(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】ネクローシス阻害剤であるヘテロアリール化合物、その組成物及び用途
(51)【国際特許分類】
C07D 417/04 20060101AFI20220216BHJP
C07D 417/14 20060101ALI20220216BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20220216BHJP
C07D 513/04 20060101ALI20220216BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20220216BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220216BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20220216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C07D417/04 CSP
C07D417/14
C07D471/04 101
C07D471/04 108Q
C07D513/04 343
C07D487/04 144
C07D401/04
A61K31/4439
A61K31/444
A61K31/426
A61K31/497
A61K31/5377
A61K31/4545
A61K31/501
A61K31/506
A61K31/517
A61K31/4709
A61K47/55
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P35/00
A61P3/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2018566558
(86)(22)【出願日】2017-07-15
(86)【国際出願番号】 US2017042283
(87)【国際公開番号】W WO2018017435
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】201610581012.7
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710473744.9
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521542487
【氏名又は名称】アクロ バイオサイエンス (エイチケー) リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518445595
【氏名又は名称】ヂャン, シャオフー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, シャオフー
(72)【発明者】
【氏名】マー, ハイクォ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン, ジーユェ
(72)【発明者】
【氏名】フー, スーダン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525535(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100144(WO,A1)
【文献】特表2003-521543(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133127(WO,A1)
【文献】特開2009-102449(JP,A)
【文献】特表2008-515812(JP,A)
【文献】特表2010-501633(JP,A)
【文献】特表2011-504900(JP,A)
【文献】特表2013-512264(JP,A)
【文献】特表2013-512268(JP,A)
【文献】特表2012-530071(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016131(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/128520(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046616(US,A1)
【文献】米国特許第06200980(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0197688(US,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2015年,Vol.25,pp.3665-3670
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,Vol.22,pp.5297-5302
【文献】JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2012年,Vol.55,pp.8926-8942
【文献】REGISTRY[online],2010年08月25日,[Retrieved on 2021.4.12],Retrieved from: STN,CAS登録番号 1238376-16-3
【文献】REGISTRY[online],2008年02月29日,[Retrieved on 2021.4.12],Retrieved from: STN,CAS登録番号 1005777-51-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I
bで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、若しくは互変異性体。
【化1】
(式中、A
1、A
2、及びA
3は、独立してN又はCR
3であり、A
1、A
2、及びA
3のうち少なくとも1つはNであり
、
Lは
、O、S、NR
12、又はCH
2であり
、
R
2は、
【化2】
からなる群から選択され
、
R
1は、H、重水素、ハライド、アミノ、-NO
2、-OH、-SH、-CN、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
2-6アルケニル、又はC
2-6アルキニルであるが、但し、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニルは非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、-CF
3、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、及びC
1-6アルコキシから選択された1~3個の基で置換されており、
R
3
は、それぞれ独立してH、重水素、ハライド、アミノ、-OH、-CN、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルチオ、C
3-6シクロアルキル、又はC
1-6アルキルからなる群から選択され
、
R
7は、H、C
1-6アルキル、又はC
3-6シクロアルキルであり、
R
8は、H、C(O)R
10、C(O)NR
10R
11、C(O)OR
10、S(O)
2R
10、S(O)
2NR
10R
11、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
2-6アルケニル、フェニル、1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環、又は1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールであるが、但し、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、フェニル、3~6員複素環、及び5~6員ヘテロアリールはそれぞれ非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
1-6アルコキシ、及びそれぞれ独立してN、O、又はSである1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環からなる群から選択された1~3個の基で置換されており
、
R
10及びR
11は、それぞれ独立してH、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、フェニル、1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環、又は1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールであるが、但し、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、フェニル、3~6員複素環、及び5~6員ヘテロアリールはそれぞれ非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、-OH、-CF
3、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、C
1-6アルコキシ、及びそれぞれ独立してN、O、又はSである1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールからなる群から選択された1~3個の基で置換されているか;あるいはR
10及びR
11は一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に第一の5~6員環を形成し
ており、
R
12は、H、重水素、ハライド、-OH、C
1-3アルキル、又はC
1-6アルコキシである。)
(但し、下記の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、若しくは互変異性体を除く。
【化3】
)
【請求項2】
L
はCH
2、O、又はNHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
8は、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
からなる群から選択される化合物。
【請求項5】
治療上有効量の請求項1~
4のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体若しくは希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項6】
哺乳類(ヒトを除く。)の細胞死関連障害を治療する方法であって、
請求項1又は
4に記載の少なくとも1種の化合物又はその医薬組成物を治療上有効量で上記哺乳類に投与することを含み、
上記細胞死関連障害は、全身性炎症反応、腫瘍、癌、代謝性疾患、又は神経変性疾患である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2016年7月22日に出願された中国特許出願210610581012.7及び2017年6月21日に出願された中国特許出願201710473744.9の恩恵を主張する。これらを参照により本明細書に援用する。
【0002】
<技術分野>
本発明は、概して、ヘテロアリール化合物に関し、特に、哺乳類の炎症性疾患、腫瘍、代謝性疾患、及び神経変性疾患(脳虚血及び脳卒中等)を含むネクローシス介在性疾患を標的とした治療法において有用な新規ヘテロアリール化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
