IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.の特許一覧

特許7025430試薬送達のための方法、システム、及び固体組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】試薬送達のための方法、システム、及び固体組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220216BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20220216BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220216BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20220216BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220216BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220216BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220216BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
G01N33/545 A
G01N33/483 C
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 F
C12M1/34 Z
G01N33/48 P
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019533383
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2017067835
(87)【国際公開番号】W WO2018119199
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】62/437,545
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンズ, クリスタル エル.
(72)【発明者】
【氏名】スーリヤヴィルン, ナチャ
(72)【発明者】
【氏名】アーナンド, アニサ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05171669(US,A)
【文献】特許第3578407(JP,B2)
【文献】米国特許第05965454(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00277723(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00299359(EP,A2)
【文献】特公平07-026961(JP,B2)
【文献】特開昭56-022956(JP,A)
【文献】特表2011-526888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0256549(US,A1)
【文献】国際公開第2016/170008(WO,A1)
【文献】特表2007-500363(JP,A)
【文献】特表2015-507189(JP,A)
【文献】特表2018-517895(JP,A)
【文献】特表2015-509583(JP,A)
【文献】特開昭64-038656(JP,A)
【文献】特開昭63-082363(JP,A)
【文献】特開昭62-175196(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053393(WO,A1)
【文献】特表2002-533695(JP,A)
【文献】特開昭64-055197(JP,A)
【文献】特開2013-040974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/545
G01N 33/483
C12Q 1/6841
C12Q 1/6869
C12M 1/00
C12M 1/34
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.水溶性ポリマー;及び
b.水溶性ポリマーに包埋された試薬であって、試薬は、抗体である、水溶性ポリマーに包埋された試薬
を含む、自動染色システムのための溶解可能な固体組成物であって、
水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)を含む、溶解可能な固体組成物。
【請求項2】
1より多くの試薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水溶性ポリマーがフィルムである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
試薬が水溶性ポリマー内に包埋又は注入される、
試薬が水溶性ポリマー上にプリントされる、
試薬が水溶性ポリマーにより封入される、
試薬が水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される、請求項1から3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
バッファー由来の塩をさらに含み、
緩衝剤をさらに含んでもよい、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
a.試料を支持するベース;
b.ベース上の試料上へ液体を分注するための液体ディスペンサー;及び
c.ベース上の試料上へ沈着させる請求項1から5の何れか一項に記載の固体組成物であって、組成物が試料上で溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、固体組成物
を含む、自動染色システム。
【請求項7】
固体組成物を保持するための保持容器をさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも20の試料、又は少なくとも50の試料を保持し、処理する、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
染色剤を試料に導入するためのものである、請求項6から8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
試料上で組織化学アッセイを実施するためのものである、及び/又は
試料上でインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのものである、及び/又は
自動DNA増幅又はシーケンシングのためのものである、
請求項6から9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
システム内の試料上に試薬を沈着させる方法であって、
システムが、試料を支持するためのベース及びベース上の試料上へ液体を分注するための液体ディスペンサーを有し、
前記方法が、
a.システムのベース上へ試料を置くこと;及び
b.ベース上の試料上へ請求項1から5の何れか一項に記載の固体組成物を沈着させることであって、組成物が試料上で溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、沈着させること
を含む、方法。
【請求項12】
固体組成物を手動で試料上に沈着させる、又は
固体組成物を自動式で試料上に沈着させる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させる前に、システムの液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、又は、
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させた後に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
試料が組織切片を含む、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
試料がスライド上に載せられる、請求項11から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から5の何れか一項に記載の組成物を試料に適用することを含む、試料を試薬と接触させる方法であって、前記組成物が、試料と接触する際に溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、方法。
【請求項17】
試料が自動スライド染色機械に置かれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
試料が請求項6から10の何れか一項に記載の自動染色システムに置かれる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗体及び試薬の送達、より具体的には、固体溶解性単一用量抗体組成物などの固体組成物を用いる、抗体送達のための方法、システム、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動細胞染色器についての現在の試薬ディスペンサーシステムは、一般的に、少なくとも50回の試験に対応するように製造され、試薬は、一般的に、限られた有効期間(例えば、9-24ヶ月間)を有する。多くの試薬は、4℃で保存されなければならない。ディスペンサーは、標的スライドへ精密な滴量(例えば、100μL)の(抗体、プローブ、及び/又は他の試薬を含む)溶液を送達するように設計される;しかしながら、分配ミス及び残留形成が、不正確な体積の液体が送達されること、及びその後のスライド染色の失敗をもたらす可能性があり得る。
【発明の概要】
【0003】
驚くべきことに、抗体などの試薬が水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))へ取り込まれることができ、その結果、その試薬が分解又は破壊されないことが発見された。例えば、下記のように、抗体は、抗体の機能性に損傷を引き起こすことなく、PVAと共に安全に加熱されて、固体溶解性試薬組成物を生じた。
【0004】
本発明は、試薬(例えば、抗体、プローブ、バッファー、色素原、対比染色剤、酵素、核酸など)を試料に送達するための固体溶解性試薬組成物を含む組成物を特徴とする。その組成物は、水溶性ポリマー(例えば、フィルム、パウチ、ウェハーなど)及び試薬を含む。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマー内に注入され、プリントされ、包埋され、又は封入される。その組成物が試料に適用された時、水溶性ポリマーは、試料に接触して、溶解し、試薬が試料に接触することを可能にする。水溶性ポリマーの非限定的例はポリビニルアルコール(PVA)である。
【0005】
いくつかの実施態様において、試薬(例えば、抗体、プローブ、染色剤、酵素など)は、水溶性ポリマーフィルムの少なくとも2つの層の間に注入される。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーフィルムの表面上にインクジェットプリントされる。いくつかの実施態様において、試薬は水溶性ポリマーフィルム中へ包埋される。
【0006】
本発明はまた、前記組成物を作製する方法、及び前記組成物を用いる方法(組成物の適用)、例えば、組織化学的方法、抗体を試料に導入する方法などを特徴とする。本発明はまた、前記組成物の使用を特徴とするシステム(例えば、自動システム、手動システム)を特徴とする。例えば、本発明は、スライドに付着した組織試料へ抗体、染色剤、又は他の試薬を送達するための方法、システム、及び組成物を特徴とする。本発明の固体溶解性試薬は、自動染色機械に用いられ得る。本発明は、自動方法及びシステムに限定されない。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、手動式で試料に適用される。
【0007】
試料は、適用に適切な任意の型であり得る。例えば、いくつかの実施態様において、組織試料が、スライド上の組織学的検査の適切な試料である。一実施態様において、組織試料は、スライド上に固定化され、さらに、自動スライド染色器、例えば、自動IHC/ISHスライド染色器で処理され得る。いくつかの実施態様において、組織試料は、生検又は外科的切除から採取され得る。組織試料はさらに、例えば、癌性又は健康な組織の切片を含み得る。加えて、組織試料は、液体細胞診試料から採取され得る。試料は組織試料に限定されないことに留意されたい。
【0008】
本発明は、特定の工程、成分、組成物などに限定されない。例えば、他の水溶性基質が用いられ得る。様々な異なる温度、湿度、又は他の条件が考慮され得る。他の試薬が用いられ得るなど。
【0009】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定するつもりはないが、固体溶解性組成物(並びに本明細書における方法及びシステム)が有利であると考えられる。例えば、その組成物は、室温で保存されてもよく(さらに、長期間、器具上に放置されたままであってもよく)、しかも、その組成物は、液状の試薬より安定であり得る。他の利点には、試料への適用の前に、試薬を再水和する必要性の排除(水和工程の回避)が含まれ得る。ある特定の実験を実施するために必要とされる工程の数を低減することができる。自動システムの場合、要求されるディスペンサーの数が低減される。さらに、少数の実験(例えば、1枚のスライド、5枚のスライド)又は多数の実験(例えば、50枚のスライド)を実施することができる。
【0010】
本発明はまた、水溶性ポリマー(例えば、PVA)及び水/エタノールの代替として、水溶性ポリマー(例えば、PVA)及び反応バッファー(又は他のバッファー)から作製された組成物を特徴とすることに留意されたい。
【0011】
本発明は、試料(例えば、組織切片、組織試料)を支持するためのベース;ベース上の試料上へ液体を分注するための液体ディスペンサー;及びベース上の試料上へ沈着させるための固体組成物を含む、自動染色システムを提供する。固体組成物は試料上で溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる。いくつかの実施態様において、固体組成物が試料に接触した時、その組成物は溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる。固体組成物を手動で沈着させてもよい。いくつかの実施態様において、固体組成物を、自動式で沈着させる。例えば、いくつかの実施態様において、システムは、固体組成物を試料上へ沈着させるための固体試薬ディスペンサーを含む。いくつかの実施態様において、システムは、固体組成物を貯蔵又は保持するための保持容器を含む。いくつかの実施態様において、固体試薬ディスペンサーは、保持容器から固体試薬を引き出し、それをベース上の試料へ移動させる。
【0012】
ある特定の実施態様において、固体組成物は、水溶性ポリマー、及びそれに包埋された試薬を含み、その試薬は、抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せからなる群から選択される;固体組成物を、手動で試料上に沈着させる。
【0013】
