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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】表面順応超音波トランスデューサアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220216BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20220216BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R1/40 330
H04R1/02 330
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019505072
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017068434
(87)【国際公開番号】W WO2018024501
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】16188235.2
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/370,048
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エレカンプ ラモン クィド
(72)【発明者】
【氏名】バーラト シャム
(72)【発明者】
【氏名】グエン マン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ソブ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジャン‐ルック フランソワ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-195495(JP,A)
【文献】米国特許第04458689(US,A)
【文献】特開平01-259699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0259128(US,A1)
【文献】特表2007-511970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0167800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い支持部材の長手方向に互いに対して変位可能な及び/又は変形可能な当該細長い支持部材のアレイであって、各細長い支持部材が、超音波トランスデューサタイルを担持する患者対面表面を有する、細長い支持部材のアレイと、
隣接する細長い支持部材に対する前記細長い支持部材のうちの1つの相対変位及び/又は変形を検出する、複数のセンサと
を含む、超音波トランスデューサアレイ。
【請求項2】
各細長い支持部材が、前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサを含む、請求項1に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項3】
各センサが、隣接する細長い支持部材の長手方向に沿った表面に面する光センサであって、当該表面が、前記隣接する細長い支持部材の相対変位及び/又は変形を検出するための光学パターンを担持する、請求項2に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項4】
前記光学パターンが、位置固有のコーディングパターンを含む、請求項3に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項5】
前記細長い支持部材のそれぞれの変位及び/又は変形をロックするためのロッキング機構をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項6】
前記ロッキング機構が、前記超音波トランスデューサアレイを囲む調節可能なストラップ又はクランプを含む、請求項5に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項7】
前記細長い支持部材が、前記長手方向に垂直に多角形断面を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項8】
前記細長い支持部材のうちの少なくとも1つが取外し可能である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項9】
前記患者対面表面が起伏状表面を画定する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項10】
各患者対面表面が整合可能結合層を含む、請求項9に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項11】
各超音波トランスデューサタイルが、超音波トランスデューサ要素のアレイを含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項12】
コントロールユニットと、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサアレイとを含む超音波システムであって、前記コントロールユニットが、前記複数のセンサによって供給されるセンサデータに応じて前記超音波トランスデューサタイルを操作する、超音波システム。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波システムを操作する方法であって、前記方法は、
前記超音波トランスデューサアレイを表面に位置づけるステップと、
前記位置づけるステップによって引き起こされた前記細長い支持部材のそれぞれの相対変位及び/又は変形を示す前記複数のセンサからのセンサデータを受信するステップと、
受信した前記センサデータから前記細長い支持部材のそれぞれの相対変位及び/又は変形を決定するステップと
を有する、方法。
【請求項14】
前記超音波トランスデューサアレイを前記表面に位置づける際に前記細長い支持部材の相対位置を固定するステップをさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
近隣の細長い支持部材に対する変位が、規定された閾値を超える、細長い支持部材上の超音波トランスデューサタイルの少なくとも一部を除外するステップをさらに有する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記超音波システムが超音波画像診断システムであり、前記方法が、前記細長い支持部材の決定されたそれぞれの相対変位及び/又は変形に従って前記超音波トランスデューサアレイを操作するステップをさらに有する、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の超音波トランスデューサタイルを含む超音波トランスデューサアレイに関する。
