(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】プリント回路基板を製造するためのインキジェットインキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20220216BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220216BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C09D11/38
H05K3/28 B
H05K3/06 F
(21)【出願番号】P 2020568592
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2019054676
(87)【国際公開番号】W WO2019166405
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-09-02
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-539391(JP,A)
【文献】特開2009-127030(JP,A)
【文献】特開2013-089761(JP,A)
【文献】特表2017-533814(JP,A)
【文献】特表2017-537986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
H05K 3/28
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキジェット印刷工程が使用されるプリント回路基板(PCB)の製造法であって、インキジェット印刷工程において、式II
【化1】
(式中、
Xは、OおよびNR
3からなる群から選択され、
L
1およびL
2は、2から20個の炭素原子を含んでなる二価の連結基を独立して表し、
R
1は、水素、置換もしくは非置換アルキル基、および置換もしくは非置換アリール基
からなる群から選択され
、
R
3
は、水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置
換もしくは非置換アキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置
換アラルキル基、および置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から選択
され、
nは、0から4の整数を表
す)、
による化学構造を有する接着促進剤を含んでなる放射線硬化型インキジェットインキが噴射され、そして基板上で硬化されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
Xが酸素を表す請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
L
1およびL
2が、置換もしくは非置換アルキレン基を独立して表す請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
nが1を表す請求項1から
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
硬化がUV照射を使用して行われる請求項1から
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ソルダーマスクがインキジェット印刷工程中に導電性パターンを含む誘電性基板上に提供される請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
加熱工程も含んでなる請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
エッチレジストがインクジェット印刷工程で金属表面上に提供される請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
金属表面が銅表面である請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
請求項
11ないし
13のいずれかに定義される放射線硬化型インキジェットインキが使用される請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2.5のpKaを有する重合性化合物、および請求項1ないし
4のいずれかに定義される接着促進剤を含んでなる放射線硬化型インキジェットインキ。
【請求項12】
重合性化合物がフェノール系モノマーである請求項
11に記載の放射線硬化型インキジェットインキ。
【請求項13】
フェノール系モノマーがフェノール系アクリレート、フェノール系メタクリレート、フェノール系アクリルアミド、およびフェノール系メタクリルアミドからなる群から選択される請求項
12に記載の放射線硬化型インキジェットインキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、PCBの製造に使用されることができる放射線硬化型インキジェットインキ、例えばエッチ耐性(etch resistant)インキジェットインキ、およびそのようなPCBの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プリント回路基板(PCB)の製造ワークフローは、次第に標準的なワークフローからデジタルワークフローに向けて移行し、特に短期生産に関しては方法の工程の量を減らし、そしてPCB生産のコストおよび製造の環境への影響を下げている。インキジェットは、エッチレジスト(etch resist)からソルダーマスクを経てレジェンド印刷(legend printing)に行くPCB製造法の様々な工程で好適なデジタル製造技術の1つである。従って好適なインキジェットインキはUV硬化型インキジェットインキである。
【0003】
様々な生産工程で、異なる基板へのインキジェットインキの接着が極めて重要である。接着性能を最大にするために、接着促進剤(adhesion promoter)が必要とされることが多い。
【0004】
エッチレジストの適用では、接着は噴霧され、そして硬化したエッチレジストの剥離性能(stripping performance)との調和がとられなければならない。剥離処理で、エッチレジストはアルカリ媒体中で金属表面から完全に取り除かれなければならず、よく制御された量の脱プロトン化可能官能基を要する。
【0005】
数種類の接着促進剤が従来技術で開示されたが、それらの多くは本質的に酸性である。
【0006】
特許文献1(Avecia)は、剥離処理中に接着促進剤および溶解促進剤(dissolution promoter)として1もしくは複数の酸性基を含む1から30重量%のアクリレート官能性モノマーを含んでなる非水性エッチ耐性インキジェットインキを開示する。
【0007】
特許文献2(Avecia)は、好ましくは(メタ)クリレート酸接着促進剤、例えば(メタ)クリレート化カルボン酸、(メタ)クリレート化リン酸エステルおよび(メタ)クリレート化スルホン酸を含んでなるエッチ耐性インキジェットインキを開示する。
【0008】
酸性接着促進剤を使用する場合、その単一化合物はエッチング処理(etching)中の接着と剥離挙動の両方を制御しなければならない。したがって中性の接着促進剤を、剥離を制御するモノマーと組み合わせて使用して、エッチング性能と剥離性能との両方を互いに独立して最適化することができれは有利になる。
【0009】
数種の中性接着促進剤が、主に歯学的応用で開示された。
【0010】
特許文献3(Girrback Dental GmbH)では、アクリレート化チオエーテルが、歯学的応用で接着促進剤として報告された。またアクリレート化チオエーテルは特許文献4(FujiFilm Corporation)でも、主に合成樹脂上に噴射されることを目的としている特異的増感剤と組み合わせてインキジェットインキ中の
モノマーとして開示された。しかしエッチレジストインキジェットインキとしてPCB生産に使用できると開示された組成物はない。
【0011】
このようにPCB製造法で使用するために、放射線硬化型インキジェットインキ用の別の接着促進剤の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2004/026977号パンフレット
【文献】国際公開第2004/106437号パンフレット
【文献】独国特許出願公開番号第10063332号公報
【文献】特許出願公開番号第2010-006977号公報
【発明の概要】
【0013】
発明の要約
本発明の目的は、PCB製造法で使用するための放射線硬化型インキジェットインキを提供することであり、良好な接着と同時に優れた噴射、安定性および剥離性能を維持することを特徴とする。
【0014】
本発明の目的は、請求項1に定義するようなPCBの製造法および請求項13に定義するような放射線硬化型インキジェットインキにより実現される。
【0015】
式Iによる接着促進剤を含んでなる放射線硬化型組成物は、優れた接着を表すと同時に優れた噴射、安定性および剥離性能を維持することが分かった。
【0016】
本発明のさらなる目的は、今後の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
