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特許7025541医療デバイスの複数の電極間のインピーダンスを測定するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】医療デバイスの複数の電極間のインピーダンスを測定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220216BHJP
   A61B 5/0538 20210101ALI20220216BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B5/0538
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020522839
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018057100
(87)【国際公開番号】W WO2019083999
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/576,447
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ジー. カラン
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187720(JP,A)
【文献】国際公開第2016/081786(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/153561(WO,A1)
【文献】特表2016-524480(JP,A)
【文献】特表2006-501903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/16
A61B 5/053- 5/0538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された医療デバイスの電極の間のインピーダンスを測定するための電子制御装置であって、
コントローラであって、
共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数をそれぞれ有している複数の駆動信号を生成し、
前記複数の駆動信号のそれぞれを、前記医療デバイスの個々の電極対間に同時に印加するように構成されている、コントローラと、
前記医療デバイスの複数の個々の電極対に印加される前記複数の駆動信号の合成応答信号を測定するための測定回路と、
復調器であって、
前記固有変調周波数ごとに、前記合成応答信号を同期復調するように構成されており、
前記固有変調周波数ごとに、当該固有変調周波数と同一の周波数と、当該固有変調周波数に対応する駆動信号の位相からオフセットした既知の位相と、を有している変調信号を、前記合成応答信号に乗算する、復調器と、を備えており、
前記コントローラは、前記合成応答信号の前記同期復調に基づいて、前記電極のそれぞれのインピーダンス値を出力する、電子制御装置。
【請求項2】
前記復調器は、前記共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有するサンプリング期間にわたってサンプリングを行う、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記複数の駆動信号が前記複数の個々の電極対に印加される前に、前記複数の駆動信号を複数のデジタル駆動信号から複数のアナログ駆動信号に変換するための少なくとも1つのデジタル-アナログ変換器(DAC)をさらに備えている、請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記複数のデジタル駆動信号を生成するための少なくとも1つの第1の数値制御発振器(NCO)をさらに備え、
前記複数のデジタル駆動信号は、前記少なくとも1つのDACによって受信され、
前記復調器は、複数の復調信号を生成するための少なくとも1つの第2の数値制御発振器(NCO)をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1のNCOおよび前記第2のNCOに、前記固有変調周波数のそれぞれを入力するようにさらに構成されている、請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記固有変調周波数ごとに、前記第1のNCOおよび前記第2のNCOに、所定のランダムな位相オフセットを入力するようにさらに構成されている、請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記医療デバイスの個々の電極対の数を特定し、
前記個々の電極対の数に基づいて、前記複数の駆動信号の電流レベルを調整するようにさらに構成されている、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記個々の電極対の数の平方根に前記複数の駆動信号の前記電流を乗じることによって算出した、前記複数の駆動信号の合計電流を所定の電流しきい値未満に維持する、請求項6に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記個々の電極対のうちの1つまたは複数を選択的に無効にするように構成されている、請求項6または7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記コントローラは、少なくとも50個の前記駆動信号を生成するように構成されており、
前記少なくとも50個の駆動信号のそれぞれが、前記固有変調周波数と、20マイクロアンペア未満の駆動電流と、を有している、請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項10】
療デバイスの複数の個々の電極対の間のインピーダンスを測定するために、システムが作動する方法であって、
前記システムが、共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数をそれぞれ有する複数の駆動信号を生成することと、
前記システムが、前記複数の駆動信号のそれぞれを、前記医療デバイスの個々の電極対間に同時に印加するように、コントローラを制御することと、
前記システムが、前記医療デバイスの複数の個々の電極対間に印加され前記複数の駆動信号の合成応答信号を測定することと、
前記システムが、前記固有変調周波数ごとに、前記合成応答信号を同期復調することと、
前記システムが、前記合成応答信号の前記同期復調に基づいて、前記電極のそれぞれに対して、インピーダンス値を出力することと、を備えている、方法。
【請求項11】
前記同期復調することは、前記共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有する期間にわたって前記合成応答信号をサンプリングすることをさらに含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記システムが、前記医療デバイスの個々の電極対の数を特定することと、
前記システムが、前記個々の電極対の数に基づいて、前記複数の駆動信号の電流レベルを調整することと、をさらに備えている、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記システムが、前記個々の電極対の数の平方根に前記複数の駆動信号の電流を乗じることによって算出した、前記複数の駆動信号の合計電流を所定の電流しきい値未満に維持することをさらに備えている、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記システムが前記複数の駆動信号を生成することは、前記システムが、少なくとも50個の駆動信号を生成することを含んでおり、
前記少なくとも50個の駆動信号のそれぞれが、20マイクロアンペア未満の駆動電流を有している、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2017年10月24日に出願された米国仮出願第62/576,447号の優先権を主張するものであり、その内容はその全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、とりわけ、組織と医療デバイスの電極との間の接触を判定するための、医療デバイスの電極の電気インピーダンスに基づく測定に関する。より具体的には、本開示は、患者に対して安全な電流限界を維持しながら、複数の電極のインピーダンスを同時に検出するためのデジタル信号処理に関する。
【0003】
カテーテルは、ますます多くの処置に使用されている。例えば、ほんの数例を挙げると、カテーテルは、診断、治療、およびアブレーション処置のために使用されている。一般的に、カテーテルは患者の血管系を通って、例えば患者の心臓内の部位などの対象部位まで操作される。一般的に、カテーテルは、アブレーションや診断等のために使用され得る1つまたは複数の電極を担持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの処置では、カテーテル上の電極の接触状態(例えば、組織と接触している状態、貯留した血液中にある状態など)を知ることが有利となり得る。例えば、電気生理学的マッピング処置において、電極の電気信号は、その電極が組織と接触しているのか、貯留した血液中で組織に近接しているのかによって変化する場合があり、その差異は、ソフトウェアにおいて判別され得る。別の例として、アブレーション処置においては、電極がアブレーションされる組織に接触しているときにのみ、アブレーション電流を駆動することが望ましい場合がある。
【0005】
カテーテル上のある電極が組織と接触しているかどうかを判定するために使用され得る既存の方法は、その電極と、患者体内の他の場所(例えば、患者体内の安定した位置)にある電極または患者体外(例えば、患者の皮膚上)にある電極との間で電流を駆動し、当該電極間のインピーダンスを評価することを含む。これらの電極間のインピーダンスを判定するために、第3の電極を医療デバイス上の電極の電位の基準としてよく、第3の電極も、患者体内の他の場所または患者体外にあってよい。
【0006】
