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特許7025439分割射出瞳ヘッドアップディスプレイシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】分割射出瞳ヘッドアップディスプレイシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220216BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019547678
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018020324
(87)【国際公開番号】W WO2018160765
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】15/449,679
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507349503
【氏名又は名称】オステンド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エル-ゴロウリー,フセイン・エス
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】チュアン,チー-リ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤーズ,マーティ
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-68693(JP,A)
【文献】特開2013-214008(JP,A)
【文献】特開2013-83675(JP,A)
【文献】特開平7-257228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/62113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のヘッドアップディスプレイであって、
前記ヘッドアップディスプレイは:
複数のモジュール
を備え、各前記モジュールは:
ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ;
前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャが生成した第1の画像及び第2の画像をコリメートし、拡大し、車両のフロントガラスに向かって反射して、アイボックスセグメント内で視聴可能な第1の仮想画像及び第2の仮想画像を形成するために配置された、凹面ミラー
を有し、
前記複数のモジュールは、前記アイボックスセグメントを組み合わせることによって、各前記モジュールの前記アイボックスセグメントより大きな集合アイボックスを有する前記ヘッドアップディスプレイを提供するよう配設され、前記集合アイボックスは、車両のドライバーの公称頭部位置にあり;
前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャは、第1のマイクロ光学素子のセットそれぞれに関連する第1のピクセルのセットと、第2のマイクロ光学素子のセットそれぞれに関連する第2のピクセルのセットとを備え;
前記第1のマイクロ光学素子のセットは、各前記第1のピクセルのセットからの画像を、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの表面から外向きの方向に投影するよう構成され、これにより、前記集合アイボックスから第1の距離において視聴可能な前記第1の仮想画像が生成され;
前記第2のマイクロ光学素子のセットは、各前記第2のピクセルのセットからの画像を、前記第1の画像に対して下向きに傾斜した方向に投影するよう構成され、これにより、前記集合アイボックスから第2の距離において視聴可能な前記第2の仮想画像が生成される、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第1の距離は遠視野の距離であり、
前記第2の距離は近視野の距離である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャのユーザ定義型の第1のピクセルのセットで構成され、
前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャのユーザ定義型の第2のピクセルのセットで構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの奇数行のピクセルで構成され、
前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの偶数行のピクセルで構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの偶数行のピクセルで構成され、前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの奇数行のピクセルで構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャのピクセル面積の少なくとも50%を構成する前記ピクセルで構成され、
前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの残りのピクセル面積で構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの上側領域で構成され、
前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの下側領域で構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記アイボックスセグメント及び前記モジュールの個数は、前記アイボックスセグメント及び前記モジュールの、ユーザによって定義される個数である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記第1のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャのユーザ定義型の第1のピクセルのセットで構成され、
前記第2のピクセルのセットは、前記ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャのユーザ定義型の第2のピクセルのセットで構成され、
前記アイボックスセグメント及び前記モジュールの個数は、前記アイボックスセグメント及び前記モジュールの、ユーザによって定義される個数である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にヘッドアップディスプレイ(heads-up display:HUD)に関し、より詳細には、1つ以上の仮想画像を生成するHUDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、自動車のドライバーに、該ドライバーの視界及び注意を道路から外すことなく、自動車のダッシュボード情報をより視覚的に認識させ、通知することによって、自動車の安全性に寄与する、視覚的補助技術として求められている。しかしながら、現在入手可能なヘッドアップディスプレイは体積が大きく、大半の自動車での使用のために実現可能なオプションとなるには高価すぎる。航空機及びヘリコプターのヘッドアップディスプレイのための用途においても、コスト要因としての程度は低いものの、これらの同一の障害が発生する。ヘッドアップディスプレイの自動車での用途の場合、体積及びコスト面での制約は、車両のサイズ、タイプ及びコスト要件が様々であることにより、更に悪化する。従って、自動車、小型航空機、及びヘリコプターといった小型車両での使用に好適な、低コストでかさばらないヘッドアップディスプレイに対する需要が存在する。
【0003】
従来技術のHUDシステムは一般に、瞳孔イメージングHUD及び非瞳孔イメージングHUDの2タイプに分類できる。瞳孔イメージングHUDは典型的には、中間画像の配信及び瞳孔の形成を担当するリレーモジュールと、画像のコリメーション及び視聴者の目の位置(本明細書中では「アイボックス(eye-box)」と呼ばれる)での瞳孔のイメージングを担当するコリメーションモジュールとで構成される。瞳孔イメージングHUDのコリメーションモジュールは典型的には、傾斜曲面若しくは平面リフレクタ、又はホログラフィック光学素子(holographic optical element:HOE)として実現され、リレーモジュールは典型的には、光路を曲げるため及び光収差を補償するために傾斜している。非瞳孔イメージングHUDは、システムのアパーチャを、ディスプレイにおける又は拡散による中間画像の位置における光円錐角によって定義する。中間画像HUDシステムに関しても、リレーモジュールが必要であるが、HUDアパーチャはコリメーション光学系のみによって決定される。コリメーション光学系は通常、軸対称性を有するが、体積に関して要求される制約を満たすために、折り畳みミラーを備える。これは、収差補正の必要、及びシステムの体積に関する側面によって決定される。
【0004】
特許文献8に記載され、図1-1に図示されている従来技術は、凹面HOEリフレクタ(図1-1の11)をコンバイナ及びコリメータとして使用することにより、コリメーション光学系を最小化し、HUDシステムの体積に関する側面を低減する。得られるHUDシステムは、収差を補償して中間画像を配信するために、複雑な傾斜リレー光学系(図1-1の10)を必要とする。更にこのHUDシステムは、狭いスペクトルでしか動作しない。
【0005】
特許文献9に記載され、図1-2に図示されている従来技術は、リレー光学系(relay optics:REL)モジュールを用いて、収束コンバイナ(convergent combiner:CMB)ミラー(図1-2のCMB)の焦点面に中間画像を配信し、システムの瞳孔を定義する。CMBミラーは上記中間画像をコリメートし、システムの瞳孔を視聴者の眼に結像して、視聴を促進する。この瞳孔イメージングHUDによるアプローチは、パッケージング及び収差補正のために、複雑なRELモジュールを必然的に伴う。
【0006】
特許文献10に記載され、図1-3に図示されている従来技術は、拡散表面(図1-3の51)上に投影するための投影レンズ(3)を画像ソースとして使用し、また半透明コリメートミラー(図1-3の7)を使用する。コリメートミラーは、無限遠点に画像を形成し、コリメーション光学系のアパーチャは、拡散器の角度幅によって定義される。
【0007】
特許文献11に記載され、図1-4に図示されている従来技術は、2つの液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)パネル(図1-4の23)からなる画像形成ソースを用いて、コリメーション光学系モジュール(図1-4の1)の焦点面に配置された拡散スクリーン(図1-4の5)上に中間画像を形成する。画像形成ソースの2つのLCDパネルの主要な目的は、形成された画像の視認性のために十分な輝度を達成することである。この目的を達成するために、画像形成ソースの2つのLCDパネルは、拡散スクリーンにおいて2つの連続した横並びの画像を形成するよう、又は重なっており、拡散スクリーンにおいて水平方向及び垂直方向に1/2ピクセルだけシフトされる2つの画像を形成するよう、構成される。
【0008】
特許文献12に記載されている従来技術は、1対の反射性ホログラフィック光学素子(HOE)を用いて、ホログラフィック分散補正を達成し、また観察者の視野内に広帯域表示ソースの仮想画像を投影する。特許文献13に記載されている従来技術もまた、一方が透過性であり他方が反射性である1対のホログラフィック光学素子(HOE)を用いて、車両のフロントガラスに画像を投影する。
【0009】
特許文献14に記載され、図1-5に図示されている従来技術は、ファセット反射表面を備えた車両のダッシュボード(図1-5の18)に画像を投影するよう構成された、車両のフロントガラスの上側に設置された画像プロジェクタ(図1-5の14)を使用し、ここで上記ファセット反射表面は、画像プロジェクタからの画像を車両のフロントガラスに反射するよう構成される。車両のフロントガラスの表面は、ダッシュボードのファセット表面それぞれからの画像を視聴者に向かって反射するように配向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7,623,560号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof, Nov. 24, 2009.
