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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
E02F9/00 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018163781
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033851
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 民巨
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】羽野 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 泰彦
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184872(JP,A)
【文献】特開2016-138370(JP,A)
【文献】特開2002-302969(JP,A)
【文献】特開2004-001645(JP,A)
【文献】特開2017-043986(JP,A)
【文献】特開2017-002582(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1571046(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室カバーによって外郭が形成された機械室と、
前記機械室内に収容されたエンジンと、
前記機械室内の上方に配置され、前記エンジンの排ガスを浄化する排ガス後処理装置と、
前記機械室内において前記排ガス後処理装置の下方に配置され、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記機械室内に収容され、冷却風を生起する冷却ファンと、
前記機械室内において前記排ガス後処理装置と前記油圧ポンプとを仕切る隔壁とを備えた建設機械において、
前記機械室カバーは、
前記排ガス後処理装置の上方を覆い、前記冷却ファンが生起する冷却風を排出可能な第1開口部を有する第1カバー部分と、
前記排ガス後処理装置の側方を覆い、前記冷却ファンが生起する冷却風を排出可能な第2開口部を有する第2カバー部分とを含み、
前記排ガス後処理装置と前記隔壁との間及び前記排ガス後処理装置と前記第2カバー部分との間に有する通風路と、
前記通風路に配置され、前記通風路の前記第2開口部への空気の流れを阻害する障壁部とを更に備えた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記障壁部は、前記機械室カバーの前記第2カバー部分における前記第2開口部の下端部から前記通風路へ突出する部分である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記障壁部は、前記隔壁から前記通風路へ突出する部分である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記障壁部は、前記排ガス後処理装置から前記通風路へ突出する部分である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
前記障壁部は、前記排ガス後処理装置における前記第2開口部の下端部の高さの位置から前記第2開口部の下端部に向かって前記通風路へ突出する部分である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記排ガス後処理装置は、
第1後処理装置と、
前記第1後処理装置に対して隙間をあけて配置され、前記第1後処理装置よりも前記第2開口部の近くに位置する第2後処理装置とを備え、
前記障壁部は、前記通風路のうち、前記第2後処理装置が形成する通風路に配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1に記載の建設機械において、
前記障壁部は、前記通風路の複数の位置に配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、更に詳しくは、エンジンの排ガスを浄化する排ガス後処理装置を機械室内に収容した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやクレーン等の建設機械では、エンジンや油圧ポンプ等の各種装置が機械室(エンジンルーム)に収容されている。これらの装置のオーバーヒートを防止するためには、エンジン等からの排熱を機械室の外部へ適切に排出する必要がある。建設機械の機械室では、一般に、冷却ファンにより生起された冷却風を機械室の一方側から他方側へ流して外部へ排出させることで、各種装置を冷却する。
【0003】
機械室内のエンジン等を冷却する従来技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の作業機械のエンジンルーム構造では、簡素な構成でエンジンルーム内における冷却風の流通性を確保しつつ機械室内の騒音を低減させるために、吸音素材と吸音素材の外周を被覆する表皮材とを一体に圧縮成形した整流板をエンジンの上部や下部においてエンジンルームの天井面や底面に対して間隔を空けて固定し、天井面や底面と整流板との間に冷却風の流路を形成している。また、エンジンに連設された排気マフラーの周辺(上方や下方)から冷却風の下流側の位置に、エンジンルームの外形や排気マフラーの下方に配置された油圧ポンプ等の形状に合わせて成形されたマフラー整流板を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-58591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原動機としてエンジンを搭載している建設機械では、エンジンの排ガス規制に対応するために、エンジンの排ガスに含まれる有害物質を取り除く排ガス後処理装置を機械室内に収容しているものがある。排ガス後処理装置としては、排ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するPM捕集装置や窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx浄化装置などが用いられている。