【0002】
本発明は、さらに、そのような超音波トランスデューサアレイを含む超音波システムに関する。
【0003】
本発明は、さらに、そのような超音波システムを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
超音波は、医学にいくつかの応用が見いだされる。1つのそのような応用は超音波イメージングであり、超音波が、超音波トランスデューサのアレイを含む超音波デバイスによって患者の身体内に放射され、超音波のエコーが、超音波トランスデューサによって又は専用の超音波受信器によって収集され、処理されて、超音波画像、例えば1D、2D、又は3D超音波画像が作成される。別の応用は、高密度焦点式超音波(HIFU)治療などの超音波治療であり、超音波ビームが、超音波トランスデューサ要素タイルを含む超音波デバイスによって発生し、病変組織に焦点を合わされる。焦点での著しいエネルギー付与は、死んだ組織を凝固壊死によって破壊する約65℃から85℃の範囲の局所温度を作り出す。
【0005】
そのような超音波システムは、一般に、例えば超音波プローブの一部として、対象者に、例えばイメージング又は治療される患者に超音波を放出するための超音波トランスデューサアレイを含む。そのような超音波トランスデューサアレイは、一般に、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの材料から形成された圧電トランスデューサ要素、及び容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)要素などの複数の超音波トランスデューサを含む。容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)要素では、空洞の上の第1の電極と、第1の電極の反対側にあり、空洞によって第1の電極から分離されている第2の電極とを含むメンブレンが、適切な刺激、例えば交番電流を第1及び第2の電極に印加することにより超音波を発生させる(又は受信モードでは超音波を受け取る)ために使用される。ますます、そのような超音波トランスデューサ要素のいくつかが、いわゆるタイル、例えば、超音波トランスデューサ要素が配置される半導体基板のチップ上に組み合わされている。タイルは、応用によっては数センチメートル平方(cm)の寸法を有する。これにより、超音波トランスデューサアレイは、イメージング又は治療されるべき対象者の身体のより大きい面積をカバーすることが可能になる。そのようなタイルの超音波トランスデューサ要素は、一緒にグループ化され、一斉に動作し、その結果、タイルが、多数のファセット、すなわち、複合超音波トランスデューサ要素を形成するように結合している超音波トランスデューサセルを含む複合超音波トランスデューサ要素のように振る舞うことができ、又は代替として独立して動作することができる。
【0006】
そのような超音波トランスデューサアレイでは、特に、大面積超音波トランスデューサアレイ、例えば、複数のそのような超音波トランスデューサタイルを含む超音波トランスデューサアレイでは、超音波プローブのトランスデューサ要素とイメージングされるべき身体の部分との間の良好な整合接触を確立することは決して些細な問題ではない。小さい超音波プローブでは、これは、一般に、超音波トランスデューサアレイと身体部分との間の接触を改善する特別なゲルを使用することによって達成される。しかしながら、この手法の欠点は、通常、超音波信号の送信又は受信を妨害する気泡を含有することがある大量のゲルを使用しなければならないことである。
【0007】
さらに、大面積超音波トランスデューサアレイが、アレイと、アレイが置かれる身体領域との間に必要とされる整合の音響結合を単独で生成するには、そのようなゲル塗布はもはや実際には可能ではない。その理由は、例えば過剰なゲルの使用に起因して、このプロセスが面倒になることなしにゲルを個々のトランスデューサ要素、例えばタイルに効果的に塗布することが実際には不可能になるからである。場合によっては、超音波トランスデューサアレイと、アレイを受け取る身体部分の表面との間に所望の整合接触を達成することが、例えば表面の比較的大きい曲率に起因して、不可能にさえなる。
【0008】
この目的のために、可撓性超音波トランスデューサアレイが市場に参入しており、それは、起伏状表面、例えば患者の身体の湾曲部分との順応性の改善を示している。そのようなアレイの一例が、EP 1 066 119 B1に開示されている。そのようなアレイでは、所望の整合結合がトランスデューサアレイの柔軟性によって概ね達成されるので、一般に音響結合を改善するのにより少ない量の結合ゲルを使用することができる。しかしながら、そのような超音波トランスデューサアレイの動作は、課題がないわけではない。そのようなアレイでは、超音波トランスデューサタイルには、いくつかの自由度、例えば、X、Y、Z面内の平行移動自由度、並びにチップ/チルト自由度がある。そのようなシナリオにおいてコヒーレントビーム形成を達成するには、各超音波トランスデューサタイルの実際の方位(相対位置)が、そのような超音波トランスデューサアレイを配備する超音波システムのビーム形成回路には分かっていなければならない。これは、簡単ではなく、一般に、個々のタイルに関連する高価な方位センサを含む必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、3次元表面に十分に合致する、コヒーレントビーム形成のためのより費用効率の高い超音波トランスデューサアレイを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、さらに、そのような超音波トランスデューサアレイを含む超音波システムを提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、さらに、そのような超音波システムを操作する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、細長い支持部材の長手方向に互いに対して変位可能な及び/又は変形可能な前記細長い支持部材のアレイであって、各細長い支持部材が、超音波トランスデューサタイルを担持する患者対面表面(patient facing surface)を有する、細長い支持部材のアレイと、各々が、前記細長い支持部材のうちの1つの相対変位及び/又は変形を検出するように構成されている、複数のセンサとを含む超音波トランスデューサアレイが提供される。本発明の超音波トランスデューサアレイの実施形態において、超音波トランスデューサアレイの細長い支持部材は、例えば、細長い支持部材の長手方向に、単一の平行移動自由度のみを有し、その結果、各細長い支持部材は、独立して、超音波トランスデューサアレイが位置づけられる表面、例えば身体表面に近づく又は遠ざかることができる。そのような単一の自由度は、比較的単純なセンサを使用して、例えば、関連する細長い支持部材、例えば近隣の若しくは隣接する細長い支持部材の変位及び/又は変形を検出するために各細長い支持部材が前記センサのうちの少なくとも1つを含むことによって検出され、それによって、個々の細長い支持部材の前述の平行移動自由度のおかげで起伏状表面に応じることができる費用効率の高い超音波トランスデューサアレイが提供される。