前述の記載は本発明の分野を例示することのみを意図しており、請求の範囲を否定するものとして解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態では、接続された医療デバイスの電極間のインピーダンスを測定するために、電子制御装置などのシステムが提供される。このシステムは、複数の駆動信号を発生するように構成された制御装置または周波数ソースを備えてもよい。駆動信号のそれぞれは、共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数を有してもよい。制御装置または周波数ソースはさらに、接続された医療デバイスの個々の電極対間に、複数の駆動信号のそれぞれを同時に印加するように構成されてもよい。医療デバイスはカテーテルであってもよいが、システムはカテーテルを伴う使用に限定されず、他の医療デバイスと共に利用されてもよい。システムは、医療デバイスの個々の電極対に印加された駆動信号の応答を測定するための測定回路を備えてもよい。復調器は、固有変調周波数の各々について、応答信号(例えば、合成応答信号)を同時に復調するように構成される。復調器は、復調信号を生成してもよく、復調信号のそれぞれは、1つの固有変調周波数と同一の周波数と、その固有変調周波数の位相とは異なる既知の位相とを有している。このような復調は、各電極に関してレジスタンス(resistive)・インピーダンス情報およびリアクタンス(reactive)・インピーダンス情報を提供するように、直交復調を含んでもよい。一つの実施形態では、復調器が、共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有するサンプリング期間にわたってサンプリングを行う。インピーダンス情報は、電極ごとに出力されてもよい。
【0008】
さらなる構成では、システムは、駆動信号がデジタル駆動信号であるデジタル信号処理システムである。このような構成では、デジタル駆動信号は、個々の電極対に印加される前に、1つまたは複数のデジタル-アナログ変換器(DAC)によってアナログ信号に変換される。同様に、1つまたは複数のアナログ-デジタル変換器(ADC)が、電極のアナログ応答をデジタル応答信号に変換してもよい。一つの構成では、固有周波数を有する複数の駆動信号または変調信号は、1つまたは複数の数値制御発振器(変調NCO)を利用して生成されてもよい。そのような構成では、複数の復調信号が、1つまたは複数のNCO(復調NCO)を利用して生成されてもよい。変調NCOは、各固有変調周波数を識別する入力を受信してもよく、復調NCOは、各復調周波数を識別する入力を受信してもよい。さらに、対応する変調NCOおよび復調NCOは、位相オフセットを識別する入力を受信してもよい。そのような位相オフセットは、ランダムであってもよく、記憶された較正情報から割り当てられてもよい。一つの構成では、変調NCOおよび復調NCOは、共通のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)上で画定されてもよい。このような構成では、制御装置および/または復調器をFPGA内で画定してもよい。
【0009】
さらなる構成では、システムは、医療デバイスの個々の電極対の数を識別し、個々の電極対の数に基づいて駆動信号の電流レベルを調整するように構成されてもよい。このような構成では、システムは、駆動信号の合成電流レベルまたは合計電流レベルを所定のしきい値(例えば、補助電流レベル)未満に維持してもよい。一つの構成では、システムは、合成電流レベルを所定のしきい値未満に維持しながら、駆動信号の電流レベルを最大にしてもよい。
【0010】
一つの実施形態では、接続された医療デバイスの電極間のインピーダンスを測定するための方法が提供される。この方法は、複数の駆動信号を生成することを含んでもよい。駆動信号のそれぞれは、共通ベース周波数の高調波である変調周波数を有してもよい。駆動信号はそれぞれ、医療デバイスの個々の電極対間で同時に印加されてもよい。この方法は、複数の個々の電極対に印加された複数の駆動信号の合成応答信号を測定することをさらに備えてよい。合成応答信号は、各固有変調周波数ごとに、同期して復調されてもよい。復調されると、電極の各々および/または個々の電極対の各々に対して、インピーダンス値が出力されてもよい。一つの構成では、駆動信号は直交する。別の構成では、応答信号は、共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有するサンプリング期間にわたってサンプリングされる。
【0011】
さらなる構成では、方法は、医療デバイスの電極対の数を識別することを含む。そのような構成では、方法は、識別された電極対の数に基づいて、駆動信号の電流レベルを調整することを含んでもよい。電流レベルは、駆動信号の合計電流レベルを所定のしきい値未満に維持しながら、最大化されるように調整されてもよい。
【0012】
本開示によるシステムおよび方法は、電極対間に駆動信号を同時に提供し、電極で発生する電圧を感知してもよい。デジタル信号処理は、電極におけるインピーダンスを判定するために、各電極における電圧信号を同期して復調する。チャネル間のクロストークを最小限に抑えながら、駆動電流の大きさを増加するおよび/または電極対の数を大幅に増加するために、それぞれの電極対は固有周波数で駆動されてもよい。同期復調により、クロストークを最小限に抑えながら、各固有周波数を互いに独立して検出することができる。同期復調を可能にするために、駆動周波数をベース周波数の高調波に設定し、整数回のサイクルを有する期間にわたって応答を測定することによって、駆動周波数を互いに直交させてもよい。一つの実施形態では、直交復調を行うことにより、レジスタンス(resistive)・インピーダンスの実数成分と、リアクタンス(reactive)・インピーダンスの虚数成分とが提供されてもよい。同期復調により、非常に低い駆動電流レベル(例えば、1マイクロアンペア~20マイクロアンペア)での信号抽出が可能となってもよい。さらに、一つの実施形態では、固有周波数と共に低駆動電流レベルを使用することにより、患者への補助電流レベルを所定のしきい値未満に維持しながら、励起される電極の数を大幅に増加させることができる。一つの実施形態では、約20マイクロアンペア以下の駆動電流を有する50個の駆動信号が提供されてもよい。別の実施形態では、約10マイクロアンペア以下の駆動電流を有する100個の駆動信号が提供されてもよい。さらなる実施形態では、約5マイクロアンペア以下の駆動電流を有する200個の駆動信号が提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、遠位ラリアート部を有する細長い医療デバイスの例示的な実施形態の等角図を示す。
【0014】
図2図2は、図1の細長い医療デバイスの遠位端部の端面図であり、デバイスで使用され得る多数の電極を示す。
【0015】
図3図3は、細長い医療デバイス上の2つの電極におけるインピーダンスを判定するためのシステムの例示的な実施形態の概略図を示す。
【0016】
図4図4は、多数の電極を示す代替実施形態の細長い医療デバイスの遠位端部の端面図である。
【0017】
図5図5は、チャネル数と合計電流の関係のチャートを示す。
【0018】
図6図6は、電流と最大チャネル数の関係のチャートを示す。
【0019】
図7図7は、細長い医療デバイス上の複数の電極対のインピーダンスを判定するための機能を備える例示的なシステムの概略図を示す。
【0020】
図8図8は、電流ソースの一つの実施形態の概略図を示す。
【0021】
図9図9は、測定回路および復調回路の一つの実施形態の概略図を示す。
【0022】
図10図10は、医療デバイスの電極に複数の駆動信号を提供するように構成された電流ソースの一つの実施形態の概略図を示す。
【0023】
図11図11は、医療デバイスの複数の電極からの応答を測定および復調するように構成された測定回路および復調回路の一つの実施形態の概略図を示す。
【0024】
図12図12は、複数の高調波周波数の合計電流のチャートを示す。
【0025】
図13図13は、複数の高調波周波数がランダムな位相オフセットを有する場合の合計電流のチャートを示す。
【0026】
図14図14は、本明細書に開示されるシステムを使用するプロセスのフローチャートを示す。
【0027】
図15図15は、本明細書に開示されるシステムを使用する別のプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図に関して、様々な図における類似の符号は同一または類似の要素を示す。図1は、一つの実施形態における細長い医療デバイス24の等角図を示している。細長い医療デバイス24は、例えば、診断および/または治療送達カテーテル、イントロデューサ又はシース、又は他の同様のデバイスを含んでもよい。例示および明確化の目的のために、以下では、細長い医療デバイス24がカテーテル(すなわち、カテーテル24)を備える実施形態に関して説明する。しかしながら、細長い医療デバイス24がカテーテル以外の細長い医療デバイスを含む実施形態も、本開示の精神および範囲内であることが理解されるであろう。
【0029】
図1を参照すると、カテーテル24は、遠位端部26及び近位端部30を有するシャフト28を含んでよい。カテーテル24は、患者の身体を通って案内され、患者の体内に配置されるように構成されてもよい。従って、シャフト28の近位端部30はハンドル32に連結されてよく、ハンドル32は、例えば患者の心臓へのアブレーション処置やマッピング処置のような診断または治療処置を実行するために、医師が遠位端部を案内することを可能にする特徴を含んでよい。したがって、ハンドル32は、回転機構および/または長手方向機構などの、シャフトの遠位端部を偏向させるためにプルワイヤに結合された1つまたは複数の手動操作機構34を備えてもよい。操作機構、プルワイヤ、および関連するハードウェアの例示的な実施形態は、例えば、米国特許出願公開第2012/0203169号に記載され、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。ハンドル32は、マッピングおよびナビゲーションシステム、アブレーション発生器、および/または他の外部システムに結合するための1つまたは複数の電気機械コネクタをさらに備えてもよい。ハンドル32はまた、例えば、重力フィード、固定速度ポンプ、または可変速度ポンプのような流体のソースおよび/または流体の行き先と結合するための1つまたは複数の流体コネクタ36を備えてもよい。したがって、シャフト28の遠位端部26はまた、アブレーション処置中に潅注液などの流体を分配または回収するための1つまたは複数の流体ポートまたはマニホールドを備えてもよい。流体ポートは、シャフト28を通ってハンドル32まで延びる1つまたは複数の流体ルーメンと流体的に連結されてよい。いくつかの実施形態では、細長い医療デバイス24が、カテーテルまたはプローブなどの別のデバイスを受け入れるように構成された少なくとも1つのルーメンを含むイントロデューサを備えてもよい。
【0030】
