(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220217BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220217BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220217BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220217BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B3/00 A
G03F7/20 521
F21S2/00 330
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2017113552
(22)【出願日】2017-06-08
【審査請求日】2020-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 竹夫
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039871(JP,A)
【文献】特開2016-075799(JP,A)
【文献】特開2016-184126(JP,A)
【文献】特開2006-133635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
F21S 2/00-45/70
F21K 9/00-9/90
F21Y 115:10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED素子を含む光源部と、
前記光源部から射出される光を、コリメートすることなく発散角を狭める第一光学系と、
前記第一光学系から射出された光を集光する第二光学系と、
入射面が前記第二光学系の焦点位置に配置されたインテグレータ光学系とを備え
、
前記複数のLED素子の像が結像する位置は、光軸方向に関して、前記インテグレータ光学系の前記入射面よりも前段又は後段にずれた位置であることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記LED素子は、前記第一光学系に対向する側に、発光面と前記発光面を区切るように設けられた線状の電極とを有し、
前記LED素子の中心点から射出された光線の最大放射角をθ
1、前記光線が前記第二光学系を射出された後の集光角をθ
2、前記電極の幅をd
1、前記光線が前記第二光学系を射出された後に前記焦点位置を横切るときの光軸に直交する長さをL
1としたときに、L
1の値が下記(1)式を満たすように、前記第一光学系及び前記第二光学系の位置が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
2d
1・(θ
1/θ
2)≦ L
1 ≦50d
1・(θ
1/θ
2) ‥‥‥(1)
【請求項3】
前記インテグレータ光学系は、複数のレンズがマトリクス状に配置されたフライアイレンズで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特に、複数のLED素子を備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を活用した光処理技術が多様な分野で利用されており、例えば、光を用いた微細加工に露光装置が利用されている。近年では、露光技術は種々の分野で展開されており、微細加工の中でも比較的大きなパターンの作製や三次元的な微細加工に利用されている。より具体的には、例えばLEDの電極パターンの作製や、加速度センサーに代表されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造工程などに露光技術が利用されている。
【0003】
これらの光処理技術において、光源としては、以前から輝度の高い放電ランプが用いられていた。しかし、近年の固体光源技術の進歩に伴い、複数のLED素子が配置されたものを光源として利用することが検討されている。
【0004】
下記特許文献1には、複数のLED素子から射出された光を平行光にした後、集光し、ロッドインテグレータに入射させた光学系が開示されている。下記特許文献2には、複数のLED素子から射出された光をレンズアレイを通すことで、二次光源としての拡大実像を生成した後、当該拡大実像から射出される光を集光レンズを介して被照射面に導く光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-207300号公報
