(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】押出成形性及び耐屈曲性に優れたホイールバランスウェイト用組成物
(51)【国際特許分類】
F16F 15/32 20060101AFI20220216BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20220216BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220216BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220216BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20220216BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20220216BHJP
C08F 255/06 20060101ALI20220216BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20220216BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
F16F15/32 R
C08L51/04
C08K3/08
C08K3/26
C08K9/04
C08K9/02
C08F255/06
B29C48/00
C08L53/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020089517
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060619
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520180460
【氏名又は名称】ファスン マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】イ ムジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォニ
(72)【発明者】
【氏名】キム テグン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンヒュン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-285939(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0126549(KR,A)
【文献】特開2001-064474(JP,A)
【文献】特開2001-132797(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0029609(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0072875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 51/04
C08K 3/08
C08K 3/26
C08K 9/04
C08K 9/02
C08F 255/06
B29C 48/00
F16F 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂、及び
過酸化物を使用して、EPDM (Ethylene propylene diene
rubber)とカルボン酸単量体とを
反応させてなるグラフト共重合体、を含むベース樹脂;
ステンレス鋼(SUS)粉末;及び
充填剤を含み、
前記充填剤が膠質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選ばれる
ホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂100重量部を基準に、
前記ステンレス鋼(SUS)粉末700~1,000重量部;及び
前記充填剤3~10重量部を含む、請求項1に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂は、
前記スチレン系樹脂80~90重量%;及び
前記グラフト共重合体10~20重量%
を含む、請求項1に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂は、
弾性セグメント;及び
前記弾性セグメントの一端又は両端に共重合されたスチレンブロック
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項5】
前記弾性セグメントは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものから重合される、請求項4に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項6】
前記グラフト共重合体のための前記カルボン酸単量体が3~10の炭素原子を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項7】
前記グラフト共重合体は、
前記EPDMを98重量%~98.55重量%;及び
前記カルボン酸単量体を1.45重量%~2.00重量%含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項8】
前記充填剤は、脂肪酸
、樹脂酸、又は
それらの金属塩で表面処理されたものである、請求項1~7のいずれか一項に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸は、
飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキン酸
);
