(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】親和性試薬を使用する核酸シークエンシング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20220216BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220216BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220216BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220216BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/53 M
G01N33/543 575
G01N37/00 102
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021212172
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2019536551の分割
【原出願日】2018-01-04
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518034458
【氏名又は名称】エムジーアイ テック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co., Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】517110612
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ラドイエ・ドルマナッチ
(72)【発明者】
【氏名】スネジャナ・ドルマナッチ
(72)【発明者】
【氏名】ハンドン・リィ
(72)【発明者】
【氏名】シュー・シュン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・キャロウ
(72)【発明者】
【氏名】レオン・エックハート
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ナイボ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/044018(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/065248(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6876
C12Q 1/6869
G01N 33/53
G01N 33/543
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー伸長産物の3’末端に組み込まれた3’-O-リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを検出する方法であって、前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが、核酸塩基、糖部分、および切断可能なブロッキング基を含み、前記方法が、
(a)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む前記プライマー伸長産物を提供すること、
(b)(a)からの前記プライマー伸長産物および前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第1の親和性試薬を組み合わせることであって、前記第1の親和性試薬が、前記核酸塩基、前記切断可能なブロッキング基、または両方に、または前記核酸塩基および
前記プライマー伸長産物の3’-OH部分に結合する、前記組み合わせること、および
(c)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の親和性試薬が前記糖部分を含むエピトープに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸塩基が、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)から選択される天然核酸塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の親和性試薬が、
(i)グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびアデニン(A)を含む4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのアデニン(A)を含む組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド;
(ii)グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびアデニン(A)を含む4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのグアニン(G)を含む組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド;
(iii)グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびアデニン(A)を含む4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのチミン(T)を含む組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド;または
(iv)グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびアデニン(A)を含む4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのシトシン(C)を含む組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド
に特異的に結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸塩基が、アデニンアナログ(A’)、グアニンアナログ(G’)、チミンアナログ(T’)またはシトシンアナログ(C’)であり、かつ、前記第1の親和性試薬が、対応する天然核酸塩基を含む組み込まれたヌクレオチドへの結合と比べて前記アナログを含む組み込まれたヌクレオチドに優先的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の親和性試薬が前記切断可能なブロッキング基に結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)において、前記プライマー伸長産物が、異なる結合特異性を有する2、3または4つの親和性試薬と組み合わせられ、かつ、1つの親和性試薬が、前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つの親和性試薬による結合が前記核酸塩基を同定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)の後に(d)前記切断可能なブロッキング基を除去して3’-OHデオキシリボヌクレオチドを生じさせることをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の親和性試薬が抗体またはアプタマーである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の親和性試薬が、検出可能な標識にコンジュゲートまたは結合されており、かつ、工程(c)における前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記親和性試薬の結合を検出することが、前記検出可能な標識からのシグナルを検出することを含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の親和性試薬が標識されておらず、かつ、前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出する前記工程が、
(i)前記第1の親和性試薬に1つまたは複数の二次親和性試薬を結合させることであって、前記二次親和性試薬が検出可能な標識を含む、前記結合させることを含み、かつ、
(ii)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出することが、前記検出可能な標識からのシグナルを検出することを含む、
請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1の親和性試薬および前記第2の親和性試薬が工程(b)の前に組み合わせられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記結合が蛍光または化学発光シグナルを検出することによって工程(c)において検出される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
シークエンシングバイシンセシス反応を行う方法であって、
(a)複数の異なる鋳型配列を含む複数の固定化された鋳型核酸を含むDNAアレイを提供する工程であって、異なる鋳型配列は前記アレイ上の異なる位置において固定化されている、提供する工程;
(b)オリゴヌクレオチドプライマーを前記鋳型核酸にアニールさせる工程であって、前記オリゴヌクレオチドプライマーが、前記鋳型核酸上の予め決定された位置にハイブリダイズする、前記アニールさせる工程;
(c)前記鋳型核酸およびそれにアニールしたプライマーをポリメラーゼおよび4つの異なるリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドと組み合わせる工程であって、各リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが、核酸塩基(N)、糖部分、および切断可能なブロッキング基を含み、
Nが、アデニン(A)またはそのアナログ(A’)、グアニン(G)またはそのアナログ(G’)、チミン(T)またはそのアナログ(T’)、およびシトシン(C)またはそのアナログ(C’)であり、
前記4つの異なるリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも1つが非標識であり、
前記組み合わせる工程が、複数の前記オリゴヌクレオチドプライマーが、それぞれ単一のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの組込みにより伸長されてそれぞれ3’端を含む複数のプライマー伸長産物を生じさせる条件下で行われ、前記複数のプライマー伸長産物の一部が、3’端において組み込まれたAまたはA’を含み、前記複数のプライマー伸長産物の一部が、3’端において組み込まれたTまたはT’を含み、前記複数のプライマー伸長産物の一部が、3’端において組み込まれたGまたはG’を含み、かつ、前記複数のプライマー伸長産物の一部が、3’端において組み込まれたCまたはC’を含む、前記組み合わせる工程;
(d)前記複数のプライマー伸長産物を1つまたは複数の第1の親和性試薬と、前記1つまたは複数の第1の親和性試薬のそれぞれが、前記4つの異なる組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの1つのみに結合する条件下で接触させる工程であって、前記第1の親和性試薬が、4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの前記1つの、前記核酸塩基、前記糖部分、前記切断可能なブロッキング基またはこれらの組合せに結合する、前記接触させる工程;
(e)前記1つまたは複数の第1の親和性試薬の結合を検出する工程であって、組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含むプライマー伸長産物への第1の親和性試薬の結合が、前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの前記核酸塩基および前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの前記核酸塩基に相補的な前記鋳型ヌクレオチド(template nucleotide)の前記核酸塩基を同定する、前記検出する工程
を含む、方法。
【請求項16】
前記4つの異なるリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの全てが非標識である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
核酸をシークエンシングする方法であって、
(a)前記核酸を含む核酸鋳型、前記鋳型の部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、および式I:
【化1】
(式中、
R
1は3’-O切断可能なブロッキング基であり;
R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつ
R
3は、1つまたは複数のホスフェートからなる)の非標識RTを、前記核酸鋳型に相補的な配列に前記非標識RTを組み込むことによって前記プライマーが伸長するために適切な条件下で接触させ、それにより、前記非標識RTを含む非標識伸長産物を生じさせること;
(b)前記非標識伸長産物を、検出可能な標識を含む親和性試薬と、前記親和性試薬が前記非標識RTに特異的に結合する条件下で接触させて、前記RTを含む標識された伸長産物を生じさせること;および
(c)前記標識された伸長産物中の前記非標識RTを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分を同定すること
を含む、方法。
【請求項18】
DNAアレイであって、
前記アレイ上の異なる位置において固定化された複数の異なる鋳型DNA分子であって、前記複数の鋳型DNA分子は、それにアニールしたプライマー伸長産物を含み、前記プライマー伸長産物は、A、T、GもしくはCの核酸塩基またはそのアナログを含む3’リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む、前記複数の鋳型DNA分子;および
前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも一部に特異的に結合した親和性試薬
を含む、DNAアレイ。
【請求項19】
DNAアレイであって、
前記アレイ上の異なる位置において固定化された異なる鋳型DNA分子であって、前記複数の鋳型DNA分子は、それにアニールした相補的なプライマー伸長産物を含み、前記プライマー伸長産物は、A、T、GもしくはCの核酸塩基またはそのアナログを含む3’リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む、前記異なる鋳型DNA分子;および
前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも一部に特異的に結合した親和性試薬
を含む、DNAアレイ。
【請求項20】
前記アレイ上の異なる位置において固定化された鋳型DNA分子が、DNAナノボールまたはブリッジ増幅を使用して製造されるアンプリコンのクローン集団である、請求項19に記載のDNAアレイ。
【請求項21】
A、T、GもしくはCの核酸塩基またはそのアナログを含む3’リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される切断可能なブロッキング基を含む、請求項19または20に記載のアレイ。
【請求項22】
(a)式I:
【化2】
(式中、
R
1は3’-O切断可能なブロッキング基であり;
R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり、リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのそれぞれの型は異なる核酸塩基を含み;かつ
R
3は、1つまたは複数のホスフェートを含み、
R
1は、独立してリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドのそれぞれの型について選択される)の4つの型の非標識リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド;
(b)それぞれの第1の親和性試薬がプライマー伸長産物の3’端に組み込まれたときに前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの異なる1つに結合する複数の第1の親和性試薬;および
(c)(a)および(b)のためのパッケージング
を含む、キット。
【請求項23】
前記プライマー伸長産物が複数のプライマー伸長産物を含むDNAアレイ上であり、各プライマー伸長産物が鋳型DNAにハイブリダイズされる、方法であって、
(a)前記DNAアレイを前記鋳型DNA分子のそれぞれの部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、および式I:
【化3】
(式中、
R
1は3’-O切断可能なブロッキング基であり;
R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつ
R
3は、1つまたは複数のホスフェートからなる)の非標識リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドと、前記プライマーが伸長されて前記複数の前記鋳型DNA分子の少なくとも一部に相補的な配列に前記非標識リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む非標識伸長産物を生じさせること;
(b)前記非標識伸長産物を、検出可能な標識を含む親和性試薬と、前記親和性試薬が前記リバーシブルターミネーターヌクレオチドに特異的に結合する条件下で接触させて、前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む標識された伸長産物を生じさせること;および
(c)前記標識された伸長産物中の前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分を同定すること
を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
4つのリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが非標識であり、かつ、工程(d)において、4つの第1の親和性試薬が使用され、前記4つの第1の親和性試薬のそれぞれが、前記4つの組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの1つに特異的に結合する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項25】
4つの異なるリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも1つが天然に存在する核酸塩基を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項26】
(f)前記第1の親和性試薬を除去することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
(g)前記切断可能なブロッキング基を除去して3’-OHデオキシリボヌクレオチドを生じさせること、および
工程(c)~(g)を25回またはそれより多いサイクルにわたり繰り返して、前記鋳型中の追加の核酸塩基を同定すること
をさらに含み、工程(c)における前記鋳型核酸にアニールしたプライマーが、先行するサイクルのプライマー伸長産物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の親和性試薬が抗体である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸塩基が、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)から選択される天然核酸塩基である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
前記結合が、蛍光または化学発光シグナルを検出することによって工程(e)において検出される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の親和性試薬がアプタマーである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項32】
前記切断可能なブロッキング基が、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項33】
前記切断可能なブロッキング基がアジドメチルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(d)および工程(e)において、2つ、3つ、または4つの第1の親和性試薬が使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項35】
前記切断可能なブロッキング基および前記親和性試薬を同じ反応において除去することを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項36】
切断可能なブロッキング基を除去することなく、第1の親和性試薬が除去される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項37】
(i)組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの親和性試薬の結合を検出すること;
(ii)組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの切断可能なブロッキング基を除去することなく、親和性試薬を除去すること;
(iii)親和性試薬の結合を検出することによって同じ組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを再プロービングすること
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(i)における親和性試薬および(ii)における親和性試薬の1つの親和性試薬が抗体であり、(i)における親和性試薬および(ii)における親和性試薬の1つの親和性試薬がアプタマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
複数サイクルのシークエンシングバイシンセシスを行い、それぞれのサイクルは核酸鋳型を、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される異なる核酸塩基をそれぞれ含む式Iの4つの異なるリバーシブルターミネーターヌクレオチドと接触させることを含み、4つの異なるリバーシブルターミネーターヌクレオチドの少なくとも1つが非標識RTであり、工程(a)の条件が標識および非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチドの組込みのために適切である、請求項17に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも25サイクルのシークエンシングバイシンセシスを行う、請求項17または39に記載の方法。
【請求項41】
前記4つの異なるリバーシブルターミネーターヌクレオチドの全4つが非標識である、請求項17または39に記載の方法。
【請求項42】
リバーシブルターミネーターヌクレオチドの少なくとも1つが蛍光標識である、請求項17または39に記載の方法。
【請求項43】
前記切断可能なブロッキング基が、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される、請求項17または39に記載の方法。
【請求項44】
前記切断可能なブロッキング基がアジドメチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記アレイ上の異なる位置において固定化された鋳型DNA分子が、DNAナノボールまたはブリッジ増幅を使用して製造されるアンプリコンのクローン集団である、請求項18に記載のDNAアレイ。
【請求項46】
非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチドの型の少なくとも1つの切断可能なブロッキング基がアジドメチルである、請求項22に記載のキット。
【請求項47】
(i)第1の天然に存在する核酸塩基またはそのアナログを含む第1のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第1の親和性試薬および(ii)第2の天然に存在する核酸塩基またはそのアナログを含む第2のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第2の親和性試薬を含み、前記第1および第2の核酸塩基が異なる、キット。
【請求項48】
(iii)第3の天然に存在する核酸塩基またはそのアナログを含む第3のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第3の親和性試薬をさらに含み、前記第1、第2および第3の核酸塩基が互いに異なる、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
(iv)第4の天然に存在する核酸塩基またはそのアナログを含む第4のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第4の親和性試薬をさらに含み、前記第1、第2、第3および第4の核酸塩基が互いに異なる、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
親和性試薬が、鋳型にアニールしたプライマー伸長産物の3’末端において組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する、請求項47~49のいずれかに記載のキット。
【請求項51】
前記第1、第2、第3および第4の親和性試薬のそれぞれが検出可能な標識を含む、請求項49または50に記載のキット。
【請求項52】
前記第1、第2、および第3の親和性試薬のそれぞれが異なる検出可能な標識を含むか、または前記第1、第2、および第3の親和性試薬のそれぞれが、異なる量または強度において同じ標識を含む、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項47~50のいずれかに記載のキット。
【請求項54】
前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される切断可能なブロッキング基を含む、請求項47~50のいずれかに記載のキット。
【請求項55】
前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも1つが非標識であり、そして非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチドの少なくとも1つがアジドメチルである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記親和性試薬が抗体である、請求項47~50のいずれかに記載のキット。
【請求項57】
前記親和性試薬がモノクローナル抗体である、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記親和性試薬が抗体である、請求項53に記載のキット。
【請求項59】
前記親和性試薬がモノクローナル抗体である、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
プライマー伸長産物の3’末端に組み込まれた3’-O-リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを検出する方法であって、前記リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが、核酸塩基、糖部分、および切断可能なブロッキング基を含み、前記方法が、
(a)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含むプライマー伸長産物を提供すること;
(b)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの前記切断可能なブロッキング基を除去してプライマー伸長産物の3’-OHデオキシリボヌクレオチド部分を生じさせること;および次に
(c)前記(b)からのプライマー伸長産物を前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する第1の親和性試薬と組み合わせることであって、前記第1の親和性試薬が前記核酸塩基および
前記プライマー伸長産物の3’-OH部分に結合する、前記組み合わせること、および
(d)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出すること
を含む、方法。
【請求項61】
前記第1の親和性試薬が抗体またはアプタマーである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸塩基が、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)から選択される天然核酸塩基である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
核酸をシークエンシングする方法であって、
(a)(i)複数の鋳型DNA分子を含むDNAアレイを提供することであって、各鋳型DNA分子が、プライマー結合部位および核酸の断片を含み、前記複数の鋳型DNA分子のそれぞれが、前記アレイの位置において取り付けられている、前記提供すること、
(b)前記DNAアレイを前記プライマー結合部位に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、および式I:
【化4】
(式中、
R
1は3’-O切断可能なブロッキング基であり;
R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつ
R
3は、1つまたは複数のホスフェートからなる)の非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチド(RT)と、前記プライマーが前記鋳型DNA分子のプライマー結合部位にハイブリダイズし、前記少なくとも一部のハイブリダイズされたプライマーが伸長されて前記鋳型DNA分子に相補的な配列に前記非標識RTが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、前記非標識RTを含む非標識伸長産物を生じさせること;
(c)前記非標識伸長産物を、親和性試薬と、前記親和性試薬が前記組み込まれたRTに特異的に結合する条件下で接触させて、前記RTを含む標識された伸長産物を生じさせることであって、前記親和性試薬は検出可能な標識と直接的または間接的に関連付けられる、前記生じさせること;および
(d)前記標識された伸長産物中の前記RTを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分を同定すること
を含む、方法。
【請求項64】
(a)前記DNAアレイを、前記鋳型DNA分子のそれぞれの部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、ならびにR
2がアデニン(A)である第1のRT、R
2がチミン(T)である第2のRT、R
2がシトシン(C)である第3のRT、およびR
2がグアニン(G)である第4のRTを含む式Iの非標識RTのセットと、前記プライマーが伸長されて前記複数の前記鋳型DNA分子の少なくとも一部に相補的な配列に前記非標識RTが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、前記RTを含む非標識伸長産物を生じさせること;
(b)前記非標識伸長産物を親和性試薬のセットと、前記親和性試薬のセットが前記RTに特異的に結合する条件下で接触させて、前記RTを含む標識された伸長産物を生じさせることであって、(i)前記親和性試薬のセットが、前記第1のRTに特異的に結合する第1の親和性試薬、前記第2のRTに特異的に結合する第2の親和性試薬、前記第3のRTに特異的に結合する第3の親和性試薬を含み;(ii)少なくとも前記第1、第2、および第3の親和性試薬が、検出可能な標識を含む、前記生じさせること;および
(c)前記アレイ上の各々の位置において前記RTに結合した前記標識された親和性試薬の前記標識を同定することにより前記標識された伸長産物中の前記RTを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分を同定すること
を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記親和性試薬のセットが、前記第4のRTに特異的に結合する第4の親和性試薬をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
(d)前記RTから前記ブロッキング基を除去して3’-OHを生じさせること;および
(e)前記親和性試薬を前記RTから除去すること
をさらに含む、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記アレイ上の異なる位置において固定化された鋳型DNA分子が、DNAナノボールまたはブリッジ増幅を使用して製造されるアンプリコンのクローン集団である、請求項63~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
工程(d)において、前記第1の親和性試薬が、検出可能な標識にコンジュゲートまたは結合されており、かつ、工程(e)において、前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出することが、前記検出可能な標識からのシグナルを検出することを含むか、または工程(d)において、前記第1の親和性試薬が標識されておらず、かつ、前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出する前記工程が、(i)1つまたは複数の二次親和性試薬を各第1の親和性試薬に結合させることを含み、各二次親和性試薬が、検出可能な標識を含み、かつ(ii)前記組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの前記第1の親和性試薬の結合を検出することが、前記検出可能な標識からのシグナルを検出することを含む、請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月4日に出願された米国仮出願第62/442,263号、および2017年4月26日に出願された米国仮出願第62/490,511号に対する優先権を主張する。これらの出願の全内容は、参照することにより全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