このような排ガス後処理装置は、排ガスの温度を検知する温度センサや排ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度センサなどの各種機器を備えている。これらの機器は、排ガスが流通する排ガス後処理装置の本体部分の周辺に配置される。排ガス後処理装置を正常に作動させるためには、エンジンや排ガス後処理装置からの排熱による当該機器の過度な温度上昇を防ぐ必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の作業機械のエンジンルーム構造では、冷却ファンが稼動している場合、冷却ファンにより生起された冷却風がマフラー整流板によって排気マフラー傍のエンジンルーム側面や天井面に設けられた開口部へ導かれるので、エンジンや排気マフラーの熱が効率的に外部へ排出される。したがって、上述した排ガス後処理装置と同様に排ガスの浄化機能を有する排気マフラーの周辺が過度に温度上昇することはない。
【0007】
一方、作業終了後にエンジン及び冷却ファンを停止させた場合、エンジンルーム内の高温状態のエンジンや排気マフラー等の周囲空気とエンジンルーム外の空気(外気)との密度差によって、エンジンルーム内に略鉛直方向上向きの自然対流が生じる。この場合、自然対流の向きに対して略直交する方向に開口するエンジンルーム側面の開口部から、エンジンルーム内の熱を効率的に外部へ排出することは難しい。また、自然対流の向きに対して同じ方向に開口する天井面の開口部からもエンジンルーム内の熱が外部へ排出されるが、当該天井面の開口部は、排気マフラーの排気筒の存在により、その開口面積を十分に確保できない虞がある。冷却ファンによる強制対流よりも駆動力の弱い自然対流では、開口面積が不十分な天井面の開口部からエンジンルーム内の熱を効率的に外部へ排出することはできない。このように、冷却ファンの停止時においてエンジンルーム内の熱を効率的に外部へ排出することができず、排気マフラー周辺の温度が過度に上昇する虞がある。
【0008】
本発明は、上記の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、機械室内に収容された排ガス後処理装置に備わる機器の冷却ファン停止時における過度な温度上昇を防ぐことができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、機械室カバーによって外郭が形成された機械室と、前記機械室内に収容されたエンジンと、前記機械室内の上方に配置され、前記エンジンの排ガスを浄化する排ガス後処理装置と、前記機械室内において前記排ガス後処理装置の下方に配置され、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記機械室内に収容され、冷却風を生起する冷却ファンと、前記機械室内において前記排ガス後処理装置と前記油圧ポンプとを仕切る隔壁とを備えた建設機械において、前記機械室カバーは、前記排ガス後処理装置の上方を覆い、前記冷却ファンが生起する冷却風を排出可能な第1開口部を有する第1カバー部分と、前記排ガス後処理装置の側方を覆い、前記冷却ファンが生起する冷却風を排出可能な第2開口部を有する第2カバー部分とを含み、前記排ガス後処理装置と前記隔壁との間及び前記排ガス後処理装置と前記第2カバー部分との間に有する通風路と、前記通風路に配置され、前記通風路の前記第2開口部への空気の流れを阻害する障壁部とを更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通風路に障壁部を配置することで、冷却ファン停止時における通風路の第2開口部への空気の流れが阻害されるので、冷却ファン停止時における機械室内の第1開口部近傍の流れの一部を第2開口部から第2開口部の開口方向と略一致するように機械室外へ排出することができる。したがって、機械室内の熱を第1開口部及び第2開口部から効率的に外部へ排出することができ、排ガス後処理装置に備わる機器の過度な温度上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の建設機械の一実施の形態としての油圧ショベルを示す側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルの上部旋回体を示す斜視図である。
図3図1に示す本発明の建設機械の一実施の形態における上部旋回体の機械室をIII-III矢視から見た断面図である。
図4図3に示す機械室の内部構造を機械室の両側方のカバー及び上側のカバーを省略した状態で示す斜視図である。
図5図2に示す上部旋回体における機械室の外郭を示す斜視図である。
図6】本発明の建設機械の一実施の形態に対する比較例としての従来の油圧ショベルの機械室の内部構造を示す断面図である。
図7】本発明の建設機械の一実施の形態の第1変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図8】本発明の建設機械の一実施の形態の第2変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図9】本発明の建設機械の一実施の形態の第3変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図10】本発明の建設機械の一実施の形態の第4変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図11】本発明の建設機械の一実施の形態の第5変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図12】本発明の建設機械の一実施の形態の第6変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図13】本発明の建設機械の一実施の形態の第7変形例における機械室の内部構造を示す断面図である。
図14】本発明の建設機械のその他の実施の形態の機械室の内部構造における複数の障壁部の設置位置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の建設機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。なお、以下では、運転席に着座したオペレータを基準とした前後左右の方向を用いて説明する。
