IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タダノの特許一覧

<>
  • 特許-ブームヘッド 図1
  • 特許-ブームヘッド 図2
  • 特許-ブームヘッド 図3
  • 特許-ブームヘッド 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ブームヘッド
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/66 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
B66C23/66 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017245636
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019112168
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月11日に株式会社タダノ発行の資料「CREVO mini G4」に掲載 平成29年10月11日に株式会社タダノ発行の資料「タダノ ラフテレーンクレーンGR-130NL型/GR-130N型(パワーチルトジブ)仕様書(暫定版)」に掲載 平成29年12月18日に株式会社タダノのホームページにて掲載(http://www.tadano.co.jp/ir/newsrelease/2017/171218.html)
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】畑 友貴
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-036397(JP,U)
【文献】特開昭48-005147(JP,A)
【文献】特開平05-139693(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187279(JP,U)
【文献】米国特許第04484686(US,A)
【文献】実開昭62-157779(JP,U)
【文献】特開平10-258990(JP,A)
【文献】特開2008-013343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端に対向して配置される左側板及び右側板と、
前記左側板と前記右側板の間に回転自在に支持される複数のシーブと、を備えるブームヘッドであって、
複数の前記シーブは、前記左側板と前記右側板の間の上部に配置される1つの上側シーブと、前記左側板と前記右側板の間の下部に配置される複数の下側シーブと、のみから構成されており、
複数の前記下側シーブの後方側に、ジブを取り付ける際に前記ジブの基端部が係合されるピンが前記両側板を貫通して設置されており、前記ジブを振出す際に、前記ジブの先端部と前記上側シーブとの間に前記下側シーブを経由してワイヤロープ張力を作用させるようになっている、ブームヘッド。
【請求項2】
複数の前記下側シーブは、前記上側シーブよりも前方側に配置されている、請求項1に記載されたブームヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンのブームヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンには、旋回・起伏自在なブームが搭載されている。そして、ブームの先端には、複数のシーブ(滑車)を備えたブームヘッドが取り付けられている。従来から、このブームヘッドとして、様々な構成のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたブームヘッドは、走行時にはメインフックが上方に回動して格納されるとともに、サブフックもメインフックの側方において上方に回動して格納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-352470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来のブームヘッドは、メインフック用シーブとサブフック用シーブとを別々に備えていたため、重量が大きくなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、軽量化を達成しつつもメインフック及びサブフックの両方に使用できるブームヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のブームヘッドは、ブームの先端に対向して配置される左側板及び右側板と、前記左側板と前記右側板の間に回転自在に支持される複数のシーブと、を備えるブームヘッドであって、複数の前記シーブは、前記左側板と前記右側板の間の上部に配置される1つの上側シーブと、前記左側板と前記右側板の間の下部に配置される複数の下側シーブと、のみから構成されており、複数の前記下側シーブの後方側に、ジブを取り付ける際に前記ジブの基端部が係合されるピンが前記両側板を貫通して設置されている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明のブームヘッドは、ブームの先端に対向して配置される左側板及び右側板と、左側板と右側板の間に回転自在に支持される複数のシーブと、を備えるブームヘッドであって、複数のシーブは、左側板と右側板の間の上部に配置される1つの上側シーブと、左側板と右側板の間の下部に配置される複数の下側シーブと、のみから構成されている。このような構成によれば、軽量化を達成しつつもメインフック及びサブフックの両方に使用できるブームヘッドとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ラフテレーンクレーンの側面図である。
