(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】フロアマット
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
B60N3/04 B
(21)【出願番号】P 2018141621
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】512210098
【氏名又は名称】日本VIAM株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】多田 友浩
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195071(JP,A)
【文献】特開2012-176705(JP,A)
【文献】特開2016-154609(JP,A)
【文献】実開昭63-66910(JP,U)
【文献】特開2009-11591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のマットシートからなるフロアマットであり、
前記マットシートはそれぞれ表面から裏面へ貫通する貫通孔を有し、
少なくとも第一のマットシートの貫通孔は、中空の筒部を有するグロメットにより保護されており、
これらのマットシートは、これらの貫通孔を貫通する胴部を有するピン状の連結部材により連結可能であり、
少なくとも第二のマットシートは、前記連結部材の一端から取外し可能であり、且つ、前記連結部材の他端に連結可能であり、
前記連結部材は、前記グロメットの筒部内を上下方向に移動させることができ、前記グロメットの筒部内壁部と連結部材の前記胴部とが部分的に接触している
ことを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
マットシートの全ての貫通孔が貫通孔保護用リング部材により保護されている、請求項1に記載のフロアマット。
【請求項3】
前記連結部材は、その胴部の上端部において外側に突出する上部ストッパーと、前記胴部の下端部において外側に突出する下部ストッパーとを有する、請求項1又は2に記載のフロアマット。
【請求項4】
前記連結部材が回転可能であり、上部ストッパー又は下部ストッパーとグロメットとの間でマットシートを係止固定することのできる、請求項3に記載のフロアマット。
【請求項5】
グロメットの筒部に、筒部の円周方向に沿って延びるスリットを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフロアマット。
【請求項6】
連結部材の胴部の上端部と下端部との間に中央突起を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフロアマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚以上のマットシート(例えば、ラバーマットシート、ポリ塩化ビニル樹脂マットシート、カーペットマットシート)を積層した分離型フロアマットに関し、特に、場所を取らない分離型フロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
場所を取らない分離型フロアマットとして、本出願人は特許文献1に記載のフロアマットを提案した。このフロアマットは、例えば、2枚のマットシートがそれぞれ貫通孔を有しており、これらマットシートが貫通孔を貫通するピン状の連結部材により連結しており、少なくとも1枚のマットシートは連結部材の一端から取り外し可能、かつ前記連結部材の他端に連結可能であることによって、マットシートの上下における位置関係を変えることができるため、場所を取らないフロアマットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記フロアマットには、第一に、連結部材の動きが悪いため、マットシートの取外し及び連結作業性(脱着性)が悪いといった課題があった。また、第二に、マットシートの脱着の繰り返しにより、貫通孔が広がり、勘合強度が低下し、マットシート又は連結部材が移動または脱落しやすいといった課題があった。