【文献】特開2006-133635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LED素子は、半導体層に電流を流すことで光を発する素子であるそして、LED素子の発光面には、輝度の高い領域と輝度の低い領域が存在しやすく、場所に応じた輝度ムラが生じやすい。例えば、LED素子の発光面側に、半導体層に対して電流を供給するための電極を配置する構成の場合、電極形成箇所は非発光領域となるため、電極が形成されている箇所と電極が形成されていない箇所とで輝度の分布が不可避的に発生する。また、LED素子の発光面とは反対側の面に、半導体層に対して電流を供給するための電極を配置する構成の場合であっても、電極が配置されている近傍の領域と、前記領域から離れた領域とで電流密度の差が生じ、これに基づいて輝度の分布が生じる場合がある。更に、LED素子の発光面とは反対側の面に、半導体層に対して電流を供給するための電極を配置する構成の場合において、裏面側の電極がそのまま発光面側に映り込むことで、発光面上に輝度の低い領域を形成することも考えられる。
【0007】
特許文献1の技術は、各LED素子からの射出光をコリメートした後、集光レンズによって集光し、集光レンズの焦点位置にロッドインテグレータを配置している。このため、ロッドインテグレータの光入射面には、各LED素子からの射出光がほぼ一点に集まるため、高い輝度が実現される。
【0008】
しかしながら、ロッドインテグレータの光入射面には、各LED素子の発光面そのものが像として現れる。このため、当該入射面上には、上述した輝度ムラが存在する。ロッドインテグレータ内では、入射された光が反射を繰り返すことで混ぜ合わされるため、ロッドインテグレータの光射出面では、光入射面と比較して照度ムラが抑制されることが期待される。しかし、この効果を十分に実現するためには、反射回数を十分に確保する必要があるところ、比較的大型のロッドインテグレータを配置する必要がある。
【0009】
特許文献2の技術は、集光レンズの手前に設けられたレンズアレイによって、各LED素子の拡大実像が配置されることで、実質的に二次光源が生成される。この二次光源は、隣接するLED素子同士の間隔よりも狭められた状態で配置されることとなるため、隣接するLED素子同士の間隔に起因した非発光領域が存在することによる輝度ムラが緩和されている。そして、集光レンズから射出された光は、発散角に応じて異なる位置に集光されるように形成されるため、照射面上において滑らかな照度分布が実現される。これにより、各LED素子の発光面上に存在していた輝度ムラに起因する照度ムラが緩和されている。
【0010】
しかしながら、照射面上の異なる位置に光が集光される光学系であるため、不可避的に、有効照射領域内での平均輝度が当該照射領域内での最高輝度よりも低下する。特許文献2の方法では、この輝度の低下に対する対策を、複数段のレンズアレイを配置することで講じていると考えられるが、光学系が複雑化し、装置規模の拡大と煩雑な光軸調整を招くという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、簡易な光学系の構成によって、輝度の低下の抑制と照度ムラの抑制を両立した光源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光源装置は、
複数のLED素子を含む光源部と、
前記光源部から射出される光を、コリメートすることなく発散角を狭める第一光学系と、
前記第一光学系から射出された光を集光する第二光学系と、
入射面が前記第二光学系の焦点位置に配置されたインテグレータ光学系とを備えたことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、複数のLED素子から射出されて、第二光学系に入射される複数の光線は、非平行である。このため、第二光学系の焦点位置において、これらの複数の光線は一点に集光されず、所定の大きさを有した領域内に集光される。この焦点位置にインテグレータ光学系の入射面が配置されているため、インテグレータ光学系の入射面上には、LED素子の像そのものが明確に現れるのではなく、いわゆる「ピンぼけ」の状態で像が現れる。
【0014】
上記の構成は、このように意図的にピンぼけの状態でインテグレータ光学系の入射面に光を導いている。このとき、発光領域と電極などで構成される非発光領域とがLED素子の発光面上に存在することに伴って生じる輝度ムラについても、ぼやけた状態でインテグレータ光学系の入射面に現れる。これにより、LED素子上で電極が存在していた箇所(非発光領域)から射出された光線が導かれる場所に対応する輝度の低い領域の一部と、発光領域から射出された光線が導かれる場所に対応する輝度の高い領域の一部が、インテグレータ光学系の入射面上で重なり合う。この結果、特許文献1の構成と比較して、インテグレータ光学系の入射面上での輝度ムラが低下し、インテグレータ光学系から射出された光の照射面上での照度ムラが低下する。ここでいう「照射面」とは本発明の光源装置から射出される光を利用することが予定されている領域を意味する。
【0015】
また、上記の構成によれば、複数のLED素子から射出された光を、単にピンぼけの状態でインテグレータ光学系の入射面に導くのみで実現できるため、特許文献2の構成と比較して極めて簡易な光学系で実現できる。更に、インテグレータ光学系の入射面は、第二光学系の焦点位置であるため、インテグレータ光学系の入射面上に入射される光は高い輝度が担保される。そして、この高い輝度の光が、インテグレータ光学系を介して照射面に射出される。つまり、特許文献2の構成と比較して、高い輝度の光を照射面に導くことができる。
