(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】オープンシールド機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
E21D9/06 331
(21)【出願番号】P 2019110394
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】浅田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】近田 龍太郎
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-112100(JP,A)
【文献】特開昭48-071039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド土留板先端部に、後方へ向けて隙間塞ぎ用の鋼板を取付け、
この隙間塞ぎ用の鋼板はスライド土留板を拡幅して、上下に隣接するもの同士がスライド土留板相互の隙間とずれた箇所で近接することを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
スライド土留板先端部はスライド土留め延長材により構成する請求項1記載のオープンシールド機。
【請求項3】
隙間塞ぎ用の鋼板はオープンシールド機外面と、スライド土留板外面を一致させる幅調整部材を介して取付ける請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド工法に使用するオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のごとくオープンシールド工法は、開削工法(オープン工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法である。
【0003】
まず、オープンシールド工法で使用するオープンシールド機について説明すると、下記特許文献にも示すが、基本的には左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結するとからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【文献】特開2015-48659号公報
【0004】
そして、
図6、
図7に示すように、機体を前後方向で複数に分割し、フロント部22としての前方の機体の後端にテール部23としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能としている。
【0005】
フロント部22は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ24を左右によせて、また上下複数段に配設している。これに対してテール部23はコンクリート函体4の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0006】
図中16は、フロント部22の前端に設けた可動分割刃口として掘削時に側部の地山崩壊を防止する為のもので、シールド機先端から出没するスライド土留板である。
【0007】
図中17はこのスライド土留板16を動かすスライドジャッキ、29は隔壁、30はプレスバー(押角)である。
【0008】
前記フロント部22とテール部23との結合による中折れ部は、方向・勾配修正、曲線施工時に使用する。中折れ部に収納した中折れジャッキ24によりシールド機1のフロント部22とテール部23を曲げることができる。図中38はけん引ジャッキで、PC鋼線を張ってフロント部22とテール部23を連結する。
【0009】
前記隔壁29は、オープンシールド機1前面の掘削部と油圧機器収納部を仕切る為のもので、掘削土砂を押して圧密し、地下水の高い場所や軟弱土の施工の際に役立つ。
【0010】
次にこのようなオープンシールド機1を用いて行うオープンシールド工法について概要を
図8に説明すると、発進坑8内にオープンシールド機1を設置して、シールド機1の推進ジャッキ3を伸長して発進坑内の反力壁9に反力をとってシールド機1を前進させ、地中構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降し、シールド機1のテール部23で形成されるテール部内で縮めた推進ジャッキ3の後方にセットする。
【0011】
発進坑8は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進坑8の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0012】
次いで、ショベル等の掘削機7でオープンシールド機1の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土する。
【0013】
前記コンクリート函体4の据付は、オープンシールド機1のテール部内に函体4を敷設するもので、一般にラフテレーンクレーンまたはクローラクレーン等の揚重機31を使用する事が多く、テール部の内底部で計画高を測定し、コンクリートブロック等での高さ調整材を設置し(4箇所)、その上にコンクリート函体4の据付を行う。
【0014】
テール部内にコンクリート函体4を設置した後、コンクリート函体4のグラウトホールを介してコンクリート函体4の内部よりテール部の内面と函体4の外面との空隙に可塑状の裏込注入材35を一次注入充填する。
【0015】
敷設したコンクリート函体4を反力にオープンシールド機1を推進させるには、シールド機内部に装置した推進ジャッキ3により行う。
【0016】
推進と同時にコンクリート函体4の内部よりテールボイド(テール部底板及び側板の厚み分)に可塑状の裏込注入材を注入充填する二次注入を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図8にも示すように、前記スライド土留板16は、先端を鋭角とした横長形状のボックスタイプのものであり、これがフロント部22の側壁に形成した棚部に引き出しのように収まる。
【0018】
このようにオープンシールド機1は分割構造となっており、スライド土留板16はフロント部22の各分割に装備されている。
【0019】
そして鉛直方向(高さ方向)については分割構造の接合部において、上下各部材に装備したスライド土留板16間に分割構造上の隙間が発生する。その隙間から切羽根内部に地下水と共に土砂が流れ込み、周辺地盤に沈下等の影響が発生し易い。
【0020】
また、平面上においてもオープンシールド機1の外面からスライド土留板16の外面についても、構造上の隙間が発生する。オープンシールド機外面よりもスライド土留め板外側の隙間分、側部地山は緩みやすい。
