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特許7025428自然時効硬化に耐性のある高強度および高成形性のアルミニウム合金ならびにその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】自然時効硬化に耐性のある高強度および高成形性のアルミニウム合金ならびにその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/05 20060101AFI20220216BHJP
   C22F 1/057 20060101ALI20220216BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20220216BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20220216BHJP
   C22C 21/18 20060101ALI20220216BHJP
   C22C 21/12 20060101ALI20220216BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
C22F1/05
C22F1/057
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/18
C22C21/12
C22F1/00 602
C22F1/00 613
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 631Z
C22F1/00 661Z
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686B
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019531248
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2017065715
(87)【国際公開番号】W WO2018111813
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-06-11
(31)【優先権主張番号】62/435,382
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/477,677
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・フロレイ
(72)【発明者】
【氏名】コッラード・バッシ
(72)【発明者】
【氏名】オード・デスポワ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・レヴラ
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190408(WO,A1)
【文献】特開2016-141842(JP,A)
【文献】特開2009-007617(JP,A)
【文献】特開2010-116594(JP,A)
【文献】特開平05-302154(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046010(WO,A1)
【文献】特表2007-523262(JP,A)
【文献】特開2009-041045(JP,A)
【文献】特表2016-522320(JP,A)
【文献】特表2004-527658(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102732760(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/05
C22F 1/057
C22C 21/02-21/18
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金金属製品の製造方法であって、
鋳造アルミニウム合金製品を形成するためにアルミニウム合金を鋳造することであって、前記アルミニウム合金が、0.05~1.1重量%のCu、0.6~1.1重量%のSi、0.7~1.2重量%のMg、最大0.25重量%のCr、最大0.35重量%のMn、最大0.4重量%のFe、最大0.25重量%のZr、最大1.0重量%のZn、最大0.30重量%のTi、最大0.04重量%のNi、および合計で最大0.15重量%の不純物を含み、残部がAlであって、不純物の各元素が最大0.05重量%存在する、ことと、
前記鋳造アルミニウム合金製品を均質化することと、
前記鋳造アルミニウム合金製品を熱間圧延して、シート、プレート、またはシェート(shate)を製造することと、
前記シート、プレート、またはシェートを520℃~580℃の温度で溶体化することと、
前記シート、プレート、またはシェートを予備時効処理することと、
前記シート、プレート、またはシェートを輪状に巻くことと、を含み、
前記予備時効処理が、前記シート、プレート、またはシェートを、溶体化後に、115℃~135℃の予備時効処理温度まで加熱すること、および前記予備時効処理温度で最大2時間浸漬することを含む、方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、0.6~1.1重量%のCu、0.6~1.1重量%のSi、0.7~1.2重量%のMg、最大0.25重量%のCr、最大0.35重量%のMn、0.05~0.4重量%のFe、最大0.25重量%のZr、最大0.3重量%のZn、最大0.10重量%のTi、最大0.04重量%のNi、および合計で最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlであって、不純物の各元素が最大0.05重量%存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が、0.75~0.9重量%のCu、0.65~0.9重量%のSi、0.85~1.0重量%のMg、0.05~0.18重量%のCr、0.05~0.18重量%のMn、0.12~0.3重量%のFe、最大0.15重量%のZr、最大0.1重量%のZn、0.01~0.04重量%のTi、最大0.034重量%のNi、および合計で最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlであって、不純物の各元素が最大0.05重量%存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予備時効処理が、前記シート、プレート、またはシェートを、溶体化後に120℃~130℃の温度まで加熱することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミニウム合金金属製品が、少なくとも0.23のひずみ硬化指数を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウム合金金属製品が、2%の予ひずみによる硬化および185℃で20分間の熱処理後に、少なくとも300MPaの強度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金金属製品が、少なくとも300MPaの強度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ひずみ硬化および熱処理をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ひずみ硬化が2%予ひずみを加えることを含み、前記熱処理が、前記アルミニウム合金金属製品を185℃の温度で20分間維持することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金金属製品を185℃の温度で20分間維持する熱処理をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶体化後に前記アルミニウム合金金属製品を焼入れすることをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミニウム合金金属製品を冷間圧延することをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミニウム合金金属製品を時効処理することをさらに含み、前記時効処理が、前記アルミニウム合金金属製品を180℃~225℃で一定期間加熱することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミニウム合金金属製品に予ひずみを付与することをさらに含み、前記予ひずみが、溶体化後、前記アルミニウム合金金属製品に引張ひずみを加えることを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金金属製品が、自然時効硬化に対して耐性がある、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルミニウム合金金属製品が、輸送車体部品である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記輸送車体部品が、自動車の車体部品または構造体部品である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルミニウム合金金属製品が、電子機器ハウジングである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記不純物の元素が、V、Ga、Ca、Hf、Sr、ScおよびSnから少なくとも1つ選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月16日に出願された米国仮特許出願第62/435,382号、および2017年3月28日に出願された同第62/477,677号の利益を主張し、これらは、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高強度アルミニウム合金ならびにそれを作製する方法および加工する方法に関する。本発明はさらに、改善された機械的強度および成形性を呈する熱処理可能なアルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0003】
高強度を有するリサイクル可能なアルミニウム合金は、輸送用途(限定するものではないが、例えば、トラック、トレーラー、列車、および海洋を包含する)、電子機器用途、自動車用途、およびその他など、多くの用途における製品性能の改善に望ましい。例えば、トラックまたはトレーラーにおける高強度アルミニウム合金は、従来の合金鋼よりも軽量となり、これにより、新しくより厳格な政府の排出規制を満たすために必要とされる、大幅な排出削減をもたらすことが可能となる。こうした合金は、高強度、高成形性、および耐食性を呈するべきである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の網羅された実施形態は、この発明の概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この概要は、本発明の様々な態様の高レベルの概説であり、以下の詳細な説明の項でさらに説明される概念のいくつかを紹介している。この概要は、特許請求された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、任意のまたは全ての図面、および各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
6xxx系アルミニウム合金の調製方法、アルミニウム合金、および開示された合金を含む製品が本明細書で提供される。
【0006】