例示的なカテーテル24のシャフト28の遠位端部26は、ラリアート形状を有してもよい。この実施形態では、ラリアート形状は、例えば、シャフト内に配置された形状記憶ワイヤによって形成されてもよい。先端電極22および多数のリング電極20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20H、20I(本明細書では、これらの電極をリング電極20と呼ぶ場合がある)を、シャフト28の遠位端部26に配置してもよい。例えば、先端電極22及びリング電極20は、シャフト28のラリアート部に配置されてもよい。図示の実施例では、遠位端部26は、9個のリング電極20(すなわち、図2に示すように、全部で10個の電極を有する「デカポーラ」カテーテル)を含む。他の実施形態では、遠位端部26は、19個のリング電極20(すなわち、全部で20個の電極を有する「デュオデカポーラ」カテーテル)を含む。図1および図2に示されるカテーテル24上の電極20、22は、組織にアブレーションエネルギを印加するため、組織から電気生理学的データを取得するため、シャフトの位置および向き(P&O)を判定するため、および/または他の目的のために使用されてもよい。電極20、22はシャフト28内の電線に結合されてよく、この電線は、外部システムと結合するためにハンドル32及び電気機械コネクタへ延びてもよい。非限定的な一つの実施形態において、2つの電極20がシャフト28の長さに沿って互いに第1の距離だけ離れた状態で対として配置されもよく、電極20の第2の対は、シャフト28の長さに沿って第2の距離だけ離れて配置される。例えば、電極20Bおよび20C(例えば、電極の双極対)は第1の対とみなされてもよく、電極20Dおよび20Eは第2の対とみなされてもよく、その他の電極についても、同様である。第1の距離と第2の距離は等しくてもよいし、第1の距離が第2の距離と異なっていてもよい。図1および図2に示すカテーテル24は、本質的に例示的なものに過ぎないことが理解されるであろう。本発明の教示は、円形マッピングカテーテル、他の公知のマッピングおよび診断カテーテル、ならびに他の公知の医療デバイスなど、数々の他の医療デバイスと共に使用してもよい。
【0031】
カテーテル24のような多数の電極を有する細長い医療デバイスは、細長い医療デバイスと患者の組織との間の接触状態を評価するシステムで使用されてよい。背景技術で述べたように、いくつかの既知のシステムでは、そのような接触を評価するために、身体内に配置された細長い医療デバイスの電極と皮膚電極との間で電流が駆動されることがある。体内電極の電位は、第3の電極(例えば、別の皮膚電極)を基準として測定されてもよく、接触状態を示すインピーダンスが計算されてもよい。このような単極システムおよび方法は、同じデバイス(例えば、患者の体内にある同じ細長い医療デバイス)上の2つの電極間で駆動される電流に従って接触状態を評価するシステムによって改善されてもよい。すなわち、インピーダンスは、同じデバイス上の一対の電極(例えば、電極の双極対)間で測定されてよく、こうすることによって、単極構成で現れ得るアーチファクトを除去できる。例えば、単極構成では、内部電極と外部電極との間の電流の一部が患者の肺を通過しなければならないため、呼吸ごとにインピーダンスが変化してしまう。
【0032】
図3は、同じデバイス上の2つの電極(例えば、双極電極)間で駆動される電流に従って接触状態を評価するシステム40の概略図である。システム40は、インピーダンスZを有する電極A及びインピーダンスZを有する電極Bの少なくとも2つの電極A、Bを有する医療デバイス42と、検出アンプ44と、信号発生器46とを備えてもよい。非限定的な一つの実施形態において、検知アンプは、2つの演算増幅器(オペアンプ)52、52、基準電極R、および電子制御装置(ECU)50の一部であり得る計測回路またはインピーダンスセンサを含んでもよい。一つの実施形態では、信号発生器がECUに組み込まれてもよく、またはECUの一部と見なされてもよい。
【0033】
医療デバイス42は、カテーテル24(図1参照)のような細長い医療デバイスであってもよいし、それを含んでもよい。電極A、Bは、デバイス上の任意の2つの電極であってもよい。例えば、図2に示されるように、電極A、Bは、先端電極22および第1のリング電極20Aであってよい。また、電極A、Bは、2つのリング電極20Dおよび20E、または20Fおよび20Gなどであってもよい。
【0034】
信号発生器46は、電極A、B間で(すなわち、一方の電極をソースとして、他方の電極をシンクとして使用して)、(とりわけ)駆動信号または励起信号を発生するように構成されてもよい。一つの実施形態では、駆動信号は、約1kHzから500kHzを超える範囲内の周波数、より典型的には約2kHzから200kHzの範囲内の周波数、さらにより典型的には約20kHzの周波数を有してもよい。一つの実施形態では、駆動信号は、典型的には20~200μAの範囲の一定電流信号、より典型的には約100μAの一定電流信号であってよい。
【0035】
ECU50は、対象ではない周波数を阻止し駆動周波数のような適切な周波数を通過させるために従来のフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を備えてよく、さらに、測定された複素インピーダンスの構成成分を得るために使用される従来の信号処理ソフトウェアを含んでもよい。したがって、ECU50は、このような信号処理ソフトウェアを記憶するメモリと、信号処理ソフトウェアを実行するように構成されたプロセッサとを含んでもよい。上述したように、ECU50は、メモリ及びプロセッサのような任意の処理装置を備えてもよい。それに加えて、またはそれに替えて、インピーダンスセンサが、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または他の処理装置を含んでもよい。
【0036】
検出アンプ44は、第1の電極Aに電気的に接続され得る正極コネクタ(例えば、第1のチャネル)と、第2の電極Bに電気的に接続され得る負極コネクタ(例えば、第2のチャネル)とを有してもよい。正極コネクタおよび負極コネクタは、電極A、Bと接続された場合に、図3に図式的に示される回路を形成するように検出アンプ44の他の部品に対して配置されてもよい。本明細書で使用されるコネクタという用語は、特定の種類の物理的なインターフェース機構を意味するものではなく、むしろ1つまたは複数の電気的ノードを表すように広く意図されることを理解されたい。
【0037】
検出アンプは、同じデバイス上の電極A、B間で電流を駆動して、電極A、Bと組織間の接触状態を評価してもよい。接触状態を判定するために、これらの駆動電流に基づいてインピーダンスが計算されてもよい。システムは、接触状態を判定するために、第1の電極Aおよび第2の電極Bのそれぞれのインピーダンスを判定するように構成されてもよい。
【0038】
インピーダンスの判定は、電極Aおよび電極Bの一方がソースとして選択され、他方がシンクとして選択された状態で、電極Aと電極Bとの間で正弦波信号(例えば、駆動信号または励起信号)を駆動することで開始してもよい。ソース及びシンクの選択は、ECU50と、信号発生器46によって駆動された電流によって行われてもよい。駆動信号は、所定の特性(例えば、周波数および振幅)を有してよい。電極Aと電極Bとの間で電流を駆動している間に、電極Aおよび電極Bの電位が測定されてもよい。一つの実施形態では、電位は、検出アンプによって測定されてもよい。検出アンプは、電極Aと電極Bとの間のパスに対して非常に高いインピーダンス(例えば、一つの実施形態では、約100kΩ以上、および/または一つの実施形態では、電極A、Bの一方の公称インピーダンスの50倍以上、および/または一つの実施形態では、電極A、Bの一方の公称インピーダンスの100倍以上)を提示してよく、したがって、検出アンプによる測定が電極A、Bの電位に及ぼす影響は、無視してもよい。
【0039】
測定は、測定された電位を電極R(図3参照)のような基準電極に参照することをさらに含んでもよい。一つの実施形態では、基準電極Rは、ボディパッチ電極などの皮膚電極であってもよい。あるいは、基準電極Rは、他の患者内電極であってもよい。このような参照は、電極Aの電位を第1のオペアンプ52Aの第1の入力部に入力し、電極Bの電位を第2のオペアンプ52Bの第1の入力部に入力し、基準電極の電位を第1のオペアンプ52Aおよび第2のオペアンプ52Bのそれぞれの第2の入力部に入力することによって行ってもよい。オペアンプ52A、52Bの出力は、インピーダンスの判定、接触評価、および/または他の計算のために、ECU50に入力されてもよい。別の実施形態では、インピーダンスの判定および/または接触判定の一部または全部を実行するために、ECU50とは別体のハードウェアを設けてもよい。
【0040】
電極Aと電極Bの間で電流を駆動し、電極Aと電極Bの電位を決定するために、特定のキャリア周波数で電流を駆動し、電極Aと電極Bのそれぞれの電位を復調する公知の方法を使用してもよい。検出アンプは、各電極A、Bに現れる信号を増幅してよく、復調後に、各電極のインピーダンスに関連する電圧が利用可能となる。電極Bの場合、回復電圧は負であるため(すなわち、電極Aがソース、電極Bがシンクとして選択されると仮定)、正数への転換はECU 50または他のデバイスによって適用されてもよい。電流ソース―シンク電極対は、接近して間隔を置いた双極を含んでよいので、双極に対する基準電極Rの電位は類似している。そのため、電極Rの物理的な位置は、電極Aと電極Rとの間の電圧、および電極Bと電極Rとの間の電圧にほとんど影響を及ぼさずに変化してよい。
【0041】
インピーダンスが十分に高い周波数で測定される任意の電極形状について、電極A、Bの間で駆動される電流に対して測定される電位は、純粋な生理食塩水または血液媒体において本質的に抵抗となり得、電極の形状および溶液伝導率を反映し得る。例えば、均一な媒体内の球形電極は、電極を通って駆動される電流に対して、以下の式(1)に従った電位を有する:
【数1】
ここで、Vは電位、lは印加電流、ρは媒体抵抗率、rは電位が計測される電極中心からの距離である。以下の式(2)に示すように、測定されたインピーダンスは、測定された電極の電位を印加電流で割ったものとすることができる:
【数2】
電極の形状に基づくインピーダンスの計算は、周知である。同様に、リング電極に関する式、および/または球形電極からリング電極への変換も知られている。さらに、電極対のうちの1つの電極(例えば、電極A)が別の電極(例えば、電極B)へ及ぼす影響の効果を計算し、考慮してもよい。電極形状に基づいてインピーダンスを計算し、隣接する電極の影響の効果について考慮する例示的な実施形態は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0364715号に記載されている。
【0042】