例えば一官能性重合性化合物における用語「一官能性」は、重合性化合物が1個の重合性基を含むことを意味する。
【0018】
例えば二官能性重合性化合物における用語「二官能性」は、重合性化合物が2個の重合性基を含むことを意味する。
【0019】
例えば多官能性重合性化合物における用語「多官能性」は、重合性化合物が2個より多くの重合性基を含むことを意味する。
【0020】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に可能なすべての変形、すなわちメチル、エチル、3個の炭素原子に関して:n-プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素原子に関して:n-ブチル、イソブチルおよび第3級-ブチル;5個の炭素原子に関して:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピルおよび2-メチル-ブチル等を意味する。
【0021】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルキル基は、好ましくはC1~C6-アルキル基である。
【0022】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルケニル基は、好ましくはC2~C6-アルケニル基である。
【0023】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルキニル基は、好ましくはC2~C6-アルキニル基である。
【0024】
特段の定めがない場合、置換または非置換アラルキル基は、好ましくは1、2、3個またはそれより多いC1~C6-アルキル基を含むフェニルまたはナフチル基である。
【0025】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルカリール基は、好ましくフェニル基またはナフチル基を含むC7~C20-アルキル基である。
【0026】
特段の定めがない場合、置換または非置換アリール基は、好ましくはフェニル基またはナフチル基である。
【0027】
特段の定めがない場合、置換または非置換ヘテロアリール基は、好ましくは1,2または3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはそれらの組み合わせにより置換された5-または6-員環である。
【0028】
例えば置換されたアルキル基における「置換された」という用語は、アルキル基が通常そのような基中に存在する原子、すなわち炭素および水素以外の他の原子により置換されることができることを意味する。例えば置換されたアルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含むことができる。非置換アルキル基は炭素および水素原子のみを含む。
【0029】
特段の定めがないかぎり、置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、置換されたアルキニル基、置換されたアラルキル基、置換されたアルカリール基、置換されたアリール基、および置換されたヘテロアリール基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよび第3級-ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CNおよび-NO2からなる群から選択される1または複数の構成要素により置換される。
【0030】
プリント回路基板の製造法
本発明によるプリント回路基板(PCB)の製造法は、少なくとも1つのインキジェット印刷工程を含んでなり、これはインキジェット印刷工程で以下に記載する接着促進剤を含んでなる放射線硬化型インキジェットインキが使用されることを特徴とする。
【0031】
好適な態様によれば、PCBの製造法は、エッチレジストが金属表面上、好ましくは銅表面上に提供されるインキジェット印刷工程を含んでなる。
【0032】
エッチレジストは、放射線硬化型インキジェットインキを金属表面に噴射そして硬化することにより金属表面に提供され、これにより金属表面に保護された領域を形成する。次いで金属は金属表面の非保護領域からエッチング処理により除去される。エッチング処理後、エッチレジストの少なくとも一部分が金属表面の保護された領域から除去される。
【0033】
エッチレジストが提供されたインキジェット印刷工程は、好ましくは以下に記載するような接着促進剤および少なくとも2.5のpKaを有する重合性化合物を含む放射線硬化型インキジェットインキを含んでなる。
【0034】
金属表面は好ましくは基板に付いた金属箔またはシートである。
【0035】
金属シートに結合した基板の種類には、それが非導電性である限り現実的な制限はない
。基板はセラミック、ガラス、またはプラスチック、例えばポリアミドで作成されることができる。
【0036】
金属シートは通常、9から105μmの間の厚さを有する。
【0037】
金属表面の性質に制限はない。金属表面は好ましくは銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、チタンまたは亜鉛からなるが、これらの金属を含む合金でもよい。大変好適な態様では、金属表面は銅から作られている。銅は高い導電性を有し、そして比較的廉価な金属であり、プリント回路基板を作成法するために大変適するものとなる。
【0038】
またこの方法は、装飾用のエッチング処理済金属パネルを製造するためにも使用できる。
【0039】
使用される金属表面は、本態様用に前記した金属から選択することができ、ここで導電性パターンが調製される。この例では、好ましくは固体金属パネルが使用される。しかしまた、基板に付いた金属箔を使用することもできる。金属箔に結合する基板の種類に現実的な制限はない。基板はセラミック、ガラスまたはプラスチック、またはさらに第二の(より廉価な)金属板から作られることができる。金属は合金でもよい。
【0040】
そのような装飾用金属パネルは、情報を提供するような純粋な装飾以外の目的に役立つことができる。例えばエッチ耐性放射線硬化型インキジェットインキが情報として例えば人や会社の名前で印刷され、次いで除去されてマットなエッチング処理された背景に艶のある光った名前を生じるアルミニウムネームプレートも、装飾用要素を含む装飾用金属パネルと考えられる。エッチング処理は金属表面に視覚的特性の変化、例えば艶の変化などを引き起こす。硬化した放射線硬化型インキジェットインキを金属表面から除去した後に、美的効果がエッチング処理した金属表面とエッチング処理していない表面との間で生じる。
【0041】
インクジェット印刷法の好適な態様では、金属表面が放射線硬化型インキジェットインキを印刷する前に清浄化される。これは特に金属表面が手で手袋をせずに扱われる場合に望ましい。この清浄化で放射線硬化型インキジェットインキの金属表面への接着を妨害する恐れがあるダスト粒子およびグリースを除去する。PCBでは、銅はマイクロエッチングにより除かれる(clean)ことが多い。銅の酸化物層が除去され、そして接着を向上するために粗さが導入される。
【0042】
またインキジェット法は、装飾用にエッチング処理したガラスパネルを製造するためにも使用できる。そのような方法は、例えば国際公開第2013/189762号パンフレット(AGC)に開示されている。
【0043】
別の好適な態様によれば、PCBの製造法はソルダーマスクが提供されるインクジェット印刷工程を含んでなる。
【0044】
ソルダーマスクは、放射線硬化型インキジェットインキを一般に導電性パターンを含む誘電性基板上に噴射し、そして硬化することにより提供される。
【0045】
熱処理は好ましくは、噴射そして硬化した放射線硬化型インキジェットインキに適用される。熱処理は好ましくは80℃から250℃の間の温度で行われる。この温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。ソルダーマスクの炭化を防止するために、温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
【0046】
熱処理は一般に15から90分の間、行われる。
【0047】
熱処理の目的は、ソルダーマスクの重合度をさらに上げることである。
【0048】
熱処理中のさらなる重合は、ペルオキシド、アゾ化合物、酸無水物、およびフェノール類のようなポリマーの熱硬化を促進するラジカル開始剤、ブロック型熱酸発生剤、ブロック型酸触媒および/または熱硬化性化合物を、ソルダーマスクインキジェットインキに加えることにより加速され得る。
【0049】
電子装置の誘電性基板は、任意の非導電性材料でよい。基板は一般に紙/樹脂複合体または樹脂/ガラス繊維複合体(樹脂/繊維ガラス複合体)、セラミック基板、ポリエステルまたはポリイミドである。
【0050】
導電性パターンは一般に、金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、錫、錫/鉛、アルミニウム、錫/アルミニウム、および銅のような電子装置を調製するために通常使用される金属または合金から作られる。導電性パターンは好ましくは銅から作られる。
【0051】
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、インキを化学線、例えば電子線または紫外線(UV)照射に暴露することにより両態様で硬化することができる。好ましくは放射線硬化型インキジェットインキはUV照射、より好ましくはUV LED硬化を使用することにより硬化される。