各種の細胞死は、多くの場合、形態学的基準により規定され、基本的にはアポトーシス及びネクローシスという2種類に分類される。アポトーシスは、細胞収縮、クロマチン凝縮、システイン-アスパラギン酸特異的プロテアーゼ又はカスパーゼの活性増加、及びアポトーシス小体への細胞分解の制御により特徴付けられる。アポトーシスは通常は生理学的異常であるため、炎症性ではない。ネクローシスは、細胞の恒常性維持能の障害から始まり、細胞膜統合性を損傷し続け、細胞質及びオルガネラ膨張、最終的には細胞溶解に至る。細胞質内容物が周囲の細胞外間隙へ放出されるため、通常、ネクローシスは炎症反応を生じる。
【0004】
初期の研究では、ネクローシスは、シグナル伝達現象が根底にない偶発的で制御されない細胞死として考えられていた。しかしながら、その後の研究で、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)等の炎症性サイトカインに刺激されると、いくつかの細胞がアポトーシス経路ではなくネクローシス経路をとることが示された。このような細胞型として、L929マウス線維芽細胞及びNIH3T3Nマウス線維芽細胞が挙げられる。TNF-αで促進されるネクローシス経路におけるRIP1/RIP3の機能に関する最近の研究によって、ネクローシスのメカニズムを解明する土台が築かれた。非特許文献1~3を参照されたい。
【0005】
例えば、致死的刺激によっては、細胞型及び/又は実験環境に応じてアポトーシス又はネクローシスのいずれかが誘発される。この現象の分子基盤に関して、受容体共役タンパク質キナーゼ(RIP)ファミリーに属する2種RIP1及びRIP3が、アポトーシス及びネクローシス細胞死の切り替えを制御することが明らかとなった。アポトーシス経路が機能不全になったり、阻害されたりすると、ネクローシス経路が活性化される。このように制御されたネクローシス細胞死又はネクロトーシスは、活性化されたRIP3及び混合系統キナーゼ様(MLKL)の相互作用によって仲介される。RIP1は、RIP3の機能を誘導してネクロトーシスを促進するが、RIP1、Fas関連デスドメイン(FADD)、及びカスパ―ゼ-8で形成されたリポトソーム(ripotosome)複合体のタンパク質分解活性が、RIP3のネクロトーシス促進活性と拮抗する。MLKLにおけるThr357及びSer358のRIP3リン酸化の際に、ヒトMLKLはその単量体状態から活性オリゴマー状態へと移行する。MLKLオリゴマーがホスホイノシトール及び心筋リン脂質に結合することで、ネクロソーム(necrosome)複合体が細胞質から細胞膜又はオルガネラ膜へと移動し、膜構造に透過性チャネルを形成し、膜統合性を破壊し、細胞死を誘導する。
【0006】
また、リン酸化RIP3は、グリコーゲンホスホリラーゼ(PYGL)、グルタミン酸アンモニアリガーゼ(GLUL)、及びグルタミン酸脱水素酵素1(GLUD1)を含む下流生体エネルギー酵素と相互作用することで、それらの触媒活性を高める。グリコーゲン分解及びグルタミン分解が高まると、リン酸化グルコース及びケトグルタレート等の追加の呼吸基質が供給され、ミトコンドリアクエン酸回路が促進され、最終的には活性酸素種(ROS)が過剰生成されることになる。そして、過剰ROSがミトコンドリア膜透過化(MMP)を引き起こすことで、TNF誘導性プログラムネクローシスを仲介する。結果として、ネクローシスの阻害は、糖尿病等の代謝性疾患の治療に対する標的候補となり得る。
【0007】
プログラムネクローシスは、中枢神経系の最も必須な成分であるニューロン及びグリア細胞の損傷を伴う細胞死に関与し得る。プログラムネクローシスの阻害が神経系を保護し得ることが多くの研究プロジェクトから示されている。いくつかの研究プログラムでは、ネクローシスを逆転させ、組織損傷を軽減することによって、神経系に対する害の低減を試みている。したがって、ネクローシスの阻害は、多くの場合、神経系の傷害に対して治療標的になる。例えば、虚血性脳卒中において、脳循環の減少によって、局所性又は全身性脳虚血低酸素が起こり得る。それによる多くのニューロン死に伴って、神経運動機能に影響が及ぼされ得る。結果として、ニューロン死の低減は、虚血性脳卒中の治療目標となり得る。
【0008】
したがって、ネクローシスにより引き起こされる上述の疾患を改善するために、ネクローシスの効果的な阻害剤が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Cho Y.S.et al.,Cell 2009;137(6):1112-23
【文献】Zhang D.W.et al.,Science 2009,325(5938):332-6
【文献】He,S.et al.,Nat.Immunolo.Cell 2009;137(6):1100-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、ネクローシス阻害剤であるヘテロアリール化合物並びにその組成物及び用途を提供する。開示するヘテロアリール化合物並びにその組成物及び用途は、効果的にネクローシスを阻害でき、それにより、例えば炎症、腫瘍、代謝性疾患、及び神経変性疾患(脳虚血及び脳卒中等)を含むネクローシス経路関連疾患及び障害の治療に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の態様は、下記式Iで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、若しくは互変異性体を提供する。
【化1】
【0012】
(式中、A1、A2、及びA3は、独立してN又はCR3であり、
X1、X2、及びX3は、独立してN又はCR4であり、
G1及びG2は、独立してN又はCであり、
V1及びV2は、独立してN、O、S、NR5、又はCR3であり、
Wは、V3、V4-V5、又はV4=V5であり、V3、V4、及びV5は独立してN、O、S、又はCR6であるが、但し、V4はV1と接続し、V5はV2と接続しており、
Lは、存在しないか、あるいはO、S、NR12、又はCR12R13であり、
R1は、H、重水素、ハライド、アミノ、-NO2、-OH、-SH、-CN、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、又はC2-6アルキニルであるが、但し、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルは非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、-CF3、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、及びC1-6アルコキシから選択された1~3個の基で置換されており、
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C6-12スピロ環、フェニル、1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリール、1~3個のヘテロ原子を有する3~8員複素環、又は1~3個のヘテロ原子を有する6~12員スピロ複素環であり、非置換であるか、又は1~3個のR9で置換されているが、但し、各ヘテロ原子は独立してN、O、又はSであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれ独立してH、重水素、ハライド、アミノ、-OH、-CN、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C3-6シクロアルキル、又はC1-6アルキルからなる群から選択され、
R6は、H、重水素、ハライド、-OH、-CN、C1-6アルコキシ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、又は-NR7R8であり、
R7は、H、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり、
R8は、H、C(O)R10、C(O)NR10R11、C(O)OR10、S(O)2R10、S(O)2NR10R11、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-6アルケニル、フェニル、1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環、又は1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールであるが、但し、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニル、3~6員複素環、及び5~6員ヘテロアリールはそれぞれ非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、及びそれぞれ独立してN、O、又はSである1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環からなる群から選択された1~3個の基で置換されており、
R9は、H、重水素、ハライド、-OH、オキシ、-CN、-アミノ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、又はC1-6アルコキシであるが、但し、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、及びC1-6アルコキシはそれぞれ非置換であるか、あるいはハライド、重水素、及びC1-3アルキルからなる群から選択された1~3個の基で置換されており、
R10及びR11は、それぞれ独立してH、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、フェニル、1~3個のヘテロ原子を有する3~6員複素環、又は1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールであるが、但し、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、フェニル、3~6員複素環、及び5~6員ヘテロアリールはそれぞれ非置換であるか、あるいはハライド、重水素、-CN、-OH、-CF3、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、及びそれぞれ独立してN、O、又はSである1~3個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロアリールからなる群から選択された1~3個の基で置換されているか;あるいはR10及びR11は一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に第一の5~6員環を形成しているか;あるいはR10及びR5は一緒になって、それらが結合する隣接原子と共に第二の5~6員環を形成しており、
R12及びR13は、独立してH、重水素、ハライド、-OH、C1-3アルキル、又はC1-6アルコキシである。)
【0013】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、A
3がCHであり、WがC-NR
7R
8であることにより、下記式Iaに示す構造が得られる。
【化2】
【0014】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、
【化3】
は、
【化4】
からなる群から選択されるものであり、非置換であるか、あるいはH、重水素、ハライド、アミノ、-OH、-CN、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルチオ、C
3-6シクロアルキル、及びC