いくつかの実施態様において、固体組成物をベース上の試料上へ沈着させる前に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する。いくつかの実施態様において、固体組成物をベース上の試料上へ沈着させた後に、液体ディスペンサーが試料上へ液体を分注する。
【0014】
システムは、複数のスライドを保持し、処理する能力があり得る。例えば、いくつかの実施態様において、システムは、少なくとも20の試料を保持し、処理する。いくつかの実施態様において、システムは、少なくとも50の試料を保持し、処理する。自動染色システムは、染色剤を試料に導入するためのものであり得る。いくつかの実施態様において、システムは、試料上で組織化学アッセイを実施するためのものであり得る。いくつかの実施態様において、システムは、試料上でインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのものであり得る。いくつかの実施態様において、システムは、自動DNA増幅又はシーケンシングのためのものであり得る。
【0015】
ある特定の実施態様において、システムは、固体組成物、又は固体組成物と液体組成物の両方を試料に送達することができる。
【0016】
ある特定の実施態様において、システムはさらに、画像取得システム、画像分析システム、又は画像取得システムと画像分析システムの両方を含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、2つ以上の試薬を含む。いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーはフィルムである。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマー内に包埋又は注入される。いくつかの実施態様において、試薬は水溶性ポリマー上にプリントされる。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーにより封入される。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、バッファー由来の塩を含む。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、緩衝剤を含む。いくつかの実施態様において、試料は、組織試料、例えば、組織切片を含む。いくつかの実施態様において、試料はスライド上に載せられる。
【0018】
本発明はまた、試薬を試料上に沈着させる方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、試料を支持するためのベース及びベース上の試料上に液体を分注するための液体ディスペンサーを含むシステムにおいて、システムのベース上に試料を置くこと;及びベース上の試料上に固体組成物を沈着させることであって、固体組成物が試料に接触した時、組成物が溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、沈着させることを含む。いくつかの実施態様において、固体組成物は、試薬が包埋された水溶性ポリマーを含み、その試薬は、抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施態様において、固体組成物を、手動で試料上に沈着させる。いくつかの実施態様において、固体組成物を、自動式で試料上に沈着させる。いくつかの実施態様において、システムはさらに、固体組成物を保持するための保持容器を含む。いくつかの実施態様において、システムは、固体組成物を試料上に沈着させるための固体試薬ディスペンサーを含む。いくつかの実施態様において、固体試薬ディスペンサーは、保持容器から固体試薬を引き出し、それをベース上の試料へ移動させる。
【0020】
いくつかの実施態様において、固体組成物をベース上の試料上へ沈着させる前に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する。いくつかの実施態様において、固体組成物をベース上の試料上へ沈着させた後に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する。
【0021】
ある特定の実施態様において、システムは、複数の試料を保持し、処理する能力がある。例えば、いくつかの実施態様において、システムは、少なくとも20の試料を保持し、処理することができる。いくつかの実施態様において、システムは、少なくとも50の試料を保持し、処理することができる。
【0022】
ある特定の実施態様において、システムは、染色剤を試料に導入するためのものである。いくつかの実施態様において、システムは、試料上で組織化学アッセイを実施するためのものである。いくつかの実施態様において、システムは、試料上でインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのものである。いくつかの実施態様において、システムは、自動DNA増幅又はシーケンシングのためのものである。
【0023】
いくつかの実施態様において、システムは、固体組成物、又は固体組成物と液体組成物の両方を試料に送達することができる。いくつかの実施態様において、システムはさらに、画像取得システム、画像分析システム、又は画像取得システムと画像分析システムの両方を含む。
【0024】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、2つ以上の試薬を含む。いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーはフィルムである。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマー内に包埋又は注入される。いくつかの実施態様において、試薬は水溶性ポリマー上にプリントされる。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーにより封入される。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、バッファー由来の塩を含む。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、緩衝剤を含む。いくつかの実施態様において、試料は、組織試料、例えば、組織切片を含む。いくつかの実施態様において、試料はスライド上に載せられる。
【0025】
本発明は、試薬を試料に送達するための自動装置を提供する。ある特定の実施態様において、システムは、少なくとも試料(例えば、スライド上の試料、スライド上に載せられた組織試料)を保持するための自動機械;固体組成物を試料上に置くための自動機械における分配機構を含み、組成物が試料に接触した時、組成物が溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる。固体組成物は、水溶性ポリマー、及び抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せから選択される試薬を含む。
【0026】
装置は、固体組成物を保持する保持容器(例えば、自動機械において、自動機械に接続されている)を含み得る。固体組成物は、試料上に分配されるまで、自動機械において貯蔵され得る。いくつかの実施態様において、固体組成物は、保持容器内で貯蔵される。
【0027】
ある特定の実施態様において、自動機械は、染色剤を試料に導入するための、組織化学的アッセイを実施するための、インサイチュハイブリダイゼーションを実施するためなどの、本明細書に記載されたものなどの自動システムである。例えば、自動染色機械(例えば、IHC/ISHスライド染色器)の具体的な例には以下が含まれる:itelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNIS及びDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK GX(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA H&E 600(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK Special Stains(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA DISCOVERY XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA DISCOVERY ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、並びにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)。自動染色機械(自動スライド染色器)はまた、全体として出典明示により本明細書に援用された、Prichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、138巻、p1578-1582(2014)により記載されている。加えて、Ventana Medical Systems,Inc.は、自動分析を実施するためのシステム及び方法を開示するいくつかの米国特許の譲受人であり、その米国特許には、米国特許第5650327号、第5654200号、第6296809号、第6352861号、第6827901号、及び第6943029号、並びに米国公開特許出願第20030211630号及び第20040052685号が含まれ、それらのそれぞれは、全体として出典明示により本明細書に援用されている。本発明の方法は、任意の適切な自動染色機械(又は自動スライド処理機械)において実施されるように適応し得る。
【0028】
ある特定の実施態様において、自動装置(例えば、自動機械)は、自動DNA又はRNA増幅用である。ある特定の実施態様において、自動装置(例えば、自動機械)は、DNAシーケンシング用である。
【0029】
自動機械は、少なくとも20の試料を保持し、処理する能力があり得る。自動機械は、少なくとも50の試料を保持し、処理する能力があり得る。
【0030】
装置(例えば、自動機械)は、固体組成物を試料に送達するための1つ又は複数の分配機構、例えば、2つ以上の分配機構、3つ以上の分配機構などで構成され得る。分配機構(1つ又は複数)は、1より多くの固体組成物(例えば、2以上の異なる固体組成物)を試料に送達することができ得る。装置(例えば、自動機械)は、固体組成物を試料に送達するように構成され得る。装置は、固体組成物と液体組成物の両方を試料に送達するように構成され得る。
【0031】
いくつかの実施態様において、装置は、画像取得システム、画像分析システム、又は画像取得システムと画像分析システムの両方をさらに含む。デジタル化組織データを作成することができる明視野撮像装置の一つの例は、Ventana Medical Systems,Inc.により販売されているiScan HT及びDP200(Griffin)明視野スキャナ、又は一若しくは複数の対物レンズ及びデジタル撮像装置、加えて、1セットのスペクトルフィルターを有する任意の顕微鏡である。いくつかの実施態様において、画像化装置は、発明の名称が「IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUES」である国際特許出願第PCT/US2010/002772号(特許出願公開第WO/2011/049608号)に開示された、又は2011年9月9日に出願され、発明の名称が「IMAGING SYSTEMS, CASSETTES, AND METHODS OF USING THE SAME」である米国特許出願第61/533114号に開示されているようなデジタル病理学デバイスである。国際特許出願第PCT/US2010/002772号及び米国特許出願第61/533114号は、全体として出典明示により本明細書に援用されている。市販のスライドスキャナの他の例には以下が含まれる:3DHistech PANNORAMIC SCAN II;DigiPath PATHSCOPE;Hamamatsu NANOZOOMER RS,HT及びXR;Huron TISSUESCOPE 4000、4000XT、及びHS;Leica SCANSCOPE AT、AT2、CS、FL、及びSCN400;Mikroscan D2;Olympus VS120-SL;Omnyx VL4及びVL120;PerkinElmer LAMINA;Philips ULTRA-FAST SCANNER;Sakura Finetek VISIONTEK;Unic PRECICE 500及びPRECICE 600x;VENTANA ISCAN COREO及びISCAN HT;並びにZeiss AXIO SCAN.Z1。本発明は、前述の画像システムに限定されない。
【0032】
本発明は、水溶性ポリマー、及び抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せから選択される試薬を含む固体組成物を提供する。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施態様において、組成物は、2つ以上の試薬を含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーはフィルムである。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマー内に包埋又は注入される。いくつかの実施態様において、試薬は水溶性ポリマー上にプリントされる。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーにより封入される。いくつかの実施態様において、試薬は、水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、バッファー由来の塩を含む。いくつかの実施態様において、固体組成物はさらに、緩衝剤を含む。
【0034】
本発明はまた、本発明による固体組成物を試料に適用することを含む、試料を試薬と接触させるための方法であって、組成物が、試料との接触により溶解し、それにより試薬を試料に沈着させる、方法を提供する。試料は、組織試料、例えば、スライド上に載せられた組織試料であり得る。方法は、(例えば、上記のような)自動染色機械内に試料を置くことを特徴とし得る。方法は、(例えば、上記のような)自動装置内に試料を置くことを特徴とし得る。
【0035】
本発明はまた、試料を処理及び調製すること、並びに(上記のような)固体試薬を用いて、自動染色機械上でのIHC又はISHなどの自動方法に試料を供するためのワークフロー方法を提供する。例えば、方法は、患者の腫瘍から組織切片を調製すること、例えば、ミクロトームを用いて、患者の腫瘍のFFPE組織試料を薄片にして、組織切片をスライド上に載せること;標的バイオマーカーについて組織切片を組織化学的に染色することを含み得、組織切片を染色するために用いられる1つ又は複数の試薬が固体試薬である。組織切片は、自動染色機械内に置かれ得、その自動染色機械は、標的バイオマーカーを染色することを目的として、1つ又は複数の固体試薬を組織切片上に自動的に分配する。方法は、自動染色機械において、1つ又は複数の固体試薬を用いて第2の標的バイオマーカーについて組織切片を染色することを含み得る。
【0036】