前記第一課題を解決することを本発明の第一の課題とし、前記第二課題も解決することを本発明の第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1]少なくとも2枚のマットシート(1),(2)からなるフロアマット(10)であり、前記マットシートはそれぞれ表面から裏面へ貫通する貫通孔を有し、少なくとも第一のマットシート(1)の貫通孔は、中空の筒部(31)を有するグロメットにより保護されており、これらのマットシートは、これらの貫通孔を貫通する胴部(63)を有するピン状の連結部材(6)により連結可能であり、少なくとも第二のマットシート(2)は、前記連結部材の一端から取外し可能であり、且つ、前記連結部材の他端に連結可能であり、前記連結部材は、前記グロメットの筒部内を上下方向に移動させることができ、前記グロメットの筒部内壁部(33)と連結部材の前記胴部とが部分的に接触していることを特徴とするフロアマット、
[2]マットシートの全ての貫通孔が貫通孔保護用リング部材により保護されている、[1]のフロアマット、
[3]前記連結部材は、その胴部の上端部において外側に突出する上部ストッパーと、前記胴部の下端部において外側に突出する下部ストッパーとを有する、[1]又は[2]のフロアマット、
[4]前記連結部材が回転可能であり、上部ストッパー又は下部ストッパーとグロメットとの間でマットシートを係止固定することのできる、[3]のフロアマット、
[5]グロメットの筒部に、筒部の円周方向に沿って延びるスリットを有する、[1]~[4]のいずれかのフロアマット、
[6]連結部材の胴部の上端部と下端部との間に中央突起を有する、[1]~[5]のいずれかのフロアマット
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の前記[1]のフロアマットにおいては、グロメットの筒部内壁部と連結部材の胴部とを部分的に接触させることにより、摩擦抵抗を小さくして、滑りを良くし、マットシートの脱着性を向上させることができる。
【0007】
本発明の前記[2]のフロアマットにおいては、全ての貫通孔に貫通孔保護用リング部材(例えば、グロメット、埋設リングプレート等)を設けて筒部内壁部を構成することにより、貫通孔の広がりを防止し、マットシート又は連結部材の脱落を防止することができる。
【0008】
本発明の前記[3]のフロアマットにおいては、連結部材が上部ストッパーと下部ストッパーとを有するため、マットシート又は連結部材が脱落しにくい。
【0009】
本発明の前記[4]のフロアマットにおいては、連結部材を回転させ、上部ストッパー又は下部ストッパーとグロメットとの間でマットシートを係止固定することができるため、マットシート同士の勘合強度を高め、マットシート又は連結部材の脱落を防止することができる。
【0010】
本発明の前記[5]のフロアマットにおいては、グロメットの筒部にスリットを有することにより、グロメットの筒部の形状が変化しやすくなるため、摩擦抵抗をより小さくして滑りを良くすることができる。
【0011】
本発明の前記[6]のフロアマットにおいては、連結部材の胴部に中央突起を有することにより、連結部材を上下方向に移動させた場合に発生する可能性のあるがたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のフロアマット10の一態様であって、(A)樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を重ねた状態の表面側(敷設時に目視できる側)の平面図と、(B)樹脂マットシート1のみの状態の表面側の平面図である。
【
図2】
図1に示すフロアマット10において、両マットシート1,2の連結用貫通孔を保護するインサートプレート5、雄グロメット3の位置関係を示すために、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2をずらして重ねた状態の表面側の平面図である。
【
図4】
図1~
図3に示すフロアマット10における、カーペットマットシート2の連結用貫通孔を保護する雄グロメット3及び雌グロメット4、樹脂マットシート1の連結用貫通孔を保護するインサートプレート5、並びにピン状連結部材6(上部ストッパー61を含む上部部品6aと、胴部63並びに下部ストッパー62及び中央突起66を含む下部部品6bとからなる)の分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す雄グロメット3を雌グロメット4に嵌め込んで構成されるグロメット、並びに、上部部品6aを下部部品6bに嵌め込んでピン状連結部材6とした状態をそれぞれ示す、斜視図である。
【
図6】
図1(a)に示すフロアマット10(カーペットマットシート付き)における1つの貫通孔およびその周辺の構造を示す、部分拡大平面図、並びに、A-A線断面図、B-B線断面図、及びC-C線断面図(但し、A-A線断面図を除き、両マットシートは省略する)である。
【
