(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】血圧測定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
A61B5/022 400E
A61B5/022 C
A61B5/022 300A
A61B5/022 ZDM
(21)【出願番号】P 2020546080
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2019055470
(87)【国際公開番号】W WO2019170689
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-02
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲルス,アヒム ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】デリモア,キラン ハミルトン ジェイ
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125246(JP,A)
【文献】特開昭61-238225(JP,A)
【文献】特表2018-501016(JP,A)
【文献】特開2017-18587(JP,A)
【文献】特開2001-8909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0340209(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0055163(US,A1)
【文献】国際公開第2017/037117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/021-5/0235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第1の側を有するキャリアであり、前記第1の側が身体部分に面した状態で、少なくとも部分的に前記身体部分に対して又はその周囲に取り付けるように構成されているキャリアと、
- 前記キャリアの第1の側において異なる横方向位置に配置された複数の独立して制御可能な電気活性材料アクチュエータであり、前記複数の電気活性材料アクチュエータの各々は、少なくとも前記キャリアから離れる方向に変位及び/又は力を提供するように独立して作動可能であ
り、各電気活性材料アクチュエータには、それぞれの力伝播ユニットが取り付けられている、複数の独立して制御可能な電気活性材料アクチュエータと、
- パルスモニタリングを行い、パルスモニター信号を出力するパルスモニターと、
- コントローラと、
を含む血圧モニタリングシステムであって、前記コントローラは、
前記複数の電気活性材料アクチュエータを独立して作動させ、パルスモニタリングを行って、パルスモニタリングを行うのに最良の感知信号対ノイズ比が達成される位置に置かれた1つ又は複数の好ましい電気活性材料アクチュエータを特定し、
前記複数の電気活性材料アクチュエータのうち特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを作動させている間又はその直後に、前記パルスモニターを制御してパルスモニタリングを行い、
前記パルスモニタリングで得られた前記パルスモニター信号を決定し、
前記パルスモニター信号から血圧を決定する、
ように適応している、血圧モニタリングシステム。
【請求項2】
前記パルスモニターは、PPGセンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各電気活性材料アクチュエータは、作動時にたわむはり部材を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の電気活性材料アクチュエータは、前記キャリアの第1の側において横方向に離隔された2乃至20のアクチュエータを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータは、動脈に近接したものとして特定された少なくとも1つの電気活性材料アクチュエータと、加圧効果を高めるための少なくとも1つの直径方向反対にある電気活性材料アクチュエータとを含む、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
電気活性材料アクチュエータのアレイによって加えられる圧力をモニターする圧力センサをさらに含む、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧力センサは、圧力感知素子のセットを含み、少なくとも1つが各電気活性材料アクチュエータに関連付けられている、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、各電気活性材料アクチュエータがその独自の圧力感知素子として機能するように、各電気活性材料アクチュエータを作動させて圧力感知機能を実施するように適応している、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記キャリアは、可撓性である、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
血圧モニタリングシステムを制御する方法であって、前記血圧モニタリングシステムは、
- 第1の側を有するキャリアであり、前記第1の側が身体部分に面した状態で、少なくとも部分的に前記身体部分に対して又はその周囲に取り付けるように構成されているキャリアと、
- 前記キャリアの第1の側において異なる横方向位置に配置された複数の独立して制御可能な電気活性材料アクチュエータであり、前記複数の電気活性材料アクチュエータの各々は、少なくとも前記キャリアから離れる方向に変位及び/又は力を提供するように独立して作動可能であ
り、各電気活性材料アクチュエータには、それぞれの力伝播ユニットが取り付けられている、複数の独立して制御可能な電気活性材料アクチュエータと、
- パルスモニタリングを行い、パルスモニター信号を出力するパルスモニターと、
を含み、前記方法は、
- 前記複数の電気活性材料アクチュエータを独立して作動させ、パルスモニタリングを行って、パルスモニタリングを行うのに最良の感知信号対ノイズ比が達成される位置に置かれた1つ又は複数の好ましい電気活性材料アクチュエータを特定するステップと、
- 前記複数の電気活性材料アクチュエータのうち特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを作動させている間又はその直後に、前記パルスモニターを制御してパルスモニタリングを行うステップと、
- 前記パルスモニタリングで得られた前記パルスモニター信号を決定するステップと、
- 前記パルスモニター信号から血圧を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で前記プログラムが実行されると、請求項
10に記載のシステムを制御する方法を実施するように適応したコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧モニタリングシステム、血圧モニタリング方法、及び該方法を行うためのコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
目立たない健康感知システムへの需要が高まっている。特に、従来の入院治療から、個人を中心に展開されている目立たないバイタルサインセンサ技術へと移行して、被験者の全身健康状態に関するより良い情報が提供されている。
【0003】
そのようなバイタルサインモニターシステムは、疾患予防によって治療費を削減する、及び、生活の質を高めるのに寄与し、被験者の全身健康状態の診断を試みるときに、医師が分析するための改善された生理学的データを提供することができる。バイタルサインのモニタリングには、典型的には、以下の身体パラメータ:心拍数、血圧、呼吸数、及び深部体温のうちの1つ以上のモニタリングが含まれる。
【0004】
米国では、成人集団の約30%が高血圧を有している。この集団のうち約52%のみが、コントロールされた状態を有している。高血圧症は、明らかな症状がなく、最終的に死に至る可能性のある一般的な健康問題であり、従って、「サイレントキラー」と呼ばれることが多い。血圧は、一般的に、加齢と共に上昇し、その後の人生で高血圧になるリスクはかなり高い。65~74の年齢層の人々の約66%が高血圧を有している。持続性高血圧症は、脳卒中、心不全、及び死亡率上昇に対する重要な危険因子の1つである。
【0005】
高血圧患者の状態は、生活習慣の変更、健康的な食事の選択、及び薬物療法によって改善することができる。特に高リスクの患者には、連続的な24時間の血圧モニタリングが非常に重要であり、通常の日常生活動作を妨害しないシステムが望まれていることは明らかである。
【0006】
血圧は、通常、2つの読み取りデータ:収縮期圧及び拡張期圧として測定される。収縮期圧は、心臓の左心室の最大収縮の間に動脈において生じる。拡張期圧は、心筋が拍動と血液の再充満との間で静止しているときの動脈における圧力を指す。正常血圧は、120/80mmHgであると考えられている。血圧が(従うガイドラインに応じて)130/90又は140/90mmHgを超える場合、その人は高血圧であると考えられ、高血圧症の2つのステージが、血圧レベルの上昇に対して定められてもよく、血圧が180/110mmHgに達した場合に高血圧クリーゼとして定められる。これらの値をメートル法換算値に換算すると、760.0mmHgは101.325kPaに等しい(1mmHg=133.32Pa)ということに留意されたい。
