IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7025410補正された感度符号化磁気共鳴イメージング
<>
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図1
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図2
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図3
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図4
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図5
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図6
  • 特許-補正された感度符号化磁気共鳴イメージング 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】補正された感度符号化磁気共鳴イメージング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220216BHJP
   G01R 33/561 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61B5/055 376
G01R33/561
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019510711
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071075
(87)【国際公開番号】W WO2018036986
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】16185766.9
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フェデラー ミハ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウェールト エルウィン
(72)【発明者】
【氏名】エルメス ジーン‐ピエール フランシスクス アレクサンダー マリア
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158535(JP,A)
【文献】特開2007-260425(JP,A)
【文献】特表2016-509940(JP,A)
【文献】国際公開第2014/195384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングシステムであって、前記磁気共鳴イメージングシステムは、
磁気共鳴データを取得するための複数のコイル要素を含む無線周波数システムと、
機械実行可能命令及びパルスシーケンスコマンドを記憶するためのメモリであって、前記パルスシーケンスコマンドは、前記磁気共鳴データのk空間におけるアンダーサンプリングに起因する折り返し効果に関連付けられたSENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御する、メモリと、
前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するためのプロセッサとを備え、前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサは、
前記パルスシーケンスコマンドを使用して、前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御し、
前記磁気共鳴データから、折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成し、
磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算し、
前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算し、ここで、前記展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含み、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、前記コイル感度行列及び前記ボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算され、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、磁場における不均一性に起因する折り返しアーチファクトに似た追加アーチファクトの補正を可能にし、
前記折り返された磁気共鳴画像のセット及び前記展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算する、磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記機械実行可能命令の実行より、前記プロセッサはさらに、前記ボクセル変形マップを用いて前記歪んでいない磁気共鳴画像データを変換することによって、改変された磁気共鳴画像データを計算する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項3】
前記改変された展開行列は、前記コイル感度行列を前記ボクセル変形マップを用いて変換することによって少なくとも部分的に計算される、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項4】
前記SENSEイメージングプロトコルはエコープラナーイメージングプロトコルであり、前記エコープラナーイメージングプロトコルは、少なくとも1つの位相符号化方向における位相符号化を用いて磁気共鳴データを取得するように構成され、前記ボクセル変形マップは、前記少なくとも1つの位相符号化方向における局所磁場歪みを記述する、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの位相符号化方向は2つの直交する位相符号化方向であり、前記SENSEイメージングプロトコルは3次元SENSEイメージングプロトコルであり、前記2つの直交する位相符号化方向のうちの1つはスライス選択のために構成される、請求項4に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項6】
前記SENSEイメージングプロトコルは同時マルチスライス取得イメージングプロトコルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項7】
前記改変された展開行列は、フィードフォワードフォーマットで定式化される、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
前記改変された展開行列は、正則化項を用いて少なくとも部分的に計算される、請求項7に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項9】
前記正則化項は、前記ボクセル変形マップによって改変された組織の存在の推定である、請求項8に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項10】
前記SENSEイメージングプロトコルは、マルチショットSENSEイメージングプロトコルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項11】
前記ボクセル変形マップは、前記パルスシーケンスコマンド及び前記磁場不均一性マップを用いて計算される、請求項1から10のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項12】
前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、
コイル感度測定磁気共鳴イメージングプロトコルを使用して予備磁気共鳴データを取得し、
前記予備磁気共鳴データを使用して前記コイル感度行列を計算する、請求項1から11のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項13】
前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、
磁場測定磁気共鳴イメージングプロトコルを使用して磁場磁気共鳴データを取得し、
前記磁場磁気共鳴データを使用して前記磁場不均一性マップを計算する、請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項14】
磁気共鳴イメージングシステムを制御するためのプロセッサによって実行される機械実行可能命令を含むコンピュータプログラムであって、前記磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴データを取得する複数のコイル要素を含む無線周波数システムを含み、無線周波数アンテナは複数のコイル要素を含み、前記プロセッサによって、
パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御し、ここで、前記パルスシーケンスコマンドは、前記磁気共鳴データのk空間におけるアンダーサンプリングに起因する折り返し効果に関連付けられたSENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御し、