不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸及びリシノール酸
);及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものである、請求項8に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項10】
前記金属塩は、脂肪酸のアルカリ金属塩、樹脂酸のアルカリ金属塩及びそれらの組合せからなる群から選ばれるものである、請求項8又は9に記載のホイールバランスウェイト用組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項のホイールバランスウェイト用組成物を押出成形してなるホイールバランシングウェイト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂及びイオン架橋型弾性体を含むベース樹脂、ステンレス鋼(SUS)粉末及び充填剤を含むホイールバランスウェイト用組成物及びバランシングウェイトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のタイヤホイールは、不均衡な部分があると、回転による遠心力によって振動が発生し、騒音の発生及びタイヤの片摩耗、ハンドル揺れなどの現象につながる。上記のような遠心力は回転速度に比例するため、特に高速で走行するとき、ホイールバランスが正確でなければならない。
【0003】
このようなホイールバランスはその性質上、静的バランスと動的バランスとに分けられるが、静的バランスがとれていないとホイールが上下に振動し、動的バランスがとれていないと左右方向に振動が起きる。自動車ホイールのアンバランスを矯正するためには、ホイール又はリムにおいて重量不均衡を起こす部位の反対側の任意の縁部に適度な重さのホイールバランスウェイトを取り付けることによって、反対方向の遠心力を発生させ、均衡させる必要がある。
【0004】
従来には、このようなホイールバランスを調整するためのホイールバランスウェイトとして、5g単位の鉛からなる錘をタイヤ或いはリムにテープ形式の接着剤で付着する方式が知られていたが、鉛による環境汚染、長期間放置時に塩水によるサビ発生、柔軟性の不足による5g単位使用時の精密度低下などの問題の他、テープ形式の接着剤によるホイール曲面に対する付着性の低下、長期間使用時に界面剥離及び浮きの発生などの問題があり、このような従来のホイールバランスウェイトは自動工程を適用し難いため、人の手作業による誤りの発生も存在していた。
【0005】
また、ホイールバランスウェイトとして鉛のような金属ではなく熱硬化性及び熱可塑性複合体を使用する試みがあったが、押出流れ性及び屈曲強度が低下する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2008-0013337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉛を使用しないことにより環境汚染などの問題を解決できながらも、押出性及び耐屈曲性などの諸般物性に優れた新しい組成のバランシングウェイト組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、新しい組成のバランシングウェイト組成物を押出成形して製造した成形物を提供することを他の目的とする。
【0009】
また、本発明は、新しい組成のバランシングウェイト組成物を押出成形して製造したバランシングウェイトを提供することを他の目的とする。
【0010】
本発明の目的は、以上に言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明からより明確になり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組合せによって実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によるホイールバランスウェイト用組成物は、スチレン系樹脂及びイオン架橋型弾性体を含むベース樹脂、ステンレス鋼(SUS)粉末、及び充填剤を含む。
【0012】
前記ベース樹脂は、ベース樹脂100重量部を基準に、前記ステンレス鋼(SUS)粉末700~1,000重量部及び前記充填剤3~10重量部を含むことができる。
【0013】
前記ベース樹脂は、スチレン系樹脂80~90重量%及びイオン架橋型弾性体10~20重量%を含むことができる。
【0014】
前記スチレン系樹脂は、弾性セグメント及び前記弾性セグメントの一端又は両端に共重合されたスチレンブロックを含むことができる。
【0015】
前記弾性セグメントは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものから重合され得る。
【0016】
前記イオン架橋型弾性体は、EPDM(Ethlene propylene diene monomer)及び炭素数3~10のカルボン酸単量体の共重合体であり得る。
【0017】
前記イオン架橋型弾性体は、前記EPDM98重量%~98.55重量%及び前記カルボン酸単量体1.45重量%~2.00重量%を含むことができる。
【0018】
前記充填剤は、膠質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選ばれ得る。
【0019】
前記充填剤は、脂肪酸又はその金属塩で表面処理されたものであり得る。
【0020】
前記脂肪酸は、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキン酸を含む飽和脂肪酸;オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸及びリシノール酸を含む不飽和脂肪酸;及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得る。
【0021】