【0007】
血圧をモニターする方法には2つの主要な種類がある。
【0008】
侵襲的な直接血圧モニタリングでは、ゴールドスタンダードはカテーテル法によるものである。流体における歪みゲージが、任意の動脈部位において血液と直接接触して配置される。この方法は、動的(臨床的)環境において正確な連続的な血圧モニタリングが必要な場合にのみ使用され、リアルタイムで血圧をモニターするために、集中治療医学及び麻酔において最も一般的に使用される。
【0009】
非侵襲的な間接血圧モニタリングでは、聴診法及びオシロメトリー法が知られている。どちらの方法も、腕の周囲に配置されるカフを使用し、このカフは、収縮期圧よりも高い圧力で膨張させられ、次にゆっくりと収縮させられる。聴診法は、(典型的には聴診器を有する専門家によって)カフの下でコロトコフ音を聴くことに基づいており、コロトコフ音は、カフ圧が収縮期圧に等しいときに現れ、残りの圧力が拡張期圧に等しいときに消える。オシロメトリー法は、圧力振動を(電気機械的に)測定することに基づいている。これらは、カフ内の圧力が収縮期圧に等しいときに現れ、平均圧力で最大となり、拡張期圧で消える。
【0010】
クランプ又はカフを使用して(適した圧力検出器の助けを借りて)血圧を決定するために、必要とされる圧力までカフ又はクランプ(の一部)を加圧することができる、及び/又は、必要な圧力変動を送ることができる装置が必要である。
【0011】
典型的には、圧縮機のような装置が、必要とされる圧力を送るために使用される。送風機のような装置は、一般的には、大気圧より少なくとも100mmHg(約13kPa)高い必要カフ圧力がそのような装置には要求されるため、適していない。この目的のための典型的なポンプは、例えば、約400mAの電流で6Vで作動し、例えば、(ポンプから30cmの所で)55dBまでのノイズが生じる。
【0012】
膨張式カフの必要性を回避するために、PPGセンサを使用して血圧測定を行うことが提案されている。例えば、脈波伝播速度が、複数のPPGセンサを使用して測定されてもよい。脈波伝播速度(PWV)は、脈が動脈内で移動する速度である。PWVは動脈硬化度の尺度であり、血圧(平均動脈圧(MAP)又は脈圧(PP))とも相関することが知られている。PWVは、脈波伝達時間(PTT;血液のパルスが心臓から特定の場所まで移動するのに要する時間)から計算することができ、又は、より一般的には、パルス遅延(PD;身体の2つの異なる場所におけるPTTの差)から計算することができる。PWVの測定は、身体のある場所(上腕等)に到達するパルスと別の場所(手首等)に到達するパルスとの時間差を測定することによって行われてもよい。PPGセンサを使用して血液量の変化を検出することによって、パルスに対応する周期的信号が得られる。従って、パルスオキシメータ等のPPGセンサは、脈拍数の測定値を提供するために一般的に使用される。
【0013】
血圧を測定する(及びPPGセンサ等のいかなる光学装置も使用しない)別の方法は、眼圧測定法である。この方法は、骨に対して浅腹壁動脈の壁に直角に制御された力を加えることに基づいている。力センサが、接触時の圧力を測定する。浅腹壁動脈に対するこの作用によって、局所閉塞が生じる。周囲のカフは必要ではないが、代わりに押圧力を加えることができる支持装置が必要である。この場合、血圧が測定されず、虚血のリスクがあるため、動脈を完全に閉じないように加えられる力は小さくなければならない。加えられる力は、脈圧波に従うように変えられる。
【0014】
正しい測定のためには、加えられる力だけではなく、動脈の中心上の眼圧計の位置決めが非常に重要である。正しい位置と間違った位置との差はミリメートル単位である。センサが間違って配置されている場合、センサに対する血圧の非線形効果がもたらされる。その結果、血圧は正しく測定されない。このように、眼圧測定は運動に対して非常に敏感であるため、センサの連続的で正確な位置決めが必要である。従って、眼圧測定は通常、被験者が安静の状態で実行される。精度は、典型的には、時間の経過に伴い急速に低下し、装置は、日常活動の間、被験者にとって非常に快適であるというわけではない。
【0015】
脈拍のPPG測定を利用するカフベースのシステムもある。例えば、PPG測定を膨張式手首カフと組み合わせることが、非特許文献1において提案されている。ここでも、必要な圧力を送るために圧縮機のような装置が必要とされる。
【0016】
血圧を測定するためのPPG測定を伴うフィンガーベースのカフも知られており、実際に市販されており、このカフでは、加えられる圧力は、一定のPPG信号を維持するように制御される。これらは、一般的に、高い圧力で作動して、血流の部分的な閉塞を提供する。
【0017】
これらの解決策の全てが、それらに関連する異なる問題を有するため、低コスト、低ノイズ、コンパクトで非侵襲的な、血圧を測定する方法が依然として必要なままである。
【0018】
特許文献1は、指又は手首に圧力を加えるためにアクチュエータが使用される血圧モニタリングシステム及び方法を開示している。加えられる圧力と(例えば、PPGセンサを使用して)測定されるパルス信号との間の伝達関数が、血圧測定値を導き出すために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許出願第2017/367597号
【文献】国際公開第2017/036695号
【文献】国際公開第2017/037117号
【非特許文献】
【0020】
【文献】“Estimation of Blood Pressure Using Photoplethysmography on the Wrist” by SH Song et. al., Computers in Cardiology 2009; 36; 741-744
【文献】N. M. L. Peter, “A review of methods for non-invasive and continuous blood pressure monitoring: Pulse transit time method is promising?”, ScienceDirect,2014
【発明の概要】
【0021】
本発明の一態様に従った例によると、独立請求項において記載される血圧モニタリングシステムが提供される。
【0022】
本発明は、血圧モニタリングシステムを提供し、血圧モニタリングシステムは:
- 第1の側を有するキャリアであり、第1の側が身体部分に面した状態で、少なくとも部分的に身体部分に対して又はその周囲に取り付けるように構成されているキャリア;
- キャリアの第1の側において異なる横方向位置に配置された複数の電気活性材料アクチュエータであり、複数の電気活性材料アクチュエータの各々は、少なくともキャリアから離れる方向に変位及び/又は力を提供するように独立して作動可能である、複数の電気活性材料アクチュエータ;
- パルスモニタリングを行い、パルスモニター信号を出力するパルスモニター;及び
- コントローラ;
を含み、コントローラは:
複数の電気活性材料アクチュエータを独立して作動させ、パルスモニタリングを行って、パルスモニタリングを行うのに最良の位置に置かれた1つ又は複数の好ましい電気活性材料アクチュエータを特定し;
複数の電気活性材料アクチュエータのうち特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを作動させている間又はその直後に、パルスモニターを制御してパルスモニタリングを行い;
パルスモニタリングで得られたパルスモニター信号を決定し;
パルスモニター信号から血圧を決定する;
ように適応している。
【0023】
従って、当該システムは、少なくとも部分的に、例えば、首、肢(腕若しくは脚)、又は足指/手指等の身体部分に対して又はその周囲に取り付けるためのキャリアを含む。キャリアは、アクチュエータが異なる横方向位置に配置される第1の側を有する。従って、この位置決めは、キャリアが身体部分に対して又はその周囲に取り付けられる場合に、複数のアクチュエータのうち異なるものが、身体部分の輪郭/丸みに関して異なる空間的位置又は角度的位置にさえも置かれるようなものである。従って、キャリアに関しては、アクチュエータはキャリアから内向きに面している。
【0024】
各電気活性材料アクチュエータは、少なくともキャリアから離れる方向に変位及び/又は力を提供するように独立して制御可能/作動可能である。これは、キャリアが身体部分に対して又はその周囲に位置決めされる場合に、少なくともアクチュエータによって生成される力の成分が身体部分に向けて提供され得るということを意味する。従って、それらは、作動に応答して内向きに作動可能であり、この作動は、身体部分に力又は圧力を加えることを意味する。
【0025】
当該システムは、パルスモニタリングを行い、パルスモニター信号を出力するパルスモニターを含む。
【0026】
パルスモニターがモニタリングしているときに複数のアクチュエータのうち1つ以上が作動されるように、アクチュエータを作動させ且つパルスモニターを制御することができるコントローラが提供される。従って、パルスモニタリングの間に、作動される1つ以上のアクチュエータは、身体部分に圧力を提供する。このように、作動中又は作動直後にパルスモニター信号が得られる。