【文献】米国特許第7,767,479号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国特許第7,829,902号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国特許第8,049,231号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国特許第8,098,265号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国公開特許第2010/0066921号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国公開特許第2012/0033113号、El-Ghoroury et al, Quantum Photonic Imager and Methods of Fabrication Thereof
【文献】米国特許第4,218,111号、Withrington eta al, Holographic Heads-up Displays, Aug. 19, 1980
【文献】米国特許第6,813,086号、Bignolles et al, Head Up Display Adaptable to Given Type of Equipment, Nov. 2, 2004
【文献】米国特許第7,391,574号、Fredriksson, Heads-up Displays, June 24, 2008
【文献】米国特許第7,982,959号、Lvovskiy et al, Heads-up Displays, Jul. 19, 2011
【文献】米国特許第4,613,200号、Hartman, Heads-Up Display System with Holographic Dispersion Correcting, Sep. 23, 1986
【文献】米国特許第5,729,366号、Yang, Heads-Up Display for Vehicle Using Holographic Optical Elements, Mar. 17, 1998
【文献】米国特許第8,553,334号、Lambert et al, Heads-Up Display System Utilizing Controlled Reflection from Dashboard Surface, Oct. 8, 2013
【文献】米国特許第8,629,903号、Seder et al, Enhanced Vision System Full-Windshield HUD, Jan. 14, 2014
【非特許文献】
【0011】
【文献】B. H. Walker, Optical Design of Visual System, Tutorial tests in optical engineering, published by The international Society of Optical Engineering (SPIE), pp. 139-150, ISBN 0-8194-3886-3, 2000
【文献】C. Guilloux et al, Varilux S Series Braking the Limits
【文献】M. Born, Principles of Optics, 7th Edition, Cambridge University Press 1999, Section 5.3, pp. 236-244
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡単に説明した従来技術のHUDシステム、及び引用されている従来技術に記載されている複数の他のHUDシステムにおいて共通しているのは、システムの高いコスト及び大きな体積サイズである。更に、従来技術のHUDシステムはいずれも、様々な自動車及び他の車両のサイズ及び価格帯に適合させるために、サイズ及びコストに関して拡大縮小することができない。従って本発明の目的は、単一の画像形成ソースを用いるHUDシステムよりも体積が大幅に小さなHUDシステムを実現するために、複数の発光性マイクロスケールピクセルアレイイメージャを使用する、ヘッドアップディスプレイに関する方法を紹介することである。更に本発明の目的は、様々な自動車及び小型車両のサイズ及び価格帯に適合させるために拡大縮小できる体積及びコスト的側面を有するモジュール式HUDシステムを実現できるようにするために、複数の発光性マイクロスケールピクセルアレイイメージャを利用する、新規の分割射出瞳HUDシステムの設計方法を紹介することである。本発明の更なる目的及び利点は、添付の図面を参照して進行する、本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【0013】
以下の説明では、異なる図面においても、同様の要素には同様の図面参照符号を使用する。詳述される構造及び設計要素等の、本説明中で定義される事物は、例示的実施形態の包括的な理解を助けるために提供される。しかしながら本発明は、これらの具体的に定義された事物を用いることなく実践できる。また、公知の機能又は構造については、これらが不要な詳細により本発明を不明瞭にすることになるため、詳述しない。本発明を理解するために、及び本発明をどのように実地で実施できるのかを確認するために、本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して、単なる非限定的な例として以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】図1-1は、凹面HOEリフレクタをコンバイナ及びコリメータとして使用することにより、コリメーション光学系を最小化し、HUDシステムの体積に関する側面を低減する、従来技術のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを示す。
図1-2】図1-2は、リレー光学系(REL)モジュールを用いて、収束コンバイナ(CMB)ミラーの焦点面に中間画像を配信し、システムの瞳孔を定義する、従来技術のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを示す。
図1-3】図1-3は、拡散表面上に投影するための投影レンズ(3)を画像ソースとして使用し、また半透明コリメートミラーを使用する、従来技術のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを示す。
図1-4】図1-4は、2つの液晶ディスプレイ(LCD)パネルからなる画像形成ソースを用いて、コリメーション光学系モジュールの焦点面に配置された拡散スクリーン上に中間画像を形成する、従来技術のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを示す。
図1-5】図1-5は、ファセット反射表面を備えた車両のダッシュボードに画像を投影するよう構成された、車両のフロントガラスの上側に設置された画像プロジェクタを使用し、ここで上記ファセット反射表面は、画像プロジェクタからの画像を車両のフロントガラスに反射するよう構成される、従来技術のヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを示す。
図2図2は、本発明の例示的なモジュール式HUD(modular HUD:MHUD)システムを示す。
図3図3は、図2のMHUDシステムの設計パラメータと制約との間の関係を示す。
図4図4は、図2の実施形態のMHUDアセンブリを備えるHUDモジュールの光学的設計態様及び光線トレースダイアグラムを示す。
図5図5は、図2の実施形態のMHUDアセンブリを備えるHUDモジュールの光学性能を示す。
図6図6は、図2の実施形態のMHUDシステムのMHUDアセンブリ設計例の多視点斜視図を示す。
図7図7は、図2の実施形態のMHUDシステムのインタフェース及び制御用電子部品設計要素(基板)の機能ブロック図を示す。
図8図8は、図2の実施形態のMHUDシステム200の、新規の分割アイボックス設計方法を示す。
図9図9は、準小型自動車のダッシュボードに設置される、図6に示されているMHUDアセンブリ設計例の実際の体積を示す。
図10図10は、太陽光の負荷を含む、本発明のMHUDシステムの光線経路を示す。
図11A-11D】図11A、11Bはそれぞれ、本発明の多画像HUDシステムの実施形態のソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ(即ちディスプレイ要素)の正面図及び側面図を示し、これらは、奇数行のピクセルが、一般にイメージャの表面から外向きに投影される第1の画像を生成することになる出力を有することを示し、また偶数行のピクセルが、一般に第1の画像に対してある程度下方に投影される第2の画像を生成することになる出力を有することを示す。 図11C、11Dはそれぞれ、本発明の多画像HUDシステムの実施形態のソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの正面図及び側面図を示し、これらは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ(即ちディスプレイ要素)の上側領域のピクセルが、上述の第2の画像を生成することになる出力を有し、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャの下側領域のピクセルが、上述の第1の画像を生成することになる出力を有することを示す。
図12図12は、本発明の多画像HUDシステムの実施形態の複数の光線経路を示す。
図13図13は、準小型自動車のダッシュボードに設置される本発明の多画像HUDシステムの実施形態の低体積パッケージ設計における、近視野仮想画像及び遠視野仮想画像の公称位置を示す。
図14図14は、複数の非テレセントリック屈折マイクロ光学素子を備える本発明のディスプレイ要素の側面図を示す。
図15図15は、複数の傾斜屈折マイクロ光学素子を備える本発明のディスプレイ要素の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の以下の詳細な説明における「一実施形態(one embodiment)」又は「ある実施形態(an embodiment)」に関する言及は、該実施形態に関連して説明されるある特定の特徴部分、構造又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。この詳細な説明中の様々な箇所に「一実施形態では(in one embodiment)」という句が出現するが、これら全てが必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。