【0013】
一実施形態では、各センサは、隣接する細長い支持部材の前記長手方向に沿った表面に面する光センサであり、前記表面は、前記隣接する細長い支持部材の相対変位を検出するための光学パターンを担持する。このようにして、細長い支持部材の相対変位及び/又は変形は、光センサにより光学パターンを評価することによって直接的に検出される。
【0014】
光学パターンは位置固有のコーディングパターンを含み、それは、細長い支持部材の絶対方位(変位)が、較正を必要とすることなく、例えば絶対位置光センサを配備することによって決定されるという利点を有する。
【0015】
超音波トランスデューサアレイは、細長い支持部材のそれぞれの変位及び/又は変形をロックするためのロッキング機構をさらに含む。これにより、細長い支持部材のそれぞれの相対変位及び/又は変形は、超音波トランスデューサアレイを使用している間固定されるか又は動かなくされ、それによって、使用中の1つ又は複数の細長い支持部材の意図しない変位が超音波トランスデューサアレイの動作(又は動作精度)を混乱させる危険性を避けることが保証される。例えば、前記ロッキング機構は、超音波トランスデューサアレイを囲む調節可能なストラップを含み、調節可能なストラップは、ストラップを締めることによって、近隣の細長い支持部材の間の摩擦の増加を引き起こし、それによって、個々の細長い支持部材を変位又は変形させるのに必要とされる力を増加させ、そのため、そのような意図しない変位の危険性を低減することができる。
【0016】
細長い支持部材は、長手方向に垂直な多角形断面を有する。これは、正方形又はさもなければ長方形の多角形断面とすることができるが、本発明の実施形態はそれに限定されず、三角形、六角形、八角形などの断面が同様に可能である。
【0017】
一実施形態では、細長い支持部材のうちの少なくとも1つは、超音波トランスデューサアレイから取外し可能である。これは、取外し可能な細長い支持部材が、例えば超音波ガイド下インターベンショナル手順を容易にするために、医療器具(限定はしないが、針、カニューレ、拡張器、カテーテル、及びガイドワイヤを含む)と取り替えられるという利点を有する。
【0018】
別の実施形態では、患者対面表面は起伏状表面を画定する。そのような起伏状表面は、超音波トランスデューサアレイが接触することになる表面部分、例えば起伏状の身体表面部分の輪郭と概略で一致し、その結果、各細長い支持部材は、起伏状表面との所望の整合接触を達成するのに長手方向に沿った比較的小さい変位及び/又は変形を必要とする。これは、例えば、超音波トランスデューサタイルを担持する細長い支持部材に対する隣接する細長い支持部材の変位が大きい場合には、単一の超音波トランスデューサタイルによって形成される超音波ビーム部分の発散する性質が、隣接する細長い支持部材の側壁と干渉する可能性がある超音波ビーム形成に関して有利である。そのために、そのような起伏状表面は、そのような干渉の結果である、超音波トランスデューサアレイで形成される超音波ビームにおけるアーチファクトの発生を避けるか又は少なくとも減少させるのを支援する。
【0019】
例えば、患者対面表面の各々は、超音波トランスデューサアレイの患者対面表面を用いてそのような起伏状表面を形成するのを支援するための整合可能結合層を含むことができる。
【0020】
一実施形態では、各超音波トランスデューサタイルは、超音波トランスデューサ要素のアレイを含む。これは、例えば、大面積超音波トランスデューサアレイ、例えば、超音波トランスデューサアレイが接触することになる身体表面などの数百又は数千センチメートル平方(cm)の表面をカバーすることができるアレイの形成を容易にすることができる。
【0021】
別の態様によれば、本出願で説明される実施形態のうちのいずれかに記載のコントロールユニット及び超音波トランスデューサアレイを含む超音波システムが提供され、コントロールユニットは、複数のセンサによって供給されるセンサデータに応じて超音波トランスデューサタイルを操作するように構成される。そのような超音波システムは、コントロールユニットの複雑さが低減され、それによって、本発明の実施形態による超音波トランスデューサアレイによって提供されるコスト削減を超えて超音波システムのコストを潜在的に低減するという点で、超音波トランスデューサアレイの限定された自由度、すなわち、細長い支持部材の長手方向の単一の平行移動自由度から利益を得る。
【0022】
さらなる別の態様によれば、そのような超音波システムを操作する方法が提供され、この方法は、超音波トランスデューサアレイを表面に位置づけるステップと、前記位置づけるステップによって引き起こされる細長い支持部材のそれぞれの相対変位及び/又は変形を示す複数のセンサからセンサデータを受信するステップと、受信したセンサデータから細長い支持部材のそれぞれの相対変位及び/又は変形を決定するステップとを有する。これは、そのような超音波システムの単純な操作方法を提供し、それは、上述でより詳細に説明したように費用効率の高いやり方で実施される。
【0023】
この方法は、上述でより詳細に説明したように、超音波トランスデューサアレイの使用中に1つ又は複数の細長い支持部材の偶発的な変位を避けるために、超音波トランスデューサアレイを前記表面に位置づける際に細長い支持部材の相対位置を固定するステップをさらに有する。
【0024】
この方法は、上述でより詳細に説明したように、隣接する細長い支持部材による発散ビーム部分の部分的な遮断によって引き起こされるビーム形成アーチファクトを避けるために、近隣の細長い支持部材に対する変位及び/又は変形が規定された閾値を超える細長い支持部材上の超音波トランスデューサタイルの少なくとも一部を除外するステップをさらに有する。
【0025】
一実施形態では、この方法は、細長い支持部材の決定されたそれぞれの相対変位及び/又は変形に従って超音波トランスデューサアレイを操作するステップをさらに有する。
【0026】
発明の実施形態が、添付図面を参照して、より詳細に及び非限定例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態による超音波トランスデューサアレイを概略的に示す図である。
図2】使用中の一実施形態による超音波トランスデューサアレイを概略的に示す図である。
図3】別の実施形態による超音波トランスデューサアレイの一態様を概略的に示す図である。
図4】別の実施形態による超音波トランスデューサアレイの別の態様を概略的に示す図である。
図5】さらなる別の実施形態による超音波トランスデューサアレイの一態様を概略的に示す図である。
図6】一実施形態による超音波トランスデューサアレイの第1の態様を概略的に示す図である。
図7】一実施形態による超音波トランスデューサアレイの第2の態様を概略的に示す図である。
図8】使用中のさらなる実施形態による超音波トランスデューサアレイを概略的に示す図である。
図9】さらなる別の実施形態による超音波トランスデューサアレイを概略的に示す図である。
図10】例示の実施形態による超音波システムの回線図を概略的に示す図である。