前記磁気共鳴データから折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成し、
磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算し、
前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算し、ここで、前記展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含み、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、前記コイル感度行列及び前記ボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算され、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、磁場における不均一性に起因する折り返しアーチファクトに似た追加アーチファクトの補正を可能にし、
前記折り返された磁気共鳴画像のセット及び前記展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
磁気共鳴イメージングシステムを用いた磁気共鳴イメージング方法であって、前記磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴データを取得するための複数のコイル要素を含む無線周波数システムを含み、前記方法は、
パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するステップであって、前記パルスシーケンスコマンドは、前記磁気共鳴データのk空間におけるアンダーサンプリングに起因する折り返し効果に関連付けられたSENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御する、ステップと、
前記磁気共鳴データから折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成するステップと、
磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算するステップと、
前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算するステップであって、前記展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含み、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、前記コイル感度行列及び前記ボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算され、前記少なくとも1つの改変された展開行列は、磁場における不均一性に起因する折り返しアーチファクトに似た追加アーチファクトの補正を可能にする、ステップと、
前記折り返された磁気共鳴画像のセット及び前記展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算するステップとを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴イメージングに関し、特に、感度符号化(SENSE)磁気共鳴イメージング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナでは、患者の体内画像を生成するための手順の一部として原子の核スピンを整列させるために、大きな静磁場が使用される。この大きな静磁場をB0磁場又は主磁場と呼ぶ。
【0003】
空間的符号化の1つの方法は、磁場勾配コイルを使用することである。典型的には、3つの異なる直交方向に3つの異なる勾配磁場を発生させるために使用される3つのコイルがある。
【0004】
MRIスキャン中に、1つ又は複数の送信コイルによって生成される無線周波数(RF)パルスは、いわゆるB1磁場を発生させる。さらに、印加された傾斜磁場及びB1磁場は、有効局所磁場に摂動を発生させる。その後、RF信号が核スピンによって放射され、1つ又は複数の受信コイルによって検出される。データは個々の受信コイルによって別々に取得することができる。個々の受信コイルのそれぞれについてデータから再構成された複数の画像は、SENSE(SENSitivity Encoding)磁気共鳴イメージング技術を使用して、単一の画像又は画像データに組み合わせることができる。SENSE磁気共鳴イメージング技術は以下のジャーナル論文においてレビューされている:Pruessmannらの1999年の“SENSE:Sensitivity encoding for fast MRI”、Magn.Reson.Med.、42:952‐962、doi:10.1002/(SICI)1522-2594(199911)42:5<952::AID-MRM16>3.0.CO;2-S。
【0005】
会議要約のFudererらの“SENSE Reconstruction using Feed Forward Regularization”、Proc.ISMRM 11(2004)、p.2130は、MRIスキャンが行われる前に計算可能なSENSE再構成の「フィードフォワード」定式化を提供するSENSE方程式を解く方法を開示している。SENSE方程式の定式化は、正規化項Rを含む。
【0006】
米国特許出願US2016/0097831A1は、MRIシーケンスコントローラとMRIシステムコントローラとを含むMRIシステムを開示している。プレスキャンユニットとして機能する際には、MRIシーケンスコントローラは、コイルの感度分布を取得するためのプレスキャンを実行する。主走査ユニットとして機能する際には、MRIシーケンスコントローラは、磁気共鳴画像の信号を取得するための主走査を行う。補正部として機能する際には、MRIシステムコントローラは、磁気共鳴画像に含まれている主走査の実行から生じた歪みに従って感度分布を補正する。生成部として機能する際には、MRIシステムコントローラは、補正された感度分布を用いて出力磁気共鳴画像を生成する。
【0007】
C.Barmet及びK.P.PruessmannによるISMRM-2005要約、“Sensitivity encoding and B0-inhomogeneity-A simultaneous reconstruction approach”は、パラレルイメージングにおけるBアーチファクトの問題に取り組んでおり、B誘導周波数オフセットを考慮に入れている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、独立請求項において磁気共鳴イメージングシステム、コンピュータプログラム製品、及び方法を提供する。従属請求項には実施形態が記載されている。
【0009】
SENSE MRIイメージングの間、複数のコイル要素を使用して磁気共鳴データ(磁気共鳴イメージングデータとも呼ばれることがある)が取得される。磁気共鳴データは、複数のコイル要素のそれぞれについて画像を作成するために使用される。Pruessmannらによる上記レビュー論文に記載されているように、画像は、最終的な再構成画像と比較して低減された視野を使用して取得される。低減された視野の使用は取得を加速させるが、いわゆる画像折り返し(image folding)をもたらす。したがって、複数のコイル要素のそれぞれについての各画像は、複数の折り返された画像のセットと呼ばれる。
【0010】
複数のコイル要素の空間的感度を使用することによって、折り返しアーチファクトなしに、折り返された画像のセットを組み合わせることができる。コイル感度は、複数のコイル要素からの複数の画像を正しく組み合わせる展開(unfolding)行列を計算するために使用される。難点は、展開プロセスが、低減された視野に起因する折り返しアーチファクトのみを処理することである。
【0011】
B0場又はB0磁場とも呼ばれる主磁場の不均一性は、ボクセルの真の位置と、磁気共鳴画像におけるボクセルの表示との間にずれをもたらし得る。これは、感度符号化が使用される方向において特に当てはまる。B0磁場における不均一性は、パルス反復の持続期間にわたって蓄積する位相誤差をもたらす。画像が再構成されるとき、この位相誤差は、MR信号を生成したスピンの位置に誤差を生じさせる。低いB0磁場歪みに関しては、これは画像におけるずれ又は歪みをもたらす。磁場の不均一性が十分に大きい場合、画像内のいくつかの位置が同じ位置にマッピングされ、これにより、SENSE MRIイメージングにおける低減された視野に起因する折り返しアーチファクトに似たアーチファクトが生じる。大きいB0磁場歪み及び小さいB0磁場歪みの両方に関して、標準的なSENSE再構成は、不適切に再構成されたSENSE MRI画像をもたらす。
【0012】
本発明の実施形態は、ボクセル変形マップを用いて複数の展開行列のセットのうちの少なくとも1つを改変する改変されたSENSEイメージング技術を使用することによって、磁場不均一性がSENSE再構成に与える影響を低減又は排除し得る。ボクセル変形マップは、少なくとも部分的に磁場不均一性マップから計算される。このような補正の使用は、画像内の歪みを補正するだけでなく、B0磁場の不均一性に起因するコイル感度の誤差を補正するという副次的な効果もあり得る。
【0013】