まず、本発明の建設機械の一実施の形態である油圧ショベルの構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の建設機械の一実施の形態としての油圧ショベルを示す側面図、図2図1に示す油圧ショベルの上部旋回体を示す斜視図である。図1における左右方向は、油圧ショベルの前後方向である。
【0013】
図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前端部に俯仰動可能に設けられた作業フロント4とで大略構成されている。
【0014】
下部走行体2は、トラックフレーム6と、トラックフレーム6の後端部(図1中、右端部)に回転可能に支持され、油圧モータ(図示せず)により駆動される左右の駆動輪7と、トラックフレーム6の前端部(図1中、左端部)に回転可能に支持された左右の遊動輪8と、駆動輪7と遊動輪8とに掛け回された履帯9とを備えている。
【0015】
作業フロント4は、例えば、掘削作業等を行うための多関節型の作動装置であり、ブーム11、アーム12、バケット13を備えている。ブーム11の基端側は、上部旋回体3の前端部に回動可能に連結されている。ブーム11の先端部には、アーム12の基端部が回動可能に連結されている。アーム12の先端部には、バケット13の基端部が回動可能に連結されている。ブーム11、アーム12、バケット13は、それぞれブームシリンダ11a、アームシリンダ12a、バケットシリンダ13aによって回動される。
【0016】
上部旋回体3は、図1及び図2に示すように、下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレーム15と、旋回フレーム15上の左前側に設置されたキャブ16と、旋回フレーム15上の右側に配設された燃料タンク17及び作動油タンク18と、旋回フレーム15の後端部に取り付けられたカウンタウェイト19と、旋回フレーム15におけるキャブ16とカウンタウェイト19との間に配置された機械室20とを含んで構成されている。キャブ16には、オペレータの座席(図示せず)や作業フロント4等を操作するための各種の操作装置(図示せず)が設けられている。カウンタウェイト19は、作業フロント4との重量バランスをとるためのものである。機械室20は、詳細は後述するが、各種装置を収容するものである。
【0017】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態である油圧ショベルの機械室内に収容された各種装置及び機械室の外郭の構成を図2乃至図5を用いて説明する。図3図1に示す本発明の建設機械の一実施の形態における上部旋回体の機械室をIII-III矢視から見た断面図、図4図3に示す機械室の内部構造を機械室の両側方のカバー及び上側のカバーを省略した状態で示す斜視図、図5図2に示す上部旋回体における機械室の外郭を示す斜視図である。図3図5における左右方向は、油圧ショベルの左右方向である。
【0018】
機械室20には、図3及び図4に示すように、エンジン22、排ガス後処理装置23、油圧ポンプ24、冷却ファン25、熱交換装置26等の多数の装置が収容されている。これらの装置は、機械室20の下端部に位置する旋回フレーム15上に搭載されている。旋回フレーム15は、複数のフレームにより構成された支持構造体であり、左右方向に一定の間隔をあけて並置され前後方向に延びる左テールフレーム15a及び右テールフレーム15bを含んでいる。左テールフレーム15a及び右テールフレーム15bは、カウンタウェイト19(図2参照)を支持する機能も有している。
【0019】
原動機としてのエンジン22は、出力軸が左右方向に延びた横置き状態で配置されており、左テールフレーム15a及び右テールフレーム15bにより支持されている。エンジン22は、その下端部にオイルパン22aを備えている。オイルパン22aは、左テールフレーム15aと右テールフレーム15bとの間に配置されている。エンジン22には、排ガスを排出するための排気管28が接続されている。
【0020】
排気管28には、エンジン22の排ガスを浄化する排ガス後処理装置23が接続されている。排ガス後処理装置23は、機械室20内の上方において、エンジン22の右側に隣接して配置されている。排ガス後処理装置23は、例えば、エンジン22内での燃焼によって生じる粒子状物質(Particulate Matter)を捕集するPM捕集装置41と、PM捕集装置41の下流側に配置され、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx浄化装置42とで構成されている。NOx浄化装置42は、例えば、PM捕集装置41に対して隙間をあけて右斜め上方に配置されており、PM捕集装置41よりも後述のエンジンカバー57の側方開口部64aの近くに位置している。
【0021】
PM捕集装置41は、排気管28の下流端に接続された前後方向に延びる筒状収容体の内部に図示しないPM捕集フィルタ及び酸化触媒(DOC)が配置されたものである。PM捕集フィルタは、排ガス中に含まれるPMを捕集するものである。DOCは、排ガス中の一酸化窒素(NO)、一酸化炭化(CO)、炭化水素(HC)等を酸化する触媒である。PM捕集装置41は、排ガスの温度を検知する排ガス温度センサ44を備えている。排ガス温度センサ44は、PM捕集装置41の筒状収容体の周辺に配置されており、後述の隔壁70側とは反対側(エンジン22側)の位置に設置することが好ましい。排ガス温度センサ44の故障要因の1つは、所定温度よりも高温の状態に曝されることである。
【0022】
PM捕集装置41では、エンジン22内に燃料を噴射した後に(メイン噴射後に)エンジン22内に燃料を再度噴射(ポスト噴射)することで、大量の未燃燃料(HC)が筒状収容体に排出される。この未燃燃料はDOCにより酸化されるので、DOCにおいて酸化熱が発生して排ガスが昇温する。この昇温した排ガスによりPM捕集フィルタに堆積した粒子状物質が焼却除去され、PM捕集フィルタが再生される。PM捕集装置41の動作は、排ガス温度センサ44の計測データ等を用いて制御される。
【0023】