電流が電極Aと電極Bとの間で駆動されている間に測定された各電位について、形状特有の方程式を(例えば、ECU50によって)解くことで、電極Aおよび電極Bの(基準電極Rに対する)それぞれの電圧を決定してもよい。したがって、ECU50のプロセッサによって実施されるように、そのような方程式は、ECU50のメモリに記憶されてよい。次に、これらの電圧を式(1)または別の形状特有の式に適用することで、電極Aおよび電極Bのそれぞれのインピーダンスを(再び、例えば、ECU50によって)判定してもよい。これらのインピーダンスに基づいて、電極A、Bと患者の組織の間の接触状態を評価してもよい。このような測定は、多数回実施してもよい。また、このような測定は、電極A,Bの多数の組に対して実施してもよい。すなわち、インピーダンス電位は、多数の異なる電極対に対して繰り返し行われてよく、その結果それぞれの電極の接触状態を判定してもよい。例えば、図1及び図2を参照すると、まず電極22及び20Aに対して測定を実施し、次に20B及び20Cに対して実施し、その次に20D及び20Eに対して実施しというように以降も同様に実施してもよい。換言すれば、複数の電極対のインピーダンスは、連続的に判定されてもよい。
【0043】
カテーテル上の電極と外部電極/皮膚電極との間で駆動される電流に基づく接触評価と比較して、カテーテル(または他の医療デバイス)上の電極対間で駆動される電流に基づく接触評価は、精度が高いが、本開示の態様は、以前の接触評価システムが限界を有するという認識にある程度基づいている。具体的な限界の1つは、医療規格によって、医療デバイスの電流限界(補助電流)が確立されていることである。例えば、そのような工業規格は、1kHz未満のAC電流に対して、心臓内電極には10マイクロアンペアの電流を許可している。10kHzでは、限界は100マイクロアンペアであり、周波数の増加に比例して限界が増加する(すなわち、20kHzでは、限界は200マイクロアンペアである)。補助電流の限界(例えば、しきい値)は、電極カテーテルにおける昨今の傾向に対抗する。すなわち、カテーテル(または他の医療デバイス)に担持される電極の数を増加することで、例えば、マッピング作成の精度および/またはアブレーション制御を改善することに対抗する。一例として、既存の電極カテーテルであるトペラ/アボットラボラトリーズ(Topera/Abbott Laboratories)のFIRMmapバスケットカテーテルは、64個の別個の電極を利用する。他の提案されているカテーテルは、100個または200個もの別個の電極を含んでいる。図4は、128個の電極20~20128を有する例示的なカテーテル16の遠位端部を示す。図示した実施形態では、カテーテル16の遠位端部が、8つのアーム18a~18hを有する拡張可能なバスケットとして形成されている。アーム18a~18hは、例えばイントロデューサの端部を通って配置される際に図示の形状に拡張するように、形状メタルワイヤで形成されてもよい。各アームは、8個の電極対を形成する16個の電極を含む。このような128個の電極を有するカテーテルの場合、64個の電極対のインピーダンスが連続的に判定され得る。このような多数の電極対に対する連続的な判定により、システムの応答速度が低下してしまう。別の解決策は、各電極対の間に電流を同時に駆動することである。しかしながら、複数の電極対が共通または単一周波数の電流で駆動されると、電極対間のクロストークによって、任意の電極対の応答を識別することが困難または不可能になってしまう。さらに、単一の周波数で複数の電極対間に電流を駆動すると、(例えば、表面電極または他の内部電極において)追加の補助電流が生じる。例えば、100マイクロアンペアの補助電流限界(例えば、10キロヘルツの励起周波数)に対して、20個の双極電極(すなわち、40チャネル;20個の電極対)を有するカテーテルは、5マイクロアンペアの電流(すなわち、20個の双極×5マイクロアンペア=100マイクロアンペア)の使用に制限される。合計電流は、全てのチャネルの加算総計である。100個の電極対(例えば、双極)を有するカテーテルでは、駆動電流は、1.0マイクロアンペアに制限される。合計電流を補助電流限界のしきい値未満に維持するためには、電極の数が増加するにつれて、駆動電流の大きさは減少しなければならない。理解されるように、それぞれの双極に印加される駆動電流の大きさを低下させると、その応答の信号対ノイズ比が減少する。したがって、多数の電極を有する医療機器では、ノイズが双極電極対の応答を上回ってしまう場合がある。
【0044】
本開示の様態はさらに、複数の異なる周波数(例えば、固有周波数)を有する複数の駆動信号を利用することによって、補助電流限界/しきい値を超えることなく、各電極対(例えば、双極)の駆動電流の大きさを増大できる、または双極の数を増大できるという認識に基づいている。すなわち、それぞれ異なった/固有の周波数を有する複数の駆動信号によって複数の双極が励起される場合の合計電流は、チャネル数の平方根で上昇することが認められている。このような構成では、総測定電流または合計電流は、下記の式(3)で表される。
【数3】
ここで、I周波数は、周波数あたり(すなわち、双極電極対ごと)の電流であり、N周波数は、周波数の総数である。チャネルの総数は、周波数の数の2倍であることに留意されたい(なぜなら、1つの周波数が、1つの双極電極対に対応するからである)。例えば、200個の電極を有する医療デバイスまたはカテーテルの場合、100個の異なる周波数が使用される。これらの周波数が10kHzを超えると仮定すると(例えば、15~17.5kHzの2500Hz帯域において25Hzごとに間隔をあけた周波数)、5マイクロアンペアの電流を有する駆動信号によってもたらされる合計電流は、50マイクロアンペア(すなわち、5マイクロアンペア×√100)以下であり、10kHzに対する限界である100マイクロアンペアをはるかに下回る。注目すべきは、各追加周波数が以前よりも高くなり、10kHzよりも高いので、実際の安全電流限界は、100マイクロアンペアよりも大きいことである。しかし、簡潔性の観点から、100マイクロアンペアの限界が利用される。
【0045】
上述した単一周波数の例(すなわち、100個の双極、1マイクロアンペアの駆動電流、100マイクロアンペアの合計電流)と比較して、複数の固有周波数を使用することでもたらされる合計電流の減少は、駆動電流の大きさの5倍の増加(すなわち、5マイクロアンペア 対 1マイクロアンペア)に伴って起こる。これは、図5のチャートに示されている。図が示すように、5マイクロアンペアの駆動電流で単一周波数の駆動信号を適用すると、40チャネル(例えば、20個の双極に対してそれぞれ5マイクロアンペア)で100マイクロアンペアに達する一方、固有周波数を使用すると、200チャネルでも50マイクロアンペアに達する程度である。固有周波数の使用することにより、医療デバイスの電極の総数を増加させるのに顕著な利点がもたらされる。
【0046】
式(3)は、任意の駆動電流に対するチャネルの最大数を求めるために再構成されてもよい:
【数4】
したがって、10kHz以上で、双極当たり5マイクロアンペア(簡潔性の観点から、一定の100マイクロアンペアの補助限界/しきい値を使用する)である場合、チャネルの最大数が下記のように求められる:
【数5】
逆に、双極電極対当たりの電流を2倍にすると、その二乗に応じてチャネルの最大数が減少する。すなわち、双極当たり10マイクロアンペアの駆動信号を使用する場合、200個のチャネルが許容される。双極当たり20マイクロアンペアの駆動信号を使用する場合、50個のチャネルが許容される。換言すれば、電流を減少させることにより許容可能なチャネル数が2乗関数で増加する一方、電流を増加させることにより許容可能なチャネル数が2乗関数で減少する。図6は、双極ごとに様々な電流レベルを用いることで100μAの限界がどのように達成されるかを示し、さらに関連するチャネル数も示すチャートである。示されるように、約15マイクロアンペア未満では、許容可能なチャネル数は劇的に増加する。これは、双極当たりの電流を低減することによる利点を示している。さらに注目すべきことに、このことはまた、医療デバイス上またはその内部に含まれる双極の数に基づいて、最大駆動電流を決定することを可能にする。すなわち、駆動電流は、安全な合計電流限界範囲内に留まりながら、任意の数の双極に対して最大化されてよく、その結果、応答信号の信号対ノイズ比が高くなる。
【0047】
固有周波数が高いと、安全な合計電流限界を維持しながら、許容可能なチャネルの数を増加させやすくなる。200マイクロアンペアの補助電流限界(例えば、周波数20kHz以上)では、理論上、チャネルの数は、下記の式(6)のように増加する:
【数6】
このような多数のチャネルは多くの理由から実用的ではないが、双極対当たりの駆動電流が低い場合における高周波数の利点を示す。どのような構成においても、複数の双極電極の駆動信号に固有周波数を使用することにより、インピーダンスを判定する手がかりとなる双極の数を大幅に増加することができる。あるいは、固有周波数を使用することにより、患者に対する補助電流限界を所定のしきい値未満に維持しながら、双極に印加される駆動電流の大きさを増大させることができる。
【0048】
各駆動信号に対して固有周波数を利用することにより、多数の電極を有する医療デバイスのインピーダンスを判定するための顕著な利点がもたらされるが、駆動信号に対して測定された応答信号は、双極ごとに識別されなければならない。開示される方法およびシステムは、各電極における応答信号(例えば、電圧信号)を同期的に復調するために、デジタル信号処理を利用する。本開示の別の重要な様態は、それぞれの電極対/双極を固有周波数で駆動することにより、情報を得る電極の数を大幅に増加させることおよび/または駆動電流の大きさを増加させることができるだけでなく、チャネル間のクロストークを最小限に抑えることができることである。
【0049】
以下の説明は、100個の離間した駆動周波数を使用する200個の電極(100個の双極)を有する医療デバイスの例示的な実施形態を対象とする。これらの駆動周波数を正確に25Hz間隔で離間させることにより、必要な帯域幅は25×100 =2500Hzとなる。他の周波数オフセットも可能である。この例示的な実施形態では、15025Hzから17500Hzまでの駆動周波数が利用される。周波数を密にまとめることで、デジタル化アンプ回路の必要帯域幅を簡潔化できる。さらに、各電極対/双極は、1~10マイクロアンペアの範囲の電流で駆動される。異なる周波数範囲および駆動電流範囲が利用されてもよいことが理解されるであろう。
【0050】