一側面では、本発明は、磁気共鳴データを取得するための複数のコイル要素を含む無線周波数システムを含む磁気共鳴イメージングシステムを提供する。複数のコイル要素は、磁気共鳴データを別々に取得するように構成され得る。言い換えれば、複数のコイル要素は、独立して無線信号を受信するように構成され得る。前記磁気共鳴イメージングシステムはさらに、機械実行可能命令及びパルスシーケンスコマンドを記憶するためのメモリ含む。本明細書で使用されるパルスシーケンスコマンドとの用語は、磁気共鳴データを取得するよう磁気共鳴イメージングシステムを制御するために使用されるコマンドを含む。
【0014】
パルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴イメージングシステムの部分によって直接実行可能な命令の形式でもよいし、又は、磁気共鳴イメージングシステムの構成要素を直接制御するための命令にコンパイル又は変換可能なタイミングシーケンスなどのデータの形式でもよい。前記パルスシーケンスコマンドは、SENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するように構成される。SENSEはSensitivity Encodingの頭字語で、磁気共鳴データが複数の受信コイル又は要素のアレイによって取得される磁気共鳴イメージング技術を表す。
【0015】
磁気共鳴イメージングシステムは、該磁気共鳴イメージングシステムを制御するためのプロセッサをさらに備える。前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサは、前記パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御する。前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、前記磁気共鳴データから、折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成する。磁気共鳴データは、個々のコイル要素のそれぞれについて取得された複数の部分として取得され得る。磁気共鳴データを取得した複数のコイル要素のそれぞれについて、折り返された磁気共鳴画像が構成され得る。SENSEイメージングプロトコルでは、この折り返された磁気共鳴画像のセットはその後、単一の磁気共鳴画像又は磁気共鳴データに組み合わせられる。
【0016】
前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算する。磁場不均一性マップは、例えば、磁気共鳴イメージングシステムの磁場不均一性を記述し得る。また、磁場不均一性マップは、具体的被験者が磁気共鳴イメージングシステムの主磁場内にいるときに特有のものであり得る。例えば、被験者は、磁気共鳴イメージングシステム内の磁場の変形を引き起こす組織又はインプラントを有し得る。磁気共鳴イメージングシステム内の磁場のこの変形は、ボクセルの位置を真の幾何学的位置から歪ませる可能性がある。ボクセル変形マップは、磁場不均一性マップから直接計算され、磁場不均一性によって引き起こされる変形を表すために使用され得る。
【0017】
前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算する。コイル感度行列は、Pruessmannらの上記論文にも記載されている。コイル感度行列は、折り返された磁気共鳴画像のセットの様々な画像からのボクセル又はボクセル群が、どのようにして単一の画像又は磁気共鳴データのセットに組み合わされるかを記述する。展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含む。少なくとも1つの改変された展開行列は、コイル感度行列及びボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算される。SENSEイメージングプロトコルを実行するとき、複数のコイル要素のそれぞれについての視野は限定され得る。これは、いわゆる折り返しアーチファクトを生じ得る。磁場の不均一性はまた、ボクセルが表現される位置、及び他のボクセルに対するボクセルの真の位置における歪み又はずれを引き起こす可能性がある。極端な場合には、これも、磁場によって引き起こされる折り返しに似たアーチファクトをもたらし得る。ボクセル変形マップを使用して改変された展開行列を計算することは、磁気共鳴イメージングシステムの磁場の不均一性に起因するこれらの追加アーチファクトの補正を可能にし得る。
【0018】
機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、折り返された磁気共鳴画像のセット及び展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算する。したがって、歪みのない磁気共鳴画像データは、SENSEイメージングプロトコルからの折り返しアーチファクトが除去され、また、磁場不均一性による画像の歪み又は折り返しも除去された磁気共鳴画像データである。この実施形態は、画像が、磁場歪み、及びSENSEイメージングプロトコルの使用に起因する折り返しアーチファクトの両方によって歪められる場合に磁気共鳴画像を提供するという利点を有し得る。展開行列は、それら自体ではこれらの補正を考慮に入れることができないので、ボクセル変形マップの使用は有益であり得る。
【0019】
歪んでいない磁気共鳴画像データは、例ごとに異なる形態を取り得る。一部の場合では、歪んでいない磁気共鳴画像データは2次元ボクセルのスライスであり、慣用的な画像を表し得る。他の場合には、歪んでいない磁気共鳴画像データは、ユーザインターフェイス又はディスプレイ上に異なる態様でレンダリング又は表示され得る2次元スライスの集合、又は場合によっては3次元画像データであり得る。
【0020】
他の実施形態では、前記機械実行可能命令の実行より、前記プロセッサはさらに、前記歪んでいない磁気共鳴画像データを前記ボクセル変形マップを用いて変換することによって、改変された磁気共鳴画像データを計算する。このステップでは、歪んでいない磁気共鳴画像データが、ボクセル変形マップを用いて再び歪められる。歪んでいない磁気共鳴画像データは、例えば、2次元スライス、2次元スライスの集合、又は場合によっては3次元磁気共鳴画像データであり得る。改変された磁気共鳴画像データの計算は、いくつかの場合において有益であり得る。
【0021】
ある場合には、磁場歪みによって引き起こされる深刻な折り返しに似たアーチファクトが存在する場合、異なる真の幾何学的位置を表すいくつかの点が、折り返された磁気共鳴画像のセット内の同じ、類似する、又は非常に近い位置に圧縮又はマッピングされ得る。これらの点が再び分割されると、歪みのない磁気共鳴画像データの領域内に大量のノイズが存在する可能性がある。改変された磁気共鳴画像データを計算することにより、これらの点は再び組み合わされる。その後、信号に対する位置のノイズが低減される。さらに、磁気共鳴画像がインプラント、又は磁場の歪みを引き起こす可能性のある他の物体の近くに位置しているときにも利点を有し得る。医師、又は磁気共鳴イメージングシステムの他のオペレータは特定の画像アーチファクトを見ることに慣れている可能性があるので、これは有益であり得る。いずれにせよ、改変された磁気共鳴画像データは、磁場不均一性に十分な歪みがあるとき、従来のSENSEイメージングプロトコルが適用される磁気共鳴画像に対してより優れた画像を提供し得る。
【0022】
磁場歪みはまた、コイル感度の計算に誤差を生じさせる可能性がある。ボクセル変形マップは、これらを補正するのに役立つ可能性がある。したがって、計算された改変された磁気共鳴画像データは、磁場不均一性が存在するとき、SENSEイメージングプロトコルを使用して計算された磁気共鳴画像データより優れている可能性がある。
【0023】
他の実施形態では、前記改変された展開行列は、前記コイル感度行列を前記ボクセル変形マップを用いて変換することによって少なくとも部分的に計算される。コイル感度行列を改変するためにボクセル変形マップを直接使用することができるので、これは有益であり得る。
【0024】
他の実施形態では、改変された展開行列は、折り返された磁気共鳴画像を再構成する前に計算される。これは、磁気共鳴データが取得された後のより速い画像再構成を提供するという利点を有し得る。
【0025】
他の実施形態では、SENSEイメージングプロトコルはエコープラナーイメージングプロトコルである。エコープラナーイメージングプロトコルは、少なくとも1つの位相符号化方向に位相符号化を用いて磁気共鳴データを取得するように構成される。例えば、磁気共鳴データが単一のスライスについてのみ取得される場合、該スライス内にはただ1つの位相符号化方向が存在し得る。他の例では、3次元SENSEイメージングプロトコル内の異なるスライスを符号化するために第2の位相符号化方向が使用され得る。ボクセル変形マップは、少なくとも1つの位相符号化方向における局所的磁場歪みを記述する。位相符号化は特に磁場不均一性に敏感であるため、これは有益であり得る。この実施形態は、エコープラナーイメージング法を使用するSENSEイメージングプロトコルに関して、画像を補正する有効な手段を提供することができる。
【0026】
他の実施形態では、少なくとも1つの位相符号化方向は2つの位相符号化方向である。一部の実施形態では、2つの位相符号化方向は直交し得る。SENSEイメージングプロトコルは3次元SENSEイメージングプロトコルである。2つの直交する位相符号化方向のうちの1つは、スライス選択のために構成される。この実施形態は、複数のスライスに広がる折り返しアーチファクトを補正する手段を提供することができるので、有益であり得る。
【0027】
他の実施形態では、SENSEイメージングプロトコルは、同時マルチスライス取得イメージングプロトコルである。同時マルチスライス取得イメージングプロトコルでは、複数のスライスが同時に取得される。展開行列を補正するためにボクセル変形マップを使用することにより、様々なスライス間でデータを正しく分けるための改善された手段を提供することができる。