一態様は、アルミニウムを加工する方法に関する。例えば、アルミニウム合金製品を製造する方法が本明細書で開示され、本方法は、アルミニウム合金を鋳造して、鋳造アルミニウム合金製品を形成することであって、アルミニウム合金が約0.05~1.1重量%のCu、約0.6~1.1重量%のSi、約0.7~1.2重量%のMg、最大約0.25重量%のCr、最大約0.35重量%のMn、最大約0.4重量%のFe、最大約0.25重量%のZr、最大約0.25重量%のZr、最大約1.0重量%のZn、最大約0.10重量%のTi、最大約0.04重量%のNi、および最大約0.15重量%の不純物を含み、残部がAlである、鋳造することと、鋳造アルミニウム合金製品を均質化することと、鋳造アルミニウム合金製品を熱間圧延して、圧延製品(例えば、シート、プレート、またはシェート(shate))を製造することと、シート、プレート、またはシェートを約520℃~約580℃の温度で溶体化することと、シート、プレート、またはシェートを予備時効処理することと、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを輪状に巻くことと、を含む。本出願を通して、全ての元素は合金の総重量に基づく重量百分率(重量%)で記載されている。
【0007】
いくつかの例では、アルミニウム合金は、約0.6~1.1重量%のCu、約0.6~1.1重量%のSi、約0.7~1.2重量%のMg、最大約0.25重量%のCr、最大約0.35重量%のMn、約0.05~0.4重量%のFe、最大約0.25重量%のZr、最大約0.3重量%のZn、最大約0.10重量%のTi、最大約0.04重量%のNi、および最大約0.15重量%の不純物を含むことができ、残部はAlである。場合によっては、アルミニウム合金は、約0.7~1.0重量%のCu、約0.65~1.0重量%のSi、約0.8~1.1重量%のMg、約0.01~0.20重量%のCr、最大約0.25重量%のMn、約0.10~0.35重量%のFe、最大約0.2重量%のZr、最大約0.2重量%のZn、約0.01~0.05重量%のTi、最大約0.035重量%のi、および最大約0.15重量%の不純物を含むことができ、残部はAlである。いくつかの場合において、アルミニウム合金は、約0.75~0.9重量%のCu、約0.65~0.9重量%のSi、約0.85~1.0重量%のMg、約0.05~0.18重量%のCr、約0.05~0.18重量%のMn、約0.12~0.30重量%のFe、最大約0.15重量%のZr、最大約0.1重量%のZn、約0.01~0.04重量%のTi、最大約0.034重量%のNi、および最大約0.15重量%の不純物を含むことができ、残部はAlである。
【0008】
シート、プレート、またはシェートを予備時効処理することは、溶体化後、シート、プレート、またはシェートを約115℃~約135℃、または場合によっては、溶体化後、約120℃~約130℃の温度まで加熱することを含むことができる。いくつかの態様では、溶体化ステップ後の予備時効処理ステップは、予備時効処理された状態のアルミニウム合金がもたらすことができ、その結果、合金の自然時効に対する改善された耐性および/または改善された均一成形性を呈することができる例示的な調質度をもたらす。場合によっては、自然時効硬化に耐性のある予備時効処理された合金は、製造されたままでアルミニウム合金を貯蔵するための貯蔵寿命の延長を呈し得る。
【0009】
本明細書に記載される方法は、アルミニウム合金製品をひずみ硬化すること、および/または熱処理することをさらに含み得る。ひずみ硬化は、任意に約2%で行うことができ、熱処理はアルミニウム合金製品を約185℃の温度で約20分間維持することを含むことができる。
【0010】
本明細書に記載の方法は、溶体化ステップの後にアルミニウム合金製品を焼入れすること、アルミニウム合金製品を冷間圧延すること、アルミニウム合金製品を時効処理すること(例えば、アルミニウム合金製品を約180℃~約225℃で一定期間加熱することによる)、および/またはアルミニウム金属製品に予ひずみを加えることをさらに含むことができ、予ひずみは、溶体化後にアルミニウム合金製品に引張ひずみを加えることを含む。
【0011】
任意に、アルミニウム合金製品は、少なくとも0.23のひずみ硬化指数を含む。任意に、アルミニウム合金製品は、2%の予ひずみによる硬化および約185℃で約20分間の熱処理後に、少なくとも300MPaの強度を含む。いくつかの非限定的な例では、アルミニウム合金製品は、少なくとも300MPaの強度を含む。
【0012】
本明細書で提供される方法に従って得られる合金を含むアルミニウム合金製品(例えば、自動車の車体部品または構造体部品などの輸送車体部品、および電子機器ハウジング)も開示される。
【0013】
さらなる態様、目的、および利点は、以下の非限定的な例および図の詳細な説明を考慮することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】溶体化後の様々な予備時効処理条件にさらされた例示的な合金の経時的な引張特性の比較を示すグラフである。
図2】溶体化後の様々な予備時効処理条件にさらされた例示的な合金の経時的な伸びの間で比較を示すグラフである。
図3】溶体化後の様々な予備時効処理条件にさらされた例示的な合金の塗装焼付け応答の比較を示すグラフである。
図4】溶体化後の様々な予備時効処理条件にさらされた例示的な合金のコイル冷却速度の比較を示すグラフである。
図5】予備時効処理後のコイル直径における様々な場所での比較用アルミニウム合金の温度コイル冷却速度を示すグラフである。
図6】コイル直径における様々な場所でのT4調質度における例示的な合金の経時的降伏強度安定性の比較を示すグラフである。
図7】コイル直径における様々な場所での例示的な合金の経時的塗装焼付け応答安定性の比較を示すグラフである。
図8】コイル直径における様々な場所での例示的な合金の経時的伸び安定性の比較を示すグラフである。
図9】溶体化後、100℃の予備時効処理温度にさらされた比較用合金の自然時効硬化を示すグラフである。
図10】溶体化後、130℃の予備時効処理温度にさらされた例示的な合金の自然時効硬化を示すグラフである。
図11】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な調質度における例示的な合金の使用中の降伏強度の比較を示すグラフである。
図12】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な合金の経時的塗装焼付け応答の比較を示すグラフである。
図13】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な合金のn値の比較を示すグラフである。
図14】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な合金の経時的降伏強度安定性の比較を示すグラフである。
図15】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な合金の時効処理1ヶ月後の降伏強度(Rp02)の時効差を示すグラフである。
図16】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされたT6調質度における、経時的な例示的な合金のVDA 238-100試験仕様に従って2.0mmに正規化された外側曲げ角度を示すグラフである。
図17】溶体化後、様々な予備時効処理温度にさらされた例示的な合金の経時的なひずみ硬化指数(n値(n10~20))の比較を示すグラフである。
図18】例示的な合金と比較用合金の経時的伸び(Ag)の比較を示すグラフである。
図19】様々な予備時効処理温度の後、比較用合金の降伏強度を示すグラフである。
図20】様々な予備時効処理温度の後、比較合金の降伏強度を示すグラフである。
図21】様々な予備時効処理温度の後、比較用合金の降伏強度を示すグラフである。
図22A】比較用合金の経時的焼付硬化(BH)を示すグラフである。
図22B】比較用合金の経時的焼付硬化(BH)の比較を示すグラフである。
図22C】比較用合金の経時的焼付硬化(BH)の比較を示すグラフである。
図22D】例示的な合金の経時的焼付硬化(BH)の比較を示すグラフである。
図23】T4調質度における例示的な合金とT4調質度における比較用合金の経時的な降伏強度の比較を示すグラフである。
図24】例示的な合金と比較用合金の経時的な成形性の比較を示すグラフである。
図25】T8X調質度における例示的な合金とT8X調質度における比較用合金の経時的降伏強度の比較を示すグラフである。
図26A】例示的な合金の自然時効後の降伏強度を示すグラフである。
図26B】例示的な合金の塗装焼付けおよび自然時効後の降伏強度を示すグラフである。
図27】本明細書に記載されるプロセスの概略図である。
図28】様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の曲げ角度および強度を示すグラフである。
図29】様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の伸び率および強度を示すグラフである。
図30】顧客への納品時、および後成形熱処理(PFHT)後に本明細書に記載の様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の降伏強度を示すグラフである。
図31】顧客に納品時、および後成形熱処理(PFHT)後に本明細書に記載の様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の引張強度を示すグラフである。
図32】顧客に納品時、および後成形熱処理(PFHT)後に本明細書に記載の様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の伸び率値を示すグラフである。
図33】顧客に納品時、および後成形熱処理(PFHT)後に本明細書に記載の様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の曲げ角度を示すグラフである。
図34】様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の曲げ角度および強度を示すグラフである。
図35】様々な予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の伸び率および強度を示すグラフである。
図36】顧客への納品時、および様々な塗装焼付け熱処理後に本明細書に記載の予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の降伏強度を示すグラフである。
図37】顧客への納品時、および様々な塗装焼付け熱処理後に本明細書に記載の予ひずみ手順を施したアルミニウム合金の伸び率の値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載されているのは、熱処理可能なアルミニウム合金ならびにその作製方法および加工方法である。熱処理可能なアルミニウム合金は、改善された機械的強度および変形特性(成形性および曲げ加工性など)を呈する。得られた金属製品が高強度および高変形特性を有するような方法で、合金を加工することができる。金属製品の特性は、下流加工(例えば、金属製品のエンドユーザー成形および後成形熱処理、またはエンドユーザー塗装焼付け)中にさらに向上させ得る。驚くべきことに、本明細書にさらに記載される加工方法の間に使用される条件のために、金属製品は、最終曲げ加工性または伸びを低下させることなく最終強度の増大を達成することができる。
【0016】
定義および説明
本明細書で使用される「発明」、「その発明」、「この発明」および「本発明」という用語は、本特許出願および以下の特許請求の範囲の主題の全てを広く参照することが意図されている。これらの用語を含む言明は、本明細書に記載された主題を限定するものではなく、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0017】