本発明はまた、固体試薬を保持するための少なくとも1つの保持容器、及び1単位の固体試薬を保持容器から取得して、固体試薬をスライド上に置くための装置(例えば、機械的手段、分配アーム)を含む自動染色システムを提供する。
【0037】
本発明はまた、組織試料において標的バイオマーカーを標識するための組織化学的方法であって、本発明の固体組成物と試料を接触させて、それにより、試料に試薬を導入することを含む、組織化学的方法を特徴とする。
【0038】
本発明はまた、組織試料において標的核酸を標識するためのインサイチュハイブリダイゼーション方法であって、本発明の固体組成物と試料を接触させて、それにより、試料に試薬を導入することを含む、インサイチュハイブリダイゼーション方法を特徴とする。
【0039】
本発明はまた、組織試料を染色するための染色方法であって、本発明の固体組成物と試料を接触させて、それにより、試料に試薬を導入することを含む、染色方法を特徴とする。
【0040】
本発明はまた、DNAを増幅するための核酸(例えば、DNA、RNA)増幅方法であって、核酸を増幅することを目的として、本発明の固体組成物と試料を接触させて、それにより、試料に試薬を導入することを含む、核酸増幅方法を特徴とする。
【0041】
本発明はまた、核酸をシーケンシングすることを目的として、本発明の固体組成物と試料を接触させて、それにより、試料に試薬を導入することを含む、核酸(例えば、DNA、RNA)シーケンシング方法を特徴とする。
【0042】
本発明はまた、1つ又は複数の固体組成物を含むキットを特徴とする。例えば、キットは、以下の1つ又は複数を含み得る:脱パラフィン試薬を含む固体組成物、抗原回復溶液を含む固体組成物、一次抗体を含む固体組成物、二次抗体を含む固体組成物、三次抗体を含む固体組成物、第1の検出試薬を含む固体組成物、第2の検出試薬を含む固体組成物、ヘマトキシリンを含む固体組成物、及び青色発色試薬を含む固体組成物。
【0043】
ある特定の実施態様において、キットは、組織化学法(例えば、免疫組織化学法)のための試薬を含み得る。例えば、いくつかの実施態様において、キットは、以下の1つ又は複数を含み得る:脱パラフィン試薬を含む固体組成物、抗原回復溶液を含む固体組成物、標的に対する特異的結合剤(例えば、抗体)を含む固体組成物、検出試薬を含む固体組成物、対比染色剤を含む固体組成物、形態学的染色剤を含む固体組成物など。
【0044】
キットは、染色のための試薬、例えば、以下の1つ又は組合せを含み得る:対比染色剤を含む固体組成物、形態学的染色剤を含む固体組成物、色素生産性染色剤を含む固体組成物など。
【0045】
対比染色剤の例には、色素生産性核対比染色剤、例えば、ヘマトキシリン(青から紫色に染色する)、メチレンブルー(青色に染色する)、トルイジンブルー(核を濃青色に、多糖をピンクから赤色に染色する)、ヌクレアファストレッド(nuclear fast red)(ケルネヒトロート色素とも呼ばれる、赤色に染色する)、及びメチルグリーン(緑色に染色する);非核色素生産性染色剤、例えば、エオシン(ピンク色に染色する);蛍光核染色剤、例えば、4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI、青色に染色する)、ヨウ化プロピジウム(赤色に染色する)、Hoechst染色剤(青色に染色する)、nuclear green DCS1(緑色に染色する)、ヌクレアイエロー(nuclear yellow)(Hoechst S769121、中性pH下で黄色に染色し、酸性pH下で青色に染色する)、DRAQ5(赤色に染色する)、DRAQ7(赤色に染色する);蛍光非核染色剤、例えば、フルオロフォア標識ファロイジン(線維状アクチンを染色する、色はコンジュゲートされたフルオロフォアに依存する)が含まれる。
【0046】
多くの形態学的染色剤が知られており、それには、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色剤及びLee色素(メチレンブルー及び塩基性フクシン)が含まれるが、それらに限定されない。
【0047】
ある特定の実施態様において、キットは、インサイチュハイブリダイゼーション用の試薬を含み得る。例えば、いくつかの実施態様において、キットは、以下の1つ又は複数を含み得る:脱パラフィン試薬を含む固体組成物、抗原回復溶液を含む固体組成物、核酸プローブを含む固体組成物、検出試薬を含む固体組成物など。
【0048】
ある特定の実施態様において、キットは、1つ又は複数の検出試薬を含む。市販の検出試薬、又は検出試薬を含むキットの非限定的例には以下が含まれる:VENTANA ultraView検出システム(HRP及びAPを含む酵素にコンジュゲートした二次抗体);VENTANA iVIEW検出システム(ビオチン化抗種の二次抗体及びストレプトアビジンコンジュゲート型酵素);OptiView検出システム(OptiView)(ハプテンにコンジュゲートした抗種の二次抗体及び酵素多量体にコンジュゲートした抗ハプテン三次抗体);VENTANA増幅キット(非コンジュゲート型二次抗体。一次抗体結合の部位に沈着した酵素の数を増幅するために前述のVENTANA検出システムの何れかと用いることができる);OptiView増幅システム(ハプテンにコンジュゲートした抗種の二次抗体、酵素多量体にコンジュゲートした抗ハプテン三次抗体、及び同じハプテンにコンジュゲートしたチラミド;VENTANA DISCOVERY(例えば、DISCOVERY Yellow Kit、Discovery Purple Kit、Discovery Silver kit、DISCOVERY Red Kit、DISCOVERY Rhodamine Kitなど)、VENTANA DISCOVERY OmniMap、VENTANA DISCOVERY UltraMap抗ハプテン抗体、二次抗体、色素原、フルオロフォア、及び色素キット、それぞれは、Ventana Medical Systems,Inc.(Tucson、Arizona)から入手可能である;PowerVision and PowerVision+ IHC Detection Systems(抗体に対する酵素の高い比率を有するコンパクトポリマーへ、HRP又はAPと共に直接的に重合した二次抗体);並びにDAKO EnVision(商標)+System(二次抗体にコンジュゲートしている酵素標識ポリマー)。
【0049】
いくつかの実施態様において、自動装置(例えば、自動染色機械)は、複数の固体組成物、例えば、特定のアッセイに関わる各試薬についての固体組成物、例えば、特定の染色方法、組織化学方法、インサイチュハイブリダイゼーション方法、DNA増幅方法、DNAシーケンシング方法などに関わる各試薬についての固体組成物を保持することができる。
【0050】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定するつもりはないが、別々の単一用量送達組成物(及び方法)は、より精密で信頼できる潜在能力、試薬(例えば、抗体)の安定性及び/又は有効期間を向上させる潜在能力、自動システムの単純化(例えば、正確に測定し、少量の液体を送達するために機器又はディスペンサーが必要とされないだろう)などの利点を有すると考えられる。加えて、そのような組成物及び方法は、有効期限前の大量の希少な又は高価な試薬/アッセイを利用する実行量をもたないユーザーなどのローハイスループットユーザーにアピールし得る。ユーザーは、単一スライド改良型染色キット、及び希少で高価な試薬/アッセイについての単一スライド投与量が入手可能ならば、彼らのアッセイの範囲を増加させる可能性があり得る。固体送達方法はまた、試薬廃棄物を低減し得る。例えば、自動システムの場合、各実行の前にディスペンサーの準備をする必要がないだろう。1回限りの組成物はまた、使いやすさを増加させ(例えば、その試薬は室温で保持することができる、全ての必須試薬は1つのディスペンサー内に含まれ得る、アッセイに必要される必須試薬の全部がその機器上へ装填されていることを確認する必要がないなど)、費用を低下させ得る。
【0051】
文脈、この明細書、及び当業者の知識から明らかであるように、本明細書に記載された任意の特徴、又は特徴の組合せは、任意のそのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾することはないという条件で、本発明の範囲内に含まれる。本発明の追加の利点及び局面は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【0052】
本出願ファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの画像を含有する。カラー画像を含むこの特許又は特許出願のコピーは、請求及び必要な料金の支払いによって、特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】37℃で1時間のオーブンにおけるフィルムへの脱水のための、トレイにおける試薬PVA溶液の500μL液滴での配分を示す図である。
図1B】スライド上のバッファーに適用された時の試薬ウェハーの溶解を示す図である。
図2A】フィルムへの脱水のための、500μL液滴でトレイ内に配分された抗体-PVA溶液を示す写真である。
図2B】自動スライド染色器へ挿入された、図2Aの抗体-PVA薄いフィルムを含有するスライドの写真である。
図3A】グリセリン中に希釈された抗体で満たされたPVAパケット原型を示す写真である。
図3B】自動スライド染色器に置かれた、図3Aのパケット原型を示す写真である。
図4A】インクジェットプリンターのプリントステージに載せられたPVAフィルム原型上のインクジェットプリントされた抗体を示す写真である。
図4B図4Aの原型をプリントするために用いられるインクジェットプリンターを示す写真である。
図5A】リンカー(二次抗体)検出工程中適用された2%PVA抗体包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図5B】コントロールとしてリンカー(二次抗体)検出工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図5C】多量体(三次抗体)検出工程中適用された2%PVA抗体包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図5D】コントロールとして多量体(三次抗体)検出工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図6A】DAB検出工程中適用された2%PVA DAB包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図6B】コントロールとしてDAB検出工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図6C】銅試薬検出工程中適用された2%PVA銅試薬包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図6D】コントロールとして銅試薬検出工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図7A】青色発色試薬対比染色工程中適用された2%PVA青色発色試薬包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図7B】コントロールとして青色発色試薬対比染色工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図7C】ヘマトキシリン対比染色工程中適用された2%PVAヘマトキシリンII試薬包埋化フィルムからのPTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図7D】コントロールとしてヘマトキシリン対比染色工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(4×拡大挿入図を含む)である。
図8A】(反応バッファー中2%PVAから作製された、)一次抗体ウェハー、リンカーウェハー、多量体ウェハー、DABウェハー、銅ウェハー、青色発色試薬ウェハー、及びヘマトキシリンウェハーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(20×拡大挿入図を含む)である。
図8B】コントロールとして各抗体及び試薬工程についてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な膵臓組織を示す1×顕微鏡写真(20×拡大挿入図を含む)である。
図9A】PTEN(SP218)一次抗体工程中1%PVA抗体包埋化フィルムを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織を示す顕微鏡写真である。
図9B】コントロールとしてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織を示す顕微鏡写真である。
図9C図9Aの画像の40×倍率を示す顕微鏡写真である。
図9D図9Bの画像の40×倍率を示す写真である。
図10A】グリセリン及び抗体で満たされたPVAパケットを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織を示す顕微鏡写真である。
図10B】コントロールとしてディスペンサーを用いた、PTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織を示す顕微鏡写真である。
図10C図10Aの画像の40×倍率を示す顕微鏡写真である。
図10D図10Bの画像の40×倍率を示す顕微鏡写真である。
図11A】PVAフィルム上にプリントされたCD34(QBEnd/10)一次抗体で染色された正常な胎盤組織を示す顕微鏡写真である。
図11B】コントロールとしてディスペンサーで送達されたCD34(QBEnd/10)一次抗体で染色された正常な胎盤組織を示す顕微鏡写真である。
図11C図11Aのスライドの40×倍率を示す顕微鏡写真である。
図11D図11Bのスライドの40×倍率を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、その抗体構造には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が含まれるが、それらに限定されない。
【0055】
「抗体断片」は、無傷抗体が結合する抗原を結合する、無傷抗体の一部分を含む、無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープを結合し、ただし、例えば、天然に存在する変異を含有し、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、潜在的バリアント抗体を除き、そのようなバリアントは、一般的に微量で存在する。用語「ポリクローナル抗体」は、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して方向づけられた異なる抗体を含む抗体調製物を指す。ポリクローナル抗体とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対して方向づけられている。したがって、その修飾成句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特性を示し、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とするとは解釈されるべきではない。