図11】例示の実施形態によるそのような超音波システムの操作方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図は単に概略であり、原寸に比例して描かれていないことを理解されたい。同じ参照番号が、図の全体を通して同じ又は類似の部分を示すために使用されていることをさらに理解されたい。
【0029】
図1は、例示の実施形態による超音波トランスデューサアレイ100を概略的に示す。超音波トランスデューサアレイ100は、M×N格子に配列された複数の細長い支持部材110、例えば支持バーを含む。M及びNは、各々、例えば少なくとも5、8、10、12、15、20などの値の正の整数である。他の値も同様に可能である。MとNは同じであってもよく、その場合、格子は正方形格子であり、又はMとNは異なっていてもよく、その場合、格子は長方形格子である。他の格子形状も同様に考えられる。各細長い支持部材110は、一般に、超音波トランスデューサアレイ100の左下隅の細長い支持部材110から延びる矢印によって示されるように、長手方向に単一の平行移動自由度を有する。これにより、各細長い支持部材110は、超音波トランスデューサアレイ100が位置づけられる表面、例えば起伏状身体部分などの起伏状表面に押しつけられ又は押しのけられ、それによって、各細長い支持部材110は、図2の断面図に概略的に示すように起伏状表面150と接触する。ここで、細長い支持部材110は、長手方向に、すなわち、図2に示した直角座標フレームにおけるZ方向に変位される。代替として又は追加として、細長い支持部材110は、この方向にのみ変形可能、例えば、圧縮可能とすることができる。変位に言及する本明細書の残りの部分では、これは、そのような変形による変位もカバーするように意図される。
【0030】
細長い支持部材110は、各々、長手方向に垂直な患者対面表面、すなわち、超音波トランスデューサアレイ100が接触することになる表面150に面する表面をさらに含み、各患者対面表面が超音波トランスデューサタイル120を担持する。そのような超音波トランスデューサタイル120は、1つ又は複数の超音波トランスデューサ要素を含む。例えば、超音波トランスデューサ要素は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)系材料などの圧電セラミック材料、圧電単結晶又は複合材料、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)などで実現される。
【0031】
超音波トランスデューサ要素タイル120は、任意の好適な形状、例えば、円形形状又は多角形形状を有する。超音波トランスデューサ要素タイル120の形状は、超音波トランスデューサタイル120が装着される細長い支持部材110の断面形状、すなわち、細長い支持部材110の長手方向に垂直な断面形状、すなわち、図2に示すようなX-Y面における細長い支持部材110の断面形状と一致することが好ましい。長方形形状、例えば正方形形状などの多角形形状を特に述べるが、その理由は、そのような形状が、トランスデューサアレイ内に超音波トランスデューサ要素タイル120を最密充填するのを容易にし、隣接する超音波トランスデューサ要素タイル120間の間隙が最小化されるからである。隣接する超音波トランスデューサ要素タイル120間の比較的大きい間隙を避けることにより、実質的に連続的な画像が超音波プローブで作成され、グレーティングローブなどの超音波アーチファクトの形成を少なくとも低減することが保証される。他の好適な多角形断面には、例えば、三角形断面、六角形断面、及び八角形断面が含まれる。各超音波トランスデューサタイル120は、大面積超音波トランスデューサアレイ100を形成するために、数mmから数cm、例えば、0.1~100cmのトランスデューサ表面積を有する。他の面積寸法も考えられ、例えば、超音波トランスデューサアレイ100は必ずしも大面積超音波トランスデューサアレイ100ではないことを理解されたい。
【0032】
超音波トランスデューサアレイ100は、超音波、例えば超音波パルスを送信し、超音波トランスデューサアレイ100が超音波画像診断システムの一部を形成する場合には(パルス)エコー情報を受信するためのものである。代替として、超音波トランスデューサアレイ100は、超音波トランスデューサアレイ100がHIFU治療システムなどの超音波治療システムの一部を形成する場合には集束超音波を発生するように構成される。
【0033】
細長い支持部材110は、好適な材料又は材料の組合せで製作される。細長い支持部材110は、細長い支持部材110の長手方向以外の方向への細長い支持部材110の変形を抑制するために剛体であることが好ましい。その理由は、そのような変形が、細長い支持部材上の超音波トランスデューサタイル120の望ましくない平行移動、チッピング、及び/又はチルティングを引き起こすからである。例えば、細長い支持部材110は、超音波散乱及び/又は吸収体が分散されている樹脂などの剛性バッキング材料で製作される。例えば、超音波散乱体は、超音波散乱のために使用される中空ガラスビーズ又は他の好適な物体である。超音波吸収体は、1つ又は複数の重元素で製作された物体である。例えば、超音波吸収体は、タングステン酸化物粒子などのタングステンを含む粒子である。そのようなバッキング材料は、それ自体よく知られており、したがって、単に簡潔にするためにさらに詳細には説明されない。細長い支持部材110を形成するために、任意の好適なバッキング材料が使用されると言えば十分である。さらに、細長い支持部材110を形成するために使用される材料はそのようなバッキング材料に限定されず、任意の好適な材料又は材料の組合せが細長い支持部材110を形成するために使用されてもよいことに留意されたい。例えば、各細長い支持部材110は、さらなる担体、例えば、金属、合金、ポリマー、セラミック担体などの上にバッキング材料のスライスを含み、バッキング材料のスライスは、担体を超音波トランスデューサタイル120から分離する。他の好適な構成が当業者には明らかであろう。一実施形態では、超音波トランスデューサアレイ100の細長い支持部材110の少なくとも一部は、アレイから取外し可能であり、例えば、その結果、細長い支持部材は、例えば、超音波イメージングによって支援された内視鏡検査、アブレーション又は血管形成手順、生検などのガイド下インターベンショナル(生体内)手順を実行するために、細長い支持部材110の取外しによって後に残された空間に嵌合するように寸法を合わされた医療器具と取り替えられる。
【0034】
超音波トランスデューサアレイ100は、図1に概略的に示すような細長い支持部材110の格子を囲むロッキングクランプ又はストラップなどのロッキング機構130をさらに含む。そのようなロッキング機構130は、ロッキング機構130の係合の際、細長い支持部材110のそれぞれの変位を防止するか又は妨げるように構成され、その結果、それぞれの細長い支持部材110の相対変位は、超音波トランスデューサアレイ100が表面150に位置づけられた後ロックされるか又は動かなくされる。このようにして、超音波トランスデューサアレイ100の使用中に1つ又は複数の細長い支持部材110が偶発的に変位する危険性が著しく低減される。そのような偶発的な変位は、極めて望ましくなく、その理由は、互いに対するそれぞれの細長い支持部材110の相対変位の変化が、超音波トランスデューサアレイ100によるコヒーレントビーム形成を保証するために(変位される)細長い支持部材110によって担持された超音波トランスデューサタイル120によって形成されるべき超音波ビーム部分の必要とされるタイミング及び形状を変えるからであることを理解されたい。