【0016】
近年、発光性マイクロスケールピクセルアレイイメージャデバイスの新たな分類が紹介されている。これらのデバイスは、必要な全ての画像処理駆動回路を含む極めて小さなデバイスサイズで、高い輝度、極めて迅速な多色光強度、及び空間変調機能を備える。1つのこのようなデバイスのソリッドステート光(solid state light:SSL)放出ピクセルは、発光ダイオード(LED)又はレーザダイオード(LD)であってよく、これらのオン/オフ状態は、上記イメージャの発光性マイクロスケールピクセルアレイが結合されたCMOSチップ(又はデバイス)に内包されている、駆動回路によって制御される。このようなイメージャデバイスの発光性アレイを構成するピクセルのサイズは典型的には、およそ5~20マイクロメートルの範囲内であり、上記デバイスの典型的な発光表面積はおよそ15~150平方ミリメートルとなる。発光性マイクロスケールピクセルアレイデバイス内のピクセルは、典型的にはそのCMOSチップの上記駆動回路によって、空間的、色的及び時間的に個別にアドレス指定できる。このようなイメージャデバイスによって生成される光の輝度は、かなり低い消費電力において、数百万cd/mに到達できる。このようなデバイスの一例は、以下に記載される例示的実施形態において言及されるQPI(登録商標)イメージャ(特許文献1~7を参照)である。しかしながら、QPI(登録商標)イメージャは、本発明で使用できるデバイスのタイプの単なる一例であることを理解されたい。(「QPI」は、Ostendo Technologies, Inc.の登録商標である。)よって以下の説明では、QPI(登録商標)イメージャに関するいずれの言及は、使用可能なソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ(これ以降、単に「イメージャ」)の1つの具体例として開示される実施形態の特定を目的としたものであり、本発明のいずれの限定を目的としたものではないことを理解されたい。
【0017】
本発明は、上述のようなイメージャの発光性マイクロピクセルアレイデバイス固有の能力を、新規の分割射出瞳HUDシステムアーキテクチャと組み合わせることによって、例えば自動車用HUDといったコスト及び体積に関する制約が重要な用途において容易に使用できる、低コストで体積が小さなモジュール式HUD(MHUD)システムを実現する。QPI(登録商標)イメージャ等のイメージャの発光性高輝度マイクロエミッタピクセルアレイと、本発明の分割射出瞳HUDアーキテクチャとの組み合わせにより、高輝度の周囲の日光の中であっても効果的に動作するHUDシステムを、様々な車両サイズ及びタイプのダッシュボード又は機器パネルの背後にフィットさせるために十分に小さな体積とすることができる。(本明細書中で使用される場合、用語「車両(vehicle)」は、最も一般的な意味で使用されており、陸上、水上、水中、及び空中での移動を含むがこれらに限定されない、移動を行ういずれの手段を含む。)このようなイメージャによって実現可能な分割射出瞳HUDアーキテクチャのコストの低さ及びモジュール性により、様々な車両の体積に関する制約にフィットするよう調整可能なモジュール式HUDシステムを実現できる。HUDシステムの長所は、以下の複数の段落に記載される実施形態の文脈における、本明細書中で提供される詳細な説明から、更に明らかになるだろう。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態のモジュール式HUD(MHUD)システム200の設計コンセプトを示す。図2に示すように、この好ましい実施形態では、本発明のMHUDシステム200は、複数のモジュール215で構成されたMHUDアセンブリ210で構成され、上記モジュール215は一体に組み立てられてMHUDアセンブリ210を形成し、これにより各モジュール215は、単一のイメージャと、関連する光学系220及び凹面ミラー230とで構成される。図2に示すように、関連する光学系220を備えた単一のイメージャそれぞれから放出された光は、これに関連する凹面ミラー230によってコリメート、拡大及び反射された後、一部が車両のフロントガラス240から離れるように反射されて仮想画像260を形成し、これは、車両のドライバー(操縦者)の公称頭部位置にあるアイボックスセグメント255内において視認可能である。図2に示すように、MHUDアセンブリ210の各モジュール215は、いずれのある時点において、車両のフロントガラス240から同一の位置に、ただしそれぞれの対応するアイボックスセグメント255に、同一の仮想画像260を形成するように配置され、これにより、MHUDアセンブリ210の複数のモジュール215が全体として、MHUDシステム200の集合アイボックス250を形成する。即ち、仮想画像260は、各アイボックスセグメント255からはその一部が視認可能であり、集合アイボックス250においてその全体が視認可能である。従って、MHUDシステム200のアイボックスセグメント255の全体のサイズは、MHUDアセンブリ210を構成するモジュール215の適切な個数を選択することによって調整でき、このアイボックスセグメント及びモジュールの個数は、ユーザ定義可能なものである。MHUDアセンブリ210の各モジュール215は、いずれのある時点において同一の仮想画像260を形成するよう配置されるものの、これらの画像は当然のことながら時間と共に変化することになり、例えば燃料ゲージ画像のようにゆっくりと変化してもよく、又はGPSナビゲーションシステムの表示画像のディスプレイにおけるように迅速に変化してもよいが、本発明のMHUDシステム200は、画像データが典型的なビデオレートで利用可能である場合、少なくともそのようなレートまでの周波数で動作してよい。
【0019】
MHUDシステム200のこの好ましい実施形態では、MHUDアセンブリ210のモジュール215の各アイボックスセグメント255は、対応する凹面ミラー230が反射した光線束の射出瞳に位置する。MHUDシステム200の集合アイボックス250は事実上、MHUDアセンブリ210のモジュール215のアイボックスセグメント255の重複によって形成された、1つの分割射出瞳アイボックスである。本発明のMHUDシステム200の、この分割射出瞳の設計方法について、以下の複数の段落で更に詳細に説明する。
【0020】
本発明のMHUDシステム200のこの好ましい実施形態では、MHUDアセンブリ210は複数のモジュール215で構成され、上記モジュール215は一体に組み立てられてMHUDアセンブリ210を形成し、これにより各モジュール215は、QPI(登録商標)イメージャ等のイメージャ又はOLEDデバイス等の他の好適な発光構造体と、関連する光学系220及び凹面ミラー230とで構成される。本発明のこの実施形態のMHUDシステム200のMHUDアセンブリ210及びその各モジュール215の設計方法について、以下の段落で更に詳細に説明するが、その前に、本発明のMHUDシステム200の関連する利点及び関連する設計パラメータのトレードオフについて説明する。
【0021】
MHUDシステム200の光学設計パラメータのトレードオフ
本発明のMHUDシステム200の利点を理解するために、典型的なHUDシステムの基礎となる設計のトレードオフ、及びこれに関連する設計パラメータ間の関係について説明することが重要であると考えられる。HUDシステムが生成した仮想画像は、典型的には自然のシーンの上に重畳され、これにより、ドライバーがその視界及び注意を道路又は車両の外部環境から外す必要なしに、車両を操縦する視聴者に車両の動作パラメータを視覚的に認識させ、また例えばナビゲーション情報等の重要な情報を提供する。HUDシステムの設計において考慮するべき重要なパラメータとしては:集合アイボックスの目標サイズ;望ましい視野(FOV);形成される仮想画像のサイズ;仮想画像の解像度;及びシステムの体積に関する要件が挙げられる。これらの設計パラメータ及び制約の間の関係を図3に示す。
【0022】
本発明のモジュール式HUD(MHUD)が体積の削減を実現する方法
図3を参照すると、MHUDシステム200のイメージャ220のサイズの削減は、より小さな有効焦点距離(effective focal length:EFL)につながり、これは上記システムの特徴的な光トラック長であり、一般にシステムの体積の削減に寄与する。しかしながら、アイボックスのサイズが維持されている場合、イメージャのアパーチャのサイズの削減は、より低いシステムのF/#につながり、これは光学的な複雑性の上昇を伴う。これは一般に、より大きなシステムの体積をもたらす。図2に示すMHUDシステム200の設計コンセプトに関しては、各モジュール215に関するアイボックスセグメント255のサイズを、イメージャ220のサイズと共に拡大縮小することにより、光学的な複雑性の上昇を回避する。これは、イメージャ220のサイズ比による各モジュール215の体積の拡大縮小につながる。複数のモジュール215を組み合わせて、任意にサイズ設定された集合アイボックス250を提供できるMHUDアセンブリ210を形成する。本発明のMHUDシステム200の、複数のセグメントに分割されたアイボックスの新規の設計コンセプトは、視聴者のアイボックスに形成されるシステムの射出瞳を複数のセグメントに分割することによって実現され、上記セグメントはそれぞれ、本発明のMHUDシステム200の集合アイボックス250を構成するアイボックスセグメント255のうちの1つに対応する。よって、本発明のMHUDシステム200の、このような分割射出瞳設計方法は、同一サイズのアイボックスを提供する従来技術のHUDシステムに比べて小さな、全体の体積に関する側面を達成する。これは望ましいことに、HUDの全体の体積、複雑性及びコストの削減につながる。ここで開示される本発明のMHUDシステム200の分割射出瞳設計方法の他の利点について、以下の記載において説明する。当然のことながら、各モジュールはいずれのある時点において同一の画像を発するため、車両の操縦者は、操縦者がどの1つ以上のアイボックスセグメント255を見ているかとは無関係に、同一の位置に同一の仮想画像を見ることになる。
【0023】