【0027】
コントローラは、例えば、コントローラ又は他の装置によるさらなる操作のために、又は、ディスプレイ若しくは音声提供装置等のユーザインターフェースによるユーザへの通信のために、パルスモニター信号を提供することができる。
【0028】
当該システム及び/又はコントローラは、パルスモニター信号から血圧を決定するように、及び、さらなる操作のために又はユーザインターフェースを使用してユーザに、決定された血圧結果を出力するように適応してもよい。システムのコントローラは、この目的を達成するように適応させることができる。パルスモニター信号及び/又は血圧をユーザに提供するためにディスプレイ等のユーザインターフェースが存在してもよい。代替的又は追加的に、システムは、プロセッサ又はコンピュータ等の遠隔制御装置に無線又は有線で接続されたデータ転送ユニットを有して、パルスモニター信号をプロセッサ又は遠隔制御装置に転送してもよく、プロセッサ又は遠隔制御装置は、今度は、転送されたデータから血圧を決定し、データ及び/又は決定された血圧をディスプレイ等のユーザインターフェースに出力するように構成されている。
【0029】
パルスモニタリングは、複数のアクチュエータのうち1つ以上のアクチュエータの作動によって加えられる圧力に応じて変わる信号を提供する。従って、作動を利用して血圧を調べることができる。例えば、本明細書において先に記載した既知の方法のいくつかと非常に類似して、作動に伴い加えられる圧力を使用/調整して、血圧の特徴を見つける又は決定するためにパルス信号を消失させることができる。パルス信号の再出現は、例えば、収縮期血圧に関連する。拡張期血圧は、パルス信号形状の分析に基づき決定され得る。
【0030】
開示される構成は、電気活性材料アクチュエータを含むキャリアで形成されるタイプのカフを使用して、キャリア又はカフがそれに対して又はその周囲に取り付けられている肢又は指等の身体部分に圧力を加えている。ここで記載されるキャリアは、血圧モニタリングシステムと共に使用するのに有利であり、低ノイズ動作及びコンパクトな又はかさばらない装置を可能にするため、血圧モニタリングのためのさらに低侵襲な解決策が提供される。アクチュエータの独立した可制御性は、適した位置において圧力を提供するために必要なアクチュエータのみが使用されるということを意味する。これは、使用中に改善された快適さを提供し得る。
【0031】
コントローラは、血圧モニタリングを行いながら使用するための、複数のアクチュエータのうち1つ又は複数の好ましい電気活性材料アクチュエータを特定することができるようにさらに適応させることができる。好ましいものは、例えば、測定中の信号の安定性又は感度を改善するものである。そのような好ましいものは、身体部分上の位置に関して改善された又は最良の位置を有するものであり得る。これらのアクチュエータは、好ましい(使用されるべき最良の)アクチュエータを特定することを含む較正手順の間に特定される。このようにして、アクチュエータのその後の制御は、身体部分全体の周囲に圧力を加えるのではなく、(動脈に関連する可能性がある)位置の近くに局所的圧力を加えることができるため、より快適である。
【0032】
当該システムは、例えば、指、手首、腕、又は脚の周囲に取り付けるためにあってもよい。
【0033】
当該システムは、連続的な血圧測定のためのウェアラブル小型化システムとして使用されてもよく、大容量のエアポンプの必要がなく、圧力変動を迅速に発生させることができる。カフ体積が小さいフィンガーベースのシステムでさえも、比較的強力なポンプを必要とし、従って、カフを膨張させ、圧力を適応させるのに高い電力消費を有する。本発明のシステムは、低い電力消費を有し、また、非常に低いノイズで作動させることもできる。
【0034】
パルスモニターは、好ましくは、PPGセンサを含む。これは、低コスト、コンパクト、静か、及び低電力なモニタリング方法を提供する。しかし、酸素飽和レベル、SpO2等、脈拍に関連する他のパラメータが測定されてもよい。
【0035】
アクチュエータの所与のレベルの作動によって加えられる圧力は、工場較正に基づいてもよい。異なる可能性のある指又は肢の大きさを考慮に入れるために、アクチュエータは、接触がなされるまで前進されてもよく、次に、さらなる作動が、加えられる圧力に関連する。
【0036】
コントローラは、例えば、電気活性材料アクチュエータを順番に作動させ、パルスモニター信号に対する影響をモニターすることによって、1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを特定するように適応している。順番は、例えば、パルスモニター信号に対する影響をモニターしながら、アクチュエータを円周方向にスイープすることを含んでもよい。
【0037】
これは、システムが装着されている場合に、較正ステップとして一度行われてもよい。しかし、時間の経過に伴うシステムのあり得る動きを考慮に入れる、又は、アクチュエータのレベルと実際に加えられる圧力との間のマッピングを変え得る異なる肢の位置を考慮に入れるために、定期的に行われてもよい。
【0038】
各電気活性材料アクチュエータは、作動時に内向きにたわむはり部材(a beam that bows inwardly)を含んでもよい。これは、内向きのそりを提供する簡単な方法を提供する。はり部材は、1つの端部又は両方の端部において固定することができ、また、スライディングホルダー等を使用してキャリア内の所定の位置に保持された自由に吊るされた形態であってもよい。
【0039】
複数の電気活性材料アクチュエータは、アクチュエータのアレイに配置することができる。複数又はアレイは、例えば、2から5、2から10、2から20、又はそれ以上のアクチュエータを含んでもよい。2という最小数のアクチュエータは、適切な上述したアクチュエータの数の範囲において、5又は10までにさえ増やすことができる。好ましくは、4を超えるアクチュエータ又は8を超えるアクチュエータさえも存在する。アクチュエータの数は、例えば、それが指、手首、腕、又は他の身体部分に対するものであるかどうかに応じて等、キャリアのサイズ次第であり得る。分散は、1つのアクチュエータが、動脈の位置に圧力を加えるのに十分であり、複数のアクチュエータが、いかなる点にも圧力を加えることができるように互いに十分に近くにあるようなものであり得る。
【0040】
複数のアクチュエータ又は少なくともその一部は、キャリアの長さ方向に沿って離隔されてもよく、長さ方向は、使用時の(手指、脚、腕、又は他の足指等の身体部分の周囲の)曲げ方向に沿っている。代替的又は追加的に、幅方向(長さ方向に対して垂直)に離隔されたアクチュエータが存在してもよい。幅方向は、手指、脚、腕、又は他の足指等の身体部分に対して使用された場合にキャリアが実質的に曲げられない方向であり得る。従って、アクチュエータは、キャリアの第1の側(さらに、これは、典型的には、身体部分の周囲に取り付けられた場合にはキャリアの内側である)において横方向に離隔されている。
【0041】
キャリアは、少なくとも使用時には、すなわち、身体部分の周囲に又はそれに対して取り付けられたときには、円柱の形状を有してもよく、円柱部分は、半径方向寸法を有する断面と、身体部分の周囲に取り付けられた場合にキャリアが実質的に曲げられない方向である幅方向寸法を有している。アクチュエータは曲げ方向を有してもよく、その曲げ方向に沿って、作動時に曲げられる。アクチュエータは、この曲げ方向が幅方向に平行な状態で、曲げ方向に垂直な状態で、又はこの曲げ方向に対して(例えば、10から80度又は20から70度の)角度が付けられた状態で、キャリアに取り付けられてもよい。これらの方向のうち1つ以上の組み合わせも可能である。曲げ方向をキャリアの幅方向寸法に対して垂直にさせないことは、かなりのサイズの多くのアクチュエータが、取り付けられた場合にキャリアの小さな円周部分において互いに沿っている必要がある場合に有利である。
【0042】
当該システムは、各電気活性材料アクチュエータに取り付けられるそれぞれの力伝播ユニットをさらに含んでもよい。力伝播ユニットはサブユニットを有してもよく、その各々が少なくとも1つのアクチュエータ又は多くても1つのアクチュエータに関連している。或いは、可撓性であり且つ複数のアクチュエータの全てに関連する1つのそのようなユニットが存在してもよい。アクチュエータは、圧力が加えられる単一の接触点を提供することができる。力伝播ユニットは、肢又は指の周囲の全ての位置に圧力が加えられ得るということを確実にする。
【0043】
特定される1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータ(すなわち、血圧測定に最も適したアクチュエータ)は、動脈に近接したものとして特定される少なくとも1つの電気活性材料アクチュエータと、加圧効果を高めるための少なくとも1つの直径方向反対にある電気活性材料アクチュエータとを含み得る。このようにして、圧力は、挟むタイプの加圧を実施することによって、所望の位置に、より確実に加えることができる。
【0044】
当該システムは、電気活性材料アクチュエータのアレイによって加えられる圧力をモニターするための圧力センサ等の圧力フィードバックシステムをさらに含んでもよい。これは、血圧レベルをより正確に決定することができるように、作動レベルと加えられた実際の圧力との間のマッピングを可能にする。圧力感知は、アクチュエータの作動によって、肢又は指の周囲の全てで最初の接触が生じるポイントが特定されることも可能にする。