前記金属塩は、脂肪酸のアルカリ金属塩、樹脂酸のアルカリ金属塩及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得る。
【0022】
前記ホイールバランスウェイト用組成物を押出成形した高密度成形物であり得る。
【0023】
前記ホイールバランスウェイト用組成物を押出成形したバランシングウェイトであり得る。
【0024】
前記バランスウェイトは自動車ホイールに適用され得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るホイールバランスウェイト用組成物は、重金属による環境汚染を発生させず、サビ発生も抑えることができる。
【0026】
また、本発明に係るホイールバランスウェイト用組成物は、重金属と同等な高い比重を有しながらも、ホイール曲面への優れた付着性、優れた押出性及び耐屈曲性を有することができる。
【0027】
また、本発明に係るホイールバランスウェイト用組成物は、界面剥離及び浮きの発生を抑えることができる。
【0028】
また、本発明に係るホイールバランスウェイト用組成物は、ロールタイプの自動カッティング工程の適用ができるので、1g単位の精密付着工程が可能であり、手作業工程による誤り発生の可能性を下げることができる。
【0029】
また、本発明に係るホイールバランスウェイト用組成物は、輪及び該輪を使用する車両の種類に関係なく同一に適用可能である。
【0030】
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明から推論可能な全ての効果を含むものと理解されるべきであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来バランスウェイト用組成物を含んで製造された成型品の写真である。
【
図2】本発明で製造したバランスウェイト用組成物を押出成形して製造されたバランシングウェイト成型品の写真である。
【
図3】実施例1及び2と比較例1及び2による組成物の押出物に対して耐屈曲性試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連する以下の好ましい実施例から容易に理解されるだろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底且つ完全となり得るように、そして通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために提供されるものである。
【0033】
本明細書において、“含む”又は“有する”などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はそれらを組み合わせたものが存在することを指定するためのもので、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品又はそれらを組み合わせた物の存在又は付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるとした場合、それは他の部分の“真上に”ある場合だけでなく、その中間にさら他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あるとした場合、それは他の部分の“真下に”ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0034】
特に明示されない限り、本明細書で用いられる成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表す全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に異なるものの中からこのような値を得る上で発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合において“約”という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。また。本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、特に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた該最大値までの全ての値を含む。なお、このような範囲が整数を指す場合、特に指摘されない限り、最小値から最大値が含まれた該最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0035】
本明細書において、前記ホイールバランスウェイト用組成物は、ホイールの静的重心及び/又は動的重心の均衡を調整するために、ホイールの一部位に付着する均衡錘を構成できる組成物であれば制限されない。
【0036】
本発明の一実施例によるホイールバランスウェイト用組成物は、スチレン系樹脂及びイオン架橋型弾性体を含むベース樹脂、ステンレス鋼(SUS)粉末、及び充填剤を含むことができる。
【0037】
好ましくは、前記ベース樹脂100重量部を基準に、前記ステンレス鋼(SUS)粉末700~1,000重量部及び前記充填剤3~10重量部を含むことができる。また、前記ベース樹脂は、前記スチレン系樹脂80~90重量%及び前記イオン架橋型弾性体10~20重量%を含むことができる。
【0038】
本発明に係るホイールバランスウェイト組成物に含まれている樹脂ベースについてより具体的に説明すると、下記の通りである。
【0039】
(1)スチレン系樹脂
本発明の一実施例によるスチレン系樹脂は、ホイールバランスウェイト用組成物の基本原料であり、耐屈曲性などを有する優れた機械的物性、優れた耐熱及び耐摩耗性があり、高荷重にも外観に変形がないものであれば、次に制限されない。
【0040】
前記スチレン系樹脂は、弾性セグメント及び該弾性セグメントの一端又は両端に共重合されたスチレンブロックを含むことができる。前記弾性セグメントは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものから重合され得る。また、スチレンから重合されたスチレンブロックが前記重合されたセグメント両端に重合などによって位置してブロック共重合体を形成することができる。