ミラーリフレクタを使用する従来技術のHUDシステム(特許文献8~10)の体積の主要な寄与因子は、凹面ミラーとして識別されている。ミラー自体のサイズが大きいことに加えて、画像ソースのサイズもそれに比例して大きくなり、これは、LCDパネルといった大きなサイズのイメージャの使用、又は拡散スクリーンに投影される大きなサイズの中間画像の形成を要求し、後者は、プロジェクタイメージャ及びこれに関連する投影光学系を組み込むために、更に大きな体積を追加する。上記の記載において説明したように、本発明のMHUDシステム200は、一体に組み立てられてMHUDアセンブリ210の全体としてのリフレクタ235(これはサイズが極めて小さく、極めて小さな光トラック長を達成する)を形成する比較的小さなサイズの凹面ミラー230をそれぞれ用いる複数のモジュール215で構成されたMHUDアセンブリ210を使用することによって、メインリフレクタとして単一の凹面ミラーを使用する従来技術のHUDシステムに比べて、大幅に小さな体積に関する態様を達成する。アパーチャのサイズが小さなイメージャ220を用いたMHUDアセンブリ210により、アパーチャのサイズが小さな凹面ミラー230の使用が可能となり、上記凹面ミラー230は光トラック長が小さく、これは、本発明の、体積が大幅に小さく、かつ体積に関して効率が良いMHUDシステム200をもたらす。
【0024】
本発明のMHUDシステム200の設計は、典型的には単一の大きなミラーによって生成される大きなコリメート済みビームを、例示的実施形態では3つの等しいサイズのコリメート済みサブビームへと分割することによって機能する。各サブビームは、モジュール215の光学サブシステムによって生成される。その結果、F/#、光学的複雑性、及び焦点距離(EFL)(又は光トラック長)が低減され、結果としてシステムの物理的な体積エンベロープが削減される。図4は、MHUDアセンブリ210を構成するモジュール215の光学的設計態様及び光線トレース図を示す。図4に示すように、ある好ましい実施形態のモジュール215は、1つのイメージャと、これに関連する光学系220及び凹面ミラー230とで構成される。図4に示す実施形態では、イメージャ410に関連する光学系420は別個のレンズ光学素子として示されているが、本発明のある代替実施形態では、イメージャに関連する光学系420を、イメージャ410の発光表面の上部に直接取り付けることにより、一体型のイメージャアセンブリ220を形成してよい。図4に示すように、各モジュール215において、反射凹面ミラー230は、これに対応するイメージャ(又は他のイメージャ)220が生成した画像を拡大及びコリメートして、集合アイボックス250の1つのアイボックスセグメント255を形成するが、図4のイメージャ410に関連する光学素子420は、反射凹面ミラー230に起因する軸外歪み及び傾斜収差のバランスを取る。
【0025】
図5は、MHUDアセンブリ210のモジュール215の光学性能を示す。図5に示すように、イメージャ410に関連する光学素子420の役割は、反射凹面ミラー230に起因する軸外歪み及び傾斜収差のバランスを取ることによって、変調伝達関数(modulation transfer function:MTF)を十分に高いレベルに維持したまま画像のスイミング効果(swimming effect)を最小化することである。完全を期すために、画像のスイミング効果は典型的には、ミラーの収差によって引き起こされる光学歪みによる、視聴者の瞳に入る光の方向の変動によって引き起こされ、またこれは、視聴者の頭がHUDシステムのアイボックス内を動き回る(又はアイボックスを注視する)際に、仮想画像の知覚可能な誤った運動(「スイミング効果」として知られる)をもたらす(特許文献6)。極端な場合には、仮想画像の過度のスイミング効果は、人間の視覚及び知覚システムの前庭に関する側面と眼球運動に関する側面との間の衝突によって引き起こされる、乗り物酔いのような感覚、めまい又は吐き気につながる場合がある(非特許文献1、2)ため、HUD等の両眼用光学系におけるスイミング効果を最小化することは極めて重要である。
【0026】
本発明のMHUDシステム200の分割射出瞳法の別の利点は、上記方法が、大型の光アパーチャを備えた単一のミラーを使用する従来技術のHUDシステムに比べて、スイミング効果の大幅な低減を達成することである。反射凹面ミラー230の小さな光アパーチャの収差は、従来の単一ミラーHUDシステムにおいて使用される、光アパーチャが比較的大きなミラーの収差に比べて、はるかに小さい。スイミング効果は、HUD反射ミラーに起因する収差によって引き起こされる光学歪み(又は光線方向の偏向)の大きさに正比例するため、本発明のMHUDシステム200の光アパーチャが小さな複数の凹面ミラー230は、従来技術のHUDシステムに比べて、大幅に小さなスイミング効果を達成する。更に、MHUDモジュール215のアイボックスセグメント255間の角度重複(図8の説明において更に詳細に説明する)により、仮想画像260のいずれの点の知覚が、複数のMHUDモジュール215からの光学的寄与を組み込んだものとなる。結果として、複数のMHUDモジュール215の個々の凹面ミラー230の収差によって引き起こされる光学歪み(又は光線方向の偏向)は、仮想画像260のいずれの点において平均化される傾向を有し、結果として、MHUDシステム200の視聴者が知覚する全体的なスイミング効果が低減される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、MHUDアセンブリ210のイメージャ220は、ヒト視覚システム(human visual system:HVS)に可能な解像度よりも高い解像度を有し、この追加の解像度は、凹面ミラー230に起因する収差によって引き起こされる残留光学歪みのデジタル画像ワーピング事前補償に専用のものである。典型的なHUD視聴体験では、仮想画像はおよそ2.5mの距離に形成される。HVSの側方視力は、およそ200マイクロラジアンである。このような距離において、HVSは、およそ2500×0.0002=0.5mmピクセルの解像度を有することができ、これは10インチの対角線を有する仮想画像260に関する、およそ450×250ピクセルの解像度に相当する。例示的なMHUDアセンブリ210で使用されるイメージャ220は、同一サイズの光アパーチャによって、この限界よりはるかに高い解像度、例えば640×360ピクセルの解像度、又は更に1280×720ピクセルの解像度を提供できる。同一サイズの光アパーチャによってより高い解像度を提供するイメージャ220により、同一サイズの光アパーチャを有する凹面ミラー230の使用が可能となり、従ってMHUDアセンブリ200の体積に関する利点が維持される。イメージャ220の追加の解像度により、デジタル画像ワーピング事前補償の使用が可能となるが、これは、仮想画像260における達成可能な最大解像度、及び体積に関する上述のものと同一の利点を維持したまま、凹面ミラー230の収差に起因する光学歪み、及びその結果としてのスイミング効果を実質的に排除する。
【0028】
各反射凹面ミラー230は、非球面又は自由形状とすることができ、これにより、凹面ミラー230の非球面又は自由形状因子は、凹面ミラー230の光学収差、及び必要な場合はフロントガラスの曲率が最小となるように選択される。なお、各イメージャ220の位置は好ましくは、これらに関連する凹面ミラー230に関して軸対称であり、これにより、凹面ミラー230のうちのいずれの2つの隣接する縁部における収差のバランスが最適となる(ある程度等しくなる)ことが保証される。これにより、MHUDシステム200の集合アイボックス250の複数のアイボックスセグメント255間の、仮想画像260の均一な視聴遷移が保証されるため、これは本発明のMHUDシステム200の設計の重要な側面である。
【0029】
図6は、MHUDアセンブリ210の多視点斜視図を示す。図6に示すように、MHUDアセンブリ210は、エンクロージャ600内で一体に組み立てられた3つの反射凹面ミラー230で構成される。3つの凹面ミラー230は、別個に製作した後でエンクロージャ600内に一体として組み付けることも、単一の部品として製作した後でエンクロージャ600内に組み付けることもできる。3つの凹面ミラー230は、別個に組み付けられるか又は単一の光学部品として組み付けられるかにかかわらず、エンボス加工されたポリカーボネートプラスチックを用いて製作してよく、光学表面はその後、スパッタリング技法を用いて、銀又はアルミニウム等の反射性金属の薄層でコーティングされる。図6に示すように、エンクロージャの後部側壁は3つの別個のセクション610で構成され、これらにはそれぞれ光学窓615が組み込まれ、この光学窓615は、後部側壁セクション610を、それぞれが凹面ミラー230を有した状態で一体に組み立てる際に、それぞれの凹面ミラー230の光軸と整列される。図6の側方斜視図に示すように、各後部側壁セクション610の上縁部617は、凹面ミラー230に向かって角度をつけられており、これにより、後部側壁セクション610の角度付き縁部表面617上に設置されるイメージャ220を、各凹面ミラー230の光軸と整列させることができる。
【0030】
図6の後方斜視図に示すように、後部側壁セクション610は、背面プレート630の片側上において一体に組み付けられ、MHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器(プリント回路基板)620が、背面プレート630の反対側に設置される。更に、背面プレート630には、MHUDアセンブリ210のイメージャ220及びインタフェース電子機器素子620が生成した熱を放散するための温度冷却フィンも組み込まれる。図6の後方斜視図に示すように、各イメージャ220は、イメージャ220を制御用及びインタフェース電子機器620に接続する柔軟な電子基板618上に設置される。
【0031】
図6の後方斜視図に示すように、凹面ミラー230及び後部側壁セクション610のペアそれぞれの境界縁部の中央には、典型的にはフォトダイオードである光検出器(photo detector:PD)640を組み込んでよく、各光検出器640は、イメージャ220から各凹面ミラー230へと放出された光を検出するために位置決め及び配向される。典型的には、各モジュール内に、放出される光の各色に対して1つずつ、3つのフォトダイオードが使用される。光検出器(PD)640の出力は、MHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器620に接続され、インタフェース電子機器素子620のハードウェア及びソフトウェア設計要素内に実装される(以下で説明される)均一性制御ループへの入力として使用される。MHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器620に入力として提供されるのは、典型的にはほとんどの車両のダッシュボードの輝度制御の集積部品である、環境光検出器センサ660の出力もである。
【0032】
MHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器620には、図7のブロック図に示されているハードウェア及びソフトウェア設計機能要素が組み込まれ、これらは、MHUDインタフェース機能710、制御機能720、及び均一性ループ機能730を含む。MHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器620のMHUDインタフェース機能710は、典型的にはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実装され、車両のドライバー支援システム(Driver Assistance System:DAS)からの画像入力715を受信して、この画像に、制御機能720によって提供される色及び輝度補正735を組み込んだ後、画像入力744、745、746をMHUDアセンブリ210のイメージャ220に提供する。MHUDアセンブリ210の3つのイメージャ220に同一の画像入力715を提供してよいが、MHUDインタフェース機能710は、制御機能720から受信した色及び輝度補正735に基づいて、各イメージャ220に固有の色及び輝度補正をそれぞれの画像入力744、745、746に組み込む。
【0033】
集合アイボックス250の複数のセグメント255にわたって、色及び輝度の均一性を保証するために、制御用及びインタフェース電子機器620の均一性ループ機能730は、MHUDアセンブリ210の各モジュール215の光検出器(PD)640から入力信号754、755、756を受信し、MHUDアセンブリ210の各モジュール215に関連する色及び輝度を計算した後、集合アイボックス250の複数のセグメント255にわたって色及び輝度をより均一にするために必要な色及び輝度補正を計算する。これは、MHUDアセンブリ210を最初に組み立てる際に制御用及びインタフェース電子機器620のメモリにおいて実施及び保存される、初期較正ルックアップテーブルの支援によって達成される。次に、均一性ループ機能730によって計算された色及び輝度補正を制御機能720に提供し、制御機能720はこれらの補正を、環境光センサ650から受信した入力、並びに外部色及び輝度調整入力コマンド725と組み合わせて、色及び輝度補正735を生成し、続いてこれを、MHUDインタフェース機能710によって画像データに組み込み、その後、補正された画像データが、画像入力744、745、746として、イメージャ220に提供される。環境光センサ650から受信した入力を色及び輝度補正に組み込むにあたって、制御機能720は、車両の外部光の輝度に比例して、又は車両の外部光の輝度に関連して、ヘッドアップディスプレイの仮想画像の輝度を調整する。なお、本明細書中で使用される「画像データ(image data)」は、ヘッドアップディスプレイへの入力として受信されるか、イメージャに提供されるか、又は他のいずれの形態であるかにかかわらず、いずれの形式の画像情報を意味する。
【0034】
上述のように、MHUDシステム200の一実施形態は、仮想画像260においてHVSが有することができる最大の解像度よりも高い解像度を有するイメージャ220を使用し、また、イメージャ220への画像入力のデジタルワーピングによって引き起こされる光学歪み及びスイミング効果を排除する又は大幅に低減するための手段を組み込む。該実施形態のMHUDシステム200のMHUDアセンブリ210のMHUDインタフェース機能710には、各凹面ミラー230の残留光学歪みを事前補償するために必要なデジタル画像ワーピングパラメータを識別するデータがそれぞれ組み込まれた複数のルックアップテーブルも、組み込まれていてよい。これらのパラメータをMHUDインタフェース機能710が使用して、各イメージャ220への画像データが、対応する凹面ミラー230の残留歪みを事前補償するように、各イメージャ220のデジタル画像入力をワーピングさせる。MHUDインタフェース機能710のルックアップテーブルに組み込まれたデジタル画像ワーピングパラメータは、MHUDアセンブリ210の光学設計シミュレーションによって事前に生成された後、デジタル画像ワーピング事前補償がMHUDインタフェース機能710によって適用された後の各モジュール215の残留光学歪みの測定に基づく光学試験データによって補強される。次に、結果として得られたデジタルワーピングされたデータを、制御機能720によって提供された色及び輝度補正735と組み合わせて、色及び輝度が補正され、歪みが事前補償された画像データを、MHUDアセンブリ210のイメージャ220への画像入力744、745、746として提供する。MHUDシステム200のこのような設計方法により、凹面ミラー230によって引き起こされる残留光学歪み及びその結果としてのスイミング効果を大幅に低減又は完全に排除でき、これにより、歪みのないMHUDシステム200を実現できる。
【0035】
図6の斜視図に示すように、MHUDアセンブリ210の上側はガラスカバー430であり、これは、車両のダッシュボードの上部表面におけるMHUDアセンブリ210の光学インタフェース窓として機能し、またイメージャ220における日光による熱負荷を防止するために日光の赤外線放出を減衰させるフィルタとして機能する。使用されるガラスは、関心対象の光の波長に対する有意な透過性も有するように選択するべきである。
【0036】
MHUDアセンブリ210の上記設計方法は、ヒト視覚システム(HVS)の特徴を活用して、MHUDアセンブリ210の設計実装及び組み立て許容誤差を簡略化する。まず、眼の瞳の直径がおおよそ5mm(日中は3~5mm、夜間は4~9mm)であること、及びその結果としての、仮想画像260を視聴する際の側方視力により、MHUDアセンブリ210の凹面ミラー230間に、識別できないほど小さな間隙が許容され、これは幅1mmにも達する場合がある。第2に、眼の角度差調節限界がおよそ0.5°であることにより、MHUDアセンブリ210の凹面ミラー230間に、小さな角度傾斜が許容され、これはおよそ0.15°に達する場合がある。このように傾斜及び間隙が許容されることにより、MHUDアセンブリ210の凹面ミラー230に関する機械的整列の許容誤差の要件が大幅に緩和され、従ってMHUDアセンブリ210のための、コスト効率が極めて高い製造及び組み立てアプローチを実現できる。いずれの更なる傾斜及び/又は整列要件にも、通常はソフトウェアによって容易に対応できる。
【0037】
図8は、本発明のMHUDシステム200の新規の分割アイボックス設計を示す。図8の図は、MHUDシステム200の集合アイボックス250と仮想画像260との間の関係を示すことを意図したものである。図8はまた、MHUDシステム200によって表示される、例示的なオブジェクト810(仮想画像260上に示された矢印)も示す。MHUDシステム200の設計において、各アイボックスセグメント255は典型的には、そのそれぞれのモジュール215の射出瞳に位置決めされることになる。その結果、各アイボックスセグメント255内において視聴者の眼に対して提示される画像情報は、その角度空間内となる。よって、各アイボックスセグメント255内において分割されて視聴者に提示される仮想画像260の矢印型オブジェクト810は、典型的には、視聴者の頭部が各アイボックスセグメント255の中央領域内に位置決めされているときには、視聴者にとって完全に視認可能となるが、視聴者の頭部がアイボックスセグメント255の右側又は左側に移動すると、それぞれ仮想画像260の矢印型オブジェクト810の先端部又は尾部が次第にぼやける(又は消えてゆく)ことになる。MHUDシステム200の設計において、図6の斜視図に示すように、モジュール215を一体としてMHUDアセンブリ210内に統合する際、モジュール215のアイボックスセグメント255は、図8に示すように重複させられ、これにより、MHUDシステム200の集合アイボックス250が生成される。よって、MHUDシステム200の集合アイボックス250は、複数のモジュール215のアイボックスセグメント255を形成する射出瞳エリアの重複によって形成され、従って、集合アイボックス250内において視聴者の眼に対して提示される画像情報は、MHUDモジュール215の複合角度視野全体にわたって延在する、仮想画像260の角度多重化ビューとなる。図8に示すように、仮想画像260の矢印型オブジェクト810は、MHUDシステム200の集合アイボックス250を画定するアイボックスセグメント255の重複エリア内で完全に視認可能(又は視聴可能)となり、ここで仮想画像260の矢印型オブジェクト810は、視聴者の頭部が集合アイボックス250の周縁領域の右側又は左側それぞれへと移動すると、次第にぼやける(又は消えてゆく)。
【0038】
モジュール215のアイボックスセグメント255間の重複のサイズは、それらの角度的ぼやけプロファイル(図8の820)に左右され、MHUDシステム200の集合アイボックス250の最終的なサイズを決定する。後者は、その中において仮想画像260を所望の輝度均一性で完全に視認可能(又は視聴可能)な、集合アイボックス250のエリア境界又は寸法として定義される。図8はまた、モジュール215の重複したアイボックスセグメント255の全面積にわたる、MHUDアセンブリ210の結果的な角度ぼやけプロファイルのシールドを示す。図8に示すように、視聴者に知覚される仮想画像260の輝度は、各モジュール215からの輝度寄与成分Λ、Λ、Λ(左、中央、右)を含む。集合アイボックス250の境界を画定するための基準は、その中において仮想画像260の輝度が選択された領域にわたって所与の閾値λ(例えば25%未満)以内で均一となる、アイボックスセグメント255の重複のエリアAであり、即ちVar(Λ+Λ+Λ)≦λ(所望の均一性閾値)である。図8に示す集合アイボックス250の境界を画定する上記基準、及びモジュール215のアイボックスセグメント255の重複により、仮想画像260にわたる、知覚される輝度は、モジュール215のうちの1つからの少なくとも50%の寄与成分を含む。これは、上述の基準で定義された集合アイボックス250の境界内のいずれの場所においても、各モジュール215が仮想画像260の知覚される輝度の少なくとも50%を与えることを意味する。MHUDシステム200のこの設計アプローチを用いる場合、仮想画像260の所望の輝度均一性は、集合アイボックス250のサイズを画定する基準となる。この設計基準は、120mm幅の集合アイボックス250を形成するための、均一性閾値λ=25%を用いる図8の設計例に示されている。図8に示すように、均一性閾値λ=37.5%を用いると、およそ150mmと測定される、およそ25%幅広の集合アイボックス250が画定される。
【0039】
