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特許7025347リンカー分子、及びペプチドの精製プロセスにおけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】リンカー分子、及びペプチドの精製プロセスにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/06 20060101AFI20220216BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20220216BHJP
   C07D 207/46 20060101ALI20220216BHJP
   C07C 317/28 20060101ALI20220216BHJP
   C07C 309/88 20060101ALI20220216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20220216BHJP
   A61P 15/08 20060101ALN20220216BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20220216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220216BHJP
   A61P 31/18 20060101ALN20220216BHJP
   A61P 7/02 20060101ALN20220216BHJP
   A61K 38/08 20190101ALN20220216BHJP
   A61K 38/10 20060101ALN20220216BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
C07K1/06
C07K1/14
C07D207/46 CSP
C07C317/28
C07C309/88
A61P25/28
A61P15/08
A61P31/04
A61P35/00
A61P31/18
A61P7/02
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018558489
(86)(22)【出願日】2017-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017051932
(87)【国際公開番号】W WO2017129818
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】102016101606.3
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518267632
【氏名又は名称】ベリンティック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】ツィッターバルト,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ,オリバー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0270937(US,A1)
【文献】特表2013-510833(JP,A)
【文献】特許第2552049(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式 X-L-X(1)の化合物であって、
は:
【化1】

【化2】

【化3】
から選択され、
-R及びRはそれぞれ独立してH又はBから選択され、少なくともR又はRはBであり;
-RはH又はBから選択され;
-ここでBは、酸不安定性アミン保護基であり;
-RはH、C-C12アルキル又はアリールから選択され、ここでアルデヒド又はケト基は酸不安定性保護基で保護でき;
Lは、塩基性条件下でXによって求核性切断が可能な官能性リンカー化合物から選択され、Lは-T-U-の形態を有し、ここで:
-TはXとUとの間のスペーサであり、ここでTは、置換又は非置換C-C12アルキル-、-R-C(=O)-NH-R-、-R-C(=O)-O-R-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-R-、-C(=O)、-R-フェニル-R-、-R-フェニル-、-フェニル-R-、-フェニル-から選択され、
-R及びRは互いに独立して、置換又は非置換C-C12アルキルから選択され;
-Uは、官能性リンカー化合物の切断活性化部分であり、ここで上記活性化部分は、Xによる塩基性切断時に形成されるアニオンを安定化するよう設計され;
は-Y-Zの形態を有し:
-Yは-O-C(=O)-又は-S(=O)-から選択され;
-Zは電子求引性脱離基である、前記化合物。
【請求項2】
Bは、Boc(-C=OOtBu)、トリチル(-C(Ph))、Mmt(-C(Ph)OMe)、DMT(-C(Ph)(COMe))、Cbz(-C=OOCHPh)、ベンジリデンアミン(=CPh)、フタルイミド(=(CO))、p-トルエンスルホンアミド(-SOMe)、ベンジルアミン(-CHPh)、アセトアミド(-COMe)、トリフルオロアセトアミド(-COCF)、Dde(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)-3-エチル)、及び1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde)から選択され、及び/又は
アセタール又はケタール保護基は:
【化4】
又は
【化5】
から選択され、ここでrは0~12である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Tは、C-C12アルキル-、-R-C(=O)-NH-R-、-R-C(=O)-O-R-、-R-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-R-、-C(=O)-、-C(=O)-O-から選択され、R及びRは互いに独立して、C-C-アルキルである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
化合物T-U-YのUが、式(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)及び(11):
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
から選択され、ここでRは、C-C-アルキル、CF、CHCF
【化13】
又は
【化14】
から選択され、(R 、(R 、(R 10 、(R 11 、(R 13 及び(R 14 -C-アルキル、又はI及び/又はM効果を生成する置換基であり、
-nは0、1、2、3又は4に等しく、
-mは0、1、2又は3に等しく、
-pは0、1、2、3又は4に等しく、
-qは0、1、2又は3に等しく、
-rは0、1、2又は3に等しく、
-sは0、1、2又は3に等しい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
(R 、(R 、(R 10 、(R 11 、(R 13 及び(R 14 -C-アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-CN-NO、-N、-CF、-SOH、及び-COHから選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Zは、基-F、-Cl、-Br、-I、-N、-SR12、-OCF、-OCHCF、-OSOCF、-SOCH、-SOCF、-SOCH
【化15】
から選択され、
12はC-C-アルキル、アリール、又はベンジル残基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は、式(2)又は(3)の化合物であり、
はHであり、R及びRはBoc-保護基を有するか、又はRはHであり、かつRはBoc-保護基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Yは形態-O-C(=O)-を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Tは形態-CH-C(=O)-NH-(CH-、-CH-C(=O)-O-(CH-、-C(=O)-O-(CH-を有し、Uは、式(5)又は(6):
【化16】
【化17】
の化合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Tは形態-CH-C(=O)-O-、-C(=O)-O-を有し、Uは式(7):
【化18】
の化合物であり、Rは、C-C-アルキル又はI及び/又はM効果を発揮する置換基から選択され、nは0、1、2、3、又は4に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Tは形態-CH-を有し、Uは式(8):
【化19】
の化合物であり、RはBoc-Lys(Boc)-であり、 13 は、C -C -アルキル、又はI及び/又はM効果を生成する置換基から選択され、rは0に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Tは形態-CH-、-(C=O)-を有し、Uは式(9):
【化20】
の化合物であり、 14 は、C -C -アルキル、又はI及び/又はM効果を生成する置換基から選択され、sは0に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Tは形態-C(=O)-を有し、Uは式(10):
【化21】
の化合物であり、 は、C -C -アルキル、又はI及び/又はM効果を生成する置換基から選択され、mは0に等しく、Yは形態-SO-を有し、ZはClである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
全長ペプチドのN末端アミノ基と固相との間の化合物としての、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
式:X-L-Y-PEP(12)の化合物であって、
、L及びYは、請求項1~14によって定義され、
PEPは、N末端において と結合した全長ペプチドを含む、化合物。
【請求項16】
式:D-X’-L-Y-PEP(13)の化合物であって、
-Dは、表面が合成又は天然ポリマーで修飾されていることを特徴とする表面修飾固体支持体であり、
-X’は形態-NH-O-、-NH-NH-又は-C(=O)-を有し、
-L、Y及びPEPは、請求項15によって定義される、化合物。
【請求項17】
固相ペプチド合成(SPPS)で調製されたペプチドを精製するプロセスであって、
前記プロセスは、以下のステップ:
i.精製対象の全長ペプチドと、少なくとも1つのアセチル化末端配列との化合物を、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物であるスカベンジャー化合物と接触させ、続いて反応させて、請求項15に記載の式(12)の化合物を形成するステップ;
ii.酸を添加することによって酸不安定性保護基を切断するステップ;
iii.iiからの組成物を表面修飾固体支持体と接触させ、共有ヒドラゾン又はオキシム結合を前記スカベンジャー化合物と前記固体支持体との間に形成し、請求項16に記載の式(13)の化合物を提供するステップ;
iv.固体支持体から全長ペプチドを切断するステップ
を含む、前記プロセス。
【請求項18】
前記固体支持体は表面に、官能基アルデヒドを有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記固体支持体からの前記全長ペプチドの切断後又は切断時、前記固体支持は、前記スカベンジャー化合物の残基X-Lから切断され、前記固体支持体は再生される、請求項17に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相ペプチド合成(solid phase peptide synthesis:SPPS)によって調製されたペプチドの精製プロセス、及びこのプロセスにおいて使用するための対応するリンカー分子に関する。
【背景技術】
【0002】
固相ペプチド合成は、公知のペプチド生成プロセスである。ペプチドの合成の他に、その精製も必須のプロセスステップである。
【0003】
ペプチドの精製に広く使用されている1つの方法は、分取高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)である。この方法の欠点は、所望の生産量に関するスケーラビリティが不十分であるため、1つの設備では異なる複数の量を生産できず、これにより、対応する複雑なデバイスに関して比較的高いコストが必要となることである。別の欠点は、個々の画分の正確な分析評価に比較的広範な知識が必要となること、及びそれに加えて、動作中に溶媒及びカラム材料(固相)が消費されることである。
【0004】
従って、ペプチド生産のコストの削減のために、より低コストで失敗しにくい方法が有利である。
【0005】
特許文献1は、いわゆるリンカーが、一方では合成全長ペプチドのN末端と、またもう一方ではチオール基と官能性珪藻土との反応によってチオエーテルと、共有結合する、ペプチドの精製プロセスを記載している。これによって全長ペプチドは不動化され、精製可能となる。続いて全長ペプチドは塩基性条件下に放出される。しかしながらこのプロセスは、例えばアミノ酸システイン又はペニシラミンを含有するもの等のチオール含有ペプチドには不適当である。更に、精製に使用される固相(この場合は珪藻土)は、再使用を意図していないか又は再使用に適していないという欠点がある。
【0006】
特許文献2は類似のプロセスを提案しており、このプロセスでは、リンカーが、一方では合成全長ペプチドのN末端を介して、及びアジド(-N)とアルキンとの間の1,3双極子環付加(ヒュスゲン反応)によって、固相(合成親水性ポリマー、例えばPEGA)に結合する。このプロセスの欠点は、1,3双極子環付加を実行するために銅又は銅含有化合物が必要となることである。多くのペプチド、特に硫黄を含むもの、即ちメチオニン及び/又はシステインを含有するものは、銅を錯体化し、また同様にアルギニン及びリジンは銅に結合できる。従って銅の除去は困難であり、残留する銅の毒性により、この方法は全てのケースに適用可能なわけではなく、特にペプチド治療薬の精製には適用できない。更に、精製に使用される固相は、再使用を意図していないか又は再使用に適していないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許公報0552368 A1
【文献】欧州特許公報2501711 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、完全なHPLC設備を必要とせず、また硫黄含有又は銅結合ペプチドにも好適な、ペプチドの精製のためのプロセスを提供することである。更に本発明の目的は、精製に使用される固相の再生及び再使用が可能な、ペプチドの精製に好適なプロセスを提供することである。更に本発明の目的は、全長ペプチドのN末端アミノ基と固相との間の結合を可能とする、化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、上記目的は、一般式X-L-X(1)を有する化合物によって達成され、
は:
【化1】
【化2】
【化3】
から選択され、
-R及びRはそれぞれ独立してH又はBから選択され、少なくともR又はRはBであり;
-RはH又はBから選択され;
-ここでBは、酸不安定性アミン保護基であり;
-RはH、C-C12アルキル又はアリールから選択され、ここでアルデヒド又はケト基は酸不安定性保護基で保護でき;
Lは、Xによって求核性切断が可能な官能性リンカー化合物から選択され、特にLは-T-U-の形態を有し、ここで:
