(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】輸液注入システムの改善
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20220216BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61M5/14 500
A61M5/142 502
A61M5/142 522
(21)【出願番号】P 2018145104
(22)【出願日】2018-08-01
(62)【分割の表示】P 2016151389の分割
【原出願日】2012-02-08
【審査請求日】2018-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-06
(32)【優先日】2011-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリー サール
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ウォン
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】村上 聡
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0060874(US,A1)
【文献】国際公開第2010/004206(WO,A2)
【文献】特開2002-239003(JP,A)
【文献】特表2005-507716(JP,A)
【文献】国際公開第2010/085338(WO,A1)
【文献】特表2005-514095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M5/142
A61J1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器、導入器針およびカテーテルのうちの少なくとも1つを備える輸液セットのための装置であって、
前記輸液セットと一体化されたポンプを備え、
前記ポンプはリニア蠕動ポンプを備え、前記リニア蠕動ポンプは、薬瓶と前記貯蔵容器との間で内容物を移送し、前記貯蔵容器と前記カテーテルとの間で内容物を移送するように構成され、および、前記
貯蔵容器は第1の寸法と該第1の寸法よりも短い第2の寸法との間で伸縮することができ、それにより前記内容物を充填および移送するための内容積が可変のチャンバーを形成する折り畳み可能なチューブセグメントであって、前記伸縮方向への1段の屈曲で
折り畳まれる、チューブセグメントであることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記チューブセグメントは、細長いチューブセグメントであり、前記第1の寸法は充填された寸法であり、前記第2の寸法は空の寸法であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チューブセグメントは、膨張可能チューブセグメントであり、前記第1の寸法は充填された寸法であり、前記第2の寸法は空の寸法であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記導入器針およびカテーテルのうちの少なくとも一方に振動を伝達するように構成された圧電素子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ポンプは、チュービングを実質的に円形に保管するように構成されたチューブリールをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、輸液注入システムのコンポーネントおよび要素に関し、詳細には、チューブセット(tube set)張力逃し部、熱交換機能を有する輸液ポンプ、油浸プランジャ、2方向ポンプ機能、圧電ポンプデバイス、および膨張チュービング(expanded tubing)から作られた貯蔵容器を含む、1つまたは複数の特徴を備える輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2011年2月9日に出願したGary M. Searleらの米国仮特許出願第61/441,278号、「Concepts for Infusion Set Strain Relief, an Oil Impregnated Plunger, a Reservoir Made from Expanded Tubing, and Piezo Pump Devices」の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【0003】
糖尿病を患っている多数の人々が、自分の血糖値の精密な制御を維持するために何らかの形の連日のインスリン療法を利用している。現在、連日のインスリン療法には2つの主要な方法がある。第1の方法には、注射器とインスリンペンが含まれる。これらのデバイスは、簡単に使用することができ、費用も比較的少なくて済むが、それぞれの注射での針刺しは、一般的に、日に3回から4回必要である。第2の方法は、輸液ポンプ療法を含むもので、インスリンポンプを約3年間継続購入する必要がある。ポンプの初期費用はかなりかかる可能性があるが、使用者の立場で考えると、ポンプを使用してきた圧倒的多数の患者が、残りの人生をポンプとともに過ごすことを選ぶ。なぜなら、輸液ポンプは、注射器とペンに比べて複雑ではあるが、インスリンの連続的な注入、正確な投与、およびプログラム可能な送達スケジュールという利点を有するからである。その結果、血糖値制御がより精密に行われ、健康であるという感覚が改善される。
【0004】