核酸シークエンシングおよび再シークエンシングのための低コストでハイスループットの方法の必要性は、「超並列シークエンシング」(MPS)技術の開発に繋がった。DNAをシークエンシングするための1つの一般に使用される方法は「シークエンシングバイシンセシス」(SBS)と称され、これは、Ronaghi et al., Science, 281:363-365, 1998;Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:414-419, 2003;Metzker, Nat Rev Genet. 11:31-46, 2010;Ju et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:19635-19640, 2006;Bentley et al., Nature 456:53-59, 2008;ならびに米国特許第6,210,891号明細書、同第6,828,100号明細書、同第6,833,246号明細書、および同第6,911,345号明細書、および米国特許出願公開第2016/0130647号明細書などに開示されている。
【0003】
SBSは、シークエンシングされているオリゴヌクレオチドとは反対の正しい相補的ヌクレオチドの制御された(すなわち、1回に1つの)組込みを必要とする。これは、各ヌクレオチド残基が1回に1つシークエンシングされつつ複数のサイクルにおいてヌクレオチドを付加して、制御されない一連の組込みが発生することを防止することにより的確なシークエンシングを可能とする。1つのアプローチでは、DNA鋳型の配列を決定するためにリバーシブルターミネーターヌクレオチド(RT)が使用される。最も一般に使用されるSBSアプローチでは、各RTは、(1)伸長中のDNAコピー鎖の3’末端にDNAポリメラーゼ酵素により単一塩基のみが付加され得ることを確実にするブロッキング基、および(2)カメラにより検出できる蛍光標識を含む修飾ヌクレオチドを含む。最も一般的なSBS法では、鋳型およびシークエンシングプライマーは固体支持体に固定され、かつ、支持体は4つのDNAヌクレオチドアナログのそれぞれおよびDNAポリメラーゼに曝露され、各DNAヌクレオチドアナログは、切断可能なリンカーにより含窒素塩基に取り付けられた異なるフルオロフォア、およびデオキシリボースの3’-OH位における3’-O-アジドメチル基を含む。正しい相補的な塩基のみが標的にアニールし、その後にプライマーの3’端において組み込まれる。組み込まれなかったヌクレオチドは洗浄除去され、固体支持体は画像化される。リンカーを切断してフルオロフォアを解放させるためおよび3’-O-アジドメチル基を除去して3’-OHを再生させるためにTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)が導入される。次に、サイクルを繰り返すことができる(Bentley et al., Nature 456, 53-59, 2008)。4つの塩基のそれぞれのために異なる蛍光色標識が使用され、それにより、シークエンシングの各サイクルにおいて、組み込まれるRTの素性をその色により同定することができる。
【0004】
SBSは広く使用されているにもかかわらず、改善がなおも必要とされる。例えば、現行のSBS法は、切断可能なリンカーを用いて接続された塩基上の標識(例えば、色素)を有する高価な可逆的に終結した(reversibly terminated)dNTP(RT)を必要とし、これは結果として、a)組み込まれた塩基上に標識切断後に残る化学的傷跡、b)効率の低い組込み、c)停止、d)伸長の励起された色素誘導性の終結をもたらし、各シークエンシングサイクルにおけるシグナルを低減させる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、核酸の解析およびシークエンシングのための方法および組成物に関する。SBSシークエンシング方法が本明細書において開示され、該方法では、最後に組み込まれたヌクレオチド塩基が、最後に組み込まれたヌクレオチド中の塩基、糖、切断可能なブロッキング基またはこれらの構成要素の組合せを認識する親和性試薬[例えば、抗体、アプタマー、アフィマー(affimer)、ノッティン(knottin)など]の結合により同定される。結合は、検出可能なシグナルの産生と直接的または間接的に関連付けられる。
【0006】
一実施形態によれば、本発明は、非標識リバーシブルターミネーター(NLRT)ヌクレオチドを用いるシークエンシングの方法を提供する。リバーシブルターミネーター(RT)ヌクレオチドは、伸長中のDNAコピー鎖の3’末端にDNAポリメラーゼ酵素により単一塩基のみが付加され得ることを確実にする除去可能なブロッキング基を含有する修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)またはdNTPアナログである。周知の通り、DNA合成の間の伸長中の鎖の3’末端へのdNTP(2’-デオキシヌクレオシド三リン酸)の組込みは、ピロリン酸の解放を伴い、かつdNTPがDNA鎖中に組み込まれるときに、組み込まれる部分はヌクレオチド一リン酸(またはより精密には、1つまたは2つの隣接するヌクレオチドモノマーにホスホジエステル結合により連結されるヌクレオチドモノマー)である。リバーシブルターミネーター(RT)ヌクレオチドは、伸長中のDNAコピー鎖の3’末端にDNAポリメラーゼ酵素により単一塩基のみが付加され得ることを確実にする除去可能なブロッキング基を含有する修飾されたデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)またはdNTPアナログである。非標識RTヌクレオチドは、検出可能な標識を含有しない。シークエンシングの各サイクルにおいて、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログはポリメラーゼにより組み込まれてDNAコピー鎖の3’末端を1塩基伸長させ、組み込まれなかったヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは洗浄除去される。新たに組み込まれたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログのエピトープを特異的に認識してそれに結合する親和性試薬が導入される。画像が撮られた後、ブロッキング基および標識された親和性試薬はDNAから除去され、シークエンシングの次のサイクルが始まることを可能とする。一部の実施形態では、親和性試薬により認識されるエピトープは、組み込まれたヌクレオシド自体(すなわち、塩基および糖)またはヌクレオシドおよび3’ブロッキング基により形成される。一部の実施形態では、親和性試薬により認識されるエピトープは、リバーシブルターミネーター自体、デオキシリボースと組み合わせてリバーシブルターミネーター、または核酸塩基もしくは核酸塩基およびデオキシリボースと組み合わせてリバーシブルターミネーターにより形成される。
【0007】
1つのそのような実施形態によれば、本発明は、核酸をシークエンシングする方法であって、
(a)核酸を含む核酸鋳型、前記鋳型の部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、および式I:
【化1】
[式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基(reversible blocking group)であり;R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつR
3は、1つまたは複数のホスフェートを含むかまたはからなる]の非標識RTを、プライマーが伸長されて核酸鋳型に相補的な配列に非標識RTが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、組み込まれたRTを含む非標識伸長産物を生じさせること;(b)組み込まれたRTに親和性試薬が特異的に結合する条件下で非標識伸長産物を親和性試薬と接触させて、RTを含む標識された伸長産物を生じさせること;(c)親和性試薬の結合を検出すること、および(d)標識された伸長産物に組み込まれたヌクレオチドを同定して、前記伸長産物、および、したがって鋳型核酸の配列の少なくとも一部分を同定することを含む、方法を提供する。
【0008】
シークエンシングバイシンセシスのために一般に使用されるdNTPアナログにおいて、核酸塩基は、フルオロフォアなどの検出可能な標識に塩基を接続する切断可能なリンカーにコンジュゲートされる。例えば、米国特許出願公開第2002/0227131号明細書を参照。対照的に、本発明のdNTPアナログにおいては、一般に、R2は、リンカーにより色素または他の検出可能な標識にコンジュゲートされる核酸塩基ではない。
【0009】
別の実施形態によれば、そのような方法は、(d)RTからリバーシブルブロッキング基を除去して3’-OHを生じさせること;および(e)RTから親和性試薬を除去することをさらに含む。
【0010】
別の実施形態によれば、そのような方法は、方法の工程を1回または複数回繰り返すこと、すなわち、前記核酸鋳型の配列の少なくとも一部分が決定される複数サイクルのシークエンシングを行うことをさらに含む。
【0011】
別の実施形態によれば、そのような方法は、同じ反応においてリバーシブルブロッキング基および親和性試薬を除去することを含む。
【0012】
別の実施形態によれば、そのような方法は、リバーシブルブロッキング基を除去することなく親和性試薬を除去することおよび差異(different)親和性試薬を用いて再プロービングを行うことを含む。
【0013】
そのような方法では、親和性試薬は、抗体(抗体の結合断片、単鎖抗体、二重特異的抗体などを含む)、アプタマー、ノッティン、アフィマー、または組み込まれたNLRTに好適な特異性および親和性で結合する任意の他の公知の剤を含んでもよい。一実施形態では、親和性試薬は抗体である。別の実施形態では、親和性試薬は、蛍光標識である検出可能な標識を含む抗体である。
【0014】
一実施形態によれば、R1は、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル(vinyloethenyl)、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される。
【0015】
別の実施形態によれば、R2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびチミン(T)から選択される核酸塩基である。
【0016】
別の実施形態によれば、R3は、1つまたは複数のホスフェートからなるかまたは含む。
【0017】
非標識リバーシブルターミネーター(NLRT)という用語は、ヌクレオチドアナログの三リン酸形態を指すことがあり、または組み込まれたNLRTを指すことがある。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、核酸をシークエンシングする方法であって、(a)(i)複数の鋳型DNA分子を含むDNAアレイを提供することであって、各鋳型DNA分子が、核酸の断片を含み、前記複数の鋳型DNA分子のそれぞれが、アレイの位置において取り付けられている、提供すること、(b)DNAアレイを、前記鋳型DNA分子のそれぞれの部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、および式I:
【化2】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり;R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつR
3は、1つまたは複数のホスフェートからなるかまたは含む)の非標識RTと、プライマーが伸長されて前記複数の前記鋳型DNA分子の少なくとも一部に相補的な配列に非標識RTが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、RTを含む非標識伸長産物を生じさせること;(c)非標識伸長産物を、検出可能な標識を含む親和性試薬と、親和性試薬がRTに特異的に結合する条件下で接触させて、RTを含む標識された伸長産物を生じさせること;および(d)標識された伸長産物中のRTを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分を同定することを含む、方法が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、そのような方法は、(b)DNAアレイを、前記鋳型DNA分子のそれぞれの部分に相補的な核酸プライマー、ポリメラーゼ、ならびにR2がAである第1のRT、R2がTである第2のRT、R2がCである第3のRT、およびR2がGである第4のRTを含む式Iの非標識RTのセットと、プライマーが伸長されて前記複数の前記鋳型DNA分子の少なくとも一部に相補的な配列に非標識RTが組み込まれる条件下で接触させ、それにより、RTを含む非標識伸長産物を生じさせること;(c)非標識伸長産物を親和性試薬のセットと、組み込まれたRTに親和性試薬のセットが特異的に結合する条件下で接触させて、RTを含む標識された伸長産物を生じさせることであって、(i)親和性試薬のセットが、第1のRTに特異的に結合する第1の親和性試薬、第2のRTに特異的に結合する第2の親和性試薬、第3のRTに特異的に結合する第3の親和性試薬、および適宜、第4のRTに特異的に結合する第4の親和性試薬を含み;(ii)前記第1、第2、および第3の親和性試薬のそれぞれが、検出可能な標識を含む、生じさせること;および(d)アレイ上の各々の位置においてRTに結合した親和性試薬の標識を同定することにより標識された伸長産物中のRTを同定して、前記核酸の配列の少なくとも一部分(例えば、1サイクル当たり1塩基)を同定することを含む。関連する実施形態によれば、前記第1、第2、第3および第4の親和性試薬のそれぞれは、検出可能な標識を含む。別の関連する実施形態によれば、前記第1、第2、および第3の親和性試薬のそれぞれは、異なる検出可能な標識を含む。別の関連する実施形態によれば、第1、第2、および第3の親和性試薬のそれぞれは、異なる量において同じ標識(例えば、同じフルオロフォア)を含み、異なる強度のシグナルを結果としてもたらす。別の実施形態によれば、組み込まれるRTに結合した親和性試薬は直接的に標識されず、二次親和性試薬を使用して間接的に標識される。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、DNAアレイが提供される。そのようなアレイは、複数の鋳型DNA分子であって、各DNA分子がアレイの位置において取り付けられており、相補的DNA配列が複数の位置において鋳型DNA分子の部分と塩基対を形成し、相補的DNA配列が、その3’末端において、組み込まれたRTを含む、複数の鋳型DNA分子;およびRTの少なくとも一部に特異的に取り付けられた親和性試薬であって、それに取り付けられたRTを同定する検出可能な標識を含む、親和性試薬を含む。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、(a)式I:
【化3】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり;R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつR
3は、1つまたは複数のホスフェートからなるかまたは含む)の非標識RT;(b)RTの1つに特異的に結合する(is binds)標識された親和性試薬;および(c)RTおよび親和性試薬のためのパッケージングを含む、キットが提供される。別の実施形態によれば、そのようなキットは、各RTが異なる核酸塩基を含む複数のRT、および各親和性試薬がRTの1つに特異的に結合する複数の親和性試薬を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明のシークエンシング方法の例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1に示す抗体染色方法の例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、NLRT構造の例を示す:
図3Aは3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン;
図3Bは3’-O-アミノ-2’-デオキシグアニン;
図3Cは3’-O-シアノエチレン-2’-デオキシグアニン;
図3Dは3’-O-ホスホ;
図3E:3’-エチルジスルフィド-メチレン-2’-デオキシチミンである。
【
図4】
図4は、本発明の実施において使用できる様々なブロッキング基を示す。
図4において、
【化4】
は、構造の残りの部分への分子の取付け点を指し示す。
【
図5】
図5は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニンの活性エステル(G4)の合成を示す。
【
図6】3’-O-アジドメチル-2’-の活性エステル(C8)の合成を示す。
【
図7】
図7は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシアデニンの活性エステル(A12)の合成を示す。
【
図8】
図8は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシチミンの活性エステル(T16)の合成を示す。
【
図9】
図9は、免疫原、力価のモニター、およびアフィニティー精製用の基質として使用するためのBSA、KHLおよびアガロース樹脂への3’-O-アジドメチル-dC-NHSエステルのコンジュゲーション(3’-O-アジドメチル-2’-デオキシシトシンを使用)を示す。
【
図10A】
図10Aおよび
図10Bは、3つの標識RTおよび1つのNLRTを使用する5および10サイクルのシークエンシングについてのRhoを示す。
【
図10B】
図10Aおよび
図10Bは、3つの標識RTおよび1つのNLRTを使用する5および10サイクルのシークエンシングについてのRhoを示す。
【
図10C】
図10Cおよび
図10Dは、3つの標識RTおよび1つのNLRTを使用する5および10サイクルのシークエンシングについてのシグナル-ノイズ比(SNR)を示す。
【
図10D】
図10Cおよび
図10Dは、3つの標識RTおよび1つのNLRTを使用する5および10サイクルのシークエンシングについてのシグナル-ノイズ比(SNR)を示す。
【
図11A】
図11Aおよび
図11Bは、50サイクルのシークエンシングバイシンセシスのために抗3’-アジドメチル-dGウサギ一次抗体および抗ウサギAF647断片二次抗体により検出される非標識3’-アジドメチル-dGTPを用いてBGISEQ-1000 DNAシークエンサーを使用して得られたシークエンシングデータのメトリクスを示す。
【
図11B】
図11Aおよび
図11Bは、50サイクルのシークエンシングバイシンセシスのために抗3’-アジドメチル-dGウサギ一次抗体および抗ウサギAF647断片二次抗体により検出される非標識3’-アジドメチル-dGTPを用いてBGISEQ-1000 DNAシークエンサーを使用して得られたシークエンシングデータのメトリクスを示す。
【
図12A】
図12Aおよび
図12Bは、蛍光直接標識抗アジドメチル塩基抗体を使用するBGISEQ-500機器によるE.コリ(E. coli)のゲノムDNAの25回のシークエンシングサイクルからの結果を示す。
【
図12B】
図12Aおよび
図12Bは、蛍光直接標識抗アジドメチル塩基抗体を使用するBGISEQ-500機器によるE.コリ(E. coli)のゲノムDNAの25回のシークエンシングサイクルからの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.概要
ある特定の態様では、本発明は、非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチドを用いる核酸のシークエンシングバイシンセシス(SBS)またはコンビナトリアルプローブアンカーシークエンシング(cPAS)のための方法および組成物を提供する。1つのアプローチでは、SBSは、アレイ上の位置において固定化された一本鎖鋳型DNAを製造することにより実行される。ほとんどのアプローチにおいて、各固定化された一本鎖鋳型DNAは、同様の配列の多数のコピー(例えば、アンプリコン)を有して位置にある。例えば、ブリッジPCRを使用してアレイ上の位置において鋳型配列のクラスターを生成してもよく(Illumina)、または、ローリングサークル複製を使用して、鋳型配列の多くのコピーを有して一本鎖コンカテマー、またはDNAナノボール(DNB)を生成してもよい(Complete Genomics, Inc.)。SBSは、1つまたは複数のプライマーを鋳型DNAにハイブリダイズさせることおよびプライマーを伸長させて伸長したプライマー、または伸長中のDNA鎖(GDS)を生じさせることにより実行される。プライマーを伸長させることは、それが鋳型にハイブリダイズされたままプライマーDNA鎖の3’末端においてヌクレオチドを付加すること(「組込み」または「組み込むこと」)を指す。3’端において組み込まれるヌクレオチドは、プライマーの対応するヌクレオチドに相補的であり、それにより、各シークエンシングサイクルにおいて組み込まれたヌクレオチドの素性を決定することにより鋳型のヌクレオチド配列が決定され得る。
【0024】
1つの先行技術のアプローチでは、標識されたヌクレオチドアナログがGDSに組み込まれる。一般に、標識されたヌクレオチドアナログは、1工程当たり単一のヌクレオチドのみが組み込まれ得ることを確実なものにするブロッキング基および切断可能なリンカーを介してヌクレオチドに取り付けられた色素(典型的には蛍光色素)を含む。シークエンシングの各サイクルは、GDSの末端において標識されたヌクレオチドアナログを組み込むこと、組み込まれた標識されたヌクレオチドアナログの標識を検出すること、組み込まれたヌクレオチドアナログから標識を除去すること、および組み込まれたヌクレオチドアナログからブロッキング基を除去して、新しい標識されたヌクレオチドアナログの組込みを可能とすることを包含する。対照的に、本発明は、切断可能なリンカーを介して塩基または糖に取り付けられた色素を含む標識されたヌクレオチドアナログを必要としない。
【0025】
米国特許出願公開第2017/0240961号明細書(参照することにより本明細書に組み込まれる)において記載される代替アプローチでは、ヌクレオチドアナログは、組み込まれるときに、リンカーを介してヌクレオチドに取り付けられた親和性タグを含む。親和性タグは特異的結合ペア(SBP)の1つのメンバーである。1つのアプローチでは、親和性タグはビオチンである。組込み後、組み込まれたヌクレオチドは、SBPの第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)および検出可能な標識を含む親和性試薬に曝露される。検出可能な標識は、組み込まれたヌクレオチドを同定するために検出される。検出後、組み込まれたヌクレオチドアナログ-親和性試薬複合体は、リンカーを切断して検出可能な標識を解放させるために処理される。1つのアプローチでは、親和性タグは抗原であり、かつ、親和性試薬は、抗原に特異的に結合する蛍光標識された抗体である。対照的に、本発明は、親和性タグを必要とせず、かつ一部の態様では、親和性タグではなく、核酸塩基、糖部分、切断可能なブロッキング基またはこれらの組合せに結合する親和性試薬を用いる。
【0026】
本明細書において開示される方法の一態様によれば、非標識リバーシブルターミネーター、すなわち、リバーシブルターミネーターまたはブロッキング基を含むヌクレオチドアナログ(Non-Labeled Reversible Terminator、またはNLRT)は、GDSの3’端において組み込まれた後、組み込まれたNLRTに特異的に結合する(「結合事象」)親和性試薬(例えば、抗体)に曝露される。結合事象の検出後、親和性試薬は除去される。1つのアプローチでは、リバーシブルブロッキング基を含むヌクレオチドアナログは、GDSの3’端において組み込まれ、かつ結合事象の検出後、リバーシブルブロッキング基および親和性試薬は、適宜同じ工程において、除去される。このアプローチでは、シークエンシングの各サイクルは、(i)DNAポリメラーゼによるブロッキング基を含むNLRTの組込みの後、組み込まれなかったNLRTの洗浄除去;(ii)組み込まれたヌクレオチドアナログを、組み込まれたNLRTを認識して特異的に結合する標識された親和性試薬と接触させること;(iii)親和性試薬の結合の検出;(iv)追加のヌクレオチドアナログの組込みを可能とする様式でのブロッキング基の除去(例えば、デオキシリボース部分の3’位においてヒドロキシル基を生じさせる)、および(v)親和性試薬の除去を含む。この工程の後に、新しいヌクレオチドアナログが組み込まれて検出される新しい1つまたは複数のサイクルを行ってもよい。親和性試薬(例えば、抗体)は、直接的に標識されてもよく(例えば、蛍光標識された抗体)、または間接的に検出されてもよい(例えば、標識された抗親和性試薬二次親和性試薬の結合による)。したがって、「標識された親和性試薬」は、例えばフルオロフォアへのコンジュゲーションにより、直接的に標識されてもよく、または間接的に標識されてもよいことが理解されるであろう。
【0027】
別のアプローチでは、リバーシブルブロッキング基を含むヌクレオチドアナログは、GDSの3’端において組み込まれ、かつ結合事象の検出後、リバーシブルブロッキング基および親和性試薬は除去される。このアプローチでは、シークエンシングの各サイクルは、(i)DNAポリメラーゼによるブロッキング基を含むNLRTの組込みの後、適宜、組み込まれなかったNLRTの洗浄除去;(ii)デオキシリボヌクレオチドの3’位(3’ positon)においてヒドロキシル(OH)基を再生させる様式でのブロッキング基の除去;(iii)追加のヌクレオチドアナログの組込みを可能とするブロッキング基の除去(例えば、デオキシリボース部分の3’位においてヒドロキシル基を生じさせる)、組み込まれたヌクレオチドアナログを、組み込まれたNLRTを認識して特異的に結合する標識された親和性試薬と接触させること;(iii)親和性試薬の結合の検出;および(v)親和性試薬の除去を含む。この工程の後に、新しいヌクレオチドアナログが組み込まれて検出される新しい1つまたは複数のサイクルを行ってもよい。親和性試薬(例えば、抗体)は、直接的に標識されてもよく(例えば、蛍光標識された抗体)、または間接的に標識されてもよい(例えば、標識された抗親和性試薬二次親和性試薬の結合による)。したがって、「標識された親和性試薬」は、例えばフルオロフォアへのコンジュゲーションにより、直接的に標識されてもよく、または間接的に標識されてもよいことが理解されるであろう。
【0028】
SBSは、ヌクレオチドが伸長したプライマーの3’端において組み込まれるプライマー伸長の2つまたはそれより多くのサイクルを伴う。本発明は、抗体などの親和性試薬を使用して、(i)伸長したプライマーの3’端において組み込まれたヌクレオチド(「3’末端ヌクレオチド」)を検出し、かつ(ii)その3’末端ヌクレオチドの核酸塩基を同定しかつ1つの核酸塩基を別の核酸塩基から(例えば、AをGから)区別する。特定の機序により縛られることを意図しないが、これが可能であるのは、各親和性試薬が、伸長したプライマーの他の「内部」ヌクレオチドから3’末端ヌクレオチドを、たとえ3’末端ヌクレオチドおよび内部ヌクレオチドが同じ核酸塩基を含む場合であっても、区別するように設計されているからである。各親和性試薬(または一部の場合には、親和性試薬の組合せ)はまた、3’末端ヌクレオチドに伴う核酸塩基を同定する3’末端ヌクレオチドの特性を検出するように設計される。これらおよび他の工程を実行するために多数の戦略、方法、および材料が提供される。このセクションは、多くのバリエーションが割愛され、いかなる意味でも限定的と考えられるべきではない概要を提供する。
【0029】
一部のアプローチでは、本発明のSBS反応は、3’リバーシブルターミネーター部分を有するヌクレオチドを使用して実行される。これらのアプローチでは、組み込まれた3’末端ヌクレオチドは、リバーシブルターミネーター部分の存在に基づいて内部ヌクレオチドとは異なる。したがって、伸長したプライマー中のリバーシブルターミネーター部分に結合する親和性試薬は、3’末端ヌクレオチドに結合し(およびそれによりそれを検出し)、それを内部ヌクレオチドから区別する。異なるアプローチでは、組み込まれた3’末端ヌクレオチドは、内部ヌクレオチド上に存在しない遊離3’-OH(ヒドロキシル)基の存在に基づいて内部ヌクレオチドとは異なる。したがって、伸長したプライマー中の遊離3’-OH基に結合する親和性試薬は、3’末端ヌクレオチドに結合し、3’末端ヌクレオチドに結合し(およびそれによりそれを検出し)、それを内部ヌクレオチドから区別する。一部のアプローチでは、遊離3’-OH基は、組み込まれたヌクレオチドアナログ中のリバーシブルターミネーターの切断により生成される。別のアプローチでは、遊離3’-OH基は、天然に存在するヌクレオチドなどのリバーシブルターミネーター部分を含まないヌクレオチドの組込みの結果としてもたらされる。上記した2つのアプローチのいずれかと組合せ可能な追加のアプローチでは、組み込まれた3’末端ヌクレオチドは、3’末端ヌクレオチドに特徴的な他の構造的差異に基づいて内部ヌクレオチドとは異なり、該構造的差異としては、内部ヌクレオチドのデオキシリボースと比べた3’末端ヌクレオチドのデオキシリボース糖への親和性試薬のより大きなアクセス可能性、内部ヌクレオチドのデオキシリボースと比べた親和性試薬への3’末端ヌクレオチドの核酸塩基への親和性試薬のより大きなアクセス可能性、および3’末端ヌクレオチドと内部ヌクレオシドとの間の他の分子的なおよびコンホメーションの差異が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
したがって、本発明の一態様では、以下の実施例に記載されるように、親和性試薬は、伸長したプライマーの3’末端ヌクレオチドと他のヌクレオチドとの間のこれらの構造的差異を検出するために使用される。
【0031】
3’末端ヌクレオチドの核酸塩基を同定する3’末端ヌクレオチドの特性を検出するための多数の戦略、方法、および材料も提供される。1つのアプローチでは、天然に存在するヌクレオチド、または天然に存在する核酸塩基(例えば、A、T、CおよびG)を含むヌクレオチドアナログがシークエンシング反応において使用され、プライマー伸長産物に組み込まれる。1つの核酸塩基(例えば、A)に特異的に結合し、その核酸塩基をそれが結合しない他の核酸塩基(例えば、T、CおよびG)から区別する親和性試薬が3’末端ヌクレオチドの核酸塩基を同定するために使用される。別のアプローチでは、修飾(すなわち、天然に存在しない)核酸塩基を含むヌクレオチドアナログがシークエンシング反応において使用され、プライマー伸長産物に組み込まれる。1つの修飾核酸塩基(例えば、修飾A)に特異的に結合し、その修飾核酸塩基を他の修飾または天然核酸塩基から区別する親和性試薬。修飾核酸塩基に特異的に結合する親和性試薬は、一般に、該修飾を認識し、それにより、修飾核酸塩基への結合は、該修飾を有しない天然に存在する核酸塩基への結合とは異なる。例えば、7位の窒素(N7)がメチル化炭素により置換されたアデノシンアナログ(下記の構造XVを参照)に結合する親和性試薬は、天然に存在する(非修飾)アデノシン核酸塩基に結合しないことがあり、またはより弱く(less avidly)結合することがある。特定の機序により縛られることを意図しないが、修飾部分(この場合、修飾核酸塩基)を特異的に認識する親和性試薬は、修飾された特徴(この場合、メチル化炭素を含む修飾アデノシンの部分)に結合することによりそれを行うと考えられる。言い方を変えれば、親和性試薬は、メチル化炭素を含むエピトープに結合する。親和性試薬は組み込まれたヌクレオチドの他の部分にも結合することが理解されるであろう。
【0032】
さらに別のアプローチでは、3’リバーシブルブロッキング基を有するヌクレオチド(リバーシブルターミネーターヌクレオチド)がプライマー伸長産物に組み込まれる。ブロッキング基は各シークエンシングサイクルにおいて除去され、それにより、プライマー伸長製造(primer extension produce)の最後に組み込まれたヌクレオチドのみがブロッキング基を含む。このアプローチでは、ブロッキング基に結合する親和性試薬が使用される。このアプローチでは、シークエンシング反応において使用される少なくとも2つのヌクレオチドアナログ(すなわち、異なる核酸塩基を有する)は、異なるブロッキング基を含む。説明のために、アデニンまたはアデニンアナログを含むヌクレオチドのために第1のブロッキング基(例えば、3’-O-アジドメチル)、グアニンまたはグアニンアナログを含むヌクレオチドのために第2の異なるブロッキング基(例えば、3’-O-シアノエチレン)などを使用することにより、親和性試薬の特異性は、会合した核酸塩基を同定する。例えば、上記の説明を拡張すると、3’-O-シアノエチレンに特異的な親和性試薬により3’末端ヌクレオチドが認識される場合、これは、会合した核酸塩基はグアニンまたはグアニンアナログであること、およびこの位置における鋳型塩基はシトシンであることを指し示す。このアプローチのバリエーションでは、小さい特徴のみにより異なるブロッキング基が使用されてもよく、親和性試薬は、その区別的な小さい特徴を含むエピトープに結合する。
【0033】
本明細書において以下に記載されるように、本発明の一態様では、構造的特徴の組合せに基づいてヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを認識してそれに特異的に結合する親和性試薬が使用され(例えば、特定のブロッキング基および特定の修飾を有する特定の核酸塩基を認識する親和性試薬)が使用される。この態様では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、特定の親和性試薬により認識されるという特性のために設計されかつ/または該特性について選択される。一部の場合には、複数の構造的特徴に結合する親和性試薬は、より強くかつより特異的な親和性試薬の結合という利点を有する。以下の表Aは、異なる核酸塩基を有するヌクレオチドを区別するために親和性試薬により認識され得る構造的差異(第2列)および充分な結合効率を提供するように親和性試薬により結合され得るかつ/またはそれらの特徴に基づいて最後に組み込まれたヌクレオチドを内部ヌクレオチドから区別する最後に組み込まれたヌクレオチド中の部分(第3列)の例の非網羅的なコレクションである。
【0034】
【0035】
以下に詳細に論じるように、標識された親和性試薬が結合する組み込まれたヌクレオチドアナログの部分は、例えば非限定的に、核酸塩基およびブロッキング基、またはヌクレオチドアナログの糖部分と組み合わせて核酸塩基および/もしくはブロッキング基を含んでもよい。以下の表Aを参照。標識された親和性試薬の結合は標的ヌクレオチドの位置に依存することがあり、例えば、GDSの3’端においてブロッキング基を有するヌクレオチドアナログと、GDS内またはGDSの内部に位置する類似のヌクレオチドアナログ(ブロッキング基を欠く)とを区別することがある。標識された親和性試薬の結合はまた、核酸塩基自体に依存するので、親和性試薬は、アレイ上の1つの位置においてGDSの端部において組み込まれた1つの標的NLRT(例えば、NLRT-A)に結合するが、アレイ上の異なる位置においてGDSの末端において組み込まれた他のNLRT(例えば、NLRT-C、-T、または-G)に結合しない。
【0036】