-TはXとUとの間のスペーサであり、ここでTは特に、置換又は非置換C-C12アルキル-、特にC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、-R-C(=O)-NH-R-、-R-C(=O)-O-R-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-R-、-C(=O)、-R-フェニル-R-、-R-フェニル-、-フェニル-R-、-フェニル-から選択され、
-R及びRは互いに独立して、置換又は非置換C-C12アルキル、特にC-C-アルキル、特にC-Cアルキルから選択され;
-Uは、官能性リンカー化合物の切断活性化部分であり、ここで上記活性化部分は、Xによる塩基性切断時に形成されるアニオンを安定化するよう設計され;
は-Y-Zの形態を有し:
-Yは-O-C(=O)-又は-S(=O)-から選択され;
-Zは電子求引性脱離基である。
【0010】
本発明の文脈では、分子の「切断活性化部分(Spaltung aktivierender Teil)」という用語は、反応性官能基の構造要素を指す。
【0011】
「反応性官能基(Reaktive Funktion)」とは、反応性種を生成するために励起(活性化)できる化合物を指す。これは例えば、触媒又はpH値の変化によって起こり得る。反応性種は、好適な反応物と短時間で共有結合、例えばカルバメート結合を形成できる。反応性官能基は、活性化後に他の官能基、例えばアミン基又はアミド基と特異的に反応する基を含む。
【0012】
用語「スペーサ(Abstandshalter)」は、それ自体は反応性官能基を含まず、分子の2つの官能基を空間的に隔てる、ある分子内の複数の原子からなる化合物を指す。スペーサは、炭素、リン、硫黄、ケイ素、窒素及び/又は酸素原子からなる、共有結合鎖又は環状構造である。スペーサは、隔てられる官能基間の距離に寄与しない置換基を含有してよい。
【0013】
用語「グルーピング(Gruppierung)」は、ある分子内の複数の原子の化合物を指す。これらの原子は典型的には、スペーサ、反応性官能基、又はメソメリー若しくは誘導効果を発揮する分子構造といった、官能性ユニットを形成する。
【0014】
用語「官能性リンカー化合物(funktionelle Linkerverbindung)」又は「リンカー化合物(Linkerverbindung)」は、1つの分子内で2つの官能性ユニットが結合した官能基を指す。リンカー化合物は、官能基と共有結合する。
【0015】
用語「リンカー(Linker)」、「リンカー分子(Linkermolekul)」、「リンカー系(Linkersystem)」及び「スカベンジャー化合物(Fangerverbindung)」は、2つの他の分子を、上記他の分子それぞれと共有結合を形成することによって結合する分子を指す。上記2つの他の分子の、官能基に対する共有結合は、特定の反応条件下でのみ発生する。特に用語「リンカー」、「リンカー分子」、「リンカー系」及び「スカベンジャー化合物」は、式(1)に従う、あるペプチドのN末端と、固体支持体との間の結合を生成できる結合を指す。
【0016】
用語「置換された(substituiert)」は、原子又は分子基若しくは化合物を親化合物に付加することを指す。置換基又は化合物は、親分子の1つ以上の利用可能な部位に、保護された又は保護されていない状態で付加できる。置換基又は化合物自体は、置換されていてもされていなくてもよく、また置換基又は化合物自体は、置換又は非置換であり、親分子と直接、又はアルキル、アミド若しくは炭化水素基といった結合基若しくは化合物を介して、結合してよい。置換基又は化合物は例えば、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル-(-C(O)OR)、アシル-(-C(O)R)-基、脂肪族、脂環式基、アルコキシ-、アミノ((-N(R)(R))、イミノ-(=NR)、アミド-(-C(O)N(R)(R)又は-N(R)C(O)R)基、ヒドラジン誘導体(-C(NH)NR)、トリアゾール、テトラゾール(CN)、アジド-(-N)、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、イソシアノ(-NC)、シアナート(-OCN)、イソシアナート-(-NCO)、チオシアナート-(-SCN);イソチオシアナート-(-NCS);カルバミド-(-OC(O)N(R)(R)又は-(R)C(O)OR)基、チオール(-SR)、スルフィニル-(-S(O)R)、スルホニル-(-S(O))、スルホンアミドミル-(-S(O)N(R)(R)又は-N(R)S(O))基、及び例えば-CF、-OCF、-SCF、-SOCF又は-SOCFといったフッ素化化合物を含む。R、R及びRは互いに独立して、H又は他の置換基である。
【0017】
用語「アルキル(Alkyl)」は、12個までの炭素原子を有する飽和直鎖又は分岐炭化水素鎖を指す。好ましいアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、n-ヘキシル、オクチル、デシル基である。
【0018】
用語「アリール(Aryl)」は、環構造を形成するために炭素原子間に二重結合及び単結合を交互に有する炭化水素化合物を指す。
【0019】
用語「脱離基(Fluchtgruppe)」は、M及び/又はI効果を発揮する分子内の官能基を指し、従って容易に分裂して、脱離基の後に結合電子対を残す。
【0020】
用語「表面修飾固体支持体(oberflachenmodifizierter fester Trager)」は、例えば多糖、ポリリジン、ポリアリールアミド、ポリエチレングリコール(PEG)又はアクリルアミド-PEGコポリマーといった合成又は天然ポリマーによって修飾された、例えばセファロース、アガロース又はセルロースユニット、シリカゲル又はポリデキストランのような固体構造を指す。固体支持体の表面は、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシルアミン又はヒドラジン基を特徴とする。
【0021】
いくつかの実施形態では、Zは、M及び/又はI効果を発揮する電子求引性脱離基であり、異方性結合破壊において結合電子対を同伴する。
【0022】
いくつかの実施形態では、Zは電子求引性脱離基であり、上記脱離基のアニオンに対応する酸が、5未満のpks値を有することを特徴とする。
【0023】
いくつかの実施形態では、Zは電子求引性脱離基であり、上記脱離基のアニオンに対応する酸が、5未満のpks値を有することを特徴とし、また上記脱離基は特に、M及び/又はI効果を発揮し、異方性結合破壊において結合電子対を同伴する。
【0024】
いくつかの実施形態では、Uは、官能性リンカー化合物の切断活性化部分であり、この活性化部分は、M及びI効果によってアニオンを形成できるグルーピングを示し、得られたアニオン性化合物は電子対シフトによって安定化され、この安定化はUとXとの間の異方性結合破壊をもたらす。
【0025】
いくつかの実施形態では、Bは、Boc(-C=OOtBu)、トリチル(-C(Ph))、Mmt(-C(Ph)OMe)、DMT(-C(Ph)(COMe))、Cbz(-C=OOCHPh)、ベンジリデンアミン(=CPh)、フタルイミド(=(CO))、p-トルエンスルホンアミド(-SOMe)、ベンジルアミン(-CHPh)、アセトアミド(-COMe)、トリフルオロアセトアミド(-COCF)、Dde(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)-3-エチル)、及び1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキス-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde)から選択され、Bは特にBocである。
【0026】
いくつかの実施形態では、アセタール又はケタール保護基は:
【化4】
又は
【化5】
から選択され、ここでrは0~12、特に0、1又は2である。
【0027】
本発明の化合物は、他の酸不安定性保護基で形成することもできることは、当業者には公知である。
【0028】
いくつかの実施形態では、Tは、置換又は非置換C-C12アルキル-、特にC-C-アルキル、特にC-C-アルキル、-R-C(=O)-NH-R-、-R-C(=O)-O-R-、-R-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-R-、-C(=O)-、-C(=O)-O-から選択され、R及びRは互いに独立して、置換又は非置換C-C12アルキル、特にC-C-アルキル、特にC-Cアルキルから選択される。
【0029】
Tが置換アルキルである場合、置換基は特に、水溶性が高めたられた置換基、例えば-SOH、-COH又は-NOである。
【0030】
いくつかの実施形態では、Tは、-CH-、-CH-C(=O)-NH-(CH-、-(CH)-C(=O)-O-(CH-、-CH-C(=O)-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-O-(CH-、及び-C(=O)-から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、Tは、-CH-、-CH-C(=O)-NH-(CH-、-C(=O)-O-(CH-、-CH-C(=O)-O-、及び-C(=O)-から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、Uは、式(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)及び(11)、特に式(5)、(6)、(8)、(9)及び(10):
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
から選択された化合物T-U-Yであり、ここでRは、C-C-アルキル、CF、CHCF
【化13】
及び
【化14】
から、特にBoc-Lys(Boc)-から選択され、R 、R 、R10 、R11 、R13 及びR14 -C-アルキル、又はI及び/若しくはM効果を生成する置換基、特にC-C-アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-CN-NO、-N、-CF、-SOH、及び-COHであり、
-nは0、1、2、3又は4に等しく、特にnは0又は1、特に0であり、
-mは0、1、2又は3に等しく、特にmは0又は1、特に0であり、
-pは0、1、2、3又は4に等しく、特にpは0又は1、特に0であり、
-qは0、1、2又は3に等しく、特にqは0又は1、特に0であり、
-rは0、1、2又は3に等しく、特にrは0又は1、特に0であり、
-sは0、1、2又は3に等しく、特にsは0又は1、特に0である。
【0033】
いくつかの実施形態では、R 、R 、R10 、R11 、R13 及びR14 は、C-C-アルキル、又はI及び/若しくはM効果を生成する置換基、特にC-C-アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-CN-NO、-N、-CF、-SOH、及び-COH、特に-F、-Cl、-Br、-I、-NO、及び-Nから選択され、
-nは0、1、2、3又は4に等しく、特にnは0又は1、特に0であり、
-mは0、1、2又は3に等しく、特にmは0又は1、特に0あり、
-pは0、1、2、3又は4に等しく、特にpは0又は1、特に0あり、
-qは0、1、2又は3に等しく、特にqは0又は1、特に0あり、
-rは0、1、2又は3に等しく、特にrは0又は1、特に0あり、
-sは0、1、2又は3に等しく、特にsは0又は1、特に0である。
【0034】
いくつかの実施形態では、R 、R 、R10 、R11 、R13 及びR14 は、水溶性が高められた置換基、特に-NO、-SOH及び-COHから選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、Zは、基-F、-Cl、-Br、-I、-N、-SR12、-OCF、-OCHCF、-OSOCF、-SOCH、-SOCF、-SOCH
【化15】
から選択され、R12はC-C-アルキル、アリール、又はベンジル残基である。
【0036】
いくつかの実施形態では、Zは、-Cl、
【化16】

【化17】
から、特に
【化18】
及び
【化19】
から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、Xは、式(2)又は(3)の化合物であり、RはHであり、R及びRはBoc-保護基を有するか、又はRはHであり、かつRはBoc-保護基である。
【0038】
いくつかの実施形態では、Xは式(3)の化合物であり、R及びRはHであり、RはBoc-保護基である。
【0039】
いくつかの実施形態では、Yは形態-O-C(=O)-を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-C(=O)-NH-(CH-、-CH-C(=O)-O-(CH-、-C(=O)-O-(CH-を有し、Uは、式(5)又は(6):
【化20】
【化21】
の化合物である。
【0041】
いくつかの実施形態では、Tは、形態-C(=O)-O-(CH-又は-CH-C(=O)-NH-(CH-を有し、Uは式(6)の化合物である。
【0042】
いくつかの実施形態では、Tは形態-C(=O)-O-(CH-又は-CH-C(=O)-NH-(CH-を有し、Uは式(6)の化合物である。
【0043】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-C(=O)-NH-(CH-を有し、Uは式(6)の化合物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-C(=O)-O-又は-C(=O)-O-を有し、Uは式(7):
【化22】
の化合物であり、Rは、C-C-アルキル又はI及び/若しくはM効果を発揮する置換基、特にC-C-アルキル、-F、-Cl、-Br、-I、-CN-NO、-N、-CF、-SOH、及び-COHから選択され、nは0、1、2、3、又は4、特に0又は1、特に0に等しい。
【0045】
いくつかの実施形態では、Tは形態CH-C(=O)-O-を有し、Uは式(7)の化合物であり、nは0に等しい。
【0046】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-を有し、Uは式(8):
【化23】
の化合物であり、RはBoc-Lys(Boc)-であり、rは0に等しい。
【0047】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-又は-(C=O)-を有し、Uは式(9):
【化24】
の化合物であり、sは0に等しい。
【0048】
いくつかの実施形態では、Tは形態-CH-を有し、Uは式(9)の化合物である。
【0049】
いくつかの実施形態では、Tは形態-C(=O)-を有し、Uは式(10):
【化25】
