(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム用のシート発熱体および液体送達装置を備える気化組立品
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20220216BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20220216BHJP
A61M 15/06 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F47/00
A61M15/06 C
(21)【出願番号】P 2018550585
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2017057015
(87)【国際公開番号】W WO2017167647
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】バティスタ ルイ ヌーノ
(72)【発明者】
【氏名】ルシオ ダニ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05666977(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0062042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0283855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用の気化組立品であって、前記気化組立品が、
発熱体と、
液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から前記発熱体に送達するための送達装置とを備え、
前記発熱体が前記送達装置から間隙を介しており、前記送達された液体エアロゾル形成基体を、前記送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱するように構成されており、
前記発熱体が流体透過性のシート発熱体であり、複数の導電性フィラメントを備え、前記送達装置が、前記シート発熱体の幾何学的形状に適したサイズおよび形状を有する吹き付けジェットとして吹き付けるように構成されている、気化組立品。
【請求項2】
前記シート発熱体がメッシュヒーターである、請求項1に記載の気化組立品。
【請求項3】
前記シート発熱体が多孔板を備える、請求項1または請求項2に記載の気化組立品。
【請求項4】
前記シート発熱体が、前記シート発熱体を通して意図された気流方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項5】
前記シート発熱体が正方形の幾何学的形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項6】
前記シート発熱体が、平面上で相互に間隙を介して配置された複数の要素を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項7】
前記送達装置が、一回の起動サイクルの実行に伴い、所定の量の前記液体エアロゾル形成基体を前記シート発熱体に送達するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項8】
前記送達装置がエアレススプレーノズルを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項9】
前記送達装置が、前記液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分からポンピングするマイクロポンプを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の気化組立品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の気化組立品と、ユーザーがエアロゾル発生を開始する動作を検出するためのユーザー動作検出ユニットとを備える、エアロゾル発生システム。
【請求項11】
検出されたユーザー動作に応答した前記発熱体の起動後に所定の時間遅延で前記送達装置を起動するように適合されている制御ユニットをさらに備える、請求項10に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
請求項
11に記載のエアロゾル発生システムであって、
電源および前記制御ユニットを備える装置部分と、
交換可能な液体貯蔵部分とを備える、エアロゾル発生システム。
【請求項13】
エアロゾルを発生する方法であって、
シート発熱体を加熱する工程と、
前記シート発熱体から間隙を介して提供された送達装置によって、液体エアロゾル形成基体を前記シート発熱体に送達する工程とを含み、
