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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/086 20060101AFI20220217BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20220217BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
E03C1/086
A47K3/28
B05B1/18 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017133792
(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公開番号】P2018059390
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016193287
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】永田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】浮貝 清岳
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138662(JP,A)
【文献】特表2013-522503(JP,A)
【文献】特開2016-069868(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141000(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015002740(DE,A1)
【文献】特開2008-308859(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165452(JP,U)
【文献】特開平07-166588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/086
A47K 3/28
B05B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を形成する吐水口形成部材と、
前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、
前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、
前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、
を備え、
前記露出整流部材は、前記吐水口側の領域に筒状の外周整流面を有しており、
前記外周整流面は、前記吐水口形成部材との間に、環状の整流空間を形成しており、
前記露出整流部材及び前記吐水口形成部材は、前記吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水であって前記整流部材を通過した水前記環状の整流空間から環状の水流として吐水するように形成されている
ことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記環状の整流空間は、円環状であり、
前記環状の整流空間の水の流れ方向の長さは、前記環状の整流空間の下流端の径方向の幅より大きい
ことを特徴とする請求項に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記露出整流部材は、水の流れの方向に延設された隔壁によって分離された複数の筒状の中空空間を有しており、
前記隔壁は、平面視において格子状である
ことを特徴とする請求項またはに記載の吐水装置。
【請求項4】
前記露出整流部材の最外周且つ最下流端における肉厚よりも、当該肉厚方向に見た前記環状の整流空間の幅の方が大きい
ことを特徴とする請求項に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記吐水口の内面の少なくとも下流端側の領域は、下流端に向けて先細状になっている
ことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項6】
前記露出整流部材と前記整流部材とは、前記整流部材の下流側の面と前記露出整流部材の上流側の面との間の間隙が前記露出整流部材を弾性変形させた際に前記整流部材にあたる程度に近接して設けられている
ことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項7】
前記露出整流部材は、前記吐水口とは反対側の領域において、複数の離散的に設けられたブリッジ部を介して、前記吐水口形成部材に固定されている
ことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項8】
吐水口を形成する吐水口形成部材と、
前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、
前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、
前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、
を備え、
前記露出整流部材は、前記吐水口側の外周領域に環状の整流空間を有しており、
前記露出整流部材は、前記吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水を環状の水流として前記環状の整流空間から吐水するように形成されている
ことを特徴とする吐水装置。
【請求項9】
前記環状の整流空間は、円環状であり、
前記環状の整流空間の水の流れ方向の長さは、前記環状の整流空間の下流端の径方向の幅より大きい
ことを特徴とする請求項に記載の吐水装置。
【請求項10】
前記露出整流部材は、前記環状の整流空間に対して内周側に、水の流れの方向に延設された隔壁によって分離された複数の筒状の中空空間を有しており、
前記隔壁は、平面視において格子状である
ことを特徴とする請求項またはに記載の吐水装置。
【請求項11】
前記環状の整流空間の内周を規定する前記露出整流部材の部分の最下流端における肉厚よりも、当該肉厚方向に見た前記環状の整流空間の幅の方が大きい
ことを特徴とする請求項10に記載の吐水装置。