【0016】
更に、上記の構成によれば、例えば、第一光学系と第二光学系の距離を調整することで、インテグレータ光学系の入射面に導かれる像のピントを容易に調整することができる。像のピントが合う方向に調整すれば、インテグレータ光学系の入射面上での輝度を高めることができる一方で、前記入射面上での輝度のムラが現れやすくなる。逆に、像のピントがずれる方向に調整すれば、インテグレータ光学系の入射面上での輝度ムラを更に解消させることができる一方で、前記入射面上での輝度が低下する。光源装置から射出される光を利用するアプリケーションの要請に応じて、臨機応変の対応が可能となる。
【0017】
前記LED素子は、前記第一光学系に対向する側に、発光面と前記発光面を区切るように設けられた線状の電極とを有し、
前記LED素子の中心点から射出された光線の最大放射角をθ1、前記光線が前記第二光学系を射出された後の集光角をθ2、前記電極の幅をd1、前記光線が前記第二光学系を射出された後に前記焦点位置を横切るときの光軸に直交する長さをL1としたときに、L1の値が下記(1)式を満たすように、前記第一光学系及び前記第二光学系の位置が調整されているものとしても構わない。
2d1・(θ1/θ2)≦ L1 ≦50d1・(θ1/θ2) ‥‥‥(1)
【0018】
前記インテグレータ光学系は、複数のレンズがマトリクス状に配置されたフライアイレンズで構成されているものとしても構わない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光源装置によれば、簡易な光学系によって、輝度の低下の抑制と照度ムラの抑制を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】光源装置の光学系の一例を模式的に示す図面である。
【
図3A】フライアイレンズに対してLED素子のピントが合っている場合の、フライアイレンズの光入射面上の像を模式的に示す図面である。
【
図3B】
図3Aからフライアイレンズの各領域のみを抜き出して示した図面である。
【
図3C】フライアイレンズに対してLED素子のピントが合っている場合の、照射面上での像を模式的に示す図面である。
【
図3D】フライアイレンズに対してLED素子のピントがずれている場合の、照射面上での像を模式的に示す図面である。
【
図4】一つのLED素子から射出された光線を模式的に示す図面である。
【
図5】別実施形態の光源装置の光学系を模式的に示す図面である。
【
図6】別実施形態の光源装置の光学系を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光源装置につき、図面を参照して説明する。なお、各図における寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0022】
図1は、光源装置の光学系の一例を模式的に示す図面である。光源装置1は、光源部2と、第一光学系5と、第二光学系7と、インテグレータ光学系8とを備える。
【0023】
光源部2は、複数のLED素子3を含む。本実施形態では、一例として複数のLED素子3は、所定の平面上(ここではX-Y平面とする。)に配置されている。ただし、本発明において、複数のLED素子3の配置態様は、どのようなものであっても構わない。なお、
図1において、光軸11の方向をZ方向とする。
【0024】
第一光学系5は、複数のLED素子3から射出された光をコリメートすることなく発散角を狭める光学系であり、各LED素子3に対応して複数のレンズ6が配置されて構成されている。
図1では、各LED素子3に対応して一つのレンズ6が配置される構成が図示されているが、各LED素子3に対応して光軸11の方向に複数のレンズ6が配置されていても構わない。
【0025】
第二光学系7は、第一光学系5から射出された光を、第二光学系7の焦点7fに集光する光学系である。
【0026】
本実施形態では、インテグレータ光学系8がフライアイレンズ10によって構成されている。フライアイレンズ10は、その入射面10aが、第二光学系7の焦点7fの位置になるように配置されている。ただし、本明細書では、「焦点位置に配置する」とは、完全に焦点の位置に一致する場合の他、焦点距離に対して光軸11に平行な方向に±10%の距離だけ移動した位置を含む概念であるものとする。なお、
図1における光軸11とは、インテグレータ光学系8の入射面、すなわちフライアイレンズ10の入射面10aに対して直交する軸としている。
【0027】
各LED素子3から射出された光は、第一光学系5、及び第二光学系7を通過して、フライアイレンズ10の入射面10aに向かって進行する。第二光学系7は集光光学系であるため、各光線は第二光学系7の焦点7fに向かって進行する。しかし、上述したように、第一光学系5から射出された光線はコリメートされていない。このため、フライアイレンズ10の入射面10aに入射された光は、一点には集光されず、幅を有した領域13内に集められる。
【0028】