【0028】
他の実施形態では、改変された展開行列はフィードフォワードフォーマットで定式化される。これは、歪みのない磁気共鳴画像データの構築をより迅速に実行する手段を提供し得る。
【0029】
他の実施形態では、改変された展開行列は、正則化項を使用して少なくとも部分的に計算される。例えば、FudererらによるISMRM要約は、対角行列Rを使用するSENSE再構成の定式化を記載している。対角行列Rは、正則化項であると考えることができる。いくつかの改良された磁気共鳴イメージングプロトコルでは、Fudererらの対角行列Rが、組織の存在の推定を表す代替行列によって置き換えられてもよい。
【0030】
他の実施形態では、前記正則化項は、前記ボクセル変形マップによって改変された組織の存在の推定である。ボクセル変形マップによって正則化項を改変することにより、より正確なSENSE再構成が提供され得る。
【0031】
他の実施形態では、機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、磁場不均一性に起因する画像折り返しの所定の距離内にある高ノイズ領域を、ボクセル変形マップを使用して特定することにより、歪みのない磁気共鳴画像内の1つ又は複数の高ノイズ領域を識別する。画像において、高ノイズ領域は、例えば、歪んでいない磁気共鳴データを見ている医師又は他の個人を混乱させないように、強調表示又は暗く表示され得る。
【0032】
他の実施形態では、SENSEイメージングプロトコルはマルチショットSENSEイメージングプロトコルである。SENSEイメージングプロトコルは、いわゆるシングルショットSENSEイメージングプロトコルとマルチショットSENSEイメージングプロトコルとに分けられ得る。シングルショットSENSEイメージングプロトコルでは、スライス全体のためのデータが単一のショット又はパルス繰り返しで取得される。マルチショットSENSEイメージングプロトコルを使用することは、磁場不均一性がある場合に有益であり得る。例えば、SENSEイメージングプロトコルで位相符号化が使用される場合、画像の歪みは、パルス繰り返しの時間的長さに直接関係する。なぜなら、位相誤差が不均一磁場と時間との積に関係するからである。時間を短縮することによって、磁場不均一性の影響を減らすことができる。これを改変された展開行列の使用と組み合わせると、磁場不均一性によって引き起こされるアーチファクト又は誤差が大幅に減少し得る。
【0033】
他の実施形態では、ボクセル変形マップは、パルスシーケンスコマンド及び磁場不均一性マップを使用して計算される。例えば、パルスシーケンスコマンドにおける様々な持続時間又はパラメータを抽出し、予想されるボクセル変形マップを計算するために使用することができる。上述のように、位相符号化が使用される場合、特定のボクセルについて予想される位相誤差は、磁場不均一性及びパルス繰り返しの持続時間に着目することによって直接計算することができる。パルス繰り返しは、パルスシーケンスコマンドにおけるパラメータである。
【0034】
他の実施形態では、機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、コイル感度測定磁気共鳴イメージングプロトコルを使用して予備磁気共鳴データを取得する。機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、予備磁気共鳴データを使用してコイル感度行列を計算する。コイル感度測定磁気共鳴イメージングプロトコルは、様々なコイル要素のコイル感度を決定するために使用される様々な異なるイメージングプロトコルのうちの1つであり得る。一部のシステムでは、複数のコイル要素に加えて全身コイルを使用して、粗い又は低解像度の画像が取得され得る。これにより、コイル感度を直接計算することが可能になり得る。他の例では、様々な複数のコイル要素からの複数の画像がアルゴリズムを使用して組み合わされ、その後、コイル感度を計算するために様々なコイル要素からの複数の画像と比較される。
【0035】
他の実施形態では、機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、磁場測定磁気共鳴イメージングプロトコルを使用して磁場磁気共鳴データを取得する。機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、磁場磁気共鳴データを使用して磁場不均一性マップを計算する。磁気共鳴イメージングシステム内に配置される様々な被験者は、被験者に関連付けられた異なる磁場不均一性マップを有する可能性があるので、これは有益であり得る。特定の被験者についてこれを直接測定することが有益であり得る。
【0036】
磁場測定磁気共鳴イメージングプロトコルを計算するにあたり、異なる方法が存在し得る。適用可能であり得るプロトコルの例は、いわゆるDixon磁気共鳴イメージングプロトコルである。Dixon磁気共鳴イメージングでは、様々な位相でデータを取得することによって、水と脂肪との画像が分けられる。この技術は、磁場不均一性を計算することを可能にする。他の例は、いわゆる組織存在マッピングプロトコルであり得る。組織存在マッピングプロトコルは、磁気共鳴イメージングシステムのイメージングゾーン内の組織の位置を推定するために使用され得る。適用可能であり得る技術の例は、コイル感度を測定するためにも使用され得る。
【0037】
磁場を測定する方法の他の例は、いわゆるフィールドエコー磁気共鳴イメージングプロトコルである。これらの方法は位相センシティブ磁気共鳴イメージングプロトコルであり、磁場不均一性を推定するためにも使用され得る。
【0038】
他の側面では、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムを制御するプロセッサによって実行される機械実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。前記磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴データを取得するための複数のコイル要素を含む無線周波数システムを含む。前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサは、前記パルスシーケンスコマンドを使用して前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御する。前記パルスシーケンスコマンドは、SENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するように構成される。
【0039】
前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、前記磁気共鳴データから、折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成する。前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算する。前記機械実行可能命令の実行により、前記プロセッサはさらに、前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算する。展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含む。少なくとも1つの改変された展開行列は、コイル感度行列及びボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算される。
【0040】
機械実行可能命令の実行により、プロセッサはさらに、折り返された磁気共鳴画像のセット及び展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算する。このコンピュータプログラム製品の利点は上記のとおりである。
【0041】
他の側面では、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムを用いたイメージング方法を提供する。前記磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴データを取得するための複数のコイル要素を含む無線周波数システムを含む。前記方法は、前記パルスシーケンスコマンドを使用して、前記磁気共鳴データを取得するよう前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するステップを含む。前記パルスシーケンスコマンドは、SENSEイメージングプロトコルに従って前記磁気共鳴データを取得するよう、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御するように構成される。前記方法はさらに、前記磁気共鳴データから、折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成するステップを含む。前記方法はさらに、磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算するステップを含む。前記方法はさらに、前記複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算するステップを含む。展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含む。少なくとも1つの改変された展開行列は、コイル感度行列及びボクセル変形マップを少なくとも部分的に使用して計算される。前記方法はさらに、折り返された磁気共鳴画像のセット及び展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算するステップを含む。