図8】本発明のフロアマットの基本的な使用方法を説明する模式的説明図であって、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を重ねた状態で、連結部材6を回転させてマットシート同士を勘合させた状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
【
図9】
図8に示すフロアマットにおいて、連結部材6を回転させてマットシート同士の勘合を外し、カーペットマットシート2を持ち上げることにより、マットシートを分離した状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
【
図10】
図8に示すフロアマットにおいて、カーペットマットシート2の上に樹脂マットシート1を重ねる直前の状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
【
図11】
図8に示すフロアマットにおいて、カーペットマットシート2の上に樹脂マットシート1を重ねた状態で、連結部材6を回転させてマットシート同士を勘合させた状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
【
図12】本発明のフロアマットの別の態様におけるグロメットの筒部31の内壁部33と連結部材6の胴部63との接触の状態を示すための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフロアマットについて、添付図面に沿って説明する。
【0014】
図1は、(A)本発明の一態様であるフロアマット10における、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を重ねた状態の表面側(敷設時に目視できる側)の平面図と、(B)前記フロアマット10における、樹脂マットシート1のみの状態の表面側の平面図である。
図2は、
図1に示すフロアマット10において、両マットシート1,2の連結用貫通孔を保護するインサートプレート5、雄グロメット3の位置関係を示すために、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2をずらして重ねた状態の表面側の平面図である。
図3は、
図2の部分拡大平面図である。
【0015】
図4は、
図1~
図3に示すフロアマット10における、カーペットマットシート2の連結用貫通孔を保護する雄グロメット3及び雌グロメット4、樹脂マットシート1の連結用貫通孔を保護するインサートプレート5、並びにピン状連結部材6(上部ストッパー61を含む上部部品6aと、胴部63並びに下部ストッパー62及び中央突起66を含む下部部品6bとからなる)の分解斜視図である。
図5は、
図4に示す雄グロメット3を雌グロメット4に嵌め込んで構成されるグロメット、並びに、上部部品6aを下部部品6bに嵌め込んでピン状連結部材6とした状態をそれぞれ示す、斜視図である。
図6は、
図1(a)に示すフロアマット10(カーペットマットシート付き)における1つの貫通孔およびその周辺の構造を示す、部分拡大平面図、並びに、A-A線断面図、B-B線断面図、及びC-C線断面図(但し、A-A線断面図を除き、両マットシートは省略する)である。
図7は、
図6の理解を助けるための参考図である。
【0016】
図8~
図11は、本発明のフロアマットの基本的な使用方法を説明する模式的説明図である。なお、
図8~
図11に示すフロアマットは、
図1~
図7に示すフロアマットと同様に、連結用貫通孔の保護用リング部材として、カーペットマットシート2に雄グロメット3及び雌グロメット4から構成されるグロメットを、樹脂マットシート1にインサートプレート5を、それぞれ用いるものであるが、その目的(基本的な使用方法の説明)に従って、構造を簡略化している。
【0017】
図8は、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を重ねた状態で、連結部材6を回転させてマットシート同士を勘合させた状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
図9は、連結部材6を回転させてマットシート同士の勘合を外し、カーペットマットシート2を持ち上げることにより、マットシートを分離した状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
図10は、カーペットマットシート2の上に樹脂マットシート1を重ねる直前の状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
