(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】抗癌剤としてのホスホルアミデートヌクレオシド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07H 19/207 20060101AFI20220216BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C07H19/207 CSP
A61K31/7076
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2018563085
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(86)【国際出願番号】 GB2017051549
(87)【国際公開番号】W WO2017207986
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-07
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517395747
【氏名又は名称】ニューカナ パブリック リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ミカエラ サーピ
(72)【発明者】
【氏名】マグダレナ スルサルチク
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マクギガン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-533191(JP,A)
【文献】国際公開第2015/181624(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0206640(US,A1)
【文献】国際公開第02/008446(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/207
A61K 31/7076
A61P 35/00
A61P 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
、
【化2】
、
【化3】
、
【化4】
、
【化5】
、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
【化10】
、
【化11】
、
【化12】
、
【化13】
、及び
【化14】
からなる群から選ばれる化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項2】
【化15】
及び
【化16】
からなる群から選ばれる請求項1の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項3】
【化17】
である請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項4】
【化18】
である請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項5】
【化19】
、
【化20】
、
【化21】
、
【化22】
、
【化23】
、
【化24】
、
【化25】
、
【化26】
、
【化27】
、
【化28】
、
【化29】
、及び
【化30】
からなる群から選ばれる請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項6】
【化31】
及び
【化32】
からなる群から選ばれる請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項7】
医療での使用のための請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
癌の治療での使用のための請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
癌が、急性骨髄性白血病、組織球性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、前骨髄球性白血病、マントル細胞リンパ腫、赤白血病、非ホジキンリンパ腫、乳腺上皮腺癌、及びリンパ性白血病からなる群から選ばれるものである請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
患者が、マイコプラズマ感染細胞を有する請求項8又は9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
癌幹細胞を標的とすることによる癌の治療における使用のための請求項1~6のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物及び薬学上許容される添加剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項13】
【化33】
及び
【化34】
からなる群から選ばれる、医療での使用のための化合物。
【請求項14】
【化35】
及び
【化36】
からなる群から選ばれる、癌の治療での使用のための化合物。
【請求項15】
癌が、急性骨髄性白血病、組織球性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、前骨髄球性白血病、マントル細胞リンパ腫、赤白血病、非ホジキンリンパ腫、乳腺上皮腺癌、及びリンパ性白血病からなる群から選ばれるものである請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
患者が、マイコプラズマ感染細胞を有する請求項14又は15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
【化37】
及び
【化38】
からなる群から選ばれる、癌幹細胞を標的とすることによる癌の治療における使用のための化合物。
【請求項18】
【化39】
及び
【化40】
からなる群から選ばれる化合物及び薬学上許容される添加剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
医療での使用のための
【化41】
の化合物。
【請求項20】
癌の治療での使用のための
【化42】
の化合物。
【請求項21】
癌が、急性骨髄性白血病、組織球性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、前骨髄球性白血病、マントル細胞リンパ腫、赤白血病、非ホジキンリンパ腫、乳腺上皮腺癌、及びリンパ性白血病からなる群から選ばれるものである請求項20に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
患者が、マイコプラズマ感染細胞を有する請求項20又は21に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
癌幹細胞を標的とすることによる癌の治療における使用のための
【化43】
の化合物。
【請求項24】
【化44】
の化合物及び薬学上許容される添加剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項25】
医療での使用のための
【化45】
の化合物。
【請求項26】
癌の治療での使用のための
【化46】
の化合物。
【請求項27】
癌が、急性骨髄性白血病、組織球性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、前骨髄球性白血病、マントル細胞リンパ腫、赤白血病、非ホジキンリンパ腫、乳腺上皮腺癌、及びリンパ性白血病からなる群から選ばれるものである請求項26に記載の使用のための化合物。
【請求項28】
患者が、マイコプラズマ感染細胞を有する請求項26又は27に記載の使用のための化合物。
【請求項29】
癌幹細胞を標的とすることによる癌の治療における使用のための
【化47】
の化合物。
【請求項30】
【化48】
の化合物及び薬学上許容される添加剤を含んでなる医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラドリビンの誘導体に関する。該化合物は、ホスホルアミデート部分が、クラドリビンの3’-ヒドロキシ基に位置するホスホルアミデート誘導体である。本発明は、クラドリビン誘導体の医薬組成物及び治療法におけるその使用にも関する。該化合物は癌の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
いくつかの改変プリンヌクレオシドは、化学療法の可能性を含む潜在的な生物学的特性を有することが知られている。その例は、有用ではあるが、有毒性の薬剤であるクラドリビン(1)である。当該薬剤は、白血病、及び特にヘアリー細胞白血病の治療のために、点滴によって投与される。また、当該薬剤は、アルキル化剤による標準的なレジメンに失敗した患者における慢性リンパ性白血病のためにも使用される。
【0003】
全てのヌクレオシド誘導体と同様に、これらの薬剤は、その生物活性の5’-ホスフェート形への細胞内キナーゼ-介在活性化を必要とする。
【0004】
国際公開第2006/100439号には、クラドリビンのいくつかのホスホルアミデート誘導体及びその抗癌活性が記載されている。国際公開第2006/100439号に記載されたホスホルアミデートは、クラドリビンの5’-ヒドロキシ基に位置し(例えば、化合物Y)、ホスホルアミデート部分は、ヌクレオシドモノホスフェート用のプロドラッグとして作用する。
クラドリビン
【化1】
化合物Y
【化2】
【0005】
化合物Yのようなホスホルアミデートは、ProTideして知られている。ProTideは、効能を増大することによって又は固有の及び獲得した抵抗性機構の両方を回避することによって、ヌクレオシドの抗癌特性を増大させる点で、顕著な利益を提供できる(「RroTide技術のゲムシタビンへの適用:極めて重要な癌抵抗性機構を克服するための奏功のアプローチは、臨床開発において、新たな薬剤(NUC-1031)をもたらす」, Slusarczykら, J.Med. Chem., 2014, 57, 531-1542;「抗癌剤FUDRのホスホルアミデートProTidesは、細胞において、前以って形成された生物活性モノホスフェートを良好に送達し、及び親ヌクレオシドを越える利点を与える」, Med. Chem., 2011, 54, 7247-7258;及びVande Voordeら, 「NUC-3073,(5-フルオロ-2’-デオキシウリジンのホスホルアミデートプロドラッグ)の細胞増殖抑制作用は、チミジンキナーゼによる活性化から独立し、加リン酸分解酵素による分解に非感受性である」, Biochem. Pharmacol., 2011, 82, 441-452)。
【0006】
しかし、5’-ホスホルアミデートは優れた抗癌活性を示しているが、これは、3’-ホスホルアミデート(一般的に乏しい抗癌活性しか示さない)には当てはまらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の特定の具体例の目的は、抗癌剤化合物を提供することにある。本発明の特定の具体例の目的は、従来技術の化合物よりも、より効果的な抗癌剤である化合物を提供することにある。
【0008】
本発明の特定の具体例の目的は、癌幹細胞を標的とする新規の化合物を提供することにある。本発明の特定の具体例の目的は、従来技術の化合物よりも、癌幹細胞を標的とする点でより効果的な化合物を提供することにある。
【0009】
本発明の特定の具体例の目的は、従来技術の化合物よりも、マイコプラズマ感染による影響が少ない化合物を提供することにある。
【0010】
本発明の特定の具体例の目的は、従来技術の化合物よりも、癌抵抗性機構による影響が少ない化合物を提供することにある。
【0011】
本発明の特定の具体例は、上述の目的のいくつか又は全てを達成する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、式(I)の化合物又はその薬学上許容される塩が提供される。
式(I):
【化3】
(式中、
R
1は、アリールであり;
R
2は、C
1-C
24-アルキル、C
3-C
24-アルケニル、C
3-C
24-アルキニル、C
0-C
4-アルキレン-C
3-C
7-シクロアルキル、又はC
0-C
4-アルキレン-アリールから選ばれ;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、C
1-C
6-アルキル及びC
1-C
3-アルキレン-R
9から選ばれ;又はR
3及びR
4は、それらが結合する原子と一緒に、3員~6員のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
5及びR
7は、それぞれ独立して、H及びC
1-C
4-アルキルから選ばれ;
R
6は、独立して、H及びC(O)R
10から選ばれ;
R
8は、独立して、H、C(O)OR
10、C(O)R
10から選ばれ;
R
9は、独立して、アリール(例えば、フェニル)、イミダゾール、インドール、SR
a、OR
a、CO
2R
a、CO
2NR
aR
a、NR
aR
b、及びNH(=NH)NH
2から選ばれ;
R
10は、それぞれの場で、独立して、C
1-C
24-アルキル、C
3-C
24-アルケニル、C
3-C
24-アルキニル、C
0-C
4-アルキレン-C
3-C
7-シクロアルキル又はC
0-C
4-アルキレン-アリールから選ばれ;
ここで、アリール基は、フェニル、ナフチル又はテトラヒドロナフチルであり、及びここで、フェニル、アルキル、アルキン、アルケン、アルキレン、シクロアルキル、ナフチル、又はテトラヒドロナフチル基は、ハロ、ニトロ、シアノ、NR
aR
a、NR
aS(O)
2R
a, NR
aC(O)R
a、NR
aCONR
aR
a、NR
aCO
2R
a、OR
a、SR
a、SOR
a、SO
3R
a、SO
2R
a、SO
2NR
aR
a
、CO
2R
aC(O)R
a、CONR
aR
a、CR
aR
aNR
aR
a、C
1-C
4-アルキル、C
2-C
4-アルケニル、C
2-C
4-アルキニル及びC
1-C
4-ハロアルキルから選ばれ1~4個の置換基にて任意に置換され;
ここで、R
aは、それぞれの場で、独立して、H及びC
1-C
4-アルキルから選ばれ;及びR
bは、それぞれの場で、独立して、H及びC
1-C
4-アルキル、C(O)-C
1-C
4-アルキル、S(O)
2-C
1-C
4-アルキルから選ばれる。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことには、本発明の3’-クラドリビンホスホルアミデートは、対応する5’-クラドリビンProTideよりも、より強力である傾向にある。これは、他のヌクレオシドについてより一般的に観察される傾向に反する。
【0014】
本発明の特定の3’-クラドリビンホスホルアミデートは、癌幹細胞を標的とすることを示した。
【0015】
マイコプラズマ感染細胞における本発明の3’-クラドリビンホスホルアミデートの有効性は、クラドリビン及び5’-クラドリビンProTideの両方よりも少ない量によって、低減される。
【0016】
1具体例では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
式(II):
【化4】
ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4は、式(I)の化合物について上記したとおりである。
【0017】
下記の陳述は、式(I)又は(II)の化合物に適用される。これらの陳述は、独立するものであり、交換可能である。換言すれば、以下の陳述のいずれかに記載された特徴は、以下の1以上の他の陳述に記載された特徴と組み合わされる(化学的に可能であれば)。特に、化合物が当明細書において例示又は説明されている場合には、いずれの一般的レベルで表現されたとしても、該化合物の特徴を記述する陳述のいずれか2以上が、当該明細書において本発明の開示の構成要件として熟慮される主題を表すように組み合わされる。
【0018】
R1は、置換又は未置換のフェニルであってもよい。R1は、置換又は未置換のナフチル(例えば、1-ナフチル)であってもよい。
【0019】
好ましくは、R1は未置換である。このように、R1は未置換のフェニル又は未置換のナフチル(例えば、1-ナフチル)であってもよい。このように、R1は未置換のフェニルであってもよい。或いは、R1は未置換のナフチル(例えば、1-ナフチル)であってもよい。R1は、テトラヒドロナフチルであってもよい。
【0020】
R2は、C2-C10-アルキル、C5-C7-シクロアルキル又はCHR11-フェニル(ここで、R11はH及びC1-C4-アルキルから選ばれる)から選ばれる。R2基は未置換でもよい。
【0021】
R2は、好ましくは、5個以上の炭素原子を含んでなるように選択される。従って、R2は、6個以上の炭素原子を含むように選択されてもよい。R2は、炭素原子及び水素原子のみを含んでなるように選択される。R2は、C5-C7-シクロアルキル、C5-C8-アルキル及びベンジルから選ばれてもよく、任意に、前記基は未置換である。
【0022】