の化合物であり、mは0に等しく、Yは形態-SO-を有し、ZはClである。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(14))、[[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソエトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(15))、[2-(4-クロロスルホニル-3-ニトロベンゾイル)ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(16))、[2,2-ジメチルプロパノイルオキシ-[2-[4-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]フェノキシ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(17))、[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-2-[2-[2-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(18))、[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-2-[2-[2-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシエチルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(19))、[2-[5-アジド-2-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]ベンゾイル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(20))、[3-[(2,2-ジメチルプロパノイルオキシアミノ)カルバモイル]-4-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]フェニル]2,6-ビス(2,2-ジメチルプロパノイルオキシアミノ)ヘキサノエート(式(21))、[2-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(22))、[2-[2-[2-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシ-プロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(23))、[2-[2-[4-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]フェノキシ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(24))、[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシエチルスルホニル]エトキシカルボニル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(25))、[3-[[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)ヒドラジノ]メチル]-4-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]フェニル]2,6-ビス(2,2-ジメチルプロパノイルオキシアミノ)ヘキサノエート(式(26))、[2-[[5-アジド-2-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシメチル]フェニル]メチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(27))から選択される:
【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

及び
【化39】
【0051】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、式(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)及び(21)の化合物から選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、式(16)、(19)、(20)及び(21)の化合物から選択される。
【0053】
更なる態様では、本発明の目的は、第1の態様による化合物の使用によって達成され、上記化合物は、全長ペプチドのN末端アミノ基と固相との間に化合物を形成する。
【0054】
更なる態様では、本発明の目的は、式(12):X-L-Y-PEP(12)の化合物によって達成され、X、L及びYは第1の態様及びその実施形態によって定義され、PEPは、N末端においてX’と結合した全長ペプチドを含む。
【0055】
更なる態様では、本発明の目的は、式(13):D-X’-L-Y-PEP(13)の化合物によって達成され、Dは、表面が合成又は天然ポリマーで修飾されていることを特徴とする表面修飾固体支持体であり、X’は形態-NH-O-、-NH-NH-又は-C(=O)-を有し、L、Y及びPEPは、第1の態様及びその実施形態によって定義される。
【0056】
いくつかの実施形態では、表面修飾固体支持体Dは、修飾された多糖を特徴とする。
【0057】
いくつかの実施形態では、表面修飾固体支持体Dは、アルデヒド又はヒドラジンで修飾された、セファロース/アガロース又はセルロースを特徴とする。
【0058】
更なる態様では、本発明の目的は、ペプチド、特に固相ペプチド合成(SPPS)で調製されたペプチドを精製するプロセスによって達成され、上記プロセスは、以下のステップを含む:
i.精製対象の全長ペプチドと、少なくとも1つの汚染物質、特に少なくとも1つのアセチル化末端配列との化合物を、第1の態様及びその実施形態によって定義されたスカベンジャー化合物と接触させ、続いて反応させて、式(12)の化合物を形成するステップ;
ii.酸を添加することによって酸不安定性保護基を切断するステップ;
iii.iiからの組成物を表面修飾固体支持体と接触させ、共有ヒドラゾン又はオキシム結合をスカベンジャー化合物と固体支持体との間に形成し、式(13)の化合物を提供するステップ;
iv.固体支持体から全長ペプチドを切断するステップ。
【0059】
いくつかの実施形態では、ステップiは、全長ペプチドと固相(合成樹脂)上の末端配列との混合物を、一般式X-L-Xの化合物(スカベンジャー分子)と接触させるステップを含み、X、X及びLは上述のように定義され、上記接触させるステップは、化合物X-L-XをXにおいて、全長ペプチドの遊離N末端アミノ基と接触させて反応させ、共有結合を形成するステップをもたらす。固相(合成樹脂)からペプチドを切断するステップは、酸によって実施され、これにより、スカベンジャー分子と共有結合した全長ペプチドと、固相ペプチド合成(SPPS)からのペプチドのアセチル化末端配列との混合物が得られる。固相と液相との分離は、例えばろ過によって実施される。非ペプチド不純物は、-78℃~0℃のエーテル中での沈殿によって除去される。この場合、好ましくは、最初に装入されたエーテルに酸混合物を添加することによって、全てのペプチド材料を沈殿させ、有機不純物がエーテル中に残る。続いて、例えば遠心分離によって、エーテル溶液をペプチド混合物から分離する。ペプチド混合物が非晶質固体として得られる。
【0060】
いくつかの実施形態では、ステップiiは、ステップi)からの非晶質固体を、pH2~4、好ましくは2.5~3.5、特に好ましくは3の、少なくとも部分的に水性の緩衝液中に取り込むステップを含む。上記pHは、酸又は塩基の添加によって好適に調整される。
【0061】
いくつかの実施形態では、ステップiiiは、ii)からの混合物を、表面修飾固体支持体(精製樹脂)と接触させて、ヒドラゾン又はオキシム結合の形成によって、スカベンジャー分子によって修飾された(ステップi)全長ペプチドを共有結合させるステップを含む。特に有利には、アミン及び/又は酢酸を触媒として添加して、結合反応の動態を改善する。
【0062】
ヒドラゾン/オキシム結合によって固体支持体に結合していないペプチド末端配列は、有機溶媒、並びに/又は、好ましくは非共有結合ペプチドを溶解するために不安定化物質を添加した、水及び緩衝液で洗浄することによって除去される。
【0063】
いくつかの実施形態では、ステップivは、塩基性(求核性)条件下でリンカーLをYから切断することによって、全長ペプチドを固相から分離するステップを含み、Yは、CO又はSOの形態で放出される。
【0064】
式(13)(D-X’-L-Y-PEP)から開始される全長ペプチドの切断において、全長ペプチド(PEP)は、CO又はSO(Y’)、並びにD-X’-L又はD’及びX’-L’から生じる。
【0065】
いくつかの実施形態では、固体支持体はその表面に、官能基アルデヒド、ケトン、ヒドロキシルアミン及びヒドラジンを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、固体支持体はその表面に、官能基-O-CH-CHOを有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、固体支持体はその表面に、官能基-ONH又は-Nを有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、固相はろ過によって所望の全長ペプチドから分離され;固相(精製樹脂、D)は、ヒドラジン(H)及び/若しくは水酸化アンモニウムHNOH及び/若しくはアルデヒド及び/若しくはケトンでの処理、並びに/又は水での洗浄によって再生される。
【0069】
ペプチドを合成樹脂から切断する(ステップi)ために酸を使用し、これは好ましくは、pks値が4未満の有機及び無機酸である。特に好適なのは、フッ素含有酸:トリフルオロ酢酸(TFA)、フッ化水素酸(HF)及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択された酸である。また、臭化水素酸(HBr)、塩酸(HCl)、亜硫酸(HSO)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)又はメタンスルホン酸も好適である。
【0070】
ステップi)における沈殿のために、沈殿温度において液体形態の有機溶媒が使用され、このような溶媒は当業者に公知である。エーテルの群からの有機溶媒が好ましく、特には、ジエチルエーテル及び/又はメチルtert-ブチルエーテルが好ましい。また、沈殿温度において液体形態であるアルカンも使用でき、n-ヘキサン及び/又はn-ペンタンが特に好ましい。ステップii)で使用される好適な少なくとも部分的に水性の緩衝液は当業者に公知であり、即ち、pH2~5の緩衝能を有する緩衝液、即ちアニオン:クエン酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ピバリン酸塩及びリン酸塩と、カチオン:ナトリウム、カリウム、アンモニア(NH、NMe、NEt、NPr、NBu、HNC)とを組み合わせた緩衝液である。
【0071】
pH値を調整するために、有機又は無機酸、好ましくはHCl、並びに塩基として好ましくはアルカリ及び/又はアルカリ土類水酸化物、特に好ましくはNaOH及び/又はKOHを使用できる。
【0072】
ペプチドの可溶性を高めるために、ステップii)において、系に水混和性有機溶媒を添加することが有利となり得、このような有機溶媒は当業者に公知であり、群:ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)から選択できる。
【0073】
ステップiii)での不動化を促進するために、アミン及び/又は酢酸を水溶液に添加できる。ここでアミンは、群:ピリジン、ピペリジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン及びジメチルアミンから選択できる。
【0074】
ステップiii)での表面修飾固体支持体(精製樹脂)としては、合成及び天然ポリマーが好適である。表面修飾は、Xを用いてヒドラゾン又はオキシムと反応するようなものである。Xが式(2)又は(3)の化合物である場合、表面修飾はアルデヒド又はケトン基におけるものとなり、これらのアルデヒド又はケトン基は対応するヒドラゾン又はオキシムと反応する。Xが一般式(4)のアルデヒド又はケトン官能基である場合、表面修飾は、-ONH、又は-Nを有することになる。固体支持体として好ましいのは、表面修飾された天然又はバイオポリマーであり、特に好ましいのは、表面修飾された多糖である。最も好ましいのは、アルデヒド修飾セファロース/アガロース、及びセルロースの使用であり、ここではXは式(3)の化合物であり、R及びRはHである。
【0075】
ステップiii(精製樹脂に結合した全長ペプチドの洗浄)では、水、水性洗浄剤、又は有機溶媒で洗浄できる。ステップiii)の水性洗浄溶液に対する不安定化物質としては:バリウム塩、塩酸グアニジウム、グアニジウムチオシアネート、チオシアネート、過塩素酸塩、ヨウ化物、ブタノール、フェノール、チオ尿素、尿素、又は硫酸アンモニウムが好適である。溶媒は、群:ジクロロメタン(DCM)、トリクロロメタン、四塩化炭素、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、フェノール、ホルムアミド及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択できる。
【0076】
ステップivでの切断は、水性溶液、又はペプチドを溶解する有機溶媒中の塩基によって行われる。塩基は、群:LiOH、NaOH、KOH、アンモニウム(NH、NMe、NEt、NPr、NBu、HNEt(iPr)、HNMe、HNEt、HNPr、HNBu、HNC)水酸化物、ピペリジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、メチルヒドラジン及びO-メチルヒドロキシルアミンから選択できる。ペプチドを溶解する有機溶媒は、群:ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノールから選択できる。
【0077】
ステップiv)でのろ過は、好ましくは市販のシリンジ反応器又はフィルタシステムによって実施される。フィルタ孔サイズは10~100μmとする。
【0078】
いくつかの実施形態では、固体支持体からの全長ペプチドの切断後又は切断時、固体支持体Dは、スカベンジャー化合物の残基X-Lから切断され、固体支持体は再生される。
【0079】
本発明による方法のある特定の利点は、ヒドラゾン及びオキシム結合の可逆性にある。
【0080】
本明細書に記載のプロセスは、ヒドラゾン/オキシム結合の平衡性質、例えばアフィニティクロマトグラフィによって使用できる。不純物を洗い流すか又は洗浄し、塩基不安定性リンカーを切断することによって標的ペプチドを得た後、精製樹脂を再生でき、従って更なる精製のために利用可能となる。アルデヒド又はケト基が精製樹脂の表面に元々存在する場合、アルデヒド又はケトンを溶解した酸性水溶液を用いた洗浄により、アルデヒド又はケトンの官能性が回復する。ヒドラジン又はヒドロキシルアミン誘導体が精製樹脂の表面に元々存在する場合、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンを有する酸性水溶液での洗浄により、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンの官能性が回復する。アフィニティクロマトグラフィによるタンパク質精製と同一の材料、セファロース/アガロースが使用される。
【0081】
更に、このプロセスは、地球上で最もありふれた生体材料であり、従って低コストで利用可能である、セルロースに移行できる。
【0082】
タンパク質は標準的にはアフィニティクロマトグラフィによって精製され、この方法もまた、HPLC精製に比べて極めて安価かつ効率的であり、またスケーラブルである。低圧及び高付加密度により、アフィニティクロマトグラフィは、HPLCよりもはるかに大量の合成に好適である。
【0083】
本発明の第1の態様の副次的態様では、上述の目的は、リンカーとして全長ペプチドのN末端アミノ基と固相との間に化合物を形成する化合物によって、達成される。本発明の化合物は、一般式:
-L-X
を有し、ここでXは、
【化40】
から選択され、Y=O、Nであり、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、R及びRはH又はBであり、Bは、酸性条件下でアミンを提供する、アミノ基のための塩基不安定性ではない保護基である。
【0084】
ある好ましい実施形態では、Bは、群:Boc(-C=OOtBu)、トリチル(-C(Ph))、Mmt(-C(Ph)OMe)、DMT(-C(Ph)(COMe))、Cbz(-C=OOCHPh)、ベンジリデンアミン(=CPh)、フタルイミド(=(CO))、p-トルエンスルホンアミド(-SOMe)、ベンジルアミン(-CHPh)、アセトアミド(-COMe)、トリフルオロアセトアミド(-COCF)、Dde(1-(4,4-ジメチル2,6-ジオキソヘキサ-1-イリデン)-3-エチル)、及び1-(4,4-ジメチル2,6-ジオキソヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde)から選択される。