【0042】
組み合わせられる実施形態が相反するものでない限り、本発明の上記実施形態の1つ以上を組み合わせることができる。
【0043】
当業者によって理解されるように、本発明の側面は、装置、方法、又はコンピュータプログラム製品として具体化され得る。したがって、本発明の側面は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェア側面及びハードウェア側面を組み合わせた実施形態の形態をとることができる(本明細書では、全てが一般的に「回路」、「モジュール」、又は「システム」と称され得る)。さらに、本発明の側面は、コンピュータ実行可能コードが実装された1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって具現化されるコンピュータプログラム製品の形態をとってもよい。
【0044】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」とは、計算装置のプロセッサによって実行可能な命令を格納することができる任意の有形記憶媒体を包含し得る。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読非一時的記憶媒体とも呼ばれ得る。また、コンピュータ可読記憶媒体は、有形コンピュータ可読媒体とも呼ばれ得る。一部の実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、計算装置のプロセッサによってアクセス可能なデータを格納可能であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体の例は、限定はされないが、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、光ディスク、光磁気ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルを含む。光ディスクの例は、CD(Compact Disks)及びDVD(Digital Versatile Disks)、例えばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、又はDVD-Rディスクなどを含む。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、計算装置がネットワーク又は通信リンクを介してアクセスすることができる様々なタイプの記録媒体も指す。例えば、モデム、インターネット、又はローカルエリアネットワークを介してデータが取り出されてもよい。コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータ実行可能コードは、限定はされないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して送信することができる。
【0045】
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ実行可能コードを含む(例えばベースバンド内、又は搬送波の一部として)伝播データ信号を含み得る。このような伝播信号は、限定はされないが、電磁気、光学、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む様々な形態のいずれかをとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置、又はデバイスによって又は関連して使用されるプログラムを通信、伝搬、又は転送可能な任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0046】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサが直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ可読記憶媒体の他の例である。コンピュータストレージは、任意の揮発性又は不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0047】
本明細書で使用される「プロセッサ」とは、プログラム、機械実行可能命令、又はコンピュータ実行可能コードを実行することができる電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を含む計算装置への言及は、複数のプロセッサ又は処理コアを含む可能性があると解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサは、単一のコンピュータシステムに集約された、又は複数のコンピュータシステム間で分散された複数のプロセッサの集合を指す可能性もある。計算装置という用語は、それぞれが1つ又は複数のプロセッサを含む複数の計算装置の集合又はネットワークを意味するとも解釈されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同じ計算装置に集約された、又は複数の計算装置にわたって分散された複数のプロセッサによって実行され得る。
【0048】
コンピュータ実行可能コードは、プロセッサに本発明の側面を実行させる機械実行可能命令又はプログラムを含むことができる。本発明の側面の動作を実施するためのコンピュータ実行可能コードは、Java(登録商標)、Smalltalk(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及びC言語のような従来の手続き型プログラミング言語、又は同様なプログラミング言語のうちの1つ又は複数の任意の組み合わせで記述され、機械実行可能命令にコンパイルされ得る。場合によっては、コンピュータ実行可能コードは、高水準言語の形態又はプリコンパイルされた形態であってもよく、オンザフライで機械実行可能命令を生成するインタプリタとともに使用されてもよい。
【0049】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザコンピュータ上で、部分的にユーザコンピュータ上で、スタンドアローンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザコンピュータ上及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ又はサーバ上で実行され得る。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザコンピュータに接続され、又は、外部コンピュータに接続が確立されてもよい(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)。
【0050】
本発明の側面は、本発明の実施形態に係る方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して説明される。フローチャート、イラスト、及び/又はブロック図の各ブロック又は一群のブロックは、妥当な場合には、コンピュータ実行可能コードの形態でコンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。相互に矛盾しない場合、異なるフローチャート、イラスト、及び/又はブロック図におけるブロックを組み合わせることができることも理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されて、マシンを生成し得る。コンピュータのプロセッサ又は他のプログラム可能データ処理装置を介して実行される命令は、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて特定される機能/動作を実装するための手段を作成する。
【0051】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイスを特定の態様で機能させることが可能なコンピュータ可読媒体に保存されてもよい。コンピュータ可読媒体に保存された命令は、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて特定される機能/動作を実施する命令を含む製品を生成する。
【0052】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイス上にロードされてもよく、コンピュータ、他のプログラム可能装置、又は他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させることによって、コンピュータ実施プロセスが生成され得る。コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令は、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて特定される機能/動作を実施するためのプロセスを提供する。
【0053】