前記送達された液体エアロゾル形成基体が前記シート発熱体によって、前記送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱され、また液体エアロゾル形成基体を送達する工程が、前記液体
エアロゾル形成基体を前記シート発熱体に前記シート発熱体の幾何学的形状に適したサイズおよび形状を有する吹き付けジェットとして吹き付けることによって遂行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生システム用の気化組立品および液体エアロゾル形成基体を蒸発させるための送達システムに関連する。特に、本発明は、電気的に作動するエアロゾル発生システムなど、手持ち式エアロゾル発生システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
周知のエアロゾル発生システムは、液体エアロゾル形成基体を貯蔵するための液体貯蔵部分およびエアロゾル形成基体を蒸発させるための発熱体を有する電気的に作動する気化器を備える。ユーザーによって吸入(例えば「吸煙」)されるエアロゾルは、蒸発したエアロゾル形成基体が、発熱体を通過する気流内で凝結される時に発生する。液体エアロゾル形成基体は、液体貯蔵部分に結合された一組の繊維を有する芯によって発熱体に供給される。この技術に基づくと、発熱体に供給されて、発生したエアロゾルに組み込まれるエアロゾル形成基体の量を正確に制御することは難しい場合がある。従って、ユーザーによって吸入される、吸入サイクル一回当たりのエアロゾル形成基体の量を制御することも難しい。
【0003】
エアロゾル発生システム用の気化組立品と、発生されたエアロゾル内に含まれる気化されたエアロゾル形成基体の量を制御する何らかの機能を提供する送達システムとを提供することが望ましいであろう。その上、吸入サイクル一回当たりの所定の量の気化されたエアロゾル形成基体によるエアロゾル発生の再現性を達成できれば望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生システムに適した気化組立品が提供されている。気化組立品は、シート発熱体と、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分からシート発熱体に送達するための送達装置とを備え、ここでシート発熱体は送達装置から間隙を介し、かつ送達された液体エアロゾル形成基体を、送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱するように構成されている。シート発熱体は流体透過性であり、複数の導電性フィラメントを備える。
【0005】
本明細書で使用されるシート発熱体は、エアロゾル発生システムで使用するエアロゾル形成基体を受けて加熱するのに適した、薄い、好ましくは実質的に平面の伝導性材料(繊維のメッシュなど)、導電性フィルム、または加熱ストリップのアレイを備える。
【0006】
本明細書で使用される「薄い」という用語は、約8マイクロメートル~2ミリメートル、好ましくは8マイクロメートル~500マイクロメートル、および最も好ましくは8マイクロメートル~100マイクロメートルを意味する。フィラメントから成るメッシュの場合、これらは個別に直径40マイクロメートル未満であることが好ましいであろう。
【0007】
本明細書で使用される「実質的に平面の」という用語は、気化組立品内に送達装置から間隙を介して配置され、発熱体全体にわたり実質的に均一に装置からジェットまたはスプレーを受けることができるように、平面のプロファイルを有することを意味することが好ましい。ところが、一部の用途では、送達装置の送達分布の特性によっては、基体の送達を最適化するために、シート発熱体に湾曲を施すことが望ましい場合がある。従って、シート発熱体の「実質的に平面の」特性は、その製造において要素の形態に関連するが、気化組立品内のその配置に必ずしも関連しない。好ましい一つの実施形態において、シート発熱体はまた、気化組立品内に、送達装置から間隔を置いて向かい合わせに、実質的に平面の向きに配置される。
【0008】
本明細書で使用される「導電性」という用語は、1×10-4Ωm以下の比抵抗を有する材料から形成されていることを意味する。
【0009】
シート発熱体は複数の開口部を備えることが好ましい。例えば、シート発熱体は繊維のメッシュを備えてもよく、それらの間には隙間がある。シート発熱体は、随意的に穿孔されていて小さい穴を有する薄膜または薄いプレートを備えてもよい。シート発熱体は、直列に接続された狭い加熱ストリップのアレイを備えてもよい。
【0010】
シート発熱体は、約100平方ミリメートルの表面積を有し、シート発熱体が手持ち式システム内に組み込まれることを可能にすることが好ましい。シート発熱体は、約50平方ミリメートル以下の表面積を有しうる。