1-6アルキルからなる群から独立して選択された1~3個の基で置換されている。
【0015】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、
【化5】
は、
【化6】
からなる群から選択されるものであり、非置換であるか、あるいはH、重水素、ハライド、アミノ、-OH、-CN、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルチオ、C
3-6シクロアルキル、及びC
1-6アルキルからなる群から独立して選択された1~3個の基で置換されている。
【0016】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、Lは存在しないか、あるいはCH
2、O、又はNHである。本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、R
2は、
【化7】
からなる群から選択される。
【0017】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、R
8は、
【化8】
からなる群から選択される。
【0018】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、上記化合物は、
【化9-1】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、X
1、X
2、及びX
3がCHであり、G
1及びG
2がCであり、V
1がSであり、V
2がNであり、WがC-NR
7R
8であることにより、下記式Ibに示す構造が得られる。
【化10】
【0025】
本明細書に記載する態様のいくつかの実施形態において、A
1がNであり、A
2及びA
3がCHであり、G
1及びG
2がCであり、V
1がSであり、V
2がNであり、WがC-NR
7R
8であることにより、下記式Icに示す構造が得られる。
【化11】
【0026】
本開示の他の態様は、治療上有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体若しくは希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本開示のさらに他の態様は、哺乳類のネクローシス関連障害を治療する方法であって、請求項1に記載の少なくとも1種の化合物又はその医薬組成物を治療上有効量で上記哺乳類に投与することを含み、上記ネクローシス関連障害は、全身性炎症反応、腫瘍、癌、代謝性疾患、又は神経変性疾患である、方法を提供する。
【0028】
本開示の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明を読めば当業者にはすぐに明らかになるであろう。なお、該説明には、本開示の例示的な実施形態を示し、説明しているに過ぎない。理解されるだろうが、本開示は、他の異なる実施形態も許容し、いくつかの詳細については、本開示から逸脱しない限り、様々な明らかな点での改変を許容するものである。したがって、本図面及び明細書は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例55の化合物A5によるHT29細胞におけるTNF-α誘導性ネクローシスの阻害を示す。
【
図2】実施例55の化合物A5によるL929細胞におけるTNF-α誘導性ネクローシスの阻害を示す。
【
図3】実施例55の化合物A36によるHT29細胞におけるTNF-α誘導性ネクローシスの阻害を示す。
【
図4】実施例55の化合物A36によるL929細胞におけるTNF-α誘導性ネクローシスの阻害を示す。
【0030】
詳細な説明に進む前に、以下の詳細な説明は本質的に例示に過ぎず、本発明又はその適用及び使用を限定するものではないことを理解されたい。ゆえに、本開示は、説明の便宜上、特定の例示的実施形態に示されるように図示及び説明されるが、他の様々な実施形態及び等価物並びに他の様々なシステム及び環境で実施できることが理解されよう。また、上述の背景又は以下の詳細な説明に示すいかなる理論にも拘束されるものではない。
【0031】
参照による援用
本明細書で言及した刊行物、特許、及び特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的に及び個別に参照により援用されると提示される場合と同程度に本明細書に参照により援用される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の様々な実施形態を本明細書に示し、説明しているが、これら実施形態は例示に過ぎないことは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、及び置換を行うことができる。本明細書に記載した本発明の実施形態に対する様々な代替物を用いることができることを理解されたい。
【0033】
定義
化合物は、通常、標準的な命名法を用いて本明細書に記載される。不斉中心を有する化合物の場合、(特に断りのない限り)光学異性体及びその混合物が全て包含されることを理解されたい。また、炭素炭素二重結合を有する化合物はZ型又はE型であってもよく、特に断りのない限り、該化合物の全ての異性体が本発明に含まれる。化合物が様々な互変異性体で存在する場合、記載した化合物はいかなる特定の一互変異性体にも限定されず、むしろ全ての互変異性体を包含することを意図している。
【0034】
本明細書において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、指示物の複数を含む。したがって、例えば「a molecule(分子)」と言及した場合、該分子の複数等を含む。
【0035】
本明細書において「約」又は「略」という用語は、通常、指定した量の±15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%以内であることをいう。
【0036】
化合物は、通常、標準的な命名法を用いて本明細書に記載される。不斉中心を有する化合物の場合、(特に断りのない限り)光学異性体及びその混合物が全て包含されることを理解されたい。また、炭素炭素二重結合を有する化合物はZ型又はE型であってもよく、特に断りのない限り、該化合物の全ての異性体が本発明に含まれる。化合物が様々な互変異性体で存在する場合、記載した化合物はいかなる特定の一互変異性体にも限定されず、むしろ全ての互変異性体を包含することを意図している。
【0037】
本明細書において「アルキル」という用語は、通常、直鎖又は分岐鎖飽和脂肪族炭化水素をいう。アルキル基としては、炭素原子を1~8個(C1-C8アルキル)、1~6個(C1-C6アルキル)、又は1~4個(C1-C4アルキル)有する基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、及び3-メチルペンチルが挙げられる。いくつかの例では、アルキル基の置換基が具体的に示されている。例えば、「シアノアルキル」とは、少なくとも1つのシアノ置換基で置換されたアルキル基をいう。
【0038】
本明細書において「アルケニル」という用語は、通常、少なくとも1個の不飽和炭素炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖アルケン基をいう。アルケニル基としては、炭素原子を2~8個有するC2-C8アルケニル、2~6個有するC2-C6アルケニル、2~4個有するC2-C4アルケニル基、例えば、エテニル、アリル、又はイソプロペニルが挙げられる。本明細書において「アルキニル」という用語は、通常、少なくとも1個が三重結合である1個以上の不飽和炭素炭素結合を有する直鎖又は分岐鎖アルキン基をいう。アルキニル基としては、炭素原子を2~8個有するC2-C8アルキニル、2~6個有するC2-C6アルキニル、2~4個有するC2-C4アルキニル基が挙げられる。
【0039】
本明細書において「シクロアルキル」という用語は、通常、全環員が炭素である1個以上の飽和環を有する基をいい、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチルが挙げられる。シクロアルキル基は芳香環又は複素環を有さない。例えば、特定のシクロアルキル基として、全てが炭素である3~7環員の単環を含むC3-C7シクロアルキルが挙げられる。本明細書において「シクロアルケニル」という用語は、通常、全環員が炭素である1個以上の不飽和環を有する基をいう。
【0040】
本明細書において「アルコキシ」という用語は、通常、酸素橋を介して結合した上述のアルキル基をいう。アルコキシ基としては、炭素原子を1~6個有するC1-C6アルコキシ、1~4個有するC1-C4アルコキシ基が挙げられる。代表的なアルコキシ基として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、2-ペントキシ、3-ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、及び3-メチルペントキシ挙げられる。
【0041】
本明細書において「アルキルアミノ」という用語は、通常、-NH-R1又は-N(R1)(R2)(式中、R1及びR2は、独立してアルキル、シクロアルキル、及び(シクロアルキル)アルキル基から選択される。)の一般構造を有する第二級又は第三級アミンをいう。このような基としては、例えば、モノ-及びジ-(C1-C6アルキル)アミノ基(各C1-C6アルキルは同じであっても異なっていてもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。「アルキルアミノ」という用語で用いる「アルキル」の定義が、シクロアルキル及び(シクロアルキル)アルキル基を含む他の全てのアルキル含有基で用いられる「アルキル」の定義と異なることは明らかであろう。
【0042】
本明細書において「ハロゲン」という用語は、通常、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素をいう。本明細書において「ハロアルキル」という用語は、通常、独立して選択された1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基をいう(例えば、「C1-C6ハロアルキル」基は、1~6個の炭素原子と少なくとも1個のハロゲンとを有する。)。ハロアルキル基の例としては、モノ-、ジ-、又はトリ-フルオロメチル、モノ-、ジ-、又はトリ-クロロメチル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-フルオロエチル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-クロロエチル、及び1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチル-エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書において「ヘテロアリール」という用語は、通常、少なくとも1個の芳香環が、N、O、及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基をいう。ヘテロアリールとしては、例えば5~12員ヘテロアリールが挙げられる。例としては、イミダゾール、フラン、フラザン、イソチアゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、テトラゾール、チアゾール、及びチオフェンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書において「複素環」という用語は、通常、少なくとも1個の環原子が炭素であり、少なくとも1個の環原子がN、O、及びSから選択されるヘテロ原子である3~12個の環原子を有する環構造をいう。複素環基は芳香族であっても非芳香族であってもよい。非芳香族複素環の例としてピペリジン及びオキセタンが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族複素環の例としてチアゾール及びピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書において「置換基」及び「置換された」という用語は、通常、分子基が所望の分子内の原子に共有結合していることを意味する。例えば、環置換基は、環員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)に共有結合したハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基等の基であってもよい。芳香族基の置換基は、通常、炭素環原子に共有結合している。直鎖置換基は、直鎖の鎖員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)に共有結合したハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基等の基であってもよい。