【0045】
圧力センサは、圧力感知素子のセットを含んでもよく、少なくとも1つが各電気活性材料アクチュエータに関連付けられている。これによって、局所的な圧力感知フィードバックが可能になる。
【0046】
コントローラは、各電気活性材料アクチュエータがその独自の圧力感知素子として機能するように、各電気活性材料アクチュエータを作動させて圧力感知機能を実施するように適応してもよい。このアプローチは、いくつかのタイプの電気活性材料アクチュエータの可能な感知機能を利用する。圧力感知機能は、皮膚の動悸(skin palpitations)を検出することによってパルスモニターとして機能するようにさえ使用されてもよい。
【0047】
キャリアは、可撓性であってもよく、例えば、弾性及び伸縮性であってもよい。これは、例えば、アクチュエータの最初の作動が圧力を加えるように、キャリアが種々のサイズの肢又は指と接触フィットするのを可能にし得る。キャリアは、言わばチェーンを形成するために互いに移動可能に接続される複数の剛性部品も含み得る。
【0048】
本発明は、体肢(a body limb)又は指の周囲に取り付けられた血圧モニタリングシステムを使用した血圧モニタリング方法も提供し、このシステムは、キャリアと、キャリアの内側の周囲の異なる角度位置においてキャリアから内向きに面した電気活性材料アクチュエータのアレイとを含み、当該方法は:
電気活性材料アクチュエータを独立して制御して内向きに変位させ、さらに、パルスをモニターし、それによって血圧モニタリングを行うのに最良の位置に置かれた1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを特定するステップ;及び
特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを使用して圧力を加えながらパルスモニタリングを行い、それによって血圧を決定するステップ;
を含む。
【0049】
この方法は、最も適したアクチュエータ又はアクチュエータのセットを、血圧モニタリングを行うためにそのアクチュエータ又はそれらのアクチュエータを使用する前に特定する。
【0050】
パルスモニタリングは、PPGセンシングを含んでもよい。
【0051】
1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを特定することは、例えば、電気活性材料アクチュエータを順番に作動させることと、パルスモニタリング信号に対する影響をモニターすることとを含む。
【0052】
当該方法は、少なくとも部分的に、コンピュータソフトウェアで実施されてもよい。従って、ソフトウェアは、システムを使用して当該方法を行わせるようにコントローラを制御することによって、当該方法を行わせることができる。
【0053】
当該方法は、身体部分に装置を取り付けるステップ、及び、血圧を決定するステップを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
次に、本発明の例が、添付の概略図を参照して詳細に記載される。
【
図1】既知の血圧モニタリングシステムを示した図である。
【
図2】
図2Aから2Cは、血圧モニタリングシステムにおけるアクチュエータを有するキャリアの例を示した図である。
【
図3】
図3Aは、
図2のセンサ部を使用した血圧モニタリングシステム全体を示した図であり、
図3B及び3Cは、アクチュエータに関する圧力センサのあり得る位置の例を示した図である。
【
図4】
図4A及び4Bは、各アクチュエータに関連するさらなる接触要素の使用を示した図である。
【
図5】
図5A及び5Bは、システムのキャリアの幅方向に関するアクチュエータの異なる向きを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の実施形態及び例が、図を参照して記載される。詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の例証的な実施形態を示しているけれども、例示目的のみを対象としており、本発明の範囲を限定することを意図していないということが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点が、以下の説明、付随の特許請求の範囲、及び添付の図面からより理解されることになる。図は単に概略的であり、縮尺通りに描かれていないということが理解されるべきである。同じ又は類似の部分を示すために、図面を通して同じ参照番号が使用されているということも理解されるべきである。
【0056】
開示されているのは、体肢又は指の周囲に取り付けるための血圧モニタリングシステムであり、当該システムでは、電気活性材料アクチュエータのアレイが、内向きの力、すなわち、体肢又は指に向かう力を提供する。血圧モニタリングを行うのと共に使用するのに最良の位置に置かれた1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータが特定され、次に、これらは、圧力を加えるために使用される。特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを制御しながらパルスモニタリングを行うことによって、血圧を決定することができる。
【0057】
上述のように、フィンガーカフを使用して血圧を測定する部分閉塞手順が知られている。これは、例えば、ボリュームクランプ法として知られており、非特許文献2において記載されている。
【0058】
例として、
図1は、光源14と検出器15とを含む、パルス信号を測定するためのPPGセンサと共に指12の周囲に置かれたカフ10の既知の配置を示している。コントローラ16は、各心拍の間にカフ下の一定の血液の流れを維持するためにカフへの圧力の印加を制御する。PPGセンサ14、15は、血圧値を提供するのではなく、正しくは、動脈内の血液量の変化を表す。残念ながら、これらの体積変化は、動脈壁の弾性成分の非線形性のために、圧力値に変換することはできない。血液量の変化に基づき、カフ内の圧力も変化している。解決策は、カフ下の血液量を一定にすることである。次に、血圧値をカフ内の圧力値として評価することができる。従って、指の外側から加えられる連続的に変化する圧力は、動脈内圧力に対応し、従って、動脈血圧に対する瞬時の連続的な測定である。
【0059】
ボリュームクランプ法は、欠点を有しており、特に、組織に加えられる適度に高い圧力並びに高周波数の圧力振動は共に、患者に不快感を与えるけれども、例えば介入治療等、特定の用途における連続的な血圧モニタリングのための魅力的な解決策である。従って、このアプローチを使用して作動するいくつかの製品が利用可能である。
【0060】
これらのシステムに対する提案される改良は、収縮期血圧の範囲の与圧(pre-pressure)を適用し、次に、同時に測定されたPPG信号を評価することに基づき、比較的少量だけこの圧力を適応させることである。これによって、高い圧力の印加の必要が回避される。
【0061】
しかし、上述のように、圧力カフの使用に関連する問題が残っている。
【0062】
図2Aは、本発明の一例による血圧モニタリングシステムの物理センサ部の一例を示している。
【0063】
センサ部は、体肢又は指等の身体部分の周囲に取り付けるためのキャリア20を含む。示されている例は、指22の周囲に取り付けるためのものであり、この目的を達成するために、指の寸法に従った半径を有している。キャリアは、身体部分に対して取り外し可能であるように構成されてもよく、そのための適切な固定手段又は装置を有してもよい。また、身体部分の周囲に置くことができる伸縮性のバンドの一部であってもよい。キャリアを身体部分に取り付ける他の方法を利用することができる。
【0064】
キャリア20から内向きに面した電気活性材料アクチュエータ24のアレイが、キャリアの内側の周囲の異なる空間位置、またこの場合には角度位置に提供される。各電気活性材料アクチュエータ24は、作動信号に応答して内向きに変位するように独立して制御可能である。実線は非作動の構成を表し、破線はアクチュエータの作動の構成を表している。本発明に関して、「内向きに」という用語は、アクチュエータが、半径方向Rに沿った及び/又は少なくとも囲い込んだ指に向かった力の成分及び/又は変位の成分を提供することができるように配置されることを意味するということが
図2Aにおいてわかる。明確にするために、半径方向の一例のみが示されている。
【0065】
各電気活性材料アクチュエータ24は、示されているように作動されると内向きにたわむように、両端に固定された(二重クランプ構成(a double clamped arrangement)の)はり部材を含む。これは、指に対するアクチュエータの内向きのそりを提供するシンプルな方法を提供する。アクチュエータは、例えば、電気活性ポリマーアクチュエータを含み(その例が本明細書において以下に記載され)、長方形及び/又は細長いはり部材を含んでもよい。正方形、円形、楕円形等の他の形状も可能である。他のクランプ構成又は(例えば、円形/楕円形アクチュエータのための)全周囲のクランプも可能である。要件に応じて、アクチュエータは、プリベンドを有してもよい。アクチュエータアレイ全体が、リング等の剛性の、半剛性の、若しくは堅いキャリア20、又は面ファスナーで固定される包帯様の構成に組み込まれてもよい。しかし、キャリアは、可撓性でもあり得るが、伸縮性ではない。