【0041】
前記スチレン系樹脂は、好ましくは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(Styrene-Ethylene/Butylene-Styrene;SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(Styrene-Butadiene-Styrene;SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(Styrene-Isoprene-Styrene;SIS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(Styrene-Ethylene/Propylene-Styrene;SEPS)又はスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(Styrene-Isoprene/Butadiene-Styrene;SIBS)であり得る。
【0042】
前記スチレン系樹脂は、全ベース樹脂の80~90重量%であることが好ましい。80重量%未満であると、耐屈曲性、耐熱性及び内摩耗性が低下し、90重量%を超えると、組成物の押出時に比重が低くなって押出成形性が低下することがある。
【0043】
(2)イオン架橋性弾性体
本発明の一実施例によるイオン架橋性弾性体は、架橋ゴム本然の優れた弾性力を有しながらも、押出物に対する耐屈曲性を向上させて優れた機械的物性及び優れた屈曲強度を有するものであれば、次に制限されない。
【0044】
前記イオン架橋性弾性体は、EPDM(Ethlene propylene diene monomer)とカルボン酸単量体の共重合体であり得る。好ましくは、前記EPDMとカルボン酸単量体を共重合したグラフト共重合体であり得る。
【0045】
前記カルボン酸単量体は、炭素数3~10のカルボン酸化合物であり得、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸及びこれらの無水物からなる群から選ばれるいずれか一つ以上が含まれ得る。
【0046】
本発明の一実施例によるイオン架橋性弾性体の製造のために共重合を行うことができ、共重合は通常の方法によって行うことができる。本発明の一実施例として、EPDMとカルボン酸単量体を共重合する過程で重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤は、過酸化物(peroxides)を使用することができ、好ましくは、ジクミルペルオキシド、2,5-ビス(ターシャリーブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ビス(ターシャリーブチルペルオキシイソブチル)ベンゼン及びこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか一つ以上が含まれ得る。また、本発明の一実施例として、前記共重合する過程では溶媒をさらに含むことができる。前記共重合用溶媒は、キシレン、アセトン、エタノールからなる群から選ばれるいずれか一つ以上が含まれ得る。本発明の一実施例として、共重合後にはグラフト共重合体を溶媒から抽出分離することができる。前記グラフト共重合体の抽出は、ソックスレー抽出法(Soxhlet extraction)で抽出することもできる。
【0047】
前記イオン架橋型弾性体は、98重量%~98.55重量%のEPDM及び1.45重量%~2.00重量%のカルボン酸単量体を含むことができる。前記カルボン酸単量体が1.45重量%未満でグラフト共重合される場合、高温流れ性が上昇して押出性及び成形性が不良になり得る。逆に、前記カルボン酸単量体が2.00重量%を超えてグラフト共重合される場合、スチレン系樹脂との流れ性の差異によって分散度及び押出性が低下することがある。
【0048】
前記イオン架橋型弾性体は、全ベース樹脂を基準に10~20重量%が好ましい。10重量%未満であると組成物の押出時に柔軟性が低下し、20重量%を超えると、低い流れ性及び相対的に高い溶融点によって、組成物内の分散性が低下するため、組成物の押出時にその表面が粗くなり、押出物が押出中に中断される現象が生じることがある。
【0049】
本発明に係るホイールバランスウェイト組成物に含まれているステンレス鋼(SUS)粉末についてより具体的に説明すると、下記の通りである。
【0050】
本発明の一実施例によるステンレス鋼(SUS)粉末は、ホイールバランスウェイト組成物を含むホイールバランシングウェイトの比重を高め、サビ発生を抑制させ得るものであれば制限されない。
【0051】
前記ステンレス鋼(SUS)は、オーステナイト(Austenite)系、フェライト(Ferrite)系又はマルテンサイト(Martensite)系であり得る。具体的に、前記ステンレス鋼(SUS)は、商品化しているSUS304、340、410、430、600、630シリーズ製品などの中から選んで使用することができる。
【0052】
前記ベース樹脂100重量部を基準に、前記ステンレス鋼(SUS)粉末は700~1,000重量部であることが好ましい。700重量部未満では耐屈曲性、流れ性及び押出性に不良が発生することがあり、1000重量部を超えると、組成物の押出時に比重が低くなる問題が生じることがある。
【0053】
本発明に係るホイールバランスウェイト組成物に含まれている充填剤についてより具体的に説明すると、下記の通りである。
【0054】
本発明の一実施例による充填剤は、接着比表面積を増加させることができ、ベース樹脂とステンレス鋼(SUS)との界面相互作用を向上させ得るものであれば制限されない。
【0055】