本明細書で使用される「ユーザインターフェイス」とは、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムとインタラクトすることを可能にするインターフェイスである。「ユーザインターフェイス」は、「ヒューマンインターフェイスデバイス」とも称され得る。ユーザインターフェイスは、情報又はデータをオペレータに提供し、かつ/又は、オペレータから情報又はデータを受け取り得る。ユーザインターフェイスは、オペレータからの入力をコンピュータが受け取ることを可能にし、また、コンピュータからユーザに出力を提供し得る。言い換えれば、ユーザインターフェイスは、オペレータがコンピュータを制御又は操作することを可能にし、また、インターフェイスは、オペレータの制御又は操作の効果をコンピュータが表示することを可能にし得る。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインターフェイス上のデータ又は情報の表示は、情報をオペレータに提供することの一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカム、ヘッドセット、ペダル、ワイヤードグローブ、リモコン、及び加速度計を介するデータの受け取りはいずれも、オペレータからの情報又はデータの受け取りを可能にするユーザインターフェイス要素の例である。
【0054】
本明細書で使用される「ハードウェアインターフェイス」とは、コンピュータシステムのプロセッサが外部の計算デバイス及び/又は装置とインタラクトし及び/又は該デバイス/装置を制御することを可能にするインターフェイスを包含する。ハードウェアインターフェイスは、プロセッサが制御信号又は命令を外部計算デバイス及び/又は装置に送信することを可能にし得る。ハードウェアインターフェイスはまた、プロセッサが外部計算デバイス及び/又は装置とデータを交換することを可能にし得る。ハードウェアインターフェイスの例としては、限定はされないが、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、Bluetooth(登録商標)接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インターフェイス、MIDIインターフェイス、アナログ入力インターフェイス、及びデジタル入力インターフェイスなどがある。
【0055】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイデバイス」とは、画像又はデータを表示するように適合された出力デバイス又はユーザインターフェイスを包含する。ディスプレイは、視覚的、聴覚的、又は触覚的なデータを出力し得る。ディスプレイの例としては、限定はされないが、コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、ブラウン管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、蛍光表示管ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイなどがある。
【0056】
本明細書において、磁気共鳴(MR)データは、磁気共鳴イメージングスキャン中に磁気共鳴装置のアンテナを使用して原子スピンによって放たれる無線周波数信号の測定記録として定義される。磁気共鳴データは、医療用イメージングデータの一例である。本明細書において、磁気共鳴(MR)画像又は磁気共鳴画像データは、磁気共鳴データ内に含まれる解剖学的データの再構成された2次元又は3次元の視覚化として定義される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
以下、本発明の単なる例に過ぎない好ましい実施形態について、以下の図面を参照しながら説明する。
図1図1は、磁場不均一性に起因するボクセル位置のシフトを示す。
図2図2は、磁気共鳴イメージングシステムの例を示す。
図3図3は、磁気共鳴イメージングシステムの他の例を示す。
図4図4は、磁気共鳴イメージングシステムの他の例を示す。
図5図5は、図2図3、又は図4の磁気共鳴イメージングシステムを用いた方法を示す。
図6図6は、磁気共鳴イメージングシステムにおけるB0磁場のマップのプロット図を示す。
図7図7は、図6のB0磁場のマップを用いて計算されたボクセル変形マップの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図面における同様の番号を有する要素は、等価な要素であるか、又は同じ機能を果たす。前に説明された要素は、機能が同等であれば、後の図面では必ずしも説明されない。
【0059】
MRIにおいて、特にEPI(Echo Planar Imaging)シーケンスを使用する場合、磁場の局所的なずれのために著しい幾何学的歪みが生じる可能性がある。これは、特に金属製インプラントの近く、又は耳や鼻腔などの腔の近く、又は一般的に全ての組織と空気との間の境界で見られ得る。多くの場合、歪み自体は臨床的にはあまり関連性がなく、邪魔にもならない。
【0060】
しかしながら、SENSEを使用する場合、歪みが間接的に影響し得る。歪んだ領域に関する「折り返し位置」(例えば、SENSE_factor=2の視野の半分の距離)では、たとえその折り返し位置に歪みがない場合でも、歪んだ領域のアーチファクトが現れる可能性がある。これは、例えば、さもなければ歪みがなく、臨床的に関連性のある領域にアーチファクトをもたらす可能性がある。実施例は、磁場の不均一性によって引き起こされる幾何学的歪みの領域から生じるSENSE画像におけるアーチファクトを低減又は排除する効果を有し得る。
【0061】
実施例は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。
1.SENSEを適用する場合、コイル感度は各自の公称(「歪んだ」)位置から取るのではなく、「折り返された点」に寄与する真の幾何学的位置から取られる。
2.歪みに起因して、公称SENSEファクタよりも、折り返された点に寄与する位置が数多く得られる可能性がある。その場合、(局所的に)拡張されたSENSE方程式のセットが解かれる。
3.SENSE再構成を実行した後、医師が画像を解釈するのを補助するために、ボクセル変形マップを使用して画像が再び歪められ得る。
【0062】
図1は、ボクセルの真の幾何学的位置と、歪んだ又は公称の位置102との関係を示すグラフである。図1は、SENSEタイプの磁気共鳴イメージングプロトコルを実行する場合に磁場の不均一性によって引き起こされる折り返しの効果を説明するために使用される。図1では、SENSEファクタは2であるとする。対角線104は、磁場歪みによる影響がない場合の、真の幾何学的位置102と歪んだ公称位置102との間の関係を示す。曲線106は、実際の幾何学的位置100を、歪んだ又は公称位置102の関数として示す。これは、y又は真の幾何学的位置100において自身と重なる曲線として見ることができる。これは、擬似折り返し効果をもたらす。SENSEファクタが2の場合、いくつかの点は、視野内で2回以上撮像される。
【0063】
点a110及び点A’112は折り返された点に対応する。距離114は折り返し距離である。点A110及びA’112は曲線106上に投影される。これは、真の幾何学的位置100を与える。点a110は点y116上に投影され、点A’112は点X118上に投影される。A110及びA’112に対して、ただ1つの対応する点116及び118が存在する。視野は線108によって表される。視野108内には、点130、128、及び126にマッピングされる第2の点B120がある。対応する折り返された点B’122は、単一の点1 124にマッピングされる。3つの異なる点に投影される点Bは、通常のSENSE再構成を用いて補正することはできない。しかし、ボクセル変形マップを使用する場合は補正することができる。曲線106が離散化される場合、ボクセル変形マップとして解釈され得る。
【0064】
(折り返された画像において)A’112と同一である折り返されたピクセルA110は、真の幾何学的位置X118及びY116によって寄与されている。この位置のセットについては、「通常の」2つの方程式からなるSENSEセットを解く必要がある。しかしながら、折り返されたピクセルB120(折り返された画像におけるB’122と同一)を考慮すると、実際には、現実の4つの寄与位置、すなわち1 124、2 126、3 128、及び4 130の位置が存在する。これは、「拡張SENSE方程式」のセットによって解決され、すなわち、コイル要素と同じ数の方程式から、2つではなく4つの未知を解決する必要がある。しかし、いくつかの点(例えば2 126と3 128)は互いに非常に近いので、これらの2つの間のSENSE展開は、両者のコイル感度が類似していることから、非常に高いレベルのノイズ増幅を示す。それでも、これら2つの結果の和は、「通常の」ノイズレベルになる。
【0065】
よって、いくつかの画像領域の過剰なノイズを防ぐために、結果が、(ボクセル変形マップを使用することによって)元の取得に存在した歪みに従って歪められ得る。例えば、位置2 126、3 128、及び4 130の結果が足しあわされて位置Bにマッピングされる一方、1の結果は位置B’にマッピングされる。このようにして、最終結果の画像は依然として幾何学的に歪んでいるが、再構成されたピクセルB’は、領域2 126、3 128、及び4 130から生じるSENSEアーチファクトをより少なく含み得る。
【0066】
図2は、磁気共鳴イメージングシステム200の例を示す。磁気共鳴イメージングシステム200は、磁石とも呼ばれ得る主磁石204を備える。磁石204は、自身を貫通するボア206を有する超伝導円筒形磁石104である。異なる種類の磁石の使用も可能である。円筒形磁石のクライオスタットの内部には、超伝導コイルの集合体がある。円筒形磁石204のボア206内には、磁気共鳴イメージングを行うのに十分に強く均一な磁場が存在するイメージングゾーン208が存在する。
【0067】