【0052】
PCBを製造する方法は、2,3またはそれ以上のインキジェット印刷工程を含んでなることができる。例えばこの方法は2つのインキジェット印刷工程を含んでなることができ、ここでエッチレジストは1つのインキジェット印刷工程で金属面に提供され、そしてここでソルダーマスクは別のインキジェット印刷工程で導電性パターンを含む誘電性基板上に提供される。
【0053】
第3のインキジェット印刷工程は、レジェンド印刷に使用されることができる。
【0054】
エッチング処理
インキジェット印刷法の工程b)におけるような金属表面のエッチング処理は、エッチング剤(etchant)を使用することにより実施される。エッチング剤は好ましくはpH<3または8<pH<10の水溶液である。
【0055】
好ましい態様では、エッチング剤は2未満のpHを有する酸水溶液である。この酸エッチング剤は、好ましくは硝酸、ピクリン酸、塩酸、フッ化水素酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0056】
当該技術分野で知られた好ましいエッチング剤は、Kalling’s N°2、ASTM N°30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s Reagent,Picral and Vilella’s Reagentを含む。
【0057】
別の好ましい態様では、エッチング剤は9以下のpHを有するアルカリ水溶液である。このアルカリ性エッチング剤は好ましくは、アンモニアもしくは水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩基を含む。
【0058】
エッチング剤はまた、二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウムおよび三塩化鉄のよ
うな金属塩を含む場合がある。
【0059】
PCB用途における金属表面のエッチング処理は好ましくは、数秒から数分、より好ましくは5から200秒の時間枠内で実施される。エッチング処理は好ましくは、35から60℃の間の温度で実施される。
【0060】
装飾的金属パネルの製造におけるような別の応用における金属表面のエッチング時間は、エッチ工程中に除去されなければならない金属の種類および量に応じて、実質的により長い場合がある。エッチング時間は15、30または60分より、長い場合がある。
【0061】
ガラスの表面がエッチング処理される方法では、エッチング溶液は、好ましくはフッ化水素酸の水溶液である。典型的にはエッチング溶液は0から5の間のpHを有する。
【0062】
エッチング処理の後に、好ましくはあらゆる残留エッチング剤を除去するための水洗が続く。
【0063】
剥離処理
エッチング処理の後に、例えば電気装置または電子装置が残留金属表面(導体パターン)と接触する可能性があるように、またはエッチング処理した金属パネルの装飾的特徴(feature)が完全に可視的になるように、硬化した放射線硬化型インキジェットインキは、金属表面から少なくとも一部は除去されなければならない。例えば、トランジスターのような電子部品(electronic component)はプリント回路板上の導体(銅)パターンと電気的接触することができなければならない。好適な態様において、硬化した放射線硬化型インキジェットインキは金属表面から完全に除去される。
【0064】
好適な態様では、硬化した放射線硬化型インキジェットインキはアルカリ性の剥離浴により工程c)で保護領域から除去される。このようなアルカリ性の剥離浴は通常、pH>10の水溶液である。
【0065】
別の態様では、硬化した放射線硬化型インキジェットインキは、乾燥層間剥離(dry
delamination)により工程c)で保護領域から除去される。この「乾燥剥離」技術は、プリント回路板製造の技術分野において現在は未知であり、そしてこの製造工程にいくつかの環境学的および経済学的利点を導入する。乾燥剥離工程は腐蝕性アルカリ性剥離浴の必要性およびその固有の液体廃棄物を回避するのみならずまた、より高い処理量を可能にする。乾燥剥離工程は、例えば接着性箔およびロール対ロールの張り合わせ機-層間剥離機を使用することにより実施されることができる。接着箔を最初に記金属表面上に存在する硬化した放射線硬化型インキジェットインキ上でその接着面と張り合わせ、次にそれにより金属表面から硬化した放射線硬化型インキジェットインキを除去することにより層間剥離される。ロール対ロールの張り合わせ機-層間剥離機による層間剥離は数秒で実施され得るが、アルカリ性剥離工程は数分を要する。
【0066】
放射線硬化型インキジェットインキ
本発明の放射線硬化型インキジェットインキは、以下に記載するように接着促進剤を含む。
【0067】
また放射線硬化型インキジェットインキは、このましくは少なくとも2.5のpKaを有する重合性化合物を含んでなる。
【0068】
放射線硬化型インキジェットインキは、例えば電子線照射のような任意の種類の放射線で硬化できるが、好ましくはUV照射、より好ましくはUV LEDからのUV照射で硬
化される。放射線硬化型インキジェットインキは、このように好ましくはUV硬化型インキジェットインキである。
【0069】
信頼性のある工業用のインキジェット印刷には、放射線硬化型インキジェットインキの粘度は、45℃で20mPa.s以下であることが好ましく、より好ましくは45℃で1から18mPa.sの間であり、そして最も好ましくは45℃で4から14mPa.sの間である。
【0070】
良好な画質および接着には、放射線硬化型インキジェットインキの表面張力は、25℃で18mN/mから70mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは25℃で約20mN/mから約40mN/mの範囲である。
【0071】
放射線硬化型インキジェットインキは、さらに他の重合性化合物、着色剤、高分子分散剤、光開始剤または光開始系、重合阻害剤、難燃剤または界面活性剤を含んでなることができる。
【0072】
接着促進剤
接着促進剤は式I
【化1】
式中、
Xは、OおよびNR
3からなる群から選択され、
L
1およびL
2は、2から20個の炭素原子を含んでなる二価の連結基を独立して表し、
R
1は、水素、置換もしくは非置換アルキル基、および置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択され、
R
2は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から選択され、
R
3は、水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から選択され、
nは、0から4の整数を表し、
任意のL
1、L
2およびR
2は、5から8員環を形成するために必要な原子を表すことができる、
による化学構造を有する。
【0073】
Xは、好ましくは酸素を表す。
【0074】
R1は、好ましくは水素およびアルキル基からなる群から選択され、水素およびメチル基がより好ましく、水素が最も好ましい。
【0075】
L1およびL2は、好ましくは2から20個の炭素原子、より好ましくは2から10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルキレン基を表す。
【0076】
好ましくは、nは1から4の整数を表し、より好ましくはnは0または1を表し、最も好ましくはnは1を表す。
【0077】
R2は、好ましくはアクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つの重合性基を含んでなることが好ましく、アクリレートおよびメタクリレートがより好ましく、アクリレートが最も好ましい。
【0078】
特に好適な態様では、接着促進剤は式II
【化2】
式中、
X、R
1、L
1、L
2およびnは前記定義の通りである、
による化学式を有する。
【0079】
本発明によるチオエーテル系の接着促進剤の例を表1に与える。
【表1-1】
【表1-2】
【0080】
放射線硬化型インキジェットインキ中の接着促進剤の量は、インキジェットインキの総重量に対して好ましくは0.1重量%から20重量%の間、より好ましくは0.5重量%から15重量%の間、最も好ましくは1重量%から10重量%の間である。
【0081】
前記量が少なすぎると、インキジェットインキの金属表面への接着が不十分となる恐れがあり、量が多すぎると、インキの粘度が上がり、そして品質保持期限がより重要となり得る。
【0082】
少なくとも2.5のpKaを有する重合性化合物
放射線硬化型インキジェットインキは少なくとも2.5、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも7のpKaを有する重合性化合物を含んでなることが好ましい。
【0083】
少なくとも2.5のpKaを有する重合性化合物は、好ましくはフェノール系モノマーである。
【0084】
フェノール系モノマーは、フェノール系アクリレート、フェノール系メタクリレート、フェノール系アクリルアミド、およびフェノール系メタクリルアミドからなる群から選択されることが好ましく、アクリレートおよびメタクリレートがより好ましい。本発明によるフェノール系モノマーの例を表2に与える。