R2はC2-C10-アルキルでもよい。R2はC4-C8-アルキルでもよい。このように、R2は、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ブチル、n-ペンチル、CH2C(Me)3又はn-ヘキシルから選ばれてもよい。
【0023】
R2はC5-C7-シクロアルキルでもよい。このように、R2はシクロヘキシルでもよい。
【0024】
R2はCHR11-フェニル(ここで、R11はH及びC1-C4-アルキルから選ばれる)であってもよい。R2はベンジルでもよい。
【0025】
R2は、好ましくは未置換である。
【0026】
R3及びはR4の一方がHであり、他方が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、トレオニン、チロシン及びトリプトファンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。R3及びR4の一方がHであり、及び他方が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。R3及びR4の一方がHであり、及び他方が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。
【0027】
R4がHであり、及びR3が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、トレオニン、チロシン及びトリプトファンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。R4がHであり、及びR3が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。R4がHであり、及びR3が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニンから選ばれるアミノ酸の側鎖であるように選ばれてもよい。このように、ホスホルアミデート部分が由来するアミノ酸(NH2CR3R4CO2H)はL-アミノ酸でもよい。
【0028】
R4がHであってもよい。R3は、H、C1-C6-アルキル及びC1-C3-アルキレン-R9から選ばれる。R3はC1-C6-アルキル及びC1-C3-アルキレン-R9から選ばれてもよい。R9はフェニルであってもよい。
【0029】
R3及びR4の一方がHであり、及び他方が、H、Me、イソプロピル、イソブチル及びベンジルから選ばれてもよい。R3及びR4の一方がHであり、及び他方が、Me、イソプロピル、イソブチル及びベンジルから選ばれてもよい。R3及びR4の一方がHであり、及び他方がMeであってもよい。
【0030】
R4がHであり、及びR3が、H、Me、イソプロピル、イソブチル及びベンジルから選ばれてもよい。R4がHであり、及びR3が、Me、イソプロピル、イソブチル及びベンジルから選ばれてもよい。R4がHであり、及びR3がMeであってもよい。
【0031】
R3はC1-C4-アルキルでもよい。R3は、イソプロピル、イソブチル及びメチルから選ばれてもよい。R3はCH2-フェニルであってもよい。
【0032】
R3はHであってもよい。R4は、H、C1-C6-アルキル及びC1-C3-アルキレン-R9から選ばれてもよい。R4は、C1-C6-アルキル及びC1-C3-アルキレン-R9から選ばれてもよい。R9はフェニルであってもよい。
【0033】
R4はC1-C4-アルキルでもよい。R4は、イソプロピル、イソブチル及びメチルから選ばれてよい。R4はCH2-フェニルであってもよい。
【0034】
R4及びR3は、それぞれ、メチルであってもよい。
【0035】
R4がHであり、R3がMeであり、及びR2がベンジルであってもよい。
【0036】
R5はC1-C4-アルキルでもよい。しかし、好ましくは、R5はHである。
【0037】
R6はC(O)R10であってもよい。この具体例では、R10はC1-C4-アルキルでもよい。しかし、好ましくは、R6はHである。
【0038】
R7はis C1-C4-アルキルでもよい。しかし、好ましくは、R7はHである。
【0039】
R8はC(O)R10であってもよい。R8はC(O)OR10であってもよい。これらの具体例では、R10はC8-C24-アルキルでもよい。しかし、好ましくは、R8はHである。
【0040】
好ましくは、R7及びR8は、それぞれ、Hである。好ましくは、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、Hである。
【0041】
式(I)の化合物は、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(エトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(tert-ブトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-D-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-グリシニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-ロイシニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(2,2-ジメチルプロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ペントキシ-L-ロイシニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(シクロヘキソキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(シクロヘキソキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(2,2-ジメチルプロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(エトキシ-2,2-ジメチルグリシニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-フェニルアラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-フェニルアラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-バリニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル(iso-プロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(2-ブトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-((S)-1-フェニルエトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、及び
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート
から選ばれる化合物である。
【0042】
式(I)の化合物は、
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]ホスフェート、及び
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート
から選ばれる化合物であってもよい。
【0043】
式(I)の化合物は、遊離塩基であってもよい。
【0044】
本発明の化合物は、リン原子にキラル中心を含んでなる。化合物は、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物として、実質的に純粋な形のリン原子における(S)-エピマーとして、又は実質的に純粋な形のリン原子における(R)-エピマーとして存在できる。「実質的にジアステレオ異性的に純粋な」とは、本発明の目的について、約90%以上のジアステレオ異性純度として定義される。実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で存在する場合、化合物は、95%、98%、99%又は99.5%以上のジアステレオ異性純度を有する。或いは、化合物は、ホスフェートのジアステレオ異性体の混合物として存在してもよい。
【0045】
化合物の(R)-及び/又は(S)-エピマーは、クロマトグラフィー、例えば、任意にキラルカラムを使用するHPLCによって、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で得られる。或いは、化合物の(R)-及び/又は(S)-エピマーは、好適な溶媒又は溶媒系からの結晶化によって、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で得られる。さらにまた、化合物の(R)-及び/又は(S)-エピマーは、好適に保護化したクラドリビン誘導体を、ジアステレオ異性的に富化したホスホルアミデート前駆体とカップリングし、続いて、脱保護化することによって、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で得られる。化合物の(R)-及び/又は(S)-エピマーは、直接合成、例えば、国際公開第2014/076490号に記載された方法を使用することによって、実質的にジアステレオ異性的に純粋な形で得られる。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、治療での使用のための第1の態様の化合物が提供される。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、癌の予防又は治療での使用のための第1の態様の化合物が提供される。
【0048】
本発明の第4の態様によれば、癌の予防又は治療のための医薬の製造における第1の態様の化合物の使用が提供される。
【0049】
本発明の第5の態様によれば、癌を予防又は治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、第1の態様の化合物を有効な用量で投与することを含んでなる方法が提供される。
【0050】
本発明の第3、第4及び第5の各態様は、他の癌治療と併用して癌を治療する具体例を含む。他の癌治療の例としては、放射線療法及び/又は化学療法が含まれる。
【0051】
本発明の第3、第4及び第5の各態様に関して、本発明の具体例は、血液腫瘍及び固形腫瘍から選ばれる癌を含んでなる。特に、癌は、白血病、多発性骨髄腫、肺癌、肝癌、乳癌、頭頚部癌、神経芽細胞腫、甲状腺癌、皮膚癌(メラノーマを含む)、口腔扁平上皮癌、膀胱癌、ライディッヒ細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、及び婦人科系の癌(卵巣癌、子宮癌、卵管癌及び子宮頸癌(上皮子宮頸癌を含む))からなる群から選ばれる。好適な具体例では、癌は白血病であり、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(急性ミエロイド白血病又は急性非リンパ性白血病としても知られている)、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(慢性ミエロイド白血病、慢性骨髄球性白血病、又は慢性顆粒球性白血病としても知られている)、慢性リンパ性白血病、単芽球性白血病、及びヘアリー細胞白血病からなる群から選ばれる。さらに好適な具体例では、癌は、急性リンパ性白血病である。
【0052】
本発明を具体化する特定の化合物は、5’-クラドリビンProTideと比べて、白血病とともに、固形腫瘍の治療において増大された抗癌活性を有することが認められた。本発明の化合物による治療に適する固形腫瘍の例としては、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、子宮頸癌、及びリンパ腫が含まれる。本発明の化合物による治療に適するリンパ腫の例としては、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫が含まれる。本発明の化合物による治療に適する白血病の例としては、ミエロイド白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、及び急性リンパ性白血病が含まれる。
【0053】
本発明の化合物は、マイコプラズマ感染細胞を有する患者における癌の治療において使用される。このように、本発明は、マイコプラズマ感染細胞を有する患者における癌の治療法を提供する。代表的には、マイコプラズマ感染細胞は、マイコプラズマ感染癌細胞であろう。
【0054】
本発明は、癌幹細胞を標的とすることにおける使用のための本発明の化合物を提供する。
【0055】
本発明は、癌幹細胞を標的とする医薬の製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【0056】
本発明は、癌幹細胞を標的とする方法を提供するものであり、該方法は、癌幹細胞集団に、このような癌幹細胞を標的とするに十分な量の本発明の化合物を提供することを含んでなる。
【0057】
本発明において言及する癌幹細胞を標的とすることは、癌の予防又は治療において使用される。このような具体例では、癌幹細胞集団は、このような標的化を必要とする患者において、癌又は前癌状態であり、方法は、患者に、治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含んでなる。
【0058】
本発明は、抗-癌幹細胞薬としての使用のための本発明の化合物を提供する。この本発明の化合物の使用は、癌の予防又は治療においても使用される。
【0059】
本発明は、癌患者又は前癌状態の患者が、本発明の化合物による予防又は治療から恩恵を受けるかどうかを決定する方法を提供するものであり、該方法は、患者における癌又は前癌状態を表す生体サンプルを、癌幹細胞の存在に関してアッセイすることを含んでなり、ここで、生体サンプルにおける癌幹細胞の存在は、患者が本発明の化合物による治療から恩恵を受けることを表示する。
【0060】
本発明は、癌患者又は前癌状態の患者のための好適な治療レジメンを決定する方法を提供するものであり、該方法は、患者における癌又は前癌状態を表す生体サンプルを、癌幹細胞の存在に関してアッセイすることを含んでなり、ここで、生体サンプルにおける癌幹細胞の存在は、好適な治療レジメンが、患者を本発明の化合物によって治療することを含んでなるものであることを表示する。
【0061】
本発明は、患者における癌又は前癌状態を表す生体サンプルを、癌幹細胞の存在に関してアッセイすることを含んでなる方法(ここで、生体サンプルにおける癌幹細胞の存在は、患者が本発明の化合物による治療から適していることを表示する)によって治療が選択された患者における、癌の予防又は治療における使用のための本発明の化合物を提供する。
【0062】
上記の方法は、さらに、本発明の化合物を使用する癌又は前癌状態の予防又は治療する工程を含むことができる。
【0063】
本発明の方法の好適な具体例では、癌は、再発性又は難治性癌である。本発明の化合物は、このような再発性又は難治性癌の治療に使用される。
【0064】
本発明は、対象における難治性癌の治療での使用のための本発明の化合物を提供する。対象は、ヒト患者であってもよい。
【0065】
本発明は、ヒト患者における再発性又は難治性の治療のための医薬の製造における本発明の化合物を提供する。
【0066】
本発明は、対象における再発性又は難治性癌の治療法を提供するものであり、該方法は、このような治療を必要とする対象に、治療上有効な量の本発明の化合物を提供することを含んでなる。
【0067】
本発明の更なる態様によれば、予防又は治療法における使用のための本発明の化合物、予防又は治療法における使用のための医薬の製造における本発明の化合物の使用、及び患者の予防又は治療法であって、それを必要とする患者に、本発明の化合物を投与することを含んでなる方法(ここで、どの場合も、予防又は治療法は、骨髄異形成症候群の予防又は治療法を含んでなる)が提供される。
【0068】
本発明の第6の態様によれば、薬学上許容される添加剤と組み合わせて、第1の態様の化合物を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0069】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様の化合物を、薬学上許容される添加剤と合わせる工程を含んでなる医薬組成物の製法が提供される。
【0070】
本発明の各種の態様は、本発明の化合物が、癌幹細胞の数を優先的に低減できるとの知見に基づく。この知見は、癌幹細胞は多くの化学療法剤に対して抵抗性であることが知られており、これまで、本発明の化合物又はクラドリビン(本発明の化合物が由来する親化合物である)が癌幹細胞を標的とできるとの示唆がなかった点で驚くべきことである。このように、本発明の化合物が癌幹細胞を標的とすることができ、このように、それらの数を低減するとの知見(発明者らによって確認された知見は、広範囲の癌について適用される)は、本発明の化合物の新たな治療上の適用の範囲を可能にするとの驚くべき背景を表している。