図8に示すように、MHUDシステム200の集合アイボックス250の右側及び左側を超えて延在するアイボックスセグメントのエリアでは、仮想画像の矢印型オブジェクト810は、視聴者の頭部がこれらの各領域内へと移動すると、次第にぼやけるか又は消えてゆく。MHUDシステム200の上記設計アプローチを用いると、図6に示すMHUDアセンブリ210の右側又は左側にモジュール215を追加することによって、上で定義した設計基準によって画定されるMHUDシステム200の集合アイボックス250の横方向幅がそれぞれ右側又は左側へと延長され、これにより、仮想画像260の矢印型オブジェクト810が、所望の輝度均一性で完全に視認可能となる。別のモジュール215の列をMHUDアセンブリ210に追加した場合、集合アイボックス250の高さの延長による同様の効果が、直交方向に発生する。よって、本発明のMHUDシステム200のこのようなモジュール式設計方法を用いると、更なるモジュール215をMHUDアセンブリ210に追加することによって、設計によって選択されたいずれの幅及び高さ寸法を有する、いずれの任意のサイズの集合アイボックス250を実現できる。
【0040】
本質的に、本発明のMHUDシステム200の分割射出瞳モジュール式設計方法により、複数のイメージャ220及び凹面ミラー230の使用が可能となり、これらはそれぞれ比較的小さなアパーチャを有し、またそれぞれ短い光トラック長を達成することにより、従来技術のHUDシステムで使用されている、長い画像ソースの極めて長い光トラック長及び単一のミラーに取って代わる。よって、MHUDモジュール215の、アパーチャが小さいイメージャ220及び凹面ミラー230を合わせると、同一サイズのアイボックスを得るためにより大きな単一の画像ソース及び単一のミラーを使用する従来技術のHUDシステムが達成できるものよりも大幅に小さな、体積に関する側面を実現できる。更に、達成されるMHUDシステム200の集合アイボックス250のサイズは、適切な個数のモジュール215(基本設計要素)を使用することによって調整できる。反対に、MHUDシステム200の体積に関する側面を、車両のダッシュボードエリアで利用可能な体積に適合させながら、同一の利用可能な体積にフィットできる従来技術のHUDシステムが達成可能なものよりも大きなサイズの集合アイボックス250を達成できる。
【0041】
本発明のMHUDシステム200の体積に関する上記利点を例示するために、図6の斜視図は、光アパーチャサイズがそれぞれ6.4×3.6mmである3つのイメージャ220と、光アパーチャサイズがそれぞれ60×100mmの3つの凹面ミラーとを用いて、輝度均一性閾値λ=25%に基づく120×60mmの集合アイボックス250のサイズを達成する、MHUDアセンブリ210の設計寸法を示す。図6に示す設計寸法に基づくと、MHUDアセンブリ210の総体積はおよそ1350cc(1.35リットル)となる。比較を目的として、同一のアイボックスサイズを達成するために、より大きなアパーチャを有する単一のミラー、及び単一のより大きな画像ソースを使用する、従来技術のHUDシステムの総体積は、5000cc(5リットル)を超える。よって、本発明のMHUDシステム200の上記設計方法により、従来技術のHUDシステムに比べて容積に関する効率が3.7倍高い(即ち3.7倍小さな)HUDシステムを実現できる。体積に関するこの利点を可視化するために、図9は、準小型自動車のダッシュボードに設置された、図6に示すMHUDアセンブリ210の設計例の体積を示す。図9に示すように、本発明のMHUDシステム200の、体積に関する効率が高い設計により、従来技術のHUDシステムを簡単にフィットさせられない、極めて制限されたダッシュボード体積に、HUDの機能を追加できる。
【0042】
図10は、MHUDシステム200の光線経路を示す。図10に示すように、また図2において既に説明及び図示したように、MHUDアセンブリ210を構成する3つのイメージャ220はそれぞれ、同一解像度(例えば640×360ピクセル)の同一の画像を、3つの画像で生成し、それぞれ3つの凹面ミラー230による反射後、上述の設計例の120×60mmの集合アイボックス250全体を角度的にアドレス指定して、上述の設計例の125×225mmの仮想画像260にわたって、640×360ピクセルの空間解像度を提供する。
【0043】
図10は、仮想画像260において10,000cd/m2の輝度を生成するための設計要件を示す。およそ20%である典型的なフロントガラスの反射率、及び上述の集合アイボックス250の境界の画定基準により、3つのイメージャ220はそれぞれ、およそ25,000cd/m2の輝度を生成することになる。控え目に見積もっても、MHUDアセンブリ210の3つのイメージャ220と、制御用及びインタフェース電子機器620とは、25,000cd/m2の輝度を生成するために合わせておよそ2Wを消費するが、これは、従来技術のHUDシステムの電力消費のおよそ25%である。
【0044】
図5に示されているMHUDシステム200の性能を参照すると、図5の包囲されたエネルギのプロットは、凹面ミラー230の光アパーチャ(サイズ180マイクロメートル)からのコリメートされた光ビームの、幾何学的ぼかし半径を示す。有効焦点距離が72mmである、図6に示す各モジュール215の設計例を用いると、図5の包囲されたエネルギのプロットに示されている180マイクロメートルにおけるぼかしサイズは、各モジュール215に、イメージャ220のあるピクセルから発されて対応する凹面ミラー230によってコリメートされた光ビームに関して、0.143°の角度的広がりを与える。スイミング効果は、あるピクセルからビーム幅全体にわたる0.143°の角度的広がりに関連し、その一方で解像度(MTF)は、眼の瞳のサイズによってサンプリングされた有効ビーム幅によって決定される。図5のMTFプロットは、直径4mmの典型的な眼の瞳のアパーチャに関して計算された、各モジュール215のMTFを示す。この角度的広がりの角度が小さくなるほど、仮想画像260におけるスイミング半径が小さくなる。MHUDシステム200の集合アイボックス250から2.5mにおいて視聴される仮想画像260に関して、MHUDシステム200の設計例に関する対応するスイミング半径は、6.2mmとなる。単一のミラーを使用し、またMHUDアセンブリ210の設計例のアパーチャ全体のサイズに等しい光アパーチャサイズを有する、従来技術のHUDシステムは、モジュール215の光アパーチャのおよそ2.4倍大きな光アパーチャを有する。収差ぼやけサイズは、アパーチャサイズの3乗に正比例する(非特許文献3)ため、MHUDアセンブリ210の設計例のアパーチャ全体のサイズに等しい光アパーチャサイズを有する従来技術の単一ミラーHUDシステムは、5次収差が偶然にも大きな3次収差を補償した場合(これは設計によって意図的に達成できないものである)には、およそ14.3mmの対応するスイミング半径を有し、そうでない場合、従来技術の単一ミラーHUDシステムは典型的には、およそ39.7mmの対応するスイミング半径を有し、これは、MHUDシステム200の設計例によって達成されるスイミング半径の6.2倍大きい。また、上述の収差の事前補償方法を用いると、MHUDシステム200のスイミング半径は、この設計例に関して明記されている値よりも大きく低下させることができ、又は完全に排除することさえできる。
【0045】
図10はまた、日光の負荷を含む、MHUDシステム200の光線経路も示している。図10に示すように、車両のフロントガラスに当たる日光の逆方向光経路は、集合アイボックス250のエリアに到達し、場合によっては仮想画像260内にグレアを引き起こす。本発明のMHUDシステム200の設計では、集合アイボックス250に到達できる日光の量は、従来のHUDシステムに比べて大幅に小さい。第1に、フロントガラス240の光透過率が80%であるものと仮定すると、太陽からの光線は、フロントガラス240によって、その輝度の最大80%まで減衰させられる。第2に、フロントガラス240を透過して、凹面ミラー230のうちの1つによって対応するイメージャ220に向かって反射された太陽光線は、イメージャ220の光アパーチャの反射防止(anti-reflective:AR)コーティングによって、その輝度の最大5%まで減衰させられ、その後、凹面ミラー230のアセンブリに向かって戻るように反射される。第3に、この逆方向経路の日光は、フロントガラス240によって集合アイボックス250に向かって反射される際に、その輝度の最大20%まで減衰させられる。上述のように、各モジュール215のイメージャ220及び凹面ミラー230は、仮想画像260の輝度に最大50%寄与しているため、日光があたったモジュール215から反射された日光グレアは、仮想画像260において更に50%だけ減衰させられたように見えることになる。
【0046】
従って、この経路減衰分析に基づいて、集合アイボックス250に到達する日光は、その輝度の最大0.4%(1%よりはるかに小さい値)まで減衰させられる。MHUDシステム200が10,000cd/m2の輝度及び0.4%の日光グレアを仮想画像260において生成できることにより、MHUDシステム200は、250,000cd/m2を超える日光の輝度を許容でき、これは、およそ28dBの統一グレア評価(unified glare rating:UGR)(又はグレア対画像強度比)に等しい。言及しておくべきこととしては、ガラスカバー430は赤外線吸収性であるものの、本発明のヘッドアップディスプレイに使用される波長の光に対して透過性であり、これにより、日光の負荷による熱が凹面ミラー230アセンブリによってイメージャ220へと戻されて集中するのが防止される。
【0047】
上述の実施形態では、複数のモジュールを横並びに配置して、アイボックスセグメントの重複を提供することにより、アイボックスセグメント255自体よりも幅が広い集合アイボックス250を提供した。しかしながら所望に応じて、上記の代わりに又は上記に加えて、より高さの高い集合アイボックス250を提供するために、モジュール215のアイボックスセグメントが積層されるようにも、モジュールを配置してよく、ここでも全てのモジュールが、車両の前方の同一の位置に同一の仮想画像を表示する。なお、より高さの高い集合アイボックス250を提供するための積層は一般に、モジュールの積層ではなく、典型的なフロントガラスの傾斜を理由として、アイボックスセグメントの積層は単に、追加のモジュールのための、ダッシュボードの大きく略水平なエリアを用いることによって、達成してよい。
【0048】