【0066】
例は、キャリアの周囲にある8つのアクチュエータを示している。より一般的には、2から20のアクチュエータが存在するか、又はキャリアの内側の周囲により離れて存在していてもよい。好ましくは、少なくとも4つが存在する。アクチュエータの数は、システムのサイズ次第である(及び特定の身体部分での使用によって決定され得る)、及び/又は、装置によって必要とされる圧力提供能力及び/又は精度次第である。この例では、アクチュエータは共に、周囲全体に圧力が加えられるのを可能にするように設計されているため、動脈が指のどこに位置していようと、圧力を加えることができる。これは、位置に関係なく、好ましい位置に圧力を提供することが可能でありながら、装置を取り付ける自由を提供する。分散は、1つのアクチュエータが動脈の位置に圧力を加えるのに十分であるようなものであってもよい。
【0067】
周囲にアクチュエータを有することは、上述の理由のため、及び/又は、その装着時に身体の四肢の周囲の装置の向きが自由であることによる有用性の観点から、装置に最良の可撓性を提供し得るけれども、アクチュエータがキャリアの周囲全体に位置する必要はない。これは、装置の複雑さを低減することができる。
図2B及び
図2Cは、周囲の一部のみがアクチュエータを有する場合の例を示している。
図2Bの例では、隣接したアクチュエータ(合計4つ)のセットがキャリア20の周囲の半分を覆っており、その部分は、少なくとも1つの動脈26がアクチュエータによって覆われる周囲部分内にあるように、測定されることになる指又は他の身体部分の周囲に置かれることになる。ユーザ、特に医学的に訓練されたユーザは、ほとんど労力をかけずにそのような方法で装置を取り付けることができる。アクチュエータは互いに隣接して、延びた周囲領域を覆っており、その結果、取り付けが比較的容易であり、モニタリングの間に圧力を提供するために、アクチュエータの最良の1つ又は組み合わせを使用する/見出すことができる。周囲のうち、アクチュエータで覆われていない部分は、測定されることになる身体部分に対して置かれることになる。キャリアの内側のこの部分には、患者に対する圧力分布及び/又は快適さを改善するために、特定の身体部分に接触するように特に形作られた裏地(図においては示されていない)が提供されてもよい。
【0068】
図2Cは、キャリアの周囲の相反する側にアクチュエータを有する別の例を示している。次に、対抗力を相反する側から提供することができ、これによって、モニタリングが改善され得る。周囲にアクチュエータの複数のセットが存在してもよく、それらの各々が、互いに隣接する少なくとも2つのアクチュエータ又はそれ以上を有することができる。
【0069】
図3は、システム全体の一例を示している。例えば、
図2A又は2B又は2Cにおいて示されているアクチュエータアレイに加えて、パルスモニター30及びコントローラ32が存在する。
【0070】
図3Bにおいて示されているように、パルスモニターは、アクチュエータのアレイとは別のモニタリング装置であってもよい。この図では、解放されたパルスモニター30が、(例えば指等の)体肢の壁36に押し付けられるように示されている。動脈38が、壁に沿って延びている。本明細書において先に記載したアクチュエータ35は、センサ30の近くに置かれ、センサ30の位置でのパルス特徴に影響を与えるために位置37において動脈を加圧することができる。パルスを示す信号を提供するための単一のセンサであってもよい。
【0071】
しかし、センサは代わりに、例えば
図3Cにおいて示されているように、アクチュエータのアレイの構造に統合されてもよい。この図では、センサ30は、指の壁36に押し付けて動脈38の位置37において圧力をかけるために、アクチュエータ35の上に取り付けられている。
【0072】
センサがアクチュエータから分離されている場合、センサは、周囲にある連続するアクチュエータの間に置くことができる。或いは、センサは、円柱形のキャリアの幅方向においてアクチュエータの隣に置くことができる。例えば、この点において
図5の考察を参照されたい。
【0073】
システム全体において、2つ以上のパルスモニターが存在してもよい。従って、パルスモニターセンサは、例えば、各アクチュエータの頂部に、又はアクチュエータのサブセットの頂部に提供されてもよい。同様に、複数のセンサは、アクチュエータから分離されてもよい。
【0074】
上記の又は各パルスモニターは、好ましくは、PPG信号「PPG」を生成するPPGセンサであるが、SpO2センサ等の他のセンサが使用されてもよい。
【0075】
コントローラは、アクチュエータに対する作動信号「ACT」を生成し、1つ又は複数の血圧測定値「BP」を出力する。
【0076】
好ましい例では、システムは、圧力感知フィードバックも含む。従って、一組の例において、システムは、電気活性材料アクチュエータのアレイによって加えられる圧力をモニターし且つ圧力フィードバック信号「PR」を提供する圧力センサ34も含む。これによって、作動レベルと実際の加えられた圧力とのマッピングが可能となる。圧力感知によって、肢又は指の周囲全体で最初の接触が行われる作動レベルが特定されるのも可能になり得る。
【0077】
圧力センサ34は、圧力感知素子のセットを含んでもよく、少なくとも1つが各電気活性材料アクチュエータに関連付けられている。圧力センサは、各アクチュエータの物理的構造内又はその上に統合されてもよい。これによって、局所的な圧力感知フィードバックが可能になる。圧力感知機能は、代わりに、アクチュエータが作動機能及び感知機能の双方を有する場合には、アクチュエータ自体によって実施されてもよい。
【0078】
コントローラは、制御アルゴリズム全体の一部として様々な機能を行い、電気活性材料アクチュエータのアレイを作動させるために使用されるが、アクチュエータは個々に制御される。特に、血圧モニタリングを行うのに最良の位置に置かれた1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータが特定される較正サイクルが存在する。次に、パルスモニターを使用したパルスモニタリングが、特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを制御して圧力を加えながら実行され、パルスモニター信号から血圧が得られる。
【0079】
アクチュエータの独立した可制御性は、適した位置において圧力を提供するために必要なアクチュエータのみが使用されることを意味する。快適なシステムは、血圧モニタリングを実施する必要がある箇所でのみ加えられる圧力で結果として生じる。
【0080】
アクチュエータの使用によって、膨張式カフの必要性が回避される。しかし、アクチュエータは、既存の膨張式カフと組み合わせることができるということに留意されたい。カフを使用して、デフォルトの圧力レベルを提供することができ、次に、アクチュエータが制御を引き継ぐ。或いは、圧力カフが、圧力感知装置として使用されてもよい。例えば、小さな(閉じた)空気カフのセットが、アクチュエータアレイの周囲に提供されてもよい。各アクチュエータの変形は、組織に向かう圧力を増加させるが、同時に、小さな閉じたカフにおいて圧力を増加させる。これは、例えば、空気圧センサを各小さなカフに関連付けることによって、既知の空気圧感知方法が圧力感知フィードバックに使用されるのを可能にする。そのような圧力感知は、静圧の測定及び血液振動の検出の双方に使用することができる。
【0081】
上述したように、好ましい一組の例では、圧力フィードバックは、アクチュエータが感知モードで作動することができることによって達成される。
【0082】
1つのアプローチは、感知のために高周波重畳AC信号とDC作動信号を組み合わせることである。このアプローチは、特許文献2において詳細に記載されている。特許文献3は、圧力感知だけでなく温度感知を可能にするセンサ及びアクチュエータの別の例を開示している。
【0083】
作動中、アクチュエータは、印加された作動信号の関数として、明確な力及び/又は変形を発生し、この信号は、アクチュエータが電圧制御アクチュエータである場合には電圧である。信号はまた、使用されるアクチュエータのタイプによって決定されるように、異なる性質のものであってもよい。この変形は、異なる負荷(異なる作動負荷は、組織に対して異なる圧力を発生させることに等しい)においてさえも、較正プロセスからわかると想定され得る。
【0084】
作動中、アクチュエータのインピーダンス変化も、感知機能として測定することができる。このインピーダンスは、印加電圧と組み合わせて、組織に向かって生成される(準静的な)圧力が決定されるのを可能にする。
【0085】
この準静的モードでは、パルス状の血流によって引き起こされる圧力変動も、単にアクチュエータをセンサモードで使用することによって検出することができる。(皮膚の)動悸も、アクチュエータをわずかに変形させ、これが、インピーダンスを変化させることになる。
【0086】
従って、全体的な遅い圧力調整及び局所的な速いパルス圧力変動の双方を検出することができる。局所的な変化は、所望のパルス信号を生成するために使用することができ、従って、アクチュエータは、パルスモニターとしても機能し得る。或いは、検出されたパルス信号は、PPG信号に対するさらなる感知情報として使用することができる。
【0087】