前記充填剤は炭酸カルシウムであり得、ホイールバランスウェイト組成物の意図した性質によって中炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及び溶液法炭酸カルシウムであり得る。前記充填剤は、好ましくは沈降性炭酸カルシウムであり得、より好ましくは沈降性炭酸カルシウムのうち、膠質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選ばれ得る。前記膠質炭酸カルシウムは、カルサイト結晶の立方粒子型を有することができ、商品化しているTC、SF、TCR、TSP、TPT及びTOTであり得る。また、前記硬質炭酸カルシウムは、カルサイト結晶の紡錘粒子型を有することができ、商品化しているTL-1000、TL-2000及びTL-3000であり得る。
【0056】
前記充填剤は脂肪酸又はその金属塩で表面処理され得る。具体的に、脂肪酸で表面処理される場合、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及びこれらの組合せからなる群から選ばれるもので表面処理され得る。このとき、飽和脂肪酸は、好ましくはカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキン酸を含む飽和脂肪酸であり得、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸及びリシノール酸を含む不飽和脂肪酸であり得る。また、金属塩で表面処理される場合、アルカリ金属塩、樹脂酸のアルカリ金属塩及びこれらの組合せからなる群から選ばれるもので表面処理され得る。
【0057】
前記ベース樹脂100重量部を基準に、前記充填剤は3~10重量部であることが好ましい。重量部3未満であると、接着比表面積、界面相互作用及び強度が減少することがあり、10重量部を超えると、耐屈曲性及び押出性が減少することがある。
【0058】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。下記実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はそれに限定されない。
【実施例】
【0059】
実施例1
実施例は、下表1に示すような組成で製造したホイールバランス組成物である。
具体的に、ベース樹脂として、スチレン系樹脂90重量%及びイオン架橋型弾性体10重量%を混合して製造した複合樹脂を使用した。前記スチレン系樹脂としてスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(Styrene-Ethylene/Butylene-Styrene;SEBS)を使用し、前記イオン架橋型弾性体として、EPDM(Ethlene propylene diene monomer)とカルボン酸単量体としてイタコン酸を重量比98:2で共重合させて製造したものを使用した。また、ステンレス鋼(SUS)粉末として、前記ベース樹脂100重量部を基準に900重量部でSUS630を使用した。また、充填剤として、ベース樹脂100重量部を基準に5重量部でアルカリ金属塩で表面処された炭酸カルシウムを使用した。
【0060】
実施例2
実施例1と比較したとき、ベース樹脂として、スチレン系樹脂85重量%及びイオン架橋型弾性体15重量%を混合して製造した複合樹脂を使用した他は実施例1と同一に製造した。
【0061】
比較例1
実施例1と比較したとき、ベース樹脂としてスチレン系樹脂の代わりにエンジニアリングプラスチックを使用し、充填剤を使用しない他は、実施例1と同一に製造した。
【0062】
比較例2
実施例2と比較したとき、ベース樹脂としてスチレン系樹脂の代わりにエンジニアリングプラスチックを使用し、充填剤を使用しない他は、実施例2と同一に製造した。
【0063】
【0064】
実験例1.押出成形性の測定
前記製造例で得た前記実施例1の組成物に対して下記の条件で押出を行った。また、前記実施例1の組成物をそれぞれ前記実施例2、比較例1及び2の組成物に代替した以外は、同一の過程で押出を行った。
【0065】
押出機器:Thermo[0050]SCIENTIFIC社/HAAKE
押出温度条件:押出機器の投入部;200℃/押出機器の内部;240℃/押出機器の吐出部;230℃
押出機器のスクリュー速度:100rpm
【0066】
また、前記押出物を下記の条件によって評価し、その結果を下表2に示した。
◎(良好):押出物の表面にクラック及び突起がない。
△(改善要):押出物の表面に微細クラック或いは突起が発生。
×(不良):押出中にクラックによる破断或いは粗い表面及び突起が発生。
【0067】
実験例2.屈曲性試験
実験例1で得た押出成形物を常温で冷却し、300mm×150mm×100mmのサイズに切断して試験片を得、試験片の両端でクラックが発生するまで力をかけ続けた。試験片へのクラック発生の有無によって耐屈曲性を評価した。その結果を下表2及び
図3に示す。
【0068】
【0069】
前記表2及び
図3の結果によれば、本発明によって提供されるバランシングウェイトは、比重が既存のバランシングウェイトと類似でありながらも押出物の表面にクラック及び突起がないので押出成形性に優れており、両端にクラックができず、耐屈曲性(
図3参考)にも優れていることが確認できた。
【0070】
これに対し、ベース樹脂にスチレン系樹脂が含まれておらず、本発明の実施例による表面コーティングされた充填剤が含まれていない比較例1及び2の場合、押出成形過程で柔軟性及び弾性力が低いため、押出性が低下し、耐屈曲性に劣ることが確認できた。
【0071】
また、
図2を参照すると、本発明で提供するバランシングウェイト押出成形物であり、自動化工程によるカッティング及び付着が可能になった他、1g単位未満のウェイトとして使用されるので、精密度が顕著に向上した。また、自動車ホイールに適用したとき、優れた追従性によって自動車ホイールの曲面に沿ってよく接着され、また長時間使用しても腐食及び剥離現象が観察されないことが確認できた。