【表2】
【0085】
放射線硬化型インキジェットインキ中の前記酸性重合性化合物の量は、インキジェットインキの総重量に対して好ましくは0.5重量%から25重量%の間、より好ましくは1重量%から15重量%の間、最も好ましくは2.5重量%から10重量%の間である。
【0086】
前記量が少なすぎると耐水性が不十分となり、量が多すぎるとエッチ耐性が悪くなる。
【0087】
他の重合性化合物
前記接着促進剤に加えて、放射線硬化型インキジェットインキは他の重合性化合物を含んでなることが好ましい。
【0088】
他の重合性化合物は、モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーでよい。これらのモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーは、異なる程度の官能性を有することができる。一-(モノ-)、二-(ジ-)、三-(トリ-)およびそれより高い官能性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用することができる。放射線硬化型インキジェットインキの粘度は、モノマーとオリゴマーとの間の比率を変動させることにより調整することができる。
【0089】
特に好適なモノマーおよびオリゴマーは、欧州特許出願公開第1911814号公報の[0106]から[0115]に列挙されたものである。
【0090】
他の好適なモノマーおよびオリゴマーは、欧州特許出願公開第2809735号、同第2725075号、同第2915856号、同第3000853号、および同第3119170号公報(すべてAgfa Gevaert NVから)に開示されているものである。
【0091】
エッチレジストが提供されるインキジェット印刷工程で使用するための放射線硬化型組成物は、式III
【化3】
式中、
A
1およびA
2は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミドからなる群から独立して選択され、そして
L
2およびL
3は、2から10個の炭素原子を含む二価の連結基を表す、
に従うモノマーを含んでなることが好ましい。
【0092】
好ましくはA1およびA2は、アクリレートおよびメタクリレートからなる群から独立して選択され、アクリレートが特に好ましい。
【0093】
式IIIによるモノマーの具体例は、欧州特許出願公開第2703180号公報(Agfa-Gevaert N.V.)の段落[0056]に開示されている。
【0094】
着色剤
放射線硬化型インキジェットは実質的に無色のインキジェットインキであるが、好ましくは放射線硬化型インキジェットは少なくとも1つの着色剤を含む。着色剤は暫定的マスクを製造者の導電性パターンに対して明らかに可視化して、品質の外観検査を可能にする。
【0095】
着色剤は顔料または染料でよいが、好ましくは放射線硬化型インキジェットのインキジェット印刷工程中にUV硬化工程により漂白されない染料である。顔料は、ブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物等でよい。着色顔料はHERBST,Willy et
al.著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,第3版.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されているものから選択することができる。
【0096】
適切な顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレットの段落[0128]から[0138]に開示されている。
【0097】
インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット印刷装置を通過する、特に吐出ノズルでのインキの自由な流れを可能にするのに十分に小さくなければならない。また最大色濃度のため、ならびに沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いることが望ましい。最も好ましくは平均顔料粒度(average pigment particle size)は150nm以下である。顔料粒子の平均粒度は、好ましくは動的光散乱法の原理に基づきBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusで測定される。
【0098】
一般に染料は顔料よりも高い光退色(light fading)を現すが、噴射性には問題を生じない。アントラキノン染料は、UV硬化型インキジェット印刷で使用される標準的UV硬化条件下でわずかな光退色を現わすだけであることが分かった。
【0099】
好適な態様では、放射線硬化型インキジェットインキ中の着色剤はアントラキノン染料、例えばLANXESSからのMacrolex(商標)Blue3R(CASRN 325781-98-4)である。
【0100】
他の好適な染料には、クリスタルバイオレットおよび銅フタロシアニン染料を含む。
【0101】
好適な態様では、着色剤は放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき0.5重量%~6.0重量%、より好ましくは1.0重量%~2.5重量%の量で存在する。
【0102】
高分子分散剤
放射線硬化型インキジェット中の着色剤が顔料ならば、放射線硬化型インキジェットインキは顔料を分散するために好ましくは分散剤を含み、より好ましくは高分子分散剤を含む。
【0103】
適切な高分子分散剤は2つのモノマーのコポリマーであるが、3,4,5またはさらにそれ以上のモノマーを含むことができる。高分子分散剤の特性は、モノマーの性質およびそれらのポリマー中での分布の双方に依存する。コポリマー分散剤は好ましくは以下のポ
リマー組成を有する:
―統計的に重合されたモノマー(例えばモノマーAおよびBがABBAABABに重合);
―交互重合化モノマー(例えばモノマーAおよびBがABABABABに重合);
―グラジエント(テーパー型)重合化モノマー(例えばモノマーAおよびBがAAABAABBABBBに重合);
―ブロックコポリマー(例えばモノマーAおよびBがAAAAABBBBBBに重合)、ここで各ブロックのブロック長(2,3,4,5またはそれ以上)が高分子分散剤の分散能に重要となる;
―グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、重合骨格と骨格に付いた重合側鎖からなる);および
―これらポリマーの混合形、例えばブロック状グラジエントコポリマー。
【0104】
適切な高分子分散剤は、欧州特許出願公開第1911814号公報の「分散剤」、より詳細には[0064]から[0070]および[0074]から[0077]に列挙されている。
【0105】
市販の高分子分散剤の例は以下の通りである:
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤;・NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤;
・EVONIKからのTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤;
・MUNZING CHEMIEからのEDAPLAN(商標)分散剤;
・LYONDELLからのETHACRYL(商標)分散剤;
・ISPからのGANEX(商標)分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEX(商標)およびEFKA(商標)分散剤;
・DEUCHEMからのDISPONER(商標)分散剤;および
・JOHNSON POLYMERからのJONCRYL(商標)分散剤。
【0106】
光開始剤および光開始系
放射線硬化型インキジェットは、好ましくは少なくとも1つの光開始剤を含むが、複数の光開始剤および/または共開始剤(co-initiator)を含む光開始系を含んでもよい。
【0107】
放射線硬化型インキジェット中の光開始剤は、好ましくはフリーラジカル開始剤、より具体的にはノリッシュI型開始剤またはノリッシュII型開始剤である。フリーラジカル光開始剤は、化学線照射に暴露された時、フリーラジカルの形成によりモノマーおよびオリゴマーの重合を開始する化学化合物である。ノリッシュI型開始剤は励起後に開裂する開始剤であり、即座に開始ラジカルを生じる。ノリッシュII型開始剤は、化学線照射により活性化される光開始剤であり、そして実際の開始フリーラジカルになる第二化合物から水素を引き抜くことによりフリーラジカルを形成する。この第二化合物は重合相乗剤または共開始剤と呼ばれる。I型およびII型光開始剤の両方が、本発明において単独または組み合わせて使用され得る。
【0108】
適切な光開始剤はCRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerization.第二版、BRADLEY,G.編集、London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.276-293に開示されている。
【0109】
光開始剤の具体例には、限定するわけではないが以下の化合物またはそれらの組み合わ