【0085】
当業者には、P. G. M. Wuts, T. W. Greene, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed., Wiley, 2007, Seite 696-926 から、更なる保護基が公知である。
【0086】
あるいは、X
【化41】
とすることもでき、R=Hであるか、又は長さが12炭素原子までの、飽和若しくは不飽和、分岐若しくは非分岐、置換若しくは非置換、脂肪族又は芳香族鎖であり、アルデヒド又はケト基は、当業者には公知の方法で保護でき:
【化42】
nは0~12、特に好ましくは0、1又は2とすることができる。
【0087】
保護されたアルデヒド又はケトンは、酸性条件下で切断され得る全てのアセタール-ケタール保護基とすることができる。概説を特に:P. G. M. Wuts, T. W. Greene, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed., Wiley, 2007, Seite 435-477に見ることができる。
【0088】

【化43】
とすることができ、Zは、異方性結合破壊において結合電子対を同伴する電子求引性脱離基である。ある特定の実施形態では、Zは群:F、Cl、Br、J、N、SR(RはRと同様に定義される)、OCF、OCHCF
【化44】
から選択される。
【0089】
従ってXは、全長ペプチドのアミノ基とカルバメートを形成することを目的とした、カルバメート前駆体を表す。
【0090】
Lは官能性リンカーであり、これはX及びXを分離し、塩基性条件下で(求核性)切断可能である。求核性切断が可能なリンカーの選択肢については、F. Guillier, D. Drain, M. Bradley, Linkers and Cleavage Strategies in Solid-Phase Organic Synthesis and Combinatorial Chemistry, Chem. Rev. 2000, 100, 2091-2157で見ることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、一般式X-L-Xの化合物は、その薬学的に許容可能な塩である。
【0092】
いくつかの実施形態では、一般式X-L-Xの化合物は、リンカーとして使用され、全長ペプチドのN末端アミノ基と固相との間に化合物を形成する。
【0093】
ある好ましい実施形態では、リンカーLは、一般構造a、b又はc:
【化45】
から選択され、Aは、長さが12炭素原子までの、飽和又は不飽和、分岐又は非分岐、置換又は非置換、脂肪族又は芳香族鎖であり、R=Hであり、0~12炭素原子のアルキル鎖、又は誘導効果若しくはメソメリーによって電子を求引できる基である。
【0094】
及びRは同一であっても異なっていてもよく、R、R=H、長さが1~12炭素原子のアルキル鎖、又はメソメリー若しくは誘導効果によって電子を求引できる基である。Rは、H、長さが1~12炭素原子のアルキル鎖、又はメソメリー若しくは誘導効果によって電子を求引できる基である。
【0095】
はRと同様である。
【0096】
更なる態様では、本発明の課題は、以下のステップを含むプロセスによって達成される:
i)全長ペプチドと固相(合成樹脂)上の末端配列との混合物を、一般式X-L-Xの化合物(スカベンジャー分子)と接触させるステップであって、X、X及びLは上述のように定義され、上記接触させるステップは、化合物X-L-XをXにおいて、全長ペプチドの遊離N末端アミノ基と接触させて反応させ、共有結合を形成するステップをもたらす、ステップ;
ii)酸によって固相(合成樹脂)からペプチドを切断し、スカベンジャー分子と共有結合した全長ペプチドと、固相ペプチド合成(SPPS)からのペプチドのアセチル化末端配列との混合物を得るステップ;
iii)例えばろ過によって、固相と液相とを分離するステップ:
iv)-78℃~0℃のエーテル中での沈殿によって非ペプチド不純物を除去するステップ。この場合、好ましくは、最初に装入されたエーテルに酸混合物を添加することによって、全てのペプチド材料を沈殿させ、有機不純物がエーテル中に残る。続いて、例えば遠心分離によって、エーテル溶液をペプチド混合物から分離する。ペプチド混合物が非晶質固体として得られる;
v)ステップiv)からの非晶質固体を、pH2~4、好ましくは2.5~3.5、特に好ましくは3の、少なくとも部分的に水性の緩衝液中に取り込むステップ。上記pHは、酸又は塩基の添加によって好適に調整される;
vi)v)からの混合物を、表面修飾固体支持体(精製樹脂)と接触させて、ヒドラゾン又はオキシム結合の形成によって、スカベンジャー分子によって修飾された(ステップi)全長ペプチドを共有結合させるステップ。特に有利には、アミン及び/又は酢酸を触媒として添加して、結合反応の動態を改善する;
vii)ヒドラゾン/オキシム結合によって固体支持体に結合していないペプチド末端配列を、有機溶媒、並びに/又は、好ましくは非共有結合ペプチドを溶解するために不安定化物質を添加した、水及び緩衝液で洗浄することによって除去するステップ;
viii)塩基性(求核性)条件下でリンカーLを切断することによって、全長ペプチドを固相から分離するステップ;
ix)固相をろ過によって所望の全長ペプチドから分離するステップ;並びに
x)固相(精製樹脂)を、ヒドラジン(H)及び/若しくは水酸化アンモニウムHNOH及び/若しくはアルデヒド及び/若しくはケトンでの処理、並びに/又は水での洗浄によって再生するステップ。
【0097】
ペプチドを合成樹脂から切断する(ステップii)ために酸を使用し、これは好ましくは、pks値が4未満の有機及び無機酸である。特に好適なのは、フッ素含有酸:トリフルオロ酢酸(TFA)、フッ化水素酸(HF)及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択された酸である。また、臭化水素酸(HBr)、塩酸(HCl)、亜硫酸(HSO)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)、メタンスルホン酸も好適である。
【0098】
ステップiii)における沈殿のために、沈殿温度において液体形態の有機溶媒が使用され、このような溶媒は当業者に公知である。好ましくは、エーテルの群からの有機溶媒が好ましくは、特には、ジエチルエーテル及び/又はメチルtert-ブチルエーテルが好ましい。また、沈殿温度において液体形態であるアルカンも使用でき、n-ヘキサン及び/又はn-ペンタンが特に好ましい。
【0099】
ステップv)で使用される好適な少なくとも部分的に水性の緩衝液は当業者に公知であり、即ち、pH2~5の緩衝能を有する緩衝液、即ちアニオン:クエン酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、ピバリン酸塩及びリン酸塩と、カチオン:ナトリウム、カリウム、アンモニア(NH、NMe、NEt、NPr、NBu、HNC)とを組み合わせた緩衝液である。
【0100】
pH値を調整するために、有機又は無機酸、好ましくはHCl、並びに塩基として好ましくはアルカリ及び/又はアルカリ土類水酸化物、特に好ましくは及び/又はKOHを使用できる。
【0101】
ペプチドの可溶性を高めるために、ステップv)において、系に水混和性有機溶媒を添加することが有利となり得、このような有機溶媒は当業者に公知であり、群:ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ホルムアミド、及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択できる。
【0102】
ステップvi)での不動化を促進するために、アミン及び/又は酢酸を水溶液に添加できる。ここでアミンは、群:ピリジン、ピペリジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン及びジメチルアミンから選択できる。
【0103】
ステップvi)での表面修飾固体支持体(精製樹脂)としては、合成及び天然ポリマーが好適である。表面修飾は、Xを用いてヒドラゾン又はオキシムと反応するようなものである。Xが:
【化46】
(Y=NH、O)である場合、表面修飾はアルデヒド又はケトン基におけるものとなり、これらのアルデヒド又はケトン基は対応するヒドラゾン又はオキシムと反応する。Xが一般式RC=Oのアルデヒド又はケトン官能基である場合、表面修飾は、NH-Y-R(R=固体支持体)基を有することになる。固体支持体として好ましいのは、表面修飾された天然又はバイオポリマーであり、特に好ましいのは、表面修飾された多糖である。最も好ましいのは、アルデヒド修飾セファロース/アガロース、及びセルロースの使用であり、X=NH-NH-C=OO-である。
【0104】
ステップvi(精製樹脂に結合した全長ペプチドの洗浄)では、水、水性洗浄剤、又は有機溶媒で洗浄できる。ステップvi)の水性洗浄溶液に対する不安定化物質としては:バリウム塩、塩酸グアニジウム、グアニジウムチオシアネート、チオシアネート、過塩素酸塩、ヨウ化物、ブタノール、フェノール、チオ尿素、尿素、硫酸アンモニウムが好適である。溶媒は、群:ジクロロメタン(DCM)、トリクロロメタン、四塩化炭素、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、フェノール、ホルムアミド及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択できる。
【0105】
ステップviiでの分離は、水性溶液、又はペプチドを溶解する有機溶媒中の塩基によって行われる。塩基は、群:LiOH、NaOH、KOH、アンモニア(NH、NMe、NEt、NPr、NBu、HNEt(iPr)、HNMe、HNEt、HNPr、HNBu、HNC)水酸化物、ピペリジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、メチルヒドラジン及びO-メチルヒドロキシルアミンから選択できる。ペプチドを溶解する有機溶媒は、群:ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノールから選択できる。ステップviii)でのろ過は、好ましくは市販のシリンジ反応器又はフィルタシステムによって実施される。フィルタ孔サイズは10~100μmとする。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、固相と液相との分離がろ過によって行われることを特徴とする。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップviにおいてアミン及び/又は酢酸を触媒として添加することを特徴とする。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップvの緩衝液のpH値が2.5~3.5、好ましくは3であることを特徴とする。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップviiにおける除去が、有機溶媒を用いて、並びに/又は、好ましくは非共有結合ペプチドを溶解するために不安定化物質を添加した水及び水性緩衝液を用いて、実施されることを特徴とする。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップviiiにおける固相からの全長ペプチドの分離が、塩基性(求核性)条件下におけるリンカーLの切断によって実施されることを特徴とする。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップiiにおける合成樹脂からのペプチドの分離が、pks値が4未満の酸を使用することを特徴とする。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップiiiにおける沈殿のために、群:エーテル、特に好ましくはジエチルエーテル及び/又はメチルtert-ブチルエーテル又はn-ヘキサン及び/又はn-ペンタンからの有機溶媒を使用することを特徴とする。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、ステップviの表面修飾固体支持体(精製樹脂)として、合成及び天然ポリマー、例えば表面修飾された多糖、特に好ましくはアルデヒド修飾セファロース/アガロース、又はセルロース及びX=NH-NH-C=OO-を使用することを特徴とする。
【0114】
本発明による方法のある特定の利点は、ヒドラゾン及びオキシム結合の可逆性にある。
【0115】
本明細書に記載のプロセスは、ヒドラゾン/オキシム結合の平衡性質、例えばアフィニティクロマトグラフィによって使用できる。不純物を洗い流すか又は洗浄し、塩基不安定性リンカーを切断することによって標的ペプチドを得た後、精製樹脂を再生でき、従って更なる精製のために利用可能となる。アルデヒド又はケト基が精製樹脂の表面に元々存在する場合、アルデヒド又はケトンを溶解した酸性水溶液を用いた洗浄により、アルデヒド又はケトンの官能性が回復する。ヒドラジン又はヒドロキシルアミン誘導体が精製樹脂の表面に元々存在する場合、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンを有する酸性水溶液での洗浄により、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンの官能性が回復する。アフィニティクロマトグラフィによるタンパク質精製と同一の材料、セファロース/アガロースが使用される。
【0116】
更に、このプロセスは、地球上で最もありふれた生体材料であり、従って低コストで利用可能である、セルロースに移行できる。
【0117】
タンパク質は標準的にはアフィニティクロマトグラフィによって精製され、この方法もまた、HPLC精製に比べて極めて安価かつ効率的であり、またスケーラブルである。低圧及び高付加密度により、アフィニティクロマトグラフィは、HPLCよりもはるかに大量の合成に好適である。
【0118】
これより、本教示の一般性を制限することなく、本発明について、図面を参照し、いくつかの実施例に基づいて説明する。
【0119】
一般的な合成スキーム
本発明によるスカベンジャー分子は、一般的な合成スキーム(1)に従って調製できる。このスキームによると、ヒドロキシルアミンとヒドラジンとの間のリンカー分子の求核性左側部分を変化させることができる。リンカーLの切断可能な部分も同様に変化させることができる。スルホンリンカーとフェノールエステルリンカー系とを区別できる。更に、リンカー系の右側のカルボネート部分は、異なる脱離基を有することができる。これにより、豊富な組み合わせの選択肢が得られる。構成要素L1及びL3は市販されており、L2はスキーム2に従って調製できる。
【化47】
スキーム1:モジュラー原理によるリンカー合成のための一般的な合成スキーム。a)i)CHCl2、ii)チオエーテル構成要素の場合、L1及びL2は、CHCl中のmCPBAによってスルホンに酸化される。DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド、DIEA:ジイソプロピルアミン、DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド、DIEA:ジイソプロピルエチルアミン、Boc:tert-ブチルオキシカルボニル。
【化48】
スキーム2:リンカー構成要素L1及びL2の合成
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1図1は、本発明によるプロセスを明確化するための、上記プロセスの概略図である。i)各結合の後にアセチル化を伴うSPPS、n回反復;ii)分子X1-L-X2の付加、iii)不動化;iv)洗浄;v)塩基性切断;vi)ろ過;vii)再生。1:精製樹脂、2:スカベンジャー分子、3:天然ペプチド(所望の産物)、4:末端配列、x=1~n、n:全長ペプチド、n-x:末端配列。