この説明において、アルミニウム工業記号によって識別された合金、例えば「系」、または「6xxx」が参照される。アルミニウムおよびその合金の命名および識別に最も一般的に使用されている番号記号システムを理解するために、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい(いずれもアルミニウム工業会によって発行されている)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その(the)」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数の言及を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、プレートは、一般に、約15mmを超える厚さを有する。例えば、プレートは、約15mmを超える、約20mmを超える、約25mmを超える、約30mmを超える、約35mmを超える、約40mmを超える、約45mmを超える、約50mmを超える、または約100mmを超える厚さを有するアルミニウム製品を指してもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「シェート」(シートプレートとも呼ばれる)は一般に、約4mm~約15mmの厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シェートは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚さを有してもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「シート」は、一般に、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満、または約0.1mm未満の厚さを有してもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「鋳造アルミニウム合金製品」、「鋳造製品」などの用語は、交換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造など)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ブロック鋳造機、もしくは任意の他の連続鋳造機を使用することなどによる)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造された製品を指す。本明細書で開示される全ての範囲は、その中に含まれる任意および全ての部分範囲を包含すると理解される。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1以上最大値10以下の任意および全ての部分範囲、すなわち、1の最小値またはそれ以上、例えば、1~6.1で始まり、10の最大値またはそれ以下、例えば、5.5~10で終わる全ての部分範囲を含むと考慮されるべきである。
【0024】
本出願では、合金の調質度または状態について言及する。最も一般的に使用される合金調質度の説明の理解に関しては、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F状態またはF調質度は、製造されたままのアルミニウム合金を指す。O状態またはO調質度は、焼鈍処理後のアルミニウム合金を指す。T3状態またはT3調質度は、熱処理(溶体化)され、冷間加工され、自然時効させたアルミニウム合金溶液を指す。T4状態またはT4調質度は、熱処理され、自然時効させたアルミニウム合金溶液を指す。T6状態またはT6調質度は、熱処理され、人工時効処理されたアルミニウム合金溶液を指す。T8x状態またはT8x調質度は、熱処理され、冷間加工され、人工時効処理されたアルミニウム合金溶液を指す。
【0025】
以下のアルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、合金の総重量に基づく重量百分率(重量%)で記載されている。各合金の特定の例では、残部はアルミニウムであり、不純物の合計において最大重量%は0.15重量%である。
【0026】
合金の組成
本明細書に記載されるのは、高強度および高成形性を呈し得る新規のアルミニウム合金である。場合によっては、アルミニウム合金は、熱処理可能なアルミニウム合金を含む。本明細書で使用される場合、熱処理可能なアルミニウム合金としては、2xxx系合金、6xxx系合金、および7xxx系合金が挙げられる。特定の態様では、合金は、高強度および高変形性を呈する。場合によっては、合金は、熱処理後に変形性を著しく損なうことなく強度の増加を呈する。合金の性質は、少なくとも部分的には、合金を加工して、記載のプレート、シェート、シートまたは他の製品を製造する方法によって得られる。
【0027】
いくつかの例では、合金は、表1に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表1】
【0028】
いくつかの例では、合金は、表2に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表2】
【0029】
他の例では、合金は、表3に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表3】
【0030】
一例では、アルミニウム合金は、表4に提供されるような以下の元素組成を有し得る。特定の態様では、合金は、アルミニウムプレートおよびシェートを調製するために使用される。
【表4】
【0031】
特定の例では、開示された合金は、合金の総重量に基づいて、約0.05%~約1.1%(例えば、約0.6%~約1.1%、約0.65%~約0.9%、約0.7%~1.0%、または約0.6%~約0.7%)の量の銅(Cu)を含む。例えば、合金は、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.3%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.4%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、約0.5%、約0.51%、約0.52%、約0.53%、約0.54%、約0.55%、約0.56%、約0.57%、約0.58%、約0.59%、約0.6%、約0.61%、約0.62%、約0.63%、約0.64%、約0.65%、約0.66%、約0.67%、約0.68%、約0.69%、約0.7%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.8%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.9%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、約1.0%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、または約1.1%のCuを含んでもよい。全て重量%で表した。
【0032】
特定の例では、開示された合金は、合金の総重量に基づいて、約0.6%~約1.1%(例えば、約0.65%~約1.0%、約0.9%~約1.1%、約0.65%~約0.9%、約0.9%~約1.1%、または約1.0%~約1.1%)の量のケイ素(Si)を含む。例えば、合金は、約0.6%、約0.61%、約0.62%、約0.63%、約0.64%、約0.65%、約0.66%、約0.67%、約0.68%、約0.69%、約0.7%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.8%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.9%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、約1.0%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、または約1.1%のSiを含み得る。全て重量%で表した。
【0033】
特定の例では、開示された合金は、合金の総重量に基づいて、約0.7%~約1.2%(例えば、約1.0%~約1.25%、約1.1%~約1.25%、約1.1%~約1.2%、約1.0%~約1.2%、約1.05%~約1.3%、または約1.15%~約1.3%)の量で、マグネシウム(Mg)を含む。例えば、合金は、約0.7%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.8%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.9%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、約1.0%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、約1.1%、約1.11%、約1.12%、約1.13%、約1.14%、約1.15%、約1.16%、約1.17%、約1.18%、約1.19%、または約1.2%のMgを含み得る。全て重量%で表した。
【0034】
特定の態様では、強化との複合的な影響のために、合金は、約1.11:1の制御されたSi:Mg比と共に約0.72重量%未満のCu含有量を有する。
【0035】
特定の態様では、合金の総重量に基づいて、合金は、最大約0.25%(例えば、約0.03%~約0.06%、約0.03%~約0.19%、または約0.06%~約0.1%)の量のクロム(Cr)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.059%、約0.01%、約0.011%、約0.012%、約0.013%、約0.014%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.021%、約0.022%、約0.023%、約0.024%、約0.025%、約0.026%、約0.027%、約0.028%、約0.029%、約0.03%、約0.031%、約0.032%、約0.033%、約0.034%、約0.035%、約0.036%、約0.037%、約0.038%、約0.039%、約0.04%、約0.041%、約0.042%、約0.043%、約0.044%、約0.045%、約0.046%、約0.047%、約0.048%、約0.049%、約0.05%、約0.051%、約0.052%、約0.053%、約0.054%、約0.055%、約0.056%、約0.057%、約0.058%、約0.059%、約0.06%、約0.061%、約0.062%、約0.063%、約0.064%、約0.065%、約0.066%、約0.067%、約0.068%、約0.069%、約0.07%、約0.071%、約0.072%、約0.073%、約0.074%、約0.075%、約0.076%、約0.077%、約0.078%、約0.079%、約0.08%、約0.081%、約0.082%、約0.083%、約0.084%、約0.085%、約0.086%、約0.087%、約0.088%、約0.089%、約0.09%、約0.091%、約0.092%、約0.093%、約0.094%、約0.095%、約0.096%、約0.097%、約0.098%、約0.099%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、または約0.25%のCrを含むことができる。全て重量%で表した。いくつかの場合において、Crは合金中に存在しない(すなわち、0%)。いくつかの例では、Crは、粒子構造を制御し、かつ粒子成長および再結晶を防ぐことができる。Crが多量であるほど、時効調質度においてより高い成形性および改善された曲げ加工性をもたらし得る。
【0036】
特定の例では、アルミニウムは、合金の総重量に基づいて、最大約0.35%(例えば、約0.05%~約0.18%または約0.1%~約0.35%)の量で、マンガン(Mn)を含み得る。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.059%、約0.01%、約0.011%、約0.012%、約0.013%、約0.014%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.021%、約0.022%、約0.023%、約0.024%、約0.025%、約0.026%、約0.027%、約0.028%、約0.029%、約0.03%、約0.031%、約0.032%、約0.033%、約0.034%、約0.035%、約0.036%、約0.037%、約0.038%、約0.039%、約0.04%、約0.041%、約0.042%、約0.043%、約0.044%、約0.045%、約0.046%、約0.047%、約0.048%、約0.049%、約0.05%、約0.051%、約0.052%、約0.053%、約0.054%、約0.055%、約0.056%、約0.057%、約0.058%、約0.059%、約0.06%、約0.061%、約0.062%、約0.063%、約0.064%、約0.065%、約0.066%、約0.067%、約0.068%、約0.069%、約0.07%、約0.071%、約0.072%、約0.073%、約0.074%、約0.075%、約0.076%、約0.077%、約0.078%、約0.079%、約0.08%、約0.081%、約0.082%、約0.083%、約0.084%、約0.085%、約0.086%、約0.087%、約0.088%、約0.089%、約0.09%、約0.091%、約0.092%、約0.093%、約0.094%、約0.095%、約0.096%、約0.097%、約0.098%、約0.099%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.3%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、または約0.35%のMnを含んでもよい。場合によっては、Mnは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0037】