【0035】
一実施形態では、ロッキング機構130はユーザ作動される。例えば、ロッキング機構130は、ナットとボルトなどを使用して係合され、ボルトはロックキングクランプ又はストラップの両端132を通って延び、その結果、ナットの締め付けが、対向する端部132を強制的に一緒にし、それによって、ロッキングクランプ又はストラップの断面を減少させ、個々の細長い支持部材110を強制的に一緒にして隣接する細長い支持部材110間の摩擦を増加させる。他の好適なロッキング機構、例えば、電磁気、空気、又は油圧ロッキング機構などが当業者には直ちに明らかであろう。ロッキング機構130は、手動で作動されてもよく、又はフットペダル、超音波トランスデューサアレイ100上の押しボタン、音声認識システムによって解釈される音声コマンドなどのようなユーザインタフェースデバイスの制御下でアクチュエータによって作動されてもよい。好適なユーザインタフェースデバイスの多くの他の例が当業者には直ちに明らかであろう。
【0036】
図3は、別の実施形態による超音波トランスデューサアレイ100の細長い支持部材110の平面図を概略的に示す。この実施形態において、ロッキング機構130は摩擦構成として実施され、各細長い支持部材110は、長手方向に細長い支持部材110のそれぞれの細長い側面に沿って延びるガイド部材131及び/又はガイド部材131を受け取るためのガイドチャンネル133の配列を含む。図4で分かるように、各ガイドチャンネル133は、超音波トランスデューサアレイ100がジグソーパズルスタイルのアセンブリで形成されるようにガイド部材131を受け取る。ガイド部材131及びガイドチャンネル133は、ガイド部材131が、隣接する細長い支持部材110における対向するガイドチャンネル133にぴったりと嵌合するように寸法が合わされる。その結果、ガイド部材131と、ガイド部材131が嵌合されるガイドチャンネル133との間の摩擦により、例えばユーザが起伏状表面150に超音波トランスデューサアレイ100を押しつけることによって細長い支持部材110の長手方向(Z方向)に十分に大きい力が印加されない限り、ガイド部材131及びガイドチャンネル133に関連するそれぞれの細長い支持部材110、すなわち、隣接する細長い支持部材110の間の相対的方位が維持される。ガイド部材131及びガイドチャンネル133は、任意の好適な材料で製作され、好ましくは、細長い支持部材110の一体部分を形成する。例えば、細長い支持部材110は、ガイド部材とガイドチャンネルとを含む細長い支持部材が形成される好適なモールディング又はキャスティング技法を使用して製作される。
【0037】
そのような摩擦嵌合構成の代替実施形態が、図5に概略的に示されており、超音波トランスデューサアレイ100は、それぞれの細長い支持部材110を受け取るための開口135を含む装着フレームの形態のロッキング機構130を含む。前述から理解されるように、各開口135は、対応する細長い支持部材110が開口にぴったりと嵌合し、それによって、以前に説明したように、十分に大きい力が細長い支持部材110に長手方向で印加されない限り、細長い支持部材110の相対位置を維持するように寸法が合わされる。そのような装着フレームは、任意の好適な材料で製作される。例えば、装着フレームは、モールディング又はキャスティング技法を使用して高分子材料で製作されてもよく、開口135が打ち抜かれる金属又は合金で製作されてもよく、又はさもなければ金属又は合金のシートに形成されてもよい、等々である。
【0038】
超音波トランスデューサアレイ100は、細長い支持部材110のうちの1つの相対変位、例えば、超音波トランスデューサアレイ100内の隣接する細長い支持部材に対する細長い支持部材110の変位を検出するための複数のセンサをさらに含む。そのようなセンサの好適な構成が提供される。例えば、図6に概略的に示すように、各細長い支持部材110は、細長い支持部材110の細長い側面111内に又はその上に装着された少なくとも1つの光センサ115を含む。任意の好適な光センサ、例えば、電荷結合素子(CCD)、又はコンピュータマウスなどの光ユーザインタフェースで使用される光センサなどが、この目的のために使用され、それらは、そのような光センサの特に費用効率の高い実施形態である。
【0039】
光センサ115は、図7に概略的に示すような光学パターン117を担持する隣接する(近隣の)細長い支持部材110のさらなる細長い側面113に面する。そのような光学パターン117は、位置固有のパターン、すなわち、長手方向にパターンを担持する細長い支持部材110の変位に(又は光学パターン117に面する光センサ115を含む細長い支持部材110の変位に)応じて変化するパターンとして形成され、その結果、互いに対するこれらの細長い支持部材110の変位は、光学パターンに面する光センサ115によって検出された光学パターン117の一部から決定される。
【0040】
非限定例として、光学パターン117は、例えば、太さ、色などが光学パターン117を担持する細長い支持部材110の長手方向において変化する1組の水平ライン及び垂直ラインを含み、その結果、細長い支持部材110の変位ごとに、光学パターン117は固有のフィンガープリントを提供し、それに基づいて相対変位が決定される。光センサ115によって提供されたセンサデータを超音波トランスデューサアレイ100全体にわたって収集することによって、超音波トランスデューサアレイ100の各細長い支持部材110の相対変位がマッピングされる。このマッピング情報は、細長い支持部材110上のそれぞれの超音波トランスデューサタイル120を制御するために、超音波トランスデューサアレイに結合された超音波システムによって、例えば、超音波システムのビーム形成回路によって使用される。その結果、例えば、さらなる超音波トランスデューサタイル120に対する第1の超音波トランスデューサタイル120の変位に応じて、さらなる超音波トランスデューサタイル120に対して第1の超音波トランスデューサタイル120による超音波ビーム部分の発生を遅らせることによって、又は超音波トランスデューサアレイ100が超音波イメージングシステムの一部を形成する場合には超音波トランスデューサアレイ100による受信超音波パルスエコーを処理する際にこの相対変位を考慮することによって、コヒーレント超音波ビームが超音波トランスデューサアレイ100で形成される。
【0041】
超音波トランスデューサアレイ100は、K個の細長い支持部材110を含むアレイの場合にはK-1個の位置センサ115、例えば、光センサを含み、ここで、Kは正の整数であり、例えば、K=M×Nである。これにより、各細長い支持部材110の相対位置が確実に決定される。しかしながら、超音波トランスデューサアレイ100は、例えば、エラー検査を実行するために追加の位置センサを含むことができることを理解されたい。一実施形態では、各細長い支持部材110の相対変位は、相対変位決定の精度を改善するために少なくとも2つの位置センサ115によって決定される。