図2図2は、実施例1からのヒドラゾン結合の可逆性を実証するために、0.5体積%のNを有するペプチド(スキーム3における化合物3)の切断後の上清の測定による、278nmにおける吸光度を示す。Abs.:ペプチドが装入されたアルデヒド修飾アガロース支持体からの上清の、278nmにおける吸光度。t:0.5%ヒドラジン溶液の添加後の時間(分)。n:吸光度に基づいて算出された上清中のペプチドの量(nmol)。破線:式:y=0.142*x/(3.16+x)、R=92、t1/2=3.16分による、ヒル線形回帰。
図3図3は、実施例2からの天然化学ライゲーション(Nativer Chemischer Ligation:NCL)による、本発明によるペプチドの精製の際の個々の相のクロマトグラムを示す。クロマトグラム1は、24時間後の、NCLの反応混合物中の所望の産物(P)を示す。クロマトグラム2は、30分の不動化の後の上清を示す。クロマトグラム3は、30分の洗浄及び切断の後の、所望の産物(P)を示す。P:所望の産物のピーク。
図4AB図4ABは、実施例4からの固相ペプチド合成後の、本発明によるペプチド7~13の精製に関するクロマトグラムを示す。上清によって標識されたクロマトグラムは、本方法によって分離できる不純物を示す。FM=本発明によるスカベンジャー分子;(a)ペプチド7(Tau1);(b)ペプチド8(Tau2);(c)ペプチド9(GNRH)、(d)ペプチド10(マガイニン);(e)ペプチド11(Terts72Y);(f)ペプチド12(ビバルルジン);(g)ペプチド13(TAT)、(h)ペプチド14(研究用ペプチド)。上側の各図は合成後のペプチドを示し、下側の各図は精製後のペプチドを示す。
図4CD図4CDは、実施例4からの固相ペプチド合成後の、本発明によるペプチド7~13の精製に関するクロマトグラムを示す。上清によって標識されたクロマトグラムは、本方法によって分離できる不純物を示す。FM=本発明によるスカベンジャー分子;(a)ペプチド7(Tau1);(b)ペプチド8(Tau2);(c)ペプチド9(GNRH)、(d)ペプチド10(マガイニン);(e)ペプチド11(Terts72Y);(f)ペプチド12(ビバルルジン);(g)ペプチド13(TAT)、(h)ペプチド14(研究用ペプチド)。上側の各図は合成後のペプチドを示し、下側の各図は精製後のペプチドを示す。
図4EF図4EFは、実施例4からの固相ペプチド合成後の、本発明によるペプチド7~13の精製に関するクロマトグラムを示す。上清によって標識されたクロマトグラムは、本方法によって分離できる不純物を示す。FM=本発明によるスカベンジャー分子;(a)ペプチド7(Tau1);(b)ペプチド8(Tau2);(c)ペプチド9(GNRH)、(d)ペプチド10(マガイニン);(e)ペプチド11(Terts72Y);(f)ペプチド12(ビバルルジン);(g)ペプチド13(TAT)、(h)ペプチド14(研究用ペプチド)。上側の各図は合成後のペプチドを示し、下側の各図は精製後のペプチドを示す。
図4G図4Gは、実施例4からの固相ペプチド合成後の、本発明によるペプチド7~13の精製に関するクロマトグラムを示す。上清によって標識されたクロマトグラムは、本方法によって分離できる不純物を示す。FM=本発明によるスカベンジャー分子;(a)ペプチド7(Tau1);(b)ペプチド8(Tau2);(c)ペプチド9(GNRH)、(d)ペプチド10(マガイニン);(e)ペプチド11(Terts72Y);(f)ペプチド12(ビバルルジン);(g)ペプチド13(TAT)、(h)ペプチド14(研究用ペプチド)。上側の各図は合成後のペプチドを示し、下側の各図は精製後のペプチドを示す。
図4H図4Hは、実施例4からの固相ペプチド合成後の、本発明によるペプチド7~13の精製に関するクロマトグラムを示す。上清によって標識されたクロマトグラムは、本方法によって分離できる不純物を示す。FM=本発明によるスカベンジャー分子;(a)ペプチド7(Tau1);(b)ペプチド8(Tau2);(c)ペプチド9(GNRH)、(d)ペプチド10(マガイニン);(e)ペプチド11(Terts72Y);(f)ペプチド12(ビバルルジン);(g)ペプチド13(TAT)、(h)ペプチド14(研究用ペプチド)。上側の各図は合成後のペプチドを示し、下側の各図は精製後のペプチドを示す。
図5図5は、本発明によるプロセスを明確化するための、上記プロセスの概略図である。図5は、図1の代替的な図示である。
【発明を実施するための形態】
【0121】
配列番号1~10は、実施例1、2及び4からのペプチドを示す。
【実施例
【0122】
実施例1:ヒドラゾン結合/オキシム結合の可逆性の実証
ヒドラゾン結合を例として、アルデヒド修飾アガロースビーズへのペプチドの可逆的結合を以下に示す;その電子的類似性によって(A. Dirksen, P. Dawson, Bioconjugate Chem. 2008, 19, 2543-2548も参照のこと)、この結果はオキシム結合に転用可能である。平衡はヒドラジン(N)の添加によって制御できることが分かる。
【化49】
スキーム3:ペプチドと精製樹脂との間のヒドラゾン結合の可逆性
i)0.1M NHOAc、pH=4、0.1M PhNH、30分;ii)0.5%N、5mM TCEP;ペプチド配列(黒地に白文字)には、配列番号1が割り当てられる。
【0123】
ペプチド3をコンジュゲーション緩衝液(0.1M NHOAc、0.1M PhNH、pH=3)中で30分間、支持体1上に配置した(スキーム3)。続いてこれを水で洗浄して、上清を除去した。次に0.5体積%のヒドラジン水和物の溶液をビーズに添加して、278nmにおける上清(200μL)の吸光度を、(NanoDrop Technologie社のデバイス、ND-I000吸光光度計を用いて)ある時間間隔で測定した。10分後、ペプチドの80%を上清中で測定できることが分かった。更に50分後、ペプチドの86%を回復できた。非線形回帰により、3分の半減期が決定された。図2は、Nの添加後の上清の測定による、278nmにおける吸光度を示す。
【0124】
実施例2:天然化学ライゲーション(NCL)によるペプチドの精製
ペプチド材料と有機及び無機不純物との混合物を含有する複雑な系からのペプチドの精製を実施した。
【化50】
スキーム4:天然化学ライゲーションによるペプチドの精製
i)0.1M NaHPO、3M Gdn*HCl、20mM TCEP、50mM MesNa、1%(v/v)PhSH、pH=7、15時間;ii)セファロース樹脂、及び2倍の体積の0.1M NHOAcの添加、pH=2.5、pH=4、30分;iii)HO、EtOHでの洗浄;iv)N、4mM TCEP、30分。ペプチド配列には、配列番号1(黒地に白文字)及び配列番号2(白地の「YENDRIK」)が割り当てられる。
【0125】
精製対象の混合物は、NCLによって得られた(スキーム4)。この反応は、水性緩衝系で起こり、比較的大きなペプチド及びタンパク質ドメインを合成するために使用される。NCLの24時間の反応時間の後、粗混合物が得られ、これは主に、所望のライゲーション産物と、過剰に使用されたチオエステル(H-YENRIK-MESA)とを含有していた。これは図3のクロマトグラム(Waters社のUPLC-MS、Acquity H-Class PDA/QDa、Polaris C18 A 5μm 250/4カラム上)で確認できる。
【0126】
ライゲーション緩衝液(0.1M NaHPO、20mM TCEP、50mM MesNa、pH=7)に、2倍の体積のコンジュゲーション緩衝液に添加した。続いて修飾セファロースビーズを添加し、この2相系を30分間振盪した。セファロースゲルの上清を、接続された質量分析計において、UPLC-MSを用いて分析した(図3、クロマトグラム2)が、ライゲーション産物に割り当てることができる質量は見出だせなかった。しかしながら、産物の保持時間において吸収信号を見出すことができるため、これにより、HPLCを用いて分離できない不純物を除去できていることは明らかである。水並びに多少のエタノール及びアセトニトリルでの洗浄後、水中の0.5体積%のヒドラジン水和物を、ペプチドが装入されたセファロースビーズに添加し、30分後に上清を分析した結果、クロマトグラム3(図3)が得られた。これは、ペプチド(所望の産物)の、90%を超える高い純度を示している。
【0127】
実施例3:固相ペプチド合成によるペプチド混合物の例示的な精製
本発明による精製の反応スキーム(スキーム5)を以下に示す。
【化51】
スキーム5:固相ペプチド合成(SPPS)によるペプチド混合物の本発明による精製
i)各結合の後にアセチル化を伴うSPPS、n回反復;ii)分子2の付加;iii)TFAによる切断;iv)pH3~4のPh-NHの添加による精製樹脂上での不動化;v)水及び緩衝液による洗浄;vi)塩基5%NHOH;vii)HO/アセトン/TFA(49.5/49.5/1)の添加による精製樹脂の再生。1:精製樹脂、2:スカベンジャー分子、3:天然ペプチド(所望の産物)、4:末端配列、x=1~n、n:全長ペプチド、n-x:末端配列。
【化52】
スキーム6:アガロースビーズの官能化
i)NaOH、NaBH、HO、室温、o/n、18時間;ii)20mM NaIO、HO、室温、1時間。
【0128】
固相合成(SPPS)の後、スカベンジャー分子2(スキーム5)を、最後に結合したアミノ酸に適用する。ここでの重要な条件は、前のステップにおけるアセチル化が完了していることである。その後、全ての末端配列及びスカベンジャー分子修飾全長ペプチドを、樹脂によって切断する。続いて非ペプチド不純物をエーテル沈殿によって除去し、粗ペプチド混合物を、pH値が3~4の酢酸緩衝液に溶解し、触媒としての0.1Mアニリンに添加する。続いてこの溶液を、官能化セファロースビーズ1に添加する(スキーム5及び6)。この材料は、アフィニティクロマトグラフィのための材料として、タンパク質精製において用途を有する。このセファロースは、ペプチドに容易に浸透できるという利点を有する。セファロースは事前にアルデヒド修飾され(上記のスキームを参照のこと)、セファロースのアルデヒド修飾は:J. Guisan, Enzyme Microb. Technol. 1988, 10, S.375から公知である。
【0129】
ここでは、ヒドラジド官能基を有するスカベンジャー分子を支持する固体支持体上にペプチドのみが固定されている。理論的にアルデヒドとも反応できるアミンは、使用されるpH値においてプロトン化され、よってアルデヒドに係合するために十分な求核性を有しない。依然としてセファロース内にある末端配列は、水で洗い流すことができる。塩基性溶液、例えば水中のアンモニアでセファロースを処理することにより、スカベンジャー分子が崩壊し、全長ペプチドは溶液中に溶解する。続いてこの溶液を凍結乾燥して、アンモニアを除去できる。そしてペプチドを、純粋な形態で固体として得る。この方法の利点は、迅速な不動化、及び様々なペプチドに対する広範な適用可能性である。
【0130】
実施例4:精製樹脂の例示的な再生
スカベンジャー分子2によるペプチド精製(スキーム5)の後、1の元々のアルデヒド官能基は、ヒドラジンによってブロックされたままであり、新たな精製サイクルのための精製樹脂を提供するためには、精製樹脂を再生することによってアルデヒド官能基を回復しなければならない。これは、アルデヒド又はケトンの添加によって平衡をシフトさせることによって達成される。例示的な実現可能性を、以下のように示した。精製樹脂1を3つの等量のアリコート(I、II、III)に分割し、2つのアリコート(II、III)を、コンジュゲーション緩衝液中で30分間、ヒドラジンで処理した。次にこれを水で洗浄し、またアリコートIIIを、水、アセトン及びTFAの混合物(49.5:49.5:1)で7回洗浄した。その後、全てのアリコートをコンジュゲーション緩衝液中で14時間、FmocNで処理して、それぞれ水、DMF及び水で5回洗浄した。続いて、DMF/ピペリジン(20%)で2回、それぞれ4分間処理し、得られた上清中のフルオレンピペリジン付加物の、301nmでのUV吸収を測定した(Hellma社の1mLセミミクロ石英キュベット中の、BioRad社のSmartSpec(商標)Plus分光光度計)。未処理のアリコートは、27μmol/gの装入量を示し、再生していないアリコートIIは、18μmol/g(Iの67%)の装入量を有し、再生した樹脂は、25μmol/g(Iの93%)の装入密度を有していた。この実験は、精製樹脂の良好な再生を示している。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例5:ペプチド混合物の精製
ペプチドの精製のための本発明によるプロセスを、以下の異なる極性の7つのペプチドに適用した:H-TLADEVSASLAK-OH(配列番号3)(7);アルツハイマー関連Tauタンパク質の断片427-438、H-ATLADEVSASLAK-NH(配列番号4)(8);H-GIGKFLHSAKKFGKAFVGEIMNS-NH(配列番号6)マガイニン(10);H-YLFFYRKSV-NHTerts72Y(配列番号7)(11);H-FPRPGGGGNGDFEEIPEEYL-NH(配列番号8)ビバリルジン(12);H-GRKKRRQRRRPQ-NHTAT(配列番号9)(13)。
【0133】
粗ペプチド混合物をコンジュゲーション緩衝液に溶解し、30~60分にわたってセファロースビーズに適用した後、水及び水性中性溶液(4M尿素、1M一般塩)で洗浄して、アセチル化末端配列及び他の不純物を除去した。リンカー2の切断(スキーム7)を、水中の5%のアンモニア溶液を用いて20分にわたって実施した後、そのまま酢酸で中和し、可溶性を上昇させた。
【0134】
UPLC-MSを用いて、個々の相の純度を確認した。精製されていない(スカベンジャー分子FMを有しない)ペプチド及び精製されたペプチド、並びに不純物を含有する上清のクロマトグラムを図4に示す。7では85%(元は39%)、8では93%(元は39%)、9では80%(元は24%)、10では90%(元は23%)、11では87%(元は60%)、12では90%(元は40%)、13では95%(元は37%)のペプチド純度を得ることができた(図4を参照のこと)。
【0135】
【表2】
【0136】
塩基不安定性リンカー2の合成は、以下のスキーム7に従って実施した。
【化53】
スキーム7:塩基不安定性リンカーの合成
i)N*HO;ii)2.2当量のpNOPhCOCl;iii)mCPBA;n:ペプチド。
【0137】
材料及び方法
ペプチドの固相ペプチド合成及び精製
Intavis AG社のMultiPepRS-ペプチド自動合成装置を用いて、25μmolのバッチで自動固相ペプチド合成を実施した。ペプチドアミドの合成は、Rapp Polymer社のTentagel R RAM樹脂(0.2mmol・g-1)上で実施した。合成の開始前に、樹脂を3mlシリンジ反応器(Multisyntech社のPE反応器)に入れ、DME中で膨潤させた。特段明記されていない限り、当量の表示は、使用される樹脂の初期装入量を指す。
【0138】
Fmoc切断:一時的なFmoc-保護基の切断のために、樹脂を400μLのピペリジン/DMF(4:1)で、まず4分間、次に6分間処理し、次に800μLのDMFで5回洗浄し、その後、Fmoc-アミノ酸誘導体の結合を行った。
【0139】
Fmoc-アミノ酸誘導体の結合:DMF(0.3M)中の5当量のアミノ酸の溶液を、DMF(0.3M)中の4.5当量のHCTU及びDMF(0.6M)中の10当量のNMMを用いて室温で1分間インキュベートし、樹脂に添加した。30分の反応時間の後、樹脂を800μLのDMFで3回洗浄し、末端配列のブロックを継続した。
【0140】
末端配列のブロック:樹脂を400μlのACO/2,6-ルチジン/DMF(5:6:89)の溶液で5分間、1回処理し、続いてそれぞれ800μLのDMFで3回洗浄した。
【0141】