同期復調は、クロストークを最小限に抑えながら、固有周波数を互いに独立して検出することを可能にする。これを達成するために、ベース周波数(例えば、本例では25Hz)の高調波に駆動周波数を設定し、整数回のサイクルを含む期間にわたって応答を測定することによって、駆動周波数を互いに直交するようにする。毎秒25の更新/サンプリングレート(例えば、40ミリ秒の期間)を選択することによって、25ヘルツ区切りの周波数は、各サンプリング期間において整数回のサイクルを有する。すなわち、16025、16050、16075Hzなどの25Hz区切りの周波数は、互いに直交する。サンプリングレート25/秒は、周波数を密にまとめることと速い応答時間の間の妥協点として選択される。心臓への用途では、1秒当たり1~4拍の範囲の心臓拍動および1秒当たり25のサンプリングにより、心臓運動による変化を追跡することができることに留意されたい。周波数の間隔をより近づけることは可能であるが、心臓周期にわたるインピーダンスの変化を追跡する能力は減少する。間隔を2の倍数で減少させ12.5Hzにすると、リポート/サンプリングレートも12.5/秒に減少してしまい、可能ではあるが、速い速度で拍動する心臓におけるインピーダンスの変化を追跡するには理想的ではない。同様に、間隔を大きくして、1秒当たりのサンプル数を増やすことが可能であるが、こうすると必要な帯域幅が増える。
【0051】
同期復調は、測定されたデジタル応答信号(複数の周波数を合成したもの)に、まったく同じ周波数の駆動信号の複製と既知の位相オフセットを乗算することで構成される。結果として得られた信号は、次いで、ローパスフィルターにかけられ、(この例では)毎秒25サンプルに間引かれる。アナログ-デジタル変換器(ADC)のサンプリングレートは重要ではなく、実際には、従来のナイキストサンプリングレートを満たす必要はない。しかしながら、アンプ回路は、信号をADCへ送るのに十分な帯域幅を有していなければならない。システムを較正し、駆動信号と受信信号間の予想される位相遅延を補償することによって、直交復調が生じてもよい。その結果、レジスタンス(resistive)・インピーダンスの実数成分およびリアクタンス(reactive)・インピーダンスの虚数成分が見つけられてもよい。これは一般に複素インピーダンスとして知られている。同期復調はまた、非常に低い電流レベルでの信号抽出を可能にする。電流レベルが高いと、より良い信号対ノイズ比が得られるが、1マイクロアンペア未満でもインピーダンスの検出が成功したことが実証されている。
【0052】
図7は、例えば、インピーダンスの判定、接触感知の判定、患者の体内における細長い医療デバイス(例えば、カテーテル)の位置(すなわち、位置および向き)の判定、患者の解剖学的構造のマッピングなどのために、細長い医療デバイス16と共に利用される例示的なマッピングおよびナビゲーションシステム70の実施形態の概略図である。システム70は、当技術分野で知られている様々な視覚化、マッピング、およびナビゲーション部品を含む。これらの部品は、例えば、セントジュードメディカル(St. Jude Medical, Inc.)から市販されているEnSite(登録商標)Velocity(登録商標)システムを含むか、例えば、米国特許出願公開第7,263,397号または米国特許出願公開第2007/0060833号を参照することによって一般的に見られるものである。これらの出願は、本明細書中に完全に記載されているかのように、それらの全体が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0053】
システム70は、電子制御装置(ECU)72、アナログ-デジタル変換器(A-D)74、フィルタ76(例えば、バンドパスフィルタ)、デジタル-アナログ変換器84、フィルタ86(例えば、バンドパスフィルタ)、スイッチ78、信号ソースまたは信号発生器80、復調回路130、グラフィカルユーザインターフェース68、および様々な実施形態では、複数の身体表面パッチ電極82を備えてもよい。以下でより詳しく説明するように、追加の回路が含まれてもよい。システム70は、図4の128個の電極を有するカテーテル16のような細長い医療デバイスと電子的及び/又は機械的に結合されてもよい。システム70は、細長い医療デバイス16を患者98の体内の心臓92のような標的部位に案内したり、細長い医療デバイス16と患者98の組織との間の接触を評価するための多くの機能のために構成されてもよい。細長い医療デバイスは、本明細書に記載されるカテーテル24または16(図1および4を参照のこと)のうちの1つであってよく、または他の細長い医療デバイスであってもよい。細長い医療デバイスは、複数の電極対を有してもよい。
【0054】
信号発生器80は、1つまたは複数の電極のインピーダンスを評価するために、複数の励起信号または駆動信号を出力する。より具体的には、一つの実施形態では、信号発生器80は、約1kHz~500kHzを超える範囲内、より典型的には約2kHz~200kHzの範囲内、さらにより典型的には約10kHz~約20kHzの範囲内の固有周波数を有する複数の励起信号または駆動信号を生成してもよい。一つの実施形態では、駆動信号はそれぞれ一定の電流を有してよく、この一定の電流は、典型的には1~200μAの範囲内であり、より典型的には約5μAであってよい。信号発生器80はまた、例えば、患者の体内の電極82の位置を判定することに関連する信号を生成してもよい。
【0055】
ECU72は、メモリ94およびプロセッサ96を含んでもよい。メモリ94は、細長い医療デバイス16、患者98それぞれのデータ、および/または他のデータ(例えば、較正データ)を記憶するように構成されてもよい。そのようなデータ(医療デバイス固有のデータ、カテーテル電極の個数など)は、医療処置前に既知であってもよく、または処置中に決定され、記憶されてもよい。メモリ94はまた、プロセッサ96によって実行されると、本明細書に記載される1つまたは複数の方法、ステップ、機能、またはアルゴリズムをECU72に実行させる命令を記憶するように構成されてもよい。例えば、メモリ94は、細長い医療デバイス16の1つまたは複数の電極82のそれぞれのインピーダンスを判定するためのデータおよび命令を備えてよいが、これに限定されない。ECUは、感知された組織(例えば、心臓)の出力、細長い医療デバイス(図示せず)、および/または細長い医療デバイスの電極の評価値(例えば、インピーダンス)を表示するグラフィカルユーザインターフェース68に接続されてよい。
【0056】
図8は、1つの電極対に励起信号を提供する信号ソース80(例えば、電流ソース)の一つの実施形態を示す。本実施形態では、信号ソース80がフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)88を含む。しかし、特定用途向け集積チップ、アルテラのサイクロンシリーズ(Altera Cyclone series)、またはザイリンクスのスパルタンシリーズ(Xilinx Spartan series)を含む(ただし、これらに限定されない)他の回路が利用されてもよいことが理解されるであろう。本実施形態では、FPGA88が数値制御発振器(NCO)102を含む。NCO102は、通常正弦波である波形の同期した(すなわち、クロックされた)離散時間型の離散値表現を生成するデジタル信号発生器である。NCO102は、所望の周波数、振幅および/または位相を有する波形を提供するようにプログラム可能である。
【0057】
本実施形態では、NCO102は、マイクロプロセッサおよび/または制御ロジック104から提供される入力(例えば、単一の固定周波数基準)に基づいて、所望の周波数の正弦波の波形を生成する。本実施例では、FPGAに組み込まれたマイクロプロセッサ/制御ロジック104が、NCO102に入力を提供する。しかしながら、NCOへの入力は、例えば、ECU72のプロセッサ96によって提供されてもよいことが理解されるであろう。いずれの構成においても、NCO102は、所望の周波数(例えば、固有周波数)を有するデジタル波形出力を生成する。NCOの出力は、受信したデジタル信号を対応するアナログ信号に変換するデジタル-アナログ変換器106によって受信される。バンドパスフィルタ108は、変換されたアナログ信号を平滑化するために利用される。差動ドライバ(例えば、オペアンプ)110は、平滑化されたアナログ信号をバンドパスフィルタ108から受け取り、その信号を1対の差動信号として、絶縁トランス112に送る。1対の差動信号のそれぞれは、自身の導体である。差動信号回路(例えば、差動ドライバ及び絶縁トランス)におけるインピーダンスが等しければ、外部からの電磁波障害が、両方の導体に同じように影響を与える傾向がある。受信回路(絶縁トランス)は、導体間の差異を検出するだけなので、この技術は、導体が1つである構成と比較して、電磁気ノイズに抵抗する。絶縁トランス112は、医療デバイスをソースから絶縁しながら、ソース80から発生する信号の交流電流を医療デバイスの電極A及びBに伝達する。絶縁トランス112は、信号中の直流成分が電極へと通過するのを阻止する一方、信号中の交流成分を通過させる。絶縁トランス112からのデュアル出力は、低周波電流が電極へ流れるのをさらに制限するACカプラ114(例えば、キャパシタ)によって受け取られる。ACカプラは、電極対(例えば、双極)である電極Aおよび電極Bへ信号を出力する。ACカプラ114は、電極Aと電極Bの間のインピーダンスよりも数桁大きいインピーダンスを有する。
【0058】
図9は、信号測定回路(例えば、信号サンプラ)および同期復調回路の一つの実施形態を示す。最初に、低い出力インピーダンスレベルを有する電極からの電流を、典型的には高い入力インピーダンスレベルを有するアナログ-デジタル変換器(ADC)122に伝達するフィルタ120(例えば、バッファアンプ)において、電極Aまたは電極Bのうちの1つからの応答信号が受信される。バッファアンプは、第2のADCが電極回路の電流をロードし、所望の動作を妨げることを防止する。ADC122は、受信したアナログ信号を既知のサンプリングレート(例えば、64k/s)でサンプリングし、アナログ応答信号をデジタル応答信号に変換する。本実施形態では、ADCの出力は、制御システムと医療デバイスを分離している間にデジタル応答信号を制御システム(例えば、ECU)に伝達するデジタルアイソレータ124を通過する。
【0059】
デジタル応答信号は、本実施形態では、信号ソース80に使用されるのと同じFPGA内で定義される同期復調回路130に送られる。上述のように、同期復調は、デジタル化された応答信号に、全く同じ周波数の駆動信号の複製および既知の位相オフセットを乗算することからなる。すなわち、駆動信号と同じ周波数と、駆動信号からの既知の位相オフセットとを有する復調信号が生成され、デジタル化された応答信号に乗算される。駆動信号を生成するのと同じFPGA88を使用して復調信号を生成することにより、復調処理が単純化される。しかしながら、これは必須ではなく、同期復調回路と信号ソースは別々であってもよく、および/または異なったソフトウェアおよび/またはハードウェア部品から形成されてもよいことが理解されるであろう。いずれの構成においても、同期復調回路は、任意の周波数に関して駆動信号を複製することができなければならない。