【請求項12】
前記環状の整流空間の少なくとも下流端側の領域は、下流端に向けて先細状になっている
ことを特徴とする請求項乃至11のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項13】
前記露出整流部材と前記整流部材とは、前記整流部材の下流側の面と前記露出整流部材の上流側の面との間の間隙が前記露出整流部材を弾性変形させた際に前記整流部材にあたる程度に近接して設けられている
ことを特徴とする請求項乃至12のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項14】
前記環状の整流空間の外周を規定する前記露出整流部材の部分は、前記吐水口とは反対側の領域において、複数の離散的に設けられたブリッジ部を介して、前記環状の整流空間の内周を規定する前記露出整流部材の部分に固定されている
ことを特徴とする請求項乃至13のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項15】
前記露出整流部材は、弾性部材で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項16】
前記露出整流部材は、前記整流部材よりも変形し難い部材で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッドシャワーなどに採用され得る吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、吐水される水が人体等に着水する際に起こる水跳ねを低減させるため、また、吐水を美しくみせるため、整流部材(例えばメッシュ)を設けて吐水を整流する吐水装置を提案している(特許文献1)。
【0003】
より具体的には、特許文献1による吐水装置は、一本の水流としての吐水形状の継続距離を最大化し、たとえば低流量時においても浴室天井に設置した当該吐水装置からの水流は使用者の頭部や肩、または浴室床まで、吐水割れが起こらずに到達する。このような水流は着水時に人体に沿って水膜を形成し、全身を包み込み、水流が温水流である場合には深部体温の上昇に効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016- 75081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り、特許文献1は、特にオーバーヘッドシャワーに採用された時に有効な吐水装置を提案している。しかしながら、整流部材(例えばメッシュ)にカルシウムが析出してしまうという懸念が指摘されている。整流部材にカルシウムが析出してしまうと、吐水が乱れて、整流性能が著しく低下する。
【0006】
従って、整流部材にカルシウムが析出してしまった場合には、直ちに整流部材のメンテナンス(カルシウム除去)を行うことが必要である。しかしながら、従来の構造においてメンテナンスを行う場合、吐水部を分解して整流部材を取り外す必要があった。すなわち、メンテナンスが非常に困難であった。
【0007】
そこで、本件発明者は、簡単にメンテナンスを行えるような構造として、吐水口において露出する部材(部位)を弾性材料によって形成することについて、具体的には、整流部材に対して吐水口側に弾性材料からなる露出整流部材を設けることについて、鋭意検討を重ねてきた。そのような露出整流部材は、ユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。
【0008】
しかしながら、整流部材に対して吐水口側に弾性材料からなる露出整流部材を設けようとすると、露出整流部材は、強度上の問題と製造上の問題とから、ある程度の厚みが必要である。従って、そのような厚みを有する露出整流部材の下流端において吐水割れが発生してしまうことが知見された(図25参照)。
【0009】
吐水口の外周部で生じる当該吐水割れは、特に大流量時に発生しやすく、また、吐水口の外周部の整流性能は吐水全体の整流性能に大きく影響するため、回避が強く望まれる。
【0010】
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、簡単にメンテナンスを行える一方で、特に吐水口の外周部において高い整流性能を実現できる吐水装置を提供することである。
【0011】
更に、本件発明者は、整流部材が一般的に変形しやすい(繊細な)部材であって、異物が接触したり、ユーザが誤って押圧したりすると、整流部材が変形して当該整流部材の整流性能が低下してしまう場合があることを知見した。そして、本件発明者は、吐水口において露出する部材(部位)を整流部材とは別体の露出整流部材によって形成することが、整流部材を異物等による接触から保護する上で有効であることを知見した。この効果は、当該別体の露出整流部材が弾性部材でない場合にも得ることができる。
【0012】
しかしながら、整流部材に対して吐水口側に別体の露出整流部材を設けようとすると、露出整流部材は、強度上の問題と製造上の問題とから、ある程度の厚みが必要である。従って、そのような厚みを有する露出整流部材の下流端において吐水割れが発生してしまう(図25参照)。
【0013】
吐水口の外周部で生じる当該吐水割れは、特に大流量時に発生しやすく、また、吐水口の外周部の整流性能は吐水全体の整流性能に大きく影響するため、回避が強く望まれる。
【0014】
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、整流部材を効果的に保護することができる一方で、特に吐水口の外周部において高い整流性能を実現できる吐水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、吐水口を形成する吐水口形成部材と、前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、を備え、前記露出整流部材は、前記吐水口側の領域に筒状の外周整流面を有しており、前記外周整流面は、前記吐水口形成部材との間に、環状の整流空間を形成しており、前記露出整流部材及び前記吐水口形成部材は、前記吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水であって前記整流部材を通過した水前記環状の整流空間から環状の水流として吐水するように形成されていることを特徴とする吐水装置である。
【0016】