本発明は、他のSBS法に対して利点を有する。標識された親和性試薬の除去は、リンカーの切断後にdNTPに取り付けられたままの基の結果としてもたらされる化学的「傷跡」を後に残さない。そのような「傷跡」はポリメラーゼによるdNTPの組込み効率を低減させることがあるのでこれは有利である。加えて、このアプローチでは、親和性試薬は、複数の蛍光部分を含んでもよく、一般に使用される方法に従ってdNTPに取り付けられた単一の蛍光色素より強いシグナルを提供し得る。このアプローチはまた、より低い励起強度またはより短い曝露時間が使用され得るので、より少ない光損傷を引き起こし得る。本明細書において開示されるアプローチは、より長いリード(例えば、500塩基より長い、または1000塩基より長いリード)および/または50、100もしくは200塩基より長いより的確なリード(例えば、2000塩基中に1つまたは5000塩基中に1つより少ない誤り)を可能とすることが期待される。本発明の組成物および方法はまた、SBSのために一般に使用される標識されたリバーシブルターミネーター(RT)の方法より経済的であり得る。非標識RTのコストは標識RTより小さい。標識RTを使用する標準的なSBSでは、完了までRTの組込みを推進するために高濃度の標識RTが使用され、標識RTのほとんど(70~99%またはそれより多く)はポリメラーゼにより組み込まれず、洗浄除去される。より低コストの非標識RTの使用は、したがって、このコストを低減させる。さらに、標識された親和性試薬が使用される本発明の標識工程では、画像化のために充分なシグナルを得るために、標的鋳型の小さいパーセンテージのみが、複数を有する親和性試薬により結合されて標識されることで充分であり得(例えば、約5%、もしくは約10%、または約15%未満、約20%未満、約25%未満、もしくは約30%未満)、1分子の結合物質に対して複数分子の標識を有する効率的に標識された結合物質を用いると30%でさえ充分であり得、これは特に、親和性試薬が標的dNTPに効率的に結合し、かつ複数の標識分子を含む場合に当てはまる。親和性試薬が単一の標識分子のみを有する場合、より高レベルの結合が好ましいことがある(例えば、70パーセントまたはそれより高い)。
【0037】
2.定義および用語
ヌクレオチドアナログの文脈において本明細書において使用される場合、「非標識」および「標識されていない」という用語は交換可能に使用される。
【0038】
本明細書において使用される場合、そうでないことが文脈から明らかでない限り、「標識されていないリバーシブルターミネーター[ヌクレオチド]」、「NLRT」、「リバーシブルターミネーターヌクレオチド」、「リバーシブルターミネーター」、「RT」などは全て、核酸塩基またはアナログ、デオキシリボースまたはアナログ、および切断可能なブロッキング基を含むシークエンシング試薬を指すために使用される。標識されていないリバーシブルターミネーターヌクレオチドは、プライマー伸長産物中に、最初に3’端において、およびそれがある場合は追加の組込みサイクル後にプライマー伸長産物の「内部」部分において組み込まれたdNTP(すなわち、ポリメラーゼの基質)またはリバーシブルターミネーターヌクレオチドを指すことがある。
【0039】
本明細書において使用される場合、「dNTP」は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチド三リン酸およびそのアナログ(3’-Oで切断可能なブロッキング基を有するアナログなど)の両方を含む。
【0040】
ヌクレオチドアナログの切断可能なブロッキング基の文脈において本明細書において使用される場合、3’-O-という指定は明示的ではなく暗示的なことがある。例えば、「アジドメチル」、「3’-O-アジドメチル」という用語は、文脈から明らかなように、交換可能である。
【0041】
「アンプリコン」は、ポリヌクレオチド増幅反応の生成物、すなわち、1つまたは複数の開始配列から複製されたポリヌクレオチドの集団を意味する。アンプリコンは様々な増幅反応により製造されてよく、該増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リニアポリメラーゼ反応(linear polymerase reactions)、核酸配列ベースの増幅、ローリングサークル増幅および同様の反応が挙げられるがこれらに限定されない(例えば、米国特許第4,683,195号明細書;同第4,965,188号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,800,159号明細書;同第5,210,015号明細書;同第6,174,670号明細書;同第5,399,491号明細書;同第6,287,824号明細書および同第5,854,033号明細書;ならびに米国特許出願公開第2006/0024711号明細書を参照)。
【0042】
本明細書において使用される「抗原」は、抗体により特異的に結合され得る化合物を意味する。一部の抗原は免疫原である(Janeway, et al., Immunobiology, 5th Edition, 2001, Garland Publishingを参照)。一部の抗原はハプテンであり、これは、抗体により認識されるが、タンパク質にコンジュゲートされない限り、免疫応答を誘発しない。例示的な抗原としては、NLRT、リバーシブルターミネーターブロッキング基、dNTP、ポリペプチド、小分子、脂質、または核酸が挙げられる。
【0043】
「アレイ」または「マイクロアレイ」は、表面、排他的ではないが好ましくは、平坦または実質的に平坦な表面を有する固体支持体(またはビーズなどの固体支持体の集まり)であって、核酸を含む部位の集まりを有し、集まりの各部位が空間的に定義されており、かつアレイの他の部位と重なり合わないようになっている(すなわち、部位は空間的に離散している)、固体支持体(またはビーズなどの固体支持体の集まり)を意味する。アレイまたはマイクロアレイはまた、ビーズまたはウェルなどの表面を有する平坦でない問合せ可能な構造を含むことができる。アレイのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、共有結合により固体支持体に結合してもよく、または非共有結合により結合してもよい。従来のマイクロアレイ技術は、例えばSchena, Ed. (2000), Microarrays: A Practical Approach (IRL Press, Oxford)において総説されている。本明細書において使用される場合、「ランダムアレイ」または「ランダムマイクロアレイ」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの素性がそれらの位置から少なくとも最初に識別可能でないが、アレイに対する特定の生化学検出技術により決定され得るマイクロアレイを指す。例えば、米国特許第6,396,995号明細書;同第6,544,732号明細書;同第6,401,267号明細書;および同第7,070,927号明細書;PCT国際公開第2006/073504号パンフレットおよび同第2005/082098号パンフレット;ならびに米国特許出願公開第2007/0207482号明細書および同第2007/0087362号明細書を参照。
【0044】
ブロッキング基に関する「リバーシブル」、「除去可能」および「切断可能」という用語は同じ意味を有する。
【0045】
リバーシブルターミネーターヌクレオチドの「リバーシブルブロッキング基」という用語はまた、「除去可能なブロッキング基」、「切断可能なリンカー」、「ブロッキング部分」、「ブロッキング基」、「リバーシブルターミネーターブロッキング基」などと称されることもある。リバーシブルブロッキング基は、通常は糖部分の3’-O位において、ヌクレオチドの糖(例えば、デオキシリボース)に取り付けられた化学的部分であり、その位置においてポリメラーゼによるヌクレオチドの付加を防止する。リバーシブルブロッキング基は、酵素(例えば、ホスファターゼまたはエステラーゼ)、化学反応、熱、光などにより切断されて、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの3’位においてヒドロキシル基を提供することができ、それにより、ポリメラーゼによるヌクレオチドの付加が起こり得る。
【0046】
「誘導体」または「アナログ」は、そのコア構造が親化合物と同じ、または非常に似ているが、異なるもしくは追加の側鎖、または2’およびもしくは3’ブロッキング基など、誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオシドが別の分子に連結されることを可能とする化学的または物理的修飾を有する化合物または分子を意味する。例えば、塩基はデアザプリンであり得る。誘導体は、ワトソン-クリック塩基対形成ができるべきである。「誘導体」および「アナログ」はまた、修飾塩基部分および/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオチドまたはヌクレオシド誘導体を意味する。そのような誘導体およびアナログは、例えば、Scheit, Nucleotide Analogs (John Wiley & Son, 1980)およびUhlman et al., Chemical Reviews 90:543-584, 1990において論じられている。ヌクレオチドアナログはまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキル-ホスホネート、ホスホロアニリデートおよびホスホロアミデート連結などの修飾ホスホジエステル結合を含み得る。アナログは、ワトソン-クリック塩基対形成ができるべきである。例えば、デオキシアデノシンアナログとしてはジダノシン(ddI)およびビダラビンが挙げられ、アデノシンアナログとしてはBCX4430が挙げられ;デオキシシチジンアナログとしては、シタラビン、ゲムシタビン、エムトリシタビン(FTC)、ラミブジン(3TC)、およびザルシタビン(ddC)が挙げられ;グアノシンおよびデオキシグアノシンアナログとしては、アバカビル、アシクロビル、およびエンテカビルが挙げられ;チミジンおよびデオキシチミジンアナログとしては、スタブジン(d4T)、テルビブジン、およびジドブジン(アジドチミジン、またはAZT)が挙げられ;デオキシウリジンアナログとしてはイドクスウリジンおよびトリフルリジンが挙げられる。本明細書において使用される「誘導体」、「アナログ」および「修飾された」は交換可能に使用されてよく、本明細書において定義される「ヌクレオチド」および「ヌクレオシド」という用語に包含される。
【0047】
「組み込む」は、核酸分子の部分となることを意味する。SBSにおいて、1つのヌクレオチド、すなわち、DNA鎖上の3’ヌクレオチドのペントースの3’位と、隣接するヌクレオチド、すなわち、DNA鎖に付加されているRT上のペントースの5’位との間のホスホジエステルまたは修飾ホスホジエステル結合の形成を通じて伸長中のDNA鎖にポリメラーゼがRTを付加するときにRTの組込みが起こる。
【0048】
標識された親和性試薬の文脈における「標識」は、検出可能かつ/または定量化可能なシグナルを提供するために使用され得る任意の原子または分子を意味する。好適な標識としては、放射性同位体、フルオロフォア、発色団、質量標識、高電子密度粒子、磁性粒子、スピン標識、化学発光を放出する分子、電気化学活性分子、酵素、補因子、および酵素基質が挙げられる。一部の実施形態では、検出標識は、荷電基を含有する分子(例えば、カチオン基を含有する分子またはアニオン基を含有する分子)、蛍光分子(例えば、蛍光色素)、蛍光原分子、または金属である。検出標識は蛍光標識であってもよい。蛍光標識は、非消光形態にある時(例えば、別の剤により消光されていない時)に光を放出できる任意の標識であり得る。蛍光部分は、適切な励起波長により励起されたときに特定の発光波長において光エネルギーを放出する(すなわち、蛍光を発する)。蛍光部分および消光部分が近接している場合、蛍光部分により放出される光エネルギーは消光部分により吸収される。一部の実施形態では、蛍光色素は、フルオレセイン、ローダミン、フェノキサジン、アクリジン、クマリン、またはこれらの誘導体である。一部の実施形態では、蛍光色素はカルボキシフルオレセインである。好適な蛍光色素のさらなる例としては、Alexa Fluor(登録商標)製品ライン(Life Technologies、Carlsbad、CA)の下で市販されている蛍光色素が挙げられる。あるいは、非蛍光標識が使用されてもよく、これには、レドックス標識、還元タグ、硫黄またはチオール含有分子、置換または非置換のアルキル、蛍光タンパク質、非蛍光色素、および発光タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
「核酸塩基」は、鋳型核酸の相補的な含窒素塩基と塩基対形成できる含窒素塩基を意味する。例示的な核酸塩基としては、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、イノシン(I)およびこれらの誘導体が挙げられる。本明細書におけるチミンへの言及は、そうでないことが文脈から明らかでない限り、同等にウラシルを指すことが理解されるべきである。本明細書において使用される場合、「核酸塩基」、「含窒素塩基」、加えて「塩基」という用語は交換可能に使用される。
【0050】
本明細書において使用される「天然に存在する核酸塩基」は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、またはウラシル(U)を意味する。一部の場合には、天然に存在する核酸塩基は、A、C、GおよびT(DNA中に見出される天然に存在する塩基)を指す。
【0051】
「ヌクレオチド」は、核酸塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなる。それらは核酸配列のモノマー単位である。RNAにおいて糖はリボースであり、DNAにおいてデオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠いた糖である。含窒素塩基はプリンまたはピリミジンの誘導体である。プリンはアデニン(A)およびグアニン(G)であり、ピリミジンはシトシン(C)およびチミン(T)(またはRNAの文脈ではウラシル(U))である。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合する。ヌクレオチドはまた、糖のC-5に取り付けられたヒドロキシル基においてエステル化が起こったリン酸エステルまたはヌクレオシドである。ヌクレオチドは、通常、一、二または三リン酸塩である。「ヌクレオシド」はヌクレオチドに構造的に類似しているが、ホスフェート部分を含まない。一般的な略語としては、デオキシヌクレオチド三リン酸の「dNTP」が挙げられる。
【0052】
「核酸」はヌクレオチドモノマーのポリマーを意味する。本明細書において使用される場合、該用語は一本鎖または二本鎖形態を指すことがある。核酸およびオリゴヌクレオチドを構成するモノマーは、ワトソン-クリック型の塩基対形成、塩基スタッキング、またはフーグスティーンもしくは逆フーグスティーン型の塩基対形成などのモノマー間相互作用の通常のパターンにより天然ポリヌクレオチドに特異的に結合して、デュプレックスまたはトリプレックス形態を形成することができる。そのようなモノマーおよびそれらのヌクレオシド間連結は、天然に存在するものであってもよく、またはそのアナログ、例えば、天然に存在するもしくは天然に存在しないアナログであってもよい。天然に存在しないアナログは、ペプチド核酸、ロックド核酸、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結、標識の取付けを可能とする連結基を含有する塩基、例えばフルオロフォア、またはハプテンなどを含んでもよい。核酸は、典型的に、数モノマー単位、例えば5~40(その場合、それらは通常、「オリゴヌクレオチド」と称される)から数十万またはそれより多くのモノマー単位までのサイズに及ぶ。核酸またはオリゴヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字(大文字または小文字)の配列により表される場合は常に、別に指し示さない限りまたは文脈から自明でない限り、ヌクレオチドは左から右に5’から3’の順序であることおよび「A」はデオキシアデノシンを表し、「C」はデオキシシチジンを表し、「G」はデオキシグアノシンを表し、「T」はチミジンを表し、「I」はデオキシイノシンを表し、「U」はウリジンを表すことが理解されるであろう。別段の記載がなければ、技術用語および原子のナンバリングの慣習は、Strachan and Read, Human Molecular Genetics 2 (Wiley-Liss, New York, 1999)において開示されているものに従う。通常、核酸は、ホスホジエステル結合により連結された天然ヌクレオシド(例えば、DNAについてデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはRNAについてそれらのリボース対応物)を含むが、それらはまた、非天然ヌクレオチドアナログ、例えば、修飾塩基、糖、またはヌクレオシド間連結を含んでもよい。当業者にとって、酵素が活性のために特定のオリゴヌクレオチドまたは核酸基質の要件、例えば、一本鎖DNA、またはRNA/DNAデュプレックスなどを有する場合、オリゴヌクレオチドまたは核酸基質のための適切な組成物の選択は充分に、特に、Sambrook et al., Molecular Cloning, Second Edition (Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989)、および同様の参考文献などの学術文献からのガイダンスを有する当業者の知識の範囲内である。
【0053】
「プライマー」は、ポリヌクレオチド鋳型とデュプレックスを形成すると、核酸合成の開始点として作用することができ、かつ鋳型に沿ってその3’末端から伸長されて伸長したデュプレックスを形成することができる天然または合成のオリゴヌクレオチドを意味する。伸長プロセス中に付加されるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列により決定される。通常、プライマーはDNAポリメラーゼにより伸長される。プライマーは、通常、9~40ヌクレオチド、または一部の実施形態では14~36ヌクレオチドの範囲内の長さを有する。
【0054】
「ポリヌクレオチド」は、「核酸」という用語と交換可能に使用されて、DNA、RNA、ならびにハイブリッドおよび合成核酸を意味し、一本鎖または二本鎖であり得る。「オリゴヌクレオチド」は、約6~約300ヌクレオチドの長さの短いポリヌクレオチドである。「相補的なポリヌクレオチド」は、標的核酸に相補的なポリヌクレオチドを指す。
【0055】
「固体支持体」および「支持体」は交換可能に使用されて、剛性または半剛性の1つまたは複数の表面を有する材料または材料群を指す。マイクロアレイは、通常、顕微鏡スライドガラスなどの少なくとも1つの平坦な固相支持体を含む。
【0056】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリメラーゼ」(a polymerase)への言及は、1つの作用物質またはそのような作用物質の混合物を指し、「方法」(the method)への言及は、当業者に公知の同等の工程および/または方法への言及を含む。
【0057】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載される全ての刊行物は、参照することにより、刊行物に記載されるおよび本明細書に記載の発明との関連で使用され得るデバイス、組成物、配合物および方法論を記載および開示する目的のために本明細書に組み込まれる。
【0058】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り下限の単位の10分の1までの、各介在する値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載されたまたは介在する値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、記載された範囲における任意の具体的に除外された限度に応じて、そのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、また本発明に包含される。記載された範囲が限度の1つまたは両方を含む場合、それらの含まれる限度の両方のいずれかを除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0059】
以下の説明において、本発明のより徹底的な理解を提供するために多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、本発明はこれらの特定の詳細の1つまたは複数を用いずに実施されてもよいことが当業者に明らかであろう。他の場合、当業者に周知の特徴および周知の手順は、本発明を不明瞭にすることを回避するために記載されていない。
【0060】
本発明が主に特定の実施形態に関して記載されるが、本開示を読んだ当業者に他の実施形態が明らかとなることも想定され、またそのような実施形態が本発明の方法に含まれることが意図される。
【0061】
本発明の実施は、別に指し示さない限り、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術など)、細胞生物学、生化学、および免疫学の、当該技術の範囲内の従来技術および説明を用い得る。そのような従来技術としては、ポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、および標識を使用するハイブリダイゼーションの検出が挙げられる。好適な技術の具体的な説明は、本明細書における以下の例を参照することにより得ることができる。しかしながら、他の同等の従来の手順も当然使用することができる。そのような従来技術および説明は、Genome Analysis: A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV)、Using Antibodies: A Laboratory Manual、Cells: A Laboratory Manual、PCR Primer: A Laboratory Manual、およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual (全てCold Spring Harbor Laboratory Press)、Stryer, L. (1995) Biochemistry (4th Ed.) Freeman, N.Y.、Gait, "Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach" 1984, IRL Press, London, Nelson and Cox (2000)、Lehninger, Principles of Biochemistry 3rd Ed., W. H. Freeman Pub., New York, N.Y.およびBerg et al. (2002) Biochemistry, 5th Ed., W. H. Freeman Pub., New York, N.Y.(これらの全ては、参照することによりそれらの全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる)などの標準的な実験室マニュアル中に見出すことができる。
【0062】
3.ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ
様々な実施形態では、本発明によるSBSは、非標識リバーシブルターミネーター(「NLRT」)(例えば、ブロッキング基を有するヌクレオチドアナログ)、標識されていない天然に存在するヌクレオチド(例えば、dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)、またはブロッキング基を含まない標識されていないヌクレオチドアナログを使用し得る。
【0063】
3.1 非標識リバーシブルターミネーター(NLRT)
本発明の非標識リバーシブルターミネーター(「NLRT」)は、デオキシリボースの3’-OH位において除去可能なブロッキング基を含むヌクレオチドアナログである。多数のリバーシブルターミネーターが記載されてきており、リバーシブルターミネーターはSBSにおいて広く使用されているが、本発明に従って使用される非標識リバーシブルターミネーターは、標識されておらず、かつ本明細書において以下に記載される親和性試薬と組み合わせて使用されるので、商業的使用におけるものとは異なる。一態様では、本発明のNLRTは標識されていない。一実施形態では、標識されていないは、NLRTが蛍光色素を含まないことを意味する。一実施形態では、標識されていないは、NLRTが化学発光色素を含まないことを意味する。一実施形態では、標識されていないは、NLRTが発光部分を含まないことを意味する。
【0064】
一部の実施形態では、例示的なNLRTは、DNA鎖へのNLRTの組込み前に、以下の構造Iを有する:
【化5】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり、R
2は核酸塩基であるかまたはそれを含み、R
3は少なくとも1つのリン酸基またはそのアナログを含む)。
【0065】
リバーシブルブロッキング基R1は、DNA鎖へのNLRTの組込み後に除去されてもよい。DNA鎖の3’端におけるアナログの組込み後のブロッキング基の除去は、3’-OHを結果としてもたらす。任意のリバーシブルブロッキング基を使用することができる。例示的なリバーシブルブロッキング基は以下に記載される。
【0066】
核酸塩基R2は、例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、もしくはイノシン(I)またはこれらのアナログであってもよい。NLRTは核酸塩基に従って称されることがあり、例えば、A核酸塩基を有するNLRTはNLRT-Aと称される。したがって、対応するNLRTは、本明細書においてそれぞれ「NLRT-A」、「NLRT-C」、「NLRT-G」、「NLRT-T」、「NLRT-U」、および「NLRT-I」と称される。NLRT-TおよびNLRT-Cは、NLRTピリミジンと称されることがある。NLRT-GおよびNLRT-Aは、NLRTプリンと称されることがある。
【0067】
核酸塩基R2は、任意の核酸塩基または核酸塩基アナログ(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、またはイノシンのアナログ)であってもよい。例えば、抗体を産生させるときにアナログへの免疫応答を増加させるため、または特定の核酸塩基に対する抗体の特異性を増加させるために、天然に存在する核酸塩基への修飾が為され得る。
【0068】
R3は、1~10個のリン酸基またはリン酸アナログ基であってもよい。ホスフェートアナログとしては、ホスホロチオエート結合がDNAのリン酸骨格中の非ブリッジ形成性酸素を硫黄原子で代替するホスホロチオエート(PS)、または当該技術分野において公知の任意の他の好適なホスフェートアナログが挙げられる。一部の場合には、R3は1~10個のリン酸基であってもよい。一部の場合には、R3は3~12個のリン酸基であってもよい。一部の場合には、ヌクレオチドアナログはヌクレオシド三リン酸である。
【0069】
ある特定の実施形態では、式IのR1は、184未満、多くの場合174未満、多くの場合164未満、多くの場合154未満、多くの場合144未満、多くの場合134未満、多くの場合124未満、多くの場合114未満、多くの場合104未満、多くの場合94未満、時に84未満のMWを有する。R1は、KLHなどのより大きいキャリア分子にコンジュゲートされたときにハプテンとして作用して免疫応答を誘発してもよい。
【0070】
組み込まれなかったNLRTヌクレオチドアナログは、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素の基質として好適であり、3’端においてDNA鎖に組み込まれ得ることが理解されるであろう。例えば、リバーシブルブロッキング基は、NLRTが少なくとも一部のDNAポリメラーゼの基質であるようなサイズおよび構造を有するべきである。NLRTの組込みは、ターミナルトランスフェラーゼ、ポリメラーゼまたは逆転写酵素を介して達成され得る。シークエンシングにおいて使用される任意のDNAポリメラーゼを用いることができ、該DNAポリメラーゼとしては、例えば、テルモコックス属菌(Thermococcus sp.)のDNAポリメラーゼ、例えば、9°Nまたはその突然変異体、例えば、二重突然変異体Y409VおよびA485LなどのA485Lが挙げられる。当該技術分野において公知のように、ポリメラーゼは、3’ブロッキング基の性質に関して高度に識別力がある。結果として、効率的な組込みを推進するために、ポリメラーゼタンパク質への突然変異が多くの場合に必要とされる。本発明において使用され得る例示的なDNAポリメラーゼおよび方法としては、Chen, C., 2014, “DNA Polymerases Drive DNA Sequencing-By-Synthesis Technologies: Both Past and Present” Frontiers in Microbiology, Vol. 5, Article 305、Pinheiro, V. et al. 2012 “Polymerase Engineering: From PCR and Sequencing to Synthetic Biology” Protein Engineering Handbook: Volume 3:279-302、国際特許出願公開第2005/024010号パンフレットおよび同第2006/120433号パンフレット(これらのそれぞれは、参照することにより全ての目的のために組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。一部の場合には、ポリメラーゼは、テルモコックス属菌のDNAポリメラーゼ、例えば、9°Nまたはその突然変異体、例えば、二重突然変異体Y409VおよびA485LなどのA485Lである。他の例としては、E.コリDNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのクレノー断片、T7またはT5バクテリオファージDNAポリメラーゼ、HIV逆転写酵素;Phi29ポリメラーゼ、およびBst DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0071】
ブロッキング基への修飾はリバーシブルターミネーターの機能に干渉するべきではないことが理解されるであろう。すなわち、それらは、3’-OHデオキシリボヌクレオチドを生じさせるために切断可能であるべきである。
【0072】
一実施形態では、RTは、DNA鎖へのRTの組込み前に以下の構造IIを有する:
【化6】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり、R
4は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)から選択される核酸塩基であり;かつ、R
3は少なくとも1つ(例えば、1~10個)のホスフェートを含む)。一部の場合には、R
3はトリホスフェートである。
【0073】
一実施形態では、RTは、DNA鎖へのRTの組込み後に以下の構造IIIを有する:
【化7】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり、R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、もしくはイノシン(I)またはこれらのアナログなどの核酸塩基であり、かつ、Xは、リン酸-糖結合(例えば、1つのヌクレオシド糖分子の3’炭素原子および別のヌクレオシド糖分子の5’炭素原子を連結するホスホジエステル結合)により連結された10~1000個のヌクレオシドを含むポリヌクレオチド(例えば、GDS)である)。
【0074】
別の実施形態では、RTは、リバーシブルブロッキング基の組込みおよび除去の後に構造IVを有する:
【化8】
(式中、R
6はHであり、かつ、R
7は、上記に定義されるリン酸-糖結合により連結された10~1000個のヌクレオシドを含むポリヌクレオチド(例えば、GDS)であるか、または上記に定義されるR
3である)。
【0075】
構造I、IIIおよびIVのある特定の実施形態では、R2は、塩基の結合特異性を変化させないが(すなわち、AアナログはTに結合し、TアナログはAに結合する、など)、(ii)アナログを天然に存在する塩基よりも免疫原性とし得る修飾を有する核酸塩基アナログ(例えば、A、T、G、C、Uのアナログ)である。一部の実施形態では、修飾は、3つ以下の炭素を含む基の付加を含んでもよい。付加される基は、それらがGDSに組み込まれた際にヌクレオシドから除去されず、それにより、GDSは修飾を含む複数のヌクレオチドを含む。そのような実施形態では、親和性試薬は、修飾を含む末端ヌクレオチドアナログに結合するが、はるかに低い親和性で修飾を有する内部ヌクレオチドに結合する。
【0076】
所与の末端(例えば、3’末端)において1つより多くの末端ヌクレオチドが存在する応用では、目的としない末端をブロックするために様々な方法を使用することができ、これは例えば、異なるブロッキング基によりまたは支持体に「汚染」末端(“contaminating” end)を取り付けることにより為される。例えばDNBシークエンシングのために、シークエンシングのために使用される3’末端に加えて3’末端が存在してもよい。ブリッジPCRにより産生されるPCRクラスターでは、シークエンシング鋳型は5’末端により取り付けられ、したがって、鋳型の3’末端は、RTを用いて伸長不可能であるか、または本明細書に記載される分子結合剤との結合を防止するために修飾される。
【0077】
3.2 リバーシブルターミネーターブロッキング基
本発明において使用されるNLRTは、任意の好適なブロッキング基を含むことができる。一部の実施形態では、好適なブロッキング基は、化学的または酵素処理により除去されて3’-OH基を生じ得るものである。化学的処理は、鋳型またはプライマー伸長鎖を有意に劣化させるべきではない。リバーシブルターミネーターの3’ブロッキング基のために、3’-O-アリル基(Ju et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 19635-19640, 2006)、3’-O-アジドメチル-dNTP(Guo et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 9145-9150, 2008)、アミノアルコキシル基(Hutter et al., Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 29:879-895, 2010)および3’-O-(2-シアノエチル)基(Knapp et al., Chem. Eur. J., 17, 2903 - 2915, 2011)などの様々な分子部分が記載されてきた。例示的なRTブロッキング基としては、-O-アジドメチルおよび-O-シアノエテニルが挙げられる。限定ではなく説明のために、他の例示的なRTブロッキング基を
図3および
図4に示す。
【0078】
他の実施形態では、式I(上掲)のR1は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルケニル、または置換もしくは非置換のヘテロアルキニルである。一部の例では、R1は、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、3-オキソブタ-1-イニル、および3-メトキシ-3-オキソプロパ-1-イニルからなる群から選択することができる。
【0079】