【0046】
本明細書において「ビシクロヘテロアルキル」という用語は、通常、1又は2個の原子を共有する二重環構造であって、環中にN、O、及びSからなる群から独立して選択された少なくとも1個のヘテロ原子を有する二重環構造をいう。本明細書において「ビシクロヘテロアルキレン」という用語は、通常、他の2個の基に結合できる2価のビシクロヘテロアルキル基をいう。
【0047】
本明細書において「シクロアルキルアミン」という用語は、通常、環中の炭素原子に結合したアミノ基を有する環構造、又は環員として窒素原子を有する環構造のいずれかをいう。
【0048】
本明細書において「シクロアルキルアミド」という用語は、通常、アミド炭素を介して環中の炭素原子に結合したアミド基を有する環構造、又は環員となるアミド窒素及びアミド炭素の両原子を有する環構造のいずれかをいう。
【0049】
本明細書において「環状尿素」という用語は、通常、環員となる尿素炭素及び尿素窒素の両原子を有する環構造をいう。環状尿素の一例としてオキソイミダゾリジンが挙げられる。
【0050】
本明細書において「薬学的に許容される」という用語は、通常、投与対象へ投与しても安全である化合物形態をいう。例えば、薬学的に許容されるものとして、アメリカ食品医薬品局(FDA)等の所管官庁又は規制機関によって経口摂取等の投与経路による哺乳類での使用が承認されている式Iで表される化合物の遊離塩基、塩形態、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、又は誘導体が挙げられる。
【0051】
式I、Ia、及びIbで表される化合物に含まれるものとして、遊離塩基化合物の薬学的に許容される塩形態が挙げられる。本明細書において「薬学的に許容される塩」という用語は、通常、規制機関により承認されているアルカリ金属塩又は遊離酸若しくは遊離塩基の付加塩を形成するのに一般的に使用される塩をいう。塩は、イオン会合、電荷-電荷相互作用、共有結合、錯化、配位等によって形成される。薬学的に許容される限り、塩の性質は限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、式I、Ia、及びIbの化合物は、該化合物を医薬組成物として投与して投与対象を治療するのに使用される。このため、一実施形態において、該化合物は、担体、希釈剤、又はアジュバント等の1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わされて好適な組成物を形成する。該組成物については、本明細書でより詳細に説明する。
【0053】
本明細書において「賦形剤」という用語は、通常、医薬品有効成分(API)以外の薬学的に許容される添加剤、担体、アジュバント等の好適な成分をいい、典型的には製剤及び/又は投与目的で配合される。「希釈剤」及び「アジュバント」は、以下の明細書で定義する。
【0054】
本明細書において「治療する」、「治療」、及び「治療法」という用語は、通常、治療的治療及び予防的治療を含む治療をいうが、これらに限定されない。予防的処置は、通常、完全に障害の発症を予防すること、あるいは個体の前臨床的に明らかな段階の障害の発症を遅延させることのいずれかに相当する。
【0055】
本明細書において「有効量」という用語は、通常、他の治療法に典型的に伴う有害な副作用を回避しつつ、各薬剤自体の処置中の障害重症度及び発生頻度を改善するという目標を達成できる各薬剤の量を定量することをいう。一実施形態において、有効量は、単回投与形態又は複数回投与形態で投与される。
【0056】
選択した投与経路に関わらず、本発明の化合物は、好適な水和物及び/又は本発明の医薬組成物として使用できるが、薬学的に許容される投与形態に製剤化されるか、あるいは当業者に従来公知の他の方法で製剤化される。
【0057】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実投与量は、患者に対して毒性を示すことなく、個々の患者、組成物、及び投与様式について所望の治療反応を達成できる有効成分の有効量が得られるように変更できる。
【0058】
選択される投与量は、用いる本発明の個々の化合物の活性、投与経路、投与時間、用いる個々の化合物の排出速度、処置時間、用いる個々のヘッジホッグ阻害剤と併用する他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、及び前病歴等の医療分野で周知の要因を含む様々な要因により異なることとなる。
【0059】
当該技術分野における通常の技術を有する医師又は獣医師であれば、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方できる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成物中で用いる本発明の化合物の投与を、所望の治療効果を達成するのに必要な量よりも少ない量で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やすことも考えられる。
【0060】
一般的に、本発明の化合物の好適な日用量は、治療効果を発揮するのに有効な最低量である化合物の量となる。このような有効量は、通常、上述した要因によって異なることとなる。通常、患者に対する本発明の化合物の静脈内、脳室内、及び皮下投与量は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.0001~約100mgの範囲となる。投与様式は、投与量に大きく影響し得る。局所的な送達経路ではより高用量を使用できる。
【0061】
活性化合物の有効な日用量は、必要に応じて、1日を通して適当な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回以上の分割用量として投与してもよく、場合によっては単回投与形態で投与してもよい。当業者であれば、個々の化合物、症状の重症度、及び投与対象の副作用の受けやすさに応じて投与量が変動することをすぐに理解するだろう。本明細書に開示する特定の化合物の投与量は、様々な手段を用いて当業者が容易に決定できる。
【0062】
医薬組成物/製剤
一実施形態は、式Iの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、若しくは薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明は、Wntシグナル経路の制御及び/又は哺乳類のWnt介在性障害の治療のための方法を提供する。該方法は、治療上有効量の少なくとも1種の式Iの化合物又はその医薬組成物を、場合によっては第二の治療剤と組み合わせて哺乳類の投与対象に投与することを含む。該方法は、全身性硬化症、皮膚線維症、特発性肺線維症、腎線維症、肝線維症、薬物性線維症、放射線誘発線維症、結腸直腸癌、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、食道扁平上皮癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、脳腫瘍、ウィルムス腫瘍、基底細胞癌、メラノーマ、頭頸部癌、子宮頸癌、及び前立腺癌からなる群から選択される細胞増殖性障害を治療又は予防することを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は医薬組成物に製剤化される。医薬組成物は、医薬品として使用できる製剤へと活性化合物を加工しやすくする1種以上の薬学的に許容される不活性成分を使用して従来の方法で製剤化される。適切な製剤化は、選択する投与経路によって異なる。本明細書に記載する医薬組成物の概要は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed.,Easton,Pa.:Mack Publishing Company(1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania(1975);Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.(1980);and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.,Lippincott Williams&Wilkins(1999)で確認できる。これらの文献の記載を参照により本明細書に援用する。
【0065】
本明細書において医薬組成物とは、式Iの化合物と他の化学成分(すなわち、薬学的に許容される不活性成分)との混合物をいい、該他の化学成分としては、担体、賦形剤、結合剤、充填材、懸濁化剤、フレーバー剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、浸透促進剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、又はこれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。医薬組成物とすることで、化合物を生物に投与しやすくなる。本明細書に記載する治療又は使用方法を実施する上で、治療上有効量の本明細書に記載の化合物が、治療対象の疾患、障害、又は異常を有する哺乳類に医薬組成物として投与される。いくつかの実施形態において、上記哺乳類はヒトである。治療上有効量は、疾患の重症度、投与対象の年齢及び相対的健康状態、使用化合物の効力等の要因に応じて幅広く変動し得る。上記化合物は、単独で使用してもよく、混合物の成分として1種以上の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本明細書に記載する医薬製剤は、適当な投与経路で投与対象に投与される。該投与経路としては、経口、非経口(静脈内、皮下、筋肉内等)、鼻腔内、頬側、局所、直腸、又は経皮投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する医薬製剤としては、水性分散液、自己乳化性分散体、固溶体、リポソーム型分散体、エアロゾル、固体投与形態、粉末、即放性製剤、徐放性製剤、速溶性製剤、錠剤、カプセル、丸剤、遅延放出性製剤、持続放出性製剤、パルス放出性製剤、多粒子製剤、及び即放性・徐放性混合製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