【0011】
好ましい一つの実施形態において、導電性フィラメントはメッシュ内に配置されて、160~600メッシュUS(+/-10%)(すなわち1センチメートル当たりフィラメント数400~1500本(+/-10%))のサイズのシート発熱体を形成する。隙間の幅は200マイクロメートル~10マイクロメートルであることが好ましく、75マイクロメートルおよび25マイクロメートルであることが最も好ましい。隙間の面積とメッシュの総面積の比であるメッシュの開口部分の面積率は25~56%であることが好ましい。メッシュは異なるタイプの織物または格子の構造を使用して形成してもよい。別の方法として、導電性フィラメントは互いに平行に配置されたフィラメントのアレイで構成されている。
【0012】
一実施形態において、導電性のフィルムまたはプレートは、金属、導電性プラスチック、またはその他の適切な導電性材料でできたシート発熱体を形成しうる。好ましい一つの実施形態において、フィルムのプレートは、上述のメッシュ実施形態で説明した隙間程度のサイズを有する穴で穿孔される。
【0013】
一実施形態において、細い加熱ストリップは、シート発熱体を形成する配列に組み合わされうる。配列内の加熱ストリップの幅が小さいほど、本発明のシート発熱体内に、より多くの加熱ストリップが直列に接続されうる。直列に接続された、より小さい幅の加熱ストリップを使用する利点は、シート発熱体への組み合わせの電気抵抗が増加することである。
【0014】
送達装置は入口および出口を含む。送達装置は、その入口で液体エアロゾル形成基体を受け、その出口で、シート発熱体に送達される、ある量の液体エアロゾル形成基体を出力するように構成されている。
【0015】
シート発熱体は、送達された液体エアロゾル形成基体を、少なくとも送達された液体エアロゾル形成基体の一部を揮発するのに十分な温度に加熱するように構成されている。
【0016】
シート発熱体は送達装置から間隙を介している。本明細書で使用される「間隙を介して」という用語は、気化組立品が、液体エアロゾル形成基体を送達装置から空気ギャップを介してシート発熱体に送達するように構成されていることを意味する。「間隙を介して」はまた、送達装置から発熱体への液体エアロゾル形成基体の流れを導くために、送達装置およびシート発熱体が管セグメントによって結合されていないことも意味する。「間隙を介して」はまた、送達装置およびシート発熱体が、空気ギャップによって相互に分離されている個別の部材として提供されることも意味しうる。「間隙を介して」という用語は、送達装置とシート発熱体を、一体化されたコンポーネントへと組み合わせることを含み、その場合、液体エアロゾル形成基体はシート発熱体によって加熱される直前に、この一体化されたコンポーネント内の空気ギャップを通過しなければならない。
【0017】
送達装置から間隙を介してシート発熱体を提供することによって、発熱体に送達される液体エアロゾル形成基体の量は、送達装置から発熱体に液体エアロゾル形成基体の流れを導くための管セグメントを有する気化器と比較して、より良好に制御されうる。こうした管セグメントに起因する望ましくない毛細管作用は回避されうるが、回避されない場合は、例えば発熱体と送達装置の間での液体の望ましくない移動を引き起こしうる。空気ギャップを通過する時、シート発熱体の表面に当たる前に、液体エアロゾル形成基体の送達量は小滴のジェットに変換されうる。従って、シート発熱体上の液体エアロゾル形成基体の送達量の一様な分布は促進されることができ、吸入サイクル一回当たりの所定の量の気化されたエアロゾル形成基体によるエアロゾル発生の制御可能性と再現性の改善につながる。
【0018】
シート発熱体の動作温度は120~210℃、好ましくは150~180℃の範囲で変化しうる。
【0019】
シート発熱体は複数の導電性フィラメントを備える。シート発熱体は複数の導電性フィラメントを備えるメッシュ発熱体であることが好ましい。複数の導電性フィラメントは、メッシュ発熱体のメッシュを構成する。メッシュは複数の導電性フィラメントに電力を加えることによって加熱される。シート発熱体は複数のフィラメントを備えることができ、これは抵抗性の繊維などの単一タイプの繊維で作製されるか、また毛細管作用のある繊維と導電性の繊維を含む複数タイプの繊維で作製されることができる。
【0020】
導電性フィラメントは適切な任意の導電性材料を含んでもよい。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金およびセラミック材料および金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープシリコン炭化物が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル-、コバルト-、クロミウム-、アルミニウム-チタン-ジルコニウム-、ハフニウム-、ニオビウム-、モリブデン-、タンタル-、タングステン-、スズ-、ガリウム-、マンガン-および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金および鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。フィラメントは、一つ以上の絶縁体で被覆されていてもよい。導電性フィラメント用の好ましい材料は、304、316、304L、および316Lステンレス鋼、ならびに黒鉛である。