スカベンジャー分子の最終ステップ結合:固相ペプチド合成の最終ステップとして、スカベンジャー分子2を所望の標的ペプチドに結合させた。これを、DMF(0.3M)中の5当量のスカベンジャー分子2及びDMF(0.3M)中の5当量のオキシム、及びDMF(0.7M)中の12当量のDIPEAの溶液と混合した。60分の反応時間の後、それぞれ800μLのDMFで2回洗浄した。
【0142】
ポリマー支持体からの放出:樹脂に、96%のTFA、2%の水、2%のトリイソプロピルシランの2mLの溶液を添加した。標的配列中のチオール含有アミノ酸(システイン又はメチオニン)の場合、溶液には0.5%エタンジチオール及び0.5%チオアニソールの溶液が添加され、これによりTFAの量は1%減少した。合成樹脂をこの切断混合物と混合し、室温で2時間振盪した。次に切断溶液を回収し、樹脂をそれぞれ1mLのTFAで2回洗浄した。切断溶液を洗浄液と合わせ、50mlの低温ジエチルエーテル中で沈殿させた。続いてこの懸濁液を遠心分離し、有機上清を廃棄した。
【0143】
精製樹脂上での不動化:遠心分離により、粗沈殿物を3mlのコンジュゲーション緩衝液(0.1M NHOAc、0.1M アニリン、pH=3)中に取り出した。混合物が完全に溶解していない場合にはアセトニトリルを添加した。この溶液を、Multisyntech社の細孔サイズ25μmのフィルタ要素PEを備えた、bBraun社の6mlシリンジに入れ、このシリンジにグラム官能化セファロースを入れた。30~60分にわたって不動化を行った。続いて、純度MilliQの脱イオン水で5回、4M尿素溶液で5回、水で5回洗浄した。その後、所望のペプチドを、水中の5体積%のNHOH及び1体積%のメルカプトエタノールを用いて、樹脂から切断した。凍結乾燥により、所望のペプチドが白色のふわふわとした固体として得られた。
【0144】
スカベンジャー分子2(スキーム7の化合物2-化合物(25)に対応)の合成
tert-ブチルヒドラジンカルボキシレート5(スキーム7の化合物5)
ヒドラジン一水和物(80%、32.5g、520mmol)に、0℃のイソプロパノール(100ml)を、イソプロパノール(50ml)中のBocO(50.0g、230mmol)の溶液と共に滴下した。添加後、反応混合物は濁り、室温で2時間撹拌し続けた。溶媒を除去し、残渣をジクロロメタンに溶解し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。続いて溶媒を蒸発させ、残渣をヘキサンから再結晶化し、標記の化合物5(22.8g、75%)を無色の結晶として得た。Smp36-37°C Rf(EtOAc/Hexan 1:1)0.20。H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.16(s,1H,NH)、3.67(s,2H,NH)、1.42(s,9H,C(CH)。13C-NMR(75MHz,CDCl,TMS):δ158.3,77.2,28.5。分析データは文献データ(A. Bredihhin, U. Maeorg, Tetrahedron 2008, 64, 6788-6793)と一致する。
【0145】
ビス(4-ニトロフェニル)(チオビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(カルボネート)6(スキーム7の化合物6)
40mlの無水ジクロロメタン中の1.87ml(2.12g、15mmol)の2,2-チオジエタノールの溶液に、6.72(33mmol)の4-ニトロフェニルクロロホルメートを添加した。続いて氷冷下において、2.68ml(33mmol)の無水ピリジンを、激しく撹拌しながらゆっくりと滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応溶液に100mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、100mlのクロロホルムで3回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相を合わせ、真空下で蒸発させた。残渣を酢酸エチル中に取り、少量のシクロヘキサンを用いて産物を沈殿させた。ろ過後、5.43g(12mmol、80%)を白色固体として得た。融点:136.5℃、Rf(EtOAc/シクロヘキサン1:1)0.78。H NMR(300MHz,DMSO)δ8.30(d,J=9.2 Hz,2H,Ar-H)、7.55(d,J=9.3Hz,2H,Ar-H)、4.42(t,J=6.4Hz,2H,CH)、2.96(t,J=6.5Hz,2H,CH)。13C-NMR(75MHz,CDCl,TMS):δ155.22,151.93,145.17,125.41,122.56,67.85,29.63。
【0146】
2-[2-(1-((tert-ブチル)オキシ-カルボニル)オキシ-カルボニル)-ヒドラジル-エチルスルファニル]-エチル4-ニトロフェニルカルボネート7(スキーム7の化合物7)
1.97g(4.31mmol)のビス(4-ニトロフェニル)(チオビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(カルボネート)6を、まず20mlの乾燥ジクロロメタン中に導入し、0℃において1当量(0.58g、4.31mmol)のtert-ブチルヒドラジンカルボキシレート5と3当量(1.13ml、6.66mmol)のDIPEAとを、1時間にわたってゆっくりと滴下した。反応溶液を更に12時間撹拌した後、水で処理した。産物を100mlのジクロロメタンで3回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相を合わせ、真空下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィ(EtOAc/シクロヘキサン2:1)で精製して、1.03g(2.31mmol、53%)の透明な油を得た。Rf(EtOAc/シクロヘキサン1:1)0.20。H NMR(300MHz,CDCh)δ8.28(d,J=9.1Hz,2H,Ar-H)、7.39(d,J=9.1Hz,1H,Ar-H)、6.64(s,1H,NH)、6.33(s,1H,NH)、4.44(t,J=6.8Hz,2H,CH)、4.33(t,J=6.6Hz,2H,CH)、2.92(t,J=6.8Hz,2H,CH)、2.84(t,J=6.6Hz,2H,CH)、1.46(s,9H)。13C NMR(75MHz,CDCl)δ155.52,152.57,125.47,121.96,82.09,68.06,65.34,64.18,31.10,30.59,28.27,27.03。
【0147】
2-[2-(1-((tert-ブチル)オキシ-カルボニル)オキシ-カルボニル)-ヒドラジル-エチルスルホニル]-エチル4-ニトロフェニルカルボネート2(スキーム7の化合物2)
50mlのジクロロメタン中のチオエーテル7(0.52g、1.1mmol)の溶液に、室温において、m-CPBA77%(489g、2.2mmol)をゆっくりと添加した。12時間の撹拌後、反応混合物に1M NaHCO溶液を添加し、有機相を50mlのジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレータで除去すると、産物が、0.52mg(1.1mol、定量的)の白色非晶質固体として沈殿した。H NMR(300MHz,CDCl)δ8.29(d,J=9.2Hz,2H,Ar-H)、7.41(d,J=9.2Hz,2H,Ar-H)、6.89(s,1H,NH)、6.36(s,1H,NH)、4.74(t,J=5.9Hz,2H,CH)、4.63(t,J=5.3Hz,2H,CH)、3.54(t,J=5.9Hz,2H,CH)、3.45(t,J=5.5Hz,2H,CH)、1.45(s, 9H)。13C NMR(75MHz,CDCl)δ155.85, 155.8, 152.29, 145.79, 125.56, 122.00, 82.32, 62.25, 59.45, 54.01, 53.24, 28.23。
【0148】
式(14)、(15)、(17)、(18)、(19)の化合物の合成を、一般的な合成スキーム(スキーム1)に示されているモジュラー原理に従って実施した。
【0149】
式(14)の化合物を調製するための合成
N,N’-ビス-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノオキシアセチル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(BS2:X=O、R=Boc)
11mlの酢酸エチル/ジオキサン(1:1)中の市販のN,N’-ビス-Boc-アミノ-オキシ酢酸(1.00g、3.20mmol)の溶液に、0℃において、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.41g、3.20mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(0.67g、0.32mmol)を添加した。室温において、上記溶液を3時間撹拌し、この懸濁液をセライトでろ過して、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を真空下で乾燥させて濃縮し、100mlの酢酸エチルに再び溶解した。これを、5%NaHCO溶液、飽和NaCl溶液及び水(それぞれ100ml)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、真空下で蒸発させることによって、1.24g(3.20mmol)の産物を白色固体として得た。収量:1.24g(定量的);Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル、1:1)0.50;H NMR(300MHz,CDCl)δ4.86(s,2H)、2.85(s,4H)、1.53(s,18H)。
【0150】
N,N’-ビス-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノオキシアセチル-1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オールアミド(BS3:X=O、R=Boc)
BS2(X=O、R=Boc、1.00g、2.55mmol)を、25mlのジクロロメタン中において1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オール(0.38g、2.55mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、0.53ml、3.06mmol)と混合し、一晩撹拌した。これを、5%NaHCO溶液、飽和NaCl溶液及び水(それぞれ100ml)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、真空下で蒸発させることによって、1.04g(2.55mmol)の産物を白色固体として得た。収量:1.04g(定量的);Rf(CHCl/MeOH,98:2)0.35;H NMR(300MHz,CDCl)δ7.95(s,1H)、4.44(s,2H)、3.92‐3.82(m,1H)、3.53(qd,J=6.7,1.5Hz,2H)、2.83‐2.65(m,4H)、2.49(dd,J=13.7,8.7Hz,1H)、1.55(s,18H)、1.25(d,J=6.2Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ167.94, 150.57, 85.41, 65.98, 41.86, 38.81, 32.21, 28.19, 22.23。
【0151】
2,2-ジメチルプロパノイルオキシ-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルチオニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエートP’(X=O、R=Boc、R=OCpNO
ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(1.01g、4.95mmol)を、5mlの乾燥CHCl中のBS3(X=O、R=Boc)(1.52g、3.30mmol)の溶液に添加した。次に、氷冷下において乾燥ピリジン(0.40ml、4.95mmol)を滴下した。反応溶液を18時間にわたって撹拌した。沈殿物をろ過し、50mlのDCMで洗浄した。ろ液を飽和NHCl溶液(50ml)で洗浄し、水相を50mlのCHClで抽出した。MgSOでの乾燥後、合わせた有機相をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィ(シクロヘキサン/EtOAc、2:1)で精製した。収量:1.27g(67%);Rf(シクロヘキサン/EtOAc,1:1)0.44;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.27(d,J=9.2Hz,2H)、7.89(s,1H)、7.39(d,J=9.2Hz,2H)、5.00(dd,J=12.5,6.3Hz,1H)、4.43(s,2H)、3.53(dd,J=13.3,6.5Hz,1H)、2.86‐2.69(m,2H)、1.53(s,18H)、1.47(d,J=6.3Hz,3H)。
【0152】
2,2-ジメチルプロパノイルオキシ-[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(14))
21mlのジクロロメタン中のP’(X=O、R=Boc、R=OCpNO)(1.27g、2.15mmol)の溶液に、室温においてm-CPBA(0.96g、4.30mmol)をゆっくりと添加した。12時間の撹拌後、反応混合物を飽和NaHCO溶液(15ml)で2回洗浄し、有機相をMgSOで乾燥させた後、真空下で濃縮した。スルホンが白色固体として得られた。収量:1.26g(97%);Rf(シクロヘキサン/EtOAc,1:1)0.29;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.28(d,J=9.3Hz,1H)、8.15(t,J=5.8Hz,1H)、7.41(d,J=9.3Hz,1H)、5.48‐5.39(m, 1H)、4.44(s,1H)、3.83(dd,J=6.2,4.2Hz,1H)、3.56(dd,J=14.9,8.3Hz,1H)、3.37(t,J=6.5Hz,1H)、3.27(dd,J=14.9,3.9Hz,1H)、1.57(d,J=6.4Hz,1H)、1.54(s,7H)。13C NMR(75MHz,CDCl)δ168.58, 155.42, 151.58, 150.52, 145.67, 125.46, 122.04, 85.60, 77.16, 76.62, 70.63, 58.19, 53.67, 33.07, 28.16, 20.21;ESI-MS:(計算値MNa+:628.16g/mol,実測値:628.17m/z)。
【0153】
式(18)の化合物を調製するための合成
((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシン(BS1X=NH、R=H)
NaOH(0.70g、17.4mmol)及びBoc-ヒドラジン(1.17g、8.7mmol)のメタノール溶液(10ml)に、0℃においてBrom酢酸(1.48g、10.4mmol)を添加した。この溶液を5時間還流した。続いてMeOHを除去し、50mlの水を添加した。水相を酢酸エチル(50ml)で3回抽出した。続いて水相をクエン酸でpH2とし、50mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。収量:0.85g(51%)白色固体;Rf(CHCl/MeOH,8:2)0.15。H NMR(300MHz,DMSO)δ8.55(s,2H)、8.17(s,2H)、3.40(s,2H)、1.37(s,9H);ESI-MS:(計算値MH+:191.10 g/mol,実測値:191.33m/z)。
【0154】
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシン(BS1X=NBoc、R=H)