【0021】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、スライド土留板間に生じる隙間を塞いで、地下水と共に土砂が流れ込み、周辺地盤に沈下等の影響が発生することを防止できるオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、スライド土留板先端部に、後方へ向けて隙間塞ぎ用の鋼板を取付け、この隙間塞ぎ用の鋼板はスライド土留板を拡幅して、上下に隣接するもの同士がスライド土留板相互の隙間とずれた箇所で近接すること、第2に、スライド土留板先端部はスライド土留め延長材により構成すること、第3に隙間塞ぎ用の鋼板はオープンシールド機外面と、スライド土留板外面を一致させる幅調整部材を介して取付けることを要旨とするものである。
【0023】
請求項1記載の本発明によれば、スライド土留板先端部に、後方へ向けて隙間塞ぎ用の鋼板を取付けたことにより、スライド土留板間の隙間が塞がれ、地下水と共に土砂が流れ込むことを防止できる。
【0024】
また、隙間塞ぎ用の鋼板は上下に隣接するもの同士がスライド土留板相互の隙間とずれた箇所で近接することで確実にスライド土留板間の隙間を塞ぐことができる。
【0025】
請求項2記載の本発明によれば、スライド土留板先端部はスライド土留め延長材によりスライド土留板先端部が形成されるので、このスライド土留め延長材をスライド土留板先端に着脱自在にセットすることで、同時に隙間塞ぎ用の鋼板を設置することができる。
【0026】
請求項3記載の本発明によれば、幅調整部材でオープンシールド機外面とスライド土留板外面を一致させることにより、隙間塞ぎ用の鋼板はオープンシールド機の外面に当接してスライド土留板とともにスライドし、オープンシールド機外面とスライド土留板の隙間をこの隙間塞ぎ用の鋼板で埋めることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明のオープンシールド機は、スライド土留板間に生じる隙間を塞いで、地下水と共に土砂が流れ込み、周辺地盤に沈下等の影響が発生することを防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す要部の平面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す全体の縦断側面図である。
【
図3】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す全体の平面図である。
【
図6】従来例を示すオープンシールド機の縦断側面図である。
【
図7】従来例を示すオープンシールド機の平面図である。
【
図8】オープンシールド工法の概要を示す斜視図である。
【
図9】従来例を示すオープンシールド機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は要部の平面図、
図2は同上全体の縦断側面図、
図3は同上平面図で、前記従来例を示す
図6、
図7と同一構成要素には同一参照符号を付したものである。
【0030】
オープンシールド機1の基本形状においては前記
図6、
図7に示した従来例と同一であり、機体を前後方向で複数に分割し、フロント部22としての前方の機体の後端にテール部23としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。なお、24は中折れジャッキ、29は隔壁、30はプレスバー(押角)、38はけん引ジャッキである。
【0031】
テール部23には機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0032】
図中16は、フロント部22の前端に設けた可動分割刃口として掘削時に側部の地山崩壊を防止する為のもので、17はシールド機先端から出没するスライド土留板16を動かすスライドジャッキである。
【0033】
前記スライド土留板16は、先端を鋭角とした横長形状のボックスタイプのものであり、これがフロント部22の側壁に形成した棚部に引き出しのように収まる。
【0034】
本発明はスライド土留板16に改良を加えるものであり、スライド土留板先端部に、後方へ向けて隙間塞ぎ用の鋼板2を取付けた。
【0035】
この隙間塞ぎ用の鋼板2はその幅はスライド土留板16の幅よりも大きく、スライド土留板16の幅を拡幅するものであり、上下に隣接する隙間塞ぎ用の鋼板2同士は、スライド土留板16相互の隙間αとずれた箇所の隙間βで近接するようにした。
【0036】
すなわち、スライド土留板16相互の隙間αと間塞ぎ用の鋼板2相互の隙間βは上下にずれるものである。
【0037】
なお、隙間塞ぎ用の鋼板2のスライド土留板16からの幅の張出しは、上下いずれか一方でもよい。
【0038】
また、スライド土留板先端部に、後方へ向けて隙間塞ぎ用の鋼板2を取付けに際しては、スライド土留板16の先端部はスライド土留め延長材5をボルト等で着脱自在に取付け、このスライド土留め延長材5に幅調整部材6を付設して、この幅調整部材6を介して隙間塞ぎ用の鋼板2を取付けた。
【0039】
スライド土留め延長材5はスライド土留板16の先端部とほぼ同一形状の先端が鋭角のボックス体でよく、このスライド土留め延長材5をスライド土留板16の先端部に結合させることで、同時に隙間塞ぎ用の鋼板2を配置することができる。
【0040】
なお、隙間塞ぎ用の鋼板2は幅調整部材6の厚さ分だけ外側に張り出して設けられ、幅調整部材6がスライド土留板16とオープンシールド機外面の外面を一致させ、これにより隙間塞ぎ用の鋼板2はスライド土留め延長材5から後方に伸びてオープンシールド機外面に当接する。
【0041】
次に使用法について説明すると、ショベル等の掘削機7でオープンシールド機1の前面又は上面から土砂を掘削、かつ排土し、推進ジャッキ3を伸長してコンクリート函体4に反力をとって前進させるが、かかる掘進の際にはスライドジャッキ17によりスライド土留板16を前方に押し出す。
【0042】
そして上下に隣接するスライド土留板16はその相互間に隙間は隙間塞ぎ用の鋼板2で塞がれているので、地下水と共に土砂が隙間から流入することはない。
【0043】
その結果、崩壊が生じるおそれも減少する。
【0044】
また、スライドジャッキ17を縮めてスライド土留板16を戻す場合には隙間塞ぎ用の鋼板2もオープンシールド機1の側方後方に移動する。
【符号の説明】
【0045】
1…オープンシールド機
2…塞ぎ用の鋼板
3…推進ジャッキ(シールドジャッキ)
4…コンクリート函体
5…スライド土留め延長材
6…幅調整部材
7…掘削機
8…発進坑
9…反力壁
16…スライド土留板
17…スライドジャッキ
22…フロント部
23…テール部
24…中折ジャッキ
29…隔壁
30…プレスバー(押角)
31…揚重機
35…裏込注入材
38…けん引ジャッキ