【0021】
メッシュ発熱体の複数の導電性フィラメントの電気抵抗は、0.3~4オームであることが好ましい。複数の導電性フィラメントの電気抵抗は、0.5~3オームであることがより好ましく、約1オームであることがより好ましい。複数の導電性フィラメントの電気抵抗は、メッシュ発熱体の電気接点部分の電気抵抗よりも少なくとも1桁大きいことが好ましく、また少なくとも2桁大きいことがより好ましい。これによって、メッシュ発熱体に電流を流すことによって発生した熱が、複数の導電性フィラメントに局在化されることを確実にする。
【0022】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、隙間の幅は10マイクロメートル~100マイクロメートルとしうる。フィラメントは、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせることが好ましい。
【0023】
導電性フィラメントのメッシュはまた、当業界において周知の通り、液体を保持するその能力によって特性付けられうる。
【0024】
メッシュ発熱体は、第一の材料から作製された少なくとも一つのフィラメントと、第一の材料とは異なる第二の材料から作製された少なくとも一つのフィラメントとを備える。これは、電気的なまたは機械的な理由から有益である場合がある。例えば、フィラメントの一つ以上は、鉄アルミニウム合金など、温度で著しく異なる抵抗を有する材料から形成されていてもよい。これによって、温度または温度変化を決定するために使用されるフィラメントの抵抗の測定を可能にする。これは、吸煙検出システム内で使用され、また発熱体の温度を望ましい温度範囲内に保つために使用されることができる。
【0025】
シート発熱体は流体透過性である。本明細書でヒーター組立品との関連で使用される「流体透過性」という用語は、エアロゾル形成基体(気相であるが、液相である可能性もある)が、容易にシート発熱体を通過できることを意味する。流体透過性ヒーターの一般的な利点には、表面積の増大および気化の改善がありうる。加えて、流体透過性ヒーターを提供することはまた、気化された液体エアロゾル形成基体と気流の混合の改善を可能にしうる。
【0026】
シート発熱体は実質的に平面であることが好ましい。本明細書で使用される「実質的に平面」という用語は、単一の平面内に形成され、かつ湾曲した形状またはその他の非平面形状に巻かれていない、またはその形状に合うように適合されていないことを意味する。平面の発熱体は、製造中に簡単に取り扱うことができ、丈夫な構造を提供する。
【0027】
シート発熱体がメッシュ発熱体である実施形態において、メッシュ発熱体は、メッシュ発熱体を通して、意図される気流の方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を含みうる。それぞれのメッシュ層は、製造中に簡単に取り扱うことができ、丈夫な構造を提供する。その上、積み重ねられたメッシュ層は、液体エアロゾル形成基体の気化を改善する。
【0028】
シート発熱体は、正方形の幾何学的形状を有することが好ましい。シート発熱体は、各辺が3ミリメートル~7ミリメートルの範囲内、好ましくは4ミリメートル~5ミリメートルの範囲内の寸法を有する正方形の幾何学的形状を備える加熱領域を有しうる。
【0029】
シート発熱体は、平面上に相互に間隙を介して配置された複数の細い加熱ストリップを備えうる。加熱ストリップは、長方形の形状であり、かつ空間的に相互に実質的に平行に配置されていることが好ましい。加熱ストリップは直列に電気的に接続されうる。加熱ストリップの間隔を適切に開けることで、例えば同じ面積を有するシート発熱体が使用される場合と比べて、より均一な加熱を実現しうる。
【0030】
送達装置は、一回の起動サイクルの実行に伴い、所定の量の液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に送達するように構成されることが好ましい。所定の量の液体エアロゾル形成基体は、空気ギャップを介して送達装置からシート発熱体に送達される。液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に直接的に蒸着することによって、液体エアロゾル形成基体は、シート発熱体に達するまで実質的に液体の状態のままでありうるが、シート発熱体付近の小滴はそれに接触する前にエアロゾル化しうる。所定の量の液体エアロゾル形成基体は、シート発熱体中で望ましい量のエアロゾルを生成するための当量でありうる。