NOx浄化装置42は、例えば、液体還元剤を用いて排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するものである。NOx浄化装置42は、PM捕集装置41の下流側に接続された前後方向に延びる筒状収容体の内部に還元触媒及び酸化触媒(ともに図示せず)を配置したものである。還元触媒の上流側には、還元剤を噴射する還元剤供給装置46が設けられている。NOx浄化装置42は、排ガス中のNOx濃度を検知するNOxセンサ47を備えている。NOxセンサ47は、NOx浄化装置42の筒状収容体の周辺に配置されており、後述の隔壁70側とは反対側(エンジン22側)の位置に設置することが好ましい。還元剤供給装置46及びNOxセンサ47の故障要因の1つは、所定温度よりも高温の状態に曝されることである。NOx浄化装置42の下流側には、流出管29が設けられている。
【0024】
NOx浄化装置42では、還元剤供給装置46により排ガス中に噴射された還元剤が還元触媒に吸着されて排ガス中の窒素酸化物と反応する。この反応において窒素酸化物と反応しきれずに余った還元剤は、酸化触媒により酸化、分解される。NOx浄化装置42の動作は、NOxセンサ47の計測データ及び還元剤供給装置46等を用いることで制御される。
【0025】
エンジン22には油圧ポンプ24が動力伝達装置31を介して接続されており、油圧ポンプ24はエンジン22によって支持されている。油圧ポンプ24は、機械室20において、エンジン22の右側で、かつ、排ガス後処理装置23の下方に配置されている。油圧ポンプ24は、エンジン22により駆動されることで、作動油タンク18(図2参照)内の作動油を吸い込み、作業フロント4の各シリンダ11a、12a、13a(図1参照)や下部走行体2(図1参照)の走行用油圧モータ(図示せず)等の油圧アクチュエータに圧油を供給するものである。
【0026】
エンジン22の左側には、冷却装置としての冷却ファン25及び熱交換装置26が配置されている。冷却装置は、油圧ポンプ24や作業フロント4の各シリンダ11a、12a、13a(図1参照)を含む油圧システム及びエンジン22で発生した熱を機械室20の外部へ放出するためのものである。
【0027】
冷却ファン25は、エンジン22を挟んで油圧ポンプ24及び排ガス後処理装置23とは反対側に配置されている。冷却ファン25は、例えば、周方向に配列された複数の翼部25aを有する軸流ファンである。冷却ファン25は、エンジン22により回転駆動されることで、機械室20内に外気を取り込み、機械室20の左側から右側へ向かって流れる冷却風を生起する。
【0028】
冷却ファン25の吸込側(左側)には、冷却ファン25に対面するように熱交換装置26が配置されている。熱交換装置26は、例えば、ラジエータやオイルクーラ等により構成されるものであり、冷却ファン25により機械室20内に取り込んだ外気(冷却風)によって、エンジン22を冷却する冷却水や油圧システムに流れる作動油等の流体を冷却する。
【0029】
熱交換装置26の外周部には、冷却ファン25の吐出した冷却風が吸込側へ逆流することを防止する仕切り板33が設けられている。仕切り板33には、冷却ファン25の翼部25aの外周側に向かって延びるシュラウド34が取り付けられている。シュラウド34は、機械室20内に取り込んだ外気を冷却ファン25へ円滑に導入するためのものである。
【0030】
機械室20は、エンジン22、排ガス後処理装置23、油圧ポンプ24、冷却ファン25、熱交換装置26等の各種装置を取り囲む機械室カバー50によって外郭が形成されている。機械室カバー50は、例えば図5に示すように、後方に開口した箱状に形成されている。具体的には、機械室カバー50は、図3図5に示すように、左テールフレーム15a及び右テールフレーム15bの下端部の位置に設けられた下側カバー51と、下側カバー51の左端部側に立設された左側方カバー52と、下側カバー51の右端部側に立設された右側方カバー53と、下側カバー51の前端部側に立設され、左側方カバー52の前端部と右側方カバー53の前端部の間に亘って左右方向に延在する前側カバー54と、左右の側方カバー52、53及び前側カバー54を上方から覆う上側カバー55とで構成されている。機械室カバー50の後方開口は、図2に示すように、カウンタウェイト19により閉塞される。
【0031】
下側カバー51には、図3に示すように、左テールフレーム15aと右テールフレーム15bとの間の位置に下側第1開口部51aが設けられている。また、右テールフレーム15bよりも右側方カバー53側の位置に、下側第2開口部51bが設けられている。
【0032】
左側方カバー52及び右側方カバー53はそれぞれ、熱交換装置26及び油圧ポンプ24に対面している。左側方カバー52及び右側方カバー53は開閉可能な構造となっており、左側方カバー52及び右側方カバー53からそれぞれ熱交換装置26及び油圧ポンプ24へアクセス可能となっている、左側方カバー52には、機械室20内に外気を取り込むための吸込口52aが設けられている。
【0033】
上側カバー55は、左側方カバー52の上端部と右側方カバー53の上端部との間に亘って左右方向に延在し、エンジン22や排ガス後処理装置23等へのアクセスを可能とするアクセス開口部56aを有する天板カバー56と、天板カバー56よりも上方に膨出し、天板カバー56のアクセス開口部56aを取り囲んで開閉可能に覆うエンジンカバー57とで構成されている。天板カバー56は、エンジン22よりも高い位置にあるが、排ガス後処理装置23の一部が突き出る状態の高さに位置している。
【0034】
エンジンカバー57は、図2図3図5に示すように、下方に開口する箱状に形成されており、天板カバー56のアクセス開口部56aを閉塞した状態において排ガス後処理装置23の一部(NOx浄化装置42の一部分)を収容可能となるように構成されている。エンジンカバー57は、例えば、天板カバー56のアクセス開口部56aを前側から取り囲む前側周面部61と、アクセス開口部56aを後側から取り囲む後側周面部62と、アクセス開口部56aを左側から取り囲む左側周面部63と、アクセス開口部56aを右側から取り囲む右側周面部64と、各周面部61、62、63、64を上側から覆う上面部65とにより構成されている。右側周面部64は、図3に示すように、NOx浄化装置42に近接した位置にあり、NOx浄化装置42の側方を覆うカバー部分である。上面部65における右側周面部64側の部分は、NOx浄化装置42に近接した位置にあり、NOx浄化装置42の上方を覆うカバー部分である。
【0035】