特定の態様では、合金は、また、合金の総重量に基づいて、最大約0.4%(例えば、約0.1%~約0.25%、約0.18%~約0.25%、約0.2%~約0.21%、または、約0.15%~約0.32%)の量の鉄(Fe)も含む。例えば、合金は、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.3%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、または約0.40%のFeを含み得る。場合によっては、Feは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0038】
特定の態様では、合金は、合金の総重量に基づいて、最大約0.25%(例えば、0%~約0.2%、約0.01%~約0.25%、約0.01%~約0.15%、0.01%~約0.1%、または約0.02%~約0.09%)の量のジルコニウム(Zr)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、または約0.25%のZrを含み得る。特定の態様において、Zrは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。いくつかの例では、Zrは、粒子構造を制御し、かつ粒子成長および再結晶を防ぐことができる。Zrが多量であるほど、T4および時効調質度においても、より高い成形性および改善された曲げ加工性をもたらすことができる。
【0039】
特定の態様では、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、最大約1.0%(例えば、約0.001%~約0.3%、約0.005%~約0.09%、約0.004%~約0.3%、約0.03%~約0.2%、または約0.06%~約0.1%)の量の亜鉛(Zn)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.011%、約0.012%、約0.013%、約0.014%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.021%、約0.022%、約0.023%、約0.024%、約0.025%、約0.026%、約0.027%、約0.028%、約0.029%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.3%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.4%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、約0.50%、約0.51%、約0.52%、約0.53%、約0.54%、約0.55%、約0.56%、約0.57%、約0.58%、約0.59%、約0.6%、約0.61%、約0.62%、約0.63%、約0.64%、約0.65%、約0.66%、約0.67%、約0.68%、約0.69%、約0.7%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.8%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.90%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、または約1.0%のZnを含む。場合によっては、Znは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。特定の態様では、Znは、プレート製品における曲げ加工性および曲げ異方性の低減など、成形に有益であり得る。
【0040】
特定の態様では、合金は、合金の総重量に基づいて、最大約0.3%(例えば、約0.01%~約0.25%、約0.05%~約0.2%、または最大約0.1%)の量のチタン(Ti)を含む。例えば、合金は、約0.01%、約0.011%、約0.012%、約0.013%、約0.014%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.035%、約0.04%、約0.045%、約0.05%、約0.055%、0.06%、約0.065%、約0.07%、約0.075%、約0.08%、約0.085%、約0.09%、約0.095%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、または約0.3%のTiを含み得る。全て重量%で表した。
【0041】
特定の態様では、合金は、合金の総重量に基づいて、最大約0.04%(例えば、0%から約0.02%、約0.01%から約0.03%、約0.03%から約0.04%)の量でニッケル(Ni)を含む。例えば、合金は、0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.011%、約0.012%、約0.013%、約0.014%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.021%、約0.022%、約0.023%、約0.024%、約0.025%、約0.026%、約0.027%、約0.028%、約0.029%、約0.03%、約0.031%、約0.032%、約0.033%、約0.034%、約0.035%、約0.036%、約0.037%、約0.038%、約0.039%、または約0.04%のNiを含み得る。特定の態様では、Niは、合金中に存在しない(すなわち、0重量%)。全て重量%で表した。
【0042】
任意に、合金組成物は、不純物とも呼ばれ得る他の微量元素を、それぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量でさらに含み得る。これらの不純物としては、V、Ga、Ca、Hf、Sr、Sc、Sn、またはそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。したがって、V、Ga、Ca、Hf、Sr、Sc、またはSnは、合金中に約0.05%以下、約0.04%以下、約0.03%以下、約0.02%以下、または約0.01%以下の量で存在してもよい。特定の態様では、全ての不純物の合計は0.15%を超えない(例えば、0.1%)。全て重量%で表した。特定の態様では、合金の残りの割合はアルミニウムである。
【0043】
例示的な合金は、約1.11%のSi、約0.72%のCu、約1.00%のMg、約0.22%のFe、約0.3%のMn、約0.021%のTi、約0.03%のCr、約0.2%のZn、約0.034%のNi、および最大約0.15%の総不純物を含み、残部はAlである。
【0044】
別の例示的な合金は、約0.7%のSi、約0.9%のCu、約0.9%のMg、約0.22%のFe、約0.3%のMn、約0.021%のTi、約0.03%のCr、約0.2%のZn、約0.034%のNi、および最大約0.15%の総不純物を含み、残部はAlである。
【0045】
別の例示的な合金は、約0.69%のSi、約0.79%のCu、約0.9%のMg、約0.22%のFe、約0.03%のMn、約0.023%のTi、約0.25%のCr、約0.063%のZn、約0.0046%のNi、および最大約0.15%の総不純物(約0.016%のVなど)を含み、残部はAlである。
【0046】
作製方法
特定の態様では、開示された合金組成物は、開示された方法の製品である。本開示を限定することを意図するものではないが、アルミニウム合金の性質は、合金の調製中の微細構造の形成によって部分的に決定される。特定の態様では、合金組成物の調製方法は、合金が所望の用途に適した性質を有するか否かに影響を及ぼし得るかまたは決定さえし得る。
【0047】
本明細書に記載の合金は、当業者に既知である鋳造方法を使用して鋳造され得る。例えば、鋳造プロセスは、直接冷却(DC)鋳造プロセスを含むことができる。任意に、DC鋳造アルミニウム合金製品(例えばインゴット)は、その後の処理の前に洗浄(scalp)することができる。任意に、鋳造プロセスは、連続鋳造(CC)プロセスを含むことができる。次に、鋳造アルミニウム合金製品は、さらなる加工ステップに供することができる。1つの非限定的な例では、加工方法としては、均質化、熱間圧延、溶体化および焼入れが挙げられる。場合によっては、加工ステップは、必要に応じて焼鈍処理すること、および/または冷間圧延することをさらに含む。いくつかの例では、加工方法はまた、予備時効処理ステップを含む。いくつかのさらなる場合において、加工方法はまた、予ひずみステップを含み得る。
【0048】
均質化
均質化ステップは、約520℃または少なくとも約520℃(例えば、少なくとも約520℃、少なくとも約530℃、少なくとも約540℃、少なくとも約550℃、少なくとも約560℃、少なくとも約570℃、または少なくとも約580℃)のピーク金属温度(PMT)を達成するために、本明細書に記載の合金組成物から調製したインゴットなどの鋳造アルミニウム合金製品を加熱することを含んでもよい。例えば、インゴットを約520℃~約580℃、約530℃~約575℃、約535℃~約570℃、約540℃~約565℃、約545℃~約560℃、約530℃~約560℃、または約550℃~約580℃の温度まで加熱することができる。いくつかの場合には、PMTまでの加熱速度は、約100℃/時間以下、75℃/時間以下、50℃/時間以下、40℃/時間以下、30℃/時間以下、25℃/時間以下、20℃/時間以下、または15℃/時間以下であり得る。他の場合には、PMTまでの加熱速度は、約10℃/分~約100℃/分(例えば、約10℃/分~約90℃/分、約10℃/分~約70℃/分、約10℃/分~約60℃/分、約20℃/分~約90℃/分、約30℃/分~約80℃/分、約40℃/分~約70℃/分、または約50℃/分~約60℃/分)であり得る。
【0049】
次いで、鋳造アルミニウム合金製品は、一定期間浸漬させ得る(すなわち、指示された温度に保持された)。1つの非限定的な例によれば、鋳造アルミニウム合金製品は、最大で約18時間(例えば、包括的に、約30分~約18時間)浸漬させ得る。例えば、鋳造アルミニウム合金製品は、少なくとも約500℃の温度で約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、または約18時間、またはそれらの間の任意の時間、浸漬できる。
【0050】
熱間圧延
均質化ステップの後、熱間圧延ステップを実施することができる。場合によっては、鋳造アルミニウム合金製品は、約440℃~540℃の熱間ミル温度で熱間圧延される。入口温度は、例えば、約440℃、約445℃、約450℃、約455℃、約460℃、約465℃、約470℃、約475℃、約480℃、約485℃、約490℃、約495℃、約500℃、約505℃、約510℃、約515℃、約520℃、約525℃、約530℃、約535℃、または約540℃であり得る。特定の場合において、熱間圧延出口温度は、約250℃~約380℃(例えば、約330℃~約370℃)の範囲であり得る。例えば、熱間圧延出口温度は、約255℃、約260℃、約265℃、約270℃、約275℃、約280℃、約285℃、約290℃、約295℃、約300℃、約305℃、約310℃、約315℃、約320℃、約325℃、約330℃、約335℃、約340℃、約345℃、約350℃、約355℃、約360℃、約365℃、約370℃、約375℃、または約380℃であり得る。