【0042】
一実施形態では、細長い支持部材110は、長手方向に自由に移動する、すなわち、全変位に沿って同じ抵抗を有することができる。しかしながら、代替実施形態では、各細長い支持部材110は、例えば、細長い支持部材110及び/又は細長い支持部材110の装着フレームに、例えば複数のノッチなどを設けることによって、段階的に変位するように構成され、その結果、それぞれの細長い支持部材110が長手方向に沿って個々のステップで変位される。それぞれの細長い支持部材110によって行われるステップは、長手方向に沿ったそれぞれの細長い支持部材110の変位を決定するために、例えば好適なセンサを使用して示される。これには、限定された分解能をもつセンサ構成、例えば光センサ構成を使用することができ、そのため、より費用効率が高いという利点がある。
【0043】
本発明の実施形態による超音波トランスデューサアレイ100は、図8の断面図に概略的に示すように、高度に起伏状の表面150に合致する能力を有する。しかしながら、そのような高度に起伏状の表面、例えば高度に起伏状の身体部分に超音波トランスデューサアレイ100を置く場合に生じる潜在的な問題は、隣接する関連支持部材110’に対する細長い支持部材110の変位が比較的大きく、その結果、細長い支持部材110の本体の一部が、隣接する細長い支持部材110’の超音波トランスデューサタイル120の音響開口140、すなわち、超音波ビーム部分を部分的に遮断することである。そのような干渉は、超音波トランスデューサアレイ100により発生された超音波ビームのコヒーレンスを著しく劣化させる。その理由は、干渉が、超音波の不要な反射、例えば反射アーチファクトを引き起こし、その反射が、超音波トランスデューサアレイ内の他の超音波トランスデューサタイル120によって発生された超音波と干渉するからである。
【0044】
そのような干渉の発生を避けるか又は少なくとも減少させるために、超音波トランスデューサアレイ100の動作モードにおいて、超音波トランスデューサアレイ100の複数のセンサによって供給されるセンサ信号から引き出される近隣の細長い支持部材110’に対する細長い支持部材110の変位を比較することによって、そのような干渉が生じる可能性があるかどうかを検査することができ、次いで、細長い支持部材110が近隣の細長い支持部材110’の超音波トランスデューサタイル120の音場140に入っていることを示す規定された閾値を変位が超える場合、これらの細長い支持部材に関連する選択された超音波トランスデューサタイル120を不能にする。これが、図8に、濃く塗られた細長い支持部材110’によって概略的に示されている。濃く塗られた細長い支持部材110’に装着された超音波トランスデューサタイル120は、そのような干渉アーチファクトの発生を避けるために超音波ビーム形成(又は超音波パルスエコー受信)に使用されない。例えば、そのような超音波トランスデューサタイル120は、超音波トランスデューサアレイ100の複数のセンサから受け取った相対変位情報に基づいて、超音波トランスデューサアレイ100を利用する超音波システムのビーム形成回路によって非選択にされる。代替として、相対変位情報に基づいて、多要素トランスデューサタイル内の特定の要素のみが非選択にされる。例えば、音場140の右側にステアリングされるビームを形成する場合、要素110’の右側のいくつかの要素が非選択にされる。
【0045】
そのような干渉アーチファクトが生じる危険性をさらに低減するために、それぞれの超音波トランスデューサタイル120が装着される細長い支持部材110のそれぞれの患者対面表面は、図9に概略的に示すように、それぞれの患者対面表面を組み合わせて起伏状表面125を形成するように形作られる。そのような起伏状表面125は、例えば、超音波トランスデューサアレイ100が位置づけられることになる表面150、例えば身体表面の一般に生じる形状と一致するように設計される。その結果、超音波トランスデューサアレイ100と受け取る表面150との間に所望の整合接触を達成するための細長い支持部材110ごとの必要とされる変位は、平坦な患者対面表面125を含む超音波トランスデューサアレイ100と比較して著しく減少し、それによって、そのような整合接触を達成するために、細長い支持部材110の少なくとも一部の比較的大きい変位に起因して干渉アーチファクトが生じる危険性が低減される。それゆえに、これは、超音波トランスデューサアレイ100内のより多くの超音波トランスデューサタイル120を使用することができ、そのため、超音波トランスデューサアレイ100で形成される超音波ビームの品質、及び/又は超音波トランスデューサアレイ100を使用する超音波イメージングシステムによって形成される画像の画像品質が改善されるという利点を有する。
【0046】
この実施形態では、それぞれの超音波トランスデューサタイル120は、超音波トランスデューサタイル120が装着される細長い支持部材110の長手方向に対して非垂直の角度下で装着されてもよい。しかしながら、この非垂直角度は固定されている(すなわち、各細長い支持部材110の唯一の自由度は長手方向に沿った平行移動自由度である)ので、超音波トランスデューサアレイ100の構成は、同様に単純である。その理由は、超音波トランスデューサタイル120のそれぞれの方位が、一度しか指定される必要がなく、例えば、超音波トランスデューサアレイ100を配備する超音波システム内にハードコードされるからである。
【0047】
代替として又は追加として、患者対面表面125は、超音波トランスデューサアレイ100と表面150との間の所望の整合結合を達成するのにZ方向における必要とされる変位を減少させるための整合結合層(図示せず)を担持してもよい。そのような整合結合層は、例えば、超音波トランスデューサタイル120と表面150との間のインピーダンス整合を行うために、超音波トランスデューサタイル120の音響窓としてさらに機能する柔軟な又は可撓性の層である。そのようなインピーダンス整合材料はそれ自体よく知られており、任意の好適なインピーダンス整合材料がこの目的のために使用されてもよいことを理解されたい。
【0048】
本発明の実施形態による超音波トランスデューサアレイ100は、超音波システム10の一部を形成する。本発明の実施形態による超音波システム10は、超音波画像診断システムの場合には、超音波プローブ100を制御するため及び超音波プローブ100によって収集された超音波(パルス)エコーを処理するための電子回路をさらに含む。そのような電子回路は、それ自体よく知られているように、ユーザコンソールなどのようなコントロールユニットに少なくとも部分的に収容される。図10は、例えば画像診断目的のための超音波、例えば超音波パルスの発生及び超音波エコー、例えばパルスエコーの受信のために、超音波トランスデューサアレイ100に接続し制御するように配備されている電子機器の例示の実施形態を示す。トランスデューサアレイは、超音波トランスデューサタイル120による信号の送信及び受信を制御する超音波トランスデューサアレイ100内のマイクロビームフォーマ12に結合される。マイクロビームフォーマは、例えば、米国特許第5,997,479号(Savordら)、米国特許第6,013,032号(Savord)、及び米国特許第6,623,432号(Powersら)に記載されているように、トランスデューサ要素タイルのグループ又は「パッチ」によって受信された信号の少なくとも部分的なビーム形成を行うことができる。