図11は、カーペットマットシート2の上に樹脂マットシート1を重ねた状態で、連結部材6を回転させてマットシート同士を勘合させた状態を示す部分拡大平面図および部分拡大断面図である。
【0018】
図1~
図3に示すフロアマット10は、樹脂マットシート1、カーペットマットシート2、及びこれらマットシートの連結用貫通孔を貫通することによって連結する連結部材6とからなる。樹脂マットシート1は、好ましくは弾性軟質の防水素材からなり、カーペットマットシート2を載置可能な平坦部12aの周縁に沿って、立ち上がり部12b、及びそれに続く外周縁部12cを有する。このように、樹脂マットシート1は立ち上がり部12bを有するため、樹脂マットシート1は平坦部12aにカーペットマットシート2を保持し、水平方向への移動を防止することができる。また、樹脂マットシート1をカーペットマットシート2の上に重ねた場合には、樹脂マットシート1は立ち上がり部12bを有するため、砂、泥、ごみ、泥水やこぼれた飲料水などがフロアマット10からこぼれて床(例えば、車両床)を汚すことを防止することができる。
【0019】
図1~
図3における樹脂マットシート1はピン状の連結部材6が貫通できる、表面から裏面へ貫通する、好ましくは外形が円形状の連結用貫通孔を4か所有し、各貫通孔は、貫通孔保護用リング部材として、
図4、
図6、
図7に示すような、樹脂マットシートに埋設されたインサートプレート5で保護されている。そのため、貫通孔の広がりを防止し、樹脂マットシート又は連結部材の脱落を防止することができる。なお、本発明のフロアマットでは、各種マットシートの連結用貫通孔の保護用リング部材として、インサートプレート以外に、例えば、マットシートの上面および下面から挟み込むグロメット等を用いることができる。
【0020】
なお、
図1~
図3における樹脂マットシート1にはカーペットマットシート2との連結のための貫通孔とは別の貫通孔7を有し、その周囲がグロメットにより保護されているため、車両の床面に設置された、例えばフック状のフロアマット保持部材を、前記貫通孔に貫通させて、車両使用時におけるフロアマットの移動を防止することができる。なお、
図1~
図3におけるフロアマットは樹脂マットシート1のみにフロアマット移動防止用の貫通孔を有するが、カーペットマットシート2にも設けることができる。
【0021】
一方で、カーペットマットシート2はピン状の連結部材6が貫通できる、表面から裏面へ貫通する、好ましくは外形が円形状の連結用貫通孔を4か所有し、各貫通孔は、
図4、
図6、
図7に示すような、雄グロメット3及び雌グロメット4から構成されるグロメットにより保護されている。そのため、貫通孔の広がりを防止し、カーペットマットシート又は連結部材の脱落を防止することができる。雄グロメット3は、筒部31と、前記筒部の一方の端部の外周に形成されるフランジ部32とからなり、雌グロメット4は、その中央に前記筒部31を挿入可能な貫通孔41を有する。なお、カーペットマットシート2の各連結用貫通孔は、カーペットマットシート2を樹脂マットシート1に重ねた際に、樹脂マットシート1の連結用貫通孔とそれぞれ一致する位置に存在している。
【0022】
そして、これら樹脂マットシート1の連結用貫通孔及びカーペットマットシート2の連結用貫通孔には、それぞれピン状の連結部材6が挿入され、連結用貫通孔を貫通することによって、樹脂マットシート1とカーペットマットシート2とが連結している。
【0023】
このピン状の連結部材6は基本的に円筒状の外観を有し、上端部において外側に突出する上部ストッパー61、下端部において外側に突出する下部ストッパー62、上部ストッパー61と下部ストッパー62との間に位置する胴部63とから構成されている。連結部材6は、雄グロメット3の筒部31内を上下方向に移動することができ、
図8又は
図9に示すように、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を配置する場合は、胴部63の下側が雄グロメット3の筒部31から下方向に突出するように下方に移動させる。なお、この場合、連結部材6は、上部ストッパー61の外側方向に突出する1組の鍔部61a,61bが、雄グロメット3における筒部内壁部33の上端部33aの外周に沿って設けた凹部34に引っ掛かるため、雄グロメット3のフランジ部32の上面32aと、上部ストッパー61の鍔面61cとが同一平面となる位置で、それ以上、下降することなく静止する。
【0024】
この状態で、雄グロメット3の筒部31から下方向に突出させた胴部63を、樹脂マットシート1の連結用貫通孔に挿入することにより、
図8に示すように、樹脂マットシート1の上にカーペットマットシート2を重ねることができる。