せを含むことができる:ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ―2-メチル―1-フェニルプロパン―1-オン、2-ベンジル―2-ジメチルアミノ―(4-モルホリノフェニル)ブタン―1-オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィン
オキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル―ジフェニルホスフィン オキシド、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィン オキシド、2-メチル―1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンまたは5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン。
【0110】
適切な市販されている光開始剤には、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacure(商標)184、Irgacure(商標)500、Irgacure(商標)369、Irgacure(商標)1700、Irgacure(商標)651、Irgacure(商標)819、Irgacure(商標)1000、Irgacure(商標)1300、Irgacure(商標)1870、Darocur(商標)1173、Darocur(商標)2959、Darocur(商標)4265およびDarocur(商標)ITX、BASF AGから販売されているLucerin(商標)TPO、LAMBERTIから販売されているEsacure(商標)KT046、Esacure(商標)KIP150、Esacure(商標)KT37およびEsacure(商標)EDB、SPECTRA GROUP Ltd.から販売されているH-Nu(商標)470およびH-Nu(商標)470Xを含む。
【0111】
光開始剤は、いわゆる拡散が妨げられた光開始剤(diffusion hindered photoinitiator)であることができる。拡散が妨げられた光開始剤は、硬化したインキ層中でベンゾフェノンのような一官能性光開始剤よりも大変低い移動性(mobility)を現わす光開始剤である。光開始剤の移動性を下げるために幾つかの方法を使用することができる。1つの方法は、拡散速度が下がるように光開始剤の分子量を上げることである(例えば高分子光開始剤)。別の方法は、重合するネットワークに組み込まれるように反応性を上げることである(例えば2,3またはより多くの光開始基(photoinitiating group)を有する多官能性光開始剤および重合性光開始剤)。
【0112】
放射線硬化型インキジェット用の拡散が妨げられた光開始剤は、好ましくは非高分子多官能性光開始剤、オリゴマーまたはポリマー光開始剤および重合性光開始剤からなる群から選択される。最も好ましくは拡散が妨げられた光開始剤は、重合性光開始剤または高分子光開始剤である。
【0113】
好適な拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジル ケタール、α,αジアルコキシアセトフェノン,α-ヒドロキシアルキルフェノン,αアミノアルキルフェノン,アシルホスフィン オキシド、アシルホスフィン スルフィド、α-ハロケトン,α-ハロスルホンおよびフェニルグリオキサレートからなる群から選択されるノリッシュI型光開始剤から誘導される1もしくは複数の光開始官能基を含む。
【0114】
好適な拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2-ジケトンおよびアントラキノンからなる群から選択されるノリッシュII型開始剤から誘導される1もしくは複数の光開始官能基を含む。
【0115】
また適切な拡散が妨げられた光開始剤は、欧州特許出願公開第2065362号公報の段階[0074]および[0075]で二官能性および多官能性光開始剤について、段落
[0077]から[0080]で高分子光開始剤について、そして段落[0081]から[0083]で重合性光開始剤について開示されているものである。
【0116】
光開始剤の好適な量は、放射線硬化型インキジェットの総重量の0.1重量%-20重量%、より好ましくは2重量%―15重量%、そして最も好ましくは3重量%―10重量%である。
【0117】
さらに光感受性を増強するために、放射線硬化型インキジェットはさらに共開始剤を含むことができる。共開始剤の適切な例は、3つのグループに分類できる:1)三級脂肪族アミン、例えばメチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびN-メチルモルホリン;(2)芳香族アミン、例えばアミルパラジメチル―アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル―4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;および(3)(メタ)アクリル化アミン、例えばジアルキルアミノアルキル(メタ)クリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)またはN-モルホリノアルキル-(メタ)クリレート(例えば、N-モルホリノエチル-アクリレート)。好適な共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0118】
1もしくは複数の共開始剤を放射線硬化型インキジェットインキに含む場合、好ましくはこれらの共開始剤は安全性の理由から拡散が妨げられている。
【0119】
拡散が妨げられた共開始剤は、非ポリマーの二―または多官能性共開始剤、オリゴマーまたはポリマー共開始剤、および重合性共開始剤からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤はポリマー共開始剤および重合性共開始剤からなる群から選択される。最も好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤は少なくとも1つの(メタ)クリレート基を有する、より好ましくは少なくとも1つのアクリレート基を有する重合性共開始剤である。
【0120】
放射線硬化型インキジェットインキは、好ましくは重合性または高分子三級アミン共開始剤を含む。
【0121】
好適な拡散が妨げられた共開始剤は、欧州特許出願公開第2053101号公報の段落[0088]および[0097]に開示された重合性共開始剤である。
【0122】
放射線硬化型インキジェットインキは、好ましくは(拡散が妨げられた)共開始剤を、放射線硬化型インキジェットインキの総重量の0.1重量%から20重量%の量で、より好ましくは0.5重量%から15重量%の量で、そして最も好ましくは1重量%から10重量%の量で含む。
【0123】
重合阻害剤
放射線硬化型インキジェットインキは、インキの耐熱性を改善するために少なくとも1つの阻害剤を含むことができる。
【0124】
適切な重合阻害剤は、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤、リン型酸化防止剤、通常は(メタ)クリレートモノマーに使用されるハイドロキノン モノメチル エーテルを含み、そしてハイドロキノン、t-ブチルカテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル―4-メチルフェノール(=BHT)も使用できる。
【0125】
適切な市販の阻害剤は、例えばSumitomo Chemical Co.Ltd.
により生産されているSumilizer(商標)GA-80、Sumilizer(商標)GMおよびSumilizer(商標)GS;Rahn AGからのGenorad(商標)16、Genorad(商標)18およびGenorad(商標)20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(商標)UV10およびIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460およびCGS20;Kromachem LtdからのFloorstab(商標)UV系列(UV-1、UV-2、UV-5およびUV-8);Cytec Surface SpecialitiesからのAdditol(商標)S系列(S100、S110、S120およびS130)である。
【0126】
阻害剤は好ましくは重合阻害剤である。
【0127】
これら重合阻害剤の過剰な添加は硬化速度を下げるので、重合を防止することができる量をブレンド前に決定することが好ましい。重合阻害剤の量は、放射線硬化型インキジェットインキの総重量の5重量%未満が好ましく、より好ましくは3重量%未満である。
【0128】
界面活性剤
放射線硬化型インキジェットは少なくとも1つの界面活性剤を含むことができるが、好ましくは界面活性剤は存在しない。界面活性剤が存在しない場合、放射線硬化型インキジェットインキは金属シート上に十分広がらず、薄い導電性の線(conductive line)の生成を可能にする。
【0129】
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性または両イオン性であることができ、そして通常、放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき1重量%未満の総量で加えられる。