【0057】
本明細書で用いられる場合、用語「バイオマーカー」は、生物学的試料、又はその生物学的試料が得られる対象を特徴づけるために用いることができる、生物学的試料に見出される任意の分子又は分子群を指すものとする。例えば、バイオマーカーは、その存在、非存在、又は相対量が、特定の疾患状態の特性を示し;疾患の重症度又は疾患進行若しくは退縮の見込みを示し;並びに/又は特定の疾患状態が特定の処置に応答するだろうことを予測する、分子又は分子群であり得る。別の例として、バイオマーカーは、感染病原体(例えば、細菌、真菌、ウイルス、又は他の微生物)又はその置換基分子若しくは分子群であり得る。
【0058】
本明細書で用いられる場合、用語「試料」及び「生物学的試料」は、バイオマーカーを含有し、若しくは含有すると推定される任意の組成物、又は特定のバイオマーカーの存在若しくは非存在について試験されることになっている組成物を指すものとする。試料には、細胞、組織、又は血液の精製又は分離された成分、例えば、DNA、RNA、タンパク質、無細胞部分、又は細胞可溶化物が含まれ得る。試料は、例えば腫瘍又は転移性病変、例えば、原発性腫瘍又は転移性腫瘍からの、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料であり得る。試料はまた、前に凍結された若しくは新鮮な組織由来、又は液体試料、例えば、血液若しくは血液成分(血漿又は血清)、尿、精液、唾液、痰、粘液、精液、涙、リンパ液、脳脊髄液、スワブから洗浄された材料などの由来であり得る。試料にはまた、細胞株を含む、個体から得られる細胞のインビトロ培養物の構成物及び成分が含まれ得る。試料はまた、個体から直接的に得られた試料から部分的に処理され得、例えば、細胞可溶化物、又は赤血球を除去された血液である。
【0059】
本明細書で用いられる場合、用語「細胞試料」は、細胞培養物、体液試料、又は病理学的、組織学的、若しくは細胞学的解釈のために採取された外科的検体などの、無傷細胞を含有する任意の試料を指す。
【0060】
本明細書で用いられる場合、用語「組織試料」は、その試料が得られた対象内に存在する通りに細胞間の断面空間的関係を保存する細胞試料を指すものとする。「組織試料」は、一次組織試料(すなわち、対象により産生された細胞及び組織)と異種移植片(すなわち、対象へ移植された外来細胞試料)の両方を包含するものとする。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「組織化学的検出」は、組織試料の構造間の断面関係の関連においてバイオマーカー又は他の構造の顕微鏡的検出を可能にする形で、組織試料におけるバイオマーカー又は他の構造を検出試薬で標識することを含むプロセスを指す。例には、アフィニティ組織化学法(AHC)、免疫組織化学法(IHC)、色素生産性インサイチュハイブリダイゼーション法(CISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH)、銀インサイチュハイブリダイゼーション法(SISH)、及びホルマリン固定パラフィン包埋組織切片のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色法が含まれる。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「免疫組織化学法」(IHC)は、抗体などの特異的結合剤との抗原の相互作用を検出することにより、試料中の抗原の存在又は分布を決定する方法を指す。試料は、抗体-抗原結合を可能にする条件下で抗体と接触させられる。抗体-抗原結合は、その抗体にコンジュゲートした検出可能な標識を用いて(直接的検出)、又は一次抗体と特異的に結合する二次抗体にコンジュゲートした検出可能な標識を用いて(間接的検出)、検出することができる。
【0063】
蛍光(免疫蛍光と呼ばれる場合も多い)検出は、直接的か又は間接的かの何れかであり得るIHC技術に広く用いられる:直接的とは、一次抗体が、蛍光プローブで標識されていることを示し、蛍光二次抗体を用いる必要がないことを含意し、一方、間接的とは、一次抗体が標識されておらず、蛍光色素にコンジュゲートした二次抗体が検出のために用いられなければならないことを意味する。直接的検出は、最速で最短のIHCプロトコールであり、最適なフルオロフォアにコンジュゲートした一次抗体のみとの組織切片のインキュベーションを必要とする。間接的検出は、直接的より感度が高い。間接的検出のより高い感度は、組織標識と結合した一次抗体の単一分子と相互作用する、フルオロフォアで標識された2種の二次抗体が可能であることの結果である。間接的検出は、異なる色、ストークスシフト、量子収量、及びフェード抵抗性のフルオロフォアを有する二次抗体を選択できることを可能にする。蛍光検出は、複数のオーバーラップ及び非オーバーラップの組織標的の同時検出を可能にする。多色検出は、直接的か若しくは間接的かの何れかの検出、又は両方の技術の組合せを用いて行うことができる。
【0064】
対比染色は、組織切片の全体の「ランドスケープ」を見ることを可能にし、組織標的の検出のために用いられる主要色に対する参照としての役割を果たす色素での組織切片の染色である。そのような色素は、細胞核、細胞膜、又は細胞全体を染色することができる。色素の例には、DAPI(核DNAと結合して、強い青色光を放射する);Hoechstブルー染色剤(核DNAと結合して、強い青色光を放射する);及びヨウ化プロピジウム(核DNAと結合して、強い赤色光を放射する)が含まれる。細胞内細胞骨格ネットワークの対比染色は、蛍光色素にコンジュゲートしたファロイジンを用いて行うことができる。ファロイジンは、細胞の原形質におけるアクチン線維と堅く結合する毒素であり、そのアクチン線維は、その後、顕微鏡下で、明確に目で見ることができる。
【0065】
色素生産性IHCプロトコールの大部分は、アビジン及びビオチン分子の使用に基づいており、多くの場合、単純な抗原-抗体反応の検出感度が極めて低いからである。アビジン-ビオチン結合は、抗原に結合した抗体を検出試薬と架橋する働きをし、染色シグナルの増幅を可能にする。最も頻繁用いられるビオチンに基づいた技術には、標識SA-ビオチン(LSAB)及びアビジン-ビオチン複合体(ABC)検出が含まれる。酵素標識か、又は酵素標識の複数コピーを含有する長いポリマーかの何れかに直接的にコンジュゲートした一次抗体を利用する、ビオチンに基づかない検出技術もまたある。
【0066】
LSAB検出は、抗原に結合した一次抗体を、酵素にコンジュゲートしたSAに連結する、ビオチンにコンジュゲートした二次抗体を利用する。LSAB検出における第1の工程は、組織切片の一次抗体とのインキュベーション、続いて、ビオチン化二次抗体とのインキュベーションである。その後、最適な酵素(例えば、AP、HRPなど)にコンジュゲートしたSAを、組織切片に加え、続いて、適切な酵素基質を加える。酵素は、基質を、抗原局在の部位に沈殿する着色粒子へ変換させ、それは、その後、顕微鏡下で観察することができる。LSAB技術は、ビオチン化一次抗体を用いて短縮することができ、ビオチン化二次抗体とのインキュベーションの必要性を排除する。
【0067】
ABC検出における最初の工程 - 一次抗体及びビオチン化二次抗体とのインキュベーションは、LSABにおいてと同じであるが、次の工程及び試薬は全く異なる。アビジン及びビオチン化酵素が最初、混合され、一緒に、室温で約30分間、インキュベートされ、その後、組織切片に加えられる。このインキュベーション中、アビジンは、ビオチン化酵素と相互作用し、酵素分子を高密度(LSAB検出技術に見出される濃度をはるかに超える)に詰め込まれた大きな複合体を形成し、それは、抗原検出の感度をブーストする。
【0068】
非ビオチン検出技術は、人気を得ており、それらが、腎臓、脳、及び胎盤を含む種々の型の動物組織において豊富にある内因性ビオチンのせいでの非特異的バックグラウンド染色のようなアビジン-ビオチン検出の限界がないからである。
【0069】
色素生産性IHCにおいて、組織対比染色は、以下のような、蛍光検出においてと同じ目的を果たす:組織切片のレイアウト全体を可視化し、同じ型のオルガネラを標識すること。通常、関心対象となる抗原を描く主要色と同じ色であるべきではない対比染色が、細胞核を標識するために行われる。例えば、主要色が、赤色(AEC色素原)又は茶色(DAB色素原)である場合には、核は、青色を生じるヘマトキシリン、又は緑色を生じるメチルグリーンを用いて染色され得る。主要色が青色(BCIP/NBT色素原)である場合には、核は、ヌクレアファストレッド色素を用いて赤色に対比染色され得る。組織抗原が細胞核に局在している場合、それらの対比染色の持続時間を短縮させて、それらをほとんど目に見えないようにさせるか、又はさらに、省いて、主要なIHC色をマスクすることを避けるかの何れかであり得る。
【0070】
AHCは、バイオマーカーの検出が、バイオマーカーに対するアフィニティを有する結合剤の使用を含む、アフィニティ組織化学法を指す。例えば、マスト細胞は、塩基性タンパク質のアジビンとポリアニオン系ヘパリンとの間の静電気的誘引に基づいたAHCにより染色され得る(免疫蛍光により同定可能)。
【0071】
本明細書で用いられる場合、用語「切片」は、典型的にはミクロトームを用いて切断された、顕微鏡的分析に適した組織試料の薄いスライスを指すものとする。例として、切片は、厚さが4-5ミクロンであり得る。本発明は、4-5ミクロンに限定されない。
【0072】
本明細書で用いられる場合、用語「連続切片」は、組織試料から順々に切断された、一連の切片の任意の1つを指すものとする。お互いの「連続切片」と見なされる2つの切片について、それらは、必ずしも、組織由来の連続した切片である必要はなく、それらは、一般的に、組織構造が組織学的染色後お互いにマッチし得るように、同じ組織構造を同じ断面関係で含有するべきである。
【0073】
本明細書で用いられる場合、句「特異的結合」、「と特異的に結合する」、又は「に特異的な」は、標的とバイオマーカー特異的物質との間の結合などの測定可能で再現可能な相互作用を指し、それは、生物学的分子を含む不均一な分子集団の存在下で標的の存在を決定できる。例えば、標的と特異的に結合する結合性実体は、この標的と、それが他の標的と結合するより高いアフィニティ、アビディティで、より容易に、及び/又はより長い持続時間で、結合する抗体である。
【0074】
本明細書で用いられる場合、用語「バイオマーカー特異的物質」又は「特異的結合剤」は、試料においてバイオマーカーの特異的検出を可能にする様式で、バイオマーカー又はそのバイオマーカー内の特定の構造と結合する任意の化合物又は組成物を指すものとする。例には、抗体及びその抗原結合断片;並びに操作された特異的結合性構造、例えば、ADNECTIN(10th FN3フィブロネクチンに基づいたスキャフォールド;Bristol-Myers-Squibb Co.)、AFFIBODY(黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のプロテインAのZドメインに基づいたスキャフォールド;Affibody AB、Solna、Sweden)、AVIMER(ドメインA/LDL受容体に基づいたスキャフォールド;Amgen、Thousand Oaks、CA)、dAb(VH又はVL抗体ドメインに基づいたスキャフォールド;GlaxoSmithKline PLC、Cambridge、UK)、DARPin(アンキリンリピートタンパク質に基づいたスキャフォールド;Molecular Partners AG、Zurich、CH)、ANTICALIN(リポカリンに基づいたスキャフォールド;Pieris AG、Freising、DE)、NANOBODY(VHH(ラクダ科動物のIg)に基づいたスキャフォールド;Ablynx N/V、Ghent、BE)、TRANS-BODY(トランスフェリンに基づいたスキャフォールド;Pfizer Inc.、New York、NY)、SMIP(Emergent Biosolutions,Inc.、Rockville、MD)、及びTETRANECTIN(C型レクチンドメイン(CTLD)、テトラネクチンに基づいたスキャフォールド;Borean Pharma A/S、Aarhus、DK)(そのような操作された特異的結合性構造の説明は、Wurchら、Development of Novel Protein Scaffolds as Alternatives to Whole Antibodies for Imaging and Therapy: Status on Discovery Research and Clinical Validation、Current Pharmaceutical Biotechnology、9巻、p 502-509 (2008)により概説されており、それらの内容は出典明示により援用されている);並びに融合タンパク質であって、バイオマーカーと特異的に結合する能力がある少なくとも第1のドメイン(例えば、抗体の抗原結合断片、又はバイオマーカーと結合するタンパク質の標的結合性部分)、及びその融合タンパク質への検出試薬の結合を促進するのに適応する第2の部分(例えば、ビオチン標識、エピトープタグ、Ig断片など)を含む融合タンパク質が含まれる。
【0075】
組織化学的アッセイ(免疫組織化学及びアフィニティ組織化学を含む)との関連で用いられる場合の「検出試薬」は、細胞試料においてバイオマーカーと結合したバイオマーカー特異的物質に近接して染色剤を沈着させるために用いられる任意の試薬である。非限定的例には、バイオマーカー特異的抗体と結合する能力がある二次抗体;そのような二次抗体に連結した酵素;及び蛍光性又は色素生産性染色剤などの沈着をもたらすためのそのような酵素と反応性の化学物質が含まれる。
【0076】
名詞として用いられる場合、用語「染色剤」は、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法などを含む顕微鏡的分析のために、細胞試料において特定の分子又は構造を可視化するために用いることができる任意の物質を指すものとする。動詞として用いられる場合、用語「染色する」は、細胞試料(例えば、組織試料、細胞学的試料など)上の染色剤の沈着を生じる任意のプロセスを指すものとする。
【0077】
他に規定がない限り、本明細書で用いられる技術的及び科学的用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。例えば、Lackie、DICTIONARY OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY、Elsevier(第4版 2007);Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、N.Y. 1989)を参照。用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、「1つ又は複数」を意味するものとする。工程又は要素の列挙に先行する場合の用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」は、さらなる工程又は要素の追加が任意選択であり、排除されないことを意味することが意図される。
【0078】
本発明についてのシステム及び適用
本発明は、試薬(例えば、抗体、プローブ、バッファー、色素原、対比染色剤など)を試料に送達するための固体溶解性試薬組成物を含む組成物を特徴とする。本発明はまた、前記組成物を作製する方法、前記組成物を使用する方法(適用)(例えば、抗体を試料に導入する方法など)、及び前記組成物の使用を特徴とするシステム(例えば、自動システム)を特徴とする。例えば、本発明は、(例えば、バイオマーカーの検出のために)試薬を試料に送達する、例えば、抗体を組織試料又はスライドに付着した組織切片に送達するための方法、システム、及び組成物を特徴とする。