図2】ブームヘッドの側面図である。
図3】ブームヘッドの正面図である。
図4】ジブの振り出し方について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例
【0011】
(構成)
まず、図1を用いて本実施例のブームヘッド40を備える移動式クレーンとしてのラフテレーンクレーン1の全体構成について説明する。以下の実施例では、移動式クレーンとしてラフテレーンクレーン1を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、カーゴクレーン、トラッククレーン、オールテレーンクレーンなどの他の移動式クレーンにも広く本発明を適用できる
【0012】
(クレーンの全体構成)
本実施例のラフテレーンクレーン1は、図1に示すように、走行機能を有する車両の本体部分となる車体部10と、車体部10の四隅に設けられたアウトリガ11,・・・と、車体部10に水平旋回可能に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13に取り付けられたブーム14と、を備えている。
【0013】
アウトリガ11は、スライドシリンダを伸縮することで車体部10から幅方向外側にスライド張出/スライド格納可能であるとともに、ジャッキシリンダを伸縮することで車体部10から上下方向にジャッキ張出/ジャッキ格納可能である。
【0014】
旋回台12は、旋回用モータの動力を伝達されるピニオンギヤを有しており、このピニオンギヤが車体部10に設けた円形状のギヤに噛み合うことで旋回軸を中心に回動する。旋回台12は、前方右側に配置された運転室18と、後方中央に配置されたブラケット13と、後方下部に配置されたカウンタウェイト19と、を有している。
【0015】
ブーム14は、複数段のブーム構成要素である、基端ブーム141、1乃至複数の中間ブーム142(図2では142a~142d)、先端ブーム143などによって入れ子式に構成されており、内部に配置された伸縮シリンダによって伸縮できるようになっている。
【0016】
さらに、本実施例では、基端ブーム141の下面に、ジブ50及びテンションロッド60、60が下抱き姿勢にて格納されている。ジブ50は全体としてY字形状をなしており、基端側がブーム先端部と係合可能な二股状となっている。格納姿勢では、2本のテンションロッド60、60は、ジブ50の側方に重なるようにして配置されている。
【0017】
最も外側の基端ブーム141は、付け根部がブラケット13に水平に設置された支持軸に回動自在に取り付けられており、支持軸を回転中心として上下に起伏できるようになっている。さらに、ブラケット13と基端ブーム141の下面との間には、起伏シリンダ15が架け渡されており、起伏シリンダ15を伸縮することでブーム14全体を起伏することができるようになっている
【0018】
(ブームヘッドの構成)
そして、図2に詳細に示したように、先端ブーム143の最先端にはブームヘッド40が取り付けられている。ブームヘッド40は、対向して配置される左側板41及び右側板42と、左側板41と右側板42の間に回転自在に支持される複数のシーブとしての上側シーブ23及び下側シーブ21、22と、によって主に構成される。そして、下側シーブ21、22の後方側(基端側)に、ジブ50を取り付ける際にジブ50の基端部が係合されるピン43が設置されている。
【0019】
左側板41及び右側板42は、金属板によって下部が顎状に突き出た形状に形成されるものであり、両者間には上側シーブ23及び下側シーブ21、22の軸やジブ50用のピン43が架け渡されて、互いに平行となるように対向して配設されている。ジブ50用のピン43は、両側板41、42を貫通して左右に突出している。ジブ50用のピン43と下側シーブ21、22とは、ワイヤロープ16の索端を挿通することができるように、所定の距離をおいて離間して配置されている。
【0020】
そして、本実施例の複数のシーブは、上部に配置される1つの上側シーブ23と、下部に配置される2つの下側シーブ21、22と、から構成される。このうち、下部に配置される2つの下側シーブ21、22は、ブーム伸縮方向に見て、上部に配置される上側シーブ23よりも前方側(伸長側)に配置されている。すなわち、下側シーブ21、22は、左側板41及び右側板42の顎状に突き出た部分に配置されている。ここにおいて、下側シーブの数は2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。さらに、3本掛け以上で使用しない場合には、下側シーブの数は1つのみとすることもできる。
【0021】
より詳細に言うと、上側シーブ23の略直下にはピン43が配置されており、ピン43よりも前方側(ブーム伸縮方向に見て伸長側)に下側シーブ21、22が配置されている。すなわち、後方側のピン43と前方側の下側シーブ21、22は、所定の距離だけ離間している。
【0022】
同様に、フック(フックブロック)17には、2つのシーブ31、32が配置されている。そして、ウインチ45(図4も参照)から繰り出されたワイヤロープ16が、2つの下側シーブ21、22とフック側の2つのシーブ31、32との間に掛け回される。なお、フック側のシーブの数は2つに限定されるものではなく、1つであってもよいし(サブフック)、3つ以上であってもよい。