【0071】
本発明の式で表される化合物は、薬学上許容される塩の形で得られ、保存され及び/又は投与される。好適な薬学上許容される塩としては、薬学上許容される無機酸の塩、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸の塩、又は薬学上許容される有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、及び吉草酸の塩が含まれる(ただし、これらに限定されない)。好適な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛の塩が含まれる。酸又は塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩、ヘミシュウ酸、及びヘミカルシウム塩も形成される。好ましくは、本発明の化合物は、塩の形ではなく、すなわち、遊離塩基/遊離酸の形である。
【0072】
用語「Cm-Cn」は、炭素原子m~n個を有する基を意味する。
【0073】
用語「アルキル」は、直鎖状又は分枝状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基は1価である。例えば、C1-C6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、2級-ブチル、3級-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルを意味する。アルキル基は、好ましくは、未置換である。
【0074】
用語「シクロアルキル」は、環状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基は1価である。例えば、C5-C7-シクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを意味する。シクロアルキル基は、好ましくは、未置換である。
【0075】
用語「アルキレン」は、直鎖状の飽和炭化水素鎖を意味する。アルキレン基は2価である。例えば、C1-アルキレンはCH2基を意味する、C2-アルキレンは、-CH2-CH2-を意味する。アルキレン基は、好ましくは、未置換である。
【0076】
用語「アルケニル基」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を意味する。二重結合は、E又はZ異性として存在できる。二重結合は、炭化水素鎖の可能ないずれかの位置に存在できる。例えば、「C2-C4-アルケニル」は、エテニル、アリル、及びブテニルを意味する。アルケニル基は、好ましくは、未置換である
【0077】
用語「アルキニル基」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含有する分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を意味する。三重結合は、炭化水素鎖の可能ないずれかの位置に存在できる。例えば、「C2-C6-アルキニル」は、エチニル、プロピニル、ブチニルを意味する。アルキニル基は、好ましくは、未置換である。
【0078】
用語「アリール」は、フェニル基、ナフチル基、及びテトラヒドロナフチル基を意味する。用語「アリール」は、フェニル基又はナフチル基を意味してもよい。アリール基(例えば、ナフチル又はフェニル基)は未置換でもよい。
【0079】
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量又は質量数が、天然に通常見出される主な同位体の原子質量又は質量数とは異なる原子によって置換された、いずれも薬学上許容される同位体標識した形の化合物も含む。
【0080】
本発明の化合物に含まれる好適な同位体の例としては、水素の同位体、例えば、2H及び3H、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I及び125I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O及び18O、リンの同位体、例えば、32P、及びイオウの同位体、例えば、35Sが含まれる。
【0081】
いくつかの同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を含むものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、3H、及び炭素-14、すなわち、14C、及び18Fは、導入の容易性及び既存の検出手段に鑑み、この目的には特に有用である。
【0082】
重水素、すなわち、2Hのようなより重質の同位体による置換は、より大きい代謝安定性から生ずるいくつかの治療上の利点、例えば、増大したインビボ半減期又は低減した必要用量を提供し、このため、状況次第では好まれる。
【0083】
同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られた一般的な技術によって又はこれまで使用されてきた非標識試薬の代わりに、好適な同位体標識試薬を使用する公知の方法と類似の方法によって調製される。
【0084】
本発明の化合物は、ヒトの治療に使用される。また、動物の治療にも使用される。特に、本発明の化合物は、家畜のような商業用動物を治療するために使用される。或いは、本発明の化合物は、ネコ、イヌ等のペットを治療するために使用される。
【0085】
本発明の化合物は、単一の結晶形又は結晶形の混合物として存在でき、又は非晶質型でもよい。このように、医薬用の本発明の化合物は、結晶性又は非晶質生成物として投与される。化合物は、方法(例えば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、又はスプレー乾燥、又は蒸発乾燥)によって、例えば、粒体プラグ、粉末、又はフィルムとして得られる。この目的のためには、高周波又は無線周波数乾燥が使用される。
【0086】
本発明の上記化合物について、投与される用量は、勿論、使用する化合物、投与形態、所望の治療及び示された疾患によって変動する。例えば、本発明の化合物が非経口投与される場合には、本発明の化合物の用量は、0.1~5g/m2、例えば、0.5~2g/m2の範囲である。本発明の化合物の治療用の用量サイズは、当然に、周知の医学の原理に従って、症状及び症状の重篤性、動物又は患者の年齢及び性別、投与経路に応じて変動する。
【0087】
本発明の化合物の用量レベル、投与頻度、及び治療期間は、処方及び臨床的適応、患者の年齢及び合併症状態に応じて変動することが予期される。
【0088】
本発明の化合物、又はその薬学上許容される塩は単独で使用されるが、一般的に、本発明の化合物、又はその薬学上許容される塩が、薬学上許容されるアジュバント、希釈剤又はキャリヤーと協同する医薬組成物の形で投与される。好適な医薬製剤の選択及び調製の一般的手法は、例えば、「医薬品-製剤設計の科学」, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0089】
本発明の化合物の投与形態に応じて、本発明の化合物を投与するために使用される医薬組成物は、本発明の化合物0.05~99質量%、より好ましくは、本発明の化合物0.05~80質量%、さらに好ましくは、本発明の化合物0.10~70質量%、及びさらになお好ましくは、本発明の化合物0.10~50質量%を含んでなる(いずれの質量%も、組成物全体の質量を基準とする)。
【0090】
経口投与については、本発明の化合物を、アジュバント又はキャリヤー、例えば、乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ又はアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチン又はポリビニルピロリドン;及び/又は滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ワックス、パラフィン、等と混合され、及びついで打錠される。コーティング錠が望まれる場合には、上記の通りに調製したコアを、濃縮した砂糖溶液(例えば、アラビヤゴム、ゼラチン、タルカム及び二酸化チタンを含有できる)で被覆する。或いは、錠剤を、容易に揮発する有機溶媒に溶解した好適なポリマーで被覆することもできる。
【0091】
軟質ゼラチンカプセルの調製については、本発明の化合物を、例えば、植物油、又はポリエチレングリコールと混合する。硬質ゼラチンカプセルは、錠剤用の上記添加剤のいずれかを使用して、化合物の粒状物を含有できる。また、本発明の化合物の液体又は半固体処方を、硬質ゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0092】
経口投与用の液体調製物は、シロップ又は懸濁液、例えば、本発明の化合物を含有し、残余が砂糖及びエタノール、水、グリセリン及びプロピレングリコールの混合物である溶液の形である。任意に、このような液体調製物は、着色料、香料、甘味料(例えば、サッカリン)、保存料及び/又は増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース又は当業者に知られている他の添加剤を含有できる。
【0093】
非経口(例えば、静脈内)投与については、本発明の化合物を、殺菌した水性又は油性溶液として投与できる。本発明の化合物は非常に親油性である。それ故、水性処方は、薬学上許容される極性の有機溶媒も含有できる。
【0094】
本発明の化合物の治療目的の用量サイズは、当然、よく知られた薬剤の原理に従って、病状及び重篤性、動物又はヒトの年齢及び性別、及び投与ルートに応じて変動する。
【0095】
本発明の化合物の用量レベル、投与頻度、及び治療期間は、処方及び臨床的適応、患者の年齢及び併存する病状に応じて異なることが予測される。
【0096】
治療方法又は癌の治療における使用のための化合物は、本発明の化合物に加えて、一般的な手術又は放射線治療及び化学療法を含むことができる。このような化学療法は、1以上の他の活性剤の投与を含むことができる。
【0097】
本発明の治療方法の一部として更なる活性剤を投与する場合、このような併用治療は、治療の個々の成分の同時、連続又は別個の投与によって達成される。このような併用生成物は、上記の治療上有効な量の範囲内の本発明の化合物、及び許容された用量範囲内の1以上の他の薬理的に活性な薬剤を使用する。
【0098】
このように、本発明の医薬組成物は、他の活性剤を含んでなることができる。
【0099】
1以上の他の活性剤は、抗腫瘍剤の下記のカテゴリーの1以上である:
(i)抗増殖剤/抗新生物治療剤及びその組み合わせ、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファアミド、ナイトロジェンマスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド、及びニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン、及び葉酸代謝拮抗剤(例えば、フルオロピリミジン(5-フルオロウラシル及びテガフール)、ラルチトレキセド、メトトレキサート、ペメトレキセド、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシ尿素);抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン及びミスラマイシンのようなアントラサイクリン系);抗有糸分裂剤(例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)及びタキソイド(例えば、タキソール及びタキソテレ、及びポロキナーゼ阻害剤);プロテアソーム阻害剤、例えば、カーフィルゾミブ及びボルテゾミブ;インターフェロン療法;プラチン(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン);及びトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、アムサクリン、トポテカン、ミトキサントロン及びカンプトテシン);
【0100】
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン及びイドキシフェン)、抗アンドロゲン薬(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド及び酢酸シプロテロン)、LHRH拮抗薬又はLHRH作動薬(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン及びブセレリン)、プロゲストーゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール及びエキセケスタン)及び5α-リダクターゼの阻害剤、例えば、フィナステリド;
【0101】
(iii)抗侵襲剤、例えば、ダサチニブ及びボスチニブ(SKI-606)、及びメタロプロテアーゼ阻害剤、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体機能阻害剤又はヘパラナーゼに対する抗体;
【0102】
(iv)成長因子機能の阻害剤、例えば、このような阻害剤は、成長因子抗体及び成長因子受容体抗体(例えば、抗-erbB2抗体トラスツズマブ(Herceptin(商標名))、抗-EGFR抗体パニツムマブ、抗-erbB1抗体セツキシマブ)、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ及び6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(Cl1033)のようなEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブのようなerbB2チロシンキナーゼ阻害剤);肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;インスリン成長因子ファミリーの阻害剤;細胞アポプトーシスのタンパク質調節剤の修飾因子(例えば、Bcl-2阻害剤);血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤、例えば、イマチニブ及び/又はニロチニブ(AMN107);セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、チピファルニブ及びロナファルニブ)のようなRas/Rafシグナル経路阻害剤)、MEK及び/又はAKTキナーゼを介する細胞シグナル経路の阻害剤、c-キット阻害剤、ablキナーゼ阻害剤,PI3キナーゼ阻害剤、Pit3キナーゼ阻害剤、CSF-1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容体キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、例えば、CDK2及び/又はCDK4阻害剤;
【0103】
(v)抗血管新生薬、例えば、血管内皮成長因子の影響を阻害するもの(例えば、抗-血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標名));サリドマイド;レナリドマイド;及び例えば、バンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アキシチニブ及びパゾパニブのようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;
【0104】
(vi)例えば、異常p53、異常BRCA1又はBRCA2のような異常遺伝子を置き換えるアプローチを含む遺伝子療法アプローチ;
【0105】
(vii)例えば、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))及びオファツムマブのような抗体療法;インターフェロンαのようなインターフェロン;IL-2(アルデスロイキン)のようなインターロイキン;;インターロイキン阻害剤、例えば、IRAK4阻害剤;HPVワクチン(例えば、ガーダシル、サーバリックス、オンコファージ及びSipuleucel-T(Provenge)のような予防用及び治療用ワクチンを含む癌ワクチン;及びtoll様受容体修飾物質(例えば、TLR-7又はTLR-9作動薬)を含む免疫療法;及び
【0106】
(viii)細胞毒性薬、例えば、フルダラビン(フルダラ)、クラドリビン、ペントスタチン(Nipent(商標名));
【0107】