【0031】
送達装置は、シート発熱体の幾何学的形状にふさわしいサイズおよび形状を有する吹き付けジェットとして、シート発熱体上に液体エアロゾル形成基体を吹き付けるように構成されることが好ましい。送達装置は、液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に吹き付けて、送達装置に面したシート発熱体の上流表面の少なくとも90パーセント、好ましくは少なくとも95パーセントを覆うように適合されうる。
【0032】
送達装置は標準的なタイプのアトマイザースプレーノズルを備えてもよく、この場合に空気の流れはユーザーからの吸煙の行為によってノズルを通して供給され、液体と混合および作用してノズルの出口において霧化したスプレーを作り出す加圧された気流を作り出す。小さい携帯型装置に適合するための要件を満たすサイズの幾つかのシステム(少量の液体で機能するノズルを含む)が市場で入手可能である。使用されうる別のクラスのノズルとしてエアレススプレーノズルがあり、これはマイクロスプレーノズルと呼ばれることがある。こうしたノズルは、非常に小さいサイズのマイクロスプレーコーンを作り出す。このクラスのノズルを用いれば、装置の内側(特にマウスピースの内側)の気流管理はノズルおよび発熱体を囲み、発熱体の表面をマウスピースの出口に向けて洗い流し、好ましくはマウスピースを出るエアロゾルの乱気流パターンを含む。
【0033】
どちらのクラスのノズルについても、送達装置とノズルに面したシート発熱体との間の空気ギャップの距離は、好ましくは2~10ミリメートルの範囲内であり、より好ましくは3~7ミリメートルの範囲内である。任意のタイプの入手可能なスプレーノズルが利用されうる。メーカーの「The Lee Company」製のエアレスノズル 062 Minstacは、適切なスプレーノズルの一例である。
【0034】
送達装置は、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分からポンピングするためのマイクロポンプを備えることが好ましい。毛細管芯または任意の他の受動媒体の代わりにポンプを用いて液体を引き出すことによって、実際に要求される量の液体エアロゾル形成基体のみが、シート発熱体に搬送されうる。液体エアロゾル形成基体のみが、需要に基づいて(例えばユーザーによる吸煙に応じて)ポンプで送り込まれうる。
【0035】
マイクロポンプは、可変または一定の時間間隔で、例えば毎秒約0.7~4.0マイクロリットルの流量で液体エアロゾル形成基体を要求に応じて送達することを可能にしうる。8~15ヘルツのポンプ周波数で作動するマイクロポンプ内での、一回の起動サイクルのポンプ量は、約0.5マイクロリットルでありうる。吸煙当たりの液体エアロゾル形成基体の用量としての、各々の起動サイクルにおけるポンプ量は、約0.4~0.5マイクロリットルであってもよいことが好ましい。
【0036】
マイクロポンプは、水と比較して相対的に高い粘度を有する特徴がある液体エアロゾル形成基体をポンプで送り込むように構成されうる。液体エアロゾル形成基体の粘度は、約15~500ミリパスカル秒の範囲であってもよく、約18~81ミリパスカル秒の範囲であることが好ましい。
【0037】
一部の実施形態において、送達装置は、液体貯蔵部分から液体エアロゾル形成基体をポンピングするための手動操作のポンプを備えうる。手動操作のポンプは、電気および電子構成要素の数を減らし、そのため気化組立品の設計を簡略化しうる。
【0038】
本発明のさらなる態様によると、エアロゾル発生システムに適した気化組立品が提供されている。気化組立品は、シート発熱体と、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分からシート発熱体に送達するための送達装置とを備え、ここでシート発熱体は送達装置から間隙を介し、かつ送達された液体エアロゾル形成基体を、送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱するように構成されている。
【0039】
本発明の第二の態様によると、上述の第一の態様による気化組立品を備え、かつユーザーがエアロゾル発生を開始する動作を検出するためのユーザー動作検出ユニットをさらに備える、エアロゾル発生システムが提供されている。ユーザー動作検出ユニットは、吸煙検出システム、例えば吸煙センサーによって構成されてもよい。別の方法として、または随意的に、ユーザー動作検出ユニットは、オンオフボタン、例えば電気的なスイッチによって構成されてもよい。オンオフボタンは、ユーザーによって押し下げられる時に、マイクロポンプと発熱体のうちの少なくとも一つの起動させるように構成されてもよい。オンオフボタンが押し下げられる持続時間は、例えばユーザーが吸煙中にオンオフボタンを押し下げ続けることによって、マイクロポンプと発熱体のうちの少なくとも一つの起動の持続時間を決定しうる。
