34 シートクッションフレーム、36 シートバックフレーム、38 シートバックスプリング、40 内側縦材、42 側方支持部フレーム、44 下部フレーム、46 上部フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5