経口投与用製剤は全て該投与に適した投与量である。そのような投与単位の例として錠剤又はカプセルが挙げられる。いくつかの実施形態において、これらに含まれる有効成分量は約1~2000mg、有利には約1~500mg、典型的には約5~150mgである。ヒト等の哺乳類に好適な日用量は、患者の状態等の要因に応じて幅広く変動するものの、繰り返しになるが、通常の方法及びやり方で決定できる。
【0068】
従来の製剤化方法としては、例えば、下記方法(1)~(6)のうちの1つ又はそれらの組み合わせが挙げられる。(1)乾燥混合、(2)直打、(3)粉砕、(4)乾燥若しくは非水系造粒、(5)湿式造粒、又は(6)融合。他の方法としては、例えば、噴霧乾燥、パンコーティング、溶融造粒、造粒、流動床噴霧乾燥若しくはコーティング(ワースターコーティング等)、タンジェンシャルコーティング、トップスプレー、打錠、押出し等が挙げられる。
【0069】
合成法
本発明の方法は、幅広い範囲の細胞、組織、及び器官の修復及び/又は機能性能の制御においてネクローシスを阻害する式I、Ia、及びIbの化合物のうち少なくとも1種を使用するものであってもよく、神経組織の制御、骨及び軟骨形成及び修復、精子形成の制御、平滑筋の制御、原腸由来の胃及び肝臓等の器官の制御、造血機能の制御、皮膚及び毛髪成長の制御等にわたる治療用途及び化粧用途に使用できる。したがって、本発明の方法及び組成物は、これら全ての用途において関係し得るネクローシス阻害剤として主題の阻害剤を使用するものである。また、主題の方法は、培養物として提供された細胞(インビトロ)又は動物個体中の細胞(インビボ)に対して実施できる。
【0070】
以下の実施例及び製造例によって、本明細書に記載の化合物及び該化合物の製造方法を説明及び例示する。通常、本明細書に記載の化合物は、一般化学分野で公知の方法で製造できる。
【0071】
本発明の化合物は、市販の材料を出発材料として、以下に記載するものを含む様々な合成経路を用いて製造できる。本発明の出発材料は公知の市販品であってもよく、あるいは当該技術分野で公知の方法と同様に又はそれに従って合成してもよい。多くの出発材料を公知方法に従って調製できるが、特に実施例に記載する方法を用いて調製できる。出発材料の合成において、官能基は、必要に応じて好適な保護基で保護されている場合もある。官能基は、当該分野で公知の手順に従って除去できる。
【0072】
保護基による官能基の保護、保護基自体、及びその除去反応(一般的に「脱保護」という)は、例えば、J.F.W.McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,London and New York(1973)、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley,New York(1981)、The Peptides,Volume 3,E.Gross and J.Meienhofer editors,Academic Press,London and New York(1981)等の標準的な参考文献に説明されている。
【0073】
本明細書に記載する合成手順はいずれも、溶媒又は希釈剤を使用せずに又は使用して(通常)、公知の反応条件、有利には本明細書に記載する条件で実施できる。
【0074】
本発明は、所望の最終化合物を得る前の「中間」化合物(記載した合成手順で得られた単離された又はされていない構造物等)をさらに包含する。過渡的な出発材料を用いて各工程を実施して得られた構造体、記載の方法の任意の段階を変更して得られた構造体、及び反応条件下で出発材料を形成する構造体は、いずれも本発明に含まれる「中間体」である。さらに、反応誘導体若しくは塩である出発材料、又は本発明に係る方法を用いて得られる化合物を使用して得られた構造体、並びに本発明の化合物をその場で処理して得られた構造体も本発明の範囲内に含まれる。
【0075】
同様に、新規の出発材料及び/又は中間体やそれらの製造方法も本発明の主題である。選択した実施形態において、そのような出発材料は、所望の化合物が得られるように選択された反応条件で使用される。
【0076】
本発明の出発材料は公知の市販品であってもよく、あるいは当該技術分野で公知の方法と同様に又はそれに従って合成してもよい。多くの出発材料を公知方法に従って調製できるが、特に実施例に記載する方法を用いて調製できる。出発材料の合成において、官能基は、必要に応じて好適な保護基で保護されている場合もある。保護基、その導入及び除去は上述した通りである。
【0077】
全ての試薬及び溶媒は市販品を用いた。必要な場合、全ての試薬及び溶媒は以下の標準的な方法で精製した。テトラヒドロフランは、ナトリウムを用いた蒸留により精製した。薄層クロマトグラフィー(TLC、GF254)分析及びカラム精製(100~200メッシュ)は、いずれも石油エーテル(沸点60~90℃)/酢酸エチル(v/v)を溶離液としてシリカゲル(Qingdao Haiyang Chemical Co.Ltd.又はYantai Chemical Co.Ltd.)を用いて行い、スポットは、254nmでのUV可視化及びI2蒸気若しくはリンモリブデン酸を用いて検出した。核磁気共鳴スペクトルは、いずれも内部標準をTMSとしてBruck-400分光計を用いて400MHzで記録した。LC-MSは、LC-MSDTrap記録装置、検出波長214nm及び254nmのダイオードアレイ検出器(DAD)、並びにESI源を使用したAgilent1100システムで行った。HPCLカラムは、Agela Durashell C18 3.5μm 4.6×50mmカラムである。グラジエントは、0.1NH4HCO3水溶液及びアセトニトリルを5/95→95/5の勾配で記載ランタイム(例えば5分)で使用し、流量1.8mL/分として行った。
【0078】
合成方法の大きさ及びスケールは、最終産物の所望量に応じて変動する。実施例には特定の反応物及び量が記載されているが、当業者には、同じ化合物を生成する同様に実行可能な他の代替の反応物が明らかであることが理解されよう。したがって、通常の酸化剤、還元剤、様々な性質(非プロトン性、無極性、極性等)の溶媒が用いられる場合、等価物は当該分野で公知であり、本方法で使用するために本明細書で考慮される。
【0079】
以下に示す工程の多くは、反応終了後の様々なワークアップを示している。ワークアップとしては、通常の方法で反応をクエンチして、残留した触媒活性及び出発試薬を終止することが挙げられる。その後、通常は、有機溶媒を添加し、有機層から水層を分離する。生成物は典型的には有機層から得られ、未使用反応物等の偽の副生成物及び不要な薬品は通常は水層に捕捉されて廃棄される。文献中に見られる標準的な有機合成手順におけるワークアップの後には、通常、無水Na2SO4等の乾燥剤に曝露して生成物を乾燥して、有機層に部分的に溶解したままの余分な水又は水性副生成物を除去し、残りの有機層の濃縮を行う。溶媒に溶解した生成物の濃縮は、例えば加圧蒸発、加温及び加圧下の蒸発等の任意の公知手段で実行できる。このような濃縮は、例えばロータリーエバポレーター蒸留等の標準的な実験装置を用いて実行できる。その後、場合によっては、精製工程が1回以上行われる。該精製工程としては、フラッシュカラムクロマトグラフィー、様々な媒体による濾過、及び/又は当該技術分野で公知の他の分取方法、及び/又は結晶化/再結晶が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Addison Ault,“Techniques and Experiments for Organic Chemistry,”6th Ed.,University Science Books,Sausalito,Calif.,1998,Ann B.McGuire,Ed.,pp.45-59を参照)。
【実施例】
【0080】
一般的な合成経路
以下に示す方法A~Fは、式I、Ia、及びIbで表される化合物が得られるいくつかの一般的な合成経路の実施形態である。各方法の詳細な反応条件は下記実施例で確認できる。
【0081】
【0082】
6-ブロモベノチアゾール保護体を宮浦ホウ素化反応に供して、ボロン酸生成物を得る(工程a)。ボロン酸生成物をハロゲン化ヘテロアリールと鈴木カップリング反応により反応させて、ヘテロアリール置換ベノチゾール化合物を得る(工程b)。最後に、ヘテロアリール環の遊離アミンをアシル化して、最終生成物を得る(工程c)。
【0083】
【0084】
アセトアミド生成物を加水分解して、置換ベノチゾールアミンを得る(工程d)。最後に、ベノチアゾール環の遊離アミンをアシル化して、最終生成物を得る(工程e)。
【0085】
【0086】
ハライド置換ヘテロアリールアミンをアシル化して、ハライド置換ヘテロアリールアミドを得る(工程f)。次に、ハライド置換ヘテロアリールアミドを宮浦ホウ素化反応に供して、ボロン酸生成物を得る(工程g)。ボロン酸生成物をハロゲン化ヘテロアリールと鈴木カップリング反応により反応させて、最終生成物を得る(h)。
【0087】
【0088】
ハライド置換ビヘテロアリール環を宮浦ホウ素化反応に供して、ボロン酸生成物を得る(工程i)。次に、ボロン酸生成物を臭化ヘテロアリールと鈴木カップリング反応により反応させて、最終生成物を得る(工程j)。
【0089】
【0090】
3-メチルピコリン酸をエステル化して、3-メチルピコリン酸エチルを得る(工程k)。次に、2-(エトキシカルボニル)-3-メチルピリジン1-オキシドにm-CPBA酸化を施す(工程l)。次に、2-(エトキシカルボニル)-3-メチルピリジン1-オキシドを三塩化ホスホリルで塩素化させることで、6-クロロ-3-メチルピコリン酸エチルが生成される(工程m)。6-クロロ-3-メチルピコリン酸エチルを加水分解して、ピコリン酸を得る。このピコリン酸をクルチウス転位反応に供して、シクロヘキシル6-クロロ-3-メチルピリジン-2-イルカルバメートを得る(工程n及びo)。クロロピリジン中間体をボロン酸生成物と鈴木カップリング反応により反応させて、最終生成物を得る(工程p)。
【0091】
【0092】
市販試薬1-(4-アミノフェニル)エタノンをチオシアン酸カリウムと反応させて、1-(2-アミノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)エタノンを得る(工程q)。ベノチアゾールの遊離アミンをアシル化して、N-(6-アセチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミドを得る(工程r)。次いで、アセトアミドをBr2で臭素化することで、N-(6-(2-ブロモアセチル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミドが生成される(工程s)。α-ブロモケトン中間体をアセト酢酸エチルを用いてアルキル化して、4-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-アセチル-4-オキソブタン酸エチルを得る(工程t)。ベンゾチアゾール保護体をヒドラジンを用いて環化して、6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチル-4,5-ジヒドロピリダジン-4-カルボン酸エチルを得る(工程u)。次いで、ジヒドロピリダジンを臭素で酸化することで、ピリダジン化合物が生成される(工程v)。ピリダジン化合物を加水分解して(工程w)、ピリダジン酸を得る。このピリダジン酸をクルチウス転位反応に供して、最終生成物を得る(工程x)。
【0093】
【0094】
工程1:N-(6-ブロモベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