【0051】
特定の場合において、鋳造アルミニウム合金製品は、約4mm~約15mmの厚さゲージ(例えば、約5mm~約12mmの厚さゲージ)まで熱間圧延することができ、これはシェートと呼ばれる。例えば、鋳造アルミニウム合金製品は、約4mmの厚さゲージ、約5mmの厚さゲージ、約6mmの厚さゲージ、約7mmの厚さゲージ、約8mmの厚さゲージ、約9mmの厚さゲージ、約10mmの厚さゲージ、約11mmの厚さゲージ、約12mmの厚さゲージ、約13mmの厚さゲージ、約14mmの厚さゲージ、または約15mmの厚さゲージに熱間圧延することができる。特定の場合には、鋳造アルミニウム合金製品は、約15mmを超える厚さゲージ(すなわちプレート)に熱間圧延することができる。他の場合では、鋳造アルミニウム合金製品は、約4mm未満の厚さゲージ(すなわち、シート)まで熱間圧延することができる。圧延されたままのプレート、シートおよびシートの調質度は、F調質度と呼ばれる。
【0052】
任意の加工ステップ:焼純処理ステップおよび冷間圧延ステップ
特定の態様では、熱間圧延アルミニウム合金製品は、熱間圧延ステップの後、およびその後のあらゆるステップの前(例えば、溶体化ステップの前)にさらなる加工ステップに供する。さらなる加工ステップは、焼鈍処理手順および冷間圧延ステップを含み得る。
【0053】
焼鈍処理ステップは、打ち抜き加工、引き抜き加工、または曲げ加工などの成形作業中に異方性が低減され、集合組織が改善されたアルミニウム合金製品(例えば、改善されたT4合金)をもたらすことができる。焼純処理ステップを適用することによって、改質調質度中の集合組織は、よりランダムになり、かつ強い成形性異方性(例えば、Goss、Goss-ND、またはCube-RD)をもたらし得る集合組織成分(TC)を減らすように制御/設計される。この改善された集合組織は、曲げ異方性を潜在的に減少させることができ、それが異なる方向での性質の変動性を減少させるように作用するので、引き抜きプロセスまたは円周方向への打ち抜きプロセスを伴う成形において、成形性を改善することができる。
【0054】
焼鈍ステップは、アルミニウム合金製品を室温から約300℃~約500℃(例えば、約305℃~約495℃、約310℃~約490℃、約315℃~約485℃、約320℃~約480℃、約325℃~約475℃、約330℃~約470℃、約335℃~約465℃、約340℃~約460℃、約345℃~約455℃、約350℃~約450℃、約355℃~約445℃、約360℃~約440℃、または約365℃~約435℃、約400℃~約450℃、約425℃~約475℃、または約450℃~約500℃)の温度まで加熱することを含むことができる。
【0055】
アルミニウム合金製品は、この温度で一定期間浸漬させ得る。1つの非限定的な例では、合金は最大約4時間(例えば、約15~約240分(15分以上240分以内))浸漬することができる。例えば、シート、プレート、またはシェートは、約400℃~約500℃の温度で約15分間、約20分間、約25分間、約30分間、約35分間、約40分間、約45分間、約50分間、約55分間、約60分間、約65分間、約70分間、約75分間、約80分間、約85分間、約90分間、約95分間、約100分間、約105分間、約110分間、約115分間、約120分間、約125分間、約130分間、約135分間、約140分間、約145分間、約150分間、約155分間、約160分間、約165分間、約170分間、約175分間、約180分間、約185分間、約190分間、約195分間、約200分間、約205分間、約210分間、約215分間、約220分間、約225分間、約230分間、約235分間、または約240分間、またはそれらの間の任意の時間、浸漬できる。特定の態様では、アルミニウム合金製品は、焼鈍処理ステップを受けない。
【0056】
溶体化ステップの前に、冷間圧延ステップを任意に熱間圧延アルミニウム合金製品に施すことができる。特定の態様では、熱間圧延アルミニウム合金製品(例えば、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェート)は、より薄いゲージのシェートまたはより薄いゲージのシートに冷間圧延することができる。
【0057】
溶体化
溶体化ステップは、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを室温から約500℃~約590℃(例えば、約510℃~約585℃、約520℃~約580℃、約525℃~約575℃、約530℃~約570℃、約535℃~約565℃、約540℃~約560℃、または約545℃~約555℃)の温度まで加熱することを含んでもよい。アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、ある期間、一定の温度で浸漬させ得る。特定の態様では、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、最大約2時間(例えば、約5秒以上~約120分以内まで)浸漬させることができる。例えば、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、約525℃~約590℃の温度で約5秒間、約10秒、約15秒、約20秒、約25秒、約30秒、約35秒、約40秒、約45秒、約50秒、約55秒、約60秒、約65秒、約70秒、約75秒、約80秒、約85秒、約90秒、約95秒、約100秒、約105秒、約110秒、約115秒、約120秒、約125秒、約130秒、約135秒、約140秒、約145秒、約150秒、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約65分、約70分、約75分、約80分、約85分、約90分、約95分、約100分、約105分、約110分、約115分、または約120分、またはそれらの間の任意の時間、浸漬できる。
【0058】
特定の態様では、熱処理は、熱間圧延ステップまたは冷間圧延ステップの直後に行われる。特定の態様では、熱処理は焼純ステップの後に行われる。
【0059】
焼入れ
特定の態様では、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、その後、選択されたゲージに基づく焼入れステップにおいて、約50℃/秒~400℃/秒の間で変化し得る焼入れ速度で、約25℃~約65℃の温度まで冷却され得る。例えば、焼入れ速度は、約50℃/秒~約375℃/秒、約60℃/秒~約375℃/秒、約70℃/秒~約350℃/秒、約80℃/秒~約325℃/秒、約90℃/秒~約300℃/秒、約100℃/秒~約275℃/秒、約125℃/秒~約250℃/秒、約150℃/秒~約225℃/秒、または約175℃/秒~約200℃/秒であってもよい。
【0060】
焼入れステップでは、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを液体(例えば水)および/または気体または他の選択された焼入れ媒体で急速に焼入れを行う。特定の態様では、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは水で急速に焼入れを行うことができる。特定の態様では、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、空気で焼入れを行うことができる。
【0061】
予備時効処理、予ひずみ、および/または時効処理
任意に、予備時効処理ステップ、予ひずみステップ、および/または時効処理ステップを、下流熱処理プロセス(例えば、後成形熱処理)の前に実施することができる。いくつかの例では、予備時効処理ステップおよび時効処理ステップを実施することができる。他の例では、予備時効処理ステップおよび予ひずみステップを実施することができる。さらに他の例では、予備時効処理ステップ、予ひずみステップ、および時効処理ステップを実施することができる。場合によっては、予ひずみステップおよび時効処理ステップを実施することができる。
【0062】
予備時効処理ステップは、溶体化ステップの後にアルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを約100℃~約160℃(例えば、約105℃~約155℃、約110℃~約150℃、約115℃~約145℃、約120℃~約140℃、約125℃~約135℃)の温度まで加熱することを含み得る。いくつかの例では、予備時効処理ステップは、溶体化後に、約115℃~約135℃(例えば、約120℃~約130℃)までアルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを加熱することを含み得る。アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、ある期間、一定の温度で浸漬させ得る。特定の態様では、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートは、最大約2時間(例えば、最大約10分間、最大約20分間、最大約30分間、最大約40分間、最大約45分間、最大約60分間、最大約90分間)浸漬することができる。溶体化と予備時効処理との間の時間は、0分~60分であってもよい。例えば、溶体化と予備時効処理との間の時間は、約5分~約45分または約10分~約35分であってもよい。いくつかの例では、予備時効処理により、アルミニウム合金の自然時効硬化を阻止することができる。いくつかのさらなる例では、予備時効処理ステップは、1つ以上の下流熱処理プロセスと組み合わせることができる。予備時効処理ステップと下流熱処理ステップ(複数可)とのこのような組み合わせにより、高強度および高変形性(例えば、成形性、曲げ加工性、破砕性、または崩壊性)を有するアルミニウム合金製品が提供され得る。
【0063】
方法は、任意に、予ひずみステップを含むことができる。予ひずみステップには、圧延方向に対して長手方向にアルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを部分的に変形させることを含むことができる。例えば、予ひずみステップは、最大約10%の伸びをもたらす、アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートに引張ひずみを加えることを含んでもよい。例えば、伸びは、最大約1%、最大約2%、最大約3%、最大約4%、最大約5%、最大約6%、最大約7%、最大約8%、最大約9%、または最大約10%であってもよい。いくつかのさらなる例では、予ひずみステップは、1つ以上の下流熱処理プロセスと組み合わせることができる。予ひずみステップと下流熱処理プロセスとのこうした組み合わせにより、高強度および高変形性(例えば、成形性、曲げ加工性、破砕性または崩壊性)を有するアルミニウム合金製品を提供することができる。
【0064】
任意に、この方法は時効処理ステップをさらに含んでもよい。任意に、合金は、T4調質度となるために、ある期間自然時効させてもよい。特定の態様では、T4調質度における合金は、ある期間、約160℃~約225℃(例えば、約160℃~約225℃(例えば、約165℃、約170℃、約175℃、約180℃、約185℃、約190℃、約195℃、約200℃、約205℃、約210℃、約215℃、約220℃、または約225℃)で人工時効処理されてもよい。任意に、例示的な調質度をもたらすために、合金を約5分~約10時間(例えば、約5分、約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、または約10時間、またはそれらの間の任意の時間)の期間、人工時効処理されてもよい。いくつかの態様では、合金を溶体化した後に合金の予備時効処理を行い、例示的な調質度をもたらすことで、さらなる自然時効の発生を防ぐことができる。非自然時効は、経時的に一定の材料特性(例えば、降伏強度および曲げ加工性は経時的に劣化しない)をもたらすことができ、合金を下流加工ステップ(例えば、冷間成形/または打ち抜き)に供するときの機械的性質の差を低減させ得る。
【0065】
巻き取り
アルミニウム合金シート、プレート、またはシェートを製造ラインの終点に集めて、アルミニウム合金コイルを形成し得る。
【0066】
合金の性質
合金の性質に及ぼす予備時効処理の影響