輸液ポンプは、一緒に動作してインスリンまたは他の薬剤を輸液注入部位に送達する、輸液注入要素のアセンブリのほんの1つの部分にすぎない。ポンプ内の貯蔵容器からインスリンを使用者の皮膚内に搬送する輸液セットまたはポンプセットなどのいくつかの要素は、使い捨てできる。輸液セットは、典型的には、ポンプコネクタ、一定の長さ分のチュービング、および輸液注入針、可撓性カニューレ、またはカテーテルの送り出し元となるハブまたは基部からなる。ハブまたは基部は、使用中にセットの基部を皮膚表面上に保持する接着材を有し、これは手で皮膚に塗布するか、または手動もしくは自動挿入デバイスの助けを借りて皮膚に施すことができる。
【0005】
上で指摘されているように、輸液セットを使用することで、糖尿病患者は輸液ポンプを介してインスリンを注入することができる。そうするために、輸液セットでは、注入針、可撓性カニューレ、またはカテーテルのうちの1つまたは複数を使用する。例えば、鋼鉄製注入針を使用して、皮膚表面下、皮下または皮内皮膚層内に注入することができるが、動かすと挿入部位を刺激する可能性がある。あるいは、柔らかいテフロン(登録商標)系カテーテルに輸液セットを装備して、インスリンを、皮膚表面下に、通常は、皮下皮膚層に注入することができ、これは鋼鉄製カニューレに比べて刺激が少ないことに関連している。しかし、柔らかいカニューレまたはカテーテルは、キンクができやすく、インスリン送達を遅らせたり、中断させたりすることがあり、療法の効果を低下させる可能性がある。
【0006】
輸液セットの別の一般的に関連する要素を使用して最も柔らかいカニューレまたはカテーテル輸液セットが挿入され、その際に、鋼鉄製導入器がカテーテル内腔内に位置決めされ、貫通を開始するためカテーテルを越えて延びる。挿入および配置時に、導入器針およびカテーテルは両方とも、輸液セットを皮膚表面に接着剤で配置するのと同時に、またはその後に薬液注入部位に挿入される。次いで、導入器針が貫通後にカテーテルから取り出され、カテーテルは適所に残される。
【0007】
いくつかの輸液セットは、輸液セットおよび/または導入器針およびカテーテルを組織内に所望の速度で、所望の深さまで送り込む別々のバネ仕掛けの挿入器も備えて使用する。多くのそのようなバネ仕掛けの挿入器は、導入器針を自動的に引っ込めるか、または遮蔽する特徴部をさらに備える。適所に入った後、輸液セットは、典型的には、一定の長さのチュービングなど、さらに別の要素を使用して薬剤供給部に取り付けられ、それは、干渉を受け、また輸液セットに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
したがって、輸液セットのそれぞれの要素は、別々、また組み合わせて、最適な方法で動作する必要がある。そうでなければ、輸液セットの性能は、輸液セットの個別の要素の性能が不十分なために悪影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、上記の、および他の問題を実質的に解決し、製造の簡素化をもたらし、インスリン用途と非インスリン用途の両方に対する使用の改善をさらに実現する輸液注入システムの高度な、改善された、新規性のあるコンポーネントおよび要素を構成することである。
【0010】
本発明の別の目的は、導入器針、注入針、可撓性カニューレまたはカテーテル、輸液セット、またはチューブセット接続部用の張力逃し特徴部を含む他の皮膚接触要素を収容し、配置するための輸液注入システムを実現することであり、これは導入器針、注入針、可撓性カニューレまたはカテーテルへの移動の伝達を回避する。
【0011】
本発明の別の目的は、導入器針、注入針、可撓性カニューレまたはカテーテル、輸液セット、またはチューブセット接続部のチュービングを管理するためのチュービングリコイラー特徴部を含む他の皮膚接触要素を収容し、配置するための輸液注入システムを実現することである。
【0012】
本発明の別の目的は、導入器針、注入針、可撓性カニューレまたはカテーテル、輸液セット、または膨張させることができ、また折り畳める貯蔵容器を含む他の皮膚接触要素を収容し、配置し、そのような膨張および折り畳みを輸液セットの動作に組み込むための輸液注入システムを実現することである。
【0013】
本発明の別の目的は、輸液注入システムとともに使用するための輸液ポンプであって、順方向および逆方向の両方で動作するように構成された輸液ポンプを実現することと、そのような順方向および逆方向を輸液セットの動作に組み込むことである。
【0014】
本発明の別の目的は、輸液注入システムとともに使用するための輸液ポンプであって、圧電デバイスを組み込むように構成された輸液ポンプを実現することと、そのような圧電動作を輸液セットの動作に組み込むことである。
【0015】
本発明の別の目的は、輸液注入システムとともに使用するための輸液ポンプであって、ポンプの内容物またはコンポーネントを維持、冷却、または加熱するために熱交換器を組み込むように構成された輸液ポンプを実現することである。
【0016】
本発明の別の目的は、輸液注入システムとともに使用するための輸液ポンプであって、油浸プランジャを組み込むように構成された輸液ポンプを実現することと、そのような油浸プランジャを輸液セットの動作に組み込むことである。
【0017】
これらの、および他の目的は、チューブセット張力逃し部、熱交換機能を有する輸液ポンプ、油浸プランジャ、2方向ポンプ機能、および圧電デバイスを含む1つまたは複数の特徴、ならびに膨張チュービングから作られた貯蔵容器を備える輸液セットを備える、輸液注入システムのコンポーネントおよび要素を実現することと、そのような特徴を輸液セットの動作に組み込むことによって実質的に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の例示的な実施形態のさまざまな目的、利点、および新規性のある特徴は、添付図面とともに以下の詳細な説明を読むとさらに理解しやすくなるであろう。
【0019】
【
図1A】本発明の一実施形態による例示的な一般的張力逃し部の斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施形態による例示的な一般的張力逃し部の斜視図である。
【