また、「図2に示すように、関連する光学系220を備えた単一のイメージャそれぞれから放出された光は、これに関連する凹面ミラー230によってコリメート、拡大及び反射された後、一部が車両のフロントガラス240から離れるように反射されて仮想画像260を形成し、これは、車両のドライバー(操縦者)の公称頭部位置にあるアイボックスセグメント255内において視認可能である」と上述されているが、いずれの実施形態において、凹面ミラーによって達成されるコリメーションの程度は必ず完璧なものではなく、仮想画像が車両のどの程度前方に形成されることになるかを制限するために意図的に設定してよい。いくつかの例では、凹面ミラーを実際に、コリメーションを歪めるように意図的に設計することにより、後続のいずれの収差のソース(フロントガラスの曲率が存在する場合は、これが最も顕著な例である)を相殺してよい。
【0049】
軸外歪み及び傾斜収差、並びに色及び輝度の補正は、図2のMHUDアセンブリ210の制御用及びインタフェース電子機器620において実施できる(図6も参照)ことを既に示した。当然のことながら、各モジュール215からの各画像又は画像セグメントの横方向位置補正もまた、制御用及びインタフェース電子機器620において(又は機械的に)行ってよく、これにより、二重画像又は二重画像部分が表示されなくなる。更に、「輝度補正(brightness correction)」には少なくとも2つの主要な態様があることに留意されたい。第1の最も顕著な態様は、モジュール間の輝度のばらつきの補正であり、これにより、異なる複数のモジュールからの画像の輝度(及び色)が異なるものとならなくなる。しかしながらこれと関連するのは、画像のワーピング及び他の因子が場合によっては個々のモジュール内の複数の画像部分の輝度のばらつきを引き起こし得るという事実であり、ここで、ワーピングによるピクセル間隔の変化が、視認可能な輝度の収差を引き起こし得る。これが発生した場合、各モジュール内の個々のピクセルの輝度は個別に制御可能であるため、必要に応じて、ピクセルの分離が増大するエリアではピクセルの輝度を局所的に上昇させ、ピクセルの分離が減少するエリアではピクセルの輝度を局所的に低下させることができる。最後に、典型的なソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャは正方形イメージャではなく、典型的には寸法が等しくない長方形であることに留意されたい。その結果、イメージャの配向の選択によって、本発明のヘッドアップディスプレイの設計において利用できる更なる変数を提供することもできる。
【0050】
以下の表1は、本発明の特定の実施形態の、イメージャをベースとしたMHUDシステム200の顕著な性能特性を示し、これは、単一のより大きなミラー及び単一のより大きな画像ソースを使用する従来技術のHUDシステムと比較した、本発明の特定の実施形態の性能上の利点を例示している。表1に示すように、本発明の分割射出瞳MHUDシステムは、あらゆる性能カテゴリにおいて、従来のHUDシステムの何倍も優れている。更に、製造許容誤差が緩和されたこと、及びミラーのサイズがより小さいことにより、上述のように、本発明のMHUDシステム200は、同等のアイボックスサイズを有する従来技術よりもはるかにコスト効率が高くなると予想される。
【0051】
【表1】
【0052】
近視野及び遠視野の仮想画像を用いた、多画像ヘッドアップディスプレイシステム
多数のHUDシステムの応用例において、HUDシステムが視聴者に対して複数の仮想画像を、好ましくは追加の情報の安全な視聴可能性を提供しながらも視聴者の注意を運転から逸らすことのないよう、視聴者の正面に、表示することが望ましい。この文脈において、複数の仮想画像をHUDシステムによって表示してよく、ここで例えば、第1の仮想画像を、従来のHUDシステムが典型的に採用している遠視野の距離に表示し、第2の仮想画像を近視野の距離に表示する。好ましくは、これら両方の仮想画像は、HUDシステムの視聴者にとって、頭部を道路から遠ざける必要なしに、及び運転条件に注意を払い続けることができるように、視聴可能である。
【0053】
本開示の発明のある好ましい代替実施形態では、上述の分割射出瞳設計アーキテクチャを、図2に示すように、複数のディスプレイ要素220(即ちイメージャ及び関連する光学系220)と共に用いてよく、これにより、各ディスプレイ要素220は、異なる出力角度の複数の画像を変調するように構成される。
【0054】
本発明の多画像ヘッドアップディスプレイシステムの一態様では、上記システムは、複数のモジュール215を備えてよく、各モジュール215は:ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ(即ちディスプレイ要素)220と;ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220によって生成された第1及び第2の画像をコリメートし、拡大し、車両のフロントガラスに向かって反射することによって、アイボックスセグメント内に視聴可能な第1及び第2の仮想画像を形成するよう構成された、凹面ミラー230とを有する。複数のモジュールは、アイボックスセグメント255を組み合わせることで、ヘッドアップディスプレイが、各モジュール215のアイボックスセグメント255よりも大きな集合アイボックス250を有するものとして提供されるよう、及び集合アイボックス250が車両のドライバーの公称頭部位置にあるように、配置される。本発明の多画像ヘッドアップディスプレイシステムの、この第1の態様では、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220は、第1のマイクロ光学素子のセットそれぞれに関連する第1のピクセルのセットと、第2のマイクロ光学素子のセットそれぞれに関連する第2のピクセルのセットとを備える。第1のマイクロ光学素子のセットは、第1のピクセルのセットそれぞれからの出力を配向して、上述の第1の画像を生成するよう構成され、これにより、集合アイボックス250から第1の距離において視聴可能な第1の仮想画像が生成される。第2のマイクロ光学素子のセットは、第2のピクセルのセットそれぞれからの出力を配向して、上述の第2の画像を生成するよう構成され、これにより、集合アイボックス250から第2の距離において視聴可能な第2の仮想画像が生成される。マイクロ光学素子は、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の表面に対して全体的に傾斜したピクセル出力を実現できるよう構成された、非テレセントリックレンズ又は非テレセントリック光学素子を含んでよい。
【0055】
本発明の多画像ヘッドアップディスプレイシステムの実施形態の、上記第1の態様では、上記第1の距離は遠視野の距離であってよく、上記第2の距離は近視野の距離であってよい。第1のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の、ユーザ定義型の第1のピクセルのセットであってよく、第2のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の、ユーザ定義型の第2のピクセルのセットであってよい。第1のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の奇数行のピクセルであってよく、第2のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の偶数行のピクセルであってよい。第1のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ22の偶数行のピクセルであってよく、第2のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の奇数行のピクセルであってよい。第1のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ22のピクセル面積の少なくとも50%を構成するピクセルであってよく、第2のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の上記ピクセル面積の残部であってよい。第1のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の上側領域又は上側部分であってよく、第2のピクセルのセットは、ソリッドステート発光性ピクセルアレイイメージャ220の下側領域又は下側部分であってよい。
【0056】
図11A~B、11C~Dは、このような多画像光変調ディスプレイ要素220の非限定的な例を示し、これは、ディスプレイ要素220上のピクセルの2Dアレイ内の、所定のピクセル行又はピクセル列のセットといった個々のピクセルの所定のセットに、各ピクセルから発された光を所定の固有の方向に配向するか又は方向に関して変調するマイクロ光学素子を組み込むことによって構成される。
【0057】
図11A~B、11C~Dは、多画像ディスプレイ要素220が2つの画像を同時に変調するよう設計され、第1及び第2の画像がそれぞれディスプレイ要素220の表面から異なる方向に発される例を示す。このようなディスプレイ要素220を、図2の分割射出瞳HUD設計アーキテクチャの文脈で使用する場合、変調された(上述の)第1の画像は、HUDシステムのアイボックス250から遠視野の距離(例えばおよそ2.5m)において視聴可能な第1の仮想画像を生成し、その一方で、変調された第2の画像は、近視野の距離(例えばおよそ0.5m)において視聴可能な第2の仮想画像を生成する。これら2つの視聴可能な仮想画像は、多画像分割射出瞳HUDシステムによって同時に変調でき、またこのHUDシステムの視聴者は、垂直軸の平面内において、視線を、分割射出瞳HUDシステムの複数のディスプレイ要素220が変調した上記2つの仮想画像の変調方向の角度傾斜(又は分離)に比例した角度だけ再配向するだけで、第1の仮想画像又は第2の仮想画像を選択的に視聴できる。
【0058】
図11A、11Bは、本発明の一実施形態におけるディスプレイ要素220の上面図及び側面図を示し、この実施形態では、分割射出瞳HUDシステムの複数のディスプレイ要素220は、その光アパーチャを、2つのグループのディスプレイピクセル、例えば奇数行及び偶数行のディスプレイピクセルに区分する(これにより、一方のピクセルのグループ、即ち奇数行のピクセルが第1の画像を変調し、第2のピクセルのグループ、即ち偶数行のピクセルが第2の画像を変調する)ことによって、第1及び第2の画像を変調するよう構成される。HUDシステムのディスプレイ要素220のこのような方向変調能力は、各画像変調ピクセルグループに関連するマイクロ光学素子又はマイクロレンズ素子を、関連するピクセルから発された光を所定の画像方向に方向変調するように設計することによって、実現できる。例えば、図11A、11Bに示されている場合においては、奇数行のピクセルに関連するマイクロ光学素子は、関連するピクセルのグループから発された光を配向することによって第1の画像を形成し、その一方で、偶数行のピクセルに関連するマイクロ光学素子は、関連するピクセルのグループから発された光を配向することによって第2の画像を形成する。なお、図11A~11D中の各画像に関して、光線は平行なものとして図示されているが、実際には光線はイメージャ220から全体として扇形に広がり、これにより、画像のサイズが必要に応じて拡張又は拡大される。ピクセルの放射角度は、以下で更に詳細に説明されるように、非テレセントリックQPI(登録商標)イメージャの形態の非テレセントリックマイクロ光学レンズ素子の使用によって実現できる。
