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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ベンチュリ効果を用いた制限器
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
F01M13/00 J
F01M13/00 C
F01M13/00 G
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018511021
(86)(22)【出願日】2016-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 US2016048432
(87)【国際公開番号】W WO2017040150
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-08-07
(31)【優先権主張番号】62/211,408
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512309299
【氏名又は名称】デイコ アイピー ホールディングス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DAYCO IP HOLDINGS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・イー・フレッチャー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エム・グレイチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エイチ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】キース・ハンプトン
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201622084(CN,U)
【文献】特表平09-511566(JP,A)
【文献】特開2001-349758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0173284(US,A1)
【文献】特開2000-337935(JP,A)
【文献】特開平06-170283(JP,A)
【文献】特開2003-172643(JP,A)
【文献】特開2014-122567(JP,A)
【文献】米国特許第07784999(US,B1)
【文献】登録実用新案第3169936(JP,U)
【文献】米国特許第5368273(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F02M 35/00
F02M 25/08
F04F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向にそって、収束する入口円錐部と発散する出口円錐部との結合部を画定するスロートを有するベンチュリ管を画定する本体を備え、
前記収束する入口円錐部と前記発散する出口円錐部は、それぞれ、双曲関数もしくは放物線関数としてスロートに向かって推移する内部流路を画定する制限器であって、
前記双曲関数もしくは前記放物線関数の導関数は、前記スロートにおいてちょうどゼロであり、前記スロートにおける流線は互いに平行であることから、前記制限器全体に亘って、縮流部を存在させることなく、ほぼ一定の流量を確実にし、
前記スロートは、前記入口円錐部の終端と、前記出口円錐部の始端との結合部を画定しており、従って、前記スロートは長さを有しておらず、
前記本体は、吸気ポートに開口していない
制限器。
【請求項2】
請求項1に記載の制限器であって、
前記収束する入口円錐部の長さと、前記発散する出口円錐部の長さとは、1:5から1:8の範囲の比を有する
制限器。
【請求項3】
請求項2に記載の制限器であって、
前記比は1:6から1:8の範囲である
制限器。
【請求項4】
請求項1に記載の制限器であって、
前記収束する入口円錐部の長さと、前記発散する出口円錐部の長さとは、1:3から1:5の範囲の比を有する
制限器。
【請求項5】
請求項1に記載の制限器であって、
前記入口円錐部は、流体を前記入口円錐部の内部に導く曲面状面取りから始まる
制限器。
【請求項6】
請求項5に記載の制限器であって、
前記出口円錐部は、流体を前記出口円錐部の外部に導く曲面状面取りで終了する
制限器。
【請求項7】
請求項1に記載の制限器であって、
前記入口円錐部は、長手軸方向の横断面から視て、非円形の形状を有する
制限器。
【請求項8】
請求項7に記載の制限器であって、
前記非円形の形状は略矩形の形状である
制限器。
【請求項9】