様々な3’-Oリバーシブルブロッキング基(式I中のR1)を本発明の実施において使用することができる。本発明の方法の一実施形態によれば、R1は、アリル、アジドメチル、アミノアルコキシル、2-シアノエチル、置換アルキル、非置換アルキル、置換アルケニル、非置換アルケニル、置換アルキニル、非置換アルキニル、置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアルケニル、非置換ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルキニル、非置換ヘテロアルキニル、アレニル、シス-シアノエテニル、トランス-シアノエテニル、シス-シアノフルオロエテニル、トランス-シアノフルオロエテニル、シス-トリフルオロメチルエテニル、トランス-トリフルオロメチルエテニル、ビスシアノエテニル、ビスフルオロエテニル、シス-プロペニル、トランス-プロペニル、ニトロエテニル、アセトエテニル、メチルカルボノエテニル、アミドエテニル、メチルスルホノエテニル、メチルスルホノエチル、ホルムイミデート、ホルムヒドロキシメート、ビニロエテニル、エチレノエテニル、シアノエチレニル、ニトロエチレニル、アミドエチレニル、アミノ、シアノエテニル、シアノエチル、アルコキシ、アシル、メトキシメチル、アミノキシル、カルボニル、ニトロベンジル、クマリニル、およびニトロナフタレニルからなる群から選択される。
【0080】
本明細書において使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という用語は、直鎖および分岐鎖の一価の置換基を含む。例としては、メチル、エチル、イソブチル、3-ブチニルなどが挙げられる。本明細書において記載される化合物および方法と共に有用なこれらの基の範囲は、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル、およびC2~C10アルキニルを含む。本明細書において記載される化合物および方法と共に有用なこれらの基の追加の範囲は、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル、およびC2~C4アルキニルを含む。
【0081】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」は、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと同様に定義されるが、骨格内にO、S、もしくはNヘテロ原子またはこれらの組合せを含有することができる。本明細書において記載される化合物および方法と共に有用なこれらの基の範囲は、C1~C10ヘテロアルキル、C2~C10ヘテロアルケニル、およびC2~C10ヘテロアルキニルを含む。本明細書において記載される化合物および方法と共に有用なこれらの基の追加の範囲は、C1~C8ヘテロアルキル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、C2~C6ヘテロアルケニル、C2~C6ヘテロアルキニル、C1~C4ヘテロアルキル、C2~C4ヘテロアルケニル、およびC2~C4ヘテロアルキニルを含む。
【0082】
本明細書において使用されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル分子は、置換または非置換であり得る。本明細書において使用される場合、置換されたという用語は、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルの主鎖に取り付けられた位置へのアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基の付加、例えば、これらの分子の1つによる水素の置換を含む。置換基の例としては、ヒドロキシ、ハロゲン(例えば、F、Br、Cl、またはI)、およびカルボキシル基が挙げられるがこれらに限定されない。反対に、本明細書において使用される場合、非置換という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニルが全必要量の水素を有すること、すなわち、置換を有しない、その飽和レベルに相応しい水素を有すること、例えば、線状ブタン(-(CH2)3-CH3)を指し示す。
【0083】
他の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアミノ含有ブロッキング基(例えば、NH2-)である。例示的なアミノ含有リバーシブルブロッキング基を記載するHutter et al., 2010, Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 29(11)(参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアリル含有ブロッキング基(例えば、CH2=CHCH2-)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はシアノ基(例えば、シアノエテニルまたはシアノエチル基)を含む。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアジド含有ブロッキング基(例えば、N3-)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアジドメチル(N3CH2-)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアルコキシ含有ブロッキング基(例えば、CH3CH2O-)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基は、1つまたは複数のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール(PEG)部分を含有する。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基は置換または非置換のアルキル(すなわち、置換または非置換の炭化水素)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアシルである。米国特許第6,232,465号明細書(参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はメトキシメチルであるかまたはそれを含有する。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はアミノキシル(H2NO-)であるかまたはそれを含有する。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はカルボニル(O=CH-)であるかまたはそれを含有する。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はエステルまたはリン酸基を含む。
【0084】
一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はニトロベンジル(C6H4(NO2)-CH2-)である。一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はクマリニルであり(すなわち、クマリン部分またはその誘導体を含有する)、例えば、クマリニルリバーシブルブロッキング基のCH炭素のいずれか1つは、ヌクレオチドアナログの3’-Oに共有結合により取り付けられている。
【0085】
一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基はニトロナフタレニルであり(すなわち、ニトロナフタレン部分またはその誘導体を含有する)、例えば、ニトロナフタレニルリバーシブルブロッキング基のCH炭素のいずれか1つは、ヌクレオシドアナログの3’-Oに共有結合により取り付けられている。
【0086】
一部の実施形態では、リバーシブルブロッキング基は、群:
【化9】
(式中、R
3およびR
4はHまたはアルキルであり、かつ、R
5は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、およびベンジルである)から選択される。ある特定の実施形態では、R
3~R
5の決定は、本明細書において記載されるMWの制限により制約される(例えば、セクション3.2.1を参照)。
【0087】
本発明において使用するために好適な他のリバーシブルブロッキング基は、標識されたリバーシブルターミネーターのブロッキング基として文献に記載されている。一般に、シークエンシングバイシンセシスにおいて使用される任意の好適なリバーシブルブロッキング基を本発明の実施において使用することができる。
【0088】
3.2.1 リバーシブルターミネーターブロッキング基およびそれらを含有するヌクレオチドの特性
好ましくは、シークエンシングへの応用のために、RTのブロッキング基は、シークエンシングされているDNAの完全性に干渉しない反応条件下で除去可能である。理想的なブロッキング基は、長期安定性を呈し、ポリメラーゼ酵素により効率的に組み込まれ、二次的またはさらなる組込みの完全なブロックを引き起こし、かつポリヌクレオチド構造への損傷を引き起こさない穏やかな条件下、好ましくは水性条件下で除去される能力を有する。
【0089】
本発明のある特定の実施形態では、ブロッキング基(デオキシリボースの3’酸素原子を含む)は、200未満、多くの場合190未満、多くの場合180未満、多くの場合170未満、多くの場合160未満、多くの場合150未満、多くの場合140未満、多くの場合130未満、多くの場合120未満、多くの場合110未満、時に100未満の分子量(MW)を有する。言い方を変えれば、ある特定の実施形態では、式IのR3は、184未満、多くの場合174未満、多くの場合164未満、多くの場合154未満、多くの場合144未満、多くの場合134未満、多くの場合124未満、多くの場合114未満、多くの場合104未満、多くの場合94未満、時に84未満のMWを有する。
【0090】
デオキシリボヌクレオチド一リン酸の分子量は、約307~322の範囲内である(dAMP 331.2、dCMP 307.2、dGMP 347.2およびdTMP 322.2)。ある特定の実施形態では、NLRT部分は、GDSに組み込まれたときに(すなわち、dNTPのピロリン酸を含まない)、550未満、多くの場合540未満、多くの場合530未満、多くの場合520未満、多くの場合510未満、多くの場合500未満、多くの場合490未満、多くの場合480未満、多くの場合470未満、時に460未満の分子量を有する。
【0091】
3.3 ホスフェート含有部分
一部の実施形態では、R
3部分は、1つまたは複数のホスフェートおよび/またはホスフェートアナログ部分を含む。一部の実施形態では、R
3部分は、n=0~12(通常、0、1、3、4、5または6)であり、かつ、XがHまたはプライマー伸長反応においてポリメラーゼによる組込みに適合性の任意の構造である以下の構造(構造V)を有してもよい。例えば、Xは、アルキルまたは当該技術分野において記載される様々なリンカーのいずれかであってもよい。例えば、米国特許第9,702,001号明細書(参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。GDSへのリバーシブルターミネーターの組込みプロセスにおいて、部分Xはヌクレオチドから除去され(アルファリン酸以外の全てと共に)、それにより、Xは、組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド中に存在しないことが理解されるであろう。ある特定の実施形態では、Xは、検出可能な標識または親和性タグであってよいが、但し、本発明の親和性試薬は、部分Xに結合もしないし、部分Xの存在、非存在または構造に基づいてリバーシブルターミネーターを識別もせず、かつ、Xは、組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド中に存在しない。
【化10】
【0092】
3.4 NLRTセット
一部のアプローチでは、本発明によるSBSシークエンシングは、シークエンシングアレイを複数のNLRT(例えば、NLRT-A、NLRT-T、NLRT-CおよびNLRT-G)と接触させることを含む。接触させることは、1回に1つのNLRTで逐次的に実行され得る。あるいは、4つのNLRTを、最も多くの場合、4つのNLRTの混合物として、同時にシークエンシングアレイと接触させてもよい。一緒になって、4つのNLRTは「NLRTセット」を構成する。NLRTセットのNLRTは、混合物としてパッケージ化されてもよく、または各異なるNLRTを別の容器中(is a separate container)に含むキットとしてパッケージ化されてもよい。4つのNLRTの混合物は、各塩基を等しい割合で含んでもよく、または等しくない量を含んでもよい。
【0093】
一実施形態では、NLRTセット中の各NLRTは同じブロッキング基(例えば、アジドメチル)を含む。一実施形態では、NLRTセット中のNLRTは異なるブロッキング基を含む(例えば、NLRT-Aはアジドメチルを含みかつNLRT-Tはシアノエテニルを含む;またはNLRT-AおよびNLRT-Gはアジドメチルを含みかつNLRT-CおよびNLRT-Tはシアノエテニルを含む)。異なるブロッキング基が使用される場合、そのようなブロッキング基は、異なるブロッキング基が同じ処理により除去され得るように選択されてもよい。あるいは、ブロッキング基は、適宜異なる時点に、異なる処理により除去されるように選択されてもよい。一実施形態では、セット中の1つまたは複数のNLRTは修飾された(天然に存在しない核酸塩基)を含む。
【0094】
本明細書において記載されるNLRTは、混合物の形態において提供または使用され得る。例えば、混合物は、2つ、3つ、または4つ(またはそれより多くの)構造的に異なるNLRTを含有し得る。構造的に異なるNLRTは、それらの各々の核酸塩基において異なり得る。例えば、混合物は、それぞれが4つの天然DNA核酸塩基(すなわち、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミン)の1つ、またはこれらの誘導体を含む4つの構造的に異なるNLRTを含有し得る。
【0095】
シークエンシング目的のために、NLRTセット中の異なるNLRTは、別々にパッケージ化された後に、シークエンサー自体により混合されてもよく(例えば、フローセルへのデリバリー前)、または一緒にパッケージ化されてもよい(すなわち、予備混合される)。NLRTセット(異なるNLRTは別々の容器中にパッケージ化されているかまたは同じ容器中の混合物として)を含むキットが提供されてもよい。
【0096】
3.5 親和性試薬の結合を向上させる基を有する核酸塩基アナログ
一実施形態では、核酸塩基は、伸長中のDNA鎖の3’端において(すなわち、最後に組み込まれた塩基として)存在するときに核酸塩基に対する親和性試薬の特異性または親和性を増加させるが、プライマー伸長産物の内部のヌクレオチド中の親和性試薬により認識もされず、または該親和性試薬に接近可能でない、除去不可能な化学基を含む。1つのアプローチでは、修飾は、親和性試薬により認識または結合されるが、3’末端ヌクレオチドにおける同じ修飾と比べて低い親和性または低い効率を有する。
【0097】
限定ではなく説明のために、そのような修飾核酸塩基の例は、
【化11】
(式中、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、同じまたは異なってよく、それぞれは、H、I、Br、F、構造XIX~XXVIII、または塩基対形成に干渉しない任意の基から選択される)を含む。なお、R
9がメチルの場合、構造XVIIIはチミジンである(in thymidine)。一部の場合には、修飾は、ヌクレオチドの抗原性を増加させるという追加の利益を有する。
【化12】
【0098】
天然に存在する核酸塩基の分子量は、アデニン135;グアニン151、チミン126およびシトシン111である。一部の実施形態では、核酸塩基アナログは、天然塩基より10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100Da大きい分子量を超えない分子量を有する。
【0099】
3.6 非ブロックdNTP
一実施形態では、3’-O-ブロッキング基を有しない天然dNTP(例えば、dATP、dGTP、dCTPまたはdTTP)またはdNTPアナログがシークエンシングのために使用される。一部の実施形態では、ヌクレオチドは、パイロシークエンシングにおけるようにまたは1塩基の組込み後に停止するポリメラーゼによるように、シークエンシングプロセスにおいて1回に1つ組み込まれる。例示的な方法が文献に記載されており(例えば、Ju et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:19635-40, 2006;Guo, Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 9145-50, 2008、およびRonaghi et al., Science, 281:363-365, 1998を参照)、これらは、標識および/またはRTに標識を接続するリンカーの除去により本発明において使用するために改変されてもよい。一部のアプローチでは、異なる核酸塩基を有するdNTPが逐次的に付加されて組み込まれる(例えば、A、次にGなど)。通常、核酸塩基は、次のdNTPの付加の前に別々に画像化される。
【0100】
3.7 デオキシリボースアナログ
本発明の一部の実施形態では、糖(デオキシリボース)部分は修飾される。例えば、核酸塩基アデニン、ブロッキング基アジドメチル、および糖デオキシリボースを有するNLRTは、ブロッキング基および糖部分を認識するように親和性試薬を使用して、核酸塩基シトシン、ブロッキング基アジドメチル、および糖修飾デオキシリボースを有するNLRTから区別され得る。
【0101】
3.8 3’-Oリバーシブルターミネーターを有しないヌクレオチド
いくつもの応用において有用な異なる態様では、除去不可能(すなわち、切断不可能)な3’ブロッキング基を有するヌクレオチドがNLRTの代わりに使用される。1つのアプローチでは、親和性試薬を用いる検出後に、最後に組み込まれた塩基は除去され、その位置は、類似するが切断可能なブロッキング基を有するヌクレオチドによりファイル(filed)される(Koziolkiewicz et al., FEBS Lett. 434:77-82, 1998)。
【0102】
上記に与えたものの例としては、デオキシリボース糖部分の3’-Oを介してヌクレオチドに取り付けられたリバーシブルブロッキング基が挙げられる。本発明はまた、デオキシリボース糖の2’-O-に取り付けられたリバーシブルおよびノンリバーシブルブロッキング基を有するNLRTを含む。これらの実施形態は、単一塩基検出(単一または数塩基のプライマー伸長)、DNA中のギャップおよびニックのモニタリングおよび他の検出方法のために使用され得る。したがって、当業者は、本明細書における方法および情報を、3’ではなく2’ブロッキング基を有するNLRTに適用できるであろう。
【0103】
4.親和性試薬
本発明は、例えば、SBSの間の伸長中のDNA鎖の末端へのポリメラーゼによる組込み後に、GDSの3’末端においてNLRTに特異的に結合する親和性試薬を使用する。一実施形態では、親和性試薬は構造IIIのNLRTに結合する。一実施形態では、親和性試薬は構造IVのNLRTに結合する。
【0104】
4.1 親和性試薬全般
一態様では、本発明は、核酸の3’末端において組み込まれたNLRTの存在または非存在を検出するために使用される親和性試薬に関する。親和性試薬は、組み込まれたNLRTの構造的特徴に基づいてNLRTに特異的に結合する分子または高分子である。例えば、親和性試薬は、例えば、特定の塩基および/または特定のリバーシブルブロッキング基を有するNLRTに特異的に結合し得る。説明のために、親和性試薬の一例は、NLRTが核酸塩基アデノシンおよびアジドメチルリバーシブルブロッキング基を含むときにDNA鎖の3’末端において組み込まれたNLRTに高親和性で結合するが、NLRTが核酸塩基アデノシンを含むがアジドメチルリバーシブルブロッカーではなく3’ヒドロキシル基を有するときにDNA鎖の3’末端において組み込まれたNLRTに高親和性で結合せず、かつ、それぞれがアジドメチルリバーシブルブロッキング基を有するかまたは有しない、核酸塩基シトシン、グアニン、またはチミンを含むDNA鎖の3’端において組み込まれたNLRTに高親和性で結合しない、モノクローナル抗体(mAb)である。親和性試薬は、直接的または間接的に標識されてよい。
【0105】
「特異性」は、例えば、分子に対する親和性試薬の相対的な結合親和性により測定される、親和性試薬が異なる分子(例えば、NLRT)を識別する程度である。本発明の親和性試薬に関して、親和性試薬は、他のNLRTよりも1つのNLRT(その標的RT)に対して実質的により高い親和性を有するべきである(例えば、親和性試薬は、Cヌクレオシドアナログに結合するが、A、TまたはGに結合しない)。また、親和性試薬は、伸長中のDNA鎖の3’末端においてポリメラーゼにより組み込まれたときにポリヌクレオチドの末端においてその標的ヌクレオシドアナログに結合するが、DNA鎖上の他の場所ではヌクレオチド塩基に結合しない。GDSの3’端がNLRT-A、NLRT-T、NLRT-C、NLRT-G(例えば、アレイ中)を含む複数(例えば、アレイ)の鋳型ポリヌクレオチドの存在下で、親和性試薬が、SBSシークエンシングにおいて使用される反応条件下でNLRT-Aに優先的に結合する場合、親和性試薬は、NLRT-Aなどの特定のNLRTに特異的である。本明細書において使用される場合、第2の構造と比較して第1の構造への親和性剤の「優先的な結合」は、親和性剤が第1の構造に結合するが第2の構造に結合しないか、または第2の構造により弱く(すなわち、より低い親和性で)またはより低い効率で結合することを意味する。
【0106】
組み込まれたNLRTへの親和性試薬の結合の文脈において、「特異的結合」、「特異的に結合する」などの用語は、異なる核酸塩基(NLRT-T、-C、または-G)もしくは異なるブロッキング基を有するか、またはブロッキング基を有しない(例えば、3’-OHを有するデオキシアデノシン)NLRTと比較した特定のNLRT(例えば、3’-Oアジド基を有するNLRT-A)との親和性試薬の優先的な会合を指す。親和性試薬とNLRTとの特異的結合は、少なくとも10-6M-1の親和性(すなわち、解離定数Kdにより測定される10-6M-1より低い数値を有する親和性)を意味することがある。10-8M-1より高い親和性が好ましい。特異的結合は、当該技術分野において公知の結合(例えば、抗体結合)の任意のアッセイを使用して決定することができ、該アッセイとしては、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、免疫組織化学、およびシークエンシング反応において標的NLRTに結合した蛍光標識親和性試薬の検出が挙げられる。本明細書において以下に論じるように、結合の特異性は陽性および陰性結合アッセイにより決定することができる。
【0107】
抗体などの親和性試薬と組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドとの特異的結合相互作用は、特異性に関与する組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの部分(portion)、または部分(moiety)に関するものを含む様々な方法で記載することができる。類例がここでは有用である:ドメイン1およびドメイン2の2つのドメインを有するタンパク質を想像する。2つの異なる抗体が該タンパク質に特異的に結合し得る。しかしながら、それらは異なるエピトープを認識し得る。例えば、1つの抗体はドメイン1中のエピトープに結合し得、第2の抗体はドメイン2中のエピトープに結合し得る。この仮定では、修飾がドメイン1において為された場合、これは、第2の抗体による結合を変化させることなく、第1の抗体によるタンパク質の結合に影響し得る。この場合、第1の抗体によるタンパク質の結合は、ドメイン1に「依存する」と言うことができ、すなわち、ドメイン1における変化(例えば、アミノ酸配列の変化)は、抗体1の結合特性を変化させる(例えば、結合を損なわせる、結合親和性を増加させる、結合親和性を低減させるなど)。同様に、ドメイン1は、抗体1による結合に「関与する」と言うことができる。組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの場合、結合の特異性は、1つの部分(例えば、ブロッキング基)の構造的特徴によることがあり、他の部分による他の部分(例えば、核酸塩基)の構造により影響されないことがある。あるいは、結合の特異性は、複数の部分(例えば、核酸塩基およびブロッキング基の両方)などの構造的特徴によることがある。組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドへの親和性試薬の結合が部分の特定の構造的特徴の存在を必要とする場合、親和性試薬による結合は、それらの構造的特徴を有する部分に「特異的」または該部分の存在もしくは非存在に「基づく」ことがある。同様に、それらの構造的特徴を有する部分は、親和性試薬による結合に「関与する」ことがあり、または親和性試薬の結合は、それらの構造的特徴を有する部分の存在に「依存する」ことがある。
【0108】
「特異性」は環境に依存することがあることも注意されるべきである。例えば、AおよびA’の両方に結合するが、B、CまたはDのいずれにも結合しない親和性試薬を想像する。A、A’、BおよびCを含有する反応または試料において、親和性試薬はAおよびA’の両方に結合し得るので、Aに「特異的に結合する」と考えることはできない。しかしながら、A、B、CおよびDを含有する反応または試料において、親和性試薬はAのみに結合し、その環境においてAに特異的に結合するといわれる。別の例では、A、A’、BおよびCを含有する試料において、親和性試薬は、異なる親和性、または効率でAおよびA’に結合することがあり、それにより、Aへの結合およびA’への結合はそれらの塩基において区別され得る。
【0109】
別の関連する用語は「識別する」(または時に「区別する」)である。特定のブロッキング基(例えば、アジドメチル)が存在する場合にのみ組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合するが、いずれの核酸塩基が存在するかによらずにアジドメチルブロッキング基を有する組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドに結合する親和性試薬は、アジドメチルブロッキング基を有する組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドとアジドメチルブロッキング基を有しない組み込まれたリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドとを「識別する」と言うことができ、またはより概括的に言えば、「ブロッキング基に基づいて識別する」と言うことができる。
【0110】
親和性試薬の特異性は、親和性試薬を調製するために使用された方法の結果である。例えば、アジドメチルブロッキング部分を認識する試薬は、陽性および陰性結合アッセイを用いて経験的に試験されてもよい。説明のために、1つのアプローチでは、試薬は、O-アジドメチルブロッキング部分の存在に基づいてNLRTに結合する抗体である。1つのアプローチでは、キーホールリンペットヘモシアニンにコンジュゲートされたアジドメチルを使用してハプテンO-アジドメチルに対する抗体が産生される。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニンへの結合のためになるが、他のデオキシグアニンヌクレオチド、例えば、3’-O-2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシグアニン;3’-O-(2-ニトロベンジル)-2’-デオキシグアニン;および3’-O-アリル-2’-デオキシグアニンへの結合のためにならない;ならびに他のアジドメチルNLRT、例えば、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシアデノシン;3’-O-アジドメチル-2’-デオキシシトシン;および3’-O-アジドメチル-2’-デオキシチミンへの結合のためにならない、所望の抗体を選択することができる。
【0111】
抗体-ハプテン相互作用の性質はまた、Al Qaraghuli, 2015, “Defining the complementarities between antibodies and haptens to refine our understanding and aid the prediction of a successful binding interaction” BMC Biotechnology, 15(1)p.1;Britta et al., 2005, “Generation of hapten-specific recombinant antibodies: Antibody phage display technology: A review” Vet Med. 50:231-52;Charlton et al., 2002. “Isolation of anti-hapten specific antibody fragments from combinatorial libraries” Methods Mol Biol. 178:159-71;およびHongtao et al., 2014, “Molecular Modeling Application on Hapten Epitope Prediction: An Enantioselective Immunoassay for Ofloxacin Optical Isomers” J. Agric. Food Chem. 62 (31) pp 7804-7812に記載される方法などの当該技術分野において公知の方法を使用して決定することができる。ある特定の部分(例えば、核酸塩基および糖部分)に結合するという親和性試薬の記載は、組み込まれたヌクレオチドの他の部分への結合を除外しないことが理解されるであろう。例えば、核酸塩基および糖部分に結合する親和性試薬は、ブロッキング基にも結合してよい。
【0112】
有用な親和性試薬の例としては、抗体(抗体の結合断片、単鎖抗体、二重特異的抗体などを含む)、アプタマー、ノッティン、アフィマー、1塩基三重らせん(one-base triple helix)を形成する標識dNTP、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、または組み込まれたNLRTに好適な特異性および親和性で結合する任意の他の公知の剤が挙げられる。
【0113】
親和性試薬は、標的NLRT中の核酸塩基、糖(例えば、デオキシリボース)、ブロッキング基、もしくは任意の他の部分またはこれらの組合せを特異的に認識し得る。1つのアプローチでは、親和性試薬は、ブロッキング基を含むエピトープを認識する。別のアプローチでは、親和性試薬は、核酸塩基を含むエピトープを認識する。別のアプローチでは、親和性試薬は、核酸塩基およびブロッキング基を含むエピトープを認識する。親和性試薬が部分に接触しない場合であっても、該部分が他の部分の位置を規定することがあると理解されるであろう。例えば、核酸塩基および3’ブロッキング基に基づいてNLRTを識別する親和性試薬について、デオキシリボース部分は、認識のために核酸塩基および3’ブロッキング基を位置決定するために必要とされる。
【0114】
抗体である親和性試薬の場合、特異的結合は、当該技術分野において公知の抗体結合についてのアッセイを使用して決定することができ、該アッセイとしては、ウエスタンブロット、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、またはカラムクロマトグラフィーが挙げられる。1つのアプローチでは、特異的結合は、ELISA型アッセイを使用して実証される。例えば、3’-アジドメチル-dCに対して産生された血清抗体は、3’-O-アジドメチル-dC(陽性特異性アッセイ)およびヌクレオチド、例えば、3’-O-アジドメチル-dGもしくは-dAまたは3’-OH-dC(陰性特異性アッセイ)の結合した基質に対して連続的に滴定することができる。
【0115】
一部の実施形態では、その標的ヌクレオシドに対する親和性試薬の塩基特異的結合は、他のヌクレオシドまたはアナログへの結合より2~100倍高い。一部の実施形態では、その標的ヌクレオシドに対する親和性試薬の塩基特異的結合は、他のヌクレオシドへの結合より少なくとも10倍高いか、または少なくとも30倍高いか、または少なくとも100倍高い。
【0116】
特定の塩基への好ましい抗体結合効率は、100pMより低いか、または1nMより低いか、または10nMより低いか、または1μMより低い濃度においてである。
【0117】
所望の特異性を有する親和性試薬は、当該技術分野において公知の方法を使用して選択することができる。例えば、抗体などの親和性試薬は、複数ラウンドの陽性選択(すなわち、標的分子に結合する)および陰性選択(すなわち、標的分子ではない分子に結合しない)により同定し、選択し、または精製することができる。
【0118】
親和性試薬は、溶液中のdNTPおよびプライマー伸長産物の3’端において組み込まれた対応するヌクレオチドの両方に結合し得る。一部の実施形態では、親和性試薬は、組み込まれなかったNLRT(例えば、溶液中のNLRT)に結合しないか、または有意により低い特異性で結合する。しかしながら、一般に、親和性試薬による組み込まれなかったNLRTの結合はシークエンシングのプロセス中には起こらず、その理由は、組み込まれなかったNLRTは親和性試薬の導入前に除去(洗浄除去)されるためである。あるいは、NLRTに結合した親和性試薬により形成された複合体は、画像化前に除去(洗浄除去)される。
【0119】
1つのアプローチでは、親和性試薬は、核酸塩基に特異的に結合し、3’-OH基の存在または非存在に部分的に基づいて異なる塩基(例えば、A、T、G、C)を区別する。このアプローチでは、親和性試薬は、GDSの内部(3’末端においてではない)に組み込まれたヌクレオチドから3’-OHを有するGDSの3’末端におけるヌクレオチドを区別する。一部の場合には、特定の核酸塩基を認識する親和性試薬はまた、3’-OH基の存在または非存在を区別し、それにより、特定の核酸塩基を有する3’末端ヌクレオチドとして組み込まれたNLRTを認識する。
【0120】
1つのアプローチでは、親和性試薬は、ブロッキング基を含むエピトープを認識するが塩基を区別しない。例えば、所与の4つのRTブロッキング基[A.アジドメチル、B.2-(シアノエトキシ)メチル、C.3’-O-(2-ニトロベンジル)、およびD.3’-O-アリル]の親和性試薬であって、該4つのブロッキング基を区別する親和性試薬を製造することができる。説明のために、以下のA~Dの標識されたデオキシグアニンアナログに対し、1つのNLRTのみを認識するが他の3つを認識しない親和性試薬を選択することができる。
A.3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン
B.3’-O-2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシグアニン
C.3’-O-(2-ニトロベンジル)-2’-デオキシグアニン
D.3’-O-アリル-2’-デオキシグアニン
【0121】