このとき、フライアイレンズ10の入射面10a上には、LED素子3の像がぼやけた状態で現れる。すなわち、ピントが合っていない状態で像が表示される。なお、
図1において、フライアイレンズ10が存在しない場合にLED素子3の像が結像する位置を符号15で表示している。
【0029】
図2は、LED素子3を、光取り出し面側、すなわち第一光学系5側からZ軸方向に見たときの模式的な平面図である。LED素子3は、半導体層で発生した光が取り出される発光領域22と、半導体層に対して電流を供給するための線状の電極21とを有する。なお、
図2では、電極21に対して外側から電流を供給するためのワイヤ14が連結されている。
【0030】
電極21は、例えば、Ni/Al/Ni/Ti/Au、Cr/Au、Ti/Pt/Au、Ti/Pt/Cr/Au/Cr/Pt/Auなどで構成される。すなわち、電極21は、LED素子3で生成された光を全く又はほとんど透過しない材料で構成されており、非発光領域を構成する。つまり、LED素子3の発光面は、発光領域22と、電極21からなる非発光領域を有している。
【0031】
上述したように、本実施形態の構成によれば、フライアイレンズ10の入射面10a上には、ピンぼけした状態のLED素子3の像が現れる。これにより、電極21からなる非発光領域の像の一部は、発光領域22の像の一部と重なり合う。この結果、入射面10a上には輝度ムラが緩和された光が入射される。
【0032】
また、フライアイレンズ10の入射面10aは、第二光学系7の焦点位置に配置されている。このため、入射面10aには、全てのLED素子3から射出された光が、狭い領域13内に集光され、フライアイレンズ10に対して高い輝度の光が入射される。これにより、フライアイレンズ10から射出された光を利用するアプリケーションに対して、高い輝度の光を提供することができる。
【0033】
図3A~
図3Dは、本発明の作用を模式的に示す図面である。
図3A~
図3Cは、フライアイレンズ10に対してLED素子3のピントが合っている場合の、フライアイレンズ10の光入射面上の像を模式的に示す図面である。フライアイレンズ10に対してLED素子3のピントが合っている場合とは、例えば、
図1において、LED素子3から射出された光がコリメートされた後、第二光学系7に入射される場合が対応する。
【0034】
図3Aは、フライアイレンズ10の入射面上の像を模式的に示す図面であり、
図3Bは、
図3Aからフライアイレンズ10の各領域のみを抜き出した図面である。
図3A及び
図3Bには、電極21の像21bと発光領域22の像22bが各フライアイレンズ10の入射面上に現れている様子が模式的に示されている。
【0035】
図3A及び
図3Bに示すように、フライアイレンズ10に対してLED素子3のピントが合っている場合、フライアイレンズ10から射出された光の照射面上には、
図3Cに示すように、各LED素子3の像3bが重ね合わされて表示される。この結果、照射面上には、電極21の像21bが重なり合った領域と、発光領域22の像22bが重なり合った領域とで、輝度の差が現れやすい。
図3Cにおいて、フライアイレンズ10の外周部の像を10bで表記している。
【0036】
これに対し、本実施形態のように、フライアイレンズ10に対してLED素子3のピントがずれている場合、
図3Dに示すように、フライアイレンズ10の外周部の像10bがずれるため、電極21の像21b、及び発光領域22の像22bが、それぞれずれて重ね合わせられる。この結果、
図3Cの状態と比較して、照射面上における輝度の差が緩和される。
【0037】
図4は、一つのLED素子3から射出された光線を模式的に示す図面である。
図4において、θ
1はLED素子3の中心点から射出された光線の最大放射角であり、θ
2はLED素子3の中心点から射出された光線が、第二光学系7から射出された後の集光角である。また、L
1は前記光線が第二光学系7を射出された後、第二光学系7の焦点位置7fを横切るときの光軸11に直交する長さである。
【0038】
図2において、LED素子3が備える電極21の幅をd
1とすると、下記(1)式を満たすように、第一光学系5及び第二光学系7の位置が調整されているのが好ましい。
2d
1・(θ
1/θ
2)≦ L
1 ≦50d
1・(θ
1/θ
2) ‥‥‥(1)
【0039】
L1の大きさを小さくし過ぎると、フライアイレンズ10の入射面10a上における輝度は高くなるものの、LED素子3上の発光領域22と非発光領域を構成する電極21とが明確に現れてしまう。この結果、入射面10a上での輝度バラツキが顕在化してしまう。他方、L1の大きさを大きくし過ぎると、LED素子上3の発光領域22と電極21との境界がぼやけることでフライアイレンズ10の入射面10a上における輝度バラツキが解消するものの、入射面10a上での輝度が低下してしまう。
【0040】
非発光領域の大きさは、電極21の幅に依存する。このため、電極21の幅が大きいLED素子3においては、入射面10a上における輝度バラツキが現れやすい。このような場合には、入射面10a上でのピンボケの程度を高めることで、輝度バラツキの低下性能を高める。逆に、電極21の幅が小さいLED素子3においては、ピンぼけの程度を低下させ、入射面10a上での輝度を高める。これにより、光を利用するアプリケーションに対して、輝度の低下と照度ムラの双方が抑制された光を提供することができる。