請求項7に記載の制限器であって、
前記出口円錐部は、長手軸方向の横断面から視て、非円形の形状を有する
制限器。
【請求項10】
請求項1に記載の制限器と、
前記制限器の前記入口円錐部と流体連通する第一の要素と、
前記制限器の前記出口円錐部と流体連通する第二の要素と、
を備え、
運転中、前記第一の要素と前記第二の要素との間に圧力損失が生じる
システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記第一の要素はクランクケースであり、前記入口円錐部と流体連通する流体はブローバイガスである
システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、
前記第二の要素は、エンジンの吸気マニホールドである
システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、
前記エンジンは、自然吸気エンジンもしくは昇圧エンジンである
システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムであって、
前記第二の要素は、ターボチャージャの圧縮機である
システム。
【請求項15】
請求項10に記載のシステムであって、
前記入口円錐部の前記内部流路と前記出口円錐部の前記内部流路の双方は、前記スロートに向かって双曲関数として推移し、
前記収束する入口円錐部の長さと、前記発散する出口円錐部の長さとは、1:5から1:8の範囲の比を有する
システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記比は1:6から1:8の範囲である
システム。
【請求項17】
請求項10に記載のシステムであって、
前記入口円錐部の前記内部流路と前記出口円錐部の前記内部流路の双方は、前記スロートに向かって放物線関数として推移し、
前記収束する入口円錐部の長さと、前記発散する出口円錐部の長さとは、1:3から1:5の範囲の比を有する
システム。
【請求項18】
請求項10に記載のシステムであって、
前記入口円錐部は、流体を前記入口円錐部の内部に導く曲面状面取りから始まる
システム。
【請求項19】
請求項10に記載のシステムであって、
前記出口円錐部は、流体を前記出口円錐部の外部に導く曲面状面取りで終了する
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年8月28日に、米国に出願された仮出願第62/211,408号に基づく優先権を主張し、その内容を援用する。
【0002】
本願は、作動圧力の変化時に、それを通過する流体にほぼ一定流量を生じさせるための、ベンチュリ効果を用いた制限器に関し、より詳細には、ポジティブクランクケースベンチレーションシステムで用いられるような制限器に関する。
【背景技術】
【0003】
操作の要求として、エンジンのクランクケース内の空気及び/又はガスを除去することが必要とされている。これは、エンジンのリングやピストンを通過したブローバイガスによって圧力を上昇させなくしたり、クランクケース内に燃料や水が堆積しなくしたりすることを確実にする。世界的に、有害な物質の放出を最小限とするために、クランクケースのガスを燃焼室を通過させることを求める規制がある。このための一つの方法として、クランクケースを、自然吸気エンジンのスロットルの下流側かつ昇圧エンジンの圧縮機の上流側においてインテークマニホールドに接続することが、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,596,339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このガス流はクランクケースとインテークマニホールドとの間の圧力降下により変動するという点において、この流れは、エンジンの較正に対し、潜在的シフトを構成する。更に、クランクケースから出るオイル蒸気、燃料蒸気、燃焼生成物、及び水の混合物は、流れを一定量に制御するために用いられるあらゆるバルブに堆積物を形成し得るものであり、好ましくない。
【0006】
このようなシステムにおける制限器について、バルブにおける問題を回避しつつ、流れが全般的に、もしくは実質的に一定とすることを確実にするための改良の必要性が存在する。制限器を通る流れの、マニホールド圧力の変動に応答する質量及び体積流量の変動を最小限とする簡潔な解決方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば車両用エンジン等の内燃機関の内部の流体システムで用いられる制限器がここに開示される。全ての態様において、制限器は、長手軸方向に沿って、収束する入口円錐部と発散する出口円錐部との結合部を画定するスロートを有するベンチュリ管を画定する本体を有し、収束する入口円錐部と発散する出口円錐部は、それぞれ、双曲関数もしくは放物線関数としてスロートに向かって推移する内部流路を画定する。入口円錐部は、長手軸方向の横断面から視て、円形の形状もしくは非円形の形状を有してもよい。一実施形態においては、入口円錐部は、略矩形の非円形形状を有し、及び/又は出口円錐部は、やはり略矩形の非円形形状を有する。