(ix)コルチコステロイド(グルココルチコイド及びミネラルコルチコイドを含む)のようなステロイド、例えば、アルクロメタゾン、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、ベタメタゾン吉草酸エステル、ブデソニド、クロベタゾン、クロベタゾン酪酸エステル、クロベタゾンプロピオン酸エステル、クロプレドノール、コルチゾン、コルチゾン酢酸エステル、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンイソニコチン酸エステル、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロコルトロンカプロン酸エステル、フルオロコルトロンピバル酸エステル、フルオロメトロン、フルプレドニデン、プルプレドニデン酢酸エステル、フルランドレノロン、フルチカゾン、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾンアセポン酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、イコメタゾン、イコメタゾンブタン酸エステル酢酸エステル、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステル1水和物、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、チキソコルトールピバル酸エステル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール及びそれらの各薬学上許容される誘導体(ステロイドの組み合わせ、例えば、このパラグラフに記載した2以上のステロイドの組み合わせを使用できる);
【0108】
(x)標的治療、例えば、PI3Kd阻害剤(例えば、アイデラリシブ及びペリホシン、又はPD-1、PD-L1及びCAT Tを阻害する化合物)。
【0109】
1以上の他の活性剤は、抗生物質でもよい。
【0110】
癌幹細胞
癌幹細胞(他に、しばしば、「腫瘍始原細胞」と称される)は、当業者にとっては周知である。ここで使用するように、用語「癌幹細胞」とは、その広く許容されている意味に従って、非対称性分裂を介して再生し、腫瘍形成を開始し、及び分化によって、より成熟した非-幹細胞癌子孫を生じさせる能力を有する細胞であると解釈される。
【0111】
癌幹細胞は、癌の発生、進行、再発及び増殖において重要な役割を果たす。従って、本発明の化合物が、癌幹細胞を標的とし、これによって、その数を低減できるとの知見は、これらの活性を予防又は治療することにおける治療上の可能性を提供する。
【0112】
明細書の他の部分において詳しく検討するように、癌幹細胞は、前癌状態で認められ、その存在が、このような状態を癌に進行させることに寄与すると考えられる。従って、本発明の治療方法及び医薬の使用は、前癌状態(例えば、骨髄異形成症候群、又は明細書の他の部分で考察する他の状態)の癌幹細胞の数を低減し、このようにして、このような前癌状態の癌への進行を阻止するために使用される。
【0113】
上記のように、癌幹細胞の非対称性細胞分裂は、分化した非-幹癌細胞を生じさせる。このように、癌幹細胞は、腫瘍の大部分の形成及び維持を担当する。
このような非-幹癌細胞の蓄積は、癌の進行に大きな役割を果たす。本発明化合物による癌幹細胞の標的化は、癌幹細胞の数を低減でき、続いて、非-幹癌細胞子孫の数を低減する。このように、本発明による治療方法及び本発明の化合物の医療での使用は、癌の進行を阻止することによって、癌治療において利益が得られる。このような具体例は、本明細書における他の部分において、より詳しく記載されている。
【0114】
癌幹細胞は、寛解後における癌の再発の原因となる癌細胞のリザーバーとして作用できる。患者の癌細胞の大部分が除去され(例えば、手術、放射線治療、又は化学療法の単独又は組み合わせによって)、その結果、癌の兆候が観察されないままである場合でも、癌幹細胞の持続した存在は、経時的に癌の再発の核となることがある。本発明の化合物による癌幹細胞の標的化は、癌幹細胞の数を低減させ、癌幹細胞を死滅させる新たなモードを提供する。従って、及び明細書の他の部分において詳しく検討するように、好適な具体例では、本発明は、本発明の化合物が癌の再発を防止又は遅らせる方法及び医療での使用を提供する。
【0115】
さらに、癌幹細胞の癌の位置から身体内の他の位置への移動は、例えば、転移を生じさせることによって、癌の増殖に寄与する。その結果、本発明の化合物の癌幹細胞を標的とする能力は、癌の増殖の予防及び治療における新規の治療方法及び医療での使用を提供する。
【0116】
その生物学的活性に加えて、癌幹細胞は、特定の特徴的な細胞表面マーカーの発現によって同定される。血液系腫瘍において同定されている癌幹細胞は、代表的には、CD34+であり、一方、固形腫瘍では、CD44+、CD133+、及びCD90+が、癌幹細胞マーカーとして同定されている。下記の表は、既知の癌幹細胞表面マーカーの例を要約するものである。これらの形の癌幹細胞の各々が、本発明に従って、本発明の化合物を使用して標的化され、本発明の化合物を使用する方法及び使用は、これらのマーカーセットのいずれかを発現する癌幹細胞と関連する癌の予防又は治療において使用される。
【0117】
【表1】
実施例に示すデータは、本発明の化合物が、白血病幹細胞株の癌幹細胞、特に、急性骨髄性白血病細胞株KG1aに存在する癌幹細胞を標的とすることができることを証明している。この細胞株は、本発明の化合物によって標的とされる、はっきりと異なった免疫表現型(Lin
-/CD34
+/CD38
-/CD123
+)を有するマイナーの幹細胞様コンパートメントを明示する。従って、本発明によれば、本発明の治療方法及び本発明の化合物の医療における使用は、白血病及びこれらの特徴的なマーカーを発現する癌幹細胞に関連する他の癌の予防又は治療のために使用される。
【0118】
本発明は、患者の癌又は前癌状態を表す生体サンプルにおける癌幹細胞の存在の同定に基づき、本発明の化合物を使用して、癌の予防又は治療のために、患者を選別する方法及び医療での使用も提供する。上述のマーカーセットは、本発明のこのような具体例に従って、癌幹細胞の存在を同定するために使用される好適な例を提供する。生体サンプルにおいて、これらのマーカーの発現を検査するための好適な技術は、さらに、本明細書の他の部分において検討している。
【0119】
癌幹細胞の標的化
本発明は、本発明の化合物が癌幹細胞の標的化に使用されるとの第1の指示を提供する。癌幹細胞を標的とする本発明の化合物の能力は、本明細書に開示する実施例において説明する。
【0120】
実施例から、本発明の化合物が癌幹細胞を含有する癌細胞集団に提供される際、存在する癌幹細胞を標的とし、これにより、癌細胞の総数及び癌幹細胞の表現型マーカーを示す総癌細胞の割合が低減されることが理解される。
【0121】
親プロドラッグ化合物クラドリビンは、特定の、より高い濃度で、癌幹細胞を標的とすることができるが、本発明の化合物は、広範囲の濃度において、このような標的化を達成する能力を示す。とりわけ、インビトロ研究(その結果を本願において報告する)は、本発明の化合物が、低濃度において、クラドリビンよりも効果的に、癌幹細胞を標的とすることができることを示している。特定の濃度では、癌幹細胞の標的化における改善の結果、本発明の化合物にて処置した細胞集団において残留する癌幹細胞の割合が、クラドリビンで処置した細胞集団についてよりも有意に低くなる。低い細胞毒性薬剤濃度において、癌幹細胞の効果的な標的化を達成できる能力は、望ましくない副作用の可能性を低減できるため、一般的に望ましいことが理解されるであろう。
【0122】
本発明の化合物は増大された細胞膜透過性を有する(クラドリビンと比べて)と考えられ、これは、本発明の化合物が誘導された親ヌクレオシドと比べて、本発明の化合物の増大された抗癌能力に寄与すると考えられる。
【0123】
いかなる仮説によっても拘束されることを望まないが、発明者らは、癌幹細胞数の減少が、癌細胞集団の中の癌幹細胞の標的化死滅の結果として生ずると考えている。すなわち、本発明の化合物は、非-幹癌細胞の死滅と比べて、優先的に、癌幹細胞を死滅させることが明らかであり、これによって、癌幹細胞の死滅、及び総癌細胞集団の中の癌幹細胞の割合の低減を生ずる。
【0124】
発明者らは、本発明の化合物が、非-幹癌細胞と比べて、優先的に癌幹細胞を死滅させると考えているが、本発明の化合物のこれら細胞の標的化によって生ずる癌幹細胞の割合の低減には、他の機構も寄与するであろう。
【0125】
単に例示すれば、本発明の化合物での治療は、癌幹細胞の分化における増大を生じ、これによって、癌幹細胞の数、及び癌幹細胞によって表される総癌細胞の割合を低減させる。或いは、本発明の化合物は、癌幹細胞がその幹細胞表現型を失う原因となり、例えば、その自己再生能力を失わせ、これによって、癌幹細胞の数を低減させる。
【0126】
従って、本発明の開示では、癌幹細胞の標的化が論及されていることが理解されるべきである。当該開示の目的について、癌幹細胞の「標的化」は、本発明の化合物が、インビボ又はインビトロにかかわらず、細胞集団に存在する癌幹細胞の割合を低減する全ての機構を包含するものとして理解される。特に、癌幹細胞の標的化は、他の細胞型と比べて、特に非-幹癌細胞と比べて、優先的に癌幹細胞を死滅させることを包含するものとして理解される。
【0127】
癌の予防又は治療
本発明は、本発明の化合物を癌の予防又は治療のために使用する医療での使用又は治療方法を提供する。本発明の文脈において、癌の「予防」とは、癌が発生する前に、及び癌の発生を阻止する目的で使用する本発明の化合物の予防的適用に関するものとして考えらえるべきである。一方、癌の「治療」とは、癌の発生後に、癌細胞の増殖及び腫瘍の成長を遅らせる又は阻止することによって、癌を寛解させることを目的として、本発明の化合物を使用することに関するものとして理解される。有利には、癌の治療は、癌細胞の数及び腫瘍のサイズの部分的又は完全な低減を生ずる。癌の効果的な治療は、RECIST(固形癌治療効果判定基準)に従って、「安定」又は「奏功」の病状をもたらす。
【0128】
以下に詳細に記載するように、本発明による癌の予防は、癌を発生させる可能性を増大させる前癌状態の患者にとって、格別の利益をもたらす。
【0129】
癌の予防
本発明による癌の予防は、ここに記載する本発明の各種の態様又は具体例に従って、本発明の化合物を使用する前癌状態の治療によって達成される。
【0130】
特に、癌の予防(本発明の文脈における)は、本発明の化合物を前癌状態の患者に提供する本発明の方法又は医療での使用によって達成される。この具体例による治療方法又は医療での使用は、処置した前癌状態から癌への進行を阻止し、これによって、癌の効果的な予防を提供する。
【0131】
本発明の文脈における癌の予防の論及は、本発明の化合物の他の予防的適用も包含するものである。例えば、癌幹細胞を標的化する本発明の化合物の能力は、これによって、癌の発生を阻止し、及び/又は癌の進行を阻止し、及び/又は癌の再発を阻止し、及び/又は癌の増殖を阻止する。
【0132】
前癌状態
癌に先立って、前癌状態がしばしば発生することがあるが、前癌状態は、それ自体、癌に罹った状態ではないが、癌のリスクの増大に関連する。遺伝子の又はエピジェネティックな変化の蓄積は、以前は正常な細胞を表現型の癌幹細胞へ発展させる。従って、癌幹細胞は、癌に罹った状態と同様に、このような前癌状態においても存在する。
【0133】
前癌状態における癌幹細胞の存在は、これらの状態から癌への進行に寄与すると考えられる。本発明の方法及び医療での使用は、前癌状態において存在する癌幹細胞を標的とし、これによって、このような状態を治療するために使用される。本発明の化合物が癌幹細胞を標的とするとの新たなかつ予想外の知見は、このような化合物による前癌状態の治療が、治療対象の状態の癌への進行を防止することを意味するものと理解されるであろう。これは、本明細の他の部分で検討するように、本発明化合物が、癌の予防において、医学的に使用される方法を表している。
【0134】
本発明に従って治療される前癌状態の例としては、萎縮性胃炎、胃潰瘍、悪性貧血、胃断端、胃ポリープ、及びメネトリエ病のような胃の前癌状態とともに、光線性角化症、バレット食道、萎縮性、先天性角化異常症、鉄欠乏性嚥下困難、扁平苔癬、口腔粘膜下線維症、日光弾力線維症、子宮頚部異形成、白板症、紅板症、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、単クローン性B細胞リンパ球増加症(MBL)、骨髄異形成が含まれる。前記の胃の前癌状態の中でも、萎縮性胃炎、悪性貧血、胃断端、及び特定のタイプの胃ポリープは、特に高い癌に進行するリスクを有する。
【0135】
前癌状態は、しばしば、形成異常細胞又は過形成細胞を含んでなる障害の形をとる。従って、発現されたマーカー又は癌幹細胞の表現型特性を有する細胞の存在の代わりに又は加えて、異形成又は過形成の存在は、前癌状態の同定において使用される。
【0136】
異形成の重篤性は、異なる前癌状態の間で、経時的な単一の前癌状態の進行とともに変化する。一般に、前癌状態と関連する異形成が進行すればするほど、前癌状態が癌により進行しがちとなる。異形成は、代表的には、温和、中位、又は重篤として分類される。重篤な異形成は、治療しないで放置すれば、通常、癌に進行する。好適には、本発明の化合物を使用する治療方法又は医療での使用は、従って、重篤な異形成に関連する前癌状態を有する患者を治療するために使用される。
【0137】
本発明の好適な具体例では、本発明の化合物は、重篤な子宮頚部異形成を有する患者を治療するために使用される。重篤な子宮頚部異形成は、塗抹試験によって診断される。本発明の他の具体例では、本発明の化合物は、重篤な食道異形成(「バレット食道」)を治療するために使用される。食道異形成は、組織生検によって診断される。
【0138】
最近、前悪性は、癌を有することが不明の個人において、細胞における体細胞突然変異を検出することによって同定されることが報告されている。特に、加齢に伴うクローン造血は、増大する全死亡率及び増大する心血管代謝疾患のリスクに関連する一般的な前悪性状態であることが報告されている。血液細胞中で検出される突然変異の大部分は、3つの遺伝子:DNMT3A、TET2及びASXL1において生ずる。従って、癌幹細胞を標的とし、これによって、前癌状態を治療するために、本発明の化合物を使用することによって利益を得られる患者は、血液細胞を含んでなるサンプルを、DNMT3A、TET2及びASXL1の少なくとも1つにおいて、前癌状態を示す遺伝子の突然変異の存在についてアッセイすることによって同定される。
【0139】
本明細書の他の部分において検討するように、本発明に従って、癌幹細胞を標的とするための本発明の化合物による治療から利益を得られる患者は、癌幹細胞に特有のマーカー又は癌幹細胞表現型の発現に基づく技術のいずれかを参照して癌幹細胞の存在の検出によって同定される。
【0140】
癌の治療
当業者であれば、癌の「治療」をアッセイする多くの測定法が存在することを認識するであろう。単なる例として述べれば、癌の効果的な治療を示すために、癌の発生、癌の進行、癌の再発、又は癌の増殖のいずれかの低減又は防止が検討される。
【0141】
特定の具体例では、本発明の化合物は、癌細胞集団における癌幹細胞の割合を低減するため、及び/又は腫瘍の生長を阻害するため、及び/又は催腫瘍性を低減するため、及び/又は原発癌を予防又は治療するため、再発癌を予防又は治療するため、転移又は二次癌を予防又は治療するため、及び/又は転移又は再発の予防又は阻害するため、及び/又は難治性癌を治療又は予防するために使用される。
【0142】
本発明の化合物を使用する治療が、治療の間/治療の後に、腫瘍サイズの低減をもたらし、及び腫瘍サイズを維持する能力は、効果的な癌治療の特に適切な指標を表す。実施例に提示するように、本発明の治療又は医療での使用は、驚くべきことには、既に、他の治療法での治療に対して耐性であった再発性又は難治性の癌を代表する細胞を使用するモデルでも、この態様では、有効であることが証明された。
【0143】
実施例に示すデータは、本発明の化合物での治療が、癌細胞集団における癌幹細胞の割合を低減することを表している。癌幹細胞が同定される特徴的な生物学的活性又は細胞表面マーカーについては、明細書の他の部分において記載している。好適な具体例では、本発明による癌治療は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%の、患者の癌に存在する癌幹細胞の割合の低減を生ずる。好適な具体例では、本発明による癌治療は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の、患者の癌に存在する癌幹細胞の割合の低減を生ずる。本発明による癌治療は、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の、患者の癌に存在する癌幹細胞の割合の低減を生ずることができる。実際、本発明による癌治療は、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%(実質的に癌幹細胞は維持されない)もの患者の癌に存在する癌幹細胞の割合の低減を生ずることができる。
【0144】
癌幹細胞の非対称分裂は、腫瘍の生長に寄与する。本発明に従って、本発明の化合物での癌治療は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%の腫瘍生長阻害率を生ずることができる。本発明による好適な癌治療は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の腫瘍生長阻害率を生ずることができる。本発明による癌治療は、そのように治療した患者において、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の腫瘍生長阻害率を生ずることができる。実際、本発明による癌治療は、治療した癌において、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%もの腫瘍生長阻害率を生ずることができる。