【0040】
エアロゾル発生システムは、検出されたユーザー動作に応答して発熱体を起動した後に所定の時間遅延で送達装置を起動するように適合される制御ユニットをさらに備えることが好ましい。オンオフボタンまたは吸煙センサーを使用するなど、ユーザーによる起動に伴い、制御ユニットは、まずシート発熱体を起動してもよく、その後に約0.3~1秒間の遅延、好ましくは0.5~0.8秒間の遅延の後、送達装置を起動してもよい。起動の持続期間は一定であってもよく、またはオンオフボタンを押すこと、もしくは吸煙することなどのユーザーの行為に、例えば動作検出ユニットによって検出される通りに、対応してもよい。別の方法として、制御ユニットはシート発熱体と送達装置を同時に起動するように適合されうる。
【0041】
エアロゾル発生システムは、装置部分と交換可能な液体貯蔵部分とを備えることが好ましい。装置部分は電源と制御ユニットを備えてもよい。電源は任意のタイプの電力供給源、典型的には電池であってもよい。送達装置のための電源は、シート発熱体の電源とは異なってもよく、または同一であってもよい。
【0042】
エアロゾル発生システムは、気化組立品および電力供給源(電源)に接続された電気回路をさらに備えうる。電気回路はシート発熱体の電気抵抗を監視するように構成されていてもよく、シート発熱体の電気抵抗に応じて、シート発熱体への電力供給を制御するように構成されていることが好ましい。
【0043】
電気回路はマイクロプロセッサを有するコントローラを備えてもよく、これはプログラム可能マイクロプロセッサであってもよい。電気回路はさらなる電子構成要素を備えてもよい。電気回路は気化組立品への電力供給を調節するように構成されてもよい。電力はシステムの起動後に気化組立品に連続的に供給されてもよく、断続的に供給(例えば、吸入ごとに毎回供給)されてもよい。電力は、電流パルスの形態で気化組立品に供給されてもよい。
【0044】
電源はコンデンサー、超コンデンサー、またはハイパーコンデンサーなどの電荷蓄積装置の形態であってもよい。電源は、再充電を必要としてもよく、また一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有してもよい。例えば、電源は約6分間、または6分の倍数の時間にわたってエアロゾルを連続的に発生することを可能にする十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電源は所定の回数の吸煙、または気化組立品の不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0045】
空気がエアロゾル発生システムに入ることを可能にするために、エアロゾル発生システムのハウジングの壁、好ましくは気化組立品の反対側の壁、好ましくは底壁は少なくとも一つの半開放入口を備える。半開放入口によって、空気がエアロゾル発生システム内に入るが、空気または液体が半開放入口を通してエアロゾル発生システムから出ることはないことが好ましい。半開放入口は、例えば空気については一方向にのみ透過可能であるが反対方向には空気および液体が漏れないような半透過性の薄膜としうる。半開放入口は、例えば一方行弁でもよい。半開放入口は、例えばエアロゾル発生システムの最小限のへこみや、弁または薄膜を通過する空気の体積といった特定の条件が満たされる場合に、入口のみを通して空気を通過させることが好ましい。
【0046】
液体エアロゾル形成基体は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体である。揮発性化合物は液体エアロゾル形成基体の加熱によって放出されてもよい。液体エアロゾル形成基体は植物由来材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体はたばこを含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は、加熱に伴い液体エアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、液体エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は均質化した植物由来材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含んでもよい。
【0047】
エアロゾル発生システムは電気的に作動するシステムであってもよい。エアロゾル発生システムは携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生システムは従来型の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズであってもよい。システムの全長は、およそ45ミリメートル~およそ160ミリメートルであってもよい。システムの外径は、およそ7ミリメートル~およそ25ミリメートルであってもよい。