【0079】
いくつかの実施態様において、本発明のシステム又は組成物は、組織化学的適用、例えば、抗体又はプローブ又は他の試薬の組織切片への送達、本明細書に記載されたような自動組織化学的染色方法などに用いられる。本発明は、組織化学的適用に限定されない。例えば、いくつかの実施態様において、本発明のシステム又は組成物は、ELISA、(例えば、一次染色、特別な染色についての)染色アッセイ、又は適用、若しくは検出試薬、結合試薬、バイオマーカー特異的物質、酵素、タンパク質、核酸、染色剤などの試薬(その試薬は固体溶解性試薬として適用することができる)を含む任意の他の方法若しくは試験若しくはアッセイに用いられる。
【0080】
いくつかの実施態様において、本発明のシステム又は組成物は、手動方法において用いられる。いくつかの実施態様において、本発明のシステム又は組成物は、自動方法において用いられる。
【0081】
自動染色機械
本発明の固体溶解性試薬は、自動染色機械において用いられ得る。本発明の方法は、自動染色機械(スライド染色器)又は他の適切な自動スライド処理機械、例えば、試薬を送達するためにパドル技術を利用するスライド染色機械で実施され得る。自動染色機械(例えば、IHC/ISHスライド染色器)の特定の例には以下が含まれる:itelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNIS及びDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK GX(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA H&E 600(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK Special Stains(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA DISCOVERY XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、VENTANA DISCOVERY ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、並びにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)。自動染色機械(自動スライド染色器)はまた、全体として出典明示により本明細書に援用された、Prichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、138巻、p1578-1582(2014)に記載されている。追加として、Ventana Medical Systems,Inc.は、自動分析を実施するためのシステム及び方法を開示するいくつかの米国特許の譲受人であり、その米国特許には、米国特許第5650327号、第5654200号、第6296809号、第6352861号、第6827901号、及び第6943029号、並びに米国公開特許出願第20030211630号及び第20040052685号が含まれ、それらのそれぞれは、全体として出典明示により本明細書に援用されている。本発明の方法は、任意の適切な自動染色機械(又は自動スライド処理機械)で実施されるように適応し得る。
【0082】
自動IHC/ISHスライド染色器は、典型的には、少なくとも、スライド上で染色プロトコールを実行するのに試薬を分配するための染色器ユニットを含む。市販の染色ユニットは、典型的には、以下の原理の1つに基づいて作動する:(1)スライドが水平に位置し、試薬が、組織試料を含有するスライドの表面上にパドルとして分配される、オープンな個々のスライド染色(例えば、DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)及びintelliPATH(Biocare Medical)染色器上で実行されている);(2)試薬が、試料の上に沈着した不活性な流体層で覆われているか、又はその流体層を通して分配されるかの何れかである、液体オーバーレイ技術(例えば、VENTANA BenchMark及びDISCOVERY染色器で実行されている);(3)スライド表面がもう一つの表面(もう一つのスライド又はカバープレートであり得る)に平行に近接して配置されて、狭い間隙を生じ、その間隙を通して、毛細管力が液体試薬を引き上げ、試料と接触させておく、毛細管間隙染色(例えば、DAKO TECHMATE、Leica BOND、及びDAKO OMNIS染色器により用いられている染色原理)。数回反復の毛細管間隙染色は、間隙において流体を混合しない(例えば、DAKO TECHMATE及びLeica BONDにおいて)。毛細管間隙染色のいくつかのバリエーションにおいて、試薬が間隙において混合され、例えば、間隙がスライドと弯曲表面との間に生じ、お互いに対する表面の移動が混合をもたらす、並進間隙技術(米国特許第7820381号参照);及び、試料をスライドに適用するのに毛細管間隙染色と同様の毛細管力を用い、その後、お互いに対して平行表面を並進させて、インキュベーション中、試薬を撹拌して、試薬混合をもたらす、動的間隙染色(例えば、DAKO OMNISスライド染色器(Agilent)で実行されている染色原理)などである。試薬をスライド上に沈着させるためにインクジェット技術を用いることが、最近、提案されている。国際公開第2016-170008号A1参照。例として、VENTANA DISCOVERY ULTRAシステムは、専用バルク試薬供給ライン及び個々のスライド加熱器を有する30個の独立したスライド反応チャンバーを含むスライド引き出し、35個の試薬場所を有する試薬回転ラック、並びに3リットルから6リットルの内蔵容器において最高7個の異なるバルク試薬を保持する能力を特徴とする。そのシステムは、周囲温度から約100℃までのスライド温度範囲を有する。BENCHMARK Special Stainsシステムは、各場所についての個々の温度管理をもつ最高20枚のスライドを処理するためのスライド回転ラック、25個の試薬場所を有する試薬回転ラック、及び3リットルから6リットルの内蔵容器において最高4個のバルク溶液を保持する能力を有する。BenchMark ULTRAシステムは、各場所について個々の処理/機能性及び温度管理を有する、最高30枚のスライドを処理することができる。そのシステムは、35個の試薬場所を有する試薬回転ラック、及び最高7個の異なるバルク試薬を保持する能力を有し、その試薬はプロセスの中断なしに取り換えられ得る。そのシステムは、周囲温度から約100℃までのスライド温度範囲を有する。
【0083】
この染色原理のリストは、網羅的であることを意図しておらず、本方法及びシステムは、適切な試薬を試料に適用するために用いることができる、任意の染色技術(公知の技術と将来開発されるはずの技術の両方)を含むことが意図される。
【0084】
試料
前に論じたように、本発明の方法及びシステムに用いられる試料は、細胞若しくは組織を含む組成物、又は細胞、組織、若しくは血液の精製若しくは分離された成分、例えば、DNA、RNA、タンパク質、無細胞部分、若しくは細胞可溶化物であり得る。試料は、例えば、腫瘍又は転移性病変、例えば、原発性腫瘍又は転移性腫瘍、健康な試料などからの、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料であり得る。試料はまた、前に凍結された若しくは新鮮な組織由来、又は液体試料、例えば、血液若しくは血液成分(血漿又は血清)、尿、精液、唾液、痰、粘液、精液、涙、リンパ液、脳脊髄液、スワブから洗浄された材料など由来であり得る。いくつかの実施態様において、試料は、細胞株を含む、個体から得られる細胞のインビトロ培養物である。いくつかの実施態様において、試料は、個体から直接的に得られた試料から部分的に処理され、例えば、細胞可溶化物、又は赤血球を除去された血液である。
【0085】
いくつかの実施態様において、本発明に用いられる試料は、組織試料、又はスライドに付着した組織切片などの組織切片である。しかしながら、本発明は、組織試料に限定されず、さらに本発明は、スライドに付着した試料に限定されない。例えば、いくつかの実施態様において、試料は、チューブ、ウェル(例えば、マルチウェルプレート)、又は他の容器内にある。いくつかの実施態様において、試料は固体試料である。いくつかの実施態様において、試料は、液体ベースの試料である。いくつかの実施態様において、試料は、組織又は細胞を含む。いくつかの実施態様において、試料は、核酸、タンパク質、細菌、ウイルス、又は任意の他の試験物質を含む。
【0086】
例として、組織試料は、(本明細書に記載されているような)自動染色機械における組織学的検査に適切な任意の型であり得る。組織試料は、生検又は外科的切除を含み得る。組織試料は、癌性及び/又は健康な組織の切片を含み得る。いくつかの実施態様において、試料は、新鮮であり、凍結されており、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)されているなどである。いくつかの実施態様において、組織試料は、細胞又は組織の形を保存するために固定される。一般的な固定剤には、ホルムアルデヒド、エタノール、メタノール、及び/又はピクリン酸が含まれる。
【0087】
組織試料がパラフィン中に包埋された試料である場合には、その試料は、適切な脱パラフィン流体(1つ又は複数)を用いる自動IHC/ISHスライド染色器で脱パラフィンされ得る。廃棄物除去器が脱パラフィン流体(1つ又は複数)を除去した後、任意の数の物質を、試料へ連続的に適用することができる。その物質は、前処理、細胞溶解、変性、洗浄などのためであり得る。
【0088】
試薬
免疫組織化学法又はインサイチュハイブリダイゼーション法のための試薬には、抗体、バッファー、染色剤、核酸、酵素、加えて、チラミド又は他の検出試薬などの他の分子が含まれる。本発明の固体組成物(水溶性ポリマー組成物)は、前述の試薬の何れかを含み得る。抗体(Ventana Medical Systems,Inc.)の非限定的例には以下が含まれる:エストロゲン受容体(ER)(SP1)ウサギモノクローナル一次抗体;EGFR(5B7)ウサギモノクローナル一次抗体;FITC IgG一次抗体;c-MYC(Y69)ウサギモノクローナル一次抗体;CD8(SP57)ウサギモノクローナル一次抗体など。核酸(Ventana Medical Systems,Inc.)の非限定的例には以下が含まれる:3番染色体DIGプローブ;17番染色体DIGプローブ;EGFR DNPプローブ;HER2 Dual ISH DNAプローブカクテル;HPV6 mRNAプローブ;カッパDNPプローブ;ラムダDNPプローブ;MYC DNPプローブなど。他の試薬(Ventana Medical Systems,Inc.)の非限定的例には以下が含まれる:ISHプロテアーゼ1;プロテアーゼ3;ヘマトキシリン;青色発色試薬;ヘマトキシリンII;ブロッキング試薬;増幅試薬など。
【0089】
代表的な緩衝剤又は緩衝塩には、Tris、トリシン、HEPES、MOPS、TAPS、ビシン、TAPSO、TES、PIPES、カコジル酸塩、SSC、MES、KCl、NaCl、酢酸カリウム、酢酸NH4、グルタミン酸カリウム、NH4Cl、硫酸アンモニウム、MgCl2、酢酸マグネシウムなどが含まれるが、それらに限定されない。緩衝媒体中に存在し得る他の作用物質には、EDTA、EGTAなどのキレート剤が含まれる。
【0090】
本発明の固体試薬に用いられ得る発色基質の非限定的例には、DAB、AEC、CN、BCIP/NBT、FAST RED、FAST BLUE、FUCHSIN、NBT、ALKが含まれるが、それらに限定されない。全体として出典明示により本明細書に援用されている米国特許公開第2013/0260379号も参照。
【0091】
前述の試薬は、例示のみを目的とし、本発明をそれらの試薬に限定することは意図されない。
【0092】
固体試薬組成物
固体試薬組成物の任意の適切な構造が考慮され得る。本開示は、ウェハー若しくはフィルム(ウェハー又はフィルムに包埋された試薬)、パケット(例えば、試薬で満たされたパケット)、又は試薬をプリントされたフィルム(例えば、フィルム上にインクジェットプリントされた試薬)の形をとる固体試薬組成物に言及しているが、本発明はこれらの構造に限定されない。さらに、本発明の固体試薬組成物は、様々な材料から構築され得る。
【0093】
A.フィルム又はウェハー
ある特定の実施態様において、固体試薬組成物は、ウェハー又はフィルムの形をとり、そのウェハー又はフィルムは、水溶性ポリマー、及びそれに包埋された1つ又は複数の試薬を含む。いくつかの実施態様において、ウェハー又はフィルムを構成する水溶性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)を含むが、本発明はPVAに限定されない。例えば、いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、マルトデキストリン、結晶セルロース、マルトデキストリン、結晶セルロース、PVAなど、又はそれらの組合せを含む。PVAは当業者によく知られている。
【0094】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーはさらに、可塑剤、例えば、フィルム又はウェハーの柔軟性を向上させるのを助ける配合物を含む。可塑剤として用いられる材料の非限定的例には、ポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量ポリエチレングリコール、フタル酸エステル誘導体(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、クエン酸エステル誘導体(例えば、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル)、トリアセチン、ヒマシ油などが含まれる。
【0095】
試薬フィルム又はウェハー(例えば、PVAフィルム、PVAウェハーなど)は、水溶性ポリマー(例えば、PVA)粉末を溶媒中に溶解することにより構築され得る。溶媒の非限定的例には、エタノール-脱イオン(DI)水の溶液(例えば、50%エタノール-50%DI水、60%エタノール-40%DI水など)など、又はバッファー、例えば、BenchMark ULTRA反応バッファーが含まれる。本発明をいかなる理論にも機構にも限定するつもりはないが、バッファーは、ある特定の適用にとってより有益であり得ると考えられ、バッファーが、水溶性ポリマー(例えば、PVA)を迅速に溶解するために加熱してもより安全であり、また抗体についての安定な環境を提供するからである。
【0096】