【0049】
マイクロビームフォーマ12は、プローブケーブル、例えば同軸ワイヤによって、送信/受信(T/R)スイッチ16を含む端末又はコントロールユニット、例えばユーザコンソールデバイスなどに結合される。送信/受信(T/R)スイッチ16は、送信モードと受信モードとの間を切り替え、また、マイクロビームフォーマが存在しないか又は使用されずトランスデューサアレイが主システムビームフォーマ20によって直接動作される場合主ビームフォーマ20を高エネルギー送信信号から保護する。マイクロビームフォーマ12の制御下でのトランスデューサアレイからの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16によってマイクロビームフォーマに結合されたトランスデューサコントローラ18と、ユーザインタフェース又はコントロールパネル38のユーザ操作からの入力を受信するメインシステムビームフォーマ20とによって誘導される。トランスデューサコントローラ18によって制御される機能のうちの1つは、ビームがステアリングされ集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイから前方に(トランスデューサアレイに対して垂直に)、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされる。トランスデューサコントローラ18は、超音波トランスデューサアレイ100のための電圧源45を制御するように結合される。例えば、電圧源45は、例えば、それ自体よく知られているように、潰しモードでCMUT要素を操作するためにCMUTアレイのCMUT要素に印加されるDC及びACバイアス電圧を設定する。トランスデューサコントローラ18は、さらに、例えば、超音波トランスデューサ要素タイル130が限界温度に達していることを示す超音波トランスデューサアレイ100から生じる温度センサ信号に応じて、超音波トランスデューサ要素タイル120を低電力モードに切り替えるなどのために電圧電源45を制御するように構成される。
【0050】
マイクロビームフォーマ12によって生成された部分的にビーム形成された信号は、主ビームフォーマ20に転送され、トランスデューサ要素、例えば、トランスデューサタイルの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号は、完全にビーム形成された信号に組み合わされる。例えば、主ビームフォーマ20は128チャンネルを有し、それらの各々が、数ダース又は数百の超音波トランスデューサセル、例えば、超音波トランスデューサタイル120のセルのパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、超音波トランスデューサアレイ100の数千のトランスデューサ要素によって受信された信号は、単一のビーム形成された信号を効率的にもたらす。
【0051】
ビーム形成された信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、受信したエコー信号を様々なやり方、例えば、帯域通過フィルタ処理、デシメーション、I及びQ成分分離、及び高調波信号分離などで処理する。高調波信号分離は、組織と微小気泡から戻された非線形(基本周波数の高調波)エコー信号の識別を可能にするように線形信号と非線形信号を分離するように働く。
【0052】
信号プロセッサ22は、オプションとして、スペックル低減、信号合成、及び雑音除去などの追加の信号強化を実行する。信号プロセッサ22の帯域通過フィルタはトラッキングフィルタとすることができ、その通過帯域は、エコー信号が受信されている深さが増加するにつれて高い周波数帯から低い周波数帯にスライドし、それによって、解剖学的情報が欠けているより深い深さからの高い周波数の雑音が阻止される。
【0053】
処理された信号は、Bモードプロセッサ26及びオプションとしてドップラプロセッサ28に転送される。Bモードプロセッサ26は、身体の器官及び血管の組織などの身体の構造をイメージングするために、受信した超音波信号の振幅の検出を使用する。身体の構造のBモード画像は、例えば、米国特許第6,283,919号(Roundhillら)及び米国特許第6,458,083号(Jagoら)に記載されているように、高調波画像モード若しくは基本画像モード又は両方の組合せのいずれかで形成される。
【0054】
ドップラプロセッサ28は、存在する場合、画像フィールドにおける血液細胞の流れなどの物質の運動を検出するために組織移動及び血流からの時間的に別個の信号を処理する。ドップラプロセッサは、一般に、身体内の選択されたタイプの材料から戻されたエコーを通過及び/又は阻止するように設定されたパラメータをもつウォールフィルタを含む。例えば、ウォールフィルタは、高速の材料からの比較的低い振幅の信号を通過させ、一方、低速又はゼロ速度の材料からの比較的強い信号を阻止する通過帯域特性を有するように設定される。
【0055】
この通過帯域特性は、流れている血液からの信号を通過させ、一方、心臓の壁などのほとんど静止している又はゆっくり動く物体からの信号を阻止する。逆の特性は、組織の運動を検出し描写する組織ドップライメージングと呼ばれるものでは、心臓の動く組織からの信号を通過させ、一方、血流信号を阻止する。ドップラプロセッサは、画像フィールドの異なる点からの時間的に離散したエコー信号のシーケンスを受信し処理する。特定の点からのエコーのシーケンスはアンサンブルと呼ばれる。比較的短い間隔にわたり立て続けに受信されたエコーのアンサンブルは、流れている血液のドップラシフト周波数を推定するために使用される。ドップラ周波数の速度への対応は、血流速度を示す。より長い期間にわたり受信されたエコーのアンサンブルは、より遅く流れる血液又はゆっくり動く組織の速度を推定するために使用される。
【0056】
Bモードプロセッサ(及びドップラプロセッサ)によって生成された構造及び運動信号は、スキャンコンバータ32及び多面リフォーマッタ44に結合される。スキャンコンバータ32は、受信された空間的関係のエコー信号を所望の画像フォーマットに整える。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を2次元(2D)セクタ形状フォーマット又はピラミッド形3次元(3D)画像に整える。
【0057】