【0060】
図示の実施形態では、デジタル応答信号は、同期復調回路130によって受信されると、分割される。数値制御発振器(NCO)132は、マイクロプロセッサ及び/又は制御ロジック104から提供される入力に基づいて、駆動信号の正弦表現及び余弦表現(例えば、同じ周波数の異なった位相)を生成する。分割されたデジタル応答信号はそれぞれ、正弦乗算器136および余弦乗算器134において、点ごとに正弦信号および余弦信号に乗算される。これにより、実数(正弦)チャネルおよび虚数(余弦)チャネルが得られる。正弦チャネルおよび余弦チャネルは、本実施形態では、カスケード積分器コム(CIC)フィルタで形成されるローパス間引きフィルタ138、140によってフィルタリングされ、間引かれる。上記の例によれば、駆動信号が25Hzのベース周波数の高調波である場合、チャネル/信号は、毎秒25サンプルで間引かれ、間引かれた信号のそれぞれは、整数回のサイクルを有する。次いで、ソース信号と応答信号との間の予想される位相遅延を補償するため、間引かれた信号は、ゲインおよびオフセット較正142、144を通過する。次いで、信号は、組み合わされてよい。すなわち、直交復調が起こってもよい。その結果、レジスタンス(resistive)・インピーダンスの実数成分およびリアクタンス(reactive)・インピーダンスの虚数成分を見つけてもよい。例えば、この情報は、出力ポート146を介して、ECUに送信されてよい。上述の測定および復調プロセスは、電極Aおよび電極Bの両方の応答に対して実行されてもよい。
【0061】
複数の電極に適応するために、図8および図9のシステムおよびプロセスは、スケーリングされてもよい。図10は、複数の電極対/双極に対して、複数の固有周波数の励起/駆動信号を提供するようにスケーリングされた信号ソース180(例えば、電流ソース)の一つの実施形態を示す。図示の実施形態では、電流ソース180は、合計128個の電極(すなわち、64個の電極対/双極)に対して64個の固有周波数を提供する。この実施形態は、限定ではなく例として提供されることが理解されるであろう。同様に、固有周波数の駆動信号は、より多くのまたはより少ない周波数および/または電極に対して提供されてもよい。図8に関連して上述した信号ソースと同様に、信号ソース180は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)88内に形成されている。FPGA88はさらに、複数の数値制御発振器(NCO)102a~h(以下、特に言及しない限り、NCO102)を含む。上記のように、NCO102は、マイクロコンプレッサおよび/または制御ロジック104から基準信号入力を受信する。図示の実施形態では、それぞれのNCO102は8つのチャネルを有する。すなわち、各NCO102は、8つの固有周波数を提供するようにプログラム可能である。この点に関して、8つのNCO102a~hは、64個の固有周波数を提供するように動作可能である。前述の例を続けると、各NCOは、25Hzずつ間隔のあいた8つの固有周波数を提供する。NCO102a~hは、約16kHz~18kHzの範囲で合計64個の個別の周波数を提供する。各NCO102の出力は、デジタル-アナログ変換器106a-hによって受信される。各デジタル-アナログ変換器は、8つの独立したチャネルを有しており、そのチャネルのそれぞれが、取り付けられた医療デバイスの電極が受けとるように、受信した駆動信号周波数のアナログ表現を生成するように構成されている。図8に関連して説明したソースと同様に、DACの出力は、医療デバイスの個々の電極に適用される前に、バンドパスフィルタ、差動ドライバ、および/またはトランスによって受信されてもよい。
【0062】
図11は、マルチチャネル信号測定回路およびマルチチャネル同期復調回路の一つの実施形態を示す。図11の実施形態の全体的な動作は、図9の実施形態の動作と同様である。最初に、電極からの電流をアナログ-デジタル変換器(ADC)122a~h(以下、特に言及しない限り122)に伝達するフィルタ(例えば、バッファアンプ)において、電極からの応答信号が受信される。信号ソースのDACと同様に、測定回路は、8個のADCを使用しており、各ADCは、取り付けられた16個の電極から8個の固有周波数を受信する。すなわち、それぞれのADCは、すべてのチャネルを同時にサンプリングする8チャネルを提供する。ADC122は、受信したアナログ信号(例えば、8チャネル)を既知のサンプリングレート(例えば、64k/s)でサンプリングし、電極のアナログ応答をデジタル応答信号に変換する。
【0063】
同期復調回路130は、ADC122からデジタル応答信号を受信する。本実施例では、同期復調回路130が信号ソース180に使用されるのと同じFPGAで定義されている。より具体的には、1時点で全ての信号をサンプリングし、パイプライン乗算器198にサンプリングされた信号を提供する128チャネルシーケンサ194によって、デジタル信号が受信される。パイプライン乗算器は、複数のNCO132a-hと通信しており、NCOは、マイクロプロセッサ及び/又は制御ロジック104からの入力に基づいて、それぞれ固有周波数の駆動信号の適切に位相遅延した正弦表現および余弦表現を生成する。パイプラインによりすべてのチャネルの計算を同時に実行可能であることを除いて、パイプライン乗算器198は、図9に関連して上述した乗算器と実質的に同じように動作する。パイプライン乗算器198は、各応答に正弦復調信号および余弦復調信号を乗算する。パイプライン乗算器198の出力は、パイプラインローパス間引きフィルタ202に供給され、上述したように、このフィルタは、整数回のサイクルにわたって出力をサンプリングする。次いで、間引きされた信号は、パイプラインゲイン及びオフセット較正204を通過し、オームインピーダンスの単位に変換される。この結果、レジスタンス(resistive)・インピーダンスの実数成分およびリアクタンス(reactive)・インピーダンスの虚数成分が、128個の電極のそれぞれについて見つけられる。この情報は、ECUに送信されてもよい。
【0064】
図8~11のシステムおよびプロセスは、駆動信号が直交する(すなわち、ベース周波数の高調波における固有駆動周波数および応答が、整数回のサイクルを有する期間にわたって測定される)場合において、多数の電極の同期復調を可能にする。さらに、多数の固有駆動周波数を使用することにより、得られる信号のRMS値(2乗平均平方根)がチャネルの数の平方根で増加するので、駆動電流を増加させることができる。明らかではないが、全ての周波数が同相になると、周期的に大きなピーク値を生成するように信号が加算される可能性がある。同期復調方式の1つの側面は、周波数がランダムではなく、決められた量だけ間隔をあけて選択されることである。したがって、すべての周波数が時間ゼロで始まり、かつ25Hz区切り(または他の等しい区切り)である場合、40ミリ秒(毎秒25回)ごとに、すべての信号がほぼ同相となり、大きな瞬間的なピーク値が生じる。これは図12にグラフで示されている。図12は、16025Hzで始まる200個の周波数が、25Hz毎に19500Hzまで加算された合計電流300のトレースを示している。数学的には、5マイクロアンペアで200個の周波数の場合のRMS電流は、(5×√200)または約70マイクロアンペアである。しかし、合計電流300には、40ミリ秒毎に、約1ミリアンペアとなるピーク302がある。このようなピーク電流は、補助電流限界/しきい値を超えると予想される。これは、それぞれのチャネルにランダム(非均一)な位相オフセットを加えることによって対処することができる。こうすることで、ピークを最小にし、時間にわたって電流を広げることができる。それぞれのチャネルにランダムな位相が割り当てられた合計電流400が、図13に示されている。
【0065】
図13に示されるように、それぞれの駆動信号にランダムな位相オフセットが印加されると、合計電流400は、はるかに均一となり、最大電流がより低くなる。駆動信号のそれぞれの周波数に位相オフセットを加えても、駆動信号が25Hz離間して直交したままであるので、同期復調を妨げることはない。較正時に必要に応じてFPGA内の各入力(例えば、基準周波数)を位相遅延させるだけで、位相オフセットは、復調中に補償される。これは、周波数入力および位相入力の両方を有する別個のNCOを信号ソースおよび復調回路に使用することによって容易になる。ソースのNCOには、ECUおよび/またはFPGAによって記憶され得る1回限りのランダムな位相オフセットが割り当てられる。復調のNCOには、ソースのNCOの位相オフセットと、ソースNCO102とアナログ―デジタル変換器122との間の位相遅延を補償するワンタイム較正中に、位相オフセットがそれぞれ割り当てられる。前述の較正データは、同様に、ECUおよび/またはFPGAによって記憶される。
【0066】
図14は、上述のシステムによって実行され得るプロセス320を示す。まず、プロセスは、共通ベース周波数の高調波である固有周波数をそれぞれ有する複数の駆動信号の生成322を含む。このような複数の駆動信号の生成はさらに、それぞれの駆動信号へのランダムな位相オフセットの割り当てを伴う。このようなランダムな位相オフセットは、予め定められていてもよい。駆動信号が生成されると、駆動信号は、医療デバイスの個々の電極対間に同時に印加される(324)。この駆動信号の印加には、電極への印加の前に、駆動信号をデジタル-アナログ変換することをさらに含んでもよい。駆動信号に対する1つまたは複数の電極の合成応答が、測定される(326)。この測定は、電極のアナログ応答のデジタル信号への変換をさらに伴ってもよい。次いで、デジタル信号は、同期復調される(328)。この同期復調は、それぞれの固有周波数に対する復調信号の生成を伴う。それぞれの復調信号は、同じ周波数を有し、対応する駆動信号に対して既知の位相オフセットを有する。それぞれの駆動信号がランダムな位相オフセットを有する場合、復調信号に対応するものは、同じランダムな位相オフセットを有することになる。駆動信号の同期復調はまた、駆動信号に関して、整数回のサイクルを含む期間にわたる信号のサンプリングを含んでもよい。同期復調により、各電極に対して複素インピーダンス値が出力される(330)。すなわち、各電極に対して、実数インピーダンスの値およびリアクタンス(reactive)・インピーダンスの値が出力されてもよい。例えば、これらの出力は、グラフィカルユーザインターフェース68に出力されてもよい(図7参照)。同様に、各電極の接触状態についてのフィードバックをユーザに提供するために、各電極の評価値が、カテーテルのグラフィカルな描写と共にグラフィカルユーザインターフェース68上に表示されてもよい。すなわち、インピーダンス値は、とりわけ、組織と電極の接触を評価するために利用されてよい。