【0145】
腫瘍生長は、腫瘍のサイズを経時的にアッセイするいずれかの好適な方法によってアッセイされる。好適には、癌治療前の腫瘍サイズを、癌治療中又は癌治療後の同じ腫瘍のサイズと比較する。腫瘍サイズをアッセイする多数の方法が公知である。例えば、腫瘍のサイズは、患者において、その場で、腫瘍の画像撮影によってアッセイされる。画像撮影技術のような好適な技術により、腫瘍の容積を測定でき、腫瘍の容積の変化をアッセイすることが可能である。
【0146】
本明細書の実施例において示す結果に示されるように、本発明の化合物での治療法及び医療での使用は、腫瘍の生長を阻止することのみ可能ではないが、実際には、再発又は難治性癌に罹った患者を含め癌患者において、腫瘍の容積の低減をもたらす。本発明による好適な治療は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%の腫瘍容積低減率を生ずることができる。好適な具体例では、本発明による癌治療は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の腫瘍容積低減率を生ずることができる。本発明による癌治療は、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の腫瘍容積低減率を生ずることができる。実際、本発明による癌治療は、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%もの腫瘍容積低減率を生ずることができる。
【0147】
上記の種類の腫瘍容積における低減率は、好適なコントロールと比較して算定される。例えば、好適な動物モデルにおいて、インビトロ又はインビボで行われる研究では、腫瘍容積の低減率は、本発明の化合物で治療した腫瘍の容積と、コントロール(未処置の、又は本発明の化合物以外の治療を受けている)の腫瘍との直接比較によって測定される。腫瘍の治療の欠落を要求するこのような方法は、臨床治験又は患者の治療管理の点で倫理的に許容できないものであると考えられ、このケースでは、腫瘍容積低減率は、治療した腫瘍の容積を、治療前の同じ腫瘍の容積と、又は治療が行われなかった腫瘍によって達成されるはずの予測される容積とを比較することによってアッセイされる。
【0148】
治療方法及び本発明の化合物の医療での使用は、癌を表示するバイオマーカーの低減をもたらす。このようなバイオマーカーの低減は、癌の効果的な治療を証明する更なるアッセイ法を提供する。このようなバイオマーカーの好適な例は、治療されるべき癌のタイプに基づいて選択される。婦人科の癌の場合、CA125はバイオマーカーの好適な例であり、一方、膵癌又は胆道癌の場合、CA19.9がバイオマーカーの好適な例であり、結腸直腸癌の場合、CEAが好適なバイオマーカーである。
【0149】
本発明による好適な治療は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%の癌バイオマーカーの低減率を生ずることができる。好適な具体例では、本発明による癌治療は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の癌バイオマーカーの低減率を生ずることができる。本発明による癌治療は、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の癌バイオマーカーの低減率を生ずることができる。実際、本発明による癌治療は、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%もの癌バイオマーカーの低減率を生ずることができる。
【0150】
存在する癌幹細胞の割合の低減、腫瘍生長の低減、腫瘍容積及び癌バイオマーカーの低減等の、本発明による癌の治療において観察される有利な効果は、少なくとも1か月間は維持される。好適には、このような有利な効果は、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、又は少なくとも6か月間維持される。実際、このような有利な効果は、少なくとも12か月、少なくとも18か月、又は少なくとも24か月間維持される。好適には、このような有利な効果は、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、又は少なくとも10年間又はそれ以上維持される。
【0151】
本発明の好適な具体例では、本発明の化合物は、癌幹細胞を標的にすることによって、癌又は前癌状態を予防又は治療する方法において使用される。好適な具体例では、本発明は、癌又は前癌状態予防又は治療する方法(該方法は、1以上の癌幹細胞の催腫瘍性を低減する)における本発明の化合物の使用を提供する。好適には、このような方法は、癌の増殖を防止し、又は腫瘍の生長を阻害する。
【0152】
本発明の化合物を、癌の増殖を防止又は治療するために、本発明の方法又は医療での使用において使用する際、このような防止又は治療は、癌の増殖を減速し、遅延させ、又は完全に停止させる。
【0153】
癌の進行は、代表的には、癌にステージを指定することによって決定される。ステージ化は、通常、癌にI~IVの数値を付すことによって行われるが、Iは、隔離された癌を表し、IVは、アッセイ測定限界まで広がっている癌を表す。ステージの細目は癌の間で変化するが、一般に、ステージは、腫瘍のサイズ、隣接する器官を浸潤しているかどうか、
いくつの局所(近くの)リンパ節に広がっているか(あれば)、及びより遠い位置に認められるかどうか(転移)を考慮するものである。
【0154】
一般に、ステージIは、身体の1か所に局在化し、外科的削除によって治療される(十分に小さい固形腫瘍について)。ステージIIは、局所的に進行し、化学療法、放射線療法、手術、又はその組み合わせによって治療可能である。ステージIIIも局所的に進行したものであり、ステージII又はステージIIIの指定は、ステージIIIが「遅発性」の局部的進行と認められるが、癌の特殊タイプに左右される。ステージIVは、しばしば、第2の器官に転移している。本発明の方法又は医療での使用において本発明の化合物を使用する癌治療は、癌幹細胞を標的とすることによって、ステージI、II、III、又はIVの癌を治療するために使用される。本発明の化合物での治療は、1のステージから次のステージへの癌の進行を防止するために使用される。1具体例では、本発明の化合物での治療は、ステージIからステージIIへの進行を阻止するために使用される。他の具体例では、本発明の化合物での治療は、ステージIIからステージIIIへの進行を阻止するために使用される。さらに他の具体例では、本発明の化合物での治療は、ステージIIIからステージIVへの進行を阻止するために使用される。
【0155】
癌の進行を防止すること又は阻害することは、癌の拡大、例えば、ステージIからステージII(癌が局所的に広がっている)への進行、又はステージIIIからステージIV(癌が他の器官に転移している)への進行を防止するために特に重要である。癌幹細胞は、催腫瘍性であり、従って、局部的及び転移的の両方での癌の拡大において重要な役割を果たすと考えられる。従って、本発明の化合物を使用する治療方法及び医療での使用は、催腫瘍性の癌幹細胞を標的とし、このようにして、その数を低減することによって、癌の拡大を防止するために使用される。
【0156】
癌
本発明の特定の化合物は、それらが由来するクラドリビンと比較して、増大された抗癌活性を発揮する。抗癌活性におけるこの増大は、癌幹細胞及び非―幹癌細胞の両方に対して、増大された活性の結果として提供されることが明らかである。
【0157】
癌幹細胞は、広い範囲の癌の生物学的活性において役割を果たす。従って、本発明に従って防止又は治療される癌は広範囲に存在する。
【0158】
ここ以外の部分で検討するように、癌幹細胞は、液性腫瘍(白血病、リンパ腫のような血液系腫瘍を含む)及び固形腫瘍(例えば、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、膀胱癌、胆道管癌及び膵臓癌)を含む多くの腫瘍タイプにおいて存在することが知られている。従って、癌幹細胞を標的とするための治療方法及び本発明の化合物の医療での使用は、このような癌の予防又は治療において有用であることが期待される。
【0159】
好適には、本発明の化合物は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肺癌、肝癌、乳癌、頭頚部癌、神経芽細胞腫、甲状腺癌、皮膚癌(メラノーマを含む)、口腔扁平上皮癌、膀胱癌、ライディッヒ細胞腫、胆道癌(例えば、胆管細胞癌又は胆管癌)、膵癌、結腸癌、結腸直腸癌、及び婦人科系の癌(卵巣癌、子宮内膜癌、卵管癌、子宮癌、及び子宮頸癌(上皮子宮頸癌を含む))からなる群から選ばれる癌の防止又は治療に使用される。好適な具体例では、癌は白血病であり、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(急性ミエロイド白血病又は急性非リンパ性白血病としても知られている)、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(慢性ミエロイド白血病、慢性骨髄球性白血病、又は慢性顆粒球性白血病としても知られている)、慢性リンパ性白血病、単芽球性白血病、及びヘアリー細胞白血病からなる群から選ばれる。さらに好適な具体例では、癌は、急性リンパ性白血病である。好ましい具体例では、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、及び小リンパ球性リンパ腫からなる群から選ばれる。
【0160】
好適には、このような癌における癌幹細胞の標的化は、癌の発生を防止し又は治療することによって、癌の進行を防止又は治療することによって、癌の再発を防止又は治療することによって、又は癌の増殖を防止又は治療することによって、有効な癌治療を達成する。
【0161】
好適な具体例では、本発明は、転移性癌の防止又は治療での癌幹細胞の標的化における使用のための本発明の化合物を提供する。
【0162】
好適な具体例では、本発明は、再発性又は難治性癌の治療での癌幹細胞の標的化における使用のための本発明の化合物を提供する。
【0163】
好適な具体例では、本発明は、原発癌の治療での癌幹細胞の標的化における使用のための本発明の化合物を提供する。好適には、治療される原発癌は、二次発癌でもよい。
【0164】
本発明は、二次癌の治療での癌幹細胞の標的化における使用のための本発明の化合物を提供する。好適な具体例では、二次癌は転移性癌である。
【0165】
好適な具体例では、本発明は、癌幹細胞の標的化における使用のための本発明の化合物を提供し、ここで、癌幹細胞の標的化は、(i)癌の再発、(ii)二次発癌の発生、又は(iii)癌の転移を防止又は阻止する。
【0166】
癌幹細胞を標的とする能力に基づいて、本発明の化合物が使用される治療方法又は医療での使用は、再発性又は難治性癌の治療において使用される。このような具体例における再発性又は難治性癌についての考察は、他の方法において背景が要求する場合を除いて、本発明の他の態様に関連する再発性又は難治性癌の治療についてと同じである。
【0167】
再発性又は難治性癌
上述のように、本発明の特定の態様及び具体例は、特に、再発性又は難治性癌の治療における本発明の化合物の使用に関する。
【0168】
本発明の目的に関して、本発明の化合物を使用する方法以外の抗癌治療によっては治療に抵抗性を示す癌として、難治性癌を取り上げることができる。例えば、本発明の化合物は、放射線療法での治療には抵抗性である難治性癌の治療において使用される。或いは、又は加えて、本発明の化合物は、癌治療において使用される生物学的作用物質に抵抗性である癌の治療において使用される。好適な具体例では、本発明の化合物は、本発明の化合物以外の化学療法剤での治療に抵抗性である難治性癌の治療において使用される。
【0169】
特に、本発明の化合物を使用する本発明の治療方法又は医療での使用から利益が得られる難治性癌としては、クラドリビンに対して抵抗性の癌も含まれる。
【0170】
再発性癌(又は再発癌)は、寛解の期間(その間は、癌が検知されない)の後に再発する癌である。癌の再発は、元の癌の位置(癌の局所再発)、元の癌の位置に近い位置(癌の局在性再発)、元の癌の位置から離れた位置(癌の遠位再発)で起こり得る。癌幹細胞は、癌の再発の一因となり、再発性癌の細胞が発生する源を提供すると考えられる。従って、本発明による治療方法及び本発明の化合物の医療での使用(癌幹細胞を標的することができる)は、再発性癌との関連で、非常に有効であろう。本発明の化合物の癌幹細胞を標的とする能力は、再発を生ずるような細胞の集団を除去し、このようにして、再発性癌の発生を防止するために使用される。本発明の化合物の抗-癌幹細胞活性は、潜在的に、非-幹癌細胞に対して細胞毒性効果を及ぼし、これによって、再発性癌の治療を提供するとともに、再発した癌において、癌幹細胞を標的とするためにも使用される。
【0171】
従って、本発明の化合物は、再発性癌の防止又は治療のために、本発明の方法又は使用において使用されることが理解されるであろう。本発明の化合物は、局所、局在性、又は遠位の再発性癌の防止又は治療のために、本発明の方法又は使用おいて使用される。
【0172】
本発明の化合物は、少なくとも2カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、少なくとも24カ月、又は少なくとも30カ月の寛解を提供することによって、癌の再発を防止するために、本発明の方法又は使用において使用される。実際、本発明の化合物は、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、又は少なくとも10年の寛解を提供することによって、癌の再発を防止するために使用される。
【0173】
本発明の化合物は、少なくとも2カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、少なくとも24カ月、又は少なくとも30カ月の寛解の後に再発した再発性癌を治療するために、本発明の方法又は使用において使用される。実際、本発明の化合物は、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、又は少なくとも10年の寛解の後に再発した再発性癌をするために使用される。
【0174】
本発明の化合物の癌幹細胞を標的とする能力は、本発明の医療での使用又は治療方法に従って癌を予防又は治療するこれら化合物の能力を生ずる。しかし、本発明の化合物は、腫瘍の容積を形成する非-幹癌細胞に対して直接の細胞毒性を及ぼすことに留意しなければならない。癌幹細胞の活性は、再発性又は難治性癌を治療困難なものとする抵抗性の多くの根底をなすものであり、一方、非-幹癌細胞は、このような再発性又は難治性癌の主要な構成成分でもある。
【0175】
本発明の特定の化合物は、非-幹癌細胞に対して、クラドリビン(本発明の化合物が誘導される化学療法剤分子である)よりも大きい細胞毒性を及ぼす。従って、本発明の化合物が、再発性又は難治性癌の治療において作用する機構は、この化合物の抗-癌幹細胞活性だけに限定されるものではなく、非-幹癌細胞に対しても、本発明の化合物の作用を使用することもできる。このような使用では、本発明の化合物での治療は、癌幹細胞及び非-幹癌細胞の両方の総数を低減させるが、治療後に残留する癌幹細胞の割合を優先的に低減させる。
【0176】
本発明の化合物の治療上効果的な用量
本発明の化合物の治療上効果的な用量は、癌細胞の死滅を誘発するに十分な量である。本発明の化合物の治療上効果的な量は、癌幹細胞の死滅を誘発するに十分な量である。いくつかの具体例では、特に、再発性又は難治性癌の治療に係る量については、本発明の化合物の治療上効果的な量は、癌幹細胞の死滅を誘発する及び非-幹癌細胞の死滅も誘発するに十分な量である。
【0177】
治療上効果的な化合物(例えば、本発明の化合物)の患者に投与されるべき量を算定及び示す手段としては、各種色々なものがある。癌の予防又は治療のための薬剤の用量に関して特に適切と考えられる1つのこのような手段は、患者の体表面積の単位当たりの投与されるべき薬剤の量である。このような用量は、一般的には、薬剤の量(質量によって測定される)/表面積1平方メートル(m2)を単位として表される。
【0178】
この明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含んでなる」及び「含有する」及びその変形は、「含むが、限定されない」を意味するものであり、これらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図するものではない(及び除外しない)。この明細書及び特許請求の範囲を通して、単数は、他に要求されない限り、複数も含むものである。特に、不定冠詞を使用する場合、明細書は、他に要求されない限り、単一性とともに、複数性を含むものとして理解されなければならない。
【0179】