図1C】本発明の一実施形態による例示的な一般的張力逃し部の斜視図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による例示的な一体型スポーク設計の張力逃し部の斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による例示的な一体型スポーク設計の張力逃し部の斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による例示的な一般的挿入器配置張力逃し部の斜視図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による例示的な一般的挿入器配置張力逃し部の斜視図である。
【
図3C】本発明の一実施形態による例示的な一般的挿入器配置張力逃し部の斜視図である。
【
図4A】本発明の一実施形態による例示的な一体型張力逃し部の斜視図である。
【
図4B】本発明の一実施形態による例示的な一体型張力逃し部の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による例示的な折り畳み式張力逃し部の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による例示的な2分割型張力逃し部の斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図である。
【
図7B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図である。
【
図7C】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図である。
【
図7D】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図である。
【
図7E】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図である。
【
図8A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる
図7Aから7Eの輸液注入システムの斜視図である。
【
図8B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる
図7Aから7Eの輸液注入システムの斜視図である。
【
図8C】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる
図7Aから7Eの輸液注入システムの斜視図である。
【
図8D】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる
図7Aから7Eの輸液注入システムの斜視図である。
【
図9A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる圧電デバイスを組み込んだ輸液注入システムの図である。
【
図9B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる圧電デバイスを組み込んだ輸液注入システムの図である。
【
図9C】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる圧電デバイスを組み込んだ輸液注入システムの図である。
【
図10A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるチューブ要素の図である。
【
図10B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるチューブ要素の図である。
【
図11A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別のチューブ要素の図である。
【
図11B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別のチューブ要素の図である。
【
図12A】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別の要素の図である。
【
図12B】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別の要素の図である。
【
図12C】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別の要素の図である。
【
図12D】本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる別の要素の図である。
【
図13】本発明の一実施形態による輸液ポンプおよび輸液セット接続部の一部として利用されるチュービングリコイラーの図である。
【0020】
図面全体を通して、類似の参照番号は、類似の部品、コンポーネント、および構造を示すものと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で説明される本発明の例示的な実施形態は、チューブセット張力逃し部、熱交換機能を有する輸液ポンプ、油浸プランジャ、2方向ポンプ機能、圧電ポンプデバイス、および膨張チュービングから作られた貯蔵容器を含む1つまたは複数の高度な特徴を備える輸液セットを介してインスリンを送達する新規性のある手段を実現する。
【0022】
これら、および他の輸液注入システムでは、張力逃し部を使用することで、ラインセットを移動または強く引っ張ることによって引き起こされるカテーテルの微小運動を低減または排除することにより輸液セットの耐用寿命を延ばすことを含む、さまざまな方法で使用者に利益がもたらされうる。さらに、ラインセットを強く引っ張ったときの影響をなくすことによって、張力逃し部をそのように設けることで最終的に薬液注入部位における通り抜けまたは漏れをなくすことができる。そこで、本発明の例示的な一実施形態では、張力逃しデバイスを輸液セット、および挿入器デバイス、またはその両方に組み込む。
図1Aから1Cは、本発明の一実施形態による例示的な一般的張力逃し部の斜視図である。