スキャンコンバータは、ドップラ推定速度を用いて画像フィールド内の点の運動に対応する色をBモード構造画像に重ね合わせて、画像フィールドに組織及び血流の運動を示すカラードプラ画像を生成することができる。多面リフォーマッタ44は、例えば、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されているように、身体のボリューム領域内の共通平面内の点から受信したエコーをその平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42は、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0058】
2D又は3D画像は、画像ディスプレイ40に表示するためのさらなる強調、バッファリング、及び一時記憶のために、スキャンコンバータ32、多面リフォーマッタ44、及びボリュームレンダラ42から画像処理プロセッサ30に結合される。イメージングのために使用されることに加えて、ドップラプロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、血流の容積流量などの様々な流れ条件の測定値、並びに器官のサイズ及び在胎週齢などの構造的な測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定がなされるべき画像の解剖学的構造における点などのユーザコントロールパネル38からの入力を受信する。
【0059】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40上の画像とともに測定グラフィックス及び測定値を再生するためにグラフィックスプロセッサ36に結合される。グラフィックスプロセッサ36は、さらに、超音波画像とともに表示するためにグラフィックオーバーレイを作成する。これらのグラフィックオーバーレイは、患者の名前、画像の日時、イメージングパラメータなどのような標準識別情報を包含する。これらの目的のために、グラフィックスプロセッサは、患者名などのユーザインタフェース38からの入力を受信する。
【0060】
ユーザインタフェースは、さらに、超音波トランスデューサアレイ100からの超音波信号、したがって、超音波トランスデューサアレイ100及び超音波システム10によって生成される画像の発生を制御するために送信コントローラ18に結合される。ユーザインタフェースは、さらに、多面リフォーマット(MPR)画像の画像フィールドにおいて定量化測定を実行するのに使用される多数のMPR画像の面の選択及び制御のために多面リフォーマッタ44に結合される。
【0061】
当業者には理解されるように、超音波画像診断システム10の上述の実施形態は、そのような超音波画像診断システムの非限定の例を与えることが意図されている。当業者は、超音波画像診断システムの構成のいくつかの変形が本発明の教示から逸脱することなく可能であることを直ちに認識するであろう。例えば、上述の実施形態にも示されているように、マイクロビームフォーマ12及び/又はドップラプロセッサ28は省かれてもよく、超音波プローブ100が3Dイメージング能力などを有していなくてもよい。他の変形が当業者には明らかであろう。
【0062】
その上、本発明が超音波画像診断システム10に限定されないことを理解されよう。本発明の教示は、超音波治療システム、例えば、HIFU超音波システムに同様に適用可能であり、超音波トランスデューサアレイ100の超音波トランスデューサタイル120は、パルスエコーを受信する必要がないので、送信モードでのみ動作することができる。当業者には直ちに明らかであるように、そのような治療システムにおいて、図10を用いて説明し、パルスエコーを受信し処理し表示するために必要とされるシステム構成要素は、本出願の教示から逸脱することなく省かれてもよい。
【0063】
図11は、本発明の実施形態による超音波トランスデューサアレイ100を含む超音波システム10を操作するための方法200の流れ図である。方法200は、201において、例えば、超音波トランスデューサアレイ100を含むそのような超音波システム10を用意することによって開始する。その後、方法200は203に進み、超音波トランスデューサアレイ100は、超音波システム10のコントロールユニットの制御下で超音波トランスデューサアレイ100により発生された超音波を受けるべき表面150、例えば身体表面に位置づけられる。この位置づけは、一般に、超音波トランスデューサアレイ100の患者対面表面125と表面150との間に所望の整合接触を確立するために、長手方向のそれぞれの細長い支持部材110の変位を含む。一実施形態では、この位置づけは、以前に説明したように、超音波トランスデューサアレイ100の使用中に他の細長い支持部材に対して細長い支持部材110の少なくとも一部が偶発的に移動するのを避けるために、超音波トランスデューサアレイ100を表面150に位置づける際に細長い支持部材110の相対位置を固定する(ロックする)ことによって終了する。
【0064】
変位の後、複数のセンサ115は、表面150への超音波トランスデューサアレイ100の位置づけによって引き起こされる細長い支持部材110のそれぞれの相対変位を示すセンサデータを発生するために使用される。このセンサデータは、205において超音波システム10のコントロールユニットによって受信され、207において処理されて細長い支持部材110の相対変位が決定される。コントロールユニットは、オプションとして、209において、少なくともこれらの相対変位の少なくとも一部が規定された変位閾値を超え、それが、以前に説明したように、干渉(反射)アーチファクトをもたらすかどうかを検査する。そうである場合、方法200は211に進み、近隣の細長い支持部材110の比較的大きい変位に起因してそのような干渉を受ける音響開口140を有する超音波トランスデューサタイル120が、上述でより詳細に説明したように、超音波ビーム形成から除外される。そうでない場合、方法200は213に進み、コントロールユニットは、細長い支持部材110の決定された相対変位に応じて超音波トランスデューサアレイ100を操作し、例えば、アレイ内のそれぞれの超音波トランスデューサタイル120をステアリングさせ、その後、215において終了する。
【0065】
上記の実施形態は発明を限定するのではなく例証するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計できることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧間で置かれた参照符号は、請求項を限定するものと解釈されるべきでない。「含む、備える(comprising)」という単語は、請求項に列挙されたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に先行する「a」又は「an」という単語は、複数のそのような要素の存在を排除しない。本発明は、いくつかの異なる要素を含むハードウェアによって実施される。いくつかの手段を列挙している装置請求項において、これらの手段のいくつかはハードウェアの全く同一のアイテムによって具現される。いくつかの手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示していない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11