【0130】
適切な界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、高級アルコールの脂肪酸塩、エステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩およびリン酸エステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、およびそれらのアセチレングリコールおよびエチレンオキシド付加物(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびAIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能なSURFYNOL(商標)104、104H、440,465およびTG)を含む。
【0131】
好適な界面活性剤は、フッソ系界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)、およびシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーン界面活性剤は好ましくはシロキサンであり、そしてアルコキシル化、ポリエーテル修飾化、ポリエーテル修飾化ヒドロキシ官能性、アミン修飾化、エポキシ修飾化されることができ、および他の修飾またはそれらの組み合わせであることができる。好適なシロキサンはポリマー性、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0132】
好適な市販のシリコーン界面活性剤には、BYK ChemieからのBYK(商標)333およびBYK(商標)UV3510を含む。
【0133】
好適な態様では、界面活性剤は重合性化合物である。
【0134】
好適な重合性シリコーン界面活性剤には(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤を含む。最も好ましくは(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤はアクリレート化シリ
コーン界面活性剤であり、なぜならばアクリレートはメタクリレートより反応性だからである。
【0135】
好適な態様では、(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤は、ポリエ-テル修飾化(メタ)クリレート化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル修飾化(メタ)クリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0136】
好ましくは界面活性剤は、放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき0から3重量%の量で放射線硬化型インキジェットインキ中に存在する。
【0137】
インキジェットインキの調製
顔料を含む(pigmented)放射線硬化型インキジェットインキの調製は、当業者には周知である。好適な調製法は国際公開第2011/069943号パンフレットの段落[0076]から[0085]に開示されている。
【0138】
インキジェット印刷装置
放射線硬化型インキジェットインキは、小液滴を制御された様式でノズルに通して基板に吐出する1もしくは複数のプリントヘッドにより噴射されることができ、この基板はプリントヘッド(1もしくは複数)に対して移動している。
【0139】
インキジェット印刷システムのための好ましいプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インキジェット印刷は、圧電セラミック変換器に電圧がかけられる時のその動きに基づく。電圧の適用は、プリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変化させて空隙を作り、次いでそれはインキで満たされる。再び電圧が取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、プリントヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら、本発明に従うインキジェット印刷方法は圧電インキジェット印刷に制限されない。他のインキジェットプリントヘッドも使用でき、そして連続型のような種々のタイプを含む。
【0140】
インキジェットプリントヘッドは通常、移動するインキ受容層表面を横切って横方向に前後を走査する。インキジェットプリントヘッドは戻って印刷しないことが多い。二方向印刷は高い面積処理量を得るために好ましい。別の好適な印刷法は「シングルパス印刷法(single pass printing process)」により、この方法は頁幅のインキジェットプリントヘッドまたは金属板の幅全体を覆う多数のずらして配置されたインキジェットプリントヘッドを使用することにより行うことができる。シングルパス印刷法では、インキジェットプリントヘッドは、通常は静止したままであり、そして金属基板がインキジェットプリントヘッド下を移送される。
【0141】
硬化装置
放射線硬化型組インキジェットインキは、それらを化学線、例えば電子線または紫外線照射に暴露することにより硬化され得る。好ましくは放射線硬化型インキジェットインキは、紫外線照射により、より好ましくはUV LED硬化を使用して硬化される。
【0142】
インキジェット印刷では、硬化手段は、噴射の直後に硬化性液体が硬化放射線に暴露されるように、一緒に移動しているインキジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせて配置されることができる。
【0143】
そのような配置では、UV LEDを除いて、プリントヘッドに接続され、そして一緒に移動する十分に小さい放射線源を備えることは難しい。したがって静止した固定放射線源、例えば、光ファイバーの束または内部反射性の柔軟な管のような、可撓性の放射線伝導手段により放射線源に接続された硬化UV-光線源を使用してもよい。
【0144】
あるいはまた、化学線放射は放射線ヘッド上に鏡を含む鏡の配置により、固定源から放射線ヘッドに供給されることができる。
【0145】
放射線源はまた、硬化される基板上を横切って横に延伸する細長い放射線源でもよい。それは、プリントヘッドにより形成される画像のその次の列が、段階的にまたは連続的にその放射線源の下方を通過するように、プリントヘッドの横断路に隣接することができる。
【0146】
発光の一部が光開始剤または光開始系により吸収可能である限り、高圧もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、不可視光線、紫外線LED、紫外線レーザーおよび閃光のような任意の紫外線源が放射線源として使用され得る。これらの中で好適な線源は、300ないし400nmの主要波長を有する比較的波長の長いUV貢献(UV-contribution)を示すものである。具体的には、UV-A光源は、光線の散乱が低いためにより効率的な内部の硬化をもたらすので好ましい。
【0147】
UV照射は一般に以下のようにUV-A、UV-BおよびUV-Cに分類される:
・UV-A:400nmないし320nm、
・UV-B:320nmないし290nm、
・UV-C:290nmないし100nm。
【0148】
好適な態様では、放射線硬化型インキジェットインキはUV LEDにより硬化される。インキジェット印刷装置は、好ましくは360nmより長い波長をもつ1もしくは複数のUV LED、好ましくは380nmより長い波長を持つ1もしくは複数のUV LED、そして最も好適には約395nmの波長をもつUV LEDを含む。
【0149】
さらに異なる波長または照度(illuminance)の2つの光源を連続的にまたは同時に使用してインキ画像を硬化することが可能である。例えば、第1のUV源はとりわけ260nmないし200nmの範囲のUV-Cが豊富となるように選択されることができる。次に第2のUV-源は、UV-Aが豊富な、例えば、ガリウム―ドープランプ、またはUV-AとUV-Bの両方が高い異なるランプであることができる。2種のUV-源の使用は、例えば急速な硬化速度および高い硬化度のような利点を有することが分かった。
【0150】
硬化を促進するために、インキジェット印刷装置はしばしば、1もしくは複数の酸素除去(depletion)ユニットを含む。酸素除去ユニットは、硬化環境内の酸素濃度を低下させるために、調整可能な位置に、および調整可能な不活性ガス濃度で窒素または他の比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。残留酸素レベルは通常、わずか200ppmに維持されるが、一般には200ppmないし1200ppmの範囲である。
【実施例】
【0151】
材料
以下の実施例で使用されるすべての材料は、別記されない限り、ALDRICH CHEMICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような標準的な入手先から容易に入手可能であった。使用された水は脱イオン水であった。
【0152】