また、磁石のボア206内には、磁石204のイメージングゾーン208内の磁気スピンを空間的に符号化するために磁気共鳴データ取得に使用される磁場勾配コイル210のセットが存在する。磁場勾配コイル210は、磁場勾配コイル電源212に接続されている。磁場勾配コイル210は代表的なものであることを理解されたい。典型的には、磁場勾配コイル210は、3つの直交する空間方向において空間符号化するための別個のコイルセットを3つ含む。磁場勾配電源は、磁場勾配コイルに電流を供給する。磁場勾配コイル210に供給される電流は、時間の関数として制御され、傾斜をつけられたり(ramped)、又はパルス化され得る。
【0068】
イメージングゾーン208の隣には複数のコイル要素214が存在し、そのそれぞれが、イメージングゾーン208内の磁気スピンの向きを操作するための、及びイメージングゾーン208内のスピンから無線信号を受信するための無線周波数アンテナとして機能する。無線周波数コイルは、無線周波数アンテナ又はアンテナとも呼ばれ得る。複数のコイル要素はアンテナ要素とも呼ばれ得る。無線周波数アンテナはチャネルとも呼ばれ得る。複数のコイル要素114は、無線周波数送受信機116に接続される。複数のコイル要素114及び無線周波数トランシーバ116は、複数のコイル要素214ごとに別々の送信機及び受信機を有し得る。
【0069】
コイル要素214は、磁気共鳴データを別々に取得するために使用され得る。したがって、コイル要素214は、パラレルイメージング磁気共鳴技術のために使用され得る。この図には示されていないが、磁気共鳴イメージングシステム200はボディコイルを含んでもよい。ボディコイルは、個々のコイル要素214と同時に取得データを入手し、コイル感度のセットを計算するために使用することができるので、パラレルイメージング技術において有用である。
【0070】
磁気共鳴データは、イメージングゾーン208内から取得され得る。イメージングゾーン208内のスライス209の位置が示されている。いくつかの例では、磁気共鳴データを取得するためのパルスシーケンスコマンドは、位相符号化方向222における位相符号化を用いて行われてもよい。矢印222は、スライス209と平行である又は同一平面上にある1つの選択可能な方向を示す。方向222における位相符号化が使用される場合、結果として得られる画像は、磁石204によって生成された主磁場における歪みを受けやすい可能性がある。
【0071】
異なるコイル要素214は、スライス209の異なる領域から異なる距離にあることが分かる。したがって、異なるコイル要素214は、スライス209の様々な部分に対して多かれ少なかれ敏感である。
【0072】
磁石204のボア206内には、イメージングソーン208内で被検者を支持する被検者支持体220が存在する。
【0073】
送受信機216及び勾配コントローラ230は、コンピュータシステム240のハードウェアインターフェイス242に接続されているものとして示されている。コンピュータシステムは、ハードウェアシステム242、メモリ250、及びユーザインターフェイス246と通信するプロセッサ244をさらに備える。メモリ250は、プロセッサ244にアクセス可能な任意のメモリの組み合わせであり得る。メインメモリ、キャッシュメモリ、さらにはフラッシュRAM、ハードドライブ、その他の記憶装置等の不揮発性メモリ等が含まれ得る。いくつかの例では、メモリ250は、非一時的コンピュータ可読媒体と見なすことができる。
【0074】
コンピュータメモリ250は、プロセッサ244が磁気共鳴イメージングシステム200の動作及び機能を制御することを可能にする機械実行可能命令260を含むものとして示されている。コンピュータメモリ250はさらに、SENSEイメージングプロトコルに従って磁気共鳴データを取得するように構成されたパルスシーケンスコマンド262を含むものとして示されている。コンピュータメモリ250はさらに、MRIシステム200をパルスシーケンスコマンド262で制御することによって取得された磁気共鳴データ264を含むものとして示されている。磁気共鳴データ264は、各コイル要素215から別々に取得されたデータを含む。コンピュータメモリ250はさらに、折り返された磁気共鳴画像266のセットを含むものとして示されている。各折り返された磁気共鳴画像が、コイル要素215のうちの1つに対応する。各折り返された磁気共鳴画像266は、各コイル要素215について取得された磁気共鳴データ264の様々な部分から再構成されたものである。
【0075】
コンピュータストレージ250はさらに、磁場不均一性マップ268を含むものとして示されている。磁場不均一性マップ268は、メモリ250内に事前に存在していてもよいし、又は、磁気共鳴データ264を取得する前に取得及び計算されてもよい。コンピュータメモリ250はさらに、磁場不均一性マップ268から計算されたボクセル変形マップ270を含むものとして示されている。多くの場合、ボクセル変形マップ270は、磁場不均一マップ268と、パルスシーケンスコマンド262から抽出されたデータとを使用して計算される。例えば、パルスシーケンスコマンド262が、位相符号化方向222における位相符号化を有するエコープラナーイメージングプロトコルのためのものである場合、取得される磁気共鳴データにおける位相誤差の量は、パルス繰り返し時間、及び局所的磁場不均一性に直接関係する。
【0076】
コンピュータメモリ250はさらに、コイル要素215のためのコイル感度のセット272を含むものとして示されている。コイル感度のセット272は、例えば予め記憶されていてもよいし、又は、磁気共鳴データ264を取得する前の事前取得中に取得されてもよい。コンピュータメモリ250はさらに、コイル感度のセット272及びボクセル変形マップ270から計算される展開行列のセット274を含むものとして示されている。展開行列のセット274は、折り返された磁気共鳴画像268のセットを組み合わせて、歪みのない磁気共鳴画像データ276を生成するために使用される。この具体例では、磁気共鳴データは単一のスライス209について取得される。この場合、歪みのない磁気共鳴画像データ276は、二次元画像を表し得る。コンピュータメモリ250は、ボクセル変形マップ270を歪みのない磁気共鳴画像データ276に適用することによって計算される改変された磁気共鳴画像データ278を任意選択的に含むものとして示されている。これは、再び歪められているが折り返されていない磁気共鳴画像又はデータセットを作成する。
【0077】
図3は、磁気共鳴イメージングシステム300の例を示す。磁気共鳴イメージングシステム300は、図2に示す磁気共鳴イメージングシステム200と類似する。しかし、このケースではパルスシーケンスコマンド262が異なる。この例では、磁気共鳴データは3次元取得として取得される。単一のスライスの代わりに、複数のスライス209に分割可能なボクセルのセット209がある。位相符号化方向222に加えて、方向222に直交する別の方向322がある。この追加の位相符号化方向322は、異なる複数のスライス209を区別するために使用される。位相符号化方向222及び322はともに、磁場不均一性による歪みを受けやすい。この例では、ボクセル変形マップ270を使用して、取得された3次元データセットのボクセル位置が補正される。
【0078】
図4は、磁気共鳴イメージングシステム400のさらなる例を示す。図4に示される例は、図2及び図3に示される例と類似する。図4に示す例では、パルスシーケンスコマンド262は、同時マルチスライス取得イメージングプロトコルであるSENSEイメージングプロトコルのためのものである。個々のスライス209は同時に取得されるが、図3で行われるように位相符号化を用いて取得されない。同時に取得されたデータを別個のスライスに分離するために、SENSEイメージングプロトコル手法が使用される。ボクセル変形マップ270を用いて計算されたコイル感度のセットは272は、データを適切な複数のスライス209に正しく分離するのに有用である。
【0079】
図5は、磁気共鳴イメージングシステム200、300、又は400の動作方法を示すフローチャートを示す。まず、ステップ500において、パルスシーケンスコマンド262を使用して磁気共鳴イメージングシステム200、300、400を制御することによって、磁気共鳴データ264が取得される。次に、ステップ502において、取得された磁気共鳴データ264から、各コイル要素215について折り返された磁気共鳴画像のセット266が計算される。次に、ステップ504において、磁場不均一性マップ268からボクセル変形マップ270が計算される。次に、ステップ506において、展開行列のセット274がコイル感度のセット272を使用して計算され、一部の展開行列についてはボクセル変形マップ270も使用される。次に、ステップ508において、折り返された磁気共鳴画像のセット266及び展開行列のセット274を使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データ276が計算される(508)。ステップ510は任意選択のステップであり、歪みのない磁気共鳴画像データ276をボクセル変形マップ270を用いて変換することによって改変された磁気共鳴画像データ278が計算される。
【0080】
実施例では、個々のコイル要素の展開中に、局所的なB0変動に起因する変形を考慮に入れてもよい。以下の例では、EPIスキャンについて説明するが、本開示の技術は他のタイプのSENSE画像再構成にも適用可能であり得る。
【0081】
一例では、EPIスキャンの事前スキャンとしてB0マップが取得され得る。ピクセルpでのシフトΔ(再構成されたピクセルにおける)は、下式の通り、ピクセルpでのB0における変動ΔB0(ヘルツ)に直接関係する。
【数1】
ここで、(位相符号化方向における)BWpeは取得帯域幅であり(単位は折り返されたFOVあたりのヘルツ)、Npeは展開されたグリッドサイズであり、Rpeは面内SENSEファクタである。