ある特定の実施態様において、PVAウェハー又はフィルムは、PVA溶液(w/v)を用いて構築される。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、3%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、4%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、6%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、7%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、8%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、9%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、10%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から1%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から10%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から10%までのPVA(w/v)を含む。
【0097】
試薬(1つ又は複数)は、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液に加えられる。続いて、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は脱水されて、試薬包埋化水溶性ポリマー(例えば、PVA)フィルムを生じる。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃などで、ある一定時間、脱水される。
【0098】
B.パケット
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーはパケットの形をとり、そのパケットは、水溶性ポリマーを含み、1つ又は複数の試薬がそれに含有されている。いくつかの実施態様において、パケットを形成する水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)を含むが、本発明はPVAに限定されない。例えば、いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、マルトデキストリン、結晶セルロース、PVAなど、又はそれらの組合せを含む。PVAは当業者によく知られている。
【0099】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーはさらに、可塑剤、例えば、フィルム又はウェハーの柔軟性を向上させるのを助ける配合物を含む。可塑剤として用いられる材料の非限定的例には、ポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量ポリエチレングリコール、フタル酸エステル誘導体(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、クエン酸エステル誘導体(例えば、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル)、トリアセチン、ヒマシ油などが含まれる。
【0100】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーのあらかじめ作られたフィルム(例えば、PVAフィルム)は、パケットを作製するために用いられる。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーのフィルム(例えば、PVAフィルム)はオーダーメイドされる。
【0101】
前に論じたように、フィルム(例えば、PVAフィルム)は、水溶性ポリマー(例えば、PVA)粉末を溶媒中に溶解することにより構築され得る。溶媒の非限定的例には、エタノール-脱イオン(DI)水の溶液(例えば、50%エタノール-50%DI水、60%エタノール-40%DI水など)など、又はバッファー、例えば、BenchMark ULTRA反応バッファーが含まれる。例として、ある特定の実施態様において、PVAフィルムは、PVA溶液(w/v)を用いて構築される。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、3%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、4%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、6%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、7%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、8%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、9%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、10%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から1%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から10%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から10%までのPVA(w/v)を含む。
【0102】
その後、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は脱水されて、水溶性ポリマーフィルム(例えば、PVAフィルム)を生じる。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃などで、ある一定時間、脱水される。
【0103】
水溶性ポリマーフィルム(例えば、PVAフィルム)は、オーダーメイドされようが、あらかじめ作られようが、そこに試薬を貯蔵するための内部コンパートメントを形成するように構成される。例えば、2種の(又はそれより多くの)水溶性ポリマーフィルム(例えば、PVAフィルム)は、一緒に融解されて、試薬の挿入のための開口部を有するパケットを形成する。ある特定の実施態様において、数層の水溶性ポリマーフィルムが積み重ねられて、パケットの一部分(例えば、側面)を形成する。試薬は、水溶性ポリマーを溶解しない溶液中に希釈され得る。例えば、ある特定の実施態様において、試薬(例えば、抗体)は、グリセリン中に希釈される。いったん試薬溶液がパケットの内部コンパートメントに加えられたならば、パケットは(例えば、熱で)密封される。
【0104】
C.インクジェットプリントされたフィルム
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーは、プリントされたフィルム(例えば、インクジェットプリントされたフィルム)の形をとり、そのフィルムは、水溶性ポリマーを含み、1つ又は複数の試薬がその上にプリントされている。
【0105】
いくつかの実施態様において、フィルムはポリビニルアルコール(PVA)を含むが、本発明はPVAに限定されない。例えば、いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、PVAなど、又はそれらの組合せを含む。PVAは当業者によく知られている。
【0106】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーはさらに、可塑剤、例えば、フィルム又はウェハーの柔軟性を向上させるのを助ける配合物を含む。可塑剤として用いられる材料の非限定的例には、ポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量ポリエチレングリコール、フタル酸エステル誘導体(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、クエン酸エステル誘導体(例えば、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル)、トリアセチン、ヒマシ油などが含まれる。
【0107】
ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーのあらかじめ作られたフィルム(例えば、PVAフィルム)は、試薬をその上にプリントするために用いられる。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマーのフィルム(例えば、PVAフィルム)はオーダーメイドされる。
【0108】
前に論じたように、フィルム(例えば、PVAフィルム)は、水溶性ポリマー(例えば、PVA)粉末を溶媒中に溶解することにより構築され得る。溶媒の非限定的例には、エタノール-脱イオン(DI)水の溶液(例えば、50%エタノール-50%DI水、60%エタノール-40%DI水など)など、又はバッファー、例えば、BenchMark ULTRA反応バッファーが含まれる。例として、ある特定の実施態様において、PVAフィルムは、PVA溶液(w/v)を用いて構築される。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、3%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、4%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、5%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、6%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、7%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、8%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、9%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、10%PVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から1%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、1%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.1%から10%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、0.5%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から5%までのPVA(w/v)を含む。ある特定の実施態様において、PVA溶液は、2%から10%までのPVA(w/v)を含む。
【0109】
その後、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は脱水されて、水溶性ポリマーフィルム(例えば、PVAフィルム)を生じる。ある特定の実施態様において、水溶性ポリマー(例えば、PVA)溶液は、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃などで、ある一定時間、脱水される。
【0110】
水溶性ポリマーフィルム(例えば、PVAフィルム)は、オーダーメイドされようが、あらかじめ作られようが、その上に1つ又は複数の試薬をプリントするために用いられる。ある特定の実施態様において、インクジェットプリントが、試薬(1つ又は複数)をフィルム上にプリントするために用いられる。例えば、固体水溶性ポリマーフィルムが、プリントするために、切り取られて、インクジェットプリンタープラットフォーム上に置かれ得る。本発明はインクジェットプリントに限定されない。
【0111】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定するつもりはないが、試薬はプリントされるため、インクジェットプリントされた抗体フィルムは、抗体をPVA内に運ぶために特定の液体希釈剤(例えば、グリセリン)を必要としないと考えられる。さらに、プリントは、2つ以上の層とは対照的に、単層のみの水溶性ポリマー(例えば、PVA)上で達成することができる。単層のポリマーはアッセイ中、より容易に溶解するだろう。
【実施例
【0112】
実施例1-試薬包埋化ウェハーを作製するプロセス
実施例1は、いくつかの固体ウェハー試薬、例えば、ヘマトキシリンIIを含むもの、青色発色試薬を含むものなどの作製を記載する。本発明は、実施例1に記載された方法、組成物、及び構造に限定されない。
【0113】
PVAウェハーを、最初、PVA粉末(Mw 89,000-98,000、99+%加水分解;Sigma Aldrich、P/N 341584)を50%エタノール及び50%脱イオン(DI)水中に溶解することにより2%又は5%PVA溶液を調製することによって作製した。追加のウェハーを、PVAを、抗体のための安定な環境を提供するのを助けるBenchMark Ultra反応バッファー(P/N 950-300)中に溶解することによって作製した。この実施例に記載された実験について、2%及び5%PVA溶液(w/v)、それぞれについて2g又は5gのPVA粉末をビーカー内で100mLの反応バッファーと混合し、溶液が透明になるまで、溶解を促進するために90-100℃で、撹拌棒で撹拌した。400μLの各PVA溶液を、清潔なポリスチレン又はセラミックトレイ上にピペッティングして、パドルを形成し、試験されることになっている、OptiView IHC検出キット(例えば、PTEN(SP218)ウサギモノクローナル一次抗体(P/N 790-5097、Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)、ヘマトキシリンII(P/N 790-2208、Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)若しくは青色発色試薬(P/N 760-2037、Ventana Medical Systems、Tucson、AZ))、又は補助試薬、それぞれの単一スライド分配量(100μL)を、PVA溶液(1×)のパドル上に直接、分配した。その後、試薬-PVA溶液を、37℃で1-2時間、脱水して、試薬包埋化PVAフィルムを生じた(図1A参照)。図1Bは、スライド上の反応バッファーバドルに適用された時に溶解したウェハーを示す。
【0114】
実施例2-抗体包埋化ウェハーを作製するプロセス
実施例2は、抗体がウェハー中へ包埋されている、抗体を含む固体試薬の作製を記載する。本発明は、実施例2に記載された方法、組成物、及び構造に限定されない。例えば、本発明は、試薬をウェハー又はフィルムへ包埋すること、抗体の使用、PVAの使用などに限定されない。
【0115】
1-4%PVA溶液を、PVA粉末(Mw 89,000-98,000、99+%加水分解;Sigma Aldrich、P/N 341584)、エタノール、及び脱イオン(DI)水から作製した。1%及び4%PVA溶液(w/v)、それぞれについて1-4gのPVA粉末を、ビーカー内で40mLのDI水及び60mLの100%エタノールと混合し、溶液が透明になるまで、溶解を促進するために80-90℃で、撹拌棒で撹拌した。400μLの各PVA溶液を、清潔なトレイ上にピペッティングして、パドルを形成し、PTEN(SP218)ウサギモノクローナル一次抗体(P/N 790-5097、Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)の単一スライド分配量(100μL)を、PVA溶液(1×)のパドル上に直接、分配した。その後、抗体-PVA溶液を、45℃で脱水して、抗体包埋化PVAフィルムを生じた。図2Aは、45℃でのオーブンにおけるフィルムへの脱水のための、500μL液滴でトレイに配分された場合の抗体-PVA溶液を示す。図2Bは、固体試薬を適用するために、染色手順における一次抗体の手作業での滴定のオプションが用いられる、VENTANA BenchMark ULTRA自動染色器を示す。可視化を目的として、紫色食用着色剤をPVAに加えた。