特殊な態様と合わせて記載する本発明の特徴、整数、特性、化合物、化学部分及び基、具体例又は実施例は、矛盾しない限り、ここに記載する他の態様、具体例又は実施例のいずれにも適用できるものであると理解されなければならない。この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示する特徴の全て、及び/又は同様に開示された方法及びプロセスの工程の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが、相互に排他的である組み合わせを除き、いかようにも組み合わされる。本発明は、上述の具体例の詳細に限定されない。本発明は、この明細書に開示された特徴のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに、又は同様に開示されたいずれかの方法又はプロセスの工程のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに及ぶものである。
【0180】
読者の注目は、この出願に関連するこの明細書と同時に又はこれよりも先に提出された、又はこの明細書と一緒に縦覧に供される全ての論文及び文献に向けられるが、このような全ての論文及び文献の内容は、参照することによって、ここに組み込まれる。
【0181】
[実施例]
[実施例1]
合成法
この明細書を通して、下記の省略記号は下記の意味を有する。
DCM:ジクロロメタン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、TBDMS:tert-ブチルジメチルシリル、TFA:トリフルオロ酢酸、THF:テトラヒドロフラン、MeOH:メタノール、br s-ブロードな信号、tBuMgCl:tert-ブチル塩化マグネシウム
【0182】
5’-O-tert-ブチルジメチルシリルクラドリビンA
クラドリビン(0.25g、0.88ミリモル)を無水のDMF(10mL)に溶解し、TBDMSCl(0.15 g、1.03ミリモル)及びイミダゾール(0.26g、3.82ミリモル)を、アルゴン雰囲気下で添加した。水を添加する前に、混合物を、室温において、24時間撹拌した。沈殿を濾去し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、3’,5’-ビス-O-tert-ブチルジメチルシリルクラドリビン(0.12 g、27%)及び所望の生成物(0.12g、34%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.28 (1H, s, H-8), 7.78 (2H, br s, NH2), 6.26 (1H, t, J = 6.6 Hz, H-1’), 5.39 (1H, br s, 3’-OH), 4.40 (1H, m, H-3’), 3.87 (1H, m, H-4’), 3.84-3.68 (2H, m, 2 x H-5’), 2.69, 2.33 (2H, 2 x m, 2 x H-2’) 0.85 (9H, s, C(CH3)3), 0.02 (6H, s, Si(CH3)2)
【0183】
標準方法A
保護したヌクレオシドA(78mg、0.20ミリモル)を、アルゴン雰囲気下で、無水のテトラヒドロフランに溶解し、1M tBuMgClのTHF溶液(0.4ml、0.4ミリモル)を1滴ずつ添加し、続いて、無水のTHF中の所望のホスホロクロリデート(0.4ミリモル)をゆっくりと添加した。溶媒を蒸発させ、残渣を、溶離液として3%MeOHのDCM溶液を使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。得られた化合物を、H2O/THF(1:1)に溶解し、THFを1滴ずつ添加した。混合物を、室温において、30分間撹拌し、NaHCO3を添加して、溶液を中和した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー及び予備薄層クロマトグラフィー(TLC)(10%MeOHのDCM溶液)によって精製した。
【0184】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(エトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート1
【化5】
無水THF中の5’-保護クラドリビンA(0.1g、0.17ミリモル)、tBuMgCl(1M THF溶液、0.34ml、0.34ミリモル)、フェニル-(エトキシ-L-アラニニル)-ホスホロクロリデート(0.10g、0.34ミリモル)を使用して、標準方法Aに従って調製した。TFAによる脱保護の後、粗製混合物を、カラムクロマトグラフィー(4%MeOHのDCM溶液)、続いて、予備TLC(4%MeOHのDCM溶液)によって精製して、純粋な生成物を白色固体として得た(19.0g、21%)。
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.28, 2.76
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.32, 8.28 (1H, 2 x s, H-8), 7.41-7.22 (5H, m, HAr), 6.43, 6.33 (1H, 2 x t, J=7.0Hz, H-1’), 5.3, 5.29 (1H, 2 x br s, H-3’), 4.32, 4.31 (1H, 2 x br s, H-4’), 4.22-4.15 (2H, m, CH
2CH
3), 4.05-4.00 (1H, m, NHCHCH
3), 3.86-3.80 (2H, m, 2 x H-5’), 3.01-2.90 (1H, m, H-2’
a), 2.81-2.78 (0.5H, m, H-2’
b 1つのジアステレオ異性体), 2.68-2.64 (0.5H, m, H-2’
b 1つのジアステレオ異性体), 1.42-1.36 (3H, 2 x d, J=7.0Hz, NHCHCH
3), 1.30-1.24 (3H, m, CH
2CH
3)
MS (ES+) m/z: 563.1 (M+Na
+, 100%);正確な質量:C
21H
26ClN
6O
7NaP 理論的m/z 563.1187, 実測m/z 563.1183
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:20分で、100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=12.31, 12.41分)
【0185】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(tert-ブトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート2
【化6】
乾燥THF中の5’-保護クラドリビンA(0.10g、0.17ミリモル)、tBuMgCl(1M THF溶液、0.34mL、0.34ミリモル)、フェニル-(tert-ブトキシ-L-アラニニル)-ホスホロクロリデート(0.11g、0.34ミリモル)を使用して、標準方法Aに従って調製した。TFAによる脱保護の後、粗製物を、カラムクロマトグラフィー(4%MeOHのDCM溶液)によって精製して、純粋な生成物を白色固体として得た(43.8mg、45%)。
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.30, 2.91;
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.31, 8.27 (1H, 2 x s, H-8), 7.42-7.21 (5H, m, H-Ar), 6.43, 6.34 (1H, 2 x t, J=7.0 Hz, H-1’), 5.36, 5.30 (1H, 2 x br s, H-3’), 4.35, 4.30 (1H, 2 x br s, H-4’), 3.91-3.80 (3H, m, NHCHCH
3, 2 x H-5’), 3.02-2.90 (1H, m, H-2’
a), 2.81-2.77 (0.5H, m, H-2’
b 1つのジアステレオ異性体), 2.68-2.65 (0.5H, m, H-2’
b 1つのジアステレオ異性体), 1.49, 1.46 (9H, 2 x s, C(CH
3)
3), 1.38, 1.34 (3H, 2 x d, J=7.0Hz, NHCHCH
3)
MS (ES+) m/z:591.1 (M+Na
+, 100%);正確な質量:C
23H
30CIN
6O
7NaP 理論的m/z 591.1500, 実測m/z 591.1509
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:20分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R= 5.24, 15.36分)
【0186】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-D-アラニニル)]-ホスフェート3
【化7】
無水THF中の5’-保護クラドリビンA(0.11g、0.19ミリモル)、tBuMgCl(1M THF溶液、0.37mL、0.37ミリモル)、フェニル-(ベンゾキシ-D-アラニニル)-ホスホロクロリデート(0.13g、0.37ミリモル)を使用して、標準方法Aに従って調製した。TFAによる脱保護の後、粗製物を、カラムクロマトグラフィー(4%MeOHのDCM溶液)によって精製して、純粋な生成物を白色固体として得た(40.0mg、35%)。
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.06, 2.77
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.24, 8.22 (1H, 2 x s, H-8), 7.39-7.16 (10H, m, H-Ar), 6.32-6.26 (1H, m, H-1’), 5.34-5.32, 5.23-5.21 (1H, 2 x m, H-3’), 5.19-5.14 (2H, m, CH
2Ph), 4.36-4.34 (0.5H, m, H-4’ 1つのジアステレオ異性体), 4.22-4.20 (0.5H, m, H-4’1つのジアステレオ異性体), 4.10-4.04 (1H, m, NHCHCH
3), 3.85-3.72 (2H, m, 2 x H-5’), 2.87-2.82, 2.77-2.67 (1H, 2 x m, H-2’
a), 2.59, 2.48 (1H, 2 x ddd, J=14.0, 5.8, 1.9Hz, H-2’
b), 1.41, 1.38 (3H, 2 x dd, J=7.0, 4.5Hz, NHCHCH
3)
MS (ES+) m/z:625.1 (M+Na
+, 100%);正確な質量:C
26H
28CIN
6O
7NaP 理論的m/z 625.1343, 実測m/z 625.1351
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:20分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=14.16分)
【0187】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-グリシニル)]-ホスフェート4
【化8】
無水THF中の5’-保護クラドリビンA(0.12g、0.20ミリモル)、tBuMgCl(1M THF溶液、0.40mL、0.40ミリモル)、フェニル-(ベンゾキシ-L-グリシニル)-ホスホロクロリデート(0.14g、0.40ミリモル)を使用して、標準方法Aに従って調製した。TFAによる脱保護の後、粗製物を、カラムクロマトグラフィー(4%MeOHのDCM溶液)によって精製して、純粋な生成物を白色泡状固体として得た(15.0mg、13%)。
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 4.21, 4.05
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.14, 8.13 (1H, 2 x s, H-8), 7.29-7.08 (10H, m, H-Ar), 6.23-6.16 (1H, m, H-1’), 5.24-5.21 (1H, m, H-3’), 5.08-5.06 (2H, m, CH
2Ph), 4.20-4.19 (0.5H, m, H-4’ 1つのジアステレオ異性体), 4.14-4.12 (0.5H, m, H-4’1つのジアステレオ異性体), 3.77-3.63 (4H, m, NHCH
2, 2 x H-5’), 2.76-2.70 (1H, m, H-2’), 2.51-2.47 (1H, m, H-2’)
MS (ES+) m/z: 611.1 (M+Na
+, 100%);正確な質量:C
25H
26CIN
6O
7NaP 理論的m/z 611.1187, 実測m/z 611.1180
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:20分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254, t
R=13.64分)
化合物1~4と同様に、標準方法Aに従って、さらに本発明の化合物を調製した。
【0188】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-ロイシニル)]-ホスフェート5
【化9】
31P-NMR (CD
3OD, 202 MHz):δ 3.58, 2.81
1H-NMR (CD
3OD, 500 MHz):δ 8.28, 8.23 (1H, 2 x s, H-8), 7.40-7.22 (10H, m, H-Ar), 6.36, 6.25 (1H, 2 x t, J=7.0Hz, H-1’), 5.30, 5.24 (1H, 2 x br s, H-3’), 5.19-5.14 (2H, m, CH
2Ph), 4.25 (1H, br s, H-4’), 3.98-3.95 (1H, m, NHCH), 3.84-3.73 (2H, m, 2 x H-5’), 2.89-2.55 (2H, m, 2 x H-2’), 1.77-1.72 (1H, m, CH(CH
3)
2), 1.60-1.56 (2H, m, CH
2CH(CH
3)
2), 0.94-0.88 (6H, m, CH(CH
3)
2)
MS (ES+) m/z:667.2 (M+Na
+, 100%);正確な質量:C
29H
34CIN
6O
7NaP 理論的m/z 667.1813, 実測m/z 667.1799
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:20分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=16.27, 16.47分)
【0189】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(2,2-ジメチルプロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート6
【化10】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.68, 3.27
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.28-8.20 (2H, m, H-8, H-Ar), 7.92 (1H, d, J=8.0Hz, H-Ar), 7.75 (1H, d, J=8.2Hz, H-Ar), 7.63-7.47 (4H, m, H-Ar), 6.38-6.21 (1H, 2 x m, H-1’), 5.39-5.33 (1H, 2 x m, H-3’), 4.32-4.23 (1H, 2 x m, H-4’), 4.17-4.11 (1H, m, NHCHCH
3), 3.89-3.71 (4H, m, 2 x H-5’, CH
2C(CH
3)
3), 2.96-2.78, 2.58-2.55 (2H, 2 x m, 2 x H-2’), 1.43, 1.38 (3H, 2 x d, J=7.25Hz, NHCHCH
3), 0.95, 0.93 (2 x s, 9H, CH
2C(CH
3)
3)
MS (ES
+) m/z:656 (M+Na
+), 634 (M+H
+);C
28H
34CIN
6O
7P:理論的質量633.03
【0190】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ペントキシ-L-ロイシニル)]-ホスフェート7
【化11】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 4.02, 3.48