【0041】
一例として、θ1=120°、θ2=3°、d1=15μmとすると、1.2mm≦L1≦30mmとなる。取り得る値として、θ1は60°以上150°以下であり、θ2は1°以上50°以下であり、d1は5μm以上100μm以下である。
【0042】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0043】
〈1〉上述の実施形態では、LED素子3の像が結像する位置15が、フライアイレンズ10の入射面10aよりも後段の位置になるように各光学系が配置されているものとして説明した。しかし、
図5に示すように、LED素子3の像が結像する位置15が、フライアイレンズ10の入射面10aよりも前段の位置になるように各光学系が配置されているものとしても構わない。この場合においても、フライアイレンズ10の入射面10a上の領域13には、各LED素子3の像がピンぼけの状態で現れる。
【0044】
〈2〉上述の実施形態では、インテグレータ光学系8がフライアイレンズ10で構成されている場合について説明した。しかし、
図6に示すように、インテグレータ光学系8がロッドインテグレータ30で構成されているものとすることもできる。
【0045】
ロッドインテグレータ30は、入射面30aに入射された光を、側面で全反射を繰り返させながら射出面30bへと導くことで、射出面30bにおける光の照度分布を均一化する機能を有する導光部材(光ガイド)の一例である。このような導光部材は、例えば、ガラスや樹脂などの光透過性の材料からなる柱状部材、内面が反射鏡で構成された中空部材等で構成される。後者の構成のものは、特にライトトンネルと称されることがある。なお、導光部材は、その内部において、光軸に平行な方向に複数の光路が分割されて構成されていても構わない。
【0046】
ただし、フライアイレンズ10は、分割された各レンズの像が照射面上で重ね合わせられることで、照度の均一化を図る光学部材であるのに対し、ロッドインテグレータ30は、発光面からの射出光が、ロッドインテグレータ30の内部で反射を繰り返すことで照度の均一化を図る光学部材である。このため、ロッドインテグレータ30と比較してフライアイレンズ10の方が、LED素子3の発光面上における輝度差の影響を受けやすい。このため、上記実施形態で説明したように、インテグレータ光学系8がフライアイレンズ10で構成される場合に、輝度ムラを解消する効果をより確保することができる。
【0047】
〈3〉本発明は、光源部2と第一光学系5の間に反射光学系を適宜配置して光の進行方向を変更する態様を排除するものではない。また、本発明は、光源部2に含まれる各LED素子3が概ねXY平面上に配置されており、いくつかのLED素子3が、Z方向に変位して配置されている態様を排除するものではない。光源部2と第一光学系5の間に反射光学系を適宜配置されており、各LED素子3が概ね配置されている平面がXY平面とは異なる平面である場合についても同様である。
【0048】
〈4〉上述の実施形態では、LED素子3は、発光領域22と同じ側の面に電極21が形成されているものとして説明したが、発光領域22とは反対側の面に電極が形成されているものとしても構わない。この場合であっても、電極の位置や、電極からの距離に応じて、発光領域22の面内に輝度の分布が生じ得る。このような輝度の分布は、LED素子3が同一の設計で製造されている限り、各LED素子3に対して同様に発生する。このため、各LED素子3から射出された光をコリメートした後に集光する場合には、同様の課題が発生する。
【0049】
従って、光源部2が、発光領域22とは反対側の面に電極が形成されているようなLED素子3を複数有する場合においても、光源部2から射出された光を、第一光学系5によってコリメートすることなく発散角を狭めた後に、第二光学系によって集光し、第二光学系7の焦点7fの位置に配置されたインテグレータ光学系8に入射させることで、インテグレータ光学系8の入射面上に、LED素子3の像が「ピンぼけ」の状態で像が現れるため、インテグレータ光学系8の入射面上での輝度ムラを緩和する効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 : 光源装置
2 : 光源部
3 : LED素子
3a,3b : LED素子の像
5 : 第一光学系
6 : レンズ
7 : 第二光学系
7f : 第二光学系の焦点
8 : インテグレータ光学系
10 : フライアイレンズ
10a : フライアイレンズの入射面
10b : フライアイレンズの外周面の像
11 : 光軸
13 : 光の入射領域
14 : ワイヤ
15 : LEDの像が結像する位置
21 : 電極(非発光領域)
21b : 電極(非発光領域)の像
22 : 発光領域
22b : 発光領域の像
30 : ロッドインテグレータ
30a : ロッドインテグレータの入射面
30b : ロッドインテグレータの射出面