圧力の印加及びパルスの強さ又は信号形状のモニタリングは、例えば、先に参照した非特許文献1において概要を述べられた既知のアプローチに従ってもよい。
【0088】
印加圧力は、例えば、パルスモニター信号を消失させるために増加させられてもよい。パルス信号の再出現は、例えば、収縮期血圧に関連する。拡張期血圧は、パルス信号形状の分析に基づき決定され得る。
【0089】
制御アルゴリズムは、アクチュエータの各々によって加えられる圧力を制御するために、アクチュエータの作動レベル及び感知された圧力に頼っている。各アクチュエータが、一旦定常状態に達してセンサとしても作用する場合、各アクチュエータによって加えられる局所的な圧力を決定し、次に、患者の快適さを確実にしながら、正確で信頼できるPPG測定を得るために作動のレベルを調整することが可能である。
【0090】
従って、カフにおいて、圧力は、単一のアクチュエータで達成され得るように、局所的に変えることはできないため、制御アルゴリズムは、カフとは異なるように機能する。
【0091】
システムの非作動状態では、アクチュエータアレイは拡張されないため、アクチュエータアレイは容易に指の上に置くことができる。アレイを指に適用した後で、それを活性化させることができ、すなわち、電圧をアレイの個々のアクチュエータ要素に加えることができ、従って、各アクチュエータはそり始める。二重クランプ構成のため、アクチュエータの唯一動く方向は指に向かうものである。従って、電圧が増加し、その結果前進移動が生じて、組織は、必要とされる圧力に達するまで徐々に加圧され、次に、アクチュエータに加えられる電圧は、それ以上増加されない。
【0092】
図2において示されているアクチュエータの配置によって、組織の周囲にスポット状の加圧が生じ得る。しかし、より均一な圧力分布が有益であり得る。
【0093】
図4A及び4Bは、(例えば接着した等)安定した形態又は(例えばピボット要素を介して等)柔軟な方法で、関連するアクチュエータ24と機械的に接触しているさらなる接触要素40の使用を示している。これらの接触要素40は、力伝播ユニットとして機能する。力伝播ユニット40は、肢又は指の周囲の全ての位置に圧力が加えられ得るということを確実にする。力伝播ユニット40は、加圧されることになる組織に適合する設計を有し、例えば、凹面要素のセットが共に、指の断面形状に概ね一致する。
図4A及び4Bでは、ユニット40は、互いに分離され、独立して作動する自由を与えている。しかし、ユニット40は、全てが独立している必要はない。複数のユニット40又は複数ユニットの隣接するサブセットは、1つのユニットに組み合わされてもよい。好ましくは、そのような組み合わされたユニットは可撓性である。全てのユニットは、キャリアの周囲にある単一の可撓性ユニット内にあってもよい。可撓性は、偽性の独立した機能を提供することができる。可撓性の材料は、ゴム部品等を有するユニットを含み得る。単一ユニット形態の場合、それは、1つの位置において閉鎖又は開放されてもよい。後者の構成は、複数のユニット40のように、身体部分の周囲に容易に取り付けるために、ファスナーを備えた開口部を有するキャリアと共に使用することができる。
【0094】
図4Aは、アクチュエータの非活性化状態を示し、
図4Bは、力伝播ユニットが指の周囲により均一な接触を提供する活性化状態を示している。力伝播ユニットは、固体で剛性な材料から作られてもよいが、より柔軟な又は半剛性の材料から作られて、わずかに可撓性で、加圧されることになる組織の周囲にさらに良好に適合してもよい。特に、力伝播ユニットの端部には、軟らかい領域が存在するため、それらが重なり合って、従って、異なるサイズの指への適合を可能にしてもよい。
【0095】
複数の例において、キャリアは、曲げ方向に沿った長さ方向及びそれに垂直な幅方向を有してもよい。例えば、長さ方向は、
図2及び
図4の図面の面におけるキャリア20の周囲に沿っている。従って、キャリアの幅は、
図2又は4の図面の面に垂直である。
【0096】
上記の例において、アクチュエータ24は、長さ方向に沿って横方向に変位され、はり部材形状のアクチュエータは、長さ方向に沿ってその曲げ方向を有するように方向づけられる。これは、はり部材が幅方向に平行であってもよいという点で異なっていてもよい。さらに、これは
図2及び4には示されていないが、幅方向に沿って複数のアクチュエータが存在してもよい。上記の例では、アクチュエータはキャリアの周囲に平行に、すなわちキャリアの幅方向を横断して配置されているように示されている。これは、必ずしもそうである必要はない。代替的な例では、アクチュエータのうち1つ以上が、縦方向に部分的に方向づけられる。
【0097】
キャリアは、一般に、使用時に円柱又は円柱の一部の形状を有してもよい(必ずしも円形又は丸い断面を有するものではない)。従って、キャリアは、断面寸法(円形断面の場合は半径)及び幅を有し得る。そのような構成では、キャリアの幅は、例えば
図5における方向52に沿っており、キャリアの長さ方向(図示せず)は、曲げ方向又は方向52に対して垂直な方向に沿っている。
【0098】
従って、身体部分に取り付けられた場合、幅方向は、例えば指の長さ方向等、身体部分の延びに実質的に平行である。
【0099】
図5は、実質的に円形の断面を有する円柱形のキャリア50を示している。半径方向のRは、円柱の幅52そのままで示されている。この例では、円柱の内壁のサブセクションの周囲に取り付けられた、相反して取り付けられたアクチュエータ54の2つの対がある。しかし、アクチュエータは、ここで、幅方向に実質的に平行であり、上記の例とは対照的に長さ方向を有している(作動時にそれに沿って曲がる)ということに留意されたい。アクチュエータはまた、0又は90度ではないが、例えば30、45、又は60度である幅方向に対する角度56を有して方向付けられてもよい。これは、
図5Bにおいて概略的に示されている。
【0100】
図5A及び5Bのように取り付けることの利点は、多くのアクチュエータが小さな周囲領域内に間隔をあけて置かれる必要がある場合に、これは、力及び/又は変位の損失なく又は限られた損失のみで行うことができるということであり得る。要するに、そのような構成では、アクチュエータは長さを短くする必要がなく、例えば、
図2Aにおいて示されている方法で方向付けられた増加する数のアクチュエータが、固定された周囲部分内に配置されることになった場合には、これに該当したであろう。別の例は、身体部分を通って皮膚の下で異なる方向に延びる動脈を、より良好に標的にすることができるということであろう。この目的を達成するために、異なる方向の組み合わせも有益であり得る。
【0101】
複数の例全てで、アクチュエータは、幅に沿って分布されてもよい。従って、
図2又は5Aにおいて示されているように、アクチュエータのアレイを有するキャリアの幅方向に沿った2つ以上の位置が存在してもよい。これは、良好な測定のために動脈を覆うより良い機会をさらに提供する。或いは、2つ以上のパルスセンサがある場合には、測定するより多くの動脈が存在してもよい。結果の比較が、血圧のより良い推定を得るために行われてもよい。
【0102】
この構成においても、アクチュエータの数及び位置は、全ての利点を伴って、本明細書において先に記載したようにすることができる。
【0103】
先に概要を述べた制御アルゴリズムの間、組織周囲の均一な圧力を適応させる代わりに、1つ又は複数の専用のアクチュエータにおける圧力が調整される。従って、1つ又は複数のアクチュエータのみが、その作動レベルを変化させ、組織に加えられる圧力のスポット的な変動を引き起こすことになる。これは、動脈の上の圧力のみを適応させる必要がある場合に重要であり得、同時に、動脈周囲の組織を絶えず加圧することができ、これは、感知信号を改善し得るが、ユーザにとってより快適でもあり得る。
【0104】
これらのアクチュエータを特定するための較正ルーチンは、指又は肢の周囲で局所的に圧力を変化させることの影響を周期的に測定することを含むため、その後の信号収集フェーズは、最良の感知信号対ノイズ比が達成される1つ又は複数のポイントにおいて圧力を適応させることのみを含む。これは、動脈のちょうど上であり得る。加えて、加圧効果を強化するために、1つ又は複数の直径方向反対にあるアクチュエータに対処する(及び同じ作動レベルで作動させる)こともできる。
【0105】
この周期的な較正は、患者の快適さを確実にするために拡張期血圧(~80mmHg)以下で行うことができる。
【0106】
また、工場較正があってもよく、これによって、アクチュエータの活性化レベルが圧力レベルにマッピングされる。異なるあり得る指又は肢のサイズを考慮に入れるために、アクチュエータは、接触がなされるまで前進されてもよく、次に、さらなる作動が、この較正データを使用して加えられる圧力に関連する。
【0107】
システムの作動全体が(さらなる圧力感知フィードバックに頼ることなく)、以下の方法で実行され得る:
最初は、アクチュエータと組織との間に接触はない。
【0108】
次に、フィードバック感知機能としてのアクチュエータのインピーダンスの平行測定と共に、アクチュエータのゆっくりとした作動が行われる。
【0109】
無負荷の構成において、作動レベルの関数としてのインピーダンス変化は、適用に先立つ装置の較正(無負荷状況での較正)のためにわかると想定され得る。
【0110】
インピーダンスの急激な変化又は較正データからの任意の逸脱が検出された場合、アクチュエータは、組織と接触していると決定され得る。
【0111】