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.24, 8.21 (1H, 2 x s, H-8), 7.94, 7.92 (1H, 2 x s, H-Ar), 7.76, 7.53 (1H, 2 x s, H-Ar), 7.63-7.55 (4H, m, H-Ar), 7.52, 7.47 (1H, 2 x s, H-Ar), 6.40-6.33, 6.23-6.20 (1H, 2 x m, H-1’), 5.40-5.38, 5.32-5.29 (1H, 2 x m, H-3’), 4.34-4.33, 4.26-4.24 (1H, 2 x m, H-4’), 4.08-4.05 (2H, m, 2 x H-5’), 4.01-3.97 (1H, m, NHCHCH
2CH(CH
3)
2), 3.88-3.80 (2H, m, NHCHCH
2CH(CH
3)
2), 3.00-2.95, 2.89-2.79, 2.58-2.54 (2H, 3 x m, 2 x H-2’), 1.75-1.69 (1H, m, NHCHCH
2CH(CH
3)
2), 1.63-1.55 (4H, m, 2 x CH
2, OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
3), 1.35-1.28 (4H, m, 2 x CH
2, OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
3), 0.91-0.82 (9H, m, OCH
2CH
2CH
2CH
2CH
3, NHCHCH
2CH(CH
3)
2)
MS (ES
+) m/z:697 (M+Na
+), 675 (M+H
+);C
31H
40CIN
6O
7P:理論的質量674.24
【0191】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(シクロヘキソキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート8
【化12】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.34, 2.80
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.33-8.28 (2H, m, H-8, H-Ar), 7.85-7.81 (1H, m, H-Ar), 7.62-7.59 (1H, m, H-Ar), 7.56-7.52 (3H, m, H-Ar), 7.47-7.43 (1H, m, H-Ar), 6.30 (1H, t, J=6.5Hz, H-1’), 4.66-4.57 (3H, m, H-3’, OC-エステル), 4.51-4.48 (2H, m, 2 x H-5’), 4.20-4.18 (1H, m, H-4’), 4.12-3.96 (1H, m, NHCHCH
3), 2.67-2.54 (1H, m, H-2’), 2.50-2.46 (1H, m, H-2’), 1.75-1.71 (4H, m, 2 x CH
2-エステル), 1.32-1.30 (9H, m, 3 x CH
2-エステル, NHCHCH
3)
MS (ES
+) m/z:667 (M+Na
+), 645 (M+H
+);C
29H
34CIN
6O
7P:理論的質量644.19
【0192】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(シクロヘキソキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート9
【化13】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.34, 2.80
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.32-8.28 (1H, m, H-8), 7.43-7.37 (2H, m, H-Ar), 7.31-7.22 (3H, m, H-Ar), 6.44-6.41, 6.36-6.29 (1H, 2 x m, H-1’), 5.37-5.34, 5.30-5.27 (1H, 2 x m, H-3’), 4.81-4.74 (1H, m, CH-エステル), 4.33-4.25 (1H, m, H-4’), 4.01-3.92 (1H, m, NHCHCH
3), 3.87-3.79 (2H, m, 2 x H-5’), 3.01-2.89 (1H, m, H-2’), 2.82-2.77, 2.67-2.63 (1H, 2 x m, H-2’), 1.86-1.74 (4H, m, 2 x CH
2-エステル), 1.57-1.30 (9H, m, 3 x CH
2-エステル, NHCHCH
3)
MS (ES
+) m/z:617 (M+Na
+), 595 (M+H
+);C
25H
32CIN
6O
7P:理論的質量594.18
【0193】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(2,2-ジメチルプロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート10
【化14】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.30, 2.76
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.32, 8.27, 8.23, 8.07 (1H, 4 x s, H-8), 7.57-7.52, 7.43-7.38, 7.31-7.22 (5H, 3 x m, H-Ar), 6.44-6.41, 6.36-6.30 (1H, 2 x m, H-1’), 5.38-5.36, 5.30-5.27 (1H, 2 x m, H-3’), 4.32-4.30, 4.27-4.25 (1H, 2 x m, H-4’), 4.15-4.12, 4.08-4.04 (1H, 2 x m, NHCHCH
3), 3.87-3.79 (1H, m, H-5’), 3.92-3.80 (2H, m, CH
2C(CH
3)
3), 3.68, 3.58 (1H, 2 x dd, J=12.0, 5.0Hz, H-5’), 3.01-2.89, 2.81-2.64, 2.35-2.29 (2H, 3 x m, 2 x H-2’), 1.44, 1.39 (3H, 2 x d, J=7.5Hz, NHCHCH
3), 0.98, 0.96 (9H, 2 x s, CH
2C(CH
3)
3)
MS (ES
+) m/z:605 (M+Na
+), 583 (M+H
+);C
24H
32CIN
6O
7P:理論的質量582.18
【0194】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(エトキシ-2,2-ジメチルグリシニル)]-ホスフェート11
【化15】
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 1.60, 1.55
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.32, 8.28 (1H, 2 x s, H-8), 7.45-7.38, 7.33-7.27, 7.24-7.21 (5H, 3 x m, H-Ar), 6.41, 6.33 (1H, 2 x dd, J=8.1, 5.8 Hz, H-1’), 5.36-5.32 (1H, m, H-3’), 4.39, 4.29 (1H, 2 x m, H-4’), 4.20, 4.19 (2H, 2 x q, J=7.2Hz, CH
2
CH
3), 3.92-3.76 (2H, m, 2 x H-5’), 3.00-2.88, 2.78-2.63 (2H, 3 x m, 2 x H-2’), 1.53 (6H, br s, (CH
3)
2), 1.29, 1.28 (3H, 2 x t, J=7.1Hz, CH
2CH
3)
MS (ES
+) m/z:577.7 (M+Na
+); C
22H
28CIN
6O
7P:理論的質量554.92
【0195】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-フェニルアラニニル)]-ホスフェート12
【化16】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 1.42, 1.23
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 7.69, 7.55 (1H, 2 x s, H-8), 7.28-6.92 (15H, m, H-Ar), 6.11 (2H, br s, NH
2), 6.01-5.86 (1H, m, H-1’), 5.30-5.02 (4H, m, H-3’, OH-3’, OCH
2Ph), 4.31-4.15 (2H, m, H-4’, NHCHCH
2Ph), 3.86-3.65 (3H, m, 2 x H-5’, NHCHCH
2Ph), 2.98-2.81 (3H, m, NHCHCH
2Ph, H-2
a’), 2.39-2.31 (1H, m, H-2
b’)
MS (ES
+) m/z:679 [M+H
+], 681 [M(
37Cl)+H
+], 701 [M+Na
+], 703 [M(
37Cl)+Na
+], 717 [M+K
+], 719 [M(
37Cl)+K
+];C
32H
32CIN
6O
7P:理論的質量m/z 678.18
逆相HPLC(H
2O/CH
3CN で溶離:10分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=9.19分)
【0196】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-フェニルアラニニル)]-ホスフェート13
【化17】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 2.09, 1.78
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 8.02-7.91 (1H, m, H-8), 7.81-7.79 (1H, m, H-Ar), 7.65-7.60 (1H, m, H-Ar), 7.49-7.41 (4H, m, H-Ar), 7.33-6.75 (11H, m, H-3 Naph, OCH
2Ph, CHCH
2Ph), 6.00 (2H, br s, NH
2), 5.92-5.62 (1H, 2m, H-1’), 5.28-5.13 (2H, m, H-3’ OH-3’), 5.05-4.89 (2H, m, OCH
2Ph), 4.34-4.27 (1H, m, NHCHCH
2Ph), 4.18-4.12 (1H, 2m, H-4’), 3.83-3.61 (3H, m, 2 x H-5’, NHCHCH
2Ph), 2.95-2.88 (2H, m, NHCHCH
2Ph), 2.84-2.79 (1H, m, H-2’
a), 2.30-2.14 (1H, m, H-2’
b)
MS (ES
+) m/z:729 [M+H
+], 751 [M+Na
+], 767 [M+K
+];正確な質量:C
36H
34CIN
6O
7P:理論的質量m/z 728.19
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:10分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=10.33分
【0197】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-バリニル)]-ホスフェート14
【化18】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 2.40, 2.20
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 7.74, 7.58 (1H, 2 x s, H-8), 7.30-7.09 (10H, m, H-Ar), 6.13-6.11, 6.27-6.24 (1H, 2 x m, H-1’), 5.91 (2H, br s, NH
2), 5.27-5.25 (1H, m, H-3’), 5.10-5.04 (2H, m, CH
2Ph), 4.25-4.21 (1H, m, H-4’), 3.86-3.62 (4H, m, 2 x H-5’, NHCHCH(CH
3)
2, NHCHCH(CH
3)
2,), 2.95-2.90 (1H, m, H-2’
a), 2.45-2.37 (1H, m, H-2’
b), 2.02-1.99 (1H, m, NHCHCH(CH
3)
2), 0.88-0.77 (6H, m, NHCHCH(CH
3)
2)
MS (ES+) m/z:632 [M+H
+], 655 [M+Na
+];C
28H
32CIN
6O
7P:理論的質量m/z 631.18
【0198】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(iso-プロポキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート15
【化19】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 1.54, 1.34
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 7.79, 7.71 (1H, 2s, H-8), 7.31-7.12 (5H, m, H-Ar), 6.21-6.17, 6.05-6.01 (1H, 2 x m, H-1’), 5.70 (2H, br s, NH
2), 5.31-5.26 (1H, m, H-3’), 4.99-4.93 (1H, m, OCH(CH
3)
2), 4.44-4.42 (1H, m, H-4’), 3.98-3.87 (2H, m, NHCHCH
3, OH-5’), 3.82-3.74 (1H, m, NHCHCH
3), 3.67-3.53 (3H, m, 2 x H-5’, NHCHCH
3), 3.08-2.97 (1H, m, H-2’), 2.62-2.49 (1H, m, H-2’), 1.34, 1.30 (3H, 2 x d, J=7.0Hz, NHCHCH
3), 1.22-1.19 (6H, m, OCH(CH
3)
2)
MS (ES+) m/z:555 [M+H
+], 556 [M(
13C)+H
+], 557 [M(
37Cl)+H], 558 [M(
37Cl,
13C)+H
+], 577 [M+Na
+], 578 [M(
13C)+Na
+], 579 [M(
37Cl)+Na
+], 580 [M(
37Cl,
13C)+Na
+];C
22H
28CIN
6O
7P:理論的質量m/z 554.14
逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:15分で100/0から0/100へ、流量=1ml/min、λ= 254、t
R=9.92分)
【0199】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(2-ブトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート16
【化20】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 1.62, 1.60
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 7.81, 7.73 (1H, 2 x s, H-8), 7.30-7.11 (5H, m, H-Ar), 6.21-6.03 (3H, m, H-1’, NH
2), 5.32-5.23 (2H, m, H-3’, NHCHCH
3), 4.85-4.76 (1H, m, OCH(CH
3)CH
2CH
3), 4.34-4.31 (1H, m, H-4’), 3.95-3.75 (4H, m, NHCHCH
3, 2 x H-5’, OH-5’), 3.07-2.95 (1H, m, H-2
a’), 2.48-2.26 (1H, m, H-2
b’), 1.55-1.47 (2H, m, OCH(CH
3)CH
2CH
3), 1.37-1.31 (3H, m, NHCHCH
3), 1.19-1.09 (3H, m, OCH(CH
3)CH
2CH
3), 0.85-0.79 (3H, m, OCH(CH
3)CH
2CH
3)
MS (ES+) m/z:569 [M+H
+], 570 [M(
13C)+H
+], 571 [M(
37Cl)+H
+], 572 [M(
37Cl,
13C)+H
+], 591 [M+Na
+], 592 [M(
13C)+Na
+], 593 [M(
37Cl)+Na
+], 594 [M(
37Cl,
13C)+Na
+], 607 [M+K
+], 608 [M(
13C)+K
+], 609 [M(
37Cl)+K
+];C
23H
30CIN
6O
7P:理論的質量m/z 568
.逆相HPLC(H
2O/CH
3CNで溶離:15分で100/0から0/100、流量=1ml/分、λ= 254、t