【0008】
一態様において、入口円錐部の内部流路と出口円錐部の内部流路の双方は、スロートに向かって双曲関数として推移し、収束する入口円錐部の長さと発散する出口円錐部との長さは、1:5から1:8の範囲の比率を有し、より好適には、1:6から1:8の範囲である。
【0009】
他の態様において、入口円錐部の内部流路と出口円錐部の内部流路の双方は、スロートに向かって放物線関数として推移し、収束する入口円錐部の長さと発散する出口円錐部の長さは、1:3から1:5の範囲の比率を有する。
【0010】
全ての実施形態の開示において、入口円錐部は、流体を入口円錐部の内部に導く曲面状面取りから始まってよく、出口円錐部は、流体を出口円錐部の外部に導く曲面状面取りで終了してもよい。
【0011】
他の態様において、上記いずれかの制限器と、この制限器の入口円錐部と流体連通する第一の要素と、この制限器の出口円錐部と流体連通する第二の要素とを含み、システムの運転中、第一の要素と第二の要素との間で圧力損失が生じるシステムが開示される。
【0012】
一実施形態においては、第一の要素はクランクケースであり、出口円錐部と流体連通する流体はブローバイガスであり、第二の要素はエンジンの吸気マニホールドである。一実施形態において、エンジンは自然吸気エンジンもしくは昇圧エンジンである。
【0013】
他の実施形態において、第一の要素はクランクケースであり、入口円錐部と流体連通する流体はブローバイガスであり、第二の要素はターボチャージャの圧縮機である。
【0014】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することでより良く理解することができる。図面中の要素は必ずしも一定の比率ではなく、本開示の原理を表すため、強調がなされている。更に、図面において、いくつかの図に亘って、同様の参照番号は、同じもしくは同様の部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】双曲関数によって収束する入口円錐部と発散する出口円錐部とを有するベンチュリ管を有する制限器の実施形態を示す平面断面図であり、半径の推移が無いものである。
図1B】双曲関数によって収束する入口円錐部と発散する出口円錐部とを有するベンチュリ管を有する制限器の実施形態を示す平面断面図であり、半径の推移が有るものである。
図1C図1AのC-C線に沿った断面の平面図である。
図2A】放物線関数によって収束する入口円錐部と発散する出口円錐部とを有するベンチュリ管を有する制限器の実施形態を示す平面断面図であり、半径の推移が無いものである。
図2B】放物線関数によって収束する入口円錐部と発散する出口円錐部とを有するベンチュリ管を有する制限器の実施形態を示す平面断面図であり、半径の推移が有るものである。
図3】10kPaの圧力損失の運転条件下において、様々な制限器の排出円錐部の長さの増加に対する性能を表すグラフである。
図4】5kPaの圧力損失の運転条件下において、様々な制限器の排出円錐部の長さの増加に対する性能を表すグラフである。
図5】入口円錐部において、内部流路が双曲関数として推移するモデルの一部を表す図である。
図6】自然吸気エンジンもしくは圧縮機(典型的には、ターボチャージャの)を有する昇圧エンジンにおいて、一つもしくはそれ以上の本開示の制限器を選択的に有するエンジンシステムの部分図である。
図7】様々な制限器の様々な圧力損失条件下における最適性能を表すグラフである。
図8】様々な制限器の様々な圧力損失条件下における最適性能を表すグラフである。
図9】様々な制限器の様々な圧力損失条件下における最適性能を表すグラフである。
図10】様々な制限器の様々な圧力損失条件下における最適性能を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な記述は、本発明の一般的な原理を説明するものであり、例は添付の図面にて追加的に説明される。図面において、同様の参照番号は、同じか、もしくは機能的に同等の要素を示す。ここで用いられる「流体」とは、あらゆる液体、懸濁液、コロイド、ガス、プラズマ、もしくはこれらの組み合わせを意味する。
【0017】