【0023】
具体的に言うと、2本掛けの場合には、ワイヤロープ16は、順に、第1の下側シーブ21と、フック側の第1のシーブ31と、に巻き掛けられて、ブームヘッド40側で終端する。このようにして、ブームヘッド40とフック17の間に架け回された2本のワイヤロープ16によって荷重を支持する(吊る)ことになる。
【0024】
同様に、4本掛けの場合には、ワイヤロープ16は、順に、第1の下側シーブ21と、フック側の第1のシーブ31と、第2の下側シーブ22と、フック側の第2のシーブ32と、に巻き掛けられて、ブームヘッド40側で終端する。このようにして、ブームヘッド40とフック17の間に架け回された4本のワイヤロープ16によって荷重を支持する(吊る)ことになる。
【0025】
(ジブ振出時の作用)
次に、図4を用いて本実施例のブームヘッド40を備えるラフテレーンクレーン1のジブ振出時の作用について説明する。
【0026】
まず、ジブ張出の方法について説明する。下抱き・下振り出し方式のジブ50の振り出し作業は、以下に説明するようにワイヤロープ16のロープ張力を利用して実施される。すなわち、はじめにブーム14とジブ50を水平状態で係合した後に、ジブ50を下抱き状態のままブーム14を起仰させ、ブーム14を伸長させることでジブ50をブーム14に取り付けているガイドに沿わせて図4に示す吊り下げ位置の状態とする。
【0027】
次に、フック17がジブ50の先端部に当接した状態から、さらにワイヤロープ16を巻き上げることで、ジブ50は自重モーメントに抗して前方へ(垂直よりも前方側に)振り出される。すなわち、ワイヤロープ16を上方に引っ張ることで、ピン43を回転中心とした右回りのモーメントが作用して、ジブ50が右回りに回転することになる。
【0028】
この振り出し時において、本実施例のブームヘッド40では、ジブ50の振り出しを効率よく実施することができる。つまり、下側シーブ21、22がピン43から所定の距離をおいて前方にずれて配置されているため、振り出し時のモーメントの腕の長さを確保して、ジブ50を振り上げやすくなっているのである。
【0029】
その後、テンションロッド60、60の基端側をブームヘッド40側に連結する。そして、チルト用シリンダ(不図示)を伸縮させることでジブ50のチルト角が設定されて、クレーン作業が実施可能な状態となる。
【0030】
(効果)
次に、本実施例のブームヘッド40の奏する効果を列挙して説明する
【0031】
(1)上述してきたように、ブームヘッド40は、ブーム14の先端に対向して配置される左側板41及び右側板42と、左側板41と右側板42の間に回転自在に支持される複数のシーブ21~23と、を備えるブームヘッド40であって、複数のシーブは、左側板41と右側板42の間の上部に配置される1つの上側シーブ23と、左側板41と右側板42の間の下部に配置される複数の下側シーブ21、22と、のみから構成されている。このような構成によれば、軽量化を達成しつつもメインフック及びサブフックの両方に使用できるブームヘッドとなる。
【0032】
つまり、本実施例のブームヘッド40であれば、1枚の上側シーブ23と2枚の下側シーブ21、22のみによって、1本掛けから4本掛けを可能としつつも、最小限の3枚のシーブ21~23の構成によってブームヘッド40の重量を軽くすることができる。このため、吊り上げ性能を向上させることができる。さらに、ワイヤロープ16も1本とすることで、いっそうの軽量化を達成することができる。
【0033】
さらに、2つの下側シーブ21、22は、同軸上に配置されることで、ブームヘッド40の縦幅(ブーム伸縮方向の長さ)を短縮することができる。これにより、必要なアプローチアングルを確保できるようになる。
【0034】
(2)また、複数の下側シーブ21、22は、上側シーブ23よりも前方側に配置されていることで、ジブ50を振り上げる際に、ピン43からの腕の長さを長くできるため、ジブ50を振り上げやすくなっている。つまり、下側のシーブ21、22がピン43から所定の距離をおいて前方にずれて配置されているため、ジブ50の振り出し時のモーメントの腕の長さを長くでき、ジブ50を振り上げやすくなっている。加えて、ブーム14を起こした姿勢では、前方側に配置された下側シーブ21、22は上方に位置するようになるため、可能な限り高い位置まで揚程を延ばすことができる。
【0035】
(3)さらに、複数の下側シーブ21、22の後方側に、ジブ50を取り付ける際にジブ50の基端部が係合されるピン43が設置されているため、ブームヘッド50の剛性を確保できる。すなわち、従来は、本発明のピン43の位置近傍にシーブの回転軸があり、これによって剛性を確保していた。これに対して本発明では、従来の位置にシーブの回転軸がないため、ピン43を貫通させることによって剛性を確保している。さらに、ピン43と下側シーブ21、22の回転軸が離されていることで、索端を通しやすくなる。
【0036】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1:ラフテレーンクレーン(移動式クレーン);
14:ブーム;
40:ブームヘッド;
41:左側板; 42:右側板; 43:ピン;
21:下側シーブ; 22:下側シーブ; 23:上側シーブ;
31~33:(フック側の)シーブ;
50:ジブ; 60:テンションロッド
図1
図2
図3
図4