【0067】
図15は、上述のシステムによって実行され得るさらなるプロセス340を示す。このプロセスにより、医療デバイスの複数の電極に印加される駆動信号の電流レベルを動的に調整することが可能である。まず、プロセスは、取り付けられた医療デバイスの電極の数の判定342を含む。そのような判定は、取り付けられた医療デバイスに問い合わせる制御装置(例えば、ECU)によって実行されてもよい。あるいは、システムのユーザがその情報を入力してもよい。電極の数および電極に印加される複数の駆動信号の周波数帯域に基づいて、補助電流限界またはしきい値が決定される(344)。補助電流限界は、記憶されたデータ(例えば、較正データ)から決定されてもよい。補助電流限界及び電極の個数に基づいて、電極に印加される駆動信号の電流レベルを特定してもよい(346)。例えば、駆動信号の電流レベルは、駆動信号の合計電流を補助電流限界未満に維持しながら、電極に印加されたときの信号の信号対ノイズ応答を高めるために、最大化されてもよい。駆動信号の電流レベルが特定されると、固有周波数の駆動信号が電極に印加される(348)。ここでは、それぞれの駆動信号が、特定された電流レベルを有する。
【0068】
上述のシステムは、医療デバイスと共に使用すると、さらに有益である。例えば、駆動信号を生成するためにDACを利用することにより、チャネルを無効にする手段が提供される。この点に関して、DACをゼロまたは固定値に設定するだけで、チャネルを効果的にオフすることができる。同様に、必要に応じて、駆動信号の電流レベルを増加させるために、チャネルが意図的に無効化されてもよい。バンドパスフィルタによって、他の利点も提供される。バンドパスフィルタは、狭い周波数及び/又は振幅信号の通過のみを許可するので、過大な大きさの駆動信号の出力につながるソフトウェアエラー又はハードウエアエラーは通過されない。バンドパスフィルタは、駆動信号に対して、フェールセーフ制限を提供する。
【0069】
インピーダンスの計算及び接触状態の判定に加えて、システム70は、患者98の体内における細長い医療デバイス16(例えば、カテーテルの遠位端部)の位置及び向き(P&O)を判定するように構成されてもよい。したがって、ECU72は、1つまたは複数の電界の生成を制御し、それらの電界内における1つまたは複数の電極82の位置を判定するように構成されてもよい。したがって、ECU72は、所定の戦略に従って信号発生器80を制御し、身体表面パッチ電極82およびカテーテル電極の様々な対(双極子)を選択的に通電するように構成されてもよい。
【0070】
再び図7を参照して、システム70のマッピングおよびナビゲーション機能を簡単に説明する。身体表面パッチ電極82は、患者98の身体内、より具体的には心臓92内において、特有軸の電界を生成するために使用されてもよい。(1)電極82X1、82X2(X軸)、(2)電極82Y1、82Y2(Y軸)、および(3)電極82Z1、82Z2(Z軸)のパッチ電極の3セットを設けてもよい。さらに、身体表面電極(「腹部パッチ」)82は、電気的基準として提供されてもよい。身体パッチ電極82X1、82X2、82Y1、82Y2、82Z1、82Z2、82は、本明細書では概して、身体パッチ電極82と称することがある。身体パッチ電極82の数がより少ない、身体パッチ電極82の数がより多い、または例えば、直交配置の代わりに直線配置とするなどの物理的に異なる構成を含む、他の表面電極の構成および組み合わせも、本開示と共に使用するのに適している。
【0071】
各パッチ電極82は、独立してスイッチ78に結合してもよく、パッチ電極82の対は、ECU72上で実行されるソフトウェアによって選択され、信号発生器80に結合されてもよい。例えば、Z軸の電極82Z1、82Z2などの一対の電極は、信号発生器80によって励起されて、患者98の体内、より詳細には心臓92内に電界を生成してもよい。一つの実施形態では、様々なパッチ電極82のセットが選択され、非励起の表面電極82のうちの1つまたは複数が電圧を測定するために使用されるため、この電極励起プロセスは、迅速かつ連続的に行われる。励起信号(例えば、電流パルス)の送達中に、残りの(非励起の)パッチ電極82は、腹部パッチ82を基準としてもよく、これらの残りの電極82に印加される電圧が測定されてもよい。このようにして、パッチ電極82は、駆動電極セットと非駆動電極セットとに分割されてもよい。ローパスフィルターが、電圧測定値を処理してもよい。フィルタリングされた電圧測定値は、アナログ-デジタル変換器によってデジタルデータに変換され、ソフトウェアの指示に従って(例えば、メモリ94に)格納するためにECU72に送信されてもよい。本明細書では、この電圧測定値の集合を「パッチデータ」と称することがある。ソフトウェアは、表面電極82の各対の励起中に各表面電極82で測定される個々の電圧測定値を保存し、アクセスしてもよい。
【0072】
概して、一つの実施形態では、細長い医療デバイス16(すなわち、1つまたは複数の電極)の位置を判定するために、3つの名目上直交する電界が、一連の駆動・感知電気双極子によって生成されてもよい。あるいは、これらの直交する電界は分解されてもよく、表面電極の任意の対(例えば、非直交)が、効果的な電極三角測量を提供するために、双極子として駆動されてもよい。
【0073】
パッチデータは、1つまたは複数のカテーテル電極での測定値、および他の電極およびデバイスでの測定値と共に、1つまたは複数のカテーテル電極の相対位置を判定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、6つの直交するパッチ電極82のそれぞれの電位は、特定の表面電極対が駆動される場合を除いて、すべてのサンプルについて取得されてもよい。一つの実施形態では、駆動されているパッチ電極を含むすべてのパッチ電極82で、電位がサンプリングされてもよい。
【0074】
様々な電極の位置判定の一部として、ECU72は、動作補償などの1つまたは複数の補償および調整機能を実行するように構成されてもよい。動作補償には例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2012/0172702号に記載されているような、呼吸によって誘発される患者の身体の動きに対する補償が含まれる。
【0075】
パッチ電極82およびカテーテル電極のそれぞれからのすべてのデータセットは、患者98内のカテーテル電極の位置を判定するために使用される。駆動パッチ電極82の特定の対について電圧測定が行われた後、パッチ電極82の別の対が信号発生器80によって励起され、残りのパッチ電極82およびカテーテル電極の電圧測定処理が行われる。一つの実施形態では、このシーケンスは、例えば、毎秒100回の迅速さで行われてもよい。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,263,397号により詳細に記載されているように、患者98内のカテーテル電極上の電圧は、電界を確立するパッチ電極82の電極の位置と線形関係を有することがある。
【0076】
要約すると、図7は、7つの身体パッチ電極82を使用する例示的なシステム70を示し、これらの身体パッチ電極82は、電流を注入し、結果として生じる電圧を感知するために使用されてもよい。電流は、任意のタイミングで、2つのパッチ82の間で駆動されてもよい。位置測定は、非駆動パッチ82と、例えば、グランド基準としての腹部パッチ82との間で行われてもよい。異なるパッチのセットの間で電流を駆動し、1つまたは複数のインピーダンスを測定することによって、電極82の位置を判定してもよい。測定され得るインピーダンスは、細長い医療デバイス16上の2つのカテーテル電極の対またはセットの間で駆動される電流に従ってもよい。一つの実施形態では、時分割多重化を使用して、対象となる全ての量を駆動し、測定してもよい。位置決定手順については、例えば、上記の米国特許第7,263,397号および公開第2007/0060833号においてより詳細に説明されている。
【0077】
本明細書では、様々な装置、システム、及び/又は方法の様々な実施形態が説明される。本明細書に記載され、添付の図面に示されるような実施形態の全体的な構造、機能、製造、及び使用の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、実施形態はそのような具体的な詳細なしに実施されてもよいことが、当業者によって理解されるであろう。他の例では、周知の動作、部品、及び要素は、本明細書で説明される実施形態を曖昧にしないように、詳細には説明されていない。当業者は、本明細書に記載され図示された実施形態が非限定的な例であることを理解し、したがって、本明細書に開示された具体的な構造及び機能の詳細は代表的なものであり、必ずしも実施形態の範囲を限定するものではなく、実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解することができる。
【0078】
本明細書全体を通して見られる、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一つの実施形態」、又は「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明された特定の機能、構成、又は特徴が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して見られる、「様々な実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「一つの実施形態において」、又は「実施形態において」などの語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造又は特質は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適当な方法で組み合わせられてもよい。したがって、一つの実施形態に関連して図示又は説明された特定の特徴、構造、又は特性は、そのような組み合わせが非論理的又は非機能的ではないことを前提として、限定なしに、一つ又は複数の他の実施形態の特徴、構造、又は特性と、全体的又は部分的に組み合わせることができる。
【0079】
多数の実施形態がある程度の詳細を伴って上記で説明されてきたが、当業者は本開示の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を行うことができる。例えば、本開示は、各電極対が他の全ての電極対から独立している双極構成について記載しているが、別の実施形態では、各双極の一方の側が共通電極であるように電極を構成してもよい。例えば、図2のカテーテルに関連して、先端電極22が、付加的なリング電極20A-Iのそれぞれの共通電極を形成してもよい。すなわち、先端電極22は、各電極対のうちの一方の電極であってもよい。