図1Aから図2Bは、制限器100、100’、200、及び200のもので、これら制限器は優れた結果を持ち、この結果を得るための材料はより少なくてすむ(より材料コストが安い)ものである。なぜなら、スロート108、208に向かって双曲関数もしくは放物線関数により推移する入口円錐部110、210と出口円錐部112、212を有することにより、制限器の全体の長さを縮小することが出来るためである。また、双曲もしくは放物線形状の制限器は、制限器全体に亘る圧力損失とは独立して、ほぼ一定の流量を確実にする。これは、制限器を流れる質量流量が音速に到達するために確実とされる。入口の密度を一定とし、大気圧と温度にのみより変動するとき、質量流量は、密度とスロート面積と音速との積となる。様々な制限形状がいくつかのガス流れを音速とする一方で、従来技術においては、これは流れの縮流部と称される領域、もしくは流れチャネルの音速の個所に制限されていた。これらの従来技術における制限器の形状において、縮流部の寸法は、制限器全体の圧力差によって変化していた。双曲や放物線の導関数はちょうど0であり、スロートの中央平面は全て音速の流体分子もしくは原子を有するため、縮流部が存在しない。
【0018】
図1Aにおいて、制限器100は、入口端104と出口端106を有し、スロート108を有するベンチュリ管101を規定する本体102を備え、このスロートは、このスロートに向かって収束する入口円錐部110と、このスロートから発散する出口円錐部112との、長手軸Aに沿った結合部を規定する。入口円錐部110と、出口円錐部112の各々は、スロート108に向かって双曲関数もしくは放物線関数によって推移する内部流路111、113をそれぞれ規定する。本開示の全ての実施形態において、制限器のスロートは、ベンチュリギャップを規定せず、吸気ポートに開口しておらず、単に入口円錐部110の終端と出口円錐部112の始端の結合部である。
【0019】
図1Aに示す実施形態において、入口円錐部110と出口円錐部112は、それぞれ、長手軸Aに対し図1AのC-C線に沿って切断した断面である図1Cに示す円形の形状を有する。入口円錐部110と出口円錐部112の断面形状は、円形の形状に限定されない。他の実施形態においては、入口円錐部110及び/又は出口円錐部112は、非円形の形状を有しても良く、例えば、楕円形、略矩形、もしくは他の多角形形状を有しても良い。
【0020】
図1に表示されるように、入口円錐部110は長さLを有し、出口円錐部112は長さLを有する。長さLは、入口管120が入口円錐部110に推移するもしくはなる入口円錐部110の始点から、スロート108までであり、長さLは、スロート108から、出口円錐部112が出口管124に推移するもしくはなる出口円錐部112の末端までである。入口管120は、流体をベンチュリ管101に導く曲面状面取りもしくは丸められた内表面122を含んで、長さLを有する。出口管124は、流体を出口管から導く面取りされたもしくは丸められた内表面(図示せず)を含んで、長さLを有する。
【0021】
図1A及び図1Bに図示するように、出口円錐部112の長さLは、入口円錐部110の長さLより大きく、双方の内部流路111、113は、スロート108に向かって双曲関数で推移する。一実施形態において、入口円錐部110の長さLと出口円錐部112の長さLは、1:5から1:8の範囲の比率を有する。他の実施形態では、この比率は、好適には1:6から1:8の範囲であり、より好適には1:7から1:8の範囲である。この比率は、制限器の膨張部を通る流れが壁面から剥離しないことを確実にするための最小全体長を規定し、乱流の発生を最小限にするという付加的な利益をもたらす。
【0022】
図1Bを参照すると、この実施形態は図1Aの実施形態とは異なり、入口管120と入口円錐部110との間の推移部における第一曲面状面取り121であって、流体流れを入口円錐部の内部に導く第一曲面状面取りと、出口円錐部112と出口管124との間の推移部における第二曲面状面取り124であって、流体流れを出口円錐部の外に導く第二曲面状面取りとを含む。
【0023】
ここで、図5を見ると、入口円錐部110内部流路111の形状の双曲関数である一実施形態の図が示されている。内部流路111は、面積A1を有する円形開口である入口円錐部の入口130から始まり、徐々に、連続的に、A1と比較して小さな直径を有するスロート108に向かって双曲関数として推移する。図は、スロートにおいて流線の利点をもたらす、互いに平行な双曲線170を含む。図5は内部流路111を図示しているが、同様に、180°回転させると、出口円錐部112の内部流路を図示する。
【0024】
ここで、図2A及び図2Bを参照すると、これらの実施形態は、図1Aの実施形態と、入口円錐部210の内部流路211と出口円錐部212の内部流路213の双方がスロート208に向かって放物線関数として推移する点で異なる。その他の点では、これらの図において、「2」から始まる参照符号以外の参照符号が付された特徴は、図1Aの特徴と同じか同様であり、その説明は繰り返さない。図2Bは、図1Aの実施形態と、更に、入口管220と入口円錐部210の間を推移して流体流れを入口円錐部の内部に導く第一曲面状面取り221と、出口円錐部212と出口管224の間を推移して流体流れを出口円錐部の外に導く第二曲面状面取り225を有する点で異なる。