一部の実施形態では、選択された親和性試薬は、異なる核酸塩基を有するヌクレオチドを、それらが同じブロッキング基を共有する限り区別しない。例えば、上記のB(3’-O--2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシグアニン)を認識する親和性試薬は、3’-O-2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシアデニン;3’-O-2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシチミン;および3’-O-2-(シアノエトキシ)メチル-2’-デオキシシトシンも認識することがある。
【0122】
RTブロッキング基を差次的に認識する親和性試薬(例えば、モノクローナル抗体)の生成は、本開示によりガイドされる技術分野の当業者の技術的範囲内である。1つのアプローチでは、ハプテンO-アジドメチル(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンにコンジュゲートされた-O-アジドメチルまたはアジドメチル)に対する抗体が産生され、GDS TPの3’末端における3’-O-アジドメチル-2’-dNMヌクレオチド(NはA、T、GまたはCのそれぞれである)に結合することについて、および3’-O-X-2’-dNM(O-Xはシークエンシング反応液中に存在する異なるブロッキング基である)に結合しないことについて陽性および陰性スクリーニングされる。他の実施形態では、選択プロセスが所望の特異性を有する親和性試薬を同定する限り、ハプテンは、3’-Oブロッキング基を有するデオキシリボース、またはヌクレオチド(例えば、3’-Oブロッキング基を有する一リン酸または三リン酸)などであってもよいことが認識されるであろう。
【0123】
非常に明確な構造的差異を有する異なるブロッキング基(例えば、アジドメチルに対して2-(シアノエトキシ)メチル を4つのヌクレオチドが有する実施形態を上記の例は記載したが、本発明の一部の実施形態では、別個の親和性試薬により結合されるブロッキング基間には小さい差異しかない。例えば、ブロッキング基において、水素原子がフッ素原子またはメチル基により置換されて、親和性試薬のセットにより区別できる3つの関連するブロッキング基[ブロッキング基、F置換ブロッキング基、メチル置換ブロッキング基]を生成してもよい。
【0124】
本発明の一部の実施形態では、シークエンシングは、それぞれが3’-O-ブロッキング基を有する4つのNLRTを使用して実行され、2つまたはそれより多く、あるいは3つまたはそれより多く、あるいは4つ全てのブロッキング基は、(1)それらが同じ数の原子を有するか、または原子の数が小さい数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)以下だけ異なる;(2)ブロッキング基部分の分子式が1~10原子、例えば、1原子、2原子、3原子、4原子、6原子、7原子、8原子、9原子または10原子異なる(例えば、CH3により置換された単一のHは3つの差異;Fにより置換されたH、Sにより置換されたO)という意味で構造的に類似している。これらおよび他の実施形態では、ブロッキング基部分は、「リバーシブルターミネーターブロッキング基およびそれらを含有するヌクレオチドの特性」という題名のセクションにおいて本明細書に上記した特性のいずれかを有してもよい。
【0125】
一部の実施形態では、親和性試薬は、NLRT(例えば、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン)に結合するが、対応するブロックされていないヌクレオチド(例えば、3’-OH-2’-デオキシグアニン)には結合しない。
【0126】
一実施形態では、親和性試薬は、NLRT(例えば、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン)に結合するが、ブロッキング基を除去する処理後(例えば、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を用いた処理後)にヌクレオチドアナログから解離する。
【0127】
NLRT-Aを特異的に認識する親和性試薬は抗Aと称される。NLRT-Tを特異的に認識する親和性試薬は抗Tと称される。NLRT-Gを特異的に認識する親和性試薬は抗Gと称される。NLRT-Cを特異的に認識する親和性試薬は抗Cと称される。NLRT-Uを特異的に認識する親和性試薬は抗Uと称される。この技術用語は、免疫グロブリンの特異性を記載するために使用されるものに類似するが、本発明におけるこの技術用語の使用は、親和性試薬が必然的に抗体であると指し示すことを意図しない。上述の通り、
【0128】
親和性試薬は直接的に標識されてもよい。あるいは、親和性試薬は、標識された二次親和性試薬を使用して検出可能な非標識の一次親和性試薬であってもよい。例えば、NLRTに特異的に結合する非標識の一次親和性試薬は、一次親和性試薬に結合する標識された二次親和性試薬(例えば、一次親和性試薬に結合する標識された抗体)を用いて検出されてもよい。以下のセクション4.5を参照。
【0129】
4.2 例示的な親和性試薬
一部の実施形態では、親和性試薬は抗体である。当該技術分野において公知の抗体産生のための任意の方法を用いることができる。
【0130】
4.2.1 抗体
本明細書において使用される場合、「抗体」は、免疫グロブリン分子または組成物(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)の他に、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体などの遺伝子操作された形態、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異的抗体)、および抗体断片を意味する。抗体は、組換え供給源からのものであってもよく、かつ/または、非限定的にトランスジェニック動物などの動物において製造されてもよい。本明細書において使用される「抗体」という用語は「抗体断片」を含み、これには、非限定的に、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ナノボディ ダイアボディ、およびこれらのマルチマーおよび二重特異的抗体断片が含まれる。抗体は、従来技術を使用して断片化させることができる。例えば、F(ab’)2断片は、ペプシンを用いて抗体を処理することにより生成させることができる。結果として生じるF(ab’)2断片を処理してジスルフィド架橋を還元させ、Fab’断片を製造することができる。パパイン消化はFab断片の形成に繋がり得る。Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異的抗体断片および他の断片はまた、組換え技術により合成することができる。抗体は、IgMならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などのIgGを含む任意の有用なアイソタイプであり得る。一部の実施形態では、親和性試薬はミニボディである。ミニボディは、ヒンジ領域および免疫グロブリン分子のCH3ドメインに融合した天然抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインから構成される操作された抗体コンストラクトである。ミニボディは、したがって、抗原結合領域、二価分子へのアセンブリーを許容するCH3ドメインおよびジスルフィド連結による二量体化を受け入れる抗体ヒンジを保持する単一のタンパク質鎖中にコードされた小型の全抗体である。単一ドメイン抗体(sdAb)もまた使用することができる。単一ドメイン抗体、またはNANOBODY(Ablynx)は、概ね、単一モノマー可変抗体ドメインを有する抗体断片である。単一ドメイン抗体は特定の抗原に選択的に結合し、従来の抗体より小さい(MW 12~15kDa)。
【0131】
4.2.1.1 抗体の製造
ポリクローナル抗体を産生させるための方法は公知であり、NLRT特異的抗体を製造するために使用することができる。1つのアプローチについて以下の実施例2を参照。特定のNLRT、例えばNLRT-Aに特異的なポリクローナル抗体を産生させるための1つの方法によれば、ウサギにNLRT-A(免疫原にコンジュゲートされている)を注射して抗体を産生させ、ブロッキング基を欠いた同じ構造(例えば、3’-OHを有する)、および他のNLRT(NLRT-T、NLRT-G、およびNLRT-C)に結合しない抗体を選択する。したがって、製造されたポリクローナル抗体は、シークエンシングアレイ上の特定の位置における伸長中のDNA鎖の3’末端において組み込まれる特定のNLRTを認識するが、伸長中の鎖の他の内部位置におけるその同じヌクレオシドまたはアレイ上の他の場所において組み込まれ得る他のNLRTを認識しない。(ポリクローナル抗体はまた、組み込まれなかったNLRT-Aを認識することがあるが、組み込まれなかったNLRTは、組み込まれたNLRTが標識された親和性試薬を使用してプロービングされる前に洗浄除去される。
【0132】
研究者の必要性に応じて、NLRT全体に対して抗体を産生させる必要は必ずしもないことが認識されるであろう。例えば、ブロッキング基に特異的な抗体が所望される場合、ハプテンは、3’-O-ブロッキング基を有するデオキシリボース(すなわち、核酸塩基を有しない)または単独で3’-O-ブロッキング基であってもよい。一部の実施形態では、3’末端における目的のNLRTを有するポリヌクレオチドに対する抗体が産生される。一部の実施形態では、鋳型分子にアニールしたポリヌクレオチドに対する抗体が産生される。
【0133】
モノクローナル抗体を製造するために、NLRTを含む免疫原を用いて免疫化された動物から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準的な体細胞融合手順により骨髄腫細胞と融合させ、それによりこれらの細胞を不死化させ、ハイブリドーマ細胞を得ることができる。そのような技術は当該技術分野において周知である(例えば、元々はKohlerおよびMilstein(Kohler and Milstein Nature 256:495-497, 1975)により開発されたハイブリドーマ技術の他に、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunol. Today 4:72)、ヒトモノクローナル抗体を製造するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1986, Methods Enzymol, 121:140-67)、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huse et al., 1989, Science 246:1275)などの他の技術。ハイブリドーマ細胞は、特定のRTに特異的に反応性の抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0134】
特定の抗原または分子に対して反応性の特異的抗体、または抗体断片はまた、細胞表面コンポーネントを有する細菌中で発現される、免疫グロブリン遺伝子またはその部分をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることにより生成されてもよい。例えば、ファージ発現ライブラリーを使用して細菌中で完全なFab断片、VH領域およびFV領域を発現させることができる(例えば、Ward et al., Nature 341:544-546, 1989;Huse et al. Science 246:1275, 1989;およびMcCafferty et al. Nature 348:552-554, 1990を参照)。
【0135】
さらに、標的NLRTに特異的な抗体は、抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより容易に単離される。例えば、抗体ファージライブラリーは、使用して標的NLRTに特異的な抗体断片を同定することによりスクリーニングされてもよい。抗体ファージライブラリーをスクリーニングする方法は当該技術分野において周知である。
【0136】
抗NLRT抗体はまた、無細胞系において製造されてもよい。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44, 2009;Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45, 2004;およびEndo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713, 2003において記載されている。
【0137】
4.2.1.2 抗体の精製
抗NLRT抗体は、任意の好適な方法により精製されてもよい。そのような方法としては、親和性マトリックスまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が挙げられるがこれらに限定されない。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチルまたはフェニルカラムもまた、一部のポリペプチドを精製するために好適なことがある。以下のセクション8.4を参照。ポリペプチドを精製する多くの方法が当該技術分野において公知である。ポリクローナル抗血清からの抗NLRT抗体のアフィニティー精製は、以下の実施例2において記載されている。
【0138】
4.2.1.3 抗体の標識化
抗体は、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して標識することができる。レポーター分子、例えば、酵素および蛍光/発光タンパク質などのシグナル生成タンパク質への抗体および他の親和性試薬の連結方法は当該技術分野において周知である(Wild, The Immunoassay Handbook, 4th ed.; Elsevier: Amsterdam, the Netherlands, 2013;Kobayashi and Oyama, Analyst 136:642-651, 2011)。
【0139】
4.2.2 アプタマー
アプタマーは、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子である。アプタマーは以下の通りに分類することができる:(a)オリゴヌクレオチドの(通常、短い)鎖からなるDNAまたはRNAまたはXNAアプタマー;および(b)両方の末端においてタンパク質スキャフォールドに取り付けられた1つ(またはそれより多くの)短鎖可変ペプチドドメインからなるペプチドアプタマー。
【0140】
核酸アプタマーは、繰り返しのラウンドのインビトロ(in vitro)選択またはこれと同等にSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)を通じて様々な分子標的、例えばNLRTに結合するように操作された核酸種である。例えば、標的NLRTに対して親和性を有するアプタマーは、非結合性アプタマーが廃棄され、提案される標的に結合するアプタマーが増幅される反復処理であるSELEXを通じて大きいオリゴヌクレオチドライブラリーから選択することができる。初期陽性選択ラウンドの後に陰性選択が行われることがある。これは、結果として得られるアプタマー候補の選択性を向上させる。この処理では、標的NLRTを親和性カラムに固定化させる。アプタマーライブラリーを適用し、結合させる。弱い結合物質を洗浄除去し、結合したアプタマーを溶出させ、PCRを使用して増幅する。次に、増幅されたアプタマーのプールを標的に再び適用する。所望の選択性および親和性のアプタマーが得られるまでストリンジェンシーを増加させて、その方法を複数回繰り返す。例えば、Jayasena, et al., Clinical Chemistry 45:1628-1650, 1999を参照。ペプチドアプタマーの選択は、酵母2ハイブリッド系などの異なる系を使用して行うことができる。ペプチドアプタマーはまた、ファージディスプレイおよび他の表面ディスプレイ技術、例えば、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイおよび酵母ディスプレイにより構築されたコンビナトリアルペプチドライブラリーから選択することができる。これらの実験手順はバイオパニングとしても公知である。例えば、Reverdatto et al., 2015, Curr. Top. Med. Chem. 15:1082-1101を参照。
【0141】
4.2.3 アフィマー
アフィマーは、抗体に類似した特異性および親和性で標的分子に結合する小さい(12~14kDa)高度に安定なタンパク質である。これらのタンパク質は、アルファヘリックスが逆平行ベータシートの上に位置する共通の三次構造を共有する。アフィマータンパク質は、モノクローナル抗体と類似の様式において高親和性および特異性で所望の標的タンパク質に結合するように全て無作為化できる2つのペプチドループおよびN末端配列を提示する。タンパク質スキャフォールドによる2つのペプチドの安定化は、ペプチドが取ることができる可能なコンホメーションを制約し、遊離ペプチドのライブラリーと比較して結合親和性および特異性を増加させる。
【0142】
NLRTに特異的なアフィマーは、標的NLRTへの高特異性結合および高結合親和性(例えば、nM範囲)を有するアフィマータンパク質を同定するためにスクリーニングされるファージディスプレイライブラリーの使用により選択することができる。多くの異なる標識、タグおよび融合タンパク質、例えばフルオロフォアが、様々な応用において使用するためにアフィマータンパク質にコンジュゲートされている。例えば、米国特許第8,481,491号明細書、同第8,063,019号明細書、および国際公開第2009/136182号パンフレット(これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。Crawford et al., Brief Funct. Genomic Proteomic, 2:72-79, 2003も参照。
【0143】
4.2.4 ノッティン
「ノッティン」または「阻害因子シスチンノット」(inhibitor cystine knot)(ICK)は、3つのジスルフィド架橋を含有するタンパク質構造モチーフである。それらの間のポリペプチドのセクションと共に、2つのジスルフィドはループを形成し、該ループを第3のジスルフィド結合(配列中の3つ目および6つ目のシステインを連結する)が通過してノットを形成する。タンパク質操作を使用して新しい結合エピトープを天然ノッティン中に導入することができ、また、ノッティンは、広範な標的を標的化するために操作されている。NLRTに特異的なノッティンを製造する1つのアプローチは、酵母表面ディスプレイおよび蛍光活性化細胞選別を使用してノッティンライブラリーを作出およびスクリーニングすることである。標的NLRTに対して選択性および高親和性を有するノッティンの製造および本発明との関連において使用するためのそのようなノッティンの標識化に関する情報について、例えば、Kintzing and Cochran, Curr. Opin. Chem. Biol. 34:143-150, 2016;Moore et al., Drug Discovery Today: Technologies 9(1):e3-e11, 2012;およびMoore and Cochran, Meth. Enzymol. 503:223-51, 2012を参照。
【0144】
4.3 標識された親和性試薬
標識された親和性試薬は、様々な方法により鋳型核酸をシークエンシングするために使用することができる。それらはまた、当業者に明らかなように、シークエンシング以外の様々な応用において使用することができる。本発明の抗体および他の親和性試薬を標識する任意の方法を使用することができる。
【0145】
4.3.1 蛍光検出可能な標識
本明細書において記載される抗体、アプタマー、アフィマー、ノッティンおよび他の親和性試薬などの本発明の実施において使用される親和性試薬は、検出可能に標識され得る。例えば、本明細書において記載される親和性試薬は、蛍光色素またはフルオロフォアを用いて検出可能に標識され得る。「蛍光色素」はフルオロフォア(特定の波長の光エネルギーを吸収し、より長い波長において光を再放出する化学的化合物)を意味する。蛍光色素は、典型的に、約300nm~約1,000nmまたは少なくとも約5,000、より好ましくは少なくとも約10,000、最も好ましくは少なくとも約50,000cm-1 M-1の波長において最大モル消散係数、および少なくとも約0.05、好ましくは少なくとも約0.1、より好ましくは少なくとも約0.5、最も好ましくは約0.1~約1の量子収量を有する。
【0146】
以下の参考文献に例示されるように、親和性試薬に取り付けるための適切な検出可能な標識を選択するための文献において入手可能な多量の実施ガイダンスが存在する:Grimm et al., Prog. Mol. Biol. Transl. Sci. 113:1-34, 2013;Oushiki et al., Anal. Chem. 84:4404-4410, 2012;Medintz & Hildebrandt, editors, 2013, "FRET - Foerster Resonance Energy Transfer: from theory to applications," (John Wiley & Sons);など。文献はまた、蛍光分子のリスト、およびフルオロフォアまたはレポーター-消光剤ペアを選択するためのそれらの関連する光学的特性を提供する参考文献を含み、これには、例えば、Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (Molecular Probes, Eugene, 2005)などがある。さらに、Ullman et al.、米国特許第3,996,345号明細書;Khanna et al.、米国特許第4,351,760号明細書などにより例示されるように、RTまたはその部分に付加され得る一般的な反応性基を介して共有結合のためにレポーター分子を誘導体化するための大規模なガイダンスが文献中に存在する。上述の刊行物のそれぞれは、参照することによりその全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0147】
例示的な蛍光色素としては、アクリジン色素、シアニン色素、フルオロン色素、オキサジン色素、フェナントリジン色素、およびローダミン色素が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な蛍光色素としては、フルオレセイン、FITC、Texas Red、ROX、Cy3、Alexa Fluor色素(例えば、Alexa Fluor 647または488)、ATTO色素(例えば、ATTO 532または655)、およびCy5が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な蛍光色素は、2または4チャネルSBS化学およびワークフローにおいて使用されるか、またはこれらと適合性の色素をさらに含むことができる。
【0148】
例示的な標識分子は、フルオレセインなどのキサンテン色素、およびローダミン色素から選択されてもよい。親和性試薬への連結のための部位として使用できるフェニル部分上の置換基を有するこれらの化合物の多くの好適な形態が広く市販されている。蛍光化合物の別の群は、アルファ位またはベータ位においてアミノ基を有するナフチルアミンである。1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート、および2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホネートがそのようなナフチルアミノ化合物に含まれる。他の標識としては、3-フェニル-7-イソシアナトクマリン;アクリジン、例えば9-イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ;N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド;ベンゾオキサジアゾール;スチルベン;ピレンなどが挙げられる。
【0149】
一部の実施形態では、標識は、フルオレセインおよびローダミン色素から選択される。これらの色素および適切な連結方法論は、多くの参考文献、例えば、Khanna et al. (上掲);Marshall, Histochemical J., 7:299-303 (1975);Menchen et al.、米国特許第5,188,934号明細書、Menchen et al.、欧州特許出願第87310256.0号明細書;およびBergot et al.、国際出願PCT/US90/05565号に記載されている。親和性試薬またはヌクレオシドアナログのための検出可能な標識として使用することができるフルオロフォアとしては、ローダミン、シアニン3(Cy3)、シアニン5(Cy5)、フルオレセイン、Vic(商標)、Liz(商標)、Tamra(商標)、5-Fam(商標)、6-Fam(商標)、6-HEX、CAL Fluor Green 520、CAL Fluor Gold 540、CAL Fluor Orange 560、CAL Fluor Red 590、CAL Fluor Red 610、CAL Fluor Red 615、CAL Fluor Red 635、およびTexas Red(Molecular Probes)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0150】
標識の賢明な選択により、異なる標識が単一の反応液中で異なる波長において励起および/または検出される分析を実行することができる。例えば、Fluorescence Spectroscopy (Pesce et al., Eds.) Marcel Dekker, New York, (1971);White et al., Fluorescence Analysis: A Practical Approach, Marcel Dekker, New York, (1970);Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules, 2nd ed., Academic Press, New York, (1971);Griffiths, Colour and Constitution of Organic Molecules, Academic Press, New York, (1976);Indicators (Bishop, Ed.). Pergamon Press, Oxford, 1972;およびHaugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Eugene (2005)を参照。
【0151】
4.3.2 酵素標識された親和性試薬
1つのアプローチでは、親和性試薬(例えば、抗体またはアフィマー)は酵素標識され、かつ基質の存在下で、プライマー伸長産物に結合した親和性試薬と会合された酵素は、検出可能なシグナルを生じさせる。非限定的に例えば、酵素としては、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。1つのアプローチでは、酵素はペルオキシダーゼである。1つのアプローチでは、親和性試薬(例えば、抗体またはアフィマー)は、直接的に酵素標識される。1つのアプローチでは、例えば、抗体または他の親和性試薬は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどのホスファターゼを使用して標識される(Beyzavi et al., Annals Clin Biochem 24:145-152, 1987)。1つのアプローチでは、親和性試薬は、ルシフェラーゼまたは化学発光シグナルを生じさせるために使用できる他のタンパク質に連結される(またはそれとの融合タンパク質の部分である)。別のアプローチでは、親和性試薬は、プロトンが例えばイオン半導体シークエンシング(例えば、Ion Torrent Sequencers;Life Technologies Corporation、Grand Island、NY)により検出され得るpH変化などの、非光学的シグナルを生じさせるために選択される酵素系に連結/融合され得る。酵素標識された親和性試薬の使用は、シグナル増幅の結果としてもたらされる高い感度およびシークエンシング方法を様々な機器に適合させることができる能力などのある特定の利点を有する。酵素レポーター系は、Rashidian et al., Bioconjugate Chem. 24:1277-1294, 2013において総説されている。
【0152】
4.3.3 抗体融合親和性試薬
加えて、組換え抗体断片、例えば単鎖Fv断片(scFv)をレポータータンパク質と直接的に連結させる融合(Skerra and Plueckthun, Science 240:1038-1041, 1988;Bird et al., Science 242:423-426, 1988;Huston et al., Methods Enzymol 203:46-88, 1991;Ahmad et al., Clin. Dev. Immunol. 2012:1, 2012)が使用されてもよい。例えば、生物発光特性を有する発光タンパク質、例えばルシフェラーゼおよびエクオリンを例えば抗体断片、エピトープペプチドおよびストレプトアビジンとの融合タンパク質におけるレポータータンパク質として使用することができる(Oyama et al., Anal Chem 87:12387-12395, 2015;Wang et al., Anal Chim Acta 435:255-263, 2001;Desai et al., Anal Biochem 294:132-140, 2001;Inouye et al., Biosci Biotechnol Biochem 75:568-571, 2011)。
【0153】
4.4 間接的および直接的検出方法
親和性試薬は直接的に標識されてもよく(例えば、例えばフルオロフォアへの共有結合を介した、標識へのコンジュゲーションによる)、または、例えば、3’NLRTを有する伸長したプライマーに直接的に結合した一次親和性試薬に結合する標識された二次親和性試薬の結合により、間接的に標識されてもよい。非標識の一次親和性試薬は標的ヌクレオチドに結合し、標識された二次親和性試薬(例えば、抗体、アプタマー、アフィマーまたはノッティン)は一次親和性試薬に結合する。一部のアプローチでは、一次および/または二次親和性試薬は抗体である。例えば、1つのアプローチでは、親和性試薬は「一次」抗体(例えば、ウサギ抗NLRT-C抗体)であり、かつ、二次結合剤は、標識された抗一次抗体(例えば、色素標識ヤギ抗ウサギ抗体)である。一部のアプローチでは、二次親和性試薬の使用は、有利なシグナル増幅を提供する。
【0154】
間接的な検出の場合、アッセイは2つの別個の部分を含む:先ず、非標識の一次抗体とのインキュベーションの期間(通常、1時間)があり、その間に抗体は抗原に結合する(当然、抗原が存在すると仮定している)。次に、過剰な未結合の一次抗体は洗浄除去され、標識された二次試薬が加えられる。インキュベーションの期間(再び1時間)の後、過剰な二次試薬は洗浄除去され、一次抗体と会合(すなわち、二次試薬を介して間接的に)した標識の量が定量化される。抗原が存在する場合、標識は、通常、有色物質の産生またはある特定の波長において放出される光の量の増加を結果としてもたらす。抗原の非存在下では、一次抗体の結合も二次試薬の結合もなく、したがってシグナルはない。直接的な検出を用いる場合、一次抗体への標識の事前の共有結合は、抗原との単一のインキュベーション工程のみが必要とされ、間接的な検出を用いる場合の2ラウンドのインキュベーションおよび洗浄工程とは対照的に、単一ラウンドの洗浄工程のみであることを意味する。
【0155】
4.4.1 二次抗体の特異性
一次および二次抗体は、複数の抗原を区別するために選択されてもよい(例えば、RT-A、RT-C、RT-GおよびRT-Tを互いから区別するため)。非標識の一次抗体(典型的に、モノクローナル抗体または操作された抗体)は異なるアイソタイプを有してもよく、かつ/または異なる種に特徴的な配列を有してもよい(例えば、異なる動物において産生されたポリクローナル抗体もしくは対応するモノクローナル抗体または他の親和性試薬)。そのような場合、各抗原のための標識された二次(すなわち、抗一次)抗体は、適切なアイソタイプまたは種の配列に特異的である。例えば、アイソタイプIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3の一次抗体をアイソタイプ特異的な二次抗体と共に使用することができる。
【0156】
4.4.2 予め組み合わせられた一次および二次抗体
一次および二次抗体または他の剤は、シークエンシングアレイに逐次的に、同時に加えられてもよく、二次抗体が一次抗体に結合する条件下で予め組み合わせられて、複合体としてアレイに加えられてもよい。
図2および実施例7を参照。
【0157】
4.5 1、2、3、または4色シークエンシング
本発明の方法を使用するシークエンシングは、2、3、または4色シークエンシングであってもよい。1つのアプローチでは、(4色シークエンシングの)各親和性試薬は、異なる検出可能な標識(例えば、蛍光色素)または特有のシグナルを生じさせる標識の組合せを用いて直接的または間接的に標識される。単一の抗原が2つまたはそれより多くの色素(または他の標識)を用いて認識される場合、その必要はないが、色素または他の標識の両方(または全て)を用いて単一の親和性試薬分子を標識できることが理解されるであろう。むしろ、単一の抗原に特異的な親和性試薬分子の部分(例えば、50%)を1つの色素を用いて標識することができ、かつ、単一の抗原に特異的な親和性試薬分子の別の部分(例えば、50%)を他の色素を用いて標識することができる。
【0158】
1つのそのような方法によれば、表面上の位置に配された一本鎖核酸鋳型を含むアレイが提供される。伸長によるシークエンシング、またはSBSは、複数のシークエンシングサイクルにおいて核酸鋳型中の検出位置におけるヌクレオチドの素性を決定するために以下により行われる:(i)非標識の相補的ヌクレオチド(NLRT)を検出位置におけるヌクレオチドに結合させ(または組込み)、(ii)そのようなNLRTに特異的に結合する直接的または間接的に標識された親和性試薬をNLRTに結合させることによりNLRTを標識し;(iii)検出位置における相補的なNLRTと関連付けられるシグナルの存在または非存在を検出し、該シグナルは標識の結果としてもたらされるものであり(例えば、蛍光シグナル);(1)検出位置において第1のシグナルを検出しかつ第2のシグナルを検出しないことは、NLRT-A、NLRT-T、NLRT-GおよびNLRT-Cから選択される相補的なNLRTを同定し;(2)検出位置において第2のシグナルを検出しかつ第1のシグナルを検出しないことは、(1)において選択されたNLRTとは異なるNLRT-A、NLRT-T、NLRT-GまたはNLRT-Cから選択されるNLRTとして相補的なNLRTを同定し;(3)検出位置において第1のシグナルおよび第2のシグナルの両方を検出することは、(1)および(2)において選択されたヌクレオチドとは異なるNLRT-A、NLRT-T、NLRT-GおよびNLRT-Cから選択されるNLRTとして相補的なNLRTを同定し;かつ(4)該位置において第1のシグナルおよび第2のシグナルのいずれも検出しないことは、(1)、(2)および(3)において選択されたヌクレオチドとは異なるNLRT-A、NLRT-T、NLRT-GおよびNLRT-Cから選択されるNLRTとして相補的なNLRTを同定し;かつ(iii)相補的なNLRTの素性に基づいて核酸鋳型中の検出位置におけるヌクレオチドの素性を推定する。
【0159】