右側周面部64には、図3及び図5に示すように、側方に開口する側方開口部64aが前後方向に複数(図5中、4つ)設けられている。側方開口部64aは、冷却ファン25が生起する冷却風を機械室20外へ排出可能に構成されている。上面部65におけるNOx浄化装置42に近接する部分には、上下方向に開口する上側開口部65aが左右方向に複数(図3中、2つ)設けられている。上側開口部65aは、冷却ファン25が生起する冷却風を機械室20外へ排出可能に構成されている。上側開口部65aの各々には、図2図3図5に示すように、転向部材58がそれぞれ取り付けられている。転向部材58は、上側開口部65aから機械室20外へ排出された冷却風の向きを上方から右方へ転向させるものである。上面部65には、尾管59が設けられている。尾管59は、エンジンカバー57が閉じた状態で排ガス後処理装置23の流出管29に接続されるように構成されている。
【0036】
また、機械室20内には、図3及び図4に示すように、エンジン22及び排ガス後処理装置23と油圧ポンプ24とを仕切る隔壁70が設けられている。隔壁70は、油圧ポンプ24から作動油が漏れ出た場合に、エンジン22及び排ガス後処理装置23の高温部に作動油が付着して発火することを防ぐものである。隔壁70は、エンジン22及び排ガス後処理装置23の配置及び形状に応じて成形される。隔壁70は、例えば、右テールフレーム15bの上側から立ち上がり、エンジン22側と油圧ポンプ24側とを左右方向に区切る下側縦板部71と、下側縦板部71の上端部から右側へ折れ曲がり、排ガス後処理装置23のPM捕集装置41側と油圧ポンプ24側とを上下方向に区切る第1横板部72と、第1横板部72の右端部から立ち上がり、PM捕集装置41側と油圧ポンプ24側とを左右方向に区切る中央側縦板部73と、中央側縦板部73の上端部から右側へ折れ曲がり、排ガス後処理装置23のNOx浄化装置42側と油圧ポンプ24側とを上下方向に区切る第2横板部74と、第2横板部74の右端部から立ち上がり、NOx浄化装置42側と油圧ポンプ24側とを左右方向に区切る上側縦板部75とで構成されている。下側縦板部71には、油圧ポンプ24を貫通させるための貫通孔部71aが設けられている。隔壁70は、機械室20の下部から上部に亘って延在している。
【0037】
機械室20内には、図3に示すように、排ガス後処理装置23のPM捕集装置41及びNOx浄化装置42と隔壁70との間の形成された空間(隙間)及びNOx浄化装置42とエンジンカバー57の右側周面部64との間の形成された空間(隙間)によって、右側周面部64の側方開口部64aを排出口とする通風路Pが構成されている。通風路Pの上流端は、排ガス後処理装置23のPM捕集装置41の下端と隔壁70におけるPM捕集装置41の下端の高さ位置の部分とを結ぶ領域である。通風路Pの下流端は、排ガス後処理装置23のNOx浄化装置42の上端と右側周面部64の側方開口部64aにおけるNOx浄化装置42の上端の高さ位置を結ぶ領域である。
【0038】
通風路Pには、図3及び図4に示すように、通風路Pの側方開口部64aへの空気の流れを阻害する障壁部80が配置されている。具体的には、障壁部80は、例えば、隔壁70の上側縦板部75の上端部から通風路Pへ水平方向に突出し、NOx浄化装置42の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80は、通風路Pを完全には閉塞せずに、NOx浄化装置42との間に隙間を有している。
【0039】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態の作用及び効果を従来の建設機械と比較しつつ図2図3図5、及び図6を用いて説明する。図6は本発明の建設機械の一実施の形態に対する比較例としての従来の油圧ショベルの機械室の内部構造を示す断面図である。図3及び図6中、太線矢印は冷却ファン停止時の自然対流を示している。また、図6における左右方向は、油圧ショベルの左右方向である。なお、図6に示す比較例において、図1図5に示す符号と同符号のものは本実施の形態の構成と同様な部分であり、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図6に示す従来の油圧ショベルの機械室200の内部構造が本実施の形態の油圧ショベル1の機械室20の内部構造と相違する点は、障壁部80が存在しないことである。従来の機械室200の内部構造のそれ以外の構成は、本実施の形態の機械室20の内部構造の構成と同様である。
【0041】
本実施の形態及び従来の油圧ショベルにおいては、図3及び図6に示すエンジン22を駆動させると、排ガス後処理装置23の内部には高温の排ガスが流れ、エンジン22や排ガス後処理装置23の表面から周囲環境へ熱が放出される。このとき、エンジン22の駆動により冷却ファン25が回転駆動されるので、左側方カバー52の吸込口52aから機械室20、200内へ外気が吸い込まれて機械室20、200内に冷却風が生起される。機械室20、200内の冷却風は、先ず熱交換装置26を通過し、熱交換装置26内を流れる高温のエンジン冷却水や作動油を冷却する。その後、熱交換装置26の右側のシュラウド34内を通過して冷却ファン25に導入され、エンジン22側へ吐出される。
【0042】
冷却ファン25から吐出された冷却風のうち、機械室20、200内の上側へ吐出された冷却風は、エンジン22の上部周辺を通過してエンジン22や排ガス後処理装置23の表面から熱を受け取った後、エンジンカバー57の側方開口部64a及び上側開口部65aなどから機械室20、200の外部へ流出する。一方、機械室20、200内の下側へ吐出された冷却風は、エンジン22の下部周辺を通過してエンジン22の表面から熱を受け取った後、一部分が下側カバー51の下側第1開口部51aから機械室20、200の外部へ流出する。また、一部分が隔壁90の貫通孔部91aを通過して油圧ポンプ24の周辺部へ流れ込み、下側カバー51の下側第2開口部51bから機械室20、200の外部へ流出する。
【0043】
このように、本実施の形態及び従来の油圧ショベルにおいては、冷却ファン25の駆動時に、機械室20、200内において左側方カバー52の吸込口52aからエンジンカバー57の側方開口部64a、上側開口部65a及び下側カバー51の下側第1開口部51a、下側第2開口部51bへ向かう強制対流が生じるので、エンジン22や排ガス後処理装置23等から周囲に放出された熱を機械室20、200の外部へ効率的に排出することができる。
【0044】