R=10.48分)
【0200】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-((S)-1-フェニルエトキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート17
【化21】
31P-NMR (202MHz, CDCl
3):δ 3.34, 2.65
1H-NMR (500MHz, CDCl
3):δ 8.20 (1H, m, H-8), 7.47-7.28 (8H, m, H-Ar), 7.27-7.15 (2H, m, H-Ar), 6.40-6.33, 6.32-6.26, (1H, 2 x m, H-1’), 5.96-5.84 (1H, m, CHCH
3Ph), 5.35-5.21 (1H, m, H-3’), 4.40-4.26 (1H, m, H-4’), 4.10-4.02 (1H, m, NHCHCH
3), 3.87-3.74 (2H, m, 2 x H-5’), 2.94-2.83 (1H, m, H-2
a’), 2.74-2.57 (1H, m, H-2
b’), 1.60-1.48 (3H, m, CHCH
3Ph), 1.43-1.20 (3H, m, NHCHCH
3)
MS (ES+) m/z:639 [M+Na
+], 640 [M(
37Cl)+Na
+];C
27H
30CIN
6O
7PNa:理論的質量m/z 639.99
逆相HPLC(H
2O/MeOHで溶離:35分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=29.19, 29.54分)
【0201】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート18
【化22】
アルゴン雰囲気下で、無水THF(7mL)中に、保護化ヌクレオシドA(78mg、0.20ミリモル)を溶解し、tBuMgCl(1M THF溶液、1.0ml、1.0ミリモル)を1滴ずつ添加し、続いて、無水のTHF(2.0mL)中の1-ナフチル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)-ホスホロクロリデート(0.40g、0.99ミリモル)ゆっくりと添加した。混合物を、室温において、一夜、撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(3%MeOHのDCM溶液)によって精製した。得られた化合物を、H
2O/THF(4mL+4mL)に溶解し、TFA(1mL)を添加した。混合物を、室温において、30分間撹拌し、NaHCO
3を添加して、溶液を中和した。溶媒を蒸発させ、残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(0~4%MeOHのDCM溶液)及び予備TLC(10%MeOHのDCM溶液)によって精製した。
収量:50mg、2工程で38%
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.71, 3.10
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.17, 8.14 (2H, 2 x s, H-8, H-Ar), 7.88 (1H, d, J=7.7Hz, H-Ar), 7.71 (1H, dd, J=8.1, 4.2Hz, H-Ar), 7.59-7.41 (4H, m, H-Ar), 7.35-7.16 (5H, m, H-Ar), 6.30, 6.15 (1H, 2 x dd, J=8.4, 5.9Hz, H-1’), 5.33 (1H, m, H-3’), 5.18-5.06 (2H, m, CH
2Ph), 4.27-4.24, 4.21-4.12 (2H, 2 x m, H-4’, NHCHCH
3), 3.84-3.67 (2H, m, 2 x H-5’), 2.82-2.78 (1H, m, H-2
a’), 2.69-2.65, 2.64-2.61 (1H, 2 x m, H-2
b’), 1.40, 1.35 (3H, 2 x d, J=7.2Hz, NHCHCH
3)
MS (ES
+) m/z:676.16 (M+Na
+);C
30H
30CIN
6O
7PNa:理論的質量m/z 676.02
逆相HPLC (H
2O/MeOHで溶離:40分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=20.6, 21.1分)
【0202】
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン-3’-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート19
【化23】
アルゴン雰囲気下で、無水THF(10ml)中に、保護化ヌクレオシドA(0.12g、0.30ミリモル)を溶解し、tBuMgCl(1M THF溶液、1.5ml=1.5ミリモル)を1滴ずつ添加した。無水のTHF(2ml)中のフェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)-ホスホロクロリデート(0.53g、1.50ミリモル)ゆっくりと添加し、混合物を、室温において、一夜、撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(4%MeOHのDCM溶液)によって精製した。得られた化合物を、H
2O/THF(4ml+1ml)に溶解し、TFA(1ml)を添加した。NaHCO
3を添加して、溶液を中和前に、混合物を、室温において、45分間撹拌した。シリカゲルクロマトグラフィーにより、所望の生成物を得た。
収量:37mg、2工程で20%
31P-NMR (202MHz, CD
3OD):δ 3.3, 2.6
1H-NMR (500MHz, CD
3OD):δ 8.26, 8.21 (1H, 2 x s, H-8), 7.41-7.18 (10H, m, H-Ar), 6.36, 6.26 (1H, 2 x dd J=8.4, 5.8Hz, H-1’), 5.31-5.28, 5.27-5.24 (1H, 2 x m, H-3’), 5.19, 5.15 (2H, 2 x s, CH
2Ph,), 4.26-4.21 (1H, m, H-4’), 3.85-3.74 (2H, m, 2 x H-5’), 2.85-2.81, 2.69-2.62, 2.60-2.57 (2H, 3 x m, H-2’), 1.41, 1.37 (3H, 2 x dd, J=7.2, 1.2Hz, NHCHCH
3)
MS (ES
+) m/z:626.11 (M+Na
+);C
26H
28CIN
6O
7PNa:理論的質量m/z 626.14
逆相HPLC(H
2O/MeOHで溶離:35分で100/0から0/100へ、流量=1ml/分、λ=254、t
R=18.9, 19.6分)
【0203】
抗癌剤活性
本発明の化合物を、クラドリビン及び化合物Y(クラドリビンの5’-ホスホルアミデート)と比較した。
【0204】
使用した細胞株としては、下記のものが含まれる:
HEL92.1.7:赤白血病
HL-60:前骨髄球性白血病
KG-1:急性骨髄性白血病
K562:慢性骨髄性白血病
L1210:リンパ性白血病に罹ったマウスに由来するリンパ芽球性細胞株
MCF7:ヒト乳腺上皮腺癌(エストロゲン感受性)細胞株
NB4:全トランス型レチノイン酸感受性急性前骨髄球性白血病
NB4R2:全トランス型レチノイン酸非感受性急性前骨髄球性白血病
RL:非ホジキンリンパ腫
U937:組織球性リンパ腫
Z-138:マントル細胞リンパ腫
【0205】
[実施例1]
インビトロ細胞毒性研究
【0206】
6つの白血病細胞株(KG1、U937、K562、NB4R2、NB4及びHL-60)に対して、インビトロで、クラドリビンホスホルアミデート誘導体を評価した。細胞の50%が、もはや生存できない抑制濃度(IC50)を決定した(MTSアッセイを使用して算定)。段階希釈によって濃度100~0.02μMのクラドリビン及びその3’-ホスホルアミデート誘導体にて細胞を処理し、最終容積90μl中、37℃、5%CO2において、72時間、インキュベートした。MTS試薬(Promega UK Ltd.、サザンプトン、ハンプシャー)20μlを、腫瘍細胞培養物に添加し、37℃、5%CO2において、さらに4時間、インキュベートした。この時間後、490nmにおける分光光度測定によって、反応物の吸光度を測定し、生存細胞の百分率を、同一のアッセイ法において処理しなかった細胞に対して算定した。
表1は、白血病細胞株(KG1、U937、K562、NB4R2、NB4及びHL-60)に対する、本発明の化合物のインビトロでの結果を示す。
【0207】
【表2】
表において見られるように、化合物の全てが、いくらかの抗癌活性を発揮した。特に、化合物19は、テストした6つの細胞株の内の4つに対して、化合物Yよりも活性であり、5’-ProTideは、化合物19と同じホスホルアミデート部分を有する。
【0208】
[実施例2]
更なるインビトロ細胞毒性研究
ついで、下記のアッセイ法を使用して、異なる固形腫瘍及び血液系腫瘍の広いアレイにおけるその細胞毒性について、本発明の化合物のサブセットをアッセイした。
固形腫瘍及び血液系腫瘍アッセイ
CellTiterGlo(CTG、Promega-G7573)アッセイ法を使用して、選択した細胞株における生細胞数についての化合物の効果をアッセイするために、72時間にわたってインビトロ生存アッセイを行った。96穴プレートにおいて、9ポイント、3.16倍滴定での化合物の処理にて、テストを、二重で、~72時間にわたって実施した。化合物の開始時濃度198 mMであった。96穴プレートにおけるCellTiterGloを使用して、生細胞アッセイを行った。化合物を解凍した100%DMSOによって溶解して、40mMとした。解凍したDMSOにて化合物を3.16倍に連続して希釈し、培地中で溶解する前に、37℃に温めた(2μl+200μl)。化合物が培地に溶解した後、化合物を含有する培地を、インキュベーターにおいて、37℃に温め、ついで、培地中の化合物を細胞プレートに二重に添加した(50μl+50μl)。化合物の最終濃度は、198μM~19.9 nMであった。化合物の溶解度をチェックし、再び記録し、ついで、直ちに、プレートをCO2組織培養インキュベーターに移し、3日間、インキュベートした。DMSOの最終濃度は0.5%であった。
更なるスクリーニングの結果を、表2に示す。
【0209】
【表3】
表2は、細胞株MCF-7についての結果から理解されるように、本発明の化合物が、固形腫瘍において、特に有効であることを示している。
【0210】
[実施例3]
細胞毒性及び癌幹細胞活性の評価
拡張した用量範囲にわたって、細胞株KG1aにおける化合物の毒性の更なる比較分析を行い、用量範囲全体について、細胞株KG1a内の白血病幹細胞コンパートメントに対する化合物の相対的効果を評価した。このようにして、白血病細胞株における癌幹細胞を標的とする能力を評価するため、本発明の特定の化合物について、実験テストを実施した。幹細胞コンパートメントに対する化合物の相対的効果を評価するために、急性骨髄性白血病(AML)の細胞株KG1aを使用した。細胞株KG1aは、特徴的な免疫表現型(Lin-/CD34+/CD38-/CD123+)を有するマイナーの幹細胞様コンパートメントを示すとの理由から選択したものである。
【0211】
材料及び方法
KG1aの細胞培養条件
細胞株KG1aの細胞を、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100μg/ml及び20%ウシ胎児血清を補足したRPMI培地(Invitrogen、ペイズリー、英国)に維持した。続いて、細胞を96穴プレートに一定分量(細胞105個/100μl)で入れ、各一連の化合物について測定する濃度のヌクレオシドアナログ及びその各ホスホルアミデートの存在下、加湿した5%二酸化炭素雰囲気中、37℃において、72時間インキュベートした。加えて、薬剤を添加していないコントロールについても培養した。続いて、遠心分離によって細胞を採取し、アネキシンVアッセイを使用して、フローサイトメトリーによって分析した。
【0212】
インビトロアポトーシスの測定
培養した細胞を遠心分離によって採取し、ついで、カルシウムリッチ緩衝液195μlに再懸濁化した。続いて、アネキシンV(Caltag Medsytems、Botolph Claydon、英国)5μlを細胞懸濁液に添加し、洗浄前に、暗所において、10分間、細胞をインキュベートした。最終的に、カルシウムリッチ緩衝液190μlに、ヨウ化プロピジウムとともに、細胞を再懸濁化した。既に記載したように、二色免疫蛍光フローサイトメトリーによって、アポトーシスをアッセイした。続いて、LD50値(培地において、細胞の50%を死滅させるために必要な用量)を、各ヌクレオシドアナログ及びホスホルアミデートについて算定した。
【0213】
白血病幹細胞コンパートメントの免疫表現型の同定
広い濃度範囲の各被アッセイ化合物の存在下で、KG1a細胞を72時間培養した。ついで、細胞を採取し、抗-系統抗体(PE-cy7)、抗-CD34(FITC)、抗-CD38(PE)及び抗-CD123(PERCP cy5)のカクテルにて標識化した。続いて、白血病幹細胞(LSC)表現型を発現するサブ集団を同定し、培地中に残された総生存細胞の百分率として表示した。ついで、生き残った幹細胞の百分率を、用量-応答グラフ上にプロットし、化合物の効果を、8-クロロアデノシンと比較した。
【0214】
統計学的分析
一元配置分散分析(one way ANOVA)を使用して、これらの実験において得られたデータを評価した。オムニバスK2テストを使用して、Gaussian又はGaussian近似として、全てのデータを確認した。シグモイド容量-応答曲線の最良適合分析の非線形回帰及びラインから、LD50値を算定した。Graphpad Prism 6.0ソフトウェア(Graphpad Software Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア)を使用して、全ての統計分析を実施した。
【0215】
結果
アネキシンV/ヨウ化プロピジウムアッセイを使用して、インビトロ薬剤感受性を測定した。表3に、算定したLD50値も示す。
【0216】
【表4】
両化合物18及び19は、幹細胞選択性を発揮した。化合物19は、化合物Yよりも有望であり、5’-ProTideは、化合物19と同じホスホルアミデート部分を有する。化合物18は、クラドリビンと比較する場合、優先的なLSCsの標的化を示した。
【0217】
[実施例4]
マイコプラズマに感染した細胞におけるインビトロ細胞毒研究
マイコプラズマ・ハイオリニス(M. hyorinis)(ATCC 17981)を、腫瘍細胞培養物に
感染させ、2回以上の移行(初期感染によるバイアスを回避するため)の後、マイコプラズマ検出キットMycoAlert(登録商標:Lonza、バーゼル、スイス国)を使用して、良好な感染を確認した。このアッセイは半定量的ではあるが、マイコプラズマに露出した細胞のサブ培養の後3~4日で、最大感染が観察された。慢性的に感染した腫瘍細胞を、さらに、細胞株Hyorと称する。全ての腫瘍細胞培養物を、10%ウシ胎児血清(Biochrom AG、ベルリン、独国)、10mm HEPES、及び1mmピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)を補足した変性Eagle’s培地(DMEM)において維持した。5%CO2を含有するガス相を有する加湿インキュベーターにおいて、細胞を37℃で成長させた。
マイコプラズマ感染及び非感染癌幹細胞において、テスト化合物の細胞分裂阻止活性を試験した。マイコプラズマ・ハイオリニ感染をアッセイする際、単層MCF7及びMCF7.Hyor細胞を、48穴マイクロタイタープレート(Nunc(商標名)、ロスキレ、デンマーク国)に、細胞10000個/ウエル(Corning Inc.、コーニング、ニューヨーク)及び細胞100000個/ウエルで播種した。24時間後、異なった濃度のテスト化合物に細胞を露出し、72時間増殖させ(十分な細胞増殖及びマイコプラズマの成長を確保するため)、その後、細胞をトリプシン処理し、カウンターCourter(Analis、シュアルレ、ベルギー国)を使用して、計数した。異なった濃度のテスト化合物の存在下、96穴マイクロタイタープレート(Nunc)に、細胞60000個/ウエルで、懸濁液細胞(L1210、L1210.Hyor、FM3A、及びd FM3A.Hyor)を播種した。48時間、細胞を増殖させ、ついで、カウンターCourterを使用して、計数した。50%阻害濃度(ID50)は、細胞増殖を50%低減させるに必要な化合物の濃度として定義される。
【0218】
【表5】
化合物19は、化合物Yの両方よりも、マイコプラズマ・ハイオリニに感染した細胞MCF7に対する効力のロスが小さいことを示した。5’-ProTideは、化合物19及びクラドリビンと同じホスホルアミデート部分を有する。
【0219】
【表6】
化合物6は、クラドリビンよりも、マイコプラズマ・ハイオリニに感染した細胞L1210に対する効力のロスが小さいことを示した。