6-ブロモベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(2.50g、10.7mmol)及びDMAP(1.33g、12.8mmol)を含む0℃のジクロロメタン20mLの攪拌溶液にAc2O(1.23mL、13.0mmol)を滴下した。室温で一晩行った後、混合物に1N HCl100mLを加えてクエンチした。得られた沈殿物を濾過した。ケーキを水洗し、真空乾燥して、白色固体のA42-1を得た(2.30g、79%)。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ9.90(brs,1H)、7.94(s,1H)、7.61(d,J=10.4Hz、1H)、7.54(d,J=10.4Hz、1H)、2.30(s,3H)
【0095】
工程2:N-(6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾ-[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
100mLフラスコにA42-1(2.10g、7.75mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.00g、11.8mmol)、KOAc(3.00g、30.6mmol)、及びPd(dppf)Cl2(560g、0.765mmol)を仕込み、次いでDMSO50mLを加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を90℃で8時間行った。室温に冷却した後、混合物を濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈した。有機相を塩水で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣を石油エーテル中で再結晶させて、褐色固体のA42-2を得た(2.40g、97%)。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ8.30(s,1H)、7.87(d,J=8.0Hz、1H)、7.72(d,J=8.0Hz、1H)、2.30(s,3H)、1.37(s,12H)
【0096】
工程3:N-(6-(5-アミノ-6-メチルピリジン-3-イル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
25mLフラスコにA42-2(318mg、1.00mmol)、A42-3として5-ブロモ-2-メチルピリジン-3-アミン(187mg、1.00mmol)、K2CO3(345mg、2.50mmol)、及びPd(PPh3)4(90mg、0.078mmol)を仕込み、次いでジオキサン/H2O(10mL/0.5mL)を加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を80℃で8時間行った。室温に冷却した後、得られた沈殿物を濾過した。ケーキを酢酸エチルで洗浄して、白色固体のA42-4を得た(150mg、50%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.13(s,1H)、8.00(s,1H)、7.73(d,J=8.4Hz、1H)、7.58(d,J=8.4Hz、1H)、7.20(s,1H)、5.14(s,2H)、2.30(s,3H)、2.18(s,3H)
【0097】
工程4:N-(5-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-メチルピリジン-3-イル)-2-シクロプロピルアセトアミド
A42-4(30mg、0.10mmol)、2-シクロプロピル酢酸(12mg、0.12mmol)、HATU(57mg、0.15mmol)、及びTEA(15mg、0.15mmol)を含むDMF2mLの混合物を室温で一晩攪拌した。その後、混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を塩水で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、白色固体のA42を得た(17mg、45%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.41(s,1H)、9.44(s,1H)、8.62(s,1H)、8.32(s,1H)、8.16(s,1H)、7.82(d,J=8.4Hz、1H)、7.72(d,J=8.4Hz、1H)、2.46(s,3H)、2.31(d,J=7.0Hz、2H)、2.22(s,3H)、1.13-1.09(m,1H)、0.52-0.51(m,2H)、0.25-0.24(m,2H)
【0098】
【0099】
工程1:シクロヘキシル(4-ニトロフェニル)カーボネート
シクロヘキサノール(12.0g、118mmol)及びDMAP(1.2g、9.9mmol)を含む0℃のTHF50mLの撹拌溶液にA36-1としてカルボノクロリド酸4-ニトロフェニル(20g、99mmol)を複数回に分けて加えた。反応を室温で4時間行った。溶媒を真空留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:2)で精製して、白色固体のA36-2を得た(12.4g、47%)。
【0100】
工程2:シクロヘキシル(5-ブロモ-2-メチルピリジン-3-イル)カルバメート
5-ブロモ-2-メチル-ピリジン-3-アミン(1.4g、7.6mmol)を含む0℃の無水THF20mLの撹拌溶液にNaHMDS(2M、8mL、16mmol)を滴下した。15分間撹拌した後、A36-2(2.4g、9.1mmol)を含む無水THF5mLの溶液を滴下した。反応を0℃でさらに15分間行った。その後、水を加えて反応をクエンチした。混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を1N NaOHで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=7:1)で精製して、黄色固体のA36-3を得た(2.3g、82%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.48(s,1H)、8.26(s,1H)、6.38(s,1H)、4.87-4.67(m,1H)、2.46(s,3H)、2.01-1.95(m,2H)、1.80-1.71(m,2H)、1.53-1.20(m,6H)
【0101】
工程3:シクロヘキシル(5-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(A36)
50mLフラスコにA36-3(1.9g、6.29mmol)、A42-2(1.96g、6.29mmol)、K2CO3(2.17g、15.7mmol)、及びPd(PPh3)4(580mg、0.502mmol)を仕込み、次いで、ジオキサン/H2O(44mL/4mL)を加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を80℃で12時間行った。溶媒を真空留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、白色固体のA36を得た(750mg、28%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.41(s,1H)、9.12(s,1H)、8.59(s,1H)、8.31(s,1H)、8.10(s,1H)、7.82(d,J=8.4Hz、1H)、7.72(d,J=8.4Hz、1H)、4.74-4.56(m,1H)、2.46(s,3H)、2.22(s,3H)、1.92-1.89(m,2H)、1.75-1.67(m,2H)、1.56-1.25(m,6H)
【0102】
【0103】
工程1:シクロヘキシル(5-(2-アミノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(A70)
A36(300mg、0.71mmol)及び1滴の濃HClを含むMeOHの混合物を60℃に一晩加熱した。室温に冷却した後、混合物を飽和NaHCO3水溶液で塩基性化した。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去して、白色固体を得た(220mg、81%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ9.09(s,1H)、8.52(s,1H)、8.02(s,1H)、8.00(s,1H)、7.60(s,2H)、7.51(d,J=8.4Hz、1H)、7.40(d,J=8.4Hz、1H)、4.74-4.51(m,1H)、2.43(s,3H)、1.95-1.87(m,2H)、1.78-1.65(m,2H)、1.58-1.21(m,6H)
【0104】
工程2:シクロヘキシル(2-メチル-5-(2-プロピオンアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)ピリジン-3-イル)カルバメート(A37)
A70(30mg、0.08mmol)、プロピオン酸(12mg、0.16mmol)、HATU(63mg、0.16mmol)、及びTEA(17mg、0.16mmol)を含むDMF1mLの混合物を室温で一晩撹拌した。その後、混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、白色固体を得た(5mg、14%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.37(s,1H)、9.80(s,1H)、8.63(s,1H)、8.31(s,1H)、8.15(s,1H)、7.80(d,J=8.0Hz、1H)、7.71(d,J=8.4Hz、1H)、7.36(d,J=10.6Hz、4H)、7.26(s,1H)、3.75(s,2H)、2.50(q,J=7.6Hz、2H)、2.44(s,3H)、1.12(t,J=7.6Hz、3H)
【0105】
【0106】
工程1:シクロヘキシル(2-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-イル)カルバメート
25mLフラスコにA36-3(80mg、0.25mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(95mg、0.38mmol)、KOAc(60mg、0.63mmol)、及びPd(dppf)Cl2(18mg、0.03mmol)を仕込み、次いでジオキサン3mLを加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を100℃で3時間行った。次いで、混合物を濾過し、濾液を濃縮して、褐色油状物を得た(200mg)。この油状物を次の工程でさらに精製は行わずに使用した。
【0107】
工程2:N-(5-ブロモピリジン-2-イル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド
5-ブロモピリジン-2-アミン(20g、115.6mmol)及びTsCl(24.2g、127.2mmol)を含むピリジン80mLの混合物を90℃で一晩加熱した。室温に冷却した後、溶媒を真空留去した。残渣に100mLを注いだ。得られた沈殿物を濾過した。ケーキを水洗し、真空乾燥して、白色固体を得た(35.5g、93%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ11.25(s,1H)、8.27(s,1H)、7.89(d,J=8.8Hz、1H)、7.79(d,J=8.0Hz、2H)、7.37(d,J=8.0Hz、2H)、7.03(d,J=8.8Hz、1H)、2.35(s,3H)
【0108】