104mlのジオキサン/HO(1:1)中の((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシン(5.00g、26.0mmol)及びNaOH(1.57g、39.04mmol)の溶液に、固体のBocO(5.74g、26.03mmol)を添加した。この溶液を室温で18時間にわたって一晩撹拌した後、減圧下でジオキサンを除去した。水性残渣を100mlの飽和NaHCO溶液で処理し、100mlのEtOで2回洗浄した。水相をクエン酸でpH2にした。白色懸濁液を150mlの酢酸エチルで3回抽出した。MgSOでの乾燥後、溶媒を除去することで、白色固体を得た。収量:7.56g(定量的);Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.75;H NMR(300MHz,DMSO)δ12.34(s,1H)、9.24(s,1H)、3.56(s,2H)、1.46‐1.32(m,18H)。
【0155】
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシニル-N-ヒドロキシスクシンイミド(BS2X=NBoc、R=H)
15mlの酢酸エチル/ジオキサン(1:1)中のN-(tert-ブトキシカルボニル)-N-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシン(1.36g、4.45mmol)の溶液に、0℃において、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.52g、4.45mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.93g、4.45mmol)を添加した。この溶液を室温において15時間にわたって撹拌した。続いて、懸濁液をセライトでろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を真空下で乾燥させて濃縮し、100mlの酢酸エチルに再び溶解した。これを、5%NaHCO溶液、飽和NaCl溶液及び水(それぞれ100ml)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて、1.24g(3.20mmol)の産物を白色泡状物として得た。収量:1.51g(88%);Rf (シクロヘキサン/酢酸エチル,1:1)0.45;H NMR(300MHz,CDCl)δ4.67(s,1H)、4.19(s,2H)、2.87(s, 4H)、1.49(m,18H)。
【0156】
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)グリシニル-1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オールアミド(BS3:X=NBoc、R=H)
BS2(X=NBoc、R=H、0.36g、0.92mmol)を、10mlのジクロロメタン中において1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オール(0.13g、0.92mmol)及びDIPEA(0.18ml、1.01mmol)と混合し、一晩撹拌した。これを、5%NaHCO溶液、飽和NaCl溶液及び水(それぞれ100ml)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて、0.27g(0.65mmol)の産物を白色泡状物として得た。収量:0.27g(定量的);Rf(CHCl/MeOH,98:2)0.36;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.34(s,1H)、6.66(s,1H)、4.05(s,2H)、3.90‐3.81(m,1H)、3.49(dd,J=10.4,4.0Hz,2H)、2.78‐2.63(m,3H)、2.47(dd,J=13.7,8.7Hz,1H)、1.49(s,9H)、1.46(s,9H)、1.23(d,J=6.2Hz,3H)。
【0157】
[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-2-[2-[2-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシプロピルチオニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエートP’(X=O、R=Boc、R=ONO
N,N-ジスクシンイミジルカルボネート(0.19g、0.72mmol)を、5mlの乾燥CHCl中のBS3(X=NBoc、R=H)(0.25g、0.72mmol)の溶液に添加した。次に、氷冷下において乾燥ピリジン(0.06ml、0.73mmol)を滴下した。反応溶液を17時間撹拌した。この溶液に50mlのDCMを添加した。有機相を10%クエン酸溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させた。合わせた有機相をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、19:1)で精製した。収量:1.27g(67%);Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.60;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.53(d,J=95.5Hz,1H)、7.07(s,J=9.0Hz,1H)、4.01(s,2H)、3.82(ddd,J=8.2,6.1,3.9Hz,1H)、3.41(d,J=6.1Hz,4H)、2.67(dt,J=13.2,9.3Hz,4H)、2.46(dd,J=13.7,8.2Hz,2H)、1.44(s,9H)、1.41(s,9H)、1.18(t,J=6.8Hz,3H)。13C NMR(75MHz,CDCl)δ169.71, 162.47, 154.43, 77.16, 66.04, 50.53, 41.57, 39.13, 32.22, 28.18, 28.12, 25.57, 22.06, 18.88。
【0158】
[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)-2-[2-[2-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシカルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エチル]ヒドラジノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(18))
5mlのジクロロメタン中のP’(X=NBoc、R=H、R=ONO)(0.10g、0.18mmol)の溶液を、室温において、m-CPBA(0.81g、0.36mmol)にゆっくりと添加した。14時間の撹拌後、反応混合物を、飽和NaCl溶液中の5%NaHCO(それぞれ33ml)で3回洗浄し、有機相をMgSOで乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、スルホンを白色非晶質固体として得た。収量:0.08g(76%);Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.45H NMR(300MHz,CDCl)δ8.48(s,1H)、6.95(s,1H)、4.39(dt,J=15.7,7.8Hz,1H)、4.06(s,2H)、3.73(d,J=4.3Hz,2H)、3.48‐3.17(m,4H)、3.41(d,J=6.1Hz,2H)、3.02(d,J=13.2Hz,1H)、2.85‐2.68(m,3H)、1.46(s,9H)、1.43(s,9H)、1.30(d,J=6.4Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ170.18, 167.99, 154.71, 133.30, 131.86, 130.13, 129.83, 128.20, 77.16, 62.88, 53.37, 33.53, 28.23, 28.16, 25.57, 23.25。ESI-MS:(計算値MNa:603.19g/mol,実測値:603.06m/z)。
【0159】
式(15)の化合物を調製するための合成
N-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノオキシアセチル-1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オールアミド(BS3:X=O、R=H)
市販の2-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)オキシ)酢酸(1.00g、4.73mmol)を、乾燥CHCN(47ml)中に溶解した。N-ヒドロキシスクシンイミド(0.66g、5.68mmol)及びDCC(1.18g、5.68mmol)を溶液に順次添加し、得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。続いて、3mlの乾燥CHCN中の1-((2-アミノエチル)チオ)プロパン-2-オール(0.85g、5.68mmol)の溶液を添加し、得られた反応混合物を室温で18時間撹拌した。CHCNを除去し、50mlの酢酸エチル中の濃縮物を得た。これを、10%クエン酸溶液(50ml)及び飽和NaCl溶液で洗浄した。得られた残渣を、移動相としてのCHCl中においてMeOHの段階勾配(1~8%)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。所望の構成要素を、白色の泡状物として得た。収量:0.26g(16%);Rf(CHCl/MeOH, 9:1)0.50;H NMR(300MHz,アセトン)δ8.14(s,1H)、4.22(s,2H)、3.85(t,J=1.6Hz,1H)、3.53‐3.38(m,2H)、2.72‐2.66(m,2H)、2.62‐2.58(m,2H)、1.46(s,9H)、1.19(d,J=6.1Hz,3H)。
【0160】
[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルチオニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエートP’(X=O、R=H、R=OCpNO
ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(0.276g、0.90mmol)を、5mlの乾燥CHCl中のBS3(X=O、R=H)(0.24g、0.75mmol)の溶液に添加した。次に、氷冷下において乾燥ピリジン(0.07ml、0.75mmol)を滴下した。反応溶液を18時間にわたって撹拌した。沈殿物をろ過し、50mlのDCMで洗浄した。ろ液を飽和NHCl溶液(50ml)で洗浄し、水相を50mlのCHClで抽出した。MgSOでの乾燥後、合わせた有機相をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィ(シクロヘキサン/EtOAc、2:1)で精製した。収量:0.27g(96%);Rf(シクロヘキサン/EtOAc,1:1)0.34;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.35(s,1H)、8.27(d,J=9.1Hz,2H)、7.58(s,1H)、7.40(d,J=9.1Hz,2H)、5.06‐4.94(m,1H)、4.32(s,2H)、3.54(d,J=6.3Hz,2H)、2.87‐2.73(m,4H)、1.48(d,J=4.1Hz,3H)、1.47(s,Hz,9H)。
【0161】
[2-[2-[2-(4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシプロピルスルホニル]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]アミノ]2,2-ジメチルプロパノエート(式(15))
5mlのジクロロメタン中のP’(X=O、R=Boc、R=OCpNO)(0.30g、0.59mmol)の溶液に、室温においてm-CPBA(0.263g、1.18mmol)をゆっくりと添加した。12時間の撹拌後、反応混合物を飽和NaHCO溶液(15ml)で2回洗浄し、有機相を、MgSOでの乾燥後に真空下で濃縮した。スルホンが白色泡状物として得られた。
収量:0.250g(84%);Rf(シクロヘキサン/EtOAc,1:1)0.05;1H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.51(s,1H)、8.28(d,J=9.2Hz,2H)、7.64(s,1H)、7.41(d,J=9.2Hz,3H)、5.47‐5.35(m,1H)、4.33(s,2H)、3.88‐3.79(m,2H)、3.57(dd,J=14.9,8.3Hz,1H)、3.41‐3.34(m,2H)、3.28(dd,J=14.8,3.8Hz,1H)、1.57(d,J=6.4Hz,3H)、1.48(s,9H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ168.58, 155.42, 151.58, 150.52, 145.67, 125.46, 122.04, 85.60, 77.16, 76.62, 70.63, 58.19, 53.67, 33.07, 28.16, 20.21;ESI-MS:(計算値MH+:528.16g/mol,実測値:528.15m/z)。
【0162】
式(16)の化合物を調製するための合成
4-カルボキシ-2-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム
4-スルファニル安息香酸を、5mlの発煙HNO及び10mlのHSO(95%)中に溶解した。反応溶液を90℃で一晩撹拌した後、100mlの水で希釈した。0℃において、この酸をNaCOの添加により中和した。HClの添加により、混合物をpH値が2になるまで酸性化した。水を除去し、残渣をEtOH/iPrOH(1:1)で抽出した。その後有機溶媒を除去して、産物を褐色固体として得た。収量:6.86g(61%);Rf(CHCl/MeOH/AcOH,7:2:1)0.05;H NMR(300MHz,MeOD)δ8.23(d,J=1.6Hz,1H)、8.17(d,J=1.6Hz,1H)、8.16(s,1H);ESI-MS(陰性):(計算値(M-Na):245.97g/mol,実測値:296.00m/z)。
【0163】
4-(2-(tert-ブトキシカルボニル)ヒドラジン-1-カルボニル)-2-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム
t-ブチルカルバゼート(1.91g、14.27mmol)及び4-カルボキシ-2-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(3.84g、14.27mmol)、並びに1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(2.76g、14.27mmol)の溶液を、60mlのメタノール/HO(1:1)中で、室温において一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、9:1)で精製した。収量:6.86g(61%);Rf(CHCl/MeOH/AcOH,7:2:1)0.30;H NMR(300MHz,DMSO)δ10.46(s,1H)、9.04(s,1H)、8.01(d,J=1.5Hz,1H)、7.99(d,J=1.5Hz,1H)、7.96(s,1H)、1.43(s,9H);ESI-MS(陰性):(計算値(M-Na):360.05g/mol,実測値:360.00m/z)。
【0164】
tert-ブチル2-(4-(クロロスルホニル)-3-ニトロベンゾイル)ヒドラジン-1-カルボキシレート