【0025】
図3又は
図8に示すように、下部ストッパー62に、外側方向に突出する1組の鍔部62a,62bを設け、且つ、樹脂マットシート用インサートプレート5の貫通孔51の内壁部52に、中心方向に突出し、且つ互いに対向する1組の突出片53a,53bを設けると、連結部材6を回転させることにより、樹脂マットシート1を雌グロメット4と下部ストッパー62との間で係止固定させると、勘合強度を高めることができるため、好ましい。例えば、前記突出片53a,53bを
図3に示すように、3時-9時の方向に設けた場合、
図9に示すように、連結部材6を回転させ、連結部材6の鍔部62a,62bを12時-6時の位置で止めると、前記鍔部62a,62bが前記突出片53a,53bと衝突することなく、連結部材6の胴部63を樹脂マットシート1の連結用貫通孔に挿入することができる。この状態で、
図8に示すように、連結部材6を回転させ、連結部材6の鍔部62a,62bを3時-9時の位置で止めると、前記鍔部62a,62bが前記突出片53a,53bに引っ掛かるため、樹脂マットシート1が雌グロメット4と下部ストッパー62との間で係止固定される。
【0026】
なお、上部ストッパー61の鍔面61cに、硬貨等と勘合できるスリット状の溝61dを設けると、勘合具合を目視で確認できるため、好ましい。
【0027】
一方、
図10又は
図11に示すように、樹脂マットシート1の下にカーペットマットシート2を配置する場合は、胴部63の上側が雄グロメット3の筒部31から上方向に突出するように上方に移動させる。この場合、連結部材6は、下部ストッパー62の鍔部62a,62bが、雄グロメット3における筒部内壁部33の下端部33bの外周に引っ掛かるため、雌グロメット4の下面42と、下部ストッパー62の鍔面62cとが概ね同一平面となる位置で、それ以上、上昇することなく静止する。また、雄グロメット3における筒部内壁部33の下端部33bの外周に沿って凹部を設けた場合、下部ストッパー62の鍔部62a,62bが前記凹部に引っ掛かるため、雌グロメット4の下面42と、下部ストッパー62の鍔面62cとが同一平面となる位置で、それ以上、上昇することなく静止させることができる。
【0028】
この状態で、雄グロマット3の筒部31から上方向に突出させた胴部63を、樹脂マットシート1の連結用貫通孔に挿入することにより、
図11に示すように、カーペットマットシート2の上に樹脂マットシート1を重ねることができる。
【0029】
図11に示すように、上部ストッパー61に、外側方向に突出する1組の鍔部61a,61bを設け、且つ、樹脂マットシート用インサートプレート5の貫通孔51の内壁部52に、中心方向に突出し、且つ互いに対向する1組の突出片53a,53bを設けると、連結部材6を回転させることにより、樹脂マットシート1を雄グロメット3と上部ストッパー61との間で係止固定させると、勘合強度を高めることができるため、好ましい。例えば、前記突出片53a,53bを
図3に示すように、3時-9時の方向に設けた場合、
図10に示すように、連結部材6を回転させ、連結部材6の鍔部61a,61bを12時-6時の位置で止めると、前記鍔部61a,61bが前記突出片53a,53bと衝突することなく、連結部材6の胴部63を樹脂マットシート1の連結用貫通孔に挿入することができる。この状態で、
図11に示すように、連結部材6を回転させ、連結部材6の鍔部61a,61bを3時-9時の位置で止めると、前記鍔部61a,61bが前記突出片53a,53bに引っ掛かるため、樹脂マットシート1が雄グロメット3と上部ストッパー61との間で係止固定される。
しかしながら、連結部材6の胴部63に上部ストッパー61又は下部ストッパー62は必ずしも必要ではない。
【0030】
このように、本発明のフロアマットは、例えば、土砂、水や雪が多く存在する環境下で使用するなど、従来とは異なるシチュエーションで使用しようとする場合、樹脂マットシート1の下にカーペットマットシート2を収納することができ、表面に露出したマットシートを交換した場合であっても、カーペットマットシート2の収納場所を取らない。
【0031】
本発明のフロアマットでは、雄グロメット3の筒部31の内壁部33と連結部材6の胴部63とが部分的に接触する(すなわち、全面で接触しない)ように、内壁部若しくは連結部材の胴部のいずれか一方の形状、又は内壁部及び連結部材の胴部の両方の形状を設計する。このように設計することにより、摩擦抵抗を小さくして、滑りを良くし、マットシートの脱着性を向上させることができる。
【0032】
図4~