【0023】
図1Aでは、一般的張力逃し部10が図示されており、これはセット30のチューブ20とともにアセンブリの拡大図を含む。
図1Aに示されている例示的な実施形態において、張力逃し部10は、基部14に固定された粘着剤(PSA)などの接着層12を備える。基部14は、チューブホルダー16のピン18を回転可能に受け入れる。
図1Aの拡大図に示されているように、ピン18は、基部14の開口部22内に捕捉され、これにより、チューブホルダー16の360度の回転が可能になる。チューブホルダー16は、チューブの挿入を可能にする開放部分を有する可撓性材料の円形セグメントを備えることができる。円形セグメントは、チューブを受け入れると反って開放位置に入り、チューブが適切な位置に来るとチューブを固定する位置まで縮むように構成されうる。接着層12を覆うように接着ライナーも備えることができる。
【0024】
例示的な使用において、使用者は、最初に、下側表面から接着ライナーを取り除いて、デバイス10の底部の接着層を露出させる。次いで、露出した接着層を使用して、デバイス10を薬液注入部位、輸液ポンプ、またはそれらの間の近くに固定する。これにより、デバイス10は、皮膚表面に完全に接触し、皮膚表面に接着固定される。使用者は、次いで、
図1Aに示されているようにチューブセットのチューブ20をチューブホルダー16内に圧し込む。
【0025】
チューブホルダーは、チューブをチューブホルダーに保持するために使用することができる
図1Bに示されているような接着タブ24をさらに備えることができる。例示的な使用において、使用者は、最初に、下側表面から接着ライナーを取り除いて、デバイス10の底部の接着層を露出させる。次いで、上で説明されているように、露出した接着層を使用して、デバイス10を薬液注入部位、輸液ポンプ、またはそれらの間の近くに固定する。次いで、使用者は、チューブセットのチューブ20をチューブホルダー内に圧し込み、その後チューブおよび、チューブホルダーの開口部の上に置かれる接着タブ24から接着ライナーを取り外す。
【0026】
図1Aから1Cの張力逃し部10は、任意のセットまたは輸液ポンプ、任意のチューブ構成とともに使用できるという点で一般的であり、チューブの360度回転を行う。張力逃し部10も、任意のセットの代わりに張力逃しループを保持するために使用することができる。本発明のさらに他の実施形態において、張力逃しデバイス10を輸液セット内に一体化することができる。
図2Aおよび2Bは、本発明の一実施形態による輸液セットとともに組み込まれている別の張力逃し部の斜視図である。
【0027】
図2Aおよび2Bでは、例示的な一体化されたスポーク設計の張力逃し部40が図示されており、これは輸液セット50のチューブ46とともにアセンブリの拡大図を含む。図示されている例示的な実施形態において、張力逃し部40は、スポーク設計パターンでセット50に固定されている1つまたは複数の可撓性アーム42を備える。それぞれのアーム42は、チュービング46を固定するためのスロット44を備える。特に、スロット44は、チューブの挿入を可能にする開放部分を有する可撓性材料の円形セグメントを備えることができる。円形セグメントは、チューブを受け入れると反って開放位置に入り、チューブが適切な位置に来るとチューブを固定する位置まで縮むように構成されうる。スロットは、上記の実施形態において説明されているようにチューブをスロットに実質的に保持するために使用することができる接着タブ(図示せず)をさらに備えることができる。
【0028】
例示的な使用において、使用者は、最初に、輸液セット50を薬液注入部位に置く。使用者は、次いで、チュービングのループを形成し、チュービングループの一部分をそれぞれのアーム42のそれぞれのスロット44内に圧し込む。
図2Bの拡大図に示されているように、チュービング46は、アーム42のスロット44内にスナップ式に嵌められ、次いで、張力逃しを行いながらチューブ46を保持する。この実施形態では、張力逃し要素が輸液セットとともに組み込まれているので追加の要素を必要としない。互いに一体化される、または互いに貯蔵される、または互いに設置されるこのような要素を組み合わせることができるため、簡単に使用することができる。例えば、挿入器は、輸液セットおよび張力逃し部の両方を、1回の動作で配置するように構成されうる。
図3Aから3Cは、本発明の一実施形態による例示的な一般的挿入器配置張力逃し部の斜視図である。
【0029】
図3Aから3Cに、輸液セット配置開口部62および張力逃し部配置開口部64を単一のハウジング内に有する例示的な挿入器60が図示されている。挿入器60のハウジングはその中に、遠位端のところの輸液セットおよび張力逃し要素および近位端のところのシングルユーザープッシュボタン66を収容する。両方の要素が中に収容され、接着層と層カバー(図示せず)で覆われうる。1つまたは複数のプッシュボタン66を備え、これにより、挿入器を作動させ、同時に、セット68および張力逃し部70を配置することができ、これは
図3Aに示されているように、別々の要素であるか、または以下で説明される
図4Bに示されているように本発明のさらに他の実施形態において一体形成されうる。そうする際に、シングルユーザーアクションを使用すると、別々のユーザーアクションを必要とすることなく、セット68および張力逃し部70を挿入部位に置くことができる。輸液セットおよび張力逃し部は、設置用に共通接着基部(図示せず)を共有することができるか、または別の接着基部を備えることができる。
【0030】
例示的な張力逃し部70が
図3Cに示されており、これは
図3Bのセット68のチューブ74とともにアセンブリの図を含む。
図3Cに示されている例示的な実施形態では、張力逃し部70は、隆起特徴部、およびチュービング74をスナップ式に嵌め込むための1つまたは複数の可撓性開口部または戻り止め72を有するパッチを備える。特に、可撓性開口部または戻り止め72は、チューブの挿入を可能にする開放部分を有する可撓性材料の円形開口部を備えることができる。円形開口部は、チューブを受け入れると反って開放位置に入り、チューブが適切な位置に来るとチューブを固定する位置まで縮むように構成されうる。開口部は、上記の実施形態において説明されているようにチューブを開口部に実質的に保持するために使用することができる接着タブ(図示せず)をさらに備えることができる。