4-(2-(tert-ブトキシカルボニル)ヒドラジン-1-カルボニル)-2-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.55g、1.42mmol)及び18-クラウン-6エーテル(0.02g、0.07mmol)の溶液に、乾燥アセトン中の塩化シアヌル(0.26g、1.42mmol)を添加した。溶液を18時間還流した。冷却後、反応混合物をセライトでろ過し、カラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、9:1)で精製した。収量:0.23g(43%);H NMR(300MHz,CDCl)δ10.18(s,2H)、8.22(d,J=0.5Hz,1H)、8.22(dd,J=1.7,0.5Hz,1H)、8.18(d,J=1.6Hz,1H)、8.15(d,J=0.6Hz,1H)、1.23(s,9H);ESI-MS(陰性):(計算値(M):379.02g/mol,実測値:378.92m/z)。
【0165】
式(20)の化合物を調製するための合成
6-アジドイソベンゾフラン-1(3H)-オン
1M HCl(28ml)中の6-アミノフタリド(2.50g、15.92mmol)の透明な溶液を0℃に冷却し、3mlのNaNO(1.66g、13.89mmol)水溶液を滴下した。得られた懸濁液を0℃で10分間撹拌し、10mlのNaN(2.09g、31.85mmol)の溶液を0℃で滴下した(激しいHNガスの発生、発泡)。泡状懸濁液を0℃で1時間撹拌した。沈殿物を吸引ろ過し、300mlの水で数回洗浄した。褐色固体を粉砕し、乾燥炉内で一晩乾燥させた。次にこれを300mlのCHClに溶解し、ろ過した。真空下で溶媒をろ液から除去して、淡褐色固体を得た。収量:2.53g(91%);Rf(CHCl/MeOH/AcOH,7:2:1)0.30;H NMR(300MHz,CDCl)δ7.58(d,J=1.9Hz,1H)、7.47(dd,J=8.2,0.7Hz,1H)、7.31(dd,J=8.2,2.1Hz,1H)、5.31(s,2H);ESI-MS:(計算値(MH):176.05g/mol,実測値:176.23m/z)。
【0166】
5-アジド-2-(ヒドロキシメチル)ベンゾヒドラジド
6-アジドイソベンゾフラン-1(3H)-オン(0.50g、2.83mmol)を6mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、ヒドラジン水和物(0.71ml、14.13mmol)を添加し、溶液を70℃で3時間撹拌した。DMF及びヒドラジン水和物を真空下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、9:1)で精製して、淡黄色の粉体を得た。収量:0.10g(17%)。Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.53;H NMR(300MHz,DMSO)δ9.62(s,1H)、7.57(d,J=8.3Hz,1H)、7.20(dd,J=8.3,2.4Hz,1H)、7.09(d,J=2.4Hz,1H)、5.31‐5.21(m,1H)、4.57(d,J=5.7Hz,2H)、4.50(s,2H)、3.33(s,2H)、ESI-MS:(計算値(MH):208.08g/mol,実測値:207.90 m/z)、(計算値(MNa):230.07 g/mol,実測値:230.01m/z)。
【0167】
tert-ブチル2-(5-アジド-2-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル)ヒドラジン-1-カルボキシレート
5-アジド-2-(ヒドロキシメチル)ベンゾヒドラジド(0.10g、0.48mmol)をジオキサン/EtOAc/iPrOH(1:1:1)10ml中に溶解し、Boc無水物(0.105g、0.48mmol)及びDIPEA(0.10ml、0.57mmol)を添加した。溶液を室温で12時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を50mlのCHCl中に取り、10%クエン酸で2回洗浄した(それぞれ50ml)。MgSOで乾燥させ、有機溶媒を除去した後、黄色の油を得た。収量:0.10g(67%)。Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.75;H NMR(300MHz,DMSO)δ10.06(s,1H)、9.04(d,J=30.3Hz,1H)、7.69‐7.58(m,1H)、7.25(dd,J=8.3,2.4Hz,1H)、7.10(d,J=1.3Hz,1H)、5.28(t,J=5.7Hz,1H)、4.62(d,J=5.6Hz,2H)、1.43(s,9H);ESI-MS:(計算値(MNa):330.12g/mol,実測値:330.29m/z)。
【0168】
tert-ブチル2-(5-アジド-2-(((((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)メチル)ベンゾイル)ヒドラジン-1-カルボキシレート
N,N-ジスクシンイミジルカルボネート(0.105g、0.41mmol)を、5mlの乾燥ジメチルホルムアミド中のtert-ブチル2-(5-アジド-2-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル)ヒドラジン-1-カルボキシレート(0.105g、0.34mmol)の溶液に添加した。次に乾燥ピリジン(0.03ml、0.41mmol)を滴下した。反応溶液を17時間、室温で撹拌した。溶媒を真空下で除去した。この溶液に50mlのDCMを添加した。有機相を、10%クエン酸溶液で洗浄し(2×50ml)、MgSOで乾燥させた。合わせた有機相をロータリーエバポレータで蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、19:1)で精製した。収量:0.06g(40%)。Rf(CHCl/MeOH,19:1)0.45;H NMR(300MHz,DMSO)δ10.06(s,J=10.9Hz,1H)、8.99(s,J=8.4Hz,1H)、7.62(d,J=8.3Hz,1H)、7.53(s,1H)、7.25(dd,J=8.3,2.4Hz,1H)、5.76(s,2H)、3.34(s,4H)、1.43(s,9H)、ESI-MS:(計算値(MNa):471.12g/mol,実測値:471.25m/z)。
【0169】
式(21)の化合物を調製するための合成
6-メトキシイソベンゾフラン-1(3H)-オン
3-メトキシ安息香酸(10.00g、65.07mmol)、37%ホルマリン溶液(7.5ml、80mmol)、37%HCl(8.00ml)及び75mlの100%酢酸の混合物を、18時間加熱還流した。冷却後、溶液が透明であれば撹拌器をオフにし、この温度で14時間静置する。酢酸を80℃において空気流中で除去した。残滓を150mlのトルエン中に取り、40mlに濃縮した。この80℃の高温溶液を、40mlずつの20%NaCO溶液(3回)、及び40mlの水で洗浄した。3mlのモルホリンを添加した後、有機相を80℃で2時間撹拌し、続いて50mlずつの10%HSO(3回)及び水で洗浄した。産物の結晶化のために、混合物を25mlまで濃縮し、混合物を撹拌した。ろ過によって、白色結晶の形態で産物を得た。収量:3.52g(33%)。H NMR(300MHz,DMSO)δ7.58(dd,J=8.3,0.7Hz,1H)、7.35(dd,J=8.3,2.4Hz,1H)、7.31(d,J=2.2Hz,1H)、5.34(s,2H)、3.84(s,3H)。
【0170】
6-ヒドロキシイソベンゾフラン-1(3H)-オン
窒素雰囲気下において、6-メトキシイソベンゾフラン-1(3H)オン(3.00g、18.09mmol)を、無水ジクロロメタン(100ml)中に溶解した。得られた混合物を磁気撹拌し、氷浴中で10分間冷却した。続いてBBr(3.46ml、36.18mmol)を滴下した。その後、反応混合物を室温まで加熱し、12時間撹拌した。次に5mlの水を添加し、混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して、白色固体を得た。収量:1.52g(56%)。H NMR(300MHz,DMSO)δ10.08(s,1H)、7.47(dd,J=8.3,0.6Hz,1H)、7.19(d,J=2.3Hz,1H)、7.16(d,J=2.3Hz,1H)、7.10(d,J=2.0Hz,1H)、5.28(s,2H);ESI-MS:(計算値(MH):151.04g/mol,実測値:151.05m/z)。
【0171】
5-アジド-2-(ヒドロキシメチル)ベンゾヒドラジド
6-ヒドロキシイソベンゾフラン-1(3H)-オン(0.43g、2.83mmol)を、6mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、ヒドラジン水和物(1.42ml、28.26mmol)を添加し、この溶液を100℃で3時間撹拌した。DMF及びヒドラジン水和物を真空下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(CHCl/MeOH、9:1)で精製して、淡黄色の粉体を得た。収量:0.10g(17%)。Rf(CHCl/MeOH,9:1)0.40;H NMR(300MHz,DMSO)δ10.08(s,1H)、9.73(s,1H)、7.47(d,J=8.3Hz,1H)、7.18(dd,J=8.3,2.3Hz,1H)、7.10(d,J=2.3Hz,1H)、4.57(d,J=5.7Hz,2H、4.50(s,2H)、3.33(s,2H)、ESI-MS:(計算値(MH):183.08g/mol,実測値:183.15m/z)。
【0172】
スカベンジャー分子(14)を用いた例示的な精製
更なる例示的なペプチド14(AKADEVSLHKWYG;配列番号10)及び式(14)のリンカー(スカベンジャー分子14)を用いて、市販のアルデヒド修飾アガロース(ABT製の高密度グリオキサール、6BCT)上で精製を実施した。
【0173】
ペプチドの固相ペプチド合成及び精製
Intavis AG社のMultiPepRS-ペプチド自動合成装置を用いて、100μmolのバッチで自動固相ペプチド合成を実施した。合成は、Carl Roth社のWang樹脂(1.0~1.4mmol/g)上で実施した。合成の開始前に、適量のペプチド合成樹脂を5mlシリンジ反応器(Intavis社のPE反応器)中で計量し、DME中で膨潤させた。特段明記されていない限り、アミノ酸の当量の計量は、使用される樹脂の初期装入量を指す。
【0174】
Fmoc切断:
一時的なFmoc-保護基の切断のために、樹脂を1500μLのピペリジン/DMF(4:1)で、まず5分間、次に8分間処理し、次に10.2mLのDMFで7回洗浄し、その後、Fmoc-アミノ酸誘導体の結合を行った。
【0175】
Fmoc-アミノ酸誘導体の結合:
DMF(0.3M)中の5当量のアミノ酸の溶液を、DMF(0.3M)中の4.5当量のHCTU及びDMF(0.6M)中の10当量のNMMを用いて室温で1分間インキュベートし、樹脂に添加した。30分の反応時間の後、樹脂を10.2mLのDMFで3回洗浄し、末端配列のブロックを継続した。
【0176】
末端配列のブロック:
樹脂を1.5mLのACO/2,6-ルチジン/DMF(5:6:89)の溶液で5分間、2回処理し、続いてそれぞれ10.2mLのDMFで7回洗浄した。
【0177】
スカベンジャー分子の最終ステップ結合:
固相ペプチド合成の最終ステップとして、スカベンジャー分子(14)を所望の標的ペプチド(50μmol)に結合させた。これを、2当量のスカベンジャー分子2、DMF(0.4M)中の6当量のHOBt、及びDMF(0.3M)中の4当量のDIPEAの溶液と混合した。60分の反応時間の後、それぞれ2mLのDMFで2回、2mLのCHClで2回、そして最後に2mLのDMFで2回洗浄した。
【0178】
全長ペプチドのアセチル化の代替的な最終ステップ:
末端配列のブロックの手順と同様に、対照試料としての全長ペプチドも同様にアセチル化(ペプチド-アセチル化)した。
【0179】
ポリマー支持体からの放出:
樹脂を、95%のTFA、2.5%の水及び2.5%のトリイソプロピルシランの3mLの溶液で処理した。合成樹脂をこの切断混合物と混合し、室温で3時間振盪した。次に切断溶液を回収し、樹脂をそれぞれ1mLのTFAで2回洗浄した。切断溶液を洗浄液と合わせ、アルゴン流によって約1mLの体積まで蒸発させた。続いて10mLの低温ジエチルエーテル中で沈殿させた後、沈殿物を遠心分離して除去した。上清を廃棄した。図4H(上)に、純度45%の、リンカーを含まないペプチドのクロマトグラムを示す。
【0180】
精製
粗沈殿物(理論上の収量約5μmol)をコンジュゲーション緩衝液(0.1M NHOAc、0.1Mアニリン、pH=3.8)に取った。混合物が完全に溶解しなかった場合、アセトニトリルを添加した。25μmのPEプレフィルタを備えた3mLシリンジ反応器に400μL(~160mg)のアガロースを加えた。次に精製樹脂を、コンジュゲーション緩衝液(0.1M NHOAc、0.05Mアニリン、pH=3.8)で3回洗浄することによって、調整した。続いてペプチド溶液を精製樹脂に添加した。その後、60分間の不動化を実施した。続いてこれをコンジュゲーション緩衝液で3回、5M尿素溶液で3回、70%エタノールで3回、そして最後に水で5回洗浄した。続いてこの混合物を、水中の5体積%NHOHを用いて塩基性とし、コンジュゲートしたペプチドを樹脂から切断した。凍結乾燥により、ペプチドが白色のふわふわとした固体として得られた。
【0181】
不動化の実証
不動化をはっきりと実証するために、修飾アガロース及び純アガロース(ABT製6%BアガロースビーズSTANDARD)上の、この実験におけるアセチル化ペプチドと、リンカーが結合したペプチドとを、PECで精製した。リンカー切断後の溶出液を、それぞれUPLC-UVを用いて測定した。その結果、切断後に、修飾された界面活性剤樹脂上の、リンカーが結合したペプチドのみにおいて、産物の質量による有意なシグナルが検出された。更に、純アガロースを用いた場合でも、修飾アガロースの場合と比較して約2.3%の産物が得られることが分かった。
【0182】
【表3】
【0183】
精製樹脂の再生
スカベンジャー分子(14)によるペプチド精製の後、1の元々のアルデヒド官能基は、ヒドロキシル修飾スカベンジャー分子によってブロックされたままである。新たな精製サイクルのための精製樹脂を提供するためには、精製樹脂を再生することによってアルデヒド官能基を回復しなければならない。これは、アルデヒド又はケトンの添加によって平衡をシフトさせることによって達成される。反復精製サイクルのための再生は、以下のように示された:
【0184】
ペプチド14の2つの精製を同時に実施した(精製I)。続いて再生のために、精製樹脂を、水、アセトン及びTFA(ケトン、49.95:49.95:0.1)、又は水、アセトアルデヒド及びTFA(アルデヒド、89.95:9.95:0.1)の混合物でそれぞれ4回、及び水で5回洗浄した。その後、調整を含む精製を、上述の手順と同様に実施した。再生及び精製を合計3回実施し(精製II~IV)、凍結乾燥産物をそれぞれ同体積の水、アセトニトリル及びTFA(69.9:29.9:1)に取り、UPLC-MSで測定した。
【0185】
【表4】
【0186】
その結果、いずれの場合においても樹脂は再生可能であることが分かった。ケトンを用いた再生は、第3サイクル(精製(IV)においてのみ有意に低下する。対照的に、アルデヒド再生における精製能力は、初期能力の約1/4のままであったが、第2サイクル(精製III)の後にこの値まで降下した。両方の実験において、約60%の純度を達成でき、これは再生サイクルにわたって一定のまま維持された(精製I、アルデヒド、図4H(下側)の例示的なクロマトグラム)。


図1
図2
図3
図4AB
図4CD
図4EF
図4G
図4H
図5
【配列表】
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