この時点から、異なる負荷を有するアクチュエータの較正ルックアップテーブルを使用して、この適用で必要とされる予圧を生成することができる。(準静圧である)予圧に達すると、PPG信号を決定することができる。
【0112】
また、上述したように、例えば、当該方法をより正確にするために、別の圧力感知フィードバックが提供されてもよい。圧力センサが、血圧を直接測定することもできる。これらの圧力センサは、アクチュエータアレイ構成に実装されてもよい。例えば、少なくとも1つの、しかし好ましくは各アクチュエータに、圧電センサ、PVDF箔等の圧力センサが装備されてもよい。
【0113】
先に説明したように、圧力感知フィードバックは、従って、別の圧力センサ、圧力を検出するために使用される膨張式カフ、又はアクチュエータ自体の感知機能に基づいてもよい。
【0114】
圧力が組織に加えられると、この圧力はセンサを介して測定することができる。従って、明確な圧力を加えることができ、加えられる圧力を変えながら血管内の振動の変化を検出することもでき、それによってオシロメトリー法を実施することができる。この方法は、例えば、収縮期圧を超えて圧力を増加させた後、拡張期圧を下回るまで低下させるか、又は或いは、拡張期圧の下から開始し、収縮期圧まで増加させることを含む。
【0115】
この装置は、眼圧測定法又はボリュームクランプ手順が実現されるのも可能にするということに留意されたい。圧力感知は、アクチュエータ、特に電気活性ポリマーアクチュエータの固有の圧力感知機能を利用することもできる。
【0116】
当該システムは、例えば、皮膚表面に対するアクチュエータのアレイのねじる動作、又は、アクチュエータのアレイの位置における指のサイズ及び形状、並びに、(伸張/圧縮による)組織の機械的特性に影響を及ぼすであろう指の運動(例えば指のよじれ等)によって引き起こされるモーションアーチファクトの補償も可能にする。また、アクチュエータアレイの位置は、指に沿ってわずかに移動してもよい。従って、アクチュエータアレイはこのように、そのような運動によって引き起こされる圧力変化が補償されるように、印加圧力を適応させることができる。
【0117】
また、上昇した周囲温度の状態、増加した塩分摂取量、又は変形性関節症等の健康状態により引き起こされる炎症の結果として生じる膨張によって、指の組織の幾何学的形状に差が生じることもある。
【0118】
場合によっては、アクチュエータの強固なアレイは、不快感及び/又は高すぎるか若しくは低すぎる接触圧力等の最適以下の指の接触を引き起こすことがある。キャリア20は、シリコーンゴム等の、柔らかく、弾性があり、可撓性で、伸縮可能な皮膚適合材料から作製されてもよく、組織の幾何学的形状の自然な変化を容易に順応させ、補償することができる。これは、いくつかのさらなる利点を提供する。固体の実装(solid implementaion)と比較して、適した接触圧力を維持するためにアクチュエータのアレイによって必要な圧力の低下があってもよい。拡張期圧に近い予圧(すなわち、ベース圧力)がキャリアによって指組織に加えられてもよく、それによって、アクチュエータアレイが、圧力変動を発生するためにのみ使用されるのを可能にする。最後に、シリコーンゴム材料は、高い接触摩擦でテクスチャード加工されてもよく、従って、固体又は半剛体材料よりもコンフォーマルな様式で皮膚に接着するのを可能にするため、ユーザによって装着されている間の指に沿ったアクチュエータアレイのずれは低減され得る。これは、一部のモーションアーチファクトを低減するのに役立ち得る。
【0119】
図6は、上述の血圧モニタリングシステムを使用した血圧モニタリング方法を示している。当該方法は:
ステップ60において、電気活性材料アクチュエータを独立して制御して内向きに変位させ、パルスをモニターし、それによって血圧モニタリングを行うのに最良の位置に置かれた1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを特定すること;さらに
ステップ62において、特定された1つ又は複数の電気活性材料アクチュエータを使用して圧力を加えながらパルスモニタリングを行い、それによって血圧を決定すること;
を含む。
【0120】
全ての例において、電気活性材料アクチュエータは、典型的には、電気活性ポリマー材料に基づいているが、本発明は、実際には、他の種類のEAM材料に基づく装置に使用することができる。そのような他のEAM材料は、当技術分野において既知であり、当業者は、それらをどこで見つけるか、及びそれらをどのように適用するかわかるであろう。多数の選択肢が、本明細書において以下に記載される。EAMは、センサ又はアクチュエータとして働くことができ、さらに、様々な形状に容易に製造することができ、多種多様なシステムへの容易な統合を可能にしている。
【0121】
EAM装置の一般的な細分化は、電場駆動型EAM及び電流又は電荷(イオン)駆動型EAMへの細分化である。電場駆動型EAMは、直接電気機械的結合を介して電場によって作動され、電流又は電荷駆動型EAMに対する作動機構はイオンの拡散を含む。後者の機構は、EAP等の対応する有機EAMにおいてより多く見られる。電場駆動型EAMは、一般的に、電圧信号で駆動され、対応する電圧ドライバ/コントローラを必要とするけれども、電流駆動型EAMは、一般的に、電流信号又は電荷信号で駆動され、電流ドライバを必要とすることがある。いずれのクラスの材料も、複数のファミリーメンバーを有し、各々が、独自の利点及び欠点を有する。
【0122】
電場駆動型EAMは、有機又は無機材料であってもよく、有機の場合は、単一分子、オリゴマー、又はポリマーであり得る。本発明に対しては、それらは好ましくは有機であり、次にオリゴマー又はさらにはポリマーでもある。有機材料、特にポリマーは、作動特性を、軽量、安価な製造、及び容易な加工等の材料特性と組み合わせるため、関心が高まっている新興階級の材料である。
【0123】
電場駆動型EAM、従ってEAPも、一般的に、圧電性、おそらく強誘電性であり、従って、自発的な永久分極(双極子モーメント)を含む。或いは、それらは電歪性であり、従って、駆動された場合には分極(双極子モーメント)のみを含み、駆動されない場合には含まない。或いは、それらは、誘電性リラクサー材料である。そのようなポリマーには、サブクラス:圧電ポリマー、強誘電ポリマー、電歪ポリマー、リラクサー強誘電ポリマー(PVDFベースのリラクサーポリマー又はポリウレタン等)、誘電エラストマー、液晶エラストマー等が含まれるが、これらに限定されない。他の例として、電歪グラフトポリマー、電歪ペーパー、エレクトレット、電気粘弾性エラストマー、及び液晶エラストマーが挙げられる。
【0124】
自発分極の欠如は、非常に高い動作周波数においてさえも、電歪ポリマーがヒステリシス損失をほとんど又は全く示さないということを意味する。しかし、利点は、温度安定性を犠牲にして得られる。リラクサーは、約10℃以内に温度を安定させることができる状況において最良に作動する。これは、一見すると極めて限定的であるように見えるかもしれないが、高周波及び非常に低い駆動場で電歪器が優れているとすれば、その適用は、特殊なマイクロアクチュエータになる傾向がある。そのような小さい装置の温度安定化は比較的シンプルであり、設計及び開発プロセス全体において、小さな問題だけを示すことが多い。
【0125】
リラクサー強誘電材料は、良好な実用には十分高い、すなわち、同時の感知及び作動機能に有利な電歪定数を有し得る。リラクサー強誘電材料は、ゼロの駆動場(すなわち電圧)が加えられた場合には非強誘電であるが、駆動中に強誘電になる。従って、非駆動時に材料において電気機械的結合は存在しない。電気機械的結合は、駆動信号が印加されると非ゼロになり、駆動信号の頂部に小振幅高周波信号を印加することを介して測定することができる。さらに、リラクサー強誘電材料は、非ゼロ駆動信号における高電気機械的結合と良好な作動特徴との独特の組み合わせから利益を得る。
【0126】
無機リラクサー強誘電材料の最も一般的に使用される例は:ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN)、ニオブ酸鉛マグネシウム-チタン酸鉛(PMN-PT)、及びジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)である。しかし、他のものも当技術分野において既知である。
【0127】
PVDFベースのリラクサー強誘電ベースのポリマーは、自発的な電気分極を示し、歪み方向における性能を改善するために予歪みを加えることができる。それらは、本明細書において以下に記載される材料の群から選ばれる任意のものであり得る。
【0128】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(PVDF-TrFE)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレン(PVDF-TrFE-CFE)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン(PVDF-TrFE-CTFE)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、ポリウレタン、又はそれらの混合物。
【0129】
サブクラスの誘電エラストマーは:アクリレート、ポリウレタン、シリコーンを含むが、これらに限定されない。
【0130】