いくつかの非限定的な例では、本明細書に記載の方法に従って加工されていない従来の熱処理可能な合金と比較して、本明細書に記載の合金は、溶体化後の予備時効処理を受けたときに高強度および高成形性および曲げ加工性を有し得る。特定の場合には、合金はまた、溶体化後の時効硬化に対する耐性も実証する。さらなる例では、合金は、溶体化後に安定した強度および成形性を呈する。
【0067】
特定の態様では、アルミニウム合金は、少なくとも約150MPaの使用中の強度(例えば、車体に使用されるアルミニウム合金の強度)を有し得る。非限定的な例では、使用中の強度は、少なくとも約約180MPa、少なくとも約190MPa、少なくとも約195MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約210MPa、少なくとも約220MPa、少なくとも約230MPa、少なくとも約240MPa、少なくとも約250MPa、少なくとも約260MPa、少なくとも約270MPa、少なくとも約280MPa、少なくとも約290MPa、少なくとも約295MPa、少なくとも約300MPa、少なくとも約305MPa、少なくとも約310MPa、少なくとも約315MPa、少なくとも約320MPa、少なくとも約325MPa、少なくとも約330MPa、少なくとも約335MPa、少なくとも約340MPa、少なくとも約345MPa、少なくとも約350MPa、少なくとも約355MPa、または少なくとも約360MPaである。場合によっては、使用中の強度は、約240MPa~約340MPaである。例えば、使用中強度は、約150MPa~約295MPa、約175MPa~約275MPa、約200MPa~約250MPa、約180MPa~約190MPa、または約185MPa~約195MPaであってもよい。
【0068】
特定の態様では、合金は19%以上の均一の伸びおよび25%以上の全伸びを呈する。特定の態様では、合金は22%以上の均一の伸びおよび27%以上の全伸びを呈する。例えば、合金は、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、または28%以上の均一な伸びを呈することができる。合金は、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、または30%以上の全伸びを呈することができる。
【0069】
アルミニウム合金の機械的性質は、所望の使用に応じて、様々な加工条件によって制御され得る。一例として、合金は、T3調質度、T4調質度、T6調質度、またはT8調質度で製造(または提供)することができる。いくつかの非限定的な例では、T4シート、プレート、およびシェートは、受け取り時、およびエンドユーザーによるさらなる加工時の強度要件を満たすためにさらなる加工(複数化)を受けることができる。いくつかの場合において、合金は、予備時効処理ステップを受けた後にT4調質度でもたらされ得、予備時効処理ステップでは、合金が、エンドユーザーの塗装焼付け手順後に、T6調質度特性を得られるようになる。例えば、シート、プレート、およびシェートは、T4調質度で送達され、エンドユーザーによってリン酸亜鉛処理および電気コーティング(Eコーティング)によりコーティングされ、かつ熱処理(例えば、塗装焼付け)されて、コーティングを硬化させることができる。予備時効処理を施したアルミニウム合金の塗装焼付けにより、人工時効処理プロセスが完了し、これにより、T6調質度において送達されるアルミニウム合金製品の機械的性質を呈するアルミニウム合金製品がもたらされる。驚くべきことに、予備時効処理を塗装焼付けと組み合わせることにより、T6調質度アルミニウム合金で観察されるレベルに匹敵する高い強度、およびT4調質度アルミニウム合金で観察されるレベルに匹敵する高い変形性がもたらされる。
【0070】
予ひずみが合金特性に及ぼす影響
いくつかの場合において、合金は、予ひずみステップを受けた後にT3調質度において提供され得る。いくつかの非限定的な例では、T3シート、プレート、およびシェートは、受け取り時、およびエンドユーザーによるさらなる加工時の強度要件を満たすためにさらなる加工(複数可)を受けることができる。いくつかの場合において、合金は、予ひずみステップを受けた後にT3調質度において提供され得る。予ひずみステップは、エンドユーザーの成形および後成形熱処理(PFHT)手順後に、合金がT6調質度特性を得られるようになる。例えば、シート、プレート、およびシェートは、T3調質度で供給され、エンドユーザーによってアルミニウム合金部品に形成され、(例えば、PFHTを適用することによって)熱処理されてもよい。予ひずみが付与されたアルミニウム合金にPFHTを適用することにより、T6調質度で供給されるアルミニウム合金製品の機械的性質を呈するアルミニウム合金製品を提供する人工時効処理プロセスを完了することができる。驚くべきことに、予ひずみをPFHTと組み合わせることにより、T6調質度アルミニウム合金で観察されるレベルに匹敵する高い強度、およびT4調質度アルミニウム合金に観察されるレベルに匹敵する高い変形性がもたらされる。特定の態様では、予ひずみが与えられた合金は、10%の予ひずみに対して12%以上(例えば、15%超または20%超)の均一の伸びを呈する。
【0071】
使用法
本明細書に記載の合金および方法は、商用車、航空機、もしくは鉄道用途などの自動車、電子機器および輸送用途で使用され得る。例えば、本明細書に記載されているアルミニウム合金製品は、強度を得るために、シャシー、クロスメンバー、およびシャシー内構成要素(これらに限定するものではないが、商用車シャシー内の2つのCチャンネル間の全ての構成要素を包含する)に使用でき、高強度鋼の全てまたは一部の代替品として機能する。特定の態様では、アルミニウム合金製品は、加工温度および操作温度が約100℃以下の用途に有用である。
【0072】
特定の態様では、合金および方法は、自動車の車体部品製品を調製するために使用され得る。例えば、開示された合金および方法は、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、およびCピラー)、内部パネル、サイドパネル、フロアパネル、トンネル、構造パネル、補強パネル、インナーフード、またはトランクリッドパネルなど、自動車の車体部品を調製するために使用され得る。開示されたアルミニウム合金および方法はまた、航空機、または鉄道車両の用途において、例えば、外部および内部パネルを調製するために使用され得る。特定の態様では、開示された合金は、自動車のバッテリープレート/シェートなどの他の特殊性用途に使用され得る。
【0073】
特定の態様では、合金および方法から作り出された製品をコーティングすることができる。例えば、開示された製品は、リン酸亜鉛処理および電着(Eコーティング)されてもよい。コーティング手順の一部として、コーティングされたサンプルを約160℃~約205℃で約10分~約30分間(例えば、約170℃で25分間、約200℃で15分間、または約180℃で20分間)乾燥するために焼付けすることができる。特定の態様では、合金が降伏強度の増加を示す、塗装焼付け応答が観察される。特定の例では、塗装焼付け応答は、アルミニウム合金の製造中に使用される予備時効処理ステップによって開始される人工時効処理プロセスを完了するために使用される。
【0074】
特定の態様では、合金および方法から作り出された製品を形成することができる。例えば、開示された製品は、引き抜かれるかまたは円周方向に打ち抜かれ得る。成形手順の一部として、成形されたサンプルを焼付け、成形されたアルミニウム合金部品を約160℃~約225℃で約15分~約45分間(例えば、約180℃で35分間、215℃で25分間、または約195℃で30分間)、焼鈍処理し得る。特定の態様では、合金が降伏強度の増加を呈する人工時効処理応答が観察される。驚くべきことに、これらの合金は、人工時効処理されたアルミニウム合金で通常観察される変形性の損失を呈さない。本明細書に記載の合金および方法もまた、高度に変形可能でもある高強度合金をもたらす。
【0075】
例えば、本明細書に記載の合金および方法はまた、携帯電話およびタブレットコンピュータなどの電子機器用のハウジングを調製するためにも使用され得る。例えば、合金は、陽極酸化の有無にかかわらず、携帯電話(例えば、スマートフォン)、およびタブレットボトムシャーシの外部ケーシング用のハウジングを調製するために使用され得る。例示的な家庭用電化製品としては、携帯電話、オーディオ装置、ビデオ装置、カメラ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、テレビ、ディスプレイ、家電製品、ビデオ再生および記録装置などが挙げられる。例示的な家庭用電化製品部品は、家庭用電化製品用の外側ハウジング(例えば、ファサード)および内側部品を含む。
【0076】
特定の例では、合金は、本明細書に記載の例示的な調質度において使用することができる。特定の態様では、本明細書に記載の合金および方法は、より低強度の合金において通常観察される成形特性を含む高強度の合金をもたらす。さらに、結果として得られる例示的な調質度は、経時的に自然時効硬化しない合金をもたらすことができる。非自然時効処理が施された合金は、無期限に貯蔵することができ、高強度、高成形性および好ましい塗装焼付け応答などの望ましい機械的性質を保持することができる。
【0077】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、それを限定するものではない。それどころか、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなくそれら自体を当業者に示唆し得る様々な実施形態、変更および均等物に頼ることができることを明確に理解されたい。以下の実施例に記載されている研究の間、特に明記しない限り、従来の手順に従った。説明の目的ために、手順のいくつかを以下に説明する。
【実施例
【0078】
実施例1:溶体化後の予備時効処理が自然時効に及ぼす影響
例示的な6xxx系アルミニウム合金を本明細書に記載の方法に従って製造した。溶体化ステップの後に予備時効処理ステップを追加することで、予備時効処理された状態においてアルミニウム合金がもたらされ、その結果、例示的な調質度を得た。通常、6xxx合金は、室温で貯蔵されるときに、時間の経過と共に時効硬化する。この時効硬化は、経時的な引張強度(Rp02)の対数増加によって実証されている(図1、「PXなし」(予備時効処理なしを指す)を参照されたい)。合金を溶体化した後に合金の予備時効処理を行うことにより、人工時効処理または自然時効の前に、合金の予備時効処理を行うことができる。この例示的な予備時効処理により、合金は、室温で一定期間貯蔵されるときに同じRp02レベルに留まる。図1では、2つの異なる温度での予備時効処理の影響を、予備時効処理を行っていないサンプルと比較している。一番上の曲線は、120℃で2時間の予備時効処理に相当する(この曲線は、また、130℃からコイル冷却を受けた合金では、典型的である)。中央の曲線は100℃で2時間の予備時効処理に相当する(この曲線も110℃からコイル冷却を受けた合金では、典型的である)。下の曲線は、「PXなし」と呼ばれる、予備時効処理ステップを受けなかったサンプルに相当する(この曲線は、また、50℃未満からコイル冷却を受けた合金では、典型的である)。
【0079】
自然時効硬化に耐性のある予備時効処理された合金は、製造されたままのアルミニウム合金を貯蔵するために(例えば、最長1年を超える間)、貯蔵寿命の延長を呈することができる。機械的性質に対する例示的な調質度の影響を実証するために、上記の表4に記載の組成を有する例示的な合金を、異なる予備時効処理温度で製造した。様々な温度(50℃(PXなし)、110℃(100℃/2時間)、および130℃(120℃/2時間))は、予備時効処理炉の出口において記録された。120℃で予備時効処理を行った例示的な合金は、100℃で予備時効処理を行った合金、および予備時効処理を行っていない合金よりも高い降伏強度を示し、降伏強度は、ある期間にわたって安定したままであることを実証した。
【0080】
実施例2:溶体化後の予備時効処理が成形性に及ぼす影響
表4に記載の組成を有する例示的な合金を、実施例1に記載の異なる予備時効処理温度で製造した。図2は、例示的な調質度における例示的な合金についての経時的な伸び(Ag)の安定性を示している。伸びは非常に安定しており、強度が増加しても、伸びが減少することはない。
【0081】
実施例3:塗装焼付け応答に対する溶体化後の予備時効処理の影響