【0082】
ここで議論されるB0変形は、勾配非線形性に起因する変形の上の変形である。CSM及び臨床スキャンの両方が、勾配不完全性によって同量の影響を受けると仮定される。
【0083】
ある位相符号化ラインについて、変形されていない座標を変形された座標にマッピングする、又はその逆のマッピングを行う変形行列(ボクセル変形マップとも呼ばれる)を導出することができる。変形行列は、全ての変形されていない点を変形された点にマッピングする。変形行列は、変形されていない各点が1つ以上の変形された点にマッピングされる(展開されたグリッドサイズでの)離散表現である。2つの連続する点の間の変形は、非ゼロ行列要素の連続トレースが作成されるように線形補間される。
【0084】
変形された点から変形されていない点へのマッピングが全ての変形点について存在することを確実にするために、各Y線の始めと終わりにおける変形は0、すなわち変形なしに設定される。実際には、解剖学的構造がFOVに完全に含まれている場合、及び/又は十分な内在的fold-over抑制が適用されている場合、これは既にゼロである。
【0085】
B0マップが、展開されたFOVを完全にはカバーしない領域がある場合、一部の例では、それらの領域では変形はゼロであると仮定される。
【0086】
図6は、磁場不均一性マップ268の例を示す。この例では、磁場不均一性マップは、B0磁場とも呼ばれる主磁場の空間依存性のマッピングである。線600は、このデータの一部が抽出され、ボクセル変形マップ270を計算するために使用される場所を示す。変形行列(下記)を導出することができるB0マップ(268)からの線600である。
【0087】
図7は、図6の線600に沿って抽出されたデータについて計算されたボクセル変形マップ270(本明細書では変形行列とも呼ばれる)を示す。図7のグラフは図1のグラフに似ているが、図7ではマッピング270は目立たない(discreet)ボクセルのためのものである。
【0088】
SENSE取得において、測定された磁気共鳴データの現実的モデルは以下のように表すことができる。
【数2】
上記を読み取るための用語集:
【数3】
折り返され、かつ変形されたボクセルの座標ベクトル
【数4】
位置
【数5】
のコイル要素iによって「見られる」値
j ボクセル
【数6】
上に折り返される点のインデックス;j=1...N(ここで、Nは総SENSEファクタである)
【数7】
折り返された位置
【数8】
上に折り返される点のうちのj番目の座標
【数9】
ベクトル
【数10】
のy座標
【数11】
及び
【数12】
についても同様
u 変形されていない座標y
Σy 変形された点に寄与する(し得る)全ての変形されていない点にわたる総和
w(y,y;x,z) x及びzの所与の値に対して、w(y,yu)は変形マップである(後に説明する)
【数13】
“変形されていない折り返し点”:
【数14】
の省略形、すなわち、変形された点
【数15】
に(重みwによって)寄与する位置
【数16】
位置
【数17】
上に折り返されるj番目の点である変形された点に寄与する変形されていない点に対するコイルiの感度
【数18】
該変形されていない点における磁化密度の実際の値
いくらか短縮された形式では、これは次のように記述される。

【数19】
について:
【数20】
したがって、折り返されていない点ごとに、yは変形されていない点にわたって総和をとる。変形された点yに対する変形されていない点の寄与は、w(y,y;x,z)又は省略形のw(y,y)で表される変形マップである。
【0089】
測定値
【数21】
は変形される一方、感度s及び未知のピクセル値pは変形されないことに留意されたい。
【0090】
寄与w(y,y)は変形変換から取り出される。単一の変形された点は、限られた数の変形されていない点にマッピングされる可能性が高く、つまり、ほとんどの寄与はゼロになる。B0マップがあらゆる場所で0である場合、変形行列は単位変換になり、改変されたSENSE方程式は通常のSENSE方程式になる。
【0091】
この希薄さは、「変形されていない感度行列」SU(及び同様にRU)を定めることを可能にする。このために、
【数22】
の各値について、範囲k=1、...、Mが定められ、ここで、Mは、(変形と折り返しを介して)
【数23】
に実質的に寄与する点の総数である。Mは、SENSEファクタNより(幾分)大きい可能性が高い。
【0092】
行列SUの要素は次のように表される(省略形)。
【数24】
そして、同等に、
【数25】
【0093】
前の段落(6.1)で説明したのと同様のSENSE方程式を行列表記で解くことにより下式が与えられる。
【数26】
ここで、ベクトルpは、変形されていない座標で表される。これにはM個の要素が含まれる。完全な表記では、実際には
【数27】
と記述するべきであり、すなわち、折り返された位置
【数28】
に対応する(変形されていない展開された)位置の集合である。
【0094】
理論的には、
【数29】
の一部の要素が、他の折り返された点に関連するベクトルpの要素と同じ(1つ又は複数の)位置になり得るという問題があることになる。しかし、これは以下で説明する演算で解決される。
【0095】
各折り返された位置
【数30】
について、変形されていない点が変形されたピクセルに変換され戻される。
【数31】
【0096】
言葉で表せば、「「通常の」(すなわち変形された)ベクトルのj番目の要素は変形された位置yjに関連し、変形マップの重みを使用して、変形されていないベクトルpの要素から組み立てられる(これにより、k番目の要素は値pを有し、変形されていない位置yに関連する)」。
【0097】
理論的解釈:信号パイルアップの場合、単一の高強度測定値が、いくつかの変形されていない点に展開する。これらの点は互い近いので、CSM値間の区別はほとんどなく、その結果、pの要素におけるSNRは低い。このステップは、そのSNR損失から回復することを可能にする。
【0098】
B0マップに不完全性がある可能性があり、B0プレスキャンとEPIスキャンの間にモーションがある可能性があり、また、EPIスキャン自体にも追加の歪み(例えば渦電流に起因するもの)がある可能性がある。これらの不完全性から生じるアーチファクトに対するロバストネスは、変形行列をその対角線に関してシフトさせ、元の変形行列とシフトされた変形行列とに対してピクセル単位のMAX演算を適用することによって上昇され得る。これは、正方向及び負方向にシフトしながら、複数回繰り返され得る。
【0099】
本発明は、図面及び上記において詳細に図示及び記載されているが、かかる図示及び記載は説明的又は例示的であり、非限定的であると考えられるべきである。本発明は、開示の実施形態に限定されない。
【0100】
開示の実施形態の他の変形例が、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲から、クレームされる発明に係る当業者によって理解及び実施され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせが好適に使用することができないとは限らない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体上で記憶及び/又は分配されてもよいし、インターネット又は他の有線若しくは無線テレコミュニケーションシステムを介して等の他の形態で分配されてもよい。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0101】
100 真の幾何学的位置
102 歪んだ(公称)位置
104 対角線
106 歪んだ位置の関数としての幾何学的位置
108 視野(FOV)
110 点A
112 点A’
114 折り返し距離
116 点Y
118 点X
120 点B
122 点B’
124 点1
126 点2
128 点3
130 点4
200 磁気共鳴システム
204 主磁石
206 磁石のボア
208 撮像ゾーン
209 スライス
210 磁場勾配コイル
212 勾配コイル電源
214 コイル要素
216 送受信機
218 被検者
220 被検者支持台
224 位相符号化方向
240 コンピュータシステム
242 ハードウェアインターフェイス
244 プロセッサ
246 ユーザインターフェイス
250 コンピュータメモリ
260 機械実行可能命令
262 パルスシーケンスコマンド
264 磁気共鳴データ
266 折り返された磁気共鳴画像のセット
268 磁場不均一性マップ
270 ボクセル変形マップ
272 コイル感度のセット又はコイル感度行列
274 展開行列のセット
276 歪んでいない磁気共鳴画像データ
278 改変された磁気共鳴画像データ
300 磁気共鳴イメージングシステム
322 位相符号化方向
400 磁気共鳴イメージングシステム
500 パルスシーケンスコマンドを使用して、磁気共鳴データを取得するよう磁気共鳴イメージングシステムを制御する
502 磁気共鳴データから折り返された磁気共鳴画像のセットを再構成する
504 磁場不均一性マップからボクセル変形マップを計算する
506 複数のコイル要素のためのコイル感度行列を少なくとも部分的に使用して展開行列のセットを計算する(展開行列のセットは、少なくとも1つの改変された展開行列を含む)
508 折り返された磁気共鳴画像のセット及び展開行列のセットを使用して、歪んでいない磁気共鳴画像データを計算する
510 歪んでいない磁気共鳴画像データをボクセル変形マップを用いて変換することによって、改変された磁気共鳴画像データを計算する
600 線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7