【0025】
図2A及び図2Bに図示されるように、出口円錐部212の長さLは入口円錐部210の長さLよりも長く、双方の内部流路211、213は、スロート208に向かって放物線関数として推移する。一実施形態において、入口円錐部210の長さLと、出口円錐部212の長さLとは、1:3から1:5の範囲の比率を有する。
【0026】
それぞれの実施形態における出口円錐部Lの長さに対する入口円錐部Lの長さの比率は、入口円錐部と出口円錐部の内部流路が、双曲関数や放物線関数ではなく、直線状円錐(直線制限器)として推移する制限器に対して、様々な制限器の性能を評価する比較解析により決定される。評価のため、制限器の性能に影響を及ぼす因子は出口円錐部の長さと、入口円錐部及び出口円錐部の内部流路の形状だけとなるよう、いくつかのパラメータは固定される。これらのパラメータは以下を含む。
【0027】
【表1】
【0028】
、L、及びLは、上記のように規定される。Lは、制限器の選択された全体長さである。表やグラフに表示されたデータに反映される試験では、Lは115mmであり、Lは変数とした。DITは入口管の直径であり、それゆえに入口円錐部の入口の直径である。DOTは出口円錐部の直径であり、それゆえに出口管からへの出口の直径である。DTは制限器のスロートの直径である。DTの値は、典型的には制限器を含むエンジンシステムによって決定される、選択された質量流量の総体積を満たすように選択される。ここで、米国特許第7,431,023号明細書の教示に基づき、本件開示の制限器がこれと比較して優れた性能を有することを示すため、スロート直径として0.9206mmが選択された。入口円錐部と出口円錐部の内部流路が、スロートに向かって双曲関数もしくは放物線関数として推移する本件開示の制限器の、第一及び第二曲面状面取りを有する場合と有さない場合の優れた性能は、図3及び図4に含まれるグラフに示されている。
【0029】
図3において、制限器は、制限器の全長に亘って10kPaの圧力損失が与えられた運転条件(つまり、出口円錐部の出口の圧力は、入口円錐部の入口よりも10kPa低い)の下で、出口円錐部の長さを、20mmから90mmまで10mmずつ増加させて評価された。Y軸は、計算によって得られた10kPaの圧力損失時のグラム毎秒流量を、60kPa、55kPa、及び50kPaにおける計算によって得られた流量で除することに基づく制限器の性能のパーセンテージ評価である。結果の分析は、入口円錐部と出口円錐部の内部流路がスロートに向かって双曲関数で推移する「双曲制限器」は、「直線制限器」と比較し、出口円錐部の長さの全体の領域に亘って全般的に優れた性能であり、60mmから80mmの長さにおいて最も良い性能を有することを示す。結果の分析は、入口円錐部と出口円錐部の内部流路がスロートに向かって放物線関数で推移する「放物線制限器」は、20mmから50mmの長さで全般的に優れた性能であることを示す。入口円錐部の長さは10mmであるから、入口円錐部と出口円錐部の長さの比は、双曲制限器においては、好ましくは1:5から1:8の範囲であり、より好ましくは1:6から1:8の範囲であり、更に好ましくは1:7から1:8の範囲であり、放物線制限器においては、1:2から1:5の範囲であり、より好ましくは1:3から1:5の範囲である。
【0030】
図4において、制限器は、制限器の全長に亘って5kPaの圧力損失が与えられた運転条件の下で、出口円錐部の長さを、20mmから90mmまで10mmずつ増加させて評価された。Y軸は、計算によって得られた5kPaの圧力損失時のグラム毎秒流量を、60kPa、55kPa、及び50kPaにおける計算によって得られた流量で除することに基づく制限器の性能のパーセンテージ評価である。結果の分析は、「双曲制限器」は、「直線制限器」に対し、出口円錐部が50mmから90mmの長さにおいて全般的に優れた性能であり、60mmから80mmの長さにおいて最も良い性能を有することを示す。結果の分析は、「放物線制限器」は、20mmから50mmの長さで全般的に優れた性能であり、40mmの長さにおいて最も良い性能を有することを示す。入口円錐部の長さは10mmであるから、入口円錐部と出口円錐部の長さの比は、双曲制限器においては、好ましくは1:5から1:8の範囲であり、より好ましくは1:6から1:8の範囲であり、更に好ましくは1:7から1:8の範囲であり、放物線制限器においては、1:2から1:5の範囲であり、より好ましくは1:3から1:5の範囲である。
【0031】