【0116】
実施例3-抗体パケットを作製するプロセス
実施例3は、パケットが抗体-グリセリン溶液で満たされている、抗体を含む固体試薬の作製を記載する。本発明は、実施例3に記載された方法、組成物、及び構造に限定されない。例えば、本発明は、抗体の使用、PVAの使用、パケット構造などに限定されない。
【0117】
NSCLC試料スライドを、当業者に知られているような標準プロトコールに従って調製した。市販のPVAフィルムを購入した(SULKY of America;品目番号486-12)。PVAフィルムを、およそ4cm×4cmの小さい正方形へはさみで切り取った。2個の正方形を積み重ね、はんだごてで一緒に融解させて、パケット外形の3/4が形成された。ワックスペーパー層を用いて、熱を逃がした。未処理のPTEN(SP218)ウサギモノクローナル一次抗体をグリセリン(水溶性PVAを溶解しない)中に1×(1:300)希釈した。100μLの抗体-グリセリン溶液をPVAパケットへとピペッティングした。パケットを、はんだごてで閉じて密封した(図3A参照)。可視化のために赤色食用着色剤を加えた。
【0118】
図3Bに関して、(図3Aの)グリセリン中に希釈された抗体で満たされたPVAパケットを、染色手順における一次抗体の手作業での滴定のオプションを用いて、VENTANA BenchMark ULTRA自動染色器(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)におけるスライド上に置いた。スライドの上面の反応バッファーのパドルはPVAを溶解して、抗体を放出し、一次抗体での染色を可能にした。可視化のために赤色食用着色剤を加えた。
【0119】
実施例4-インクジェットプリントされた抗体フィルムを作製するプロセス
実施例4は、抗体がフィルム上にプリントされている、抗体を含む固体試薬の作製を記載する。本発明は、実施例4に記載された方法、組成物、及び構造に限定されない。例えば、本発明は、プリントを用いる製造方法、抗体の使用、PVAの使用などに限定されない。
【0120】
市販のPVAフィルムを購入した(SULKY of America;品目番号486-12)。PVAフィルムを、およそ4cm×4cmの小さい正方形へ切り取り、インクジェットプリンタープラットフォーム上へ置いた(図4A)。未処理のCD34(QBEnd/10)マウスモノクローナル一次抗体を、抗体希釈剤を模倣し得る反応バッファー、グリセロール、Tris-HCl、及びBrij-35中に200×(1:30)希釈した。抗体溶液を、インクジェットカートリッジへ充填し、単一スライド分配量での抗体(1×)の質量にマッチするように、300dpiのプリント密度で、面積1インチ×0.5インチのPVAフィルム上へプリントした(図4B)。
【0121】
実施例5-試薬包埋化ウェハーについての実験的試験及び結果
実施例5は、実施例1の試薬包埋化ウェハーの試験を記載する。本発明は、本明細書に記載された方法、システム、及び組成物に限定されない。
【0122】
A.免疫組織化学(IHC)染色についての手順
試験されるOptiView IHC及び対比染色試薬のそれぞれのために作製されたウェハー(実施例1参照)を、IHC染色実行での機能試験前の2日間より短い期間、室温で貯蔵した。PTEN(SP218)一次抗体及び陰性試薬コントロールについての表1に列挙された選択を用いて、BenchMark ULTRAにおける染色手順、「U OptiView DAB IHC v5.2 CDx」に基づいて、カスタマイズされた染色手順を作成した。試験されることになっている試薬ウェハーの手動適用のための手動適用「手作業での適用」工程を可能にするように染色手順を変更した。
【0123】
表1に関して、正常なヒト膵臓組織の非染色スライドを、BenchMark ULTRA機器内に置き、PTEN(SP218)ウサギモノクローナル一次抗体又はウサギモノクローナル陰性コントロールIgで染色した。PVAフィルム原型を、「手作業での適用による抗体滴定」工程中、スライド上へ手動で置き、その機器は、ユーザーが、スライド引き出しを開けて、抗体をスライドの上面の反応バッファーバトルへ手動で適用することを可能にする。各実行についてのコントロールが含まれ、その場合、PVA原型の代わりに、抗体をスライド上へ分配するために通常のディスペンサーが用いられた。原型の配置に取って代わられるバッファーを代償するために、及びPVA溶解を加速するために、PVAフィルムの上面に反応バッファーもまたピペッティングした(およそ400μL)。この反応バッファー工程は手動で実施されたが、それは、スライド引き出しを閉めた後に反応バッファー「調整」工程を含むように手作業での適用のソフトウェアマクロを変化させることにより、染色手順に加えることができた。各染色実行後、スライドを脱水し、OptiView DAB検出キットパッケージ挿入物(1010323EN)に従ってカバーグラスで覆った。
【0124】
B.試薬包埋化ウェハー組成物についての結果
図5図6図7、及び図8に関して、試薬包埋化PVAフィルムウェハーを用いて、正常な膵臓組織をPTEN(SP218)ウサギモノクローナル抗体で染色した。試験される各検出試薬(リンカー、多量体、DAB、銅、ヘマトキシリン、及び青色発色試薬)を、個々に試験し、その後、最終的に、全ウェハー染色実行として組み合わせた(図8参照)。各実行は、PTEN(SP218)抗体のDAB検出および対比染色に成功した。染色結果は、リンカー、多量体、DAB、及び銅のウェハーについてディスペンサーのコントロールと一致した(図5図6参照)。青色発色試薬及びヘマトキシリンのウェハーは、対比染色と共に組織を染色することに成功したが、染色の品質は、ディスペンサーのコントロールには比べものにならなかった。受け入れられる染色の品質を得るためにさらなる最適化が必要である(図7参照)。
【0125】
実施例6-抗体包埋化ウェハー、抗体パケット、及びインクジェットプリントされた抗体フィルムについての実験的試験及び結果
実施例6は、固体試薬、例えば、実施例2、実施例3、及び実施例4、それぞれの抗体包埋化ウェハー、抗体パケット、及びインクジェットプリントされた抗体フィルムの結果を記載する。本発明は、本明細書に記載された方法、システム、及び組成物に限定されない。
【0126】
A.免疫組織化学(IHC)染色についての手順
実施例2、実施例3、及び実施例4に記載された3つの原型のそれぞれを、IHC染色実行での機能試験前の5日間より短い期間、4℃で貯蔵した。PTEN(SP218)一次抗体及びCD34一次抗体についての表1に列挙された選択を用いる、BenchMark ULTRA自動染色器における染色手順、「U OptiView DAB IHC v5.2 CDx」を用いて、染色プロトコールを作成した。
【0127】
表2に関して、正常なヒト前立腺又は胎盤組織の非染色スライドを、BenchMark ULTRA機器内に置き、それぞれ、PTEN(SP218)及びCD34(QBEnd/10)で染色した。PVAフィルム原型を、「手作業での適用による抗体滴定」工程中、スライド上へ手動で置き、その機器は、ユーザーが、スライド引き出しを開けて、抗体をスライドの上面の反応バッファーバトルへ手動で適用することを可能にする。各実行についてのコントロールが含まれ、その場合、PVA原型の代わりに、抗体をスライド上へ分配するために通常のディスペンサーが用いられた。原型の配置に取って代わられるバッファーを代償するために、及びPVA溶解を加速するために、PVAフィルムの上面に反応バッファーもまたピペッティングした(およそ400μL)。この反応バッファー工程は手動で実施されたが、それは、スライド引き出しを閉めた後に反応バッファー「調整」工程を含むように手作業での適用のソフトウェアマクロを変化させることにより、染色手順に加えることができた。各染色実行後、スライドを脱水し、VENTANA OptiView DAB検出キットパッケージ挿入物(1010323EN、Ventana Medical Systems、Tucson、AZ))に従ってカバーグラスで覆った。
【0128】
B.抗体包埋化ウェハー組成物についての結果
図9A図9B図9C、及び図9Dに関して、抗体包埋化PVAフィルムウェハーを、PVA溶液へディスペンサーから直接、抗体を加えることにより、希釈剤成分の正確な濃度で作製した。加えて、PVAフィルムの定式化により、フィルム組成の予備的最適化が促進された。図9Aは、1%PVA抗体包埋化フィルム由来のPTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織を示し、一方、図9Bは、コントロールとして、PTEN(SP218)抗体ディスペンサーで染色された正常な前立腺組織を示す。図9A及び9Bにおけるスライドは同等に染色された。図9Cは、図9Aのスライドの40×倍率であり、一方、図9Dは、図9Bのスライドの40×倍率である。1-4%PVAフィルムウェハーのそれぞれからの染色は、ディスペンサーのコントロールと一致した;しかしながら、3%及び4%PVAフィルムは、染色実行中、完全には溶解せず、染色実行が終了した後、スライドの底辺に残存物が見出された。45℃での抗体-PVA溶液の脱水は、抗体安定性又は機能に影響しないように思われた。他方、60℃での脱水は、抗体変性及び機能的染色の損失をもたらした。より低い温度での脱水、又はさらに凍結乾燥が、安定性を向上させ、いくつかの抗体が熱に対して感受性が高いことが見出される場合には、抗体機能を向上させ得る。
【0129】
C.抗体パケット組成物についての結果
抗体パケットからの最初の染色は一致せず、パケットをより薄く作製し、パケットを溶解するのを助けるためにより多い反応バッファーを加えると、染色は向上した。しかしながら、組織に渡る染色強度は、一致しないままで、小さい非染色領域があった。図10A図10B図10C、及び図10Dは、ディスペンサーのコントロールと比較した、PVAパケットで染色された組織の例を示す。図10Aは、グリセリン及び抗体で満たされたPVAパケットを用いてPTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織の画像であり、一方、図10Bは、コントロールとしてディスペンサーを用いてPTEN(SP218)抗体で染色された正常な前立腺組織の画像である(図10B)。図10Cは、パケットの40×画像を示し、一方、図10Dは、コントロールの40×画像を示し、類似した染色の品質が明らかにされた。グリセリンは、それが手作業での適用工程中、溶解したPVAフィルムから放出された時、パドルの底部に沈むように思われ、そのことは、抗体がスライド全体に渡って組織に到達し、適切に結合することを阻止している可能性がある。パケットが溶解している時、気泡もまた観察され、それもまた、抗体がいくつかの領域に到達するのをブロックしている可能性があった。グリセリンは、それが容易に商業的に入手でき、危険性がなく、水性抗体希釈剤のように周囲のPVAパケットを溶解しないため、試験のための希釈剤として選択された。グリセリンは、水溶液中で容易に溶解しない高度に粘性が高い液体であり、水より高い密度を有する。
【0130】
D.インクジェットプリントされた抗体フィルム組成物についての結果
図11A図11B図11C、及び図11Dは、ディスペンサーのコントロールと比較した、インクジェットプリントされた抗体フィルムで染色された組織の例を示す。インクジェットプリントされた抗体フィルムからの特異的染色強度は、ディスペンサーのコントロールと一致した;しかしながら、より高いバックグラウンド又は非特異的な染色が存在した。バックグラウンド染色は、将来的な研究で最適化することができ得る、希釈剤成分の異なる濃度に起因し得る。
【0131】
図11Aは、PVAフィルム上にプリントされたCD34(QBEnd/10)一次抗体で染色された正常な胎盤組織を示し、一方、図11Bは、コントロールとしてディスペンサーで送達されたCD34(QBEnd/10)一次抗体で染色された正常な胎盤組織を示す。図11Cは、図11Aのスライドの40×倍率であり、一方、図11Dは、図11Bのスライドの40×倍率である。これらのスライドは、類似した染色強度、及びPVAフィルムでのわずかにより高いバックグラウンド染色を明らかにしている。インクジェットプリントされた抗体フィルムからの特異的染色強度はディスペンサーのコントロールと一致した;しかしながら、より高いバックグラウンド又は非特異的な染色が存在した。バックグラウンド染色は、希釈剤成分の異なる濃度に起因し得る。
【0132】
実施例7
実施例7は、本発明の固体組成物と共に用いられる染色プロトコールの例を示す。下記の実施例に用いられる固体組成物には、第1の(一次)抗体を含む固体組成物、第2の抗体を含む固体組成物、第3の抗体を含む組成物、第1の検出試薬を含む組成物、第2の検出試薬を含む組成物、ヘマトキシリンを含む組成物、及び青色発色試薬を含む組成物が含まれる。本発明は、本明細書に記載された方法、組成物、試薬、システム、又は特定の手順に限定されない。
【0133】
脱パラフィン溶液を適用する。
【0134】
抗原回復溶液を適用する。
【0135】
一次抗体固体組成物を適用する。
【0136】
二次抗体固体組成物を適用する。
【0137】
第3の抗体固体組成物を適用する。
【0138】
第1の検出試薬固体組成物を適用する。
【0139】
第2の検出試薬固体組成物を適用する。
【0140】
ヘマトキシリン固体組成物を適用する。
【0141】
青色発色試薬固体組成物を適用する。
【0142】
参考文献
以下の論文および特許文献の開示は、全体として出典明示により本明細書に援用されている。
Butler J.E.. "Solid Supports in Enzyme-Linked Immunosorbent Assay and Other Solid-Phase Immunoassays" Methods 22 (2000):4-23
De Melo-Junior M.R., Alves L.C., dos Santos F.B., Beltrao E.I.C., de Carvalho Jr L.B. "Polysiloxane-polyvinyl alcohol discs as support for antibody immobilization: Ultra-structural and physical-chemical characterization" React Funct Polym 68 (2008):315-320
Kennedy S.P., inventor; The Procter & Gamble Company, assignee. "Liquid Laundry Detergent in Water-Soluble Package". United States Patent: 4,973,416. Nov 27, 1990
McWilliam, I., M. Chong Kwan, and D. Hall. "Inkjet Printing for the Production of Protein Microarrays." Methods in Molecular Biology 785 (2011): 345-61.