図3Bに示されているように、チュービング74は、開口部72内にスナップ式に嵌め込まれ、張力逃しを行いながらチューブを保持する。
【0031】
例示的な使用において、使用者は、最初に、挿入器60を掴んで、挿入器の遠位端を皮膚表面に当てる。使用者は、次いで、シングルボタン66を圧して、自動的に、輸液セット68を薬液注入部位に配置し、張力逃し部70を輸液セット68の近くの位置に配置することができる。使用者は、次いで、チュービングのループを形成し、チュービングループの一部を張力逃し部70の可撓性開口部または戻り止め72内に圧し込む。この実施形態では、張力逃し要素が挿入器60内の輸液セットとともにパッケージングされているので追加の要素を必要としない。他の例示的な実施形態では、張力逃し要素を輸液セットとともに組み込むことができる。輸液セットとともに組み込まれているこのような例示的な張力逃し要素は、
図4Aおよび4Bに示されており、これらは本発明の一実施形態による別の一体化された張力逃し部の斜視図である。
【0032】
図4Aにおいて、ロープロファイル輸液セット80は、輸液セット80と一体化されているが、輸液セット80から分離しているチューブセット接続要素82とともに配置されるように図示されている。特に、
図4Bに示されているように、輸液セット80およびチューブセット接続要素82は、基部88の曲がりくねった道の形の、またはジグザグのパターンの部分、およびロープロファイル輸液セット80とチューブセット接続要素82との間のチュービング86の類似のパターンの部分を介して結合される。そうする際に、チューブセット84は、チューブセット接続要素82に取り付けられ、輸液セット80と流体的に連通しうるが、輸液セット80は、接着基部88およびチュービング86の曲がりくねった道の形の、またはジグザグのパターンの部分によってチューブセット84の移動から分離される。
【0033】
上で指摘されているように、互いに一体化される、または互いに貯蔵される、または互いに設置されるこのような要素を組み合わせることができるため、簡単に使用することができる。本発明のこれらの、および他の例示的な実施形態において、このようなデバイスは、他の例示的な張力逃し要素が設けられるというさらなる利点を有する。例えば、チューブセット接続部内のフレキシブルジョイントまたは可撓性材料は、セットから離れた位置にチューブを固定するか、または移動を吸収するようにチュービングの余分な部分を固定する要素の代わりに使用することができる。例えば、
図5は、本発明の一実施形態による例示的な折り畳み式張力逃し部の斜視図である。
【0034】
図5において、フレキシブルジョイント90は、チューブセット接続部上のどこかの位置、輸液セット、輸液ポンプ、またはこれらの間のどこかに設けられる。フレキシブルジョイント90は、一方の端部と他方の端部との間で移動できるように、シリコーンまたは類似の材料から製作された折り畳み式の(つまり、鞴状の)ものとして構成されうる。例示的な一実施形態では、フレキシブルジョイント90は、輸液セットそれ自体の中に組み込むことができ、また薬液注入部位に固定される接着パッチ92を備えることができる。
【0035】
図6は、チューブセット接続部上のどこかの位置、輸液セット、輸液ポンプ、またはこれらの間のどこかに設けられた別の例示的なフレキシブルジョイントの断面図である。
図6のフレキシブルジョイントは、メス端部内に摺動可能に捕捉され一方の端部と他方の端部との間の移動を、それぞれの間にシールを維持しながら可能にするように構成されたオス端部として構成されうる。フレキシブルジョイントは、オス端部94と対向するメス端部96との間の移動が可能になるように2分割の接続可能なカテーテルとして構成される。メス端部96は、戻り止め98によって囲まれた開口部を備える。戻り止め98は、オス端部94との係合によってたわむことができる。特に、オス端部94は、傾斜部95および陥凹部97を備え、メス端部96の戻り止め98を摺動可能に捕捉し、それぞれの間をシールしつつ、ある程度の移動を可能にすることができる。戻り止め98は、端部94と96との間に流体密封シールを形成するように組み立てられたときに陥凹部97の方へ強く付勢されうる。
【0036】
上で指摘されているように、輸液ポンプは、一緒に動作してインスリンまたは他の薬剤を輸液注入部位に送達する、輸液セット要素のアセンブリの別の部分である。本発明の例示的な実施形態において、そのようなデバイスは、蠕動ポンプまたは隔膜ポンプなどの、両方向にポンプ動作するように構成される薬剤ポンプを備えることで利点を有するものとしてよい。次いで、輸液セットおよびポンプは、ポンプを使用して貯蔵容器、理想的には可撓性貯蔵容器を空にし、インスリン薬瓶または他の薬剤供給部を加圧し、インスリン薬瓶から貯蔵容器に流体を引き込むように構成されうる。
図7Aから7Eおよび
図8Aから8Dは、一緒に動作してインスリンまたは他の薬剤を輸液注入部位に送達する、輸液セット要素のアセンブリの別の部分としてリニア蠕動ポンプを組み込む輸液注入システムの図である。
【0037】
図7Aから7Eは、輸液セットと組み合わせ、インスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるリニア蠕動ポンプを組み込んだ輸液注入システムのブロック図であり、
図8Aから8Dは、そのような輸液注入システムの使用例の斜視図である。蠕動ポンプは、定期的に圧縮され、解放され、それにより流体を強制的ポンプ動作でチューブに通す可撓性チューブを使用して流体を送り込む容積移送式ポンプである。