表4に記載の組成を有する例示的な合金を、実施例1に記載の異なる予備時効処理温度で製造した。図3は、コーティングされたアルミニウム合金を加熱してコーティングを硬化させる任意の下流プロセスに及ぼすアルミニウム合金の溶体化後の予備時効処理の影響を示す。アルミニウム合金にさらに人工時効処理を行い、合金の降伏強度をさらに高めるためには、コーティング硬化を行うこと、または塗装焼付けを行うことが当業者に既知である。例示的な合金サンプルには、溶体化後および2%の予ひずみ後、185℃で20分間の塗装焼付けを行った。図3は、T4調質度における例示的な合金の塗装焼付け後の降伏強度(ヒストグラムの左側の群)と比較して、例示的な調質度において、例示的な合金の塗装焼付け後の降伏強度(ヒストグラムの中央の群)が増加していることを実証するものである。「塗装焼付け」と呼ばれるヒストグラムの右側の群は、T4調質度における合金に対する、例示的な調質度における合金の塗装焼付け応答の差を示す。各群の左側のヒストグラムバーは、予備時効処理を受けていないサンプル(「PXなし」)に相当し、各群における中央のヒストグラムバーは、100℃/2時間の条件で予備時効処理を受けたサンプルに相当している。また、各群の右側のヒストグラムバーは、120℃/2時間の条件で予備時効処理を受けたサンプルに相当している。この実施例は、例示的な合金を用いた場合、非常に高い塗装焼付け応答がもたらされ得ることを示している。例示的な合金では、溶体化後に120℃で2時間、予備時効処理を行い、2%予ひずみを与え、次いで185℃で20分間の塗装焼付けを行ったときに、300MPaを超える降伏強度を実証した。
【0082】
実施例4:機械的性質に対する予備時効処理温度の影響
上記のように、3つの異なる予備時効処理条件を考慮した。コイルの冷却速度は、連続熱処理ラインから出るときに記録された。コイル冷却曲線は、図4に提示される。予備時効処理を受けていないコイルは、予備時効処理を受けたコイルよりも速く室温まで冷却される(下の曲線、PXなし)。予備時効処理を受けたコイルの冷却速度曲線は、より高い温度での予備時効処理を受けたコイルのより早い初期冷却速度を示す(上の曲線、120℃/2時間)。中央の曲線は、100℃/2時間で予備時効処理を行ったコイルの冷却速度を示す。予備時効処理を行ったコイルの冷却速度は最終的に平衡になり、同じ様な期間後に予備時効処理を行ったコイルが同じ様な温度に到達し得る。
【0083】
比較用合金であるAA6014を本明細書に記載の方法に供して、結果的に、例示的な調質度となり、自然時効により、T4調質度となった。図5は、熱処理ラインから出るときに3つの異なる場所のコイル上で記録された温度データを示す。時間の経過と共に、コイルの温度は平衡化し、その結果、コイル全体がほぼ同じ温度、約125℃となった。図6は、3つの異なる場所から採取したサンプルについて、T4調質度における、経時的な、比較用AA6014アルミニウム合金の降伏強度の安定性を示している。異なるサンプルにおける様々な降伏強度は、コイル内での均一でない時効処理を呈している。図7には、結果として例示的な調質度となる予備時効処理ステップを受けた比較用AA6014合金の降伏強度データを示す。異なる場所から採取されたサンプルのそれぞれについて、記録された降伏強度は同様であり、これは、均一なアルミニウム合金コイルであることを示唆している。加えて、例示的な調質度の影響を実証する、溶体化後の自然時効を示すエビデンスは存在しない。図8には、結果的に例示的な調質度をもたらす予備時効処理ステップを受けた比較用AA6014合金の伸び(Ag)データを表している。伸びデータは、例示的な調質度における合金の均一な成形性ならびに自然時効に対する耐性を示唆するものである。
【0084】
第2の比較用合金であるAA6111に対して予備時効処理を行い、結果として例示的な調質度とした。比較用AA6111を、溶体化後100℃で2時間、予備時効処理を行った。溶体化後、比較用AA6111合金を室温で貯蔵し、降伏強度を定期的に試験した。図9は、例示的な調質度における比較用AA6111の降伏強度の安定性を示している。約5ヶ月の期間にわたり降伏強度が30~40MPa増加したことが観察されたために、自然時効の影響は、グラフにおいて明らかである。例示的な調質度における比較用AA6111合金は、溶体化後に120℃で2時間予備時効処理を行い(またはコイルを130℃から冷却し)、室温で貯蔵した。降伏強度は、定期的に試験された。図10は、強度試験の結果を示すものであり、約6ヶ月の期間にわたって降伏強度が非常にわずかに増加していること(約2MPa)を示している。これは、例示的な調質度における比較用AA6111合金の自然時効に対する耐性を実証したものであり、例示的な調質度の望ましい性質が、組成特異的であり得ることを示している(すなわち、例示的な調質度が、全ての6xxx系アルミニウム合金において、自然時効に対して耐性を示すものではない)。
【0085】
実施例5:プロセスの最適化
最適な結果としての性質について、様々な予備時効処理温度を評価した。図11は、塗装焼付け上の予備時効処理温度範囲について、2%の予ひずみおよび185℃で20分間の温度時効処理後の使用中の降伏強度に対する影響を示している。予備時効処理温度が高いほど、結果的に、溶体化および塗装焼付け後に非常に高い降伏強度をもたらした。図12は、以下に対応させた塗装焼付け応答を示す:T4調質度における合金と比較した場合の例示的な調質度における合金の塗装焼付け応答の差(図12において「BH」と称する)、様々な予備時効処理温度および様々な自然時効(例えば、1週間、1ヶ月、3ヶ月、および6ヶ月)。本明細書に記載の例示的な合金(表4参照)では、最大焼付け硬化のための最適な予備時効処理温度は、100℃/2時間(または110℃からのコイル冷却)である。しかしながら、経時的に安定している機械的性質をもたらすためには、最適な予備時効処理温度は、2時間で約110℃~約120℃である(これは約120℃~約130℃までのコイル冷却、予備時効処理炉から連続熱処理ラインへの典型的な出口温度と同様である)。さらに最適化するために、成形性試験を含めた。図13には、T4調質度におけるひずみ硬化指数(n値)と対応させて、塗装焼付け応答を示す。n値が高いほど、T4調質度におけるより高い成形性を示している。T4調質度における6xxx系のアルミニウム合金には少なくとも0.23のn値が必要であり、例示的な調質度におけるアルミニウム合金が所望の成形性を有するためには、この値が望ましい。グラフは、最適な予備時効処理温度が約115℃~約135℃、好ましくは120℃~130℃であることを示している。
【0086】
例示的な合金(表4参照)を室温で貯蔵して、様々な温度で予備時効処理を行った例示的な合金について観察された自然時効の影響を評価した。図14は、1週間の自然時効、1ヶ月の自然時効、3ヶ月の自然時効、および6ヶ月の自然時効の結果を表している。グラフから明らかなように、予備時効処理温度が高いほど、自然時効の影響の減少をもたらし得る。図15には、1週間後(7日間)に測定された合金降伏強度と1ヶ月後(31日間)に測定された合金降伏強度との差(Rp02)を示している。図から明らかなように、予備時効処理温度が高いほど、自然時効の影響を妨げる。合金強度は、自然時効の1か月後、予備時効処理温度が120℃を超えたときには、増加しなかった。最適な予備時効処理温度は、110℃を超えるものと決定した。この温度では、合金降伏強度の変化(Rp02)が2MPa未満である。さらに、T6調質度において、予備時効処理温度が高いほど、例示的な合金の曲げ加工性を悪化させることはなかった(180℃で10時間人工時効処理により得た)。図16は、90℃~160℃の温度範囲において、予備時効処理を受けたときに合金の曲げ加工性に差がないことを示している。図17は、自然時効を受けた様々なサンプルについて経時的にプロットしたn値を示す。困難な金属構造を形成するためには、より高いn値が望ましい。非常に良好なn値は、140℃未満の温度で予備時効処理を行った合金サンプルによって実証された。さらに、110℃~130℃の範囲の温度で予備時効処理に供された場合には、例示的な合金は、少なくとも6ヶ月の期間にわたってn値の減少を呈することはなかった。安定したn値は、安定した成形特性を示す。対照的に、110℃未満の温度で予備時効処理を受けた場合、例示的な合金は6ヶ月にわたってn値の減少を呈した。不安定なn値は、成形特性の安定性が低下し得る前の最適な時間にのみ、安定した成形が行われ得ることを示し得る。
【0087】
最適な予備時効処理は、塗装焼付け応答が最大化され、強度および伸びが経時的に安定化され、かつ合金の曲げ加工性を最大化することによって決定された。
【0088】
実施例6:例示的な合金と比較用合金AA6014との比較
本明細書に記載の例示的な合金(表4参照)をAA6014アルミニウム合金と比較する。両方の合金とも、連続熱処理ラインから出るときに、130℃で溶体化を行った後に予備時効処理を行った。図18は、溶体化熱処理(SHT)後の異なる時間間隔で測定された伸び(Ag)を示す。両方の合金とも、経時的に非常に安定した伸びを示し、例示的な合金は、比較用AA6014合金よりもはるかに高い伸びを示している。上記のように、予備時効処理プロセスは組成に依存し得る。
【0089】
実施例7:比較用合金に対する予備時効処理の影響
実験室での溶体化熱処理後に3つの比較用合金を様々な温度で予備時効処理し、室温で貯蔵して、比較用合金に対する自然時効の影響を評価した。比較用合金としては、高強度AA6016アルミニウム合金(「AA6016-HS」と称される)、高成形性AA6016アルミニウム合金(「AA6016-HF」と称される)、およびAA6014アルミニウム合金が挙げられる。比較用合金の化学組成を下記の表5に列挙する:
【表5】
【0090】
図19は、比較用合金AA6016-HS(表5参照)に対する予備時効処理温度の影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、比較用合金を自然時効(図19では「T4」と称する)、180℃の温度で10時間の人工時効処理(図19では「T6」と称する)、2%の予ひずみ後、185℃の温度で20分間の塗装焼付け(図19では「T8x」と称する)に供した。グラフから明らかなように、比較用合金サンプルが少なくとも130℃の温度で予備時効処理を受けると、自然時効の影響が低下する。180℃の温度で10時間の人工時効処理(T6)、および2%の予ひずみの後に185℃の温度で20分間の塗装焼付け(T8x)を受けた比較用合金は、約280MPaの最大降伏強度を呈した。
【0091】
図20は、比較用合金AA6016-HF(表5参照)に対する予備時効処理温度の影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、比較用合金を自然時効(図20では「T4」と称する)、180℃の温度で10時間の人工時効処理(図20では「T6」と称する)、2%の予ひずみ後、185℃の温度で20分間の塗装焼付け(図20では「T8x」と称する)に供した。グラフから明らかなように、比較用合金サンプルが少なくとも130℃の温度で予備時効処理を受けると、自然時効の影響が低下する。180℃の温度で10時間の人工時効処理を受けた比較用合金(T6)は、約250MPaの最大降伏強度を呈した。2%の予ひずみの後に185℃の温度で20分間塗装焼付けを受けた比較用合金(T8x)は、約220MPaの最大降伏強度を呈した。
【0092】
図21は、比較用合金AA6014(表5参照)に対する予備時効処理温度の影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、比較用合金を自然時効(図21では「T4」と称する)、180℃の温度で10時間の人工時効処理(図21では「T6」と称する)、2%の予ひずみ後、185℃の温度で20分間の塗装焼付け(図21では「T8x」と称する)に供した。グラフから明らかなように、比較用合金サンプルが少なくとも140℃の温度で予備時効処理を受けると、自然時効の影響が低下する。180℃の温度で10時間の人工時効処理(T6)、および2%の予ひずみの後に185℃の温度で20分間の塗装焼付けを受けた比較用合金(T8x)は、約280MPaの最大降伏強度を呈した。
【0093】