Robert, MC., M. Frenette, and C. Zhou. "A Drug Delivery System for Administration of Anti-TNF-a Antibody." Transnational Vision Science & Technology 5.2 (2016)
Sonenstein G.G., inventor; Colgate-Palmolive Company, assignee. "Water Soluble Films Of Polyvinyl Alcohol And Polyacrylic Acid And Packages Comprising Same". United States Patent: 4,692,494. Sep 8, 1987
Stephens C, Suriyavirun N, inventors; Ventana Medical Systems, assignee. "Solid Single-dose Antibody and Reagent Delivery Method for IHC/ISH Instruments" US Provisional Patent Application No. 62/437,545 Filed December 2016.
Wan T., Stylios G.K., Giannoudi M., Giannoudis P.V. "Investigating a new drug delivery nano composite membrane system based on PVA/PCL and PVA/HA(PEG) for the controlled release of biopharmaceuticals for bone infections." Injury, Int. J. Care Injured 46 S8 (2015):S39-S43
【0143】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の記載から当業者にとって明らかであろう。そのような改変もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。

<さらなる実施態様>
[実施態様1]
a.試料を支持するためのベース;
b.ベース上の試料上へ液体を分注するための液体ディスペンサー;及び
c.ベース上の試料上へ沈着させる固体組成物であって、固体組成物が、試薬が包埋された水溶性ポリマーを含み、試薬が、抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せからなる群から選択され、組成物が試料上で溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、固体組成物
を含む、自動染色システム。
[実施態様2]
固体組成物を手動で試料上に沈着させる、実施態様1に記載のシステム。
[実施態様3]
固体組成物を自動式で試料上に沈着させる、実施態様1に記載のシステム。
[実施態様4]
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させる前に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、実施態様1から3の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様5]
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させた後に、液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、実施態様1から3の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様6]
固体組成物を保持するための保持容器をさらに含む、実施態様1から5の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様7]
少なくとも20の試料を保持し、処理する、実施態様1から6の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様8]
少なくとも50の試料を保持し、処理する、実施態様1から6の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様9]
染色剤を試料に導入するためのものである、実施態様1から8の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様10]
試料上で組織化学アッセイを実施するためのものである、実施態様1から9の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様11]
試料上でインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのものである、実施態様1から10の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様12]
自動DNA増幅又はシーケンシングのためのものである、実施態様1から11の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様13]
固体組成物又は固体組成物と液体組成物の両方を試料へ送達することができる、実施態様1から12の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様14]
画像取得システム、画像分析システム、又は画像取得システムと画像分析システムの両方をさらに含む、実施態様1から13の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様15]
試料が組織切片を含む、実施態様1から14の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様16]
水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む、実施態様1から15の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様17]
組成物が2以上の試薬を含む、実施態様1から16の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様18]
水溶性ポリマーがフィルムである、実施態様1から17の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様19]
試薬が水溶性ポリマー内に包埋又は注入される、実施態様1から18の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様20]
試薬が水溶性ポリマー上にプリントされる、実施態様1から18の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様21]
試薬が水溶性ポリマーにより封入される、実施態様1から18の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様22]
試薬が水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される、実施態様1から18の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様23]
固体組成物がバッファー由来の塩をさらに含む、実施態様1から22の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様24]
固体組成物が緩衝剤をさらに含む、実施態様1から23の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様25]
試料がスライド上に載せられる、実施態様1から24の何れか一項に記載のシステム。
[実施態様26]
システム内の試料上に試薬を沈着させる方法であって、
システムが、試料を支持するためのベース及びベース上の試料上へ液体を分注するための液体ディスペンサーを有し、
前記方法が、
a.システムのベース上へ試料を置くこと;及び
b.ベース上の試料上へ固体組成物を沈着させることであって、固体組成物が、試薬が包埋された水溶性ポリマーを含み、試薬が、抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せからなる群から選択され、組成物が試料上で溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、沈着させること
を含む、方法。
[実施態様27]
固体組成物を手動で試料上に沈着させる、実施態様26に記載の方法。
[実施態様28]
固体組成物を自動式で試料上に沈着させる、実施態様26に記載の方法。
[実施態様29]
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させる前に、システムの液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、実施態様26から28の何れか一項に記載の方法。
[実施態様30]
固体組成物をベース上の試料上へ沈着させた後に、システムの液体ディスペンサーがベース上の試料上へ液体を分注する、実施態様26から28の何れか一項に記載の方法。
[実施態様31]
システムが固体組成物を保持するための保持容器をさらに含む、実施態様26から30の何れか一項に記載の方法。
[実施態様32]
システムが少なくとも20の試料を保持し、処理する、実施態様26から31の何れか一項に記載の方法。
[実施態様33]
システムが少なくとも50の試料を保持し、処理する、実施態様26から31の何れか一項に記載の方法。
[実施態様34]
システムが、染色剤を試料に導入するためのものである、実施態様26から33の何れか一項に記載の方法。
[実施態様35]
システムが、試料上で組織化学アッセイを実施するためのものである、実施態様26から34の何れか一項に記載の方法。
[実施態様36]
システムが、試料上でインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのものである、実施態様26から35の何れか一項に記載の方法。
[実施態様37]
システムが、自動DNA増幅又はシーケンシングのためのものである、実施態様26から36の何れか一項に記載の方法。
[実施態様38]
システムが、固体組成物又は固体組成物と液体組成物の両方を試料へ送達することができる、実施態様26から37の何れか一項に記載の方法。
[実施態様39]
システムが画像取得システム、画像分析システム、又は画像取得システムと画像分析システムの両方をさらに含む、実施態様26から38の何れか一項に記載の方法。
[実施態様40]
試料が組織切片を含む、実施態様26から39の何れか一項に記載の方法。
[実施態様41]
水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む、実施態様26から40の何れか一項に記載の方法。
[実施態様42]
組成物が2以上の試薬を含む、実施態様26から41の何れか一項に記載の方法。
[実施態様43]
水溶性ポリマーがフィルムである、実施態様26から42の何れか一項に記載の方法。
[実施態様44]
試薬が水溶性ポリマー内に包埋又は注入される、実施態様26から43の何れか一項に記載の方法。
[実施態様45]
試薬が水溶性ポリマー上にプリントされる、実施態様26から43の何れか一項に記載の方法。
[実施態様46]
試薬が水溶性ポリマーにより封入される、実施態様26から43の何れか一項に記載の方法。
[実施態様47]
試薬が水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される、実施態様26から43の何れか一項に記載の方法。
[実施態様48]
固体組成物がバッファー由来の塩をさらに含む、実施態様26から47の何れか一項に記載の方法。
[実施態様49]
固体組成物が緩衝剤をさらに含む、実施態様26から48の何れか一項に記載の方法。
[実施態様50]
試料がスライド上に載せられる、実施態様26から49の何れか一項に記載の方法。
[実施態様51]
a.水溶性ポリマー;及び
b.抗体、抗体断片、タンパク質、核酸、色素原、染色剤、対比染色剤、脂質、炭水化物、酵素、バッファー、又はそれらの組合せからなる群から選択される試薬
を含む、固体溶解性組成物。
[実施態様52]
水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルアクリル酸ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム塩)、プルラン、又はそれらの組合せを含む、実施態様51に記載の組成物。
[実施態様53]
1より多くの試薬を含む、実施態様51又は52に記載の組成物。
[実施態様54]
水溶性ポリマーがフィルムである、実施態様51から53の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様55]
試薬が水溶性ポリマー内に包埋又は注入される、実施態様51から53の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様56]
試薬が水溶性ポリマー上にプリントされる、実施態様51から53の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様57]
試薬が水溶性ポリマーにより封入される、実施態様51から53の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様58]
試薬が水溶性ポリマーの2つ以上の層により封入される、実施態様51から53の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様59]
バッファー由来の塩をさらに含む、実施態様51から58の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様60]
緩衝剤をさらに含む、実施態様51から59の何れか一項に記載の組成物。
[実施態様61]
実施態様51から60の何れか一項に記載の組成物を試料に適用することを含む、試料を試薬と接触させる方法であって、前記組成物が、試料との接触により溶解し、それにより試薬を試料上に沈着させる、方法。
[実施態様62]
試料が自動スライド染色機械に置かれる、実施態様61に記載の方法。
[実施態様63]
試料が実施態様1から25の何れか一項に記載の自動システムに置かれる、実施態様61に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11