図7Aに示されているように、輸液セットは、貯蔵容器102、薬瓶104および導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106を備えることができる。貯蔵容器102、薬瓶104および導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106は、弁108を介して接続することができる。リニア蠕動ポンプ100は、例えば、貯蔵容器102と弁108との間などの都合のよい位置に設けることができる。
【0038】
図7Bにおいて、リニア蠕動ポンプ100は、空気を導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106内に、また貯蔵容器102内に引き上げるように動作させることができる。
図7Cにおいて薬瓶104が弁108に結合される場合、弁108およびリニア蠕動ポンプ100は、その後、薬瓶104を加圧するために空気を貯蔵容器102から薬瓶104に強制的に送るように動作させることができる。次いで、弁108およびリニア蠕動ポンプ100は、
図7Dの貯蔵容器102を充填するため、加圧された薬瓶104から薬剤をポンプで送るように動作させることができる。次いで、弁108およびリニア蠕動ポンプ100は、貯蔵容器102から
図7Eの導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106内に薬剤をポンプで送るように動作させることができる。
図8Aから8Dは、そのようなリニア蠕動ポンプの使用例の斜視図である。
【0039】
図8Aは、リニア蠕動ポンプ100、貯蔵容器102、導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106、および弁108のうちの1つまたは複数を中に収容するアセンブリ110を例示している。
図8Aにおいて、リニア蠕動ポンプ100は、貯蔵容器102内に空気を引き入れるために使用される。薬瓶104が
図8Bに示されているように接続された後、リニア蠕動ポンプ100は、薬瓶104を加圧し、次いで、現在加圧されている薬瓶104から貯蔵容器102を充填するために使用される。
図8Cに示されているように、薬瓶104が取り外された後、リニア蠕動ポンプ100は、
図8Dに示されているように貯蔵容器102の内容物をポンプで導入器針、柔らかいカテーテル、または留置カニューレ106に送り込むために使用される。
【0040】
圧電デバイスは、輸液ポンプ、輸液セットの一部として、または輸液ポンプもしくは輸液セットのいずれかとともに使用するための個別のコンポーネントとして利用することもできる。例えば、圧電ポンプは、薬剤を移動するために使用することができ、また皮膚のテンティングを防ぐために挿入直後に導入器針、カテーテル、または留置カニューレを振動させるためにも使用することができる。圧電デバイスまたは圧電ポンプによって引き起こされる振動は、導入器針、カテーテル、または留置カニューレの縁が組織を切断する働きを助長し、導入器針、カテーテル、または留置カニューレが組織内に滑らかに入り込めるようにする。例えば、
図9Aから9Cは、本発明のそのような実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる圧電デバイスを組み込んだ輸液注入システムの拡大された斜視図である。
【0041】
図9Aは、輸液ポンプとともに組み込むことができるか、または輸液ポンプとして使用することができる、または輸液セットとともに組み込むことができるか、または輸液セットとして、または輸液ポンプもしくは輸液セットとともに使用するための個別のコンポーネントとして使用することができる圧電デバイス200に結合された輸液セット210を例示している。圧電デバイスは、変化する形状を利用して多数の作業を実行できるように、電圧が印加されたときに形状が変化する材料を組み込んだデバイスである。この場合、圧電デバイス200は、非常に小さなポンプとして動作するように、またはそうするように制御されたときにわずかな振動を発生するように製作することができる。例示的な実施形態において、圧電デバイス200は、通信可能な振動を輸液セット210に、また特に、輸液セット210の導入器針、カテーテル、または留置カニューレ202に伝えるように製作することができる。圧電デバイス200が輸液パッチポンプまたは他の輸液セットの一部として利用される場合、圧電動作は、
図9Cに示されているように皮膚の表面204内への導入器針、カテーテル、または留置カニューレ202の穿刺特性を強化するために使用することができ、これにより、例えば、振動なしで従来の挿入の
図9Bに示されているような皮膚表面のテンティングが低減され、これは導入器針、カテーテル、または留置カニューレの浅い留置に有益である。輸液ポンプは、針、カテーテル、または留置カニューレの挿入を助長するか、またはポンプ特性を改善するためにそのような特徴を組み込むことができる。そのような輸液注入システムまたはポンプ内に組み込むことができるさらに他の特徴として、インスリンまたは他の内容物の温度を維持するか、または温度が設定点を超えて上昇した場合にポンプのインスリンまたは他のコンポーネントを冷却するための熱交換器(図示せず)が挙げられる。
【0042】
他の例示的な実施形態では、実際のポンプ機能は、輸液注入システムの要素を修正することによって実行することができる。例えば、
図10Aおよび10Bは、本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる折り畳み可能なシリンダーまたは貯蔵容器の図である。
【0043】
図10Aおよび10Bは、インスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる折り畳み可能なシリンダーまたは貯蔵容器220の断面図である。
図10Aおよび10Bの実施形態において、インスリン薬瓶、カートリッジ、貯蔵容器、または類似の要素は、輸液セットチュービングまたは他の医療グレードのチュービングの一部、好ましくは伸び特性の高い(例えば、200%から800%までの伸び能力)チュービングの一部などの、チュービングの一部から製作することができる。