【0059】
なお、上述した単一画像の分割射出瞳HUD設計アーキテクチャを利用する際、複数のイメージャ220は、同一の2つの画像をそれぞれ異なる方向に変調して、分割射出瞳HUDシステムの集合アイボックス250内に両方の仮想画像を提示し、ここで、結果として得られる変調された2つの仮想画像はそれぞれ、集合アイボックス250にわたって、ただし異なる垂直(又は方位)方向において視聴可能となる。
【0060】
図11C、11Dに示されている更なる多画像HUDシステムでは、分割射出瞳多画像HUDシステムの複数のディスプレイ要素220はそれぞれ、ピクセルの2つの領域又はエリア、即ち図示されている例ではピクセルの上側領域及びピクセルの下側領域に分割される、光アパーチャを有する。この実施形態では、異なる方向に変調される2つの画像はそれぞれ、単一の専用のピクセル領域によって変調される。例えば図11C、11Dに示すように、ディスプレイ要素220の光アパーチャのピクセルの上側領域(これは、イメージャのピクセルのセットのいずれのユーザ定義部分であってよい)は、ピクセルの上記上側領域を構成するディスプレイ要素220の各ピクセルから発された光を配向して、上で定義されているような第1の画像を形成するよう設計された、マイクロ光学素子を有し、その一方で、ディスプレイ要素220の光アパーチャのピクセルの下側領域は、ピクセルの上記下側領域を構成するディスプレイ要素220の各ピクセルから発された光を配向して、上で定義されているような第2の画像を形成するよう設計された、マイクロ光学素子を有する。ピクセルの放射角度は、以下で更に詳細に説明されるように、非テレセントリックイメージャ220の形態の非テレセントリックマイクロ光学素子の使用によって提供できる。
【0061】
図12は、本発明の多画像分割射出瞳HUDシステムのある好ましい実施形態を示す。図12に示すように、複数のディスプレイ要素(又はイメージャ)220はそれぞれ2つの仮想画像を変調してよく、ここで第1の画像は上方向に変調され、第2の画像は下方向に変調される。
【0062】
複数のディスプレイ要素220は、第1及び第2の画像の両方を同時に変調して、図8に示すように、多画像分割射出瞳HUDシステムアイボックス250を角度的に埋める。凹面ミラー230によってコリメートされ、フロントガラスによってアイボックス250へと反射された後、複数のディスプレイ要素220によって変調(生成)された第1及び第2の2つの画像を構成するコリメートされた光線束は、アイボックス250内の2つの異なる傾斜角度において視聴可能となり、これにより、多画像分割射出瞳HUDシステムの視聴者は、2つの個別かつ同時に変調された仮想画像に焦点を合わせることができ、ここで第1の仮想画像は遠視野260-1において視聴可能であり、第2の仮想画像は近視野260-2において視聴可能であり、これにより上記2つの仮想画像は、複数のディスプレイ要素220によって変調された上記2つの画像間の方向分離角度220-4に比例する角度220-3だけ、垂直(方位)方向において角度的に分離される。
【0063】
これら2つの仮想画像は、その光線束が異なるレベルで(異なる程度まで)コリメートされるため、異なる第1及び第2の仮想距離にある。凹面ミラー230のコリメーションは、アイボックス250からの遠視野仮想画像の距離を達成するよう設計される。以下で具体的実施形態の具体例として説明される非テレセントリックQPI(登録商標)イメージャのマイクロ光学素子は、非テレセントリックQPI(登録商標)素子に関連する各ピクセルから発される光の更なるコリメーションを導入するよう設計される。よって、凹面ミラー230と協働する非テレセントリックマイクロ光学素子によって達成される複合的なコリメーションは、アイボックス250からの遠視野仮想画像距離及び近視野仮想画像距離を達成し、これにより、多画像HUDは、遠視野仮想画像及び近視野仮想画像の両方を同時に表示できる。
【0064】
図13に示すように、多画像分割射出瞳HUDシステムの視聴者は、視線を垂直(方位)方向において角度220-3だけ再配向するだけで、HUDシステムによって変調された第1及び第2の2つの仮想画像のうちの一方を視聴できる(又はこれらに焦点を合わせることができる)(図12も参照)。これら2つの仮想画像は、ディスプレイ要素(イメージャ)220を構成するピクセルの2つの別個のグループによって、独立して別個に変調されるため、視聴者に表示される第1及び第2の画像はそれぞれ、視聴者の関心の対象となり得る異なる情報を含むことができる。
【0065】
図13はまた、多画像分割射出瞳HUDシステムによって変調された第1及び第2の2つの仮想画像の公称位置を示し、ここで、遠視野仮想画像には、視聴者は、図示されている非限定的な例において、およそ2.5mの距離において(おおよそ車両のフロントフードの端部において)焦点を合わせることができ、近視野仮想画像には、視聴者は、およそ0.5mの距離において(おおよそ車両のフロントガラスの外側下縁部において)焦点を合わせることができる。
【0066】
なお、上述のHUDの多画像を扱う能力は、有益なことに、図6に概要を示した多画像分割射出瞳HUDシステムの体積に関する側面の増大をもたらさない。ディスプレイ要素(イメージャ)220のインタフェース710、制御機能720及び均一性ループ730もまた、図7に示すように不変のままである。
【0067】
記載されている単一画像分割射出瞳HUDシステムと比較した、多画像分割射出瞳HUDシステムの実装及び設計方法の主な差異は、以下の通りである:
1.上の実施形態で説明したように、複数のディスプレイ要素(イメージャ)220が、複数の画像を異なる方向に変調する能力を有する。
2.多画像分割射出瞳HUDシステムの垂直視野(FOV)が、2つの方向領域に角度的に分割されることにより、2つの角度的に分離された画像を同時に変調できる。
3.複数のディスプレイ要素(イメージャ)220への画像入力715が、上の実施形態で説明されている対応するピクセルグループへとそれぞれ(デジタル的に)アドレス指定された2つの画像で構成される。
【0068】
図14は、上で参照した非テレセントリックQPイメージャの例示的な具体化を示し、ここで非テレセントリックマイクロ光学素子1250-1は、屈折光学素子(refractive optical element:ROE)として実現でき、これを用いて、選択されたピクセルの光出力を、ディスプレイ要素220の表面に対して全体的に傾斜した角度に配向することによって、近視野仮想画像を提供できる。
【0069】
この図14の実施形態では、ピクセルレベル屈折型非テレセントリックマイクロ光学素子1250-1の方向変調に関する側面は、異なる屈折率を有する誘電材料1310、1320の連続した層で形成された、偏心マイクロレンズ1250-1を用いて実現できる。図14は、複数の非テレセントリック屈折マイクロ光学素子1250-1を備えるディスプレイ要素220の概略断面図である。この実施形態では、ピクセルレベル非テレセントリックマイクロ光学素子1250-1のアレイは、半導体リソグラフィ、エッチング、及び堆積技法を用いて、低屈折率層1310のための酸化ケイ素、及び高屈折率層1320のための窒化ケイ素といった半導体誘電材料の複数の層としてウェハレベルでモノリシックに製作してよい。図14に示すように、ピクセルレベルマイクロ光学素子1250-1のアレイは、複数の層、即ち、ピクセルレベルマイクロ光学素子1250-1の屈折表面を形成するために連続的に(順次)堆積された、異なる屈折率を有する誘電材料1310、1320を用いて実現され、上記光学素子は、所望の非テレセントリック性及び画像投影方向が得られるよう、必要に応じて、上記マイクロレンズアレイにわたって、屈折型マイクロレンズ素子の中心位置が漸進的に変化する。
【0070】
図15は、上で参照した非テレセントリックQPI(登録商標)イメージャの別の例示的な具体化を示し、ここで非テレセントリックマイクロ光学素子1250-2は、傾斜した屈折光学素子(ROE)として実現され、これもまた、所望の非テレセントリック性及び画像投影方向が得られるよう、必要に応じて、マイクロレンズアレイにわたって漸進的に変化し、また、これを用いて、選択されたピクセルの光出力を、イメージャ220の表面に対して全体的に傾斜した角度に配向することによって、近視野画像又は第2の画像を提供できる。この実施形態では、ピクセルレベル屈折型非テレセントリックマイクロ光学素子1250-2の方向変調に関する側面は、異なる屈折率を有する誘電材料1410、1420の連続した層で形成された、傾斜したマイクロレンズ1250-2を用いて実現できる。
【0071】
図15は、複数の傾斜した屈折マイクロ光学素子1250-2を備えるディスプレイ要素220の側面図である。この実施形態では、ピクセルレベル非テレセントリックマイクロ光学素子1250-2のアレイは、半導体リソグラフィ、エッチング、及び堆積技法を用いて、低屈折率層1410のための酸化ケイ素、高屈折率層1420のための窒化ケイ素といった半導体誘電材料の複数の層としてウェハレベルでモノリシックに製作してよい。図15に示すように、ピクセルレベル非テレセントリックマイクロ光学素子1250-2のアレイは、複数の層、即ち、ピクセルレベル非テレセントリックマイクロ光学素子1250-2の屈折表面を形成するために連続的に(順次)堆積された、異なる屈折率を有する誘電材料1410、1420を用いて実現できる。
【0072】
このように本発明は多数の態様を有し、これらの態様は、所望に応じて単独で又は様々な組み合わせ若しくは部分的組み合わせで実施してよい。限定目的ではなく例示目的で、本発明の特定の好ましい実施形態を開示及び説明したが、当業者には、以下の特許請求の範囲全体によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記実施形態に対して形式及び細部の様々な変更を行うことができることが、理解されるだろう。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-11D】
図12
図13
図14
図15