なお、本実施の形態における機械室20の内部構造では、従来の機械室200の内部構造とは異なり、通風路P内に障壁部80が配置されているので、障壁部80が通風路P内の流れに影響を及ぼす可能性がある。しかし、冷却ファン25の生起する強制対流によって機械室20内の熱を外部へ効率的に排出するので、障壁部80が流れに影響を及ぼしても、PM捕集装置41の排ガス温度センサ44やNOx浄化装置42の還元剤供給装置46及びNOxセンサ47が過度に温度上昇することはない。
【0045】
その後、作業終了等により駆動中のエンジン22を停止させると、冷却ファン25が同時に停止するので、冷却ファン25による冷却風が機械室20、200内に供給されなくなる。この場合、エンジン22及び排ガス後処理装置23に残存している熱によって、エンジン22及び排ガス後処理装置23の周囲の空気の温度が上昇する。温度上昇した空気には、外気との密度差によって鉛直方向上向きの浮力が生じる。これにより、機械室20、200内には、下側カバー51の下側第1開口部51a、下側第2開口部51bからエンジンカバー57の上側開口部65a、側方開口部64aへ向かう上向きの自然対流が生じる。
【0046】
従来の機械室200の内部構造においては、図6に示すように、上向きの自然対流の一部が通風路P(排ガス後処理装置23と隔壁70との間に形成された空間、及び、排ガス後処理装置23とエンジンカバー57の右側周面部64との間に形成された空間)を流れてエンジンカバー57の右側周面部64の側方開口部64a及び上面部65の上側開口部65aを介して機械室200の外部へ流出する。また、上向きの自然対流の一部は、排ガス後処理装置23の左側の空間(排ガス後処理装置23を挟んで通風路Pとは反対側に存在する排ガス後処理装置23近傍の空間)を流れて上側開口部65aを介して機械室200の外部へ流出する。これにより、排ガス後処理装置23に残存している熱が機械室200の外部へ排出される。
【0047】
通風路Pから右側周面部64の側方開口部64a及び上面部65の上側開口部65aへ向かう自然対流F1は、鉛直方向上向きの速度成分が特に大きい流れである。また、排ガス後処理装置23の左側の空間から上側開口部65aへ向かう自然対流F2も鉛直方向上向きの速度成分が特に大きい流れである。
【0048】
側方開口部64aは側方(左右方向)に開口する開口部であり、側方開口部64aの開口方向は側方開口部64aへ向かう自然対流F1の流れ方向に対して直交する方向に近い向きとなっている。したがって、通風路Pを流れる自然対流F1を側方開口部64aから機械室200の外部へ効率的に流出させることは難しい。すなわち、側方開口部64aから十分な流量の自然対流F1を機械室200の外部へ流出させて機械室200内の熱を外部へ効率的に排出することは難しい。
【0049】
一方、上側開口部65aは上下方向に開口する開口部であり、上側開口部65aの開口方向は上側開口部65aへ向かう自然対流F1、F2の流れ方向に対して略一致するような向きとなっている。したがって、上側開口部65aは、上方に向かう自然対流F1、F2を機械室200の外部へ効率的に排出することが可能な構成である。
【0050】
しかし、上側開口部65aは、図2及び図5に示すように、その開口面積が尾管59の設置スペースにより制限を受けるので、十分な大きさの開口面積を確保できない場合がある。密度差を駆動力とする自然対流では、冷却ファン25を駆動力とする強制対流とは異なり、十分な開口面積を有していない上側開口部65aからは十分な流量の流れを流出させることができず、機械室200内の上側開口部65a近傍に流れが滞留する虞がある。この場合、通風路P内の自然対流F1が右側周面部64の側方開口部64aへ向かって流れているので、機械室200内の上側開口部65a近傍に滞留した流れが上側開口部65a近傍に位置する右側周面部64の側方開口部64aへ向かって転向することは難しい。したがって、上側開口部65aが十分な開口面積を有していない場合には、機械室200内の熱を外部へ効率的に排出することは難しくなる。
【0051】
このように、従来の機械室200の内部構造においては、エンジン22の停止に伴う冷却ファンの停止時に、機械室200内の熱を上側開口部65a及び側方開口部64aから効率的に外部へ排出することができない虞がある。この場合、PM捕集装置41の排ガス温度センサ44やNOx浄化装置42の還元剤供給装置46及びNOxセンサ47の温度が過度に上昇し、これらが故障する可能性がある。
【0052】
それに対して、本実施の形態においては、図3に示すように、通風路P内に障壁部80を配置している。エンジン22の停止に伴う冷却ファン25の停止時において、通風路P内の側方開口部64a及び上側開口部65aへの自然対流が障壁部80によって阻害される。これにより、通風路P内の自然対流の多くの部分が、PM捕集装置41とNOx浄化装置42の間の隙間を介して、排ガス後処理装置23の左側の空間を流れる自然対流F2に合流する。
【0053】
排ガス後処理装置23の左側の空間を流れる自然対流F2は、上面部65の上側開口部65aを介して機械室20の外部へ流出する。上側開口部65aの開口面積が十分確保されている場合には、上下方向に開口する上側開口部65aは、上方に向かう自然対流を機械室20内に滞留させることなく、機械室20の外部へ流出させることができる。一方、上側開口部65aの開口面積が十分確保されていない場合には、上側開口部65aを介して十分な流量の自然対流を機械室20の外部へ排出させることができず、自然対流F2の一部が機械室20内の上側開口部65a近傍に滞留する。この場合、障壁部80によって通風路P内の側方開口部64a及び上側開口部65aへの流れ(図6参照)が阻害されているので、上側開口部65a近傍に滞留した流れが上面部65に沿って側方開口部64aへ向かって略水平方向に流れ込み易くなる。この側方開口部64aへ向かう流れF3は、側方開口部64aの開口方向に対して略一致するような向きとなっている。したがって、側方開口部64aへ向かう流れF3は側方開口部64aを介して機械室20の外部へ効率的に流出するので、通風路Pから側方開口部64aを介して機械室20の外部へ流出する場合と比較して、機械室20内の熱を外部へ効率的に排出することができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、PM捕集装置41よりも側方開口部64aの近くに位置するNOx浄化装置42と隔壁70との間に形成された通風路P内に障壁部80を配置しているので、PM捕集装置41と隔壁70との間に形成された通風路P内に障壁部を配置する場合よりも、通風路Pから側方開口部64aや上側開口部65aへ向かう自然対流の流れを阻害することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態においては、隔壁70の上側縦板部75の上端部に障壁部80を設けているので、隔壁70と障壁部80を一体成形することが可能である。