図7に示す雄グロメット3と連結部材6においては、雌グロメット4の中央貫通孔41に雄グロメット3の中空の筒部31が嵌合され、前記筒部31に更に連結部材6の胴部63が挿入されている。前記胴部63の断面形状は、
図6に示すように、基本的形状として、正方形の四辺に大略半円が結合した形状であり、その外周が、前記大略半円に由来する凸部64a,64b,64c,64dと、隣接する凸部間に由来する凹部65a,65b,65c,65dが、交互に、且つ滑らかに4回繰り返す形状をとる。一方、雄グロメット3の筒部31の断面形状は、壁厚が一定の筒型形状を大略二等分したもの34a,34bに、それぞれの一方の端部の内壁部側に大略半円35a,35bが結合した形状(但し、大略半円を結合する端部は、互いに対向する端部であるものとする)である。雄グロメット3の筒部31の内壁部33と、連結部材6の胴部63とは、大略半円35aと凹部65aとの間と、大略半円35bと凹部65cとの間の二か所で接触している。
【0033】
図4~
図7に示す形状では、胴部63における凸部及び凹部の繰り返し単位の数が4であるが、これに限定されるものではなく、例えば、1~8であることができる。また、筒部31では、筒型形状を大略二等分しているが、これに限定されるものではなく、例えば、2~8等分することができる。
【0034】
雄グロメット3の筒部31の内壁部33と連結部材6の胴部63との接触状態を示す別の例の
図12に示す態様では、連結部材6の胴部63の断面形状が円形であり、前記胴部63と、筒部31の内壁部33とは、内壁部33の長さ方向に延び、且つ内壁部33から中心に向かって延びる6つの突出部37の端部37aで接触している。前記突出部の数は、例えば2~8であり、好ましくは3~6であり、均等に配置されていることが好ましい。また、突出部の断面形状は、
図12に示す矩形形状以外にも、例えば、頂点で胴部と接触する三角形状、半円形状、半楕円形状などを挙げることができる。
【0035】
図12に示す態様は、内壁部側に突出部を設けるものであるが、内壁部の断面形状を真円形状とし、胴部側に、胴部の長さ方向に延び、且つ胴部から外側に向かって延びる突出部を設けることもできる。この場合、突出部の数は、例えば2~8であり、好ましくは3~6であり、均等に配置されていることが好ましい。また、突出部の断面形状は、例えば、矩形形状、頂点で内壁部と接触する三角形状、半円形状、半楕円形状などを挙げることができる。
【0036】
本発明のフロアマットにおける好適態様として、
図4に示す態様では、雄グロメット3の筒部31に、筒部の円周方向に沿って延びるスリット36を、対向する位置に2個設けている。このようなスリットを設けることにより、雄グロメットの筒部の形状が変化しやすくなるため、連結部材6の筒部における上下方向への移動時又は筒部における円周方向への回転時の摩擦抵抗をより小さくして滑りを良くすることができる。
【0037】
スリットの幅(すなわち、筒部の長さ方向における長さ、スリットが筒部の長さ方向に複数ある場合にはスリットの幅の合計)は、筒部の形状が変化しやすくなるのであれば、特に限定されるものではなく、筒部の全長の30~80%であることができる。
また、筒部の円周に対するスリットの占める割合(スリットが筒部の円周方向に複数ある場合にはスリットの長さの合計)は、例えば、10~90%(好ましくは30~70%)であることができる。
筒部に設けるスリットの数は、例えば、0~10個であることができる。
なお、
図4に示す態様では雄グロメット3の筒部31に、貫通するスリット36を有する態様であるが、スリットが貫通していなくても、雄グロメットの筒部の形状が変化しやすく、摩擦抵抗をより小さくして滑りを良くすることができる。
【0038】
本発明のフロアマットにおける別の好適態様として、
図4~
図7に示す態様では、連結部材6の胴部63の上端部と下端部との間に中央突起66を設けている。このような中央突起を設けることにより、連結部材を上下方向に移動させた場合に発生する可能性のあるがたつきを防止することができる。なお、
図4~
図7に示す態様では、胴部63をほぼ2等分した位置に中央突起66を有するが、2等分した位置でなくても、同様の作用効果を奏する。また、中央突起は1つである必要はなく、2つ以上設けても良い。
【0039】
これまで説明した各態様では、樹脂マットシート1とカーペットマットシート2の2枚のマットシートから構成されているが、2枚のマットシートから構成されている必要はなく、3枚以上であっても良い。マットシートの数が多ければ多いほど、シチュエーションに対応させて、マットシートを表面に露出させて使用することができるとともに、マットシートの収納場所を取らない。
【0040】