SR606Aは、ARKEMAからSartomer(商標)SR606Aとして入手可能な80-90%のネオペンチルグリコール ヒドロキシピバレート ジアクリレートと10-20%のネオペンチルグリコール ジアクリレートの混合物である。
【0153】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイル モルホリンである。
【0154】
ITXは、BASFからDarocur(商標)ITXとして入手可能な2-および4-イソプロピルチオキサントンの異性体混合物である。
【0155】
TPO-Lは、LAMBSONからSpeedcure(商標)TPO-Lとして入手可能な光開始剤であるエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートである。
【0156】
EPDは、RAHNからGenocure(商標)EPDとして入手可能なエチル4-ジメチルアミノベンゾエートである。
【0157】
CEAは、ALDRICHからの2-カルボキシエチル アクリレートである。
【0158】
CN146は、ARKEMAからの(2-アクリロイルオキシエチル)フタレートである。
【0159】
INHIBは、重合阻害剤を形成する混合物であり、表3による組成を有する:
【表3】
【0160】
DPGDAは、ジプロピレンジアクリレートであり、ARKEMAからSartomer SR508として入手可能である。
【0161】
Cupferron(商標)ALは、WAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0162】
Dye-1は、LANXESSからMacrolex(商標)Blue 3Rとして入手可能なブルーアントラキノン染料である。
【0163】
フェノール-1は、米国特許出願第20100249276号明細書(Designer Molecules Inc.)に開示されているように調製されたフェノール系モノマーである。
【0164】
フェノール-3は、以下のスキームにより調製されるフェノール系モノマーである:
【化4】
メシル化工程は、特開2009221124号公報(Fujifilm Corporation)に開示された。フェノール-3は、米国特許出願第2016/0318845号明細書(Fujifilm Corporation)に従い調製された。
【0165】
Disperbyk 162は分散剤であり、そしてBYK(ALTANA)から入手可能な溶液から沈殿された。
【0166】
シアンは、SUN CHEMICALSから入手可能なシアン顔料、SUN FAST BLUE 15:4である。
【0167】
イエローは、BASF.CTFAからのイエロー顔料、CROMOPHTAL YELLOW D1085Jである。
【0168】
VEEAは、日本のNIPPON SHOKUBAIから入手可能な2-(ビニルエトキシ)エチル アクリレートである。
【0169】
CD420は、ARKEMAからSartomer(商標)CD420として入手可能な一官能性アクリル酸モノマーである。
【0170】
TMPTAは、ARKEMAからのSartomer(商標)SR351として入手可能なトリメチロール プロパン トリアクリレートである。
【0171】
SR335は、ARKEMAからのラウリルアクリレートである。
【0172】
ADK FP600は、ADEKA PALMAROLEからの難燃剤である。
【0173】
PB5は、HYDRITE CHEMICAL COMPANYからの分岐ポリ(4-ヒドロキシスチレン)である。
【0174】
BAPOは、BASFからIrgacure(商標)819として入手可能なビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(phenylphoshineoxide)光開始剤である。
【0175】
Ebecryl 1360 AKは、ALLNEXからのポリシロキサン ヘキサアクリレートスリップ剤である。
【0176】
方法
粘度
インキの粘度は、CAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSからの“Robotic Viscometer Type(ロボット型粘度計)VISCObot”を使用して、45℃および1000s-1の剪断速度で測定した。
【0177】
工業的インキジェット印刷に関して、45℃および1000s-1の剪断速度での粘度は
好ましくは、5.0から15mPa.sの間である。より好ましくは、粘度は45℃および1000s-1の剪断速度で15mPa.s未満である。
【0178】
銅の洗浄
IsolaからのIsola(商標)400の銅板を、pH<1を有し、H2SO4、H2O2およびCu2+を含む、MEC EuropeからのMecbrite(商標)CA-95と呼ばれる溶液で25℃において5秒間洗浄した。この操作中に、Cuの薄い最上層(0.3ないし0.5μm)が除去された。次に銅板を90秒間、水の噴射ですすぎ、乾燥し、そして直ちに使用した。
【0179】
エッチ耐性(Etch Resistance)
第1の方法では、エッチ耐性はエッチング処理し、そしてすすいだ直後に層を綿球でこすることにより評価した。評価は表4に記載した基準に従い行った。
【表4】
【0180】
第2の方法では、エッチ耐性はエッチング処理し、そしてすすいだ後、銅板上に残る硬化したインキジェットインキ層の割合を決定することにより評価した。100%のエッチ耐性とは、硬化した全インキジェット層がエッチング浴で無傷であった(suevived)ことを意味する。0%のエッチ耐性とは、エッチング処理後に銅板上に存在する硬化したインキジェットインキが無いことを意味する。良好なエッチ耐性とは、少なくとも80%の値を意味する。優れたエッチ耐性とは、少なくとも90%、しかし好ましくは100%の値を意味する。
【0181】
可剥性(Strippability)
可剥性は、剥離後に銅板から除去された硬化インキジェット層の割合を決定することにより評価した。100%の可剥性は、硬化したインキジェットインキ層全体が銅板から除去されたことを意味する。中間の割合、例えば30%は、硬化したインキジェットインキの約30%のみが銅板から除去され得たことを意味する。良好な可剥性は、少なくとも80%の値を意味する。優れた可剥性は少なくとも90%、しかし好ましくは100%の値を意味する。30%以下の値は、非常に劣る可剥性である。
【0182】
ソルダーマスクインキジェットインキの接着
付着性を、ISO2409:1992(E)に従いクロスカット(cross-cut)試験により評価した。切り込みの間に1mmの隙間をあけて、BRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536 Cross Cut Testerを使用し、そしてTesatape(商標)4104PVCテープと組み合わせた600gの重りを使用したPaints(国際標準1992-08-15)。評価を表5に記載の基準に従って実施し、ここでクロスカットの内部およびクロスカットの外部両方の接着を評価した。
【表5】
【0183】
はんだ耐性(Solder Resistance)
ソルダーマスクインキジェットインキのはんだ耐性を、SOLDER CONNECTIONから入手可能な、“K”等級の63:37錫/鉛のはんだを充填したL&M PRODUCTSから入手可能なSPL600240 Digital Dynamic Soldr Pot(デジタルダイナミックはんだ付け槽)を使用して評価した。はんだの温度は290℃に設定した。
【0184】
SOLDER CONNECTIONからのはんだ接着用溶剤(solder flux)SC7560Aを、サンプルの表面(すなわち、接着で記載したような銅表面上のソルダーマスクインキジェットインキのコーティング)上にQ-チップを使用して適用して、表面を清浄化した。はんだ接着用溶剤ははんだ付け槽の上に、サンプルを10分間置くことにより乾燥させた。
【0185】
サンプルをはんだ付け槽に配置した後、はんだの噴流(wave)を10秒間発生させ(created)、その後サンプルを少なくとも10分間冷却した。
【0186】
次にソルダーマスクインキジェットインキの銅表面への接着は、冷却したサンプル上でテープ試験を用いて評価した。ドイツのTESA AGからのブラックテープ Tesa4104/04をコーティングに貼り、そしてテープをその後直ぐに手で剥がした。
【0187】
視覚評価は、0(大変良好な接着)から5(大変劣る接着)の範囲の接着品質を生じた。
【実施例1】
【0188】
この実施例は、本発明による接着促進剤の調製を具体的に説明する。
【0189】
THIO-1の合成
THIO-1は、以下のスキームに従い調製されるチオエーテル接着促進剤である:
【化5】
36.46g(0.2モル)の3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオールおよび 2.2gのBHT(ブチルヒドロキシトルエン)を350mlの塩化メチレンに溶解した。44.44g(0.44モル)のトリエチルアミンを加え、そして混合物を-5℃に冷却した。39.82g(0.44モル)の塩化アクリロイル(50mlの塩化メチレン中)溶液を45分間にわたって加えながら温度を-5℃に維持した。反応を室温で2時間、続行した。混合物を2N HClで2回、そして2N NaOHで2回抽出した。有機画分を単離し、そしてNa
2SO