【0044】
図10Aおよび10Bに示されている例では、寸法Xについて、チュービングは長さ6
Xに膨張して長さ4Xのチャンバーを形成し、解放されると、チュービングは、長さ2X
に収縮し、中のチャンバー全体を実質的に折り畳むことになる。そうする
ことで、チュー
ブセグメントには薬剤で充填され、チューブセグメント222を強制的に
図10Aに示さ
れているような細長い形状にすることができる。チューブセグメントは、起伏のある壁2
24および226によりいずれかの端部のところで閉じられ、収縮したときにデッドスペ
ースを低減することができる。この充填で、解放されたときに内容物を送達するのに十分
な張力を発生し、チューブセグメント224は
図10Aに示されているようなその高い伸
びにより収縮する。内容物は、カニューレまたはさらにはチューブセグメント228を通
して送達されうる。さらに別の例示的な実施形態では、チューブセグメントを貯蔵容器の
チャンバー内に配設することができる。例えば、
図11Aは、本発明の一実施形態による
インスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる構造化
チャンバー内に配設された別の折り畳み可能なシリンダーまたは貯蔵容器の断面図である
。
【0045】
図11Aおよび11Bは、インスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができる構造化チャンバー内に配設された折り畳み可能なシリンダーまたは貯蔵容器240の拡大断面図である。
図11Aの実施形態において、インスリン薬瓶、カートリッジ、貯蔵容器、または類似の要素は、チューブセットチュービングもしくは他の医療グレードのチュービングの一部、好ましくは高い膨張特性を有するチュービングの一部などの、チュービング242の一部から製作される。チューブセグメントは、ハウジング250または他のチューブセグメント内に配設されうる。したがって、チューブセグメント242に薬剤を充填し、強制的にチューブセグメント242を図示されているような膨張形状にすることができる。チューブセグメント242は、起伏のある壁244および246によりいずれかの端部のところで閉じられ、収縮したときにデッドスペースを低減することができる。
図11Aの起伏のある壁244などの起伏のある壁のうちの少なくとも1つの壁に、
図11Bに示されているように折り畳み時にチューブセグメント242のセクションを折り畳むためのクリアランスを設けるため、ハウジング250と摺動可能に接触する空間または間隙を設けることができる。この充填で、解放されたときに内容物を送達するのに十分な張力を発生し、チューブセグメント242は高い膨張特性により収縮し、起伏のある壁244内に設けられた間隙内に折り畳まれるようにできる。内容物は、カニューレまたはさらにはチューブセグメント248を通して送達されうる。
【0046】
ハウジング250は、膨張するチューブセグメント242との接触を防ぐサイズとすることができ、またはチューブセグメント242の外径を潤滑して、チューブセグメント242の表面がハウジング250の内面の端から端まで自由に摺動するようにできる。さらに別の例示的な実施形態では、貯蔵容器内の移動する壁セグメントのうちの1つまたは複数が要素を移動するために潤滑をもたらす潤滑膜を備えることができる。例えば、
図12Aから12Dは、本発明の一実施形態によるインスリンまたは他の薬剤を薬液注入部位に送達するために使用することができるそのような実施形態の断面図である。
【0047】
図12Aは、堅いエラストマー壁306と308との間に潤滑膜304(つまり、油浸膜)を備えるプランジャまたはストッパー302などの1つまたは複数の移動する壁セグメントを備える貯蔵容器ハウジング300の断面図である。図示されている例示的な実施形態において、移動する壁セグメント302は、注射器または貯蔵容器のプランジャまたはストッパーであり、その中に、注射器または貯蔵容器の残り部分が内壁に別々の潤滑コーティングを必要としないように潤滑特徴部を構成する。プランジャまたはストッパー302内のOリング、ワッシャ、ディスク、または他の多孔質膜304を潤滑油で含浸し、分注/注入力が存在するときのみ多孔質膜304の潤滑剤を放出するようにプランジャまたはストッパー302を設計することによって、注射器または貯蔵容器の移動する壁は潤滑されるが、インスリンまたは他の薬剤内容物は好ましくはまったく多孔質膜304の潤滑剤に曝されず、他の場合には、輸液注入が開始するまで多孔質膜304の潤滑剤に曝されず、その時点での露出は、輸液注入プロセス全体を通して最小である。
【0048】
そうするために、潤滑膜304およびエラストマー壁306および308は、
図12Aに示されているように薬瓶312から充填するときに注射器係合部310によって中心軸にそって駆動されるように構成される。注射器係合部310は、潤滑膜304を圧縮することなくプランジャまたはストッパー302を駆動し、したがって、薬瓶312から注射器を充填するかまたは空にするために注射器を利用することができる。注射器係合部310は、
図12Bに示されているように取り外し、
図12Cに示されているようにポンプ係合部314で置き換えることができる。ポンプ係合部314は、注射器係合部310とともに中心軸にそってプランジャまたはストッパー302を駆動するように構成されないが、中心軸を越えて延在するより広い接触要素316を構成する。そうする際に、ポンプ係合部314のより広い接触要素316は、
図12Dに示されているように、プランジャまたはストッパー302のエラストマー壁308の外径を押し、壁308を曲げて膜304内に入れ、潤滑膜304を圧縮し、プランジャの外径と貯蔵容器の内径との間で潤滑剤を放出する。したがって、潤滑膜304の潤滑剤は、分注/注入力が存在するときにのみ分注され、したがって、インスリンまたは他の薬剤内容物は、好ましくはまったく多孔質膜304の潤滑剤に曝されず、他の場合には、輸液注入が開始するまで多孔質膜304の潤滑剤に曝されず、その時点における露出は輸液注入プロセス全体を通して最小となる。上で説明されているこれらの実施形態は、薬剤またはポンプ動作に有利なポンプ特徴部を組み込む。しかし、さらに他の例示的な実施形態では、ポンプは、ポンプ動作に無関係の特徴部を組み込むことができるが、それでも、一緒に動作してインスリンまたは他の薬剤を輸液注入部位に送達する輸液セット要素のアセンブリの一部を形成する。一例として、