別のそのような方法は、複数の核酸鋳型を提供することであって、各核酸鋳型が、プライマー結合部位、およびプライマー結合部位に隣接して、標的核酸配列を含む、提供すること;プライマーをプライマー結合部位にハイブリダイズさせ、かつNLRTのセットおよび対応する親和性試薬のセットを使用してシークエンシングバイシンセシスの1つまたは複数のサイクルにおいて1サイクル当たり1ヌクレオチドだけ個々のプライマーを伸長させることにより複数の異なる核酸鋳型に対してシークエンシング反応を行うことであって、NLRTのセットおよび対応する親和性試薬のセットは、例えば:(i)第1のNLRTおよび第1のNLRTに特異的に結合しかつ第1の標識を含む第1の親和性試薬;(ii)第2のNLRTおよび第2のNLRTに特異的に結合しかつ第2の標識を含む第2の親和性試薬;(iii)第3のNLRTおよび第3のNLRTに特異的に結合しかつ第1の標識および第2の標識の両方を含む第3の親和性試薬;および(iv)第4のNLRTおよび第4のNLRTに特異的に結合しかつ第1の標識および第2の標識のいずれも含まない第4の親和性試薬であり、第1の標識および第2の標識は互いから区別可能である、シークエンシング反応を行うこと;およびシークエンシングバイシンセシスの各サイクルにおいて、第1の標識の存在または非存在および第2の標識の存在または非存在を検出することにより検出位置におけるNLTRの素性を決定して標的核酸配列を決定することを含む。以上の方法の代替は、第3のNLRTに特異的に結合する第3の親和性試薬の混合物であって、その一部が第1の標識を含みかつその一部が第2の標識を含む、混合物(例えば、等量混合物)を使用することである。
【0160】
1色シークエンシング方法では、親和性試薬は、区別可能な強度において存在する検出可能な標識を含む。例えば、1つのそのような実施形態によれば、そのような方法は以下を含む:そのような方法は、複数の核酸鋳型を提供することであって、各核酸鋳型が、プライマー結合部位、およびプライマー結合部位に隣接して、標的核酸配列を含む、提供すること;プライマーをプライマー結合部位にハイブリダイズさせ、かつNLRTのセットおよび対応する親和性試薬のセットを使用してシークエンシングバイシンセシスの1つまたは複数のサイクルにおいて1サイクル当たり1ヌクレオチドだけ個々のプライマーを伸長させることにより複数の異なる核酸鋳型に対してシークエンシング反応を行うことであって、NLRTのセットおよび対応する親和性試薬のセットは、例えば:(i)第1のNLRTおよび第1のNLRTに特異的に結合しかつ第1の強度において標識を含む第1の親和性試薬;(ii)第2のNLRTおよび第2のNLRTに特異的に結合しかつ第2の強度において標識を含む第2の親和性試薬;(iii)第3のNLRTおよび第3のNLRTに特異的に結合しかつ第3の強度において標識を含む第3の親和性試薬;および(iv)第4のNLRTおよび第4のNLRTに特異的に結合しかつ非標識である第4の親和性試薬(または、代替的に、親和性試薬のセットは、第1、第2および第3の親和性試薬のみを含み、第4のNLRTに結合する第4の親和性試薬を含まない)、シークエンシング反応を行うこと;および各サイクルのシークエンシングバイシンセシスにおいて、標識の存在および強度(または非存在)を検出することにより検出位置におけるNLTRの素性を決定して標的核酸配列を決定することを含む。
【0161】
別のアプローチでは、1つまたは同じ数の単一の色素の分子を用いて標識されているが、異なる結合効率[すなわち、アレイ上の単一のスポットに結合した親和性試薬の平均数、例えば、NLRT-Aについて標的DNA分子の全てのコピーの10%、NLRT-Tについて30%、およびNLRT-Cについて60%(およびNLRT-Gについて0パーセントまたは検出可能な結合がほとんどない)]の結果として4つのNLRTを識別する親和性の親和性試薬が使用される。1つのアプローチでは、標的は同じブロッキング基を有し、かつ、それらの標的に対して異なる親和性を有する親和性試薬が選択される。別の1つのアプローチでは、ブロッキング基は、同じ親和性試薬の結合の効率を調整して、シグナルの塩基特異的レベルを生成するように小さい化学的変化を用いて修飾されてもよい。例えば、非修飾のブロッキング基は最も高いシグナル(100%のシグナル)を生じさせてもよく、修飾1を有するブロッキング基はより低いレベルのシグナル(例えば、50%)を生じさせてもよく、修飾2を有するブロッキング基はいっそう低い(25%)さらにより低いシグナルを生じさせるなどであってもよい。
【0162】
関連するアプローチでは、2つの異なるブロッキング基(アジドメチルおよびシアノエトキシメチル)およびそれぞれの1つの化学的変異体(アジドメチル-プライムおよびシアノエトキシメチル-プライム)ならびに2つの抗体の使用を2色シークエンシング(2色×2強度)のために使用することができる。説明のために、
アジドメチル-dA 親和性剤1、色1、低い強度(0~40%)
アジドメチル-プライム-dC 親和性剤1、色1、高い強度(60~100%)
シアノエトキシメチル-dG 親和性剤2、色2、低い強度(0~40%)
シアノエトキシメチル-プライム-dT 親和性剤2、色2、高い強度(60~100%)
【0163】
一実施形態では、親和性剤1、色1、低い強度は0に近いシグナル強度を有し、かつ、親和性剤2、色2、低い強度は、より高いシグナル強度(25~40%)を有する。
【0164】
関連するアプローチの実施形態では、ヌクレオチドの単一の種がヌクレオチドの混合物として使用され、該混合物の部分が1つのブロッキング基を用いて標識されかつ残りの部分が他のブロッキング基を用いて標識される、2色シークエンシングを実行することができる。説明のために:
アジドメチル-dA ブロッキング基1
シアノエトキシメチル-dG ブロッキング基2
アジドメチル-プライム-dC ブロッキング基1を有する70%のヌクレオチドとブロッキング基2を有する30%のヌクレオチドとの混合物
シアノエトキシメチル-プライム-dT ブロッキング基1を有する30%のヌクレオチドとブロッキング基2を有する70%のヌクレオチドとの混合物
【0165】
別のアプローチでは、1つの親和性試薬のみが使用される。区別可能なレベルのシグナルを生成するために、親和性試薬により認識される異なる割合のブロッキング基を有するヌクレオチド混合物が使用される。混合物中のヌクレオチドの残余は、対応する親和性試薬を有しないブロッキング基を有する。説明のために:
dA 0%のブロッキング基1、100%のブロッキング基2
dG 25%のブロッキング基1、75%のブロッキング基2
dC 50%のブロッキング基1、50%のブロッキング基2
dT 100%のブロッキング基1、0%のブロッキング基2
【0166】
別の実施形態では、抗体は、下流の塩基が切断可能または切断不可能な基の付加により修飾されている2つの塩基(ヌクレオチドダイマー)を認識してもよい。
【0167】
別の実施形態では、最後に組み込まれた塩基は、2つの親和性試薬の組合せの結合により同定され、1つの親和性試薬は核酸塩基を特異的に認識して結合し、かつ、第2の親和性試薬はブロッキング基を特異的に認識して結合する。2つの親和性試薬がそれらの各々の「標識」としてFRETドナー-アクセプターペアを含む場合など、両方の親和性試薬が結合しているかつ/または空間的に近接している場合にのみ、末端塩基の素性の決定を行うことができる。あるいは、1つの親和性試薬の結合がコンホメーションの変化をもたらし、それが第2の親和性試薬の結合を可能としまたは増進させてもよい。
【0168】
本明細書において記載されるヌクレオシドアナログは、様々なシークエンシング方法において使用することができる。例えば、アナログは、1標識(「標識なし」と呼ばれることもある)、2標識、3標識、または4標識シークエンシング方法において使用することができ、該方法では、非標識のアナログは、1、2、3、または4標識スキームに従って直接的または間接的に標識された親和性試薬と対形成する。
【0169】
例示的な1標識シークエンシング方法としては、異なる核酸塩基(例えば、A、C、G、T)を有するヌクレオシドアナログが連続して送り込まれ、各異なる核酸塩基について同じシグナルまたは標識の存在または非存在を検出することにより組込みが検出される方法が挙げられるがこれに限定されない。したがって、1標識法は1色法として知られることもあり、その理由は、検出シグナルおよび/または標識が、各ヌクレオシドアナログについて異なる強度(または存在しない)であり得るとはいえ、全ての核酸塩基について同じであるからである。例えば、DNAポリメラーゼ媒介性の鋳型により導かれる重合によるプライマーへのヌクレオシドの組込みは、ヌクレオシドピロリン酸から切断されたピロリン酸を検出することにより検出され得る。ピロリン酸は、ATPスルフリラーゼがアデノシン5’ホスホ硫酸の存在下でピロリン酸をATPに変換し、そしてそれがルシフェリンのオキシルシフェリンへのルシフェラーゼ媒介性の変換のための基質として作用してATP生成に比例した量で可視光を生成する連結アッセイを使用して検出され得る。
【0170】
別の実施形態によれば、本明細書において記載されるRTおよび親和性試薬を使用し、2つの区別可能なシグナルを組合せの様式で使用して4つの異なるRTの組込みを検出する2標識、または2色シークエンシングを行うことができる。例示的な2標識の系、方法、および組成物としては、米国特許第8,617,811号明細書に記載されているものが挙げられるがこれに限定されず、該文献の内容は、全ての目的のため、特に2標識シークエンシングに関する開示のためにその全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。簡潔に述べれば、2標識シークエンシングでは、第1の標識を含む第1の親和性試薬の特異的結合により新たに組み込まれたRTを標識した後、第1の標識の存在を検出することにより第1のRT(例えば、RT-A)の組込みが検出される。第2の標識を含む第2の親和性試薬の特異的結合により第2のRTを標識した後、第2の標識の存在を検出することにより第2のRT(例えば、RT-C)の組込みが検出される。第1の標識および第2の標識の両方を含む第3の親和性試薬の特異的結合により第3のRTを標識した後、第1の標識および第2の標識の両方の存在を検出することにより第3のRT(例えば、RT-T)の組込みが検出され;第1の標識および第2の標識の両方の非存在を検出することにより第4のRT(例えば、RT-G)の組込みが検出され、これは、非標識である第4の親和性試薬の結合の結果としてもたらされるのか、それとも使用される親和性試薬セット中に第4の親和性試薬が含まれないという事実の結果としてもたらされるのかによらない。2色シークエンシングでは、第1の標識は第2の標識から区別可能であり、かつ、第1および第2の標識の組合せは、単独での第1および第2の標識から区別することができる。
【0171】
別の実施形態によれば、第1の標識を含む第1の親和性試薬の特異的結合により標識された第1のRT、第2の標識を含む第2の親和性試薬の特異的結合により標識された第2のRT、第3の標識を含む第3の親和性試薬の特異的結合により標識された第3のRTを使用して3標識シークエンシングを行うことができる。第4のRTについて、対応する親和性試薬は、親和性試薬セットから割愛され、または非標識であり、または第1、第2、および第3の標識の2つもしくはそれより多くの組合せ(または標識の異なる1つを用いて標識されかつ第4のRTに特異的に結合する親和性試薬の混合物)を含む。第1、第2および第3の標識は、互いから区別可能である。
【0172】
同様に、4標識シークエンシングは、第1の標識を含む第1の親和性試薬の特異的結合により標識された第1のNLRT、第2の標識を含む第2の親和性試薬の特異的結合により標識された第2のNLRT、第3の標識を含む第3の親和性試薬の特異的結合により標識された第3のNLRT、および第4の標識を含む第4の親和性試薬の特異的結合により標識された第4のNLRTを用いることができる。ここでもまた、第1、第2、第3および第4の標識は、互いから区別可能である。
【0173】
4.6 組合せで使用される親和性試薬
単一のNLRTの異なるエピトープを認識する親和性試薬は、組合せで使用されてもよい。例えば、組み込まれたNLRTの核酸塩基部分を認識する第1の親和性試薬は、ブロッキング基を認識する第2の親和性試薬と共に使用されてもよい。染色は、同時または逐次的に行われてもよい。逐次的な染色では、第2の親和性試薬は、第1の親和性試薬がNLRTに結合したままである間に適用されてもよく、または再プロービング(以下に論じる)の場合には第1の親和性試薬の除去後に適用されてもよい。
【0174】
4.7 親和性試薬セット
SBSにおいて使用されるRTを標識するために「親和性試薬セット」が使用される。例えば、一実施形態では、4つのRT(RT-A、RT-T、RT-CおよびRT-G)を含むRTセットのために、それぞれがRTの1つを特異的に認識してそれに結合する4つの親和性試薬の対応する親和性試薬セットがあってもよい(抗A、抗T、抗Cおよび抗G)。親和性試薬セットは、(i)混合物としてまたは別々の容器中の、キットの形態で提供されることができ、かつ/または(ii)シークエンシングアレイと接触させまたは組み合わせることができる(例えば、シークエンシングフローセル内において)、親和性試薬の組合せを記載する。
【0175】
一実施形態によれば、親和性試薬セットの各メンバーは、4色SBSにおけるように、異なる区別可能な検出可能な標識を有する。
【0176】
別の実施形態によれば、親和性試薬セットの1つのメンバーは非標識であり、かつ他のメンバーは標識されている。あるいは、親和性試薬セットは、非標識の親和性試薬を単に除外して、標識された親和性試薬のみを含んでもよい。
【0177】
例えば、一実施形態によれば、1つの親和性試薬は第1の標識(例えば、抗A)を用いて標識され;第2の親和性試薬は第2の標識(例えば、抗T)を用いて標識され;第3の親和性試薬は第3の標識(例えば、抗C)を用いて標識され;かつ第4の親和性試薬は非標識であるか、または単に親和性試薬セットから除外される(例えば、抗G)。そのような親和性試薬セットは、3色シークエンシングのために有用である。
【0178】
別の実施形態によれば、1つの親和性試薬(例えば、抗A)は第1の標識を用いて標識され;第2の親和性試薬(例えば、抗T)は第2の標識を用いて標識され;第3の親和性試薬(例えば、抗C)は第1の標識および第2の標識の両方を用いて標識され;かつ第4の親和性試薬(例えば、抗G)は非標識である(または親和性試薬セットから除外される)。あるいは、第3の親和性試薬は、親和性試薬分子の混合物を含んでもよく、それらの全ては特定の塩基に特異的に結合するが(例えば、全てが抗C)、一部は第1の標識を含みかつ一部は第2の標識を含む。そのような親和性試薬セットは、2色シークエンシングのために有用である。
【0179】
別の実施形態によれば、単一の検出可能な標識のみが使用されるが(または2つまたはそれより多くの標識の単一の組合せ)、親和性試薬が異なる量の標識(または、2つもしくはそれより多くの標識の組合せの少なくとも1つの標識)を含む場合など、セットのメンバー間で強度が異なる。例えば、一実施形態では、第1の親和性試薬(例えば、抗A)は第1の強度において標識を用いて標識され;第2の親和性試薬(例えば、抗T)は第2の強度において同じ標識を用いて標識され;第3の親和性試薬(例えば、抗C)は同じ標識を用いるが第3の強度において標識され;かつ第4の親和性試薬(例えば、抗G)は非標識である(または第4の親和性試薬は親和性試薬セットから除外される)。別の実施形態では、第1の親和性試薬(例えば、抗A)は第1の標識を第1の強度においておよび第2の標識を用いて標識され;第2の親和性試薬(例えば、抗T)は同じ第1の標識を用いるが第2の強度においておよび同じ第2の標識を用いて標識され;第3の親和性試薬(例えば、抗C)は同じ第1の標識を用いるが第3の強度においておよび同じ第2の標識を用いて標識され;かつ第4の親和性試薬(例えば、抗G)は非標識であるか、第2の標識のみを用いて標識されるか、または親和性試薬セットから除外される。
【0180】
4.8 反応混合物
ヌクレオシドアナログ(例えば、NLRT)およびそのようなヌクレオシドアナログまたはその反応生成物を含有するオリゴまたはポリヌクレオチドは、反応混合物の成分として使用することができる。例えば、そのような成分は、核酸シークエンシング(例えば、SBS)のための反応混合物中で使用することができる。例示的な反応混合物としては、(a)鋳型核酸;(b)ポリメラーゼ;(c)オリゴヌクレオチドプライマー;(d)3’-Oリバーシブルブロックヌクレオシドアナログ、または構造的に異なる核酸塩基を有する3’-Oリバーシブルブロックヌクレオシドアナログの混合物;および(e)標識された親和性試薬を含有するものが挙げられるがこれに限定されない。本発明の例示的なシークエンシング反応混合物は、アレイ上の異なる位置において固定化された複数の異なる鋳型核酸を含むアレイ;(b)ポリメラーゼ;(c)オリゴヌクレオチドプライマー;(d)およびNLRTの1つまたは混合物を含むがこれらに限定されない。本発明の例示的なシークエンシング反応混合物は、アレイ上の異なる位置において固定化された複数の異なる鋳型核酸を含むアレイ;(b)伸長中のDNA鎖(GDS)(3’NLRTを含んでもよい;および(c)1つまたは複数の親和性試薬(例えば、本明細書において上記される親和性試薬セット)を含むがこれらに限定されない。
【0181】
5.鋳型核酸および核酸アレイ
様々な実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、DNA(例えば、cDNA、ゲノムDNA、トランスクリプトームまたはマイクロバイオームDNA、増幅産物など)またはRNAである。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは二本鎖または一本鎖のいずれかである。
【0182】
一部の実施形態では、鋳型核酸は、固体表面上に固定化される。一部の実施形態では、鋳型核酸は、基体(例えば、ビーズ、フローセル、パッド、マイクロ流体デバイス中のチャネルなど)上に固定化される。基体は、シリコン、ガラス、金、ポリマー、PDMSなどを含んでもよい。
【0183】
一部の実施形態では、鋳型核酸は、小滴内に固定化または含有される(小滴内のビーズまたは他の基体上に固定化されてもよい)。
【0184】
一部の実施形態では、鋳型核酸は、複数コピーの標的配列を含む固定化されたDNAコンカテマーである。一部の実施形態では、鋳型核酸は、複数コピーの標的配列および「アダプター配列」を含むDNAナノボール(DNB)などの、DNAコンカテマーとして現れる。PCT特許公開第2007/133831号(その内容は参照することによりその全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる)を参照。一部の実施形態では、鋳型は単一のポリヌクレオチド分子である。一部の実施形態では、鋳型は、鋳型分子のクローン集団(例えば、ブリッジ増幅またはWildfire増幅により製造されたクローン集団)として存在する。
【0185】
方法は、鋳型の特定の形態に限定されないこと、および、鋳型は、例えば、DNAコンカテマー、デンドリマー、鋳型のクローン集団(例えば、ブリッジ増幅またはWildfire増幅により製造されたものなど)または単一のポリヌクレオチド分子などの、任意の鋳型であり得ることが理解されるであろう。したがって、鋳型への各言及は、コンカテマー鋳型、デンドリマー、例えば短い線状鋳型のクローン集団、単一の分子鋳型(例えば、0モードウェーブガイドにおいて)、および他の形態の鋳型を代替的に指すことができるものとして本明細書は読まれるべきである。
【0186】
DNB、クラスター、ポロニー(polonys)、およびアレイまたはこれらの群などの好適な鋳型核酸は、米国特許第8,440,397号明細書;同第8,445,194号明細書;同第8,133,719号明細書;同第8,445,196号明細書;同第8,445,197号明細書;同第7,709,197号明細書;同第12/335,168号明細書、同第7,901,891号明細書;同第7,960,104号明細書;同第7,910,354号明細書;同第7,910,302号明細書;同第8,105,771号明細書;同第7,910,304号明細書;同第7,906,285号明細書;同第8,278,039号明細書;同第7,901,890号明細書;同第7,897,344号明細書;同第8,298,768号明細書;同第8,415,099号明細書;同第8,671,811号明細書;同第7,115,400号明細書;同第8,236,499号明細書、ならびに米国特許出願公開第2015/0353926号明細書;同第2010/0311602号明細書;同第2014/0228223号明細書;および同第2013/0338008号明細書(これらの全ては参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)においてさらに記載されている。
【0187】
一態様では、本発明は、DNAアレイを提供し、該DNAアレイは、各DNA分子がアレイの位置において取り付けられている複数の鋳型DNA分子、複数の該位置において鋳型DNA分子の部分と塩基対を形成した相補的DNA配列であって、その3’末端において、組み込まれた第1のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドを含む、相補的DNA配列;および第1のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの少なくとも一部に特異的に結合した第1の親和性試薬を含む。1つのアプローチでは、DNAアレイは、A、T、GもしくはC核酸塩基またはこれらのアナログを含む3’末端ヌクレオチドを有するプライマー伸長産物、およびプライマー伸長産物に結合した親和性試薬を含む。
【0188】
6.キット
本発明を実施するためにキットが提供されてもよい。上記の通り、NLRTおよびNLRTセットはキットの形態で提供されてもよい。これも上記される通り、親和性試薬および親和性試薬セットはキットの形態で提供されてもよい。NLRTおよびNLRTセットならびに親和性試薬または親和性試薬セットの両方を含むキットも想定される。例えば、本発明は、(a)1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの異なる個々のRTを含むリバーシブルターミネーターヌクレオチド(RT)またはRTセット;(b)1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの親和性試薬を含み、これらのそれぞれがRTの1つに特異的である、対応する親和性試薬または親和性試薬セット;および(c)パッケージング材料およびまたは使用のための説明書を非限定的に含むキットを提供する。
【0189】
別の実施形態によれば、そのようなキットは、各RTが異なる核酸塩基を含む複数のRT、および各親和性試薬がRTの1つに特異的に結合する複数の親和性試薬を含む。
【0190】
一例では、本発明は、(a)プライマー伸長産物に組み込まれ得る本明細書において記載されるリバーシブルターミネーターヌクレオチド;(b)プライマー伸長産物の3’端において組み込まれたときにリバーシブルターミネーターヌクレオチドに特異的に結合する第1の親和性試薬;ならびに(c)(a)および(b)のためのパッケージングを含むキットを提供する。1つのアプローチでは、キットは、各リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドが異なる核酸塩基を含む複数のリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチド、および各第1の親和性試薬がリバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドの異なる1つに特異的に結合する複数の第1の親和性試薬を含有する。一部の実施形態では、第1の親和性試薬は、検出可能に標識され、かつ互いから区別され得る。一部の実施形態では、キットは二次親和性試薬を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2の親和性試薬は抗体である。
【0191】
一例では、リバーシブルターミネーターデオキシリボヌクレオチドは、式I:
【化13】
(式中、R
1は3’-Oリバーシブルブロッキング基であり;R
2は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびこれらのアナログから選択される核酸塩基であり;かつR
3は1つまたは複数のホスフェートを含む)の構造を有する。
【0192】
7.応用
上記したSBSへの応用に加えて、本明細書において記載される新規の親和性試薬、NLRT、キットおよび方法は、天然にまたは実験的に断片化されたDNAの末端(またはDNAギャップ中)にあるものの検出;特定の修飾を有するかまたは有しない特定の末端塩基(分子の末端または鎖のギャップ内の末端)を有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの捕捉などの、多くの他の応用において使用されてもよい。5’または3’末端/ギャップ塩基の両方が検出され得る。親和性試薬は、ライゲーション、ハイブリダイゼーション、および他の検出のために使用されてもよい。
【0193】
本発明の方法は直接的なRNAシークエンシングのためにも使用されてよいことが理解されるであろう。
【0194】
8.方法
8.1 ブロッキング基の除去、親和性試薬の除去、および検出
ブロッキング基および親和性試薬の除去は同時に起こることができる。1つのアプローチでは、アレイは、ブロッキング基および親和性試薬が同時に除去される条件に曝露される。1つでは、アレイは、剤の組合せを含む溶液と接触させられ、該組合せの一部は、ブロッキング基を切断する剤と組み合わせて親和性試薬の除去を結果としてもたらす(例えば、高塩、小分子競合物、プロテアーゼなど)。
【0195】
一部の場合には、3’ブロッキング基の除去は、親和性試薬の除去を結果としてもたらす。特定の機序により縛られることを意図しないが、これらの場合、ブロッキング部分の除去は、抗体または他の親和性試薬の結合のために必要とされるエピトープを破壊すると考えられる。
【0196】
異なるアプローチでは、親和性試薬およびブロッキング基の除去は連結されず、それにより、親和性試薬は除去されるがブロッキング基はヌクレオチド糖から切断されない。これは、再プロービングが所望される場合に有用である。
図2、以下のセクション9、および実施例11を参照。
【0197】
親和性試薬および/またはブロッキング基の除去のための除去条件のための条件は、シークエンシングされているDNAの完全性を保つように選択されることが理解されるであろう。
【0198】
8.1.1 ブロッキング基の除去
ヌクレオシドアナログまたはNLRTとしては、3’-Oリバースブロックされたものが挙げられる。一部の態様では、ブロッキング基は、プライマーの3’末端において単一の3’-OリバースブロックNLRT、例えば、先行するシークエンシングサイクルにおいて伸長されたGDSの制御された組込みを提供する。
【0199】
一般に、NLRTが使用される各シークエンシングサイクルにおいて、ブロッキング基は除去され、かつ親和性試薬はNLRTから解離される。これらの工程は、並行して行われ(carried our)てもよい。例えば、アジドメチルブロッキング基は、ホスフィンを用いた処理(広く使用される方法)により除去することができ、抗体親和性試薬は、低pH(例えば、100mMのグリシン、pH2.8)もしくは高pH(例えば、100mMのグリシン、pH10)、高塩、またはカオトロピックストリッピング緩衝液を用いた処理により除去することができる。一実施形態では、NLRTおよび親和性試薬の両方を除去するために単一の処理または条件を使用することができる(例えば、高塩緩衝液中のホスフィン)。一部の実施形態では、ブロッキング基の除去は、例えば、ブロッキング基が親和性試薬の結合のために必要とされる場合、親和性試薬の解離を結果としてもたらす。
【0200】
3’-Oリバーシブルブロッキング基は、酵素切断または化学分解(例えば、加水分解)により除去することができる。除去のための条件は、本明細書において提供される説明、切断されるブロッキング基の化学的素性、および当該技術分野において公知の核酸化学の原則に基づいて当業者により選択され得る。一部の実施形態では、ブロッキング基は、リバーシブルブロックヌクレオシドを、ジチオトレイトール(DTT)などの還元剤、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)、もしくはトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィンなどのホスフィン試薬と接触させることにより除去される。一部の場合には、ブロッキング基は、ホスフィン試薬などの還元剤を使用して組み込まれたヌクレオチドアナログからブロッキング基を洗浄することにより除去される。一部の場合には、ブロッキング基は光解離性であり、ブロッキング基は、例えばUV光の適用により除去することができる。一部の場合には、ブロッキング基は、ヌクレオシドアナログを、例えばパラジウム(Pd)水溶液を使用する、遷移金属触媒反応液と接触させることにより除去することができる。一部の場合には、ブロッキング基は、ヌクレオシドアナログを水性亜硝酸塩溶液と接触させることにより除去することができる。さらに、またはあるいは、ブロッキング基は、組み込まれたヌクレオチドアナログを含有する溶液または混合物のpHを変化させることにより除去することができる。例えば、一部の場合には、ブロッキング基は、ヌクレオシドアナログを酸または低pH(例えば、4未満)の緩衝水溶液と接触させることにより除去することができる。別の例として、一部の場合には、ブロッキング基は、ヌクレオシドアナログを塩基または高pH(例えば、10より高い)の緩衝水溶液と接触させることにより除去することができる。
【0201】
ホスフィンなどの還元剤により切断され得る3’-Oリバーシブルブロッキング基としては、アジドメチルが挙げられるがこれに限定されない。UV光により切断され得る3’-Oリバーシブルブロッキング基としては、ニトロベンジルが挙げられるがこれに限定されない。Pd水溶液と接触させることにより切断され得る3’-Oリバーシブルブロッキング基としては、アリルが挙げられるがこれに限定されない。酸を用いて切断され得る3’-Oリバーシブルブロッキング基としては、メトキシメチルが挙げられるがこれに限定されない。亜硝酸ナトリウムの水性緩衝化(pH5.5)溶液と接触させることにより切断され得る3’-Oリバーシブルブロッキング基としては、アミノアルコキシルが挙げられるがこれに限定されない。
【0202】
8.1.2 親和性試薬の除去
抗体ベースの親和性試薬は、低pH、高pH、高もしくは低塩、またはカオトロピックストリッピング緩衝液などの変性剤により除去することができる。親和性試薬の他のクラス(例えば、アプタマー)は、当該技術分野において公知の任意の手段により除去することができる。加えて、抗体などの親和性試薬は、例えば以下の実施例10に示されるように、親和性試薬の結合について結合したエピトープと競合する剤を導入することにより除去することができる。
【0203】
加えて、親和性試薬はまた、組み込まれたNLRTに結合する剤の能力を破壊することにより除去されてもよい。典型的に、これは、組み込まれたヌクレオチドアナログから3’ブロッキング基が切断されるときに行われる。親和性試薬の結合がブロッキング基の存在に依存する場合(例えば、1O抗体により認識されるエピトープがブロッキング基またはその部分を含む場合)、ブロッキング基の除去は、親和性試薬の解放も結果としてもたらす。
【0204】
親和性試薬およびブロッキング基の同時の除去はまた、ブロッキング基切断成分(例えば、ホスフィン試薬)および親和性試薬解放剤(例えば、高塩)を含む溶液を加えることにより、同時に行われてもよく、もたらされてもよい。
【0205】
あるいは、親和性試薬は、3’ブロッキング基を除去することなく除去されてもよい。このアプローチは、再プロービングが所望される場合に有用である(以下のセクション9に記載されている)。
【0206】
8.1.3 検出
結合事象を検出する方法は、使用されている検出可能な標識の性質により異なり、当該技術分野において周知である。検出(例えば、蛍光シグナルの検出)は、一般に、ブロッキング基の除去の前に行われる。しかしながら、検出は、標識された親和性試薬が結合したままである限り、ブロッキング基の除去の前または後のいずれかに行うことができる。
【0207】
8.2 抗体の製造
例えば、小さい化合物(薬物またはペプチド)は、免疫応答を誘導するためまたは特異的抗体の産生を誘発する様式で処理されるためにはそれら自体では充分に複雑でない。小さい抗原を用いる抗体製造の成功のために、それらは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性キャリアタンパク質と化学的にコンジュゲートされなければならない。アジュバントを免疫原と混合および注射して、免疫応答の強度を増加させることができる。キャリアタンパク質のコンジュゲーション、アジュバントの使用および注射用試料の調製に関する他の事項は、抗体の製造に関するこのセクションにおいて記載される。抗原特異的なプローブとして使用するために抗体を生成させ、精製しおよび改変するための標準的な手順を使用することができる。例えば、Harlow and Lane, “Antibodies: A Laboratory Manual” (1988)およびHarlow and Lane, “Using Antibodies: A Laboratory Manual” (1999)を参照。
【0208】
ハプテン:抗原として使用される小分子はハプテンと称される。それらは、特異的抗体の産生のための認識部位として作用することができるが、必要な免疫応答をそれら自体では刺激することができない。ハプテンは、それらを好適なキャリア分子に連結させることにより免疫原性とすることができる。
エピトープ:エピトープは、抗体が結合する抗原上の特定の部位である。非常に小さい抗原について、実際上、化学構造全体が単一のエピトープとして作用することがある。その複雑性およびサイズに応じて、抗原は、多数のエピトープを標的とする抗体の産生をもたらすことがある。ポリクローナル抗体は血清の免疫グロブリンの混合物であり、集合的に抗原上の複数のエピトープに結合する可能性がある。
【0209】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)は、最も広く使用されているキャリアタンパク質である。
【0210】
ウシ血清アルブミン。ウシ血清アルブミン(BSA;67kDa)は、アルブミンと呼ばれる血清タンパク質のクラスに属する。
【0211】
8.3 免疫化プロトコール
免疫化プロトコールは周知であり、ここでは一般に記載するのみとする。追加の説明については以下の実施例2を参照。アジュバントと混合する前の免疫原の濃度が、注射当たりに投与されるコンジュゲートの量を最終的に決定する。マウスの免疫化スケジュール:0日目:免疫化後のELISAスクリーニングを行う時のブランクとして使用するためにマウスから免疫前血清を収集する。凍結貯蔵する。マウス当たり50~100μgの免疫原(100~200μLの抗原-アジュバント混合物に等しい)を注射する。典型的な注射の経路としては、腹腔内(i.p.)または皮下(s.c.)が挙げられる。動物当たり1回または2回のそのような注射を行うことができる。14日目:アジュバント中の同等の量の免疫原を用いてブーストする。21日目:出血液を試験し、ELISAにより抗体応答をアッセイする。(典型的に、尾静脈または後眼窩叢(retro-orbital plexis)を通じた麻酔下でマウスを出血させる。)28日目:必要であれば再びブーストする。満足のいく応答が観察されるまでブーストおよび出血液の試験を交互に行う類似のスケジュールを続ける。モノクローナル抗体の産生のために、食塩水中に溶解させた免疫原(アジュバントなし)との融合の4~5日前にi.p.または静脈内(i.v.)のいずれかで注射する。