工程3:(Z)-2-(5-ブロモ-2-(トシルイミノ)ピリジン-1(2H)-イル)アセトアミド
A81-1(35.5g、107.7mmol)、DIPEA(16.7g、129.2mmol)、及び2-ヨードアセトアミド(23.9g、129.2mmol)を含むDMF80mLの混合物を室温で一晩撹拌した。その後、水1Lを加えた。得られた沈殿物を濾過した。ケーキを水洗し、真空乾燥して、灰色固体を得た(50.0g、粗生成物)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.37(s,1H)、7.87(d,J=9.6Hz、1H)、7.79(s,1H)、7.65(d,J=7.6Hz、2H)、7.39(brs,1H)、7.30-7.26(m,3H)、4.78(s,2H)、2.34(s,3H)
【0109】
工程4:N-(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド
A81-2(18g、46mmol)を含む室温のCH2Cl280mLの撹拌溶液にTFAA(48.3g、230mmol)を加えた。混合物を60℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、混合物を飽和NaHCO3水溶液で塩基性化してpH=7にした。得られた沈殿物を濾過した。ケーキを水洗した。濾液をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣を石油エーテル中で再結晶させて、褐色固体を得た(15g、粗生成物)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.54(s,1H)、8.96(s,1H)、8.24(s,1H)、7.51(d,J=9.4Hz、1H)、7.42(d,J=9.4Hz、1H)
【0110】
工程5:6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-アミン
A81-3(15g、粗生成物、46mmol)を含む1N NaOH/EtOH(50mL/40mL)の混合物を80℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣を石油エーテル中で再結晶させて、褐色固体を得た(8.3g、85%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.60(s,1H)、7.32-7.05(m,2H)、7.00(s,1H)、5.22(s,2H)
【0111】
工程6:N-(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミド
A81-4(850mg、4.0mmol)、シクロプロパンカルボン酸(413mg、4.8mmol)、DIPEA(774mg、6.0mmol)、及びHATU(1.8g、4.8mmol)を含むDMF10mLの混合物を室温で一晩攪拌した。水100mLを加えた後、得られた沈殿物を濾過した。ケーキを酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥して、桃色固体を得た(450mg、40%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ11.03(s,1H)、8.87(s,1H)、8.06(s,1H)、7.40(d,J=9.6Hz、1H)、7.31(d,J=9.6Hz、1H)、1.92-1.91(m,1H)、0.80-0.76(m,4H)
【0112】
工程6:シクロヘキシル(5-(2-(シクロプロパンカルボキサミド)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)-2-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(A81)
25mLフラスコにA36-4(200mg、粗生成物、0.25mmol)、A81-5(70mg、0.25mmol)、K2CO3(69mg、0.5mmol)、及びPd(PPh3)4(29mg、0.25mmol)を仕込み、次いでジオキサン/H2O(3mL/0.3mL)を加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を80℃で12時間行った。溶媒を真空留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、白色固体を得た(43mg、40%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ10.99(s,1H)、9.12(s,1H)、8.95(s,1H)、8.56(s,1H)、8.10-8.02(m,2H)、7.52(s,2H)、4.70-4.57(m,1H)、2.45(s,3H)、2.00-1.89(m,3H)、1.79-1.68(m,2H)、1.58-1.20(m,6H)0.75(m,4H)
【0113】
【0114】
工程1:N-(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)アセトアミド
A81-4(850mg、4.0mmol)及びTEA(606mg、6.0mmol)を含む0℃のジクロロメタン10mLの撹拌溶液に塩化アセチル(345mg、4.4mmol)を滴下した。反応物を室温で一晩撹拌した。濾過後、ケーキをジクロロメタンで洗浄して、白色固体のA50-1を得た(940mg、93%)。
【0115】
工程2:N-(6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)アセトアミド
25mLフラスコにA50-1(200mg、0.94mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(264mg、1.04mmol)、KOAc(294mg、3.0mmol)、及びPd(dppf)Cl2(42mg、0.05mmol)を仕込み、次いでトルエン3mLを加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を100℃で12時間行った。次いで、混合物を濾過し、濾液を濃縮して、褐色固体のA50-2を得た(260mg、粗生成物)。この固体を次の工程でさらに精製は行わずに使用した。
【0116】
工程3:シクロヘキシル(5-(2-アセトアミドイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)-2-メチルピリジン-3-イル)カルバメート(A50)
25mLフラスコにA36-3(62mg、0.2mmol)、A50-2(60mg、0.2mmol)、K2CO3(70mg、0.5mmol)、及びPd(PPh3)4(23mg、0.02mmol)を仕込み、次いでジオキサン/H2O(4mL/0.4mL)を加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を80℃で12時間行った。溶媒を真空留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、白色固体のA50を得た(12mg、15%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ10.73(s,1H)、9.15(s,1H)、8.96(s,1H)、8.55(s,1H)、8.13(s,1H)、8.07(s,1H)、7.52(s,2H)、4.70-4.57(m,1H)、2.45(s,3H)、2.08(s,3H)、1.95-1.90(m,2H)、1.80-1.66(m,2H)、1.57-1.50(m,1H)、1.49-1.26(m,5H)
【0117】
【0118】
工程1:3-メチルピコリン酸エチル
3-メチルピコリン酸(2.74g、20mmol)を含む0℃のEtOH50mLの撹拌溶液にSOCl2(2.60g、60mmol)を滴下した。滴下後、混合物を還流しながら一晩撹拌した。室温に冷却した後、混合物をNaHCO3で塩基性化した。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去して、淡色油状物のA56-1得た(2.60g、79%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.54(s,1H)、7.60(d,J=7.4Hz、1H)、7.32(s,1H)、4.46(q,J=6.8Hz、2H)、2.58(s,3H)、1.44(t,J=6.8Hz、3H)
【0119】
工程2:2-(エトキシカルボニル)-3-メチルピリジン1-オキシド
A56-1(2.60g、15.8mmol)を含む0℃のジクロロメタン50mLの撹拌溶液にm-CPBA(3.84g、18.9mmol)を複数回に分けて加えた。室温で一晩撹拌した後、混合物をジクロロメタンで希釈した。有機相を飽和NaHCO3水溶液で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:2)で精製して、褐色固体のA56-2を得た(2.23g、78%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.07(d,J=4.8Hz、1H)、7.21-7.15(m,1H)、7.12(d,J=6.8Hz、1H)、4.50(q,J=6.4Hz、2H)、2.29(s,3H)、1.41(t,J=6.4Hz、3H)
【0120】
工程3:6-クロロ-3-メチルピコリン酸エチル
0℃のDMF20mLの撹拌溶液にPOCl3(3.77g、24.6mmol)を滴下した。0℃で30分間撹拌した後、A56-2(2.23g、12.3mmol)のDMF溶液を加えた。反応を室温で一晩行った。水を加えてクエンチした後、混合物をNaHCO3で塩基性化した。水相を石油エーテル:酢酸エチル=1:1で抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去して、淡色油状物のA56-3を得た(1.68g、68%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.56(d,J=8.0Hz、1H)、7.35(d,J=8.0Hz、1H)、4.45(q,J=7.0Hz、2H)、2.53(s,3H)、1.43(t,J=7.0Hz、3H)
【0121】
工程3:6-クロロ-3-メチルピコリン酸
A56-3(800mg、4.0mmol)及びLiOH(480mg、20.0mmol)を含むTHF/H2O(6:1)7mLの混合物を室温で一晩撹拌した。6N HClで酸性化してpH=4にした後、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空留去して、白色固体のA56-4を得た(680mg、99%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ10.97(brs,1H)、7.69(d,J=8.0Hz、1H)、7.48(d,J=8.0Hz、1H)、2.75(s,3H)
【0122】
工程4:シクロヘキシル(6-クロロ-3-メチルピリジン-2-イル)カルバメート
A56-4(172mg、1.0mmol)及びTEA(150mg、1.5mmol)を含む120℃のシクロヘキサノール2mLの撹拌溶液にDPPA(413mg、1.5mmol)を滴下した。120℃で一晩撹拌した後、溶媒を真空留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:4)で精製して、白色固体のA56-5を得た(170mg、63%)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.50(d,J=8.0Hz、1H)、7.09(d,J=8.0Hz、1H)、6.76(s,1H)、4.80-4.64(m,1H)、2.27(s,3H)、1.92-1.90(m,2H)、1.80-1.74(m,2H)、1.56-1.19(m,6H)