【0048】
本発明の第三の態様によると、エアロゾルを発生する方法が提供されており、方法は、シート発熱体を加熱する工程と、シート発熱体から間隙を介して提供された送達装置によって、液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に送達する工程とを含み、ここで、送達された液体エアロゾル形成基体はシート発熱体によって、送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱される。
【0049】
一態様に関して説明される特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
【0050】
ここで本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるが説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による気化組立品の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による気化組立品によって発生される吹き付けジェットの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図全体を通して、同一の参照符号が同一または類似のコンポーネントおよび特徴に割り当てられる。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態による気化組立品の概略図である。気化組立品1は、共通のハウジング10に組み込まれたシート発熱体2および送達装置3を備える。送達装置3は、管セグメント12によって接続されたマイクロポンプ6およびスプレーノズル5によって構成されている。マイクロポンプ6は、管セグメント11を介して、交換可能な液体貯蔵部分8から液体エアロゾル形成基体を受けるように適合されている。送達装置3は、メッシュヒーター要素2から間隙を介して提供されている。詳細には、送達装置3およびメッシュヒーター要素2は、スプレーノズル5の出口5Aと、スプレーノズル5に面したシート発熱体2の上流表面2Aとの間の距離Dの空気ギャップによって分離されている。スプレーノズル5は、マイクロポンプ6から管セグメント12を介してポンピングされる、ある量の液体エアロゾル形成基体を受けて、この量の液体エアロゾル形成基体を吹き付けジェット4Sとしてシート発熱体2の上流表面2A上に吹き付けるように適合されている。スプレーノズル5は、その量の液体エアロゾル形成基体がシート発熱体2によって完全に受けられて、シート発熱体2の上流表面2A全体を覆うように、吹き付けジェット4Sを発生するように構成されている。ハウジング10は、空気15がハウジング10の外側から気化組立品1内へと、シート発熱体2の上流表面2Aに向かって通ることを可能にする空気吸込み口4を備える。シート発熱体2は、空気吸込み口4から入った空気15が、スプレーノズル5の反対側のシート発熱体2の下流表面2bに向かって通過することを可能にするように適合されている。空気15はシート発熱体2を通過することで、シート発熱体2によって気化されたエアロゾル形成基体と混合し、エアロゾル16を形成する。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態による気化組立品によって発生した吹き付けジェットを図示したものである。
図1に図示された気化組立品のスプレーノズル5の出口5Aから出力された吹き付けジェット4Sは、シート発熱体2の上流表面2Aの幾何学的形状に適したサイズおよび形状を有する。上流表面2Aは正方形の形状を有する。吹き付けジェット4Sは、同一の正方形の形状を示す。上流表面2Aに届く吹き付けジェット4Sのサイズは、上流表面2Aのサイズと同じである。
【0055】
図3は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。エアロゾル発生システム20は、
図2に図示された吹き付けジェットを発生させるように適合された、
図1に図示された気化組立品1を備える。その上、エアロゾル発生システム20は、交換可能な容器8によって具体化された液体貯蔵部分と、電子制御ユニット9と、電池ユニット13、その電池ユニット13、電子制御ユニット9、気化組立品1(すなわちシート発熱体2およびマイクロポンプ6)の電動式コンポーネントを電気的に接続するための配線コンポーネント14とを備える。ハウジング10に結合されているものは、ユーザー(図示せず)が発生されたエアロゾル16を吸入するために提供された気流出口18を有する交換可能なマウスピース17である。