なお、マットシートとしては、前述のような樹脂マットシート、カーペットマットシートに限定されず、例えば、カーペットマットシートと樹脂マットシートとの複合マットシートを使用することもできる。
【0041】
カーペットマットシートとしては、例えば、天然繊維又は合成繊維からなるタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、フックカーペット、又は織物基布を挙げることができ、その裏面には、摩擦力を保持する、天然ゴム若しくは合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、又はニトリル-ブタジエンゴム)、又は熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、イソプレン系又はポリ塩化ビニル系の各熱可塑性エラストマー)からなる樹脂の他に、滑り止め機能を保持した不織布、織物などの繊維裏材を貼り合わせることができる。
【0042】
樹脂マットシートとしては、例えば、天然ゴム若しくは合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、又はニトリル-ブタジエンゴム)、又は熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、又はポリ塩化ビニル系の各熱可塑性エラストマー)からなる樹脂マットシートを挙げることができる。
【0043】
本発明で用いるマットシートとしてカーペットマットシートを含んでいると、意匠性に優れているため好適である。なお、マットシートとして樹脂マットシートを含む場合、樹脂マットシートの平坦部12aには、横滑りを防ぐために、デザイン上の観点、或いは使用者のズボンの裾を濡らすことがないように、各種凹凸模様を付することができる。また、カーペットマットシート、樹脂マットシートなどのマットシートは、マットシートの耐久性を高めるために、踵が頻繁に接触する箇所にパッドを装着したり、前記箇所の厚さを厚くするのが好ましい。
【0044】
本発明のフロアマットを構成することのあるグロメット又はインサートプレート等の素材は特に限定されるものではないが、例えば、エンジニアリングプラスチック[例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)など]、オレフィン系樹脂[例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)]であることができる。
【0045】
図1におけるフロアマット10においては、4か所において連結部材6によって連結されているが、4所である必要はない。なお、
図1における樹脂マットシート1の平坦部12aの外周形状とカーペットマットシート2の外周形状とはほぼ同じ、かつほぼ同じ大きさであるが、外周形状、大きさともに同じである必要はない。しかしながら、樹脂マットシート1の平坦部12aの外周形状とカーペットマットシート2の外周形状とはほぼ同じ、かつほぼ同じ大きさであると、カーペットマットシート2の水平方向へのずれを効果的に防止することができる。
【0046】
図8~11におけるフロアマット10においては、カーペットマットシート2における雄グロメット3の筒部内壁部33に連結部材6が挿入された状態にあるが、樹脂マットシート1のインサートプレート5の内壁部52に連結部材6が挿入された状態にあっても良い。
なお、
図1~11のフロアマット10においては、樹脂マットシート1の連結用貫通孔はインサートプレート5によって保護されているが、カーペットマットシート2と同様のグロメットによって保護されていても良い。
また、
図1~11のフロアマット10は、カーペットマットシート2と樹脂マットシート1とが連結部材6の回転によって勘合可能であるが、必ずしも勘合できる必要はない。
更に、
図1~11のフロアマット10においては、雄グロメットと雌グロメットとから構成されるグロメットを使用しているが、樹脂マットシート1又はカーペットマットシート2の貫通孔に装着可能な変形性を有するグロメットであれば、雄グロメットと雌グロメットとから構成されている必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のフロアマットは、例えば、自動車用フロアマットの用途に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10・・・フロアマット;
1・・・樹脂マットシート;2・・・カーペットマットシート;
3・・・雄グロメット;4・・・雌グロメット;
5・・・インサートプレート;6・・・ピン状連結部材;