【0123】
工程5:シクロヘキシル(6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチルピリジン-2-イル)カルバメート(A56)
25mLフラスコにA56-5(54mg、0.2mmol)、A36-2(63mg、0.2mmol)、K2CO3(70mg、0.5mmol)、及びPd(PPh3)4(23mg、0.02mmol)を仕込み、次いでジオキサン/H2O(4mL/0.4mL)を加えた。装置の排気及びN2の再充填を3回行った。反応を80℃で12時間行った。溶媒を真空留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:2)で精製して、白色固体のA56を得た(33mg、39%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.42(s,1H)、9.41(s,1H)、8.63(s,1H)、8.14(d,J=8.8Hz、1H)、7.79(d,J=8.4Hz、2H)、7.73(d,J=8.0Hz、1H)、4.65-4.60(m,1H)、2.23(s,3H)、2.22(s,3H)、1.90-1.87(m,2H)、1.72-1.70(m,2H)、1.53-1.21(m,6H)
【0124】
【0125】
工程1:1-(2-アミノベンゾ[d]チアゾール-6-イル)エタノン
1-(4-アミノフェニル)エタノン(1.35g、10mmol)及びチオシアン酸カリウム(3.9g、40mmol)を含む酢酸(50mL)の混合物に臭素(1.59g、10mmol)を窒素雰囲気下でゆっくりと加えた。混合物を室温で12時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)を加えて反応をクエンチした。アンモニアを加えてpHを7~8に調整し、次いで混合物を濾過して、黄色固体のA66-1を得た(1.5g、78%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.32(s,1H)、7.91(s,2H)、7.83(d,J=12.8Hz、1H)、7.36(d,J=8.4Hz、1H)、2.54(s,3H)
【0126】
工程2:N-(6-アセチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
A66-1(1.37g、7.1mmol)及びDMAP(960mg、7.8mmol)を含むジクロロメタン(25mL)の混合物に無水酢酸(796mg、7.8mmol)をゆっくり加えた。混合物を室温で12時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL)を加えて反応をクエンチした。ジクロロメタン(50mL)を加え、次いで飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL×2)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール=100:1)で精製して、白色固体のA66-2を得た(930mg、58%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.57(s,1H)、8.67(s,1H)、8.00(d,J=7.6Hz、1H)、7.79(d,J=8.8Hz、1H)、2.63(s,3H)、2.23(s,3H)
【0127】
工程3:N-(6-(2-ブロモアセチル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
A66-2(930mg、4.0mmol)を含む酢酸(20mL)の混合物に48%臭化水素溶液(1.5mL)及び臭素(0.21mL、4.0mmol)を窒素雰囲気下でゆっくりと加えた。混合物を室温で12時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(10mL)を加えて反応をクエンチした。ジクロロメタン(50mL)を加え、次いで飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL)及び飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。残渣を石油エーテル(100mL)に注いで、褐色固体のA66-3を得た(1.0g、80%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.62(s,1H)、8.72(s,1H)、8.05(d,J=8.4Hz、1H)、7.83(d,J=8.4Hz、1H)、4.96(s,2H)、2.24(s,3H)
【0128】
工程4:4-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-2-アセチル-4-オキソブタン酸エチル
60%NaH(154mg、3.9mmol)を含むTHF(30mL)の懸濁液にアセト酢酸エチル(458mg、3.5mmol)を窒素雰囲気下でゆっくり加えた。混合物を室温で30分間撹拌した。A66-3(1g、3.2mmol)を加えた後、混合物を室温で2時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)を加えて反応をクエンチし、次いで酢酸エチル(20mL)を加えた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で蒸発させて、粗生成物のA66-4を得た(650mg、粗生成物)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.59(s,1H)、8.73(s,1H)、8.02(d,J=8.4Hz、1H)、7.80(d,J=8.4Hz、1H)、4.20(t,J=6.8Hz、1H)、4.16-4.10(m,2H)、3.70-3.55(m,2H)、2.34(s,3H)、2.23(s,3H)、1.20(t,J=6.8Hz、3H)
【0129】
工程5:6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチル-4,5-ジヒドロピリダジン-4-カルボン酸エチル
A66-4(650g、1.8mmol)を含むエタノール及び水(エタノール:水=3:1、25mL)の混合物にヒドラジン水和物(100mg、2.0mmol)を加えた。混合物を85℃で4時間撹拌した。混合物を濃縮した後、酢酸エチル(20ml)を加えた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL×2)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で蒸発させて、黄色固体のA66-5を得た(380mg、粗生成物)。
【0130】
工程6:6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチルピリダジン-4-カルボン酸エチル
A66-5(380mg、1.06mmol)を含む酢酸(15mL)の混合物に臭素(220mg、1.4mmol)を窒素雰囲気下でゆっくり加えた。混合物を100℃で4時間撹拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム(5mL)を加えて臭素をクエンチした。酢酸エチル(60mL)を加え、次いで飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL)及び飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール=100:1)で精製して、白色固体のA66-6を得た(330mg、88%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.49(s,1H)、8.83(s,1H)、8.44(s,1H)、8.28(d,J=8.8Hz、1H)、7.88(d,J=8.4Hz、1H)、4.45-4.39(m,2H)、2.87(s,3H)、2.23(s,3H)、1.39(t,J=7.2Hz、3H)
【0131】
工程7:6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチルピリダジン-4-カルボン酸
A66-6(165mg、0.46mmol)を含むTHF/H2O(1:1、15mL)の混合物に水酸化リチウム(19mg、0.7mmol)をゆっくり加えた。混合物を室温で6時間撹拌した。1N HClを加えてpHを7に調整し、次いで溶媒を除去して、粗生成物のA66-7を得た(155mg、粗生成物)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.72(s,1H)、8.18(d,J=8.4Hz、1H)、7.97(s,1H)、7.84(d,J=8.4Hz、1H)、2.73(s,3H)、2.23(s,3H)
【0132】
工程8:シクロヘキシル6-(2-アセトアミドベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-3-メチルピリダジン-4-イルカルバメート(A66)
A66-7(145mg、0.44mmol)及びTEA(66.7mg、0.66mmol)を含むシクロヘキサノール(5mL)の混合物にDPPA(182mg、0.66mmol)をゆっくり加えた。混合物を110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル(40mL)を加え、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で精製して、白色固体のA66を得た(7mg、4%)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ12.47(s,1H)、9.48(s,1H)、8.65(s,1H)、8.47(s,1H)、8.08(d,J=8.4Hz、1H)、7.86(d,J=8.4Hz、1H)、4.80-4.68(m,1H)、2.65(s,3H)、2.23(s,3H)、2.02-1.91(m,2H)、1.81-1.69(m,2H)、1.61-1.24(m,6H)
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
生物活性
生物学的インビトロHT29細胞アッセイ
ネクロトーシスアッセイにおいてヒト結腸癌TH29細胞を使用してRIP1阻害剤の有効性をインビトロで試験した。アッセイでは、96ウェルプレートに細胞を投入してから、試験化合物10μMを1時間、前処理した。その後、細胞をTNF-α(40ng/mL)、Smacmimetic(100nM)、及びz-VAD(20μM)で48時間処理し、生存率を定量した。DMSO前処理群を陰性対照、Nec-1前処理群を陽性対照とした。例として化合物A5及びA36を使用し、それぞれ結果を
図1及び3に示す。
【0154】
生物学的インビトロL929細胞アッセイ
マウスL細胞NCTC929(L929)をATCC(cat.no.ATCC CCL-1)から取得し、液体窒素中に貯蔵した。アッセイプロトコルは、HT29細胞アッセイと同様とした。例として化合物A5及びA36を使用し、それぞれ結果を
図2及び4に示す。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】