【0080】
方向に関するすべての言及(例えば、プラス、マイナス、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、上部、下部、上側、下側、垂直、水平、時計回り、および反時計回り)は、本開示の読者の理解を助けるための識別目的のためにのみ使用され、特に本開示の態様の位置、向き、または使用に関して限定するものではない。本明細書で使用される「構成される」、「構成する」という語句および類似の語句は、主題のデバイス、装置、またはシステムが単に目的を実行することができるだけではなく、1つまたは複数の特定の目的を満たすように(たとえば、適切なハードウェア、ソフトウェア、および/または構成要素を介して)設計および/または構築されることを示す。接続に関する表現(例えば、取り付けられる、結合される、接続されるなど)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続間の中間部材及び要素間の相対運動を含んでもよい。したがって、接続に関する表現は、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを必ずしも推論しない。上記の説明に含まれるか、又は添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものにすぎず、限定するものではないと解釈されるべきであることが意図される。詳細又は構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神から逸脱することなく行うことができる。
【0081】
参照により本明細書に組み込まれると言われている特許、出版物、又は他の開示材料は、その全体又は一部が組み込まれた材料が本開示に記載されている既存の定義、ステートメント、又は他の開示材料と矛盾しない範囲でのみ、本明細書に組み込まれる。したがって、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載される開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する材料に取って代わる。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載されている既存の定義、ステートメント、又は他の開示材料と矛盾する任意の材料又はその一部は組み込まれた材料と既存の開示材料との間に矛盾が生じない範囲でのみ組み込まれる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
接続された医療デバイスの電極の間のインピーダンスを測定するための電子制御装置であって、
コントローラであって、
共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数をそれぞれ有している複数の駆動信号を生成し、
前記複数の駆動信号のそれぞれを、前記医療デバイスの個々の電極対間に同時に印加するように構成されている、コントローラと、
前記医療デバイスの複数の個々の電極対に印加される前記複数の駆動信号の合成応答信号を測定するための測定回路と、
復調器であって、
前記固有変調周波数ごとに、前記合成応答信号を同期復調するように構成されており、
前記固有変調周波数ごとに、当該固有変調周波数と同一の周波数と、当該固有変調周波数の位相からオフセットした既知の位相と、を有している変調信号を、前記合成応答信号に乗算する、復調器と、を備えており、
前記コントローラは、前記合成応答信号の前記同期復調に基づいて、前記電極のそれぞれのインピーダンス値を出力する、電子制御装置。
(項目2)
前記インピーダンス値は、レジスタンス(resistive)・インピーダンスおよびリアクタンス(reactive)・インピーダンスを有する複素インピーダンス値を含む、項目1に記載の電子制御装置。
(項目3)
前記復調器は、前記共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有するサンプリング期間にわたってサンプリングを行う、項目1に記載の電子制御装置。
(項目4)
前記コントローラは、前記複数の駆動信号が前記複数の個々の電極対に印加される前に、前記複数の駆動信号を複数のデジタル駆動信号から複数のアナログ駆動信号に変換するための少なくとも1つのデジタル-アナログ変換器(DAC)をさらに備えている、項目1に記載の電子制御装置。
(項目5)
前記複数のデジタル駆動信号を生成するための少なくとも1つの第1の数値制御発振器(NCO)をさらに備え、
前記複数のデジタル駆動信号は、前記少なくとも1つのDACによって受信される、項目4に記載の電子制御装置。
(項目6)
前記復調器は、複数の復調信号を生成するための少なくとも1つの第2の数値制御発振器(NCO)をさらに備える、項目5に記載の電子制御装置。
(項目7)
前記コントローラと、前記第1のNCOと、前記第2のNCOと、前記復調器は、共通のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の要素である、項目5に記載の電子制御装置。
(項目8)
前記コントローラは、前記第1のNCOおよび前記第2のNCOに、前記固有変調周波数のそれぞれを入力するようにさらに構成されている、項目6に記載の電子制御装置。
(項目9)
前記コントローラは、前記固有変調周波数ごとに、前記第1のNCOおよび前記第2のNCOに、所定のランダムな位相オフセットを入力するようにさらに構成されている、項目8に記載の電子制御装置。
(項目10)
前記コントローラは、
前記医療デバイスの個々の電極対の数を特定し、
前記個々の電極対の数に基づいて、前記複数の駆動信号の電流レベルを調整するようにさらに構成されている、項目1に記載の電子制御装置。
(項目11)
前記コントローラは、前記個々の電極対の数の2乗平均平方根に前記電流レベルを乗じた値に応じて、前記複数の駆動信号の合成電流レベルを所定の電流しきい値未満に維持する、項目10に記載の電子制御装置。
(項目12)
前記コントローラは、前記個々の電極対のうちの1つまたは複数を選択的に無効にするように構成されている、項目10に記載の電子制御装置。
(項目13)
前記コントローラは、少なくとも50個の前記駆動信号を生成するように構成されており、
前記少なくとも50個の駆動信号のそれぞれが、前記固有変調周波数と、20マイクロアンペア未満の駆動電流と、を有している、項目1に記載の電子制御装置。
(項目14)
接続された医療デバイスの電極の間のインピーダンスを測定するための電子制御装置であって、
共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数をそれぞれ有している複数のデジタル駆動信号を生成するように構成されている周波数ソースと、
前記複数のデジタル駆動信号を受信し、複数のアナログ駆動信号を出力するように構成されている少なくとも1つの第1のデジタル-アナログ変換器であって、
前記複数のアナログ駆動信号は、前記医療デバイスの対応する複数の個々の電極対間に同時に印加される、デジタル-アナログ変換器と、
複数の前記電極から複数のアナログ応答を受信し、前記個々の電極対に同時に印加される前記複数の駆動信号の合成デジタル応答信号を生成するように構成されている、少なくとも1つの第1のアナログ-デジタル変換器と、
前記固有変調周波数ごとに、前記合成応答信号を同期復調し、前記複数の電極に対するインピーダンス値を出力するように構成されている復調回路と、を備えている、電子制御装置。
(項目15)
前記周波数ソースは、前記複数の駆動信号を生成するための少なくとも1つの第1の数値制御発振器(NCO)をさらに含む、項目14に記載の電子制御装置。
(項目16)
前記復調回路は、複数の復調信号を生成するための少なくとも1つの第2の数値制御発振器(NCO)をさらに備え、
前記復調信号のそれぞれは、
前記複数の駆動信号のうち対応する1つ駆動信号の前記固有変調周波数と同一の周波数と、
当該固有変調周波数の位相からオフセットした既知の位相と、を有している、項目15に記載の電子制御装置。
(項目17)
前記第1のNCOと前記第2のNCOは、共通のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の要素である、項目16に記載の電子制御装置。
(項目18)
前記周波数ソースは、少なくとも50個の前記デジタル駆動信号を生成するように構成されており、
前記少なくとも50個のデジタル駆動信号それぞれが、前記固有変調周波数と、20マイクロアンペア未満の駆動電流と、を有している、項目14に記載の電子制御装置。
(項目19)
医療デバイスの複数の個々の電極対の間のインピーダンスを測定するために使用する方法であって、
共通ベース周波数の高調波である固有変調周波数をそれぞれ有する複数の駆動信号を生成することと、
前記複数の駆動信号のそれぞれを、前記医療デバイスの個々の電極対間に同時に印加することと、
前記医療デバイスの複数の個々の電極対間に印加される前記複数の駆動信号の合成応答信号を測定することと、
前記固有変調周波数ごとに、前記合成応答信号を同期復調することと、
前記電極のそれぞれに対して、インピーダンス値を出力することと、を備えている、方法。
(項目20)
前記同期復調することは、前記共通ベース周波数に対して、整数回のサイクルを有する期間にわたって前記合成応答信号をサンプリングすることをさらに含んでいる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記医療デバイスの個々の電極対の数を特定することと、
前記個々の電極対の数に基づいて、前記複数の駆動信号の電流値を調整することと、をさらに備えている、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記個々の電極対の数の2乗平均平方根に電流レベルを乗じた値に応じて、前記複数の駆動信号の電流レベルの合計を所定の電流しきい値未満に維持することをさらに備えている、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記複数の駆動信号を生成することは、少なくとも50個の駆動信号を生成することを含んでおり、
前記少なくとも50個の駆動信号のそれぞれが、20マイクロアンペア未満の駆動電流を有している、項目19に記載の手法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15