【0056】
上述したように、本発明の建設機械の一実施の形態によれば、通風路Pに障壁部80を配置することで、冷却ファン25の停止時における通風路Pの側方開口部64a(第2開口部)への空気の流れが阻害されるので、冷却ファン25の停止時における機械室20内の上側開口部65a(第1開口部)近傍の流れの一部を側方開口部64a(第2開口部)から側方開口部64a(第2開口部)の開口方向と略一致するように機械室20外へ排出することができる。したがって、機械室20内の熱を上側開口部65a(第1開口部)及び側方開口部64a(第2開口部)から効率的に外部へ排出することができ、排ガス後処理装置23の排ガス温度センサ44や還元剤供給装置46、NOxセンサ47(機器)の過度な温度上昇を防止することができる。
【0057】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態の第1~第7の変形例を図7図13を用いて説明する。図7は本発明の建設機械の一実施の形態の第1変形例における機械室の内部を示す断面図、図8は本発明の建設機械の一実施の形態の第2変形例における機械室の内部を示す断面図、図9は本発明の建設機械の一実施の形態の第3変形例における機械室の内部を示す断面図、図10は本発明の建設機械の一実施の形態の第4変形例における機械室の内部を示す断面図、図11は本発明の建設機械の一実施の形態の第5変形例における機械室の内部を示す断面図、図12は本発明の建設機械の一実施の形態の第6変形例における機械室の内部を示す断面図、図13は本発明の建設機械の一実施の形態の第7変形例における機械室の内部を示す断面図である。図7図13中、太線矢印は冷却ファン停止時の自然対流を示している。また、図7図13における左右方向は、油圧ショベルの左右方向である。なお、図7図13において、図1図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
図7図13に示す本発明の建設機械の一実施の形態の第1~第7変形例が本発明の建設機械の一実施の形態(図3参照)に対して相違する点は、通風路P内の流れを阻害する障壁部の設置位置が異なることである。
【0059】
具体的には、図7に示す第1変形例における障壁部80Aは、エンジンカバー57の右側周面部64における側方開口部64aの下端部の位置から通風路Pへ水平方向に突出し、NOx浄化装置42の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Aは、例えば、複数の側方開口部64a(図5参照)に亘って延在する1つの板部材として構成することが可能である。また、複数の側方開口部64aの各々に対してそれぞれ個別に設ける構成も可能である。障壁部80Aは、通風路Pを完全には閉塞せず、NOx浄化装置42との間に隙間を有している。
【0060】
本変形例においては、冷却ファン25の停止時に障壁部80Aが、通風路P内の側方開口部64aへの流れを阻害しつつ、機械室20内の上側開口部65a近傍の流れの一部を水平方向の流れF3として側方開口部64aへ案内する。障壁部80Aが水平方向の流れF3を側方開口部64aへ案内する分、一実施の形態よりも効果的に機械室20内の熱を外部へ排出することができる。
【0061】
図8に示す第2変形例における障壁部80Bは、NOx浄化装置42におけるエンジンカバー57の側方開口部64aの下端部と略同じ高さの位置から側方開口部64aの下端部へ向かって通風路Pへ水平方向に突出し、NOx浄化装置42の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Bは、通風路Pを完全には閉塞せず、エンジンカバー57の右側周面部64との間に隙間を有している。
【0062】
本変形例においては、第1変形例と同様に、冷却ファン25の停止時に障壁部80Bが、通風路P内の側方開口部64aへの流れを阻害しつつ、機械室20内の上側開口部65a近傍の流れの一部を水平方向の流れF3として側方開口部64aへ案内する。障壁部80Bが水平方向の流れF3を側方開口部64aへ案内する分、一実施の形態よりも効果的に機械室20内の熱を外部へ排出することができる。
【0063】
図9に示す第3変形例における障壁部80Cは、NOx浄化装置42の筒状収容体におけるエンジンカバー57の側方開口部64a側の外周面から側方開口部64aの上端部側に向かって通風路Pへ突出し、NOx浄化装置42の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。
【0064】
本変形例においては、冷却ファン25の停止時に障壁部80Cが、通風路P内の側方開口部64aへの流れを阻害して、通風路P内の自然対流の一部をPM捕集装置41とNOx浄化装置42の間の隙間を介して排ガス後処理装置23の左側の空間へ導く。また、障壁部80Cは、通風路P内の側方開口部64aへの流れの一部を略鉛直方向上向きから側方開口部64aの開口方向(水平方向)に近づく方向へ転向させつつ、機械室20内の上側開口部65a近傍の流れの一部を水平方向の流れF3として側方開口部64aへ引き込む。通風路P内の側方開口部64aへの自然対流の一部が側方開口部64aの開口方向(水平方向)に近づく分、機械室20内の熱を外部へ効率的に排出することができる。
【0065】
図10に示す第4変形例における障壁部80Dは、NOx浄化装置42の筒状収容体における隔壁70の上側縦板部75近傍の外周面に垂直に立設されて通風路Pへ突出し、NOx浄化装置42の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Dは、通風路Pを完全には閉塞せず、隔壁70の上側縦板部75との間に隙間を有している。
【0066】
本変形例においては、冷却ファン25の停止時に障壁部80Dが、通風路P内の側方開口部64aへの流れを阻害して、通風路P内の自然対流の多くの部分をPM捕集装置41とNOx浄化装置42の間の隙間を介して排ガス後処理装置23の左側の空間へ導く。これにより、通風路P内の自然対流の多くの部分が自然対流F2に合流し、機械室20内の熱を上側開口部65a及び側方開口部64aを介して外部へ効率的に排出することができる。