図13は、輸液ポンプの一部として利用されるチュービングリコイラーを示している。
【0049】
図13は、輸液ポンプの一部として利用されるチュービングリコイラーの斜視図である。輸液ポンプ350は、一定の長さのチューブ354を介して輸液セット352と結合されているように図示されている。しかし、輸液ポンプ350と輸液セット352との間の過剰なチューブは、干渉を受け、接触を通じて輸液セット352への望ましくない移動を伝えることがある。したがって、チュービング354の長さを最小にすることは望ましいが、輸液セット352の使いやすさおよび配置のしやすさを実現するための十分な長さをもたらす。他のシステムでは、この機能を果たすために、個別のチュービングリコイラー360が備えられている。しかし、このような個別の要素を備えるには、使用者が、個別のコンポーネントを携帯し、設置し、および管理する必要がある。したがって、本発明の例示的な実施形態では、個別のチュービングリコイラーを輸液ポンプ350に組み込む。
【0050】
特に、ポンプ350では、チュービングとリコイラーとを一体化して、バネ機構または他の方法を介して過剰なチュービングを自動的にリコイルし、逆にチュービングを分注し、したがって、過剰なチュービングを管理するために他の個別のデバイスを必要としない。インスリン供給部およびポンプ350を輸液セット352に接続するチュービング354は、ポンプ350内に配設されているバネ仕掛けの円形リール上にパッケージングすることができる。チュービング354は、ポンプ350を出入りし、バネ機構の周りに巻き付く。バネ仕掛けの円形リールの構造は、当業者に知られているので、わかりやすくするためそのようなリールの付加的な特徴は省かれている。円形リールは、チューブ354を最初に引っ張ると一定の長さ分のチューブが送り出されるように当業者に知られているようなキャッチ/ラッチ機構をさらに備えることができ、キャッチは、逆方向のバネ付勢作用を防ぐために設けられる。チューブ354を2度目に引っ張った後、キャッチは、逆方向のバネ付勢作用によりチューブ354がポンプ350内に付勢されるように解放される。そうする際に、リールデバイスにより、弛んでいるチュービングを正確に送り出すことができ、バネ抵抗が巻き上げられ保管される過剰なチュービングを維持する。係止するキャッチまたはラッチを備えて、十分な長さのチュービングが配備された後に使用者がうっかり引っ込めたり、伸長したりするのを防ぐことができる。
【0051】
本発明の例示的な実施形態では、輸液注入システムのハウジング、ハブ、および他の要素は、成型プラスチック材料、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETG)などの熱可塑性ポリマー、または類似の材料から製作することができる。バネおよび導入器針は、ステンレス鋼または類似の材料から製作することができる。上で説明されている実施形態は、皮下注射を行えるように寸法が決められ、構成されているけれども、皮内または筋肉内注射などの、他の種類の注射にも使用することができる。
【0052】
さらに、360度回転または部分的回転、ラインセット接続、隔壁配置などの特徴は、テフロン(登録商標)カニューレまたはカテーテルが固定される輸液セットの基部またはハブ内ではなくむしろ張力逃し部内に配置されうる。次いで張力逃し部は、ラインセットの移動または強い引っ張り、およびカテーテルまたはカニューレにおいて生じる運動の効果を最小にするために使用されうる。これは、(1)ラインセットがドアノブまたは他の物体に引っ掛かり、力を加えて皮膚から輸液セットを引き離そうとしたときに生じるような、ラインセットの強い引っ張り、および(2)輸液ハブに直接印加される力を含み、例えば、患者または輸液セットが物体に衝突し、輸液セットの外側に力が加えられるか、または患者が睡眠中に寝返りを打つときである。
【0053】
さらに、本発明の例示的な実施形態のうちの1つまたは複数は、皮膚に接触する接着層およびバッキングを備えることができる。正確な挿入は、最初に、接着層の接着性カバーを取り除き、次いで、輸液セットハブを接着剤を使って輸液注入部位に接着固定することによって達成され、使用者は、適切な位置合わせで上で説明されているように挿入器を作動させるか、またはカテーテルを配置することができる。接着剤による取り付けの後、導入器針、留置カニューレおよび/またはカテーテルを制御された速い速度で皮膚表面内に押し込み、挿入時のずれのリスクを最小限度に抑える。さらに、挿入部位のところ、または挿入部位に非常に近い位置に接着剤を施して、皮膚表面を固定し、挿入時に皮膚表面のテンティングを最小限度に抑える。
【0054】
インスリンまたは他の薬剤を皮下層に送達する現在の輸液セットでは、カテーテルは、通常、望ましくない外部の力から絶縁されず、それは、その後、皮膚の中に移動するカテーテルに変わるときに痛みを引き起こしうる。また、他のデバイスは、カテーテルが外部の力から絶縁されていない場合に、デバイスが衝突したときの早すぎる、または意図しないカテーテルの取り外しという問題に直面する。本発明の例示的な実施形態では、カテーテルは、少なくとも1つの可撓性もしくは弾力性を有する特徴または張力逃し部によって外部の力から絶縁されうる。
【0055】
本発明の少数の例示的な実施形態のみが上で詳しく説明されているけれども、当業者であれば、本発明の新規性のある教示および利点から実質的に逸脱することなく例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような修正形態はすべて、添付の特許請求の範囲内およびその等価物の範囲内にあることが意図されている。