【0212】
ウサギの免疫化スケジュール:0日目:免疫化後のELISAを行う時のブランクとして使用するためにウサギから免疫前血清を収集する。凍結貯蔵する。ウサギの背中の8~10の皮下部位のそれぞれに100μgの免疫原(約200μLの抗原アジュバント混合物に等しい)を注射する。他の注射の経路も使用することができるが、ウサギではこれがはるかに最も容易である。14日目:同等の量のアジュバントを用いてブーストする。21日目:出血液を試験し、ELISAにより抗体応答をアッセイする。(典型的に、麻酔薬なしで耳静脈を通じてウサギを出血させる。)抗体応答を測定するために充分な量より多い5~10mLの血液を収集することは難しくない。28日目:必要であれば再びブーストする。満足のいく応答が観察されるまでブーストおよび出血液の試験を交互に行う類似のスケジュールを続ける。
【0213】
免疫グロブリンの一般的精製。抗体は、比較的不変のドメインを含む予測可能な構造を有するので、抗原への抗体の特異性にかかわらず、一般に抗体に結合することができるある特定のタンパク質リガンドを同定することが可能であった。プロテインA、プロテインGおよびプロテインLは、その抗体結合特性がよく特徴付けられている3つの細菌タンパク質である。これらのタンパク質は、組換えにより製造されて、様々な種からの鍵となる抗体種のアフィニティー精製のために日常的に使用されている。プロテインA/Gと呼ばれる、遺伝子操作された組換え型のプロテインAおよびGも利用可能である。これらの抗体結合タンパク質は、ビーズ状アガロース樹脂に固定化されて利用可能である。
【0214】
8.4 抗体のアフィニティー精製:
粗細胞溶解液または他の試料中の他のタンパク質および成分から目的のタンパク質を濃縮または精製するために様々な方法が使用される。これらの方法のうち最も強力なのは、アフィニティー精製とも呼ばれるアフィニティークロマトグラフィーであり、それにより、目的のタンパク質は、固定化されたリガンドへのその特異的結合特性により精製される。
【0215】
目的のタンパク質および他の高分子は、粗抽出物または他の複雑な混合物から様々な方法により精製することができる。選択的沈殿は恐らく、1つの種類の高分子を別のものから分離する最も簡便な方法である。
【0216】
しかしながら、ほとんどの精製方法は、静止した材料(固相)との化学的または物理的相互作用の差異に基づいて溶液(移動相)中の分子が分離される何らかの形態のクロマトグラフィーを伴う。ゲル濾過(サイズ排除クロマトグラフィーまたはSECとも呼ばれる)は、多孔性樹脂材料を使用してサイズに基づいて分子を分離する(すなわち、物理的排除)。イオン交換クロマトグラフィーでは、分子は、固相材料との全体的なイオン性相互作用の強度に従って分離される(すなわち、非特異的相互作用)。
【0217】
対照的に、アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製とも呼ばれる)は、分子間の特異的結合相互作用を使用する。特定のリガンドが固体支持体に化学的に固定化または「連結」され、それにより、複合体混合物をカラムに通したときに、リガンドへの特異的結合親和性を有する分子は結合する。他の試料成分が洗浄除去された後、結合した分子は支持体から剥がされ、元々の試料からのその精製を結果としてもたらす。
【0218】
各特定の親和性システムは、条件のそれ自体のセットを必要とし、所与の研究目的のためにそれ自体の特有の課題を示す。他のタンパク質の方法の論文は、特定の精製システムと関連付けられる要因および条件を記載している。
【0219】
8.5 抗体の標識化
抗体の構造および修飾部位。他のタンパク質と同様に、抗体は、特定のアッセイの目的に適するように多くの方法で共有結合により修飾することができる。多くの免疫学的な方法は標識された抗体の使用を伴い、抗体の標識化を可能とするために様々な試薬が作出されている。酵素、ビオチン、フルオロフォアおよび放射活性同位体は全て、生物学的アッセイにおいて検出シグナルを提供するために一般に使用されている。抗体上の利用可能な官能基を理解することは、標識化、架橋または共有結合による固定化のいずれのためであっても、修飾のための最良の方法を選択するための鍵である。ほとんどの抗体標識化戦略は、3つの標的の1つを使用する:(1)第一級アミン(-NH2):これらはリシン残基および各ポリペプチド鎖のN末端において存在する。それらは多数であり、抗体全体にわたって分布している。(2)スルフヒドリル基(-SH):これらはシステイン残基上に存在し、全分子構造を安定化させるジスルフィド結合として存在する。ヒンジ領域のジスルフィドは、標的化された標識化のために利用可能な遊離のスルフヒドリルを作製するために選択的に還元することができる。(3)炭水化物(糖):グリコシル化は主に抗体(IgG)のFc領域において起こる。シス-ジオールを含有するこれらの多糖部分における構成要素の糖は、連結のための活性アルデヒド(-CHO)を作出するために酸化させることができる。
【0220】
抗体標識化方法。抗体を標識するために任意の公知の方法を本発明の実施において使用することができる。全てのタンパク質と同様に抗体はアミノ酸から構成され、第一級アミン(-NH2)を末端に持つリシンの側鎖は、抗体分子に標識を共有結合により連結するために一般に使用される。
【0221】
抗体標識化のための4つの主な化学的アプローチを以下に要約する:
【0222】
1.NHSエステル。蛍光色素標識の場合、NHSエステル(「スクシンイミジルエステル」とも呼ばれる)が組み込まれた活性化型の標識を購入することが通常である。活性化された色素は、抗体(それらの全ては複数のリシン基を有する)と適切な条件下で反応することができる。過剰な反応性色素は、標識された抗体をイムノアッセイにおいて使用できる前にいくつもの可能な方法の1つ(多くの場合、カラムクロマトグラフィー)により除去される。
【0223】
2.ヘテロ二官能性試薬。標識がタンパク質分子(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ[HRP]、アルカリホスファターゼ、またはフィコエリトリン)の場合、抗体標識化手順は、抗体および標識が複数のアミンを有するという事実により複雑である。この状況では、1分子(例えば、抗体)上のリシンの一部を修飾して新しい反応性基(X)を作出し、かつ標識上のリシンを修飾して別の反応性基(Y)を作出することが通常である。Y基を導入するために「ヘテロ二官能性試薬」が使用され、Y基はその後に、抗体および標識が混合されたときにX基と反応してヘテロダイマーコンジュゲートを作出する。この主題には多くのバリエーションがあり、標識された抗体および他の標識された生体分子を作出するためのヘテロ二官能性試薬の使用に関して文献中に数百もの例が見出されるであろう。
【0224】
3.カルボジイミド。アミン含有分子とカルボキシル含有分子との間に共有結合連結を作出するためにこれらの試薬(EDCは1つの非常に一般的な例である)が使用される。カルボジイミドはカルボキシル基を活性化させ、次に、活性化された中間体はアミン(例えば、抗体上のリシン残基により提供される)により攻撃される。カルボジイミドは、抗体をカルボキシル化粒子(例えば、ラテックス粒子、磁気ビーズ)に、およびマイクロウェルプレートまたはチップ表面などの他のカルボキシル化表面にコンジュゲートさせるために一般に使用される。カルボジイミドは、色素またはタンパク質標識を抗体に取り付けるためにほとんど使用されないが、それらはNHS活性化色素の製造において重要である(上記を参照)。
【0225】
4.過ヨウ素酸ナトリウム。この化学物質は標識の大部分と共に用いることができないが、最も普及した診断酵素であるHRPに適用可能であるという点でかなり重要な試薬である。過ヨウ素酸塩はHRP分子上の炭水化物鎖を活性化させてアルデヒド基を作出し、このアルデヒド基は抗体分子上のリシンと反応することができる。HRP自体が有するリシンは非常に少ないので、有意なHRP重合なしに抗体-HRPコンジュゲートを作出することが比較的容易である。
【0226】
任意の特定の抗体クローンにおいて、リシン(第一級アミン)は主に抗原結合部位内に存在し得る。したがって、この標識化戦略の唯一の欠点は、抗体の抗原結合活性の有意な減少を時折引き起こすことである。モノクローナル抗体を用いる場合または抗体分子当たりに高密度の標識を加えようとする場合に減少は特に著しいことがある。
【0227】
9.再プロービング
上記のセクション8に記載した通り、本発明に従って親和性試薬(例えば、抗体)および3’保護基の除去を連結させないことができる。ブロッキング部分を除去することなく親和性試薬を除去することができるので、有利なことに、塩基コールの正確性を増加させ、チップの完全性を試験し、または他の理由のために、一部または全ての塩基位置を再プロービングすることができる。以下の実施例11および
図2を参照。任意の所与の塩基位置を1回プロービングし、かつ0回、1回、2回または2回より多く再プロービングすることができる。通常、単一ラウンドの再プロービングで充分であると考えられる。単に便宜上、塩基位置が2回プロービングされる場合、第1ラウンドのプロービングを第1の半サイクルと称することができ、第2ラウンドのプロービングを第2の半サイクルと称することができる。
【0228】
再プロービングを行うときに、同じ親和性試薬、例えば同じ一次抗体を用いて各位置を2回プロービングすることができる。より多くの場合、異なる抗体調製物(例えば、異なるモノクローナル抗体)、異なるクラスの親和性試薬(例えば、第1の半サイクルでは抗体を用い、第2の半サイクルではアプタマーを用いてプロービングする)、または異なる特異性を有する親和性試薬などの異なる親和性試薬が使用される。例えば、第1の半サイクルにおいて、アレイは、抗A、抗T、抗Cおよび抗Gを用いてプロービングされてもよく、かつ第2の半サイクルにおいて、アレイは、抗プリンおよび抗ピリミジンを使用してプロービングされてもよい。
【0229】
1つのアプローチでは、4つのNLRTは、2つのブロッキング基、例えば、アジドメチル-T、アジドメチル-G、シアノエテニル-Cおよびシアノエテニル-Aを使用してブロックされ、アレイは、2つの親和性試薬(1つは3’-O-アジドメチル-2’-デオキシリボースに特異的であり、他の試薬は3’-O-シアノエテニル-2’-デオキシリボースに特異的である)を用いて1回プロービングされ、かつ異なるペアの親和性試薬(1つはプリンに特異的であり、1つはピリミジンに特異的である)を用いて2回目にプロービングされる。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシリボースおよびプリンに特徴的なシグナルを示すアレイ上のアドレスが、グアニン塩基を有するとして同定されるなどである。
【0230】
10.シークエンシング方法
図1および
図2は読者に追加のガイダンスを提供するが、限定的なものと解されるべきではない。例えば、親和性試薬を使用して伸長産物の末端3’-OHを検出する場合(上記セクション3.8を参照)、ブロッキング基は、抗体染色(工程5)の前に除去される(工程8b)。
【0231】
上記で論じたように、一態様では、本発明は、非標識リバーシブルターミネーターヌクレオチドを使用するシークエンシングバイシンセシス(SBS)の方法を対象とする。SBS法は周知であり、本明細書において参照される参考文献(これらのそれぞれは参照することにより全ての目的のために組み込まれる)において記載されている方法が挙げられるがこれらに限定されない。典型的に、SBSは、表面上の位置において固定化された一本鎖核酸鋳型の配列を決定する。当業者の読者に公知の通り、通常、表面上の位置において鋳型の多くのコピーが存在する。限定ではなく説明のために、鋳型コピーは、最も多くの場合、DNAナノボール(DNB)法またはブリッジPCR法を使用して製造される。DNB法は、鋳型(例えば、ゲノムDNA配列および隣接するプライマー結合部位)の多くのコピーを有する一本鎖コンカテマーを結果としてもたらす。ブリッジPCR法は、鋳型分子(例えば、プライマー結合部位として働き得るアダプターにより隣接されたゲノムDNA配列)のクローンクラスターを結果としてもたらす。ブリッジPCRでは、鋳型核酸の両方の鎖が別々の単一の鎖として存在してもよい。「鋳型」核酸(すなわち、文法上の単数形)、または同等の用語への本明細書における言及はまた、基体上の所与の位置における複数コピーの鋳型を指すことが理解されるであろう。鋳型核酸の配列または鋳型核酸配列(すなわち、文法上の単数形)の決定に対する言及が本明細書において為されることがあるが、本発明の方法は、1つまたは複数の鋳型核酸分子を含有する複数(多くの場合、数億)の位置を含むアレイを使用して実行されることが想定されることも認識されるであろう。
【0232】
この文脈において使用される場合、「アレイ」は最も広い意味において使用され、別段の規定がなければ、秩序付けられたアレイ(すなわち、領域に結合する鋳型は、秩序付けられた、典型的に直線状の、パターン、例えば、格子、らせん、または他のパターンにおいて並べられている)および不秩序なアレイ(すなわち、領域に結合する鋳型はランダムな位置にある)を含む。1つのアプローチでは、アレイ上の任意の特定の位置(または「アドレス」)における鋳型の素性は、鋳型のシークエンシングの前に既知であってもよい。より多くの場合、アレイは「ランダムアレイ」であり、所与のアドレスにおける鋳型の素性はシークエンシングの前に既知ではない。別段の規定がなければ、本開示において、「アレイ」は平坦な表面上の位置に限定されず、ビーズアレイ、小滴アレイなどを含み得る。
【0233】
様々なSBS法を本発明のヌクレオシドアナログおよび親和性試薬と共に使用することができる。一部の態様では、SBS法は、米国特許第6,210,891号明細書;同第6,828,100号明細書、同第6,833,246号明細書;同第6,911,345号明細書;同第6,969,488号明細書;同第6,897,023号明細書;同第6,833,246号明細書;および同第6,787,308号明細書;米国特許出願公開第2003/0064398号明細書;同第2003/0022207号明細書;同第2016/0130647号明細書;およびPCT国際公開第2016/133764号パンフレット;Margulies et al., 2005, Nature 437:376-380;Ronaghi et al., 1996, Anal. Biochem. 242:84-89;Constans, A, 2003, The Scientist 17(13):36;およびBentley et al., 2008, Nature 456(7218):53-59に記載されているものから選択することができる。シークエンシングバイシンセシスを行うDNAシークエンサーは、例えばIllumina Inc.(サンディエゴ、CA)から市販されており、MiniSeq、MiSeq、NextSeq、HiSeq、HiSeq X、およびNovaSeqシークエンシングシステムが挙げられる。本発明の組成物および方法と共に使用できる他のDNAシークエンシングシステムとしては、BGISEQ-50、BGISEQ-500、BGISEQ-1000、MGI-200、およびMGISEQ-2000(BGI、Shenzhen、People’s Republic of China);およびGeneReaderシークエンシングプラットフォーム(QIAGEN、Manchester、United Kingdom)が挙げられる。
【0234】
一部のSBSの実施形態は、伸長産物へのヌクレオチドの組込み時に放出されたプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づくシークエンシングは、Ion Torrent(Guilford, Conn.、Life Technologies subsidiary)から市販されている電気検出器および関連する技術または米国特許出願公開第2009/0026082号明細書;同第2009/0127589号明細書;同第2010/0137143号明細書;もしくは同第2010/0282617号明細書に記載されているシークエンシング方法およびシステムを使用することができる。
【0235】
例えばパイロシークエンシングなどの、環状反応を使用する別のシークエンシング手順を本発明の組成物および方法と共に使用することができる。パイロシークエンシングは、新生核酸鎖に組み込まれる特定のヌクレオチドとして無機ピロリン酸塩(PPi)の放出を検出する(Ronaghi et al., Anal Biochem 242:84-89, 1996;Ronaghi, Genome Res. 11:3-11, 2001;Ronaghi et al., Science 281:363, 1998);ならびに米国特許第6,210,891号明細書;同第6,258,568号明細書および同第6,274,320号明細書。パイロシークエンシングでは、放出されたPPiは、ATPスルフリラーゼによりアデノシン三リン酸(ATP)に変換されることにより検出することができ、結果として生じたATPは、ルシフェラーゼにより産生された光子を介して検出することができる。したがって、シークエンシング反応は、ルミネッセンス検出システムを介してモニターすることができる。蛍光ベースの検出システムのために使用される励起放射線供給源は、パイロシークエンシング手順のために必要でない。本開示のアレイへのパイロシークエンシングの適用のために使用できる有用な流体システム、検出器および手順は、例えば、WIPO特許出願第PCT/US11/57111号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0191698号明細書、米国特許第7,595,883号明細書、および米国特許第7,244,559号明細書に記載されている。
【0236】
一部の態様では、ライゲーションによるシークエンシング方法は、PCT特許出願公開WO 1999/019341号パンフレット;WO 2005/082098号パンフレット;WO 2006/073504号パンフレット;およびShendure et al., 2005, Science, 309: 1728-1739に記載されているものから選択することができる。SBS法は、例えば、米国特許出願公開第2010/0105052号明細書、同第2007/099208号明細書、および同第2009/0264299号明細書)ならびにPCT特許出願公開WO 2007/120208号パンフレット、WO 2006/073504号パンフレット、およびWO 2007/133831号パンフレットに記載されている秩序付けられたDNAナノボールアレイを用いることができる。この段落において列記した上記の特許および非特許文献は、参照することによりそれらの全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0237】
一実施形態によれば、シークエンシングは、DNAナノボール(DNB)の秩序付けられたアレイ上で行われる。DNBは、環状ライブラリーコンストラクトのローリングサークル複製により製造され、各環状ライブラリーコンストラクトは、目的のゲノムまたは他の標的核酸の断片を含有し、水溶液中で崩壊して小型のボール状構造物を形成する複数コピーの環状コンストラクトを含む線状一本鎖DNAコンカテマーを結果としてもたらす。DNBは、二次元の平坦な基体の表面上に配されて、単一分子のランダムアレイを形成する。DNBは、共有結合および非共有結合などの様々な技術により表面に直接的または間接的に固定することができる。一部の実施形態では、DNBアレイを製造するために、スポットの2次元アレイを有するパターン化された基体が使用される。スポットは活性化されてDNBを捕捉および保持するが、DNBはスポットの間の領域中には残らない。一般に、スポット上のDNBは他のDNBに反発し、スポット当たり1つのDNBを結果としてもたらす。DNBは三次元であるので(すなわち、DNAの線状の短い断片ではないので)、本発明のアレイは、1平方ナノメートルの結合表面当たりで伝統的なDNAアレイより多くのDNAコピーを結果としてもたらす。この三次元品質は、必要とされるシークエンシング試薬の量をさらに低減させ、より明るいスポットおよびより効率的な画像化を結果としてもたらす。DNBアレイの占有は多くの場合90%を上回るが、50%~100%の占有に及び得る。これらの実施形態では、DNBは表面上に配された後、活性化されたスポットにくっつくので、高密度DNBアレイは溶液中のDNBから本質的に「自己集合」する。
【0238】
そのようなDNBアレイがシークエンシングバイシンセシスにおいて使用される場合、DNBアレイはプライマーと接触させられ、プライマーは、シークエンシングの各サイクルにおいてポリメラーゼにより1つの相補的な塩基だけ伸長される。アレイ中の各位置においてポリメラーゼにより組み込まれたRTの素性は、特定の親和性試薬のその対応するRTへの結合の結果として明らかにされる。例えば4色シークエンシングでは、結果は、DNBのそれぞれが親和性試薬を用いて標識されたDNBのアレイであり、それにより、アレイ上の特定の位置において組み込まれたRTの素性は、RTに結合した親和性試薬の部分である蛍光標識(または他の検出可能な標識)により同定可能である。
【0239】
リバーシブルターミネーターを使用するSBS法では、鋳型核酸は表面上に固定化され、オリゴヌクレオチドプライマーは鋳型上の予め決定された位置(すなわち、プライマー結合部位)にハイブリダイズされる。デオキシリボースの3’-OHが除去可能なブロッキング部分、例えば3’-O-アジドメチルにより置換されたヌクレオチドアナログがプライマー伸長反応中にプライマーの3’端において組み込まれる。組み込まれたヌクレオチドアナログは、鋳型上の対応する位置におけるヌクレオチドに相補的であり、それと塩基対形成する。慣習的に、ヌクレオチドアナログは、組み込まれたヌクレオチドアナログの核酸塩基を同定する検出可能な標識を含み、したがって、鋳型中の相補的ヌクレオチドの塩基も同定する。一般に使用されるSBS法では、ヌクレオチドアナログは、切断可能なリンカーにより核酸塩基に取り付けられた蛍光標識を含む。
【0240】
リバーシブルターミネーターを使用するSBS法では、ヌクレオチドアナログの組込みが検出された後に、ブロッキング基は、典型的には化学的または酵素的に、除去されて、3’-OH基を有する組み込まれたヌクレオチドを生じさせる。3’ブロックされたヌクレオチドアナログの組込み、検出、およびブロック除去の追加のラウンドが、追加のプライマー伸長反応において実行されてもよい。プライマー伸長の各ラウンドにおいてヌクレオチドが付加されるが、方法はプライマーの伸長と称されることがある。しかし、先行するラウンドの伸長産物(元々のオリゴヌクレオチドプライマーではない)が伸長されると言うのがより精密であり得る。プライマー伸長鎖は、「伸長中のDNA鎖(GDS)」、「プライマー伸長産物」または「伸長したプライマー」など、様々に称されることがある。
【0241】
dNTP(すなわち、ヌクレオシド三リン酸)がプライマーの3’端に付加される場合、ヌクレオシド一リン酸(またはヌクレオチド)が組み込まれるようにピロリン酸が除去されることが理解されるであろう。非標識または標識されていないリバーシブルターミネーターヌクレオチドは、別段の規定がなければ、文脈から明らかなように、いずれかの形態(遊離のヌクレオシド三リン酸または組み込まれたヌクレオチド一リン酸)を指すことができる。非標識の、または標識されていないリバーシブルターミネーター、ヌクレオチドは、NLRTと称することができる。
【0242】
本発明の一態様では、組み込まれるdNTPアナログは、検出可能に標識されない。この文脈における「検出可能に標識されない」は、組み込まれるdNTPが、検出可能な(例えば、蛍光の)シグナルを生じさせる色素または基質の存在下で検出可能な(例えば、化学発光の)シグナルを生じさせる酵素にコンジュゲートされていないことを意味する。本明細書において使用される場合、「リバーシブルターミネーターヌクレオチド」は、天然に存在するヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログであって、デオキシリボースの3’-OHが、除去可能なブロッキング部分、例えば3’-O-アジドメチルにより置換されているものを指す。
【0243】
本発明の一態様では、シークエンシング反応において、組み込まれたNLRTは、抗体などの親和性試薬により検出され、該親和性試薬により、プライマー伸長産物の3’末端ヌクレオチドが区別され、それにより鋳型の3’末端ヌクレオチドの核酸塩基が同定される。1つのアプローチでは、親和性試薬は、特定の塩基(例えば、A、T、G、またはC)、または特定の塩基のアナログを含有する組み込まれたNLRTに、シークエンシング反応液中に存在する他の塩基または他の塩基アナログを有する組み込まれたNLRTにそれが結合するよりもはるかに高い親和性で特異的に結合する。別のアプローチでは、親和性試薬は、特定の塩基(例えば、A、T、G、またはC)、または特定の塩基のアナログを含有する組み込まれたNLRTに、シークエンシング反応液中に存在する他の塩基、または存在する他の塩基アナログにそれが結合する親和性または効率とは異なる特徴的な親和性または効率で結合する。
【0244】
本発明によれば、親和性試薬はまた、3’端におけるものではない以前に組み込まれた「内部」ヌクレオチドからプライマー伸長産物の3’端において組み込まれたNLRTを区別し得る。一般に、プライマー伸長産物の3’端におけるNLRTは、遊離3’-OH(これは内部ヌクレオチドにおいてはホスホジエステル連結により置換されている)の存在または3’ブロッキング部分の存在の他に、糖および核酸塩基の差次的なアクセス可能性により以前に組み込まれたヌクレオチドとは異なる。
【0245】
本発明によれば、異なる窒素塩基(例えば、A、T、GおよびC)を有する4つのNLRTを使用してSBS反応が実行される。SBS反応では、異なる親和性試薬(例えば、2つ、3つまたは4つの異なる親和性試薬)が使用され、親和性試薬のそれぞれは、特定の含窒素塩基を有するNLRTに結合し、異なる窒素塩基を有するNLRTに結合しないか、または一部の実施形態では、異なる窒素塩基もしくは非同一のブロッキング基を有するNLRTに結合するが、それは異なるレベルの効率においてである。
【0246】
親和性試薬は、含窒素塩基、糖、切断可能なブロッキング基またはこれらの構成要素の組合せにおける構造的差異に基づいて1つの組み込まれたNLRTを異なるNLRTから区別してもよい。一部の場合には、異なるNLRTは、例えば、含窒素塩基における有意な構造的差異(例えば、アデノシン対グアニン)および/またはブロッキング基における有意な構造的差異(例えば、アジドメチル対シアノエテニル)により区別される。
【0247】
加えて、親和性試薬は、好ましくは天然の差異と組み合わせて、小さい構造的差異(例えば、一部の場合には、5つより少ない原子の付加または置換)に基づいて1つの組み込まれたNLRTを異なるNLRTから区別してもよい。これらの小さい構造的変化は、含窒素塩基、糖、および/またはブロッキング基において為され得る。異なるNLRT間のそのような小さい差異を区別する抗体などの親和性試薬が調製され得る。
【0248】
本発明の一態様によれば、親和性試薬のそれぞれは、シークエンシング反応液中に存在する他のものから区別され得るか(例えば、それぞれが異なって標識されるため)、または異なる二次結合剤により結合される。
【0249】
本発明によれば、含窒素塩基、糖、および切断可能なブロッキング基のそれぞれの構造上に制約がある。
【0250】
例えば、好適な修飾塩基は、通常のワトソン-クリック結合特異性を保持し、DNAポリメラーゼによる組込みと適合性であるべきである。一部の実施形態では、塩基アナログは蛍光特性を有しない(Renatus et al., 2010, Chem Rev. 110(5): 2579-2619)。
【0251】
同様に、NLRTの糖部分は修飾されてもよい。そのような修飾NLRTを有する核酸は、鋳型鎖にアニールする能力を保持するべきであり、またDNAポリメラーゼによる組込みと適合性であるべきである。
【0252】
同様に、わずかにのみ異なるブロッキング基を有するNLRTが使用されてもよい。例えば、2つ、3つ、または4つの異なるそのようなNLRTを使用することができる。
【0253】
本発明のある特定の実施形態では、ブロッキング基(デオキシリボースの3’酸素原子を含まない)は、184未満、多くの場合174未満、多くの場合164未満、多くの場合154未満、多くの場合144未満、多くの場合134未満、多くの場合124未満、多くの場合114未満、多くの場合104未満、多くの場合94未満、時に84未満の分子量(MW)を有する。
【0254】
ある特定の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド一リン酸の分子量は、約300~325の範囲内である(dAMP 331.2、dCMP 307.2、dGMP 347.2およびdTMP 322.2)。ある特定の実施形態では、NLRT部分は、プライマー伸長産物に組み込まれたときに(すなわち、リバーシブルターミネーターブロッキング基を含むが、dNTPのピロリン酸を含まない)は、700未満、600未満、550未満、多くの場合540未満、多くの場合530未満、多くの場合520未満、多くの場合510未満、多くの場合500未満、多くの場合490未満、多くの場合480未満、多くの場合470未満、時に460未満の分子量を有する。
【0255】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、1000ヌクレオチドより長い、時に10~500ヌクレオチド、時に10~250、時に25より長い、時に50ヌクレオチドより長いシークエンシングリードを生成するために使用される。一部の場合には、シークエンシングは、2000塩基当たり1つの誤り、5000塩基当たり1つの誤りより少なく実行される。
【実施例】
【0256】
11.実施例
【実施例1】
【0257】
11.1 実施例1.コンジュゲート3’-O-アジドメチル-2’-dG、-dC、-dAおよび-dT抗原の調製
【0258】
3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニンの活性エステルの合成。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニンのアミノ反応性N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルの合成を
図5に示す。化合物G1(416mg、0.708mmol)、無水DMF(3mL)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(171mg、1.054mmol)を50mLのフラスコに加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。4-アミノ酪酸エチル塩酸塩(384mg、2.29mmol)およびトリエチルアミン(300μL、2.155mmol)を加えた。混合物を40℃で10時間撹拌した。ほとんどのDMFを真空下でロータリーエバポレーター(またはロトバップ)により除去して粗化合物G2を得た。
【0259】
粗化合物G2にEtOH(5mL)および1N NaOH/H2O(7mL)を加えた。混合物を室温で3日間撹拌した。1N HCl/H2Oを加えてpHを7.4に調整した。ほとんどのEtOHをロトバップにより除去した後、濾過した。25mMのTEAB緩衝液(重炭酸トリエチルアミン、pH8.0、室温)およびCH3CNを使用して分取HPLCにより濾液を精製して、白色固体として化合物G3(341mg)を得た。LCMS:452.1(MS+)。
【0260】
5mLのバイアル中に、化合物G3(42mg、0.076mmol)、無水ジメチルホルムアミド(DMF)(0.6mL)およびO-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)(19mg、0.063mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、生物学的コンジュゲートを調製するために所望の活性化NHSエステルG4を得た。LCMS:548(MS+)。
【0261】
ウシ血清アルブミン(BSA)との3’-O-アジドメチル-dGのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのBSA(10mg/ml)を5mgの化合物G4と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(Bio-Gel(登録商標) P Polyacrylamide Beads[P6DG beads]、Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0262】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との3’-O-アジドメチル-dGのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9.0)中の20mgのKLH(10mg/ml)を7mgの化合物G4と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P-6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0263】
異なるリンカーが使用される
図5に示されるものとは若干異なる合成方法を使用した、BSA、KLHおよびアガロース樹脂への3’-O-アジドメチル-dC-NHSエステルのコンジュゲートを
図9に示す
【0264】
アミン活性化アガロース樹脂との3’-O-アジドメチル-dGのコンジュゲート。20mlの湿ったアミン活性化アガロース樹脂(1ml当たり5μモルの活性化された基)を30mLの50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9.0)、および150mMのNaClを用いて洗浄した。70mgの化合物G4を20mlの湿ったビーズに加え、反応液を室温(RT)で2時間インキュベートおよび回転させた。反応後、260nmの吸光度が0.02より低くなるまで樹脂を50mLのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して所望の精製樹脂を得た。
【0265】
3’-O-アジドメチル-2’-デオキシシトシン(C8)のアミノ反応性NHSエステルの合成。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシシトシン(C8)のアミノ反応性NHSエステルの合成を
図6に示す。化合物C5(410mg、1.061mmol)、無水DMF(3mL)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(213mg、1.314mmol)を50mLのフラスコに加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。4-アミノ酪酸エチル塩酸塩(223mg、1.330mmol)およびトリエチルアミン(200μL、1.437mmol)を加えた。混合物を40℃で6時間撹拌した。ほとんどのDMFを真空下でロトバップにより除去して粗化合物C6を得た。
【0266】
粗化合物C6にEtOH(5mL)および1N NaOH/H2O(5mL)を加えた。混合物を室温で24時間撹拌した。1N HCl/H2Oを加えてpHを7.4に調整し、EtOHのほとんどをロトバップにより除去した後、混合物を濾過した。25mMのTEAB緩衝液およびCH3CNを使用して分取HPLCにより濾液を精製して白色固体として化合物C7(518mg)を得た。LCMS:412.1(MS+)。