イオン駆動型EAPの例は、共役ポリマー、カーボンナノチューブ(CNT)ポリマー複合材料、及びイオン性高分子金属複合材料(IPMC)である。
【0131】
サブクラスの共役ポリマーは:
ポリピロール、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリアニリンを含むが、これらに限定されない。
【0132】
上記の材料は、純粋な材料として又はマトリクス材料に懸濁される材料として埋め込むことができる。マトリクス材料はポリマーを含み得る。
【0133】
EAM材料を含む任意の作動構造体に対して、印加された駆動信号に応答してEAM層の挙動に影響を与えるために、さらなる不動態層を提供することができる。
【0134】
EAM装置の作動構成又は構造は、制御信号又は駆動信号を電気活性材料の少なくとも一部に提供するための1つ又は複数の電極を有し得る。好ましくは、この構成は、2つの電極を含む。EAM層は、2つ以上の電極間に挟まれてもよい。このサンドイッチ構造は、その作動が、数ある中でも、駆動信号による互いに引き合う電極によって及ぼされる圧縮力によるものであるため、エラストマー誘電材料を含むアクチュエータ構成に必要である。2つ以上の電極は、エラストマー誘電材料に包埋することもできる。電極は、パターン化することができてもできなくてもよい。
【0135】
例えば、櫛形電極を使用して、片側のみに電極層を提供することも可能である。
【0136】
基板を、作動構成の一部とすることができ、電極間のEAP及び電極のアンサンブルに又は外部の電極の1つに取り付けることができる。
【0137】
電極は、EAM材料層の変形に従うように伸縮性であってもよい。これは、EAP材料にとって特に有利である。電極に適した材料も既知であり、例えば、金、銅、若しくはアルミニウム等の薄い金属膜、又は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ポリアニリン(PANI)、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)等のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の有機導体を含む群から選択されてもよい。例えばアルミニウムコーティングを使用して、金属化ポリエチレンテレフタレート(PET)等の金属化ポリエステルフィルムも使用することができる。
【0138】
異なる層に対する材料が、例えば、異なる層の弾性係数(ヤング率)を考慮に入れて選択される。
【0139】
さらなるポリマー層等、上述の層にさらなる層を使用して、装置の電気的又は機械的挙動を適応させることができる。
【0140】
上述のように、電気活性ポリマー構造は、作動及び感知の双方に対して使用され得る。最も顕著な感知機構は、力測定及び歪み検出に基づいている。誘電エラストマーは、例えば、外力によって容易に伸ばすことができる。センサに低電圧をかけることによって、歪みを電圧の関数として測定することができる(電圧は面積の関数である)。
【0141】
電場駆動型システムを用いて感知する別の方法は、静電容量変化を直接測定するか、又は歪みの関数として電極抵抗の変化を測定することである。
【0142】
圧電及び電歪ポリマーセンサは、(結晶化度の量が、検出可能な電荷を生成するのに十分多いとすれば)加えられた機械的応力に応答して電荷を生成することができる。共役ポリマーは、ピエゾイオン効果を利用することができる(機械的応力がイオンの発揮を導く)。CNTは、応力に曝されるとCNT表面上の電荷の変化を経験し、これは、測定することができる。CNTの抵抗は、気体分子(例えば、O2、NO2等)と接触すると変化し、CNTを気体検出器として使用できるようにするということも示されている。
【0143】
本発明の好ましい実施は、PPGセンシングを利用する。パルスオキシメータは、PPGベースのセンサの一般的な例である。パルスオキシメトリの目的は、患者の血液の酸素飽和度をモニターすることである。そのようなセンサの目的は、血中酸素飽和度の測定値を得ることであるけれども、皮膚内の血液量の変化を検出し、それによってPPGセンシングも行う。血液量の変化を検出することによって、脈拍に対応する周期的な信号が得られる。従って、パルスオキシメータ等のPPGセンサは、脈拍数の測定値を提供するために一般的に使用される。
【0144】
PPGセンサは、少なくとも1つのLED及び1つの光センサを有する。LED及びセンサは、LEDが、反射又は透過され且つセンサによって検出される光をユーザの皮膚に導くように置かれる。反射/透過された光の量は、数ある中でも、皮膚内の血液の灌流によって決定される。
【0145】
PPGシステムは、例えば、赤色LED、近赤外LED、及び光検出器ダイオードを含む。LEDは異なる波長で発光し、この光は、患者の皮膚の血管床を通して拡散され、光検出器ダイオードによって受けられる。波長の各々において変化する吸光度が測定され、例えば静脈血、皮膚、骨、筋肉、及び脂肪を除いて、脈動する動脈血のみにより吸光度をセンサが決定するのを可能にしている。次に、結果として生じるPPG信号を分析することができる。
【0146】
1つ又は複数の波長の単一の光源を有するバージョンを含む、PPGデータを得るための他のよりシンプルなバージョンのシステムを使用することができる。光の吸収又は反射率は、拍動性の動脈血液量によって変調され、光検出器装置を使用して検出される。
【0147】
透過型パルスオキシメトリでは、センサ装置は、患者の身体の薄い部分の上に置かれる。反射型パルスオキシメトリは、透過型パルスオキシメトリの代替として使用することができる。この方法は、人間の身体の薄い部分を必要とせず、従って、より普遍的な用途によく適している。
【0148】
PPGセンサの基本設計は、例えば、特定の光出力周波数(例えば、128Hz等)を有し、それを用いて光源はパルス状にされる。光センサのサンプリング周波数は、例えば、256Hz等、より高いため、光源活性化中及び光源活性化間に測定する。これによって、システムが、LEDから発せられた光と周囲光とを区別するのを可能にし、それによって、光源パルスの間に受信された信号から周囲光をフィルタリングする。
【0149】
先に論じたように、コントローラは、データ処理を行う。コントローラは、必要とされる様々な機能を行うために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて数多くの方法で実施することができる。プロセッサは、必要とされる機能を行うためにソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用するコントローラの一例である。しかし、コントローラは、プロセッサを利用して又は利用せずに実施されてもよく、一部の機能を行うための専用のハードウェアと、他の機能を行うためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路等)との組み合わせとして実施することもできる。
【0150】
本開示の様々な実施形態において利用され得るコントローラ構成要素の例として、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASICs)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
様々な実施において、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMの等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ等、1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられてもよい。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要とされた機能を行う1つ又は複数のプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定されてもよく、又は、その上に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサ又はコントローラ内にロードされ得るように、輸送可能であってもよい。
【0152】
開示された実施形態に対する他の変化は、請求された発明を実行する際に、図面、明細書、及び付随の特許請求の範囲の調査から当業者により理解及びもたらすことができる。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞はその複数形を除外しない。特定の手段が互いに異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを役立つよう使用することができないと示しているわけではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照番号も、その範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【0153】
詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の例証的な実施形態を示しているけれども、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないということが理解されるべきである。