【0067】
図11に示す第5変形例における障壁部80Eは、隔壁70の第2横板部74における中央側縦板部73側の端部からNOx浄化装置42へ向かって通風路Pへ突出し、第2横板部74の幅方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Eは、通風路Pを完全には閉塞せず、NOx浄化装置42との間に隙間を有している。
【0068】
本変形例においては、第4変形例と同様に、冷却ファン25の停止時に障壁部80Eが、通風路P内の側方開口部64aへの流れを阻害して、通風路P内の自然対流の多くの部分をPM捕集装置41とNOx浄化装置42の間の隙間を介して排ガス後処理装置23の左側の空間へ導く。これにより、通風路P内の自然対流の多くの部分が自然対流F2に合流し、機械室20内の熱を上側開口部65a及び側方開口部64aを介して外部へ効率的に排出することができる。
【0069】
図12に示す第6変形例における障壁部80Fは、隔壁70の中央側縦板部73からPM捕集装置41へ向かって通風路Pへ突出し、中央側縦板部73の幅方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Fは、通風路Pを完全には閉塞せず、PM捕集装置41との間に隙間を有している。
【0070】
本変形例においては、冷却ファン25の停止時に障壁部80Fが、通風路P内の側方開口部64aへの流れの一部を阻害する。したがって、従来の機械室200の内部構造のように通風路P内に障壁部のない構成の場合よりも、機械室20内の熱を外部へ効率的に排出することができる。
【0071】
図13に示す第7変形例における障壁部80Gは、PM捕集装置41の筒状収容体の外周面から隔壁70の中央側縦板部73へ向かって通風路Pへ突出し、PM捕集装置41の延在方向(前後方向)に延在する板部材である。障壁部80Gは、通風路Pを完全には閉塞せず、中央側縦板部73との間に隙間を有している。
【0072】
本変形例においては、第6変形例と同様に、冷却ファン25の停止時に障壁部80Gが、通風路P内の側方開口部64aへの流れの一部を阻害する。したがって、従来の機械室200の内部構造のように通風路P内に障壁部のない構成の場合よりも、機械室20内の熱を外部へ効率的に排出することができる。
【0073】
上述した本発明の建設機械の一実施の形態の第1~第7変形例によれば、前述した一実施の形態と同様に、通風路Pに障壁部80A、80B、80C、80D、80E、80F、80Gを配置することで、冷却ファン25の停止時における通風路Pの側方開口部64a(第2開口部)への空気の流れが阻害されるので、冷却ファン25の停止時における機械室20内の上側開口部65a(第1開口部)近傍の流れの一部を側方開口部64a(第2開口部)から側方開口部64a(第2開口部)の開口方向と略一致するように機械室20外へ排出することができる。したがって、機械室20内の熱を上側開口部65a(第1開口部)及び側方開口部64a(第2開口部)から外部へ効率的に排出することができるので、排ガス後処理装置23の排ガス温度センサ44や還元剤供給装置46、NOxセンサ47(機器)の過度な温度上昇を防止することができる。
【0074】
また、第1~第5変形例によれば、PM捕集装置41よりも側方開口部64aの近くに位置するNOx浄化装置42と隔壁70との間に形成された通風路P内に障壁部80A、80B、80C、80D、80Eを配置しているので、通風路Pから側方開口部64aや上側開口部65aへ向かう自然対流の流れを阻害しつつ、通風路P内の自然対流の一部をPM捕集装置41とNOx浄化装置42との間の隙間を介してNOx浄化装置42の左側(NOx浄化装置42を挟んで通風路Pの反対側)の空間へ導くことができる。
【0075】
なお、上述した本発明の建設機械の一実施の形態及びその第1~第7変形例においては、本発明の建設機械を油圧ショベル1に適用した例を示したが、本発明は、エンジン22の排ガスを浄化する排ガス後処理装置23及びエンジン22や排ガス後処理装置23を冷却するための冷却ファン25を備えた油圧クレーンやホイールローダ等の各種の建設機械に広く適用することができる。
【0076】
また、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0077】
例えば、上述した一実施の形態及びその第1~第7変形例においては、排ガス後処理装置23として、PM捕集装置41とNOx浄化装置42の2つの後処理装置を備えた構成の例を示したが、少なくとも1つの後処理装置を備えた構成も可能である。
【0078】
また、上述した一実施の形態及びその第1~第7変形例においては、通風路Pに1つの障壁部80、80A、80B、80C、80D、80E、80F、80Gを配置した構成の例を示したが、通風路Pに複数の障壁部を異なる位置に配置する構成も可能である。例えば、図14に示すように、第1変形例における障壁部80Aと第6変形例における障壁部80Fとを組み合わせることができる。図14は本発明の建設機械のその他の実施の形態の機械室の内部構造における複数の障壁部の設置位置の一例を示す断面図である。図14における左右方向は、油圧ショベルの左右方向である。
【0079】
また、上述した一実施の形態及びその第1~第7変形例においては、通風路Pを完全には閉塞しない構成の障壁部80、80A、80B、80C、80D、80E、80F、80Gの例を示したが、障壁部80、80A、80B、80C、80D、80E、80F、80Gが通風路Pを完全に閉塞するような構成も可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…油圧ショベル(建設機械)、 20…機械室、 22…エンジン、 23…排ガス後処理装置、 24…油圧ポンプ、 25…冷却ファン、 41…PM捕集装置(第1後処理装置)、 42…NOx浄化装置(第2後処理装置)、 50…機械室カバー、 64…右側周面部(第2カバー部分)、 64a…側方開口部(第2開口部)、 65…上面部(第1カバー部分)、 65a…上側開口部(第1開口部)、 70…隔壁、 80、80A、80B、80C、80D、80E、80F、80G…障壁部、 P…通風路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14