【0267】
5mLのバイアル中に、化合物C7(49mg、0.096mmol)、無水DMF(0.8mL)およびTSTU(27mg、0.090mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、生物学的コンジュゲートを調製するために所望の活性化NHSエステルC8を得た。LCMS:509.2(MS+)。
【0268】
ウシ血清アルブミン(BSA)との3’-O-アジドメチル-dCのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのBSA(10mg/ml)を5mgの化合物C8と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0269】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との3’-O-アジドメチル-dCのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのKLH(10mg/ml)を7mgの化合物C8と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水で脱塩カラム(P-6DGビーズ、Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0270】
アミン活性化アガロース樹脂との3’-O-アジドメチル-dCのコンジュゲート。20mlの湿ったアミン活性化アガロース樹脂(1ml当たり5μモルの活性化された基)を30mLの50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9.0)および150mMのNaClを用いて洗浄した。70mgの化合物C8を20mlの湿ったビーズに加え、反応液をRTで2時間インキュベートおよび回転させた。反応後、260nmの吸光度が0.02より低くなるまで樹脂を50mLのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して所望の精製樹脂を得た。
【0271】
3’-O-アジドメチル-2’-デオキシアデニン(A12)のアミノ反応性NHSエステルの合成。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシアデニン(A12)のアミノ反応性NHSエステルの合成を
図7に示す。化合物A9(111mg、0.270mmol)、無水DMF(1mL)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(70mg、0.431mmol)を25mLのフラスコに加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。4-アミノ酪酸エチル塩酸塩(78mg、0.465mmol)およびトリエチルアミン(75ul、0.539mmol)を加えた。混合物を40℃で16時間撹拌した。ほとんどのDMFを真空下でロトバップにより除去して粗化合物10を得た。
【0272】
粗化合物A10に、EtOH(2mL)および1N NaOH/H2O(4mL)を加えた。混合物を40℃で24時間撹拌した。1N HCl/H2Oを加えてpHを8.5に調整し、ほとんどのEtOHをロトバップにより除去した後、混合物を濾過した。25mMのTEAB緩衝液およびCH3CNを使用して分取HPLCにより濾液を精製して、白色固体として化合物A11(107mg)を得た。LCMS:435.9(MS+)。
【0273】
5mLのバイアル中に、化合物11(61mg、0.114mmol)、無水DMF(1mL)およびTSTU(20mg、0.066mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、生物学的コンジュゲートを調製するために所望の活性化NHSエステルA12を得た。LCMS:555.2(MS+)。
【0274】
ウシ血清アルブミン(BSA)との3’-O-アジドメチル-dAのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのBSA(10mg/ml)を5mgの化合物A12と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P-6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0275】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との3’-O-アジドメチル-dAのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのKLH(10mg/ml)を7mgの化合物A12と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P-6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0276】
アミン活性化アガロース樹脂との3’-O-アジドメチル-dCのコンジュゲート。20mlの湿ったアミン活性化アガロース樹脂(1ml当たり5μモルの活性化された基)を30mLの50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9.0)、および150mMのNaClを用いて洗浄した。70mgの化合物A12を20mlの湿ったビーズに加え、反応液を室温で2時間インキュベートおよび回転させた。反応後、260nmの吸光度が0.02より低くなるまで樹脂を50mLのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して所望の精製樹脂を得た。
【0277】
3’-O-アジドメチル-2’-デオキシチミン(T16)のアミノ反応性NHSエステルの合成。3’-O-アジドメチル-2’-デオキシチミン(T16)のアミノ反応性NHSエステルの合成を
図8に示す。化合物T13(108mg、0.363mmol)、無水DMF(1mL)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(74mg、0.456mmol)を25mLのフラスコに加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。4-アミノ酪酸エチル塩酸塩(80mg、0.477mmol)およびトリエチルアミン(75ul、0.539mmol)を加えた。混合物を40℃で6時間撹拌した。ほとんどのDMFを真空下でロトバップにより除去して粗化合物T14を得た。
【0278】
粗化合物T14に、EtOH(2mL)および1N NaOH/H2O(2mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。1N HCl/H2Oを加えてpHを7.5に調整した後、ほとんどのEtOHをロトバップにより除去し、混合物を濾過した。25mMのTEAB緩衝液およびCH3CNを使用して分取HPLCにより濾液を精製して、白色固体として化合物T15(286mg)を得た。LCMS:426.5(MS+)。
【0279】
5mLのバイアル中に、化合物15(121mg、0.225mmol)、無水DMF(1mL)およびTSTU(40mg、0.132mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、生物学的コンジュゲートを調製するために所望の活性化NHSエステルT16を得た。LCMS:546.1(MS+Na+)。
【0280】
ウシ血清アルブミン(BSA)との3’-O-アジドメチル-dTのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのBSA(10mg/ml)を5mgの化合物T16と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P-6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0281】
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との3’-O-アジドメチル-dTのコンジュゲート。150mMのNaClを含む50mMの重炭酸Na緩衝液(pH=9.0)中の20mgのKLH(10mg/ml)を7mgの化合物T16と反応させた。反応は室温で1時間行い、リン酸緩衝生理食塩水中で脱塩カラム(P-6DGビーズ)を用いて反応混合物を精製した。コンジュゲートを凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0282】
アミン活性化アガロース樹脂との3’-O-アジドメチル-dTのコンジュゲート。20mlの湿ったアミン活性化アガロース樹脂(1ml当たり5μモルの活性化された基)を30mLの50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9.0)および150mMのNaClを用いて洗浄した。70mgの化合物T16を20mlの湿ったビーズに加え、反応液を室温で2時間インキュベートおよび回転させた。反応後、260nmの吸光度が0.02より低くなるまで樹脂を50mLのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して所望の精製樹脂を得た。
【実施例2】
【0283】
11.2 実施例2.非標識リバーシブルターミネーター(NLRT)に対するポリクローナル抗体の調製
【0284】
この実施例は、シークエンシング用の試薬を製造するための免疫化および抗体精製(purfication)使用のためのプロトコールの使用を記載する。このプロトコールは、3’ブロッキング基としてアジドメチルを有するNLRT-A、-T、-G、および-Cに特異的な抗体を用いてポリクローナル抗血清を調製するために使用されている。
【0285】
材料:以下の材料をウサギの免疫化のために使用した:3mgのKLH抗原(ウサギへの注射用)、3mgのBSA抗原(滴定用)、および2~3mlのSepharose抗原(精製用)。
【0286】
2匹のウサギの免疫化:実施例1に記載したKLH抗原を用いてウサギを免疫化した。
【0287】
1つのアプローチでは、70日の免疫化スケジュールに従った:1回目の免疫化が1日目;2回目の免疫化の日が20日目;3回目の免疫化の日が40日目;4回目の免疫化の日が60日目。1回目の免疫化の前に5mlの免疫前血清を収集し、品質管理のために3回目の免疫化の後に5mlの試験出血液を収集した。最後に、4回目の免疫化の10日後に2匹のウサギから合計100mlの抗血清を収集した。
【0288】
ポリクローナル抗体の力価:以下のプロトコールを使用して力価をモニターした:
a)4℃で終夜または37℃で2~3時間1ug/ウェル(100μl)の濃度の3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン-BSAを用いてプレートの各ウェルをコーティングする。
b)免疫化したウサギ身体からの100ulの段階希釈した抗血清を各ウェルに加え、37℃で30分間インキュベートする。
c)過剰の1×PBSを用いて3回洗浄する。
d)100ulのHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(1:4000)を各ウェルに加え、37℃で30分間インキュベートする。
e)過剰の1×PBSを用いて3回洗浄する。
f)100ulのABTS基質溶液を各ウェルに加え、室温で20分間インキュベートする。
g)A405nmにおいてプレートを読み取る。
同じプロトコールを使用して、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシ-シトシン、-アデニンおよび-チミンに対する抗血清を生成した。
【0289】
精製:以下のプロトコールを使用して血清から抗体を精製した。アミノカプロン酸リンカーを通じてSepharose 6Bに3’-アジドメチル-2’-デオキシリボ核酸塩基をコンジュゲートさせることによりAffi-Gel(Bio-Rad)を調製し、精製カラムにAffi-Gelを詰め込んだ。1匹または2匹のウサギから収集した抗血清(最大100ml)をアジド-dG、アジド-dC、アジド-dA、またはアジド-dTを固定化したSepharose 6Gの親和性カラムに適用した。3’-アジドメチルNLRTのそれぞれに特異的な高力価のポリクローナル抗体を得た。
【0290】
ポリクローナル抗体を産生させるための50日および90日の免疫化プログラムも使用した。例えば、抗原KLH-3’-アジド-2’-デオキシグアノシンコンジュゲートを用いて4匹のウサギを免疫化した。免疫化のスケジュールは以下の通りであった:1回目の免疫化、1日目;2回目の免疫化、14日目;3回目の免疫化、28日目;および4回目の免疫化、42日目。1回目の免疫化の前に5mlの免疫前血清を収集し、品質管理のために3回目の免疫化の後に5mlの試験出血液を収集した。最後に、4回目の免疫化の10日後に2匹のウサギから合計100mlの抗血清を収集した。
【実施例3】
【0291】
11.3 実施例3.E.コリDNAライブラリーの調製
【0292】
E.コリゲノムDNAライブラリーのDNAナノボール(DNB)アレイを本実施例に記載するシークエンシング実験において使用した。DNBおよびDNBアレイは、例えば、Drmanac et al., 2010, “Human genome sequencing using unchained base reads on self-assembling DNA nanoarrays,” Science 327:78-81(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。試料調製中に、E.コリゲノムDNAの断片から環状ライブラリーコンストラクトを調製し、ライブラリーコンストラクトをローリングサークル増幅(RCA)により増幅させて、隣接するプライマー結合部位を有するゲノムDNAインサートを含むDNBを製造した。DNBをDNAシークエンシングフローセル(例えば、BGISEQ-500フローセルまたはBGISEQ-1000フローセル)中にアレイ化し、BGISEQ-500(BGI、Shenzhen、China;Huang et al., 2017, “A reference human genome dataset of the BGISEQ-500 sequencer" Gigascience 6:1-9を参照)またはBGISEQ-1000(BGI、Shenzhen、China)を使用してシークエンシングを実行した。
【実施例4】
【0293】
11.4 実施例4.DNBアレイにおいて組み込まれたNLRTを検出するためのdN-アジドメチル特異的ウサギポリクローナル抗体および標識化ヤギ抗ウサギ二次抗体の使用
【0294】
実施例2に記載した3’-アジドメチル-dA、3’-アジドメチル-dC、3’-アジドメチル-dG、または3’-アジドメチル-dTのKLHコンジュゲートに対して産生された血清由来抗体をこの実験において使用した。抗NLRT抗体(anti-NLRT antbodies)の4つの異なる精製調製物を4つの塩基(すなわち、RT-A、RT-C、RT-GおよびRT-T)のそれぞれについて調製し、A1~A4、C1~C4、G1~G4、およびT1~T4と表される16個の抗体調製物を結果として得た。実施例4に記載したE.コリゲノムDNAインサートを含有するDNBアレイをプライミングし、3’修飾dNTPを組み込むように操作された(eningeered)ポリメラーゼであるBG9 DNAポリメラーゼ(BGI Shenzhen、China)および3’-アジドメチルブロッキング基を有する4つの非標識リバーシブルターミネーター(例えば、3’-アジドメチル-dATP、-dCTP、-dGTPおよび-dTTP)を使用してプライマーを伸長させた。16個の抗体調製物を10μg/mLにおいてDNBアレイ上の別々(speparate)のレーンに個々に適用し、35℃で5分間インキュベートした(16の別々のインキュベーション)。インキュベーションの最後にアレイの未結合の一次抗体を35℃で抗体緩衝液(AbB)(pH7.4のトリス緩衝生理食塩水+0.1%のBSAおよび0.05%のTween-20)を用いて洗浄することにより除去した。次に、アレイを、Jackson Immune Research(West Grove、PA、USA)から得られたAF488標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(Fab断片)と35℃で5分間インキュベートした。AbBを用いてアレイを洗浄して未結合の二次抗体を除去し、BGISEQ-1000シークエンシングシステムを使用して画像化した。単一の一次抗体を用いて染色された16の抗体調製物のそれぞれは、DNA部位の約25%において組み込まれたNLRTに結合すると期待されることが理解されるであろう。
【0295】
DNBをプライミングし、切断可能なリンカーを介して塩基に取り付けられたフルオロフォアにより標識された4つ全ての3’-アジドメチルdNTPを使用してプライマーを伸長することによりシークエンシングアレイ中の4つの対照レーンを生成した。ここに示す対照シグナル値はC-AF488についてのものである。
【0296】
表1は、対照アレイおよび抗体アレイを使用して得られたシグナルを示す。抗体媒介性シグナルの最も高いレベルを太字フォントで示す。シグナル強度のばらつきがアレイ間で観察されたが(使用したウサギポリクローナル抗体の特定の調製に応じて)、この間接的な検出技術を使用して比較的低い抗体濃度において対照シグナル強度と同等またはそれを超えることができることを結果は示す。
【0297】
【実施例5】
【0298】
11.5 実施例5.蛍光標識RT-A、-Cおよび-Tおよび非標識RT-Gを使用するDNAシークエンシング
【0299】
いずれも3’-アジドメチルブロッキング基を有する、蛍光標識RT-A、-Cおよび-Tならびに非標識RT-Gを使用してDNAナノボールE.コリゲノムDNAライブラリーをシークエンシングした。シークエンシングはBGISEQ-500シークエンサー(BGI、Shenzhen、China)を使用して行い、シークエンサーにより提供される塩基コール解析レポートを使用してデータを解析した。シークエンシングを5サイクル(
図10Aおよび
図10C)または10サイクル(
図10Bおよび
図10D)実行した。
図10Aおよび
図10CはRho値を示す。(Rho値は、画像解析後に得られたシグナル強度からバックグラウンドを引くことにより算出される。クロストーク補正を含むシグナルの標準化も適用した。)
図10Bおよび
図10Dはシグナル対ノイズ比(SNR)を示す。
【0300】
成功した塩基コールレポートからの強度のRhoおよびSNS(シグナル対ノイズ比)を含むデータは、非標識RTおよびRTに特異的に結合する標識された親和性試薬を用いて成功裏にシークエンシングを行うことができることを指し示す。
【実施例6】
【0301】
11.6 実施例6.4つの非標識RTおよび非標識抗NLRTポリクローナル抗体を使用するDNAシークエンシング
【0302】
表2は、8レーンチップアレイ(Fehlmann et al., Clin. Epigenetics 8:123, 2016を参照)を用いてBGISEQ-1000シークエンサー(BGI、Shenzhen、China)を使用して生成されたシークエンシングデータを示す。列5は、切断可能なブロッキング部分が3’-O-アジドメチル(NLRT-A、-T、-Cおよび-G)である非標識リバーシブルターミネーターおよび4つのNLRTのそれぞれを標的とするポリクローナル抗体(「1O抗体」)を使用した結果を示す。抗体結合は2O抗体(Jackson Immune Researchから得たAF488標識ヤギ抗ウサギFab断片 を使用して検出した。FITチャネルにおいてシグナルを測定した。非対照レーン(例えば、表2の欄3~8 において、各一次抗体を別々に適用し[すなわち、別々のチャネル(chanel)において適用し]、検出した。未加工のシグナル値を示す。
【0303】
表2の行は、リバーシブルブロッキング基として3’切断可能なアジドメチル基を有する1つのNLRTに対応する。表2の各行は1つの標的dNTPに関し、各列はその標的に対する試験を示す。列は以下の通りである:
【0304】
列1:列5(陽性対照2)において使用した1O抗体の特異性および濃度(μg/mL)。
【0305】
列2および列9:4つの蛍光標識(「ホット」)リバーシブルターミネーターdNTP(切断可能なリンカーを介して塩基に取り付けた蛍光色素を有する を使用して伸長を実行した。(DNAアレイ用の陽性対照)
【0306】
列3:BG9 DNAポリメラーゼを使用して伸長を実行した。4つ全ての1O抗体の濃度は100μg/ml(陽性対照1)。
【0307】
列4:一次抗体を割愛している(陰性対照;二次抗体バックグラウンドのみ)。
【0308】
列5:4つの非標識アジドメチルNLRTを使用して伸長を実行した。列1の濃度において使用した各一次抗体による染色を示す結果。
【0309】
列6:標的NLRTを割愛したが3つの非標的NLRTを含んで伸長を実行した(抗体特異性対照1);
【0310】
列7:GDSの3’端における標的塩基がアジドメチルブロッキング基ではなく3’-OHを有する陰性対照(抗体特異性対照2)。
【0311】
列8:シークエンシングプライマーを使用しない陰性対照(特異性対照3)。
【0312】
【実施例7】
【0313】
11.7 実施例7.非標識RT-Gが抗RT-Gウサギ一次抗体および標識ヤギ抗ウサギ二次抗体を使用して検出される50サイクルのシークエンシング
【0314】
この実施例は、BGISEQ-1000 DNAシークエンサーおよびE.コリゲノムDNBライブラリーを使用して実行した50サイクルのシークエンシングバイシンセシス(SBS)の結果を示す。ゲノムDNAインサートに隣接する配列に相補的なDNAプライマーをDNBアレイにハイブリダイズさせ、各2μMの濃度の3’-アジドメチルリバーシブルターミネーター(RT-A、-C、-G、-T)を使用してプライマー伸長を実行した。3つのリバーシブルターミネーター(アジドメチル--A、-C、-T)は、塩基に取り付けた切断可能なリンカーを介して蛍光標識し(50%の標識/50%の非標識の比において使用)、1つのリバーシブルターミネーター(3’-アジドメチル-dGTP)は非標識であった。BG9 DNAを使用して35℃で2分間プライマー伸長を実行した。
【0315】
1サイクルのプライマー伸長後にアレイを洗浄して、組み込まれなかったヌクレオチドを除去した。AF647標識ヤギ抗ウサギ蛍光標識Fab断片と予め組み合わせた抗3’-アジドメチル-dGウサギ一次抗体とインキュベートすることにより、組み込まれた3’-アジドメチル-dGを検出した。一次抗体および二次抗体(Fab断片)を一緒に35℃で15分間インキュベートすることによりそれらを予め組み合わせた。この予め組み合わせた複合体をアレイ上で25μg/mLの一次濃度および50μg/mLの二次濃度において35℃で10分間インキュベートし、アレイを3回洗浄してあらゆる未結合の抗体を除去した。
【0316】
抗体のインキュベーション後、3つの標識RT(RT-A、-C、-T)をそれらの特有の蛍光標識を使用して検出し、標識されていない塩基(RT-G)を、ヤギ抗ウサギ断片二次抗体にコンジュゲートさせた蛍光標識を使用して検出した。蛍光波長の検出を介してDNB塩基の素性を決定した後、13mMのTHPPによる35℃での2分間の還元により標識(RT-A、-C、-T)へのリンカーおよび3’ブロッキング基(RT-G、-A、-C、-T)を除去して、3’-OH基の再生および新生DNA鎖をさらに伸長する能力を可能とした。この一連の工程(伸長、抗体インキュベーション、検出、およびブロック除去)を合計50サイクルの配列同定にわたり繰り返した。
【0317】
図11Aは、ベースコール情報量(Basecall Information Content)(BIC)のパーセントを示す。このグラフは、抗ウサギAF647蛍光標識断片二次抗体と予め組み合わせた抗3’-アジドメチル-dGウサギ一次抗体を通じて間接的に検出されたときに非標識塩基の素性は、ベースコール解析および未知のDNA残基の同定のために充分な情報を提供することを示す。
【0318】
図11Bは、特有の蛍光標識のそれぞれについてのシグナル強度およびトレンドを示す。塩基に取り付けられた蛍光標識された切断可能なリンカーを含有する3つのヌクレオチド(dATP、dCTP、dTTP)を50%の標識/50%の非標識の比において使用し、これらはそれぞれCy3、FITC、およびTxRに対応する。抗ウサギAF647蛍光標識断片二次抗体と予め組み合わせた抗3’-アジドメチル-dGウサギ一次抗体により非標識3’-アジドメチル-dGTPを検出した。これらのデータは、非標識3’-アジドメチル-dG塩基についてのシグナル強度の劣化率は、切断可能なリンカーで標識されたヌクレオチドの率より低いことを示す。シグナル強度のこの低減された劣化は、切断可能なリンカーを使用して標識されたdNTPを使用する従来法よりも長いリードがこの技術を使用して可能であり得ることを指し示す。
【実施例8】
【0319】
11.8 実施例8.抗体は充分な特異性でNLRTに結合してベースコール解析のために好適なシグナル対ノイズ比(SNR)の値を生成する
【0320】
表3、4、5および6のデータは、直接標識された抗アジドメチル塩基抗体を使用するE.コリゲノムDNA上の非標識リバーシブルターミネーターの染色を用いて得られたおよび標識アジドメチル塩基を使用する対照アレイについての、トップシグナル、Rho(バックグラウンドおよびクロストークを引いたシグナル)、バックグラウンドシグナル(「バック」)およびシグナル対ノイズ比(SNR)の値を示す。実験は、E.コリゲノムDNAライブラリーを用いてBGISEQ-500フローセルアレイにより行い、BGISEQ-500DNAシークエンサーによりスキャンした。
【0321】
対照値は、4つの標識3’-アジドメチルRT(切断可能なリンカーを介して塩基に接続された標識)を使用したシークエンシングの結果である。3’-アジドメチルRTは、表4、5および6において60%の標識(「ホット」)、40%の非標識(「コールド」)の比、表3において25%の標識および75%の非標識の比において使用した。
【0322】
染色前の値は、1ラウンドのプライマー伸長の後、抗体の付加の前にスキャンする。
【0323】
染色値は、指し示した濃度の適切な抗アジドメチル塩基抗体とのインキュベーション(2×2分、35℃)後のスキャンにより得られた。抗アジドメチル塩基抗体は、示したフルオロフォアを用いて直接的に標識した。抗アジドメチル塩基の結合に対応する値を太字としている。
【0324】
表3は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシアデニンに対するポリクローナル抗体を使用した結果を示す。表4は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシシトシンに対するポリクローナル抗体を使用した結果を示す。表5は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニンに対するポリクローナル抗体を使用した結果を示す。表6は、3’-O-アジドメチル-2’-デオキシチミジンに対するポリクローナル抗体を使用した結果を示す。
【0325】
【0326】
【0327】
【0328】
【実施例9】
【0329】
11.9 標識された抗NLRTポリクローナル抗体を使用した25サイクルのシークエンシング
【0330】
E.コリゲノムDNAライブラリーを実施例2に記載した通りに調製し、BGISEQ-500フローセル上にアレイ化した。プライマーを加え、非標識ヌクレオチド3’-アジドメチルリバーシブルターミネーター(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を使用するプライマー伸長によりシークエンシングバイシンセシスを行った。非標識3’ブロックdNTPは各1μMの濃度で存在し、1サイクル当たり1分間55℃においてBG9 DNAを使用して組み込んだ。組込みおよび組み込まれなかったヌクレオチドを除去するための洗浄後、表11に示す濃度(10~100μg/mLの範囲)の4つの直接標識された抗3’-アジドメチル塩基抗体の混合物とアレイを接触させることにより4つの3’-アジドメチル塩基ヌクレオチドを検出し、1サイクル当たり2×2分35℃でアレイ上でインキュベートした。「2×2」は、抗体との2分間のインキュベーションの後、追加の抗体を加えてからさらに2分インキュベーションを行うことを指す。アレイを3回洗浄して、あらゆる未結合の抗体を除去した。表7は、各検出抗体に直接的にコンジュゲートされたフルオロフォアの素性を示す。
【0331】
【0332】
フルオロフォアのレーザー励起中に80msにわたりスキャンすることによりDNBアレイ上の各位置における蛍光シグナルを決定した。DNB塩基の素性を決定した後、THPP(13mM)による35℃での2分間の還元により3’ブロッキング基を除去して、3’-OH基の再生および新生DNA鎖のさらなる伸長を可能とした。3’ブロッキング基の除去はまた、プライマー伸長産物からの抗体の解離を結果としてもたらした。
【0333】
この一連の工程(伸長、抗体インキュベーション、検出、およびブロック除去)を合計25サイクルのDNA配列同一性(DNA sequence identity)にわたり繰り返した。
【0334】
図12Aおよび
図12Bは、各シークエンシングサイクルにおける各塩基のRhoおよびシグナル対ノイズ比(SNR)を示す。表8は、DNBリードの数の他に、参照E.コリゲノムと比較した時のマッピングおよび誤り率を示す。
【0335】
成功した塩基コールレポートからの強度のRhoおよびSNRを含むこれらのデータは、非標識リバーシブルターミネーターならびにブロッキング基および塩基に結合する抗体を使用して複数サイクルのDNAシークエンシングを実行できることを実証する。
【0336】
【実施例10】
【0337】
11.10 実施例10:異なって標識された抗体セットは同等の結果を与える
【0338】
表9および表10は、直接標識された抗アジドメチル塩基抗体を使用するE.コリゲノムDNA上の非標識リバーシブルターミネーターの染色を用いて得られた、(トップシグナル)、Rho(バックグラウンドおよびクロストークを引いたシグナル)、バックグラウンドシグナルおよびシグナル対ノイズ比(SNR)の値を示す。この実験は、E.コリゲノムDNAライブラリーを用いてBGISEQ-500フローセルアレイにより行い、BGISEQ-500DNAシークエンサーによりスキャンした。固定化されたDNBにプライマーをハイブリダイズさせ、BG9ポリメラーゼを使用して各1μMの濃度の4つ全ての標識されていないヌクレオチド3’-アジドメチルRT(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)の存在下35℃で2分間伸長させた。組込みおよび組み込まれなかったヌクレオチドを除去するための洗浄後、示した濃度(例えば、「@30」は30ug/mLを意味する)の4つ全ての標識された抗3’-アジドメチル塩基抗体(抗体セット1)を35℃で各2分の2回の逐次的なインキュベーションにわたりインキュベートすることにより、組み込まれた3’-アジドメチル塩基ヌクレオチドを同時に検出した。
【0339】
第2のアレイは抗体セット2を使用してプロービングした。抗体セット2は同じ抗体調製物を含むが、抗体は異なる標識をされている。表10は、抗体セット2を適用した後のシグナルを示す。データは、シグナルおよびSNR値が、直接標識されたフルオロフォアの素性とは独立してベースコール解析のために好適であることを実証する。
【0340】
【0341】
【実施例11】
【0342】
11.11 実施例11:3’ブロッキング基の除去を伴わない抗NLRT抗体の除去
【0343】
本明細書の別の箇所において論じたように、抗体の除去(プライマー伸長産物からの解離)を3’ブロッキング基の切断(cleavge)および除去から切り離すことができ、表11は、抗体が特異的競合により除去される実験の結果を示す。4つの非標識3’-アジドメチル塩基ヌクレオチドを使用してE.コリライブラリーを含むDNBアレイ上でプライマー伸長を行った。染色は、色セット1のフルオロフォアを用いて直接標識された4つ全ての抗3’-アジドメチル塩基抗体(実施例10を参照)を同時にインキュベートすることで行った。50%のWB1、50%のAb緩衝液中57℃で2分間、20μMの遊離抗原(3’-O-アジドメチル-2’-デオキシグアニン、デオキシアデニン、デオキシシトシン、デオキシチミン;それぞれ三リン酸形態)の存在下でインキュベートすることにより、特異的競合を使用して検出用親和性試薬を除去した。Ab除去手順は、(1)WB1、55℃;(2)除去溶液;(3)WB1、20℃;(4)WB2;(5)SREであった。WB1:NaCl 0.75M、クエン酸ナトリウム 0.075M、Tween 20 0.05%、pH7.0;WB2 NaCl 50mM、トリス-HCl pH9 50mM、Tween 20 0.05%、EDTA 1mM、pH9.0;SRE NaCl 400mM、トリスHCl pH7 1000mM、Lアスコルビン酸ナトリウム 100mM、Tween 20 0.05%、pH7.0。
【0344】
データは、シグナルおよびSNRが有意に低減されることを示し、DNBアレイからの親和性検出試薬の大部分の除去を指し示す。
【0345】
【実施例12】
【0346】
11.12 実施例12:抗NLRT抗体の除去および複数サイクルのシークエンシングにおける再プロービング
【0347】
本実施例は、(1)第1の位置における塩基の素性が該塩基および3’ブロッキング基に特異的な第1の一次抗体による結合を検出することにより決定され;(2)3’ブロッキング基を除去することなく第1の一次抗体を除去し;(3)該塩基および3’ブロッキング基に特異的な第2の一次抗体を使用して同じ位置を再プロービングする方法を記載する。これらの実験の結果を表12に要約する(sumarized)。
【0348】
表12は、異なる蛍光色の組合せ(実施例10に記載)からの2つの独立したリードを合計で20の位置のリードのための新生シークエンシングバイシンセシス鎖の各位置について組み合わせた時の向上したDNA配列素性マッピング率を示す。「オッドインデプ」(odd indep)は、各シークエンシング位置について「従来色」の初期リードを表す。「イーブンインデプ」(even indep)は、表12に概説する手順を使用した特異的競合による除去後の「代替色」のその後のリードを表す。「コンボ」(combo)は、2つの独立したリードのそれぞれを比較し、結果を2つのリードのより高い強度、したがってより高い信頼度の値に対して重み付けした結果を表す。結果は、この技術を使用して2つの独立したリードを組み合わせた時の有意により高いマッピング率および有意により低いミスマッチ率を示す。
【0349】
【0350】
以上の発明は、理解を明確にする目的から説明および例により一部の詳細において記載したものであるが、ある特定の変更および改良が添付の請求項の範囲内において実施され得ることを当業者は理解するであろう。加えて、本明細書において提供される各参考文献は、参照することにより各参考文献が個々に組み込まれるのと同じ程度まで、参照することによりその全体が組み込まれる。本出願と本明細書において提供される参考文献との間に不一致が存在する場合は本出願が優先される。
【要約】
本発明は、核酸のシークエンシングおよび他の応用のための組成物および方法を提供する。シークエンシングバイシンセシスにおいて、非標識リバーシブルターミネーターが、各サイクルにおいてポリメラーゼにより組み込まれ、組込み後に、直接的または間接的に標識された抗体または他の親和性試薬をリバーシブルターミネーターに結合させることにより標識される。
【選択図】
図9