4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。
【0190】
粗THIO-1は、GraceResolvカラムで塩化メチレンを溶出液として使用して調製用カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0191】
24g(収率=41%)のTHIO-1を単離した(溶出液として塩化メチレンを使用したMerck TLCシリカゲル60F254プレートでのTLC-分析:Rf=0.35)。
【0192】
THIO-2の合成
THIO-2は、ABCRにより供給されるチオエーテル接着促進剤である。
【0193】
THIO-7の合成
THIO-7は、以下のスキームに従い調製されるチオエーテル接着促進剤である:
【化6】
4,7-ジチアデカン二酸を、Yoda N.,Makromoleculare Chemie,56,36-54(1962)に従い調製した。5.66g(23.75ミリモル)の4,7-ジチアデカン二酸、8.84g(57ミリモル)の1-(3-ジメチル-アミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドおよび0.58g(4.75ミリモル)の4-ジメチルアミノ-ピリジンを115mlのジメチルホルムアミドに溶解した。混合物を-5°℃に冷却し、そして6.56g(57ミリモル)の2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(10mlジメチルホルムアミド中)溶液を加えた。反応は室温で16時間続行した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を250mlの塩化メチレンに再溶解した。混合物を75mlの水で3回、50mlの1M HClで1回、そして1M NaOHで1回、抽出した。有機画分を単離し、Na
2SO
4で乾燥させ、そして減圧下で蒸発させた。残渣は、30mlのアセトンと30mlの塩化メチレンの混合物で処理した。300mlのn.ヘキサンを加え、そしてTHIO-7が媒質から晶出した。THIO-7を濾過により単離し、そして乾燥した。3.4gのTHIO-7が単離された(収率=33%)。THIO-7は、DMSO d6中、
1H-NMR分析により分析した。
【化7】
【表6】
【実施例2】
【0194】
この実施例は、本発明による接着促進剤を含むUV硬化型インキジェットインキのアルカリ性の剥離浴中での優れたエッチ耐性を良好な可剥性と合わせて具体的に説明する。
【0195】
比較のインクCOMP-1および本発明のINV-1
比較の放射線硬化型インキジェットインキCOMP-1および本発明の放射線硬化型インキジェットインキINV-1は、表6に従い調製した。重量パーセント(%)は、全て放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づく。
【表7】
【0196】
比較サンプルCOMP-S-1および本発明のサンプルINV-S-1
比較サンプルCOMP-S-1および本発明の試験サンプルINV-S-1は、それぞれインクCOMP-1およびINV-1を35μmの銅積層物にスパイラルコーティングバーを用いて20μmの湿潤コーティング厚でコーティングすることにより得られた。続いて層をH-電球(水銀ランプ)を用いて全出力で硬化した。
【0197】
サンプルを45℃で60秒間、エッチ浴(MacDermid EnthoneからのMetex Universal Starter、CuNH3Clを含む)に供し、引き続いて水で90秒すすぎ、そして乾燥させた。
【0198】
サンプルのエッチ耐性は、前記のように評価した。結果を表7に示す。
【0199】
次いでサンプルは、10%のエタノールアミン溶液中で50℃にて2分間、剥離処理した。可剥性は前記のように評価し、結果も表7に示す。
【表8】
【0200】
表7の結果から、本発明によるUV硬化型エッチレジストインクのみ、すなわち前記の接着促進剤化合物を含むものが、アルカリ性の剥離浴中で優れたエッチ耐性と良好な可剥性を併せ持つと結論することができる。
【実施例3】
【0201】
この実施例は、本発明による接着促進剤を含むUV硬化型インキジェットインキのアルカリ性の剥離浴中での優れたエッチ耐性を良好な可剥性と合わせて具体的に説明する。
【0202】
比較のインキCOMP-2からCOMP-5および本発明のインキINV-2およびINV-3
比較の放射線硬化型インキジェットインキCOMP-2からCOMP-5および本発明の放射線硬化型インキジェットインキINV-2および3は、表8に従い調製した。重量パーセント(重量%)は、全て放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づく。
【表9】
【0203】
サンプルCOMP-S-2からCOMP-S-5および本発明の試験サンプルINV-S-2およびINV-S-3
比較サンプルCOMP-S-2からCOMP-S-5および本発明の試験サンプルINV-S-2およびINV-S-3は、インキCOMP-2からCOMP-5およびINV-1およびINV-2を、35μmのCu積層物に,Microcraft MJK2013(8回、45℃の噴射温度、全出力でLED395nmの電球を用いた各回(each pass)後に100%ピンキュア(pincure))を使用して噴射することにより得た。
【0204】
サンプルは、45℃のエッチ浴(MacDermid EnthonからのMetex
Universal Starter、CuNH3Clを含む)に60秒供し、次いで引き続き水で90秒すすぎ、そして乾燥した。
【0205】
サンプルのエッチ耐性は、前記のように評価した。結果を表9に示す。
【0206】
次いでサンプルを6.25%のNaOH溶液で、50℃にて2分間剥離した。可剥性は前記のように評価し、また結果を表9に示す。
【表10】
【0207】
表9の結果から、本発明によるUV硬化型エッチレジストインキのみがアルカリ性の剥離浴中で優れたエッチ耐性と良好な可剥性とを併せ持っていると結論できる。
【実施例4】
【0208】
この実施例は、本発明によるUV硬化型インキジェットインキが銅に対する良好な接着性と良好なはんだ耐性とを併せ持つソルダーマスクインキジェットインキとしても使用できることを具体的に説明する。
【0209】
シアンおよびイエロー顔料分散物CPDおよびYPD
表10による組成を有する濃縮シアンおよびイエローおよび顔料分散物(それぞれCPDおよびYPD)を調製した。
【表11】
【0210】
CPDおよびYPDは、以下のように調製した:138gの2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレート、2gの溶液(ジプロピレン グリコール ジアクリレート中に4重量%の4-メトキシフェノール、10重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールおよび3.6重量%のアルミニウム-N-ニトロソ フェニルヒ
ドロキシル アミンを含む)、200gの溶液(2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレート中に30重量%のDisperbyk 162を含む)、および60gのシアン(CPDに)または60gのイエロー(YPDに)を、DISPERLUX(商標)分散機を使用して混合した。撹拌を30分、続行した。容器は、900gの0.4mmイットリウム安定化ジルコニウムビーズ(TOSOH Coからの「高い耐摩耗性ジルコニア粉砕媒体」)を充填したNETZSCH MiniZetaミルにつないだ。混合物をミルで120分間、循環し(45分の滞留時間)、そしてミルの回転速度は約10.4m/sであった。完全な粉砕工程中、ミル中の内容物は60℃未満の温度に冷却された。粉砕後、分散物を容器に入れた。
【0211】
得られた濃縮顔料分散物CPDおよびYPDは、Malvern(商標)ナノ-Sで測定した時、それぞれ80nmおよび131nmの平均粒度を、そして25℃および10s-1の剪断速度でそれぞれ51mPa.sおよび114mPa.sの粘度を現わした。
【0212】
比較のインキCOMP-6および本発明のインキINV-4からINV-5の調製
比較の放射線硬化型インキジェットインキCOMP-06、および本発明の放射線硬化型インキジェットインキINV-4からINV-5を表11に従い調製した。重量百分率(重量%)は全て放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づく。
【表12】
【0213】
比較サンプルCOMP-6および本発明のサンプルINV-4からINV-05は、35μmのブラッシングしたCu積層物に、Microcraft MJK2013(8回、45℃の噴射温度、LED 395nmランプを用いた各回後に15%ピンキュア)を使用して噴射することにより得た。さらに150℃で60分間の熱硬化を行った。
【0214】
比較インキCOMP-06および本発明のインキINV-04からINV-05のはんだ耐性は、前記のように試験した。結果を表12に示す。
【表13】
【0215】
表12の結果から、本発明による接着促進剤を含有する本発明のソルダーマスクインキジェットインキは全て、そのような接着促進剤を含まないソルダーマスクインキジェットインキに比べて、Cu面に対して改善された接着、および優れたはんだ耐性を有することが明らかである。