制限器100、100’、200、及び200’は、エンジン、例えば車両用エンジンの中で、クランクケースからエンジンへの流体の流れを制御する形式で用いられてよい。本開示における制限器、すなわち、双曲制限器、もしくは放物線制限器、あるいはこれらの組み合わせは、エンジンの第一の要素がこれら制限器の入口円錐部と流体連通し、エンジンの第二の要素がこれら制限器の出口円錐部と流体連通するエンジンシステムに含まれてよい。これにより、エンジンシステムの運転中、第一の要素と第二の要素との間に圧力損失が生じる。図6に見られるように、制限器Rについて言えば、第一の要素はエンジン、特にそのクランクケースであり、流体はブローバイガスであり、第二の要素はエンジンのインテークマニホールドである。図6に示すエンジンシステムは、追加の圧縮機が無い自然吸気エンジンであっても、典型的にはターボチャージャの一部である圧縮機を有する昇圧エンジンであってもよい。図6は、さらに、制限器Rが存在した場合、第一の要素はエンジン、特にそのクランクケースであり、流体はブローバイガスであり、圧縮機が存在し、第二の要素はターボチャージャの圧縮機である。これにより、エンジンが自然吸気エンジンであれば、典型的にはRのみが存在し、エンジンが昇圧エンジンであれば、R及び/又はRが存在してよい。
【0032】
本開示における制限器は、一体的にモールド成形されてよい。一実施形態において、制限器は射出成型で形成される。図1Aから図2Bにおける制限器の本体102、202の外装は、入口円錐部と出口円錐部の内部流路が本開示におけるものであれば、どのような形状および構成であってもよい。
【0033】
図7から図10は、様々な制限器の性能をグラフで表したものであり、性能は無次元流量を表すパーセンテージで表現され、異なった形状の制限器流路を直接比較できるよう正規化されている。図7から図10に示す情報を用いることにより、当業者は、製品がさらされる条件に基づいて、製品に期待できる望ましい性能を評価し、どのような形状および長さを出口円錐部に用いたらよいか選択し、加えて、本開示におけるような半径を有する推移を含めるか否か評価することができる。
【0034】
図7は、10kPa条件下における、直線円錐部制限器、双曲円錐部制限器、及び放物線円錐部制限器の、円錐部を有さない制限器に対する最も良い性能をグラフに表したものであり、いずれの制限器も推移部において半径を含まない。直線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが90mmのものであった。双曲円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。放物線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが20mmのものであった。
【0035】
図8は、5kPa条件下における、直線円錐部制限器、双曲円錐部制限器、及び放物線円錐部制限器の、円錐部を有さない制限器に対する最も良い性能をグラフに表したものであり、いずれの制限器も推移部において半径を含まない。直線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが90mmのものであった。双曲円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが80mmのものであった。放物線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが50mmのものであった。
【0036】
図9は、10kPa条件下における、直線円錐部制限器、双曲円錐部制限器、及び放物線円錐部制限器の、円錐部を有さない制限器に対する最も良い性能をグラフに表したものであり、いずれの制限器も推移部において半径を含む。直線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。双曲円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。放物線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。
【0037】
図10は、5kPa条件下における、直線円錐部制限器、双曲円錐部制限器、及び放物線円錐部制限器の、円錐部を有さない制限器に対する最も良い性能をグラフに表したものであり、いずれの制限器も推移において半径を含む。直線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。双曲円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが70mmのものであった。放物線円錐部制限器の最も良い性能は、出口円錐部の長さが40mmのものであった。
【0038】
本発明を実施形態に基づいて説明したが、本明細書を読み、理解した当業者には変形例を想到することは自明であり、本願発明はそれらすべての変形例を含む。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10