図22A図22Dは、表5の比較用アルミニウム合金に対する塗装焼付けの影響を示すグラフである。図22Aは、合金AA6016-HSに対する塗装焼付けの影響を示す。図22Bは、合金AA6016-HFに対する塗装焼付けの影響を示す。図22Cは、合金AA6014に対する塗装焼付けの影響を示す。図22Dは、表3の例示的なアルミニウム合金に対する塗装焼付けの影響を示す。塗装焼付け後の強度の増加は「焼付け硬化」と呼ばれ、塗装焼付け後のアルミニウム合金(例えば、2%の予ひずみ後に185℃で20分間の塗装焼付け(T8x))の測定された降伏強度から塗装焼付けが行われていないアルミニウム合金の測定された降伏強度を差し引くことによって算出される。1週間(黒四角で示す)、1ヶ月(黒丸で示す)、および3ヶ月(黒三角で示す)の期間にわたって塗装焼付けを行った後に貯蔵したサンプルについて焼付け硬化を評価した。表3の例示的なアルミニウム合金(図22D)は、表5に列挙されている比較用のアルミニウム合金(図22A図22B、および図22C)よりも大きい焼付け硬化応答を呈した。
【0094】
図23は、表5の比較用アルミニウム合金および表3の例示用アルミニウム合金の降伏強度に対する自然時効の影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、全てのサンプルを6ヶ月間、自然時効にさらした。図23のグラフから明らかなように、例示的なアルミニウム合金(表3参照)は、一貫して最大の強度を呈していた。
【0095】
図24は、表5の比較用アルミニウム合金および表3の例示的アルミニウム合金の成形性に対する自然時効の影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、全てのサンプルを6ヶ月間、自然時効にさらした。図24のグラフから明らかなように、例示的なアルミニウム合金(表3参照)は、少なくとも110℃の温度で予備時効処理を行ったときにより大きいn値を呈し、これは例示的なアルミニウム合金が成形により適していることを示している。
【0096】
図25は、表5の比較用のアルミニウム合金および表3の例示的なアルミニウム合金の降伏強度に対する塗装焼付けの影響を示すグラフである。予備時効処理温度は、ほぼ室温から160℃の範囲で評価した。25℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、および160℃の温度で2時間、予備時効処理を実施した。予備時効処理後、2%の予ひずみの後、全てのサンプルを185℃の温度で20分間の塗装焼付けに供し(T8x)、その後6ヶ月間貯蔵した。図25のグラフから明らかなように、例示的なアルミニウム合金(表3参照)は、一貫して最大の強度を呈していた。
【0097】
表3の例示的な合金は、溶体化熱処理後の少なくとも6ヶ月間非常に安定した成形特性、6ヶ月後の非常に高いn値を呈し、かつT8x調質度(例えば2%の予ひずみを与えた後、185℃の温度で20分間塗装焼付けした後)における例示的な合金は、非常に高い塗装焼付け応答を呈した。こうした特性は、例えば自動車のBピラー、構造用トンネル、または任意の適切な複合アルミニウム合金物品を提供するための複合形成手順に適した高強度アルミニウム合金を示す。
【0098】
図26Aは、表4の例示的な合金から調製した6つのアルミニウム合金サンプルに対する自然時効の影響を示すグラフである。アルミニウム合金サンプルを130℃の温度で2時間、予備時効処理に供した。各サンプルの降伏強度は、約10~約20日間の自然時効後、約90~約100日間の自然時効後、および約180~約190日間の自然時効後に評価した。図26Aのグラフから明らかなように、自然時効の影響はわずかであった。
【0099】
図26Bは、表4の例のように例示的な合金から採取した6つのアルミニウム合金サンプルに対する自然時効の影響を示すグラフである。アルミニウム合金サンプルを130℃の温度で2時間予備時効処理し、続いて2%の予ひずみを与えた後に185℃の温度で20分間塗装焼付け(T8x)を行った。各サンプルの降伏強度は、約10~約20日間の自然時効後、約90~約100日間の自然時効後、および約180~約190日間の自然時効後に評価した。図26Bのグラフから明らかなように、いかなる自然時効の影響もわずかであり、高強度(例えば、約300MPaを超える)が、塗装焼付け後および少なくとも6ヶ月間貯蔵した後も維持される。
【0100】
実施例8:予ひずみおよび後成形熱処理の影響
例示的な熱処理100が図27に提示されている。熱処理可能な合金は、合金化元素をアルミニウムマトリックス全体に均一に分布させるために溶体化ステップに供される。溶体化ステップは、溶融することなくアルミニウムを軟化させるのに十分な溶体化温度115を超えるまで合金を加熱すること110を含み、次いで溶体化温度115を超えて合金を維持することを含むことができる。溶体化ステップは、約1分~約5分の時間、実施することができる(範囲A)。溶体化により、合金元素が合金全体に拡散し、かつ合金内に均一に分布することができるようになる。一旦溶体化すると、アルミニウム合金は急速に冷却(すなわち焼入れ)されて(120)、合金元素を所定の位置で凍結させ、合金元素が凝集し、アルミニウムマトリックスから析出するのを防ぐ。
【0101】
次に、溶体化し、焼入れした例示的な合金は、焼入れステップ後に時効処理手順に供される。いくつかの例では、時効処理ステップは、焼入れステップ後、約1分~約20分の時間(範囲B)実施される。時効処理手順には、時効処理ステップを含むことができ、これは、24時間を超えてもよい期間(範囲C)、溶体化および焼入れが行われたアルミニウム合金を加熱すること130、および冷却させること140を含む。
【0102】
場合によっては、例示的な予ひずみステップ150を実施することができ、ここでは、一軸張力が合金に加えられて、最大10%の塑性伸びをもたらす。
【0103】
範囲E(図27参照)は、自然時効させること160、コーティングすること、形成すること、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの非限定的な例では、アルミニウム合金の貯蔵中に自然時効160が起こり得る。いくつかの例では、アルミニウム合金をコーティングすることができる。いくつかのさらなる例では、アルミニウム合金をアルミニウム合金部品に成形することができる。いくつかのさらなる例では、アルミニウム合金は、コーティングまたは成形の後(範囲F/範囲G)に熱処理することができる。場合によっては、コーティング、成形、またはそれらの任意の組み合わせの後に実施される熱処理は、アルミニウム合金をさらに時効硬化させることができる。いくつかの例では、コーティング手順の一部として、コーティングされたサンプルを170~約180℃まで加熱し、180℃で約20分間維持し(175)、冷却させる(180)(範囲F)ことができる。成形手順の一部として、成形されたサンプルを185℃~約195℃まで加熱し、195℃で約30分間維持すること(175)、および冷却させること(195)ができる(範囲G)。
【0104】
実施例9:予ひずみおよび後成形熱処理の影響
本明細書に記載されるような組成を有する例示的なアルミニウム合金に対する予ひずみおよび後成形の影響が決定された。試験に使用される例示的な合金は、0.69%のSi、0.79%のCu、0.9%のMg、0.22%のFe、0.03%のMn、0.023%のTi、0.25%のCr、0.063%のZn、0.0046%のNi、および0.016%のVの組成を有し、残部はAlである。
【0105】
図28および図29は、様々な予ひずみおよびPFHTを様々な温度で30分間実施した後の変形性および降伏強度の変化を示す。PFHTを行わずに予ひずみを与えられたアルミニウム合金サンプルは、黒塗りの記号で示す。PFHTを行って、予ひずみを与えられたアルミニウム合金サンプルは、白抜き記号および接続線で示す。PFHT温度は、表6に示すように数値で示す。
【表6】
【0106】
図28は、予ひずみの増加に伴う降伏強度(「Rp」と称する)の増加を示す。図28はまた、予ひずみが大きくなるにつれて、曲げ角度(「DCアルファ2.5mm」と称する)が減少することを示す。驚くべきことに、PFHTステップを適用することで、強度の増加、予ひずみの増加、および変形性への影響の減少をもたらした。
【0107】
図29は、予ひずみの増加に伴う降伏強度(「Rp」と称する)の増加を示す。図29はまた、予ひずみの増加と共に伸び(「A80」と称する)が減少していることを示す。PFHTステップを適用することで、強度の増加、予ひずみの増加、および変形性への影響の減少をもたらした。予ひずみとPFHTとを組み合わせることで、変形性の部分的な回復を呈した。
【0108】
図30および図31は、様々な予ひずみおよび様々なPFHT手順後の降伏強度(図30)および最大引張強度(図31)の両方における増加を示す。PFHT手順は、図に示すように、195℃~215℃の範囲の温度で30分間合金を加熱することを含むものとした。0%、2%、5%、および10%の予ひずみを受けたアルミニウム合金のPFHT後、300MPaを超える降伏強度が得られた(図30参照)。0%、2%、5%、および10%の予ひずみを受けたアルミニウム合金のPFHT後、370MPaを超える最大引張強度が得られた(図31参照)。図30および図31は、全ての予ひずみを受けたアルミニウム合金について、PFHT後の降伏強度および最大引張強度の両方が有意に増加していることを示している。
【0109】
図32および図33は、様々な予ひずみおよび様々なPFHT手順後の伸び(図32)および曲げ角度(図33)の両方が減少していることを示す。0%、2%、5%、および10%の予ひずみを受けたアルミニウム合金のPFHTの後、11%を超える伸び率が得られた(図32参照)。0%、2%、5%、および10%の予ひずみを受けたアルミニウム合金のPFHT後、50°より大きい曲げ角度が得られた(図33参照)。図32および図33は、予ひずみを付与され、かつ後成形熱処理されたアルミニウム合金において、変形性の有意な低下がないことを示している。しかしながら、予ひずみを与えられているが、PFHTを受けていないアルミニウム合金は、より大きな変形性を示す。驚くべきことに、全ての予ひずみを与えられたアルミニウム合金は、PFHT後に同様の伸び(図32参照)および曲げ加工性(図33参照)を呈した。
【0110】
図34および図35は、様々な予ひずみおよびPFHTを様々な温度で30分間実施した後の変形性および降伏強度の変化を示す。PFHTを行わずに予ひずみを与えられたアルミニウム合金サンプルは、黒塗りの記号で示す。PFHTを行って、予ひずみを与えられたアルミニウム合金サンプルAA7075は、白抜き記号および接続線で示す。図34は、予ひずみの増加に伴う降伏強度(「Rp」と称する)の増加を示す。図34はまた、予ひずみが大きくなるにつれて、曲げ角度(「DCアルファ2mm」と称する)が減少することを示す。2%の予ひずみおよびPFHTステップを適用することで、変形性に対して強度の有意でない影響がもたらされ、良好な崩壊性を示唆した。5%の予ひずみおよびPFHTを適用することにより、合金が軟化し、成形性および崩壊性に悪影響を及ぼす。図35は、予ひずみの増加に伴う降伏強度(「Rp」と称する)の増加を示す。図35はまた、予ひずみの増加と共に伸び(「A80」と称する)が減少していることを示す。PFHTステップを適用することで、強度の増加、予ひずみの増加、および変形性へ悪影響をもたらした。予ひずみとPFHTとを組み合わせることで、変形性の部分的な回復を呈した。
【0111】
図36および図37は、様々な塗装焼付け手順後のT4調質度におけるAA7075アルミニウム合金の降伏強度(図36)および伸び(図37)に対する2%の予ひずみの影響を示す。図36の例から明らかなように、2%予ひずみ手順は、その後の塗装焼付け手順にかかわらず、AA7075アルミニウム合金の降伏強度を増加させた。図37から明らかなように、2%の予ひずみ手順は、塗装焼付け手順後のAA7075アルミニウム合金の成形性を低下させた。
【0112】
上に引用された全ての特許、刊行物、および要約は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を達成するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。多くの修正およびその適合は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者には容易に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37