本発明によれば、吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水が環状の水流として吐水されるため、吐水口の外周部において整流性の高い吐水を行うことができる。このため、整流部材に対して吐水口側に別体の露出整流部材を設けることで吐水口の中心部の整流性が低下したとしても、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0017】
一つの具体的態様では、本発明は、吐水口を形成する吐水口形成部材と、前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、を備え、前記露出整流部材は、弾性材料によって形成され、前記吐水口側の領域に筒状の外周整流面を有しており、前記外周整流面は、前記吐水口形成部材との間に、環状の整流空間を形成していることを特徴とする吐水装置である。
【0018】
この態様では、弾性材料によって形成された露出整流部材の吐水口側の領域に、筒状の外周整流面が設けられていて、当該外周整流面と吐水口形成部材との間に環状の整流空間が形成されている。そのため、吐水口の外周部において整流性の高い吐水を行うことができるため、メンテナンス性を向上するために、整流部材に対して吐水口側に弾性部材からなる露出整流部材を設けることで吐水口の中心部の整流性が低下したとしても、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。すなわち、メンテナンス性と整流性能とを両立することができる。
【0019】
そして、露出整流部材が弾性材料で形成されていることにより、当該露出整流部材をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、メンテナンスを簡単に行うことができる。
【0020】
別の具体的態様では、本発明は、吐水口を形成する吐水口形成部材と、前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、を備え、前記露出整流部材は、前記吐水口側の領域に筒状の外周整流面を有しており、前記外周整流面は、前記吐水口形成部材との間に、環状の整流空間を形成していることを特徴とする吐水装置である。
【0021】
この態様では、露出整流部材の吐水口側の領域に、筒状の外周整流面が設けられていて、当該外周整流面と吐水口形成部材との間に環状の整流空間が形成されている。そのため、吐水口の外周部において整流性の高い吐水を行うことができるため、整流部材を保護するために、整流部材に対して吐水口側に露出整流部材を設けることで吐水口の中心部の整流性が低下したとしても、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。すなわち、整流部材の保護性と整流性能とを両立することができる。
【0022】
以上の各発明において、好ましくは、前記環状の整流空間は、円環状であり、前記環状の整流空間の水の流れ方向の長さは、前記環状の整流空間の下流端の径方向の幅より大きい。
【0023】
このような条件が満たされる場合、水流が環状の整流空間に入って縮流したとしても当該整流空間内で十分に整流されるため、全体としての整流性能を維持することができる。
【0024】
また、好ましくは、前記露出整流部材は、水の流れの方向に延設された隔壁によって分離された複数の筒状の中空空間を有している。複数の筒状の中空空間は、断面視で同心の円環状の領域の各々が更に周方向に複数に分割された態様であってもよい。特に、前記隔壁は、平面視において交線部を有する格子状であることが好ましい。ここで、本明細書における「格子状」という表現は、直線同士が交差する態様に限定されないで、直線と曲線とが交差する態様や、曲線同士(曲率が異なっていてもよい)が交差する態様をも含む。更に、本明細書における「格子状」という表現は、4つの辺(線分に限定されず円弧等の曲線でもよい)が区画をなす態様に限定されないで、3つの辺や5つ以上の辺が区画をなす態様をも含む。6つの等辺が区画をなす態様は、ハニカム状と呼ばれる。更に、本明細書における「格子状」という表現は、円や楕円など、「辺」を認識できないような形状全体として区画をなす態様をも含む。
【0025】
この場合、前記露出整流部材の最外周且つ最下流端における肉厚よりも、当該肉厚方向に見た前記環状の整流空間の幅の方が大きいことが、更に好ましい。
【0026】
このような条件が満たされる場合、環状の整流空間から吐水される水流の量を比較的多く維持することができるため、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持されるため、整流性能を更に向上させることができる。
【0027】
また、好ましくは、前記吐水口の内面の少なくとも下流端側の領域は、下流端に向けて先細状(切頭円錐状)になっている。
【0028】
この場合、露出整流部材の最外周且つ最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に低減することができる。
【0029】
また、好ましくは、前記露出整流部材と前記整流部材とは、前記整流部材の下流側の面と前記露出整流部材の上流側の面との間の間隙が前記露出整流部材を弾性変形させた際に前記整流部材にあたる程度に近接して設けられている。
【0030】
これによれば、露出整流部材が弾性部材によって形成されている場合、露出整流部材のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材を変形させることで当該露出整流部材が整流部材にあたり擦れることで整流部材に析出したカルシウム等の等の固着物を除去することができるため、当該整流部材のメンテナンスを同時に実施することができる。
【0031】
また、好ましくは、前記露出整流部材は、前記吐水口とは反対側の領域、特には前記吐水口とは反対側の端部、において、複数の離散的に設けられたブリッジ部を介して、前記吐水口形成部材に固定されている。
【0032】
これによれば、吐水口形成部材と共に環状の整流空間を提供するための筒状の外周整流面を効果的に形成することができる。
【0033】
以上に開示された態様では、露出整流部材が吐水口側の領域に筒状の外周整流面を有していて、当該外周整流面が吐水口形成部材との間に環状の整流空間を形成している。しかしながら、これに代えて、露出整流部材の吐水口側の外周領域が環状の整流空間を有していてもよい。この場合、本発明は、吐水口を形成する吐水口形成部材と、前記吐水口形成部材の内部に設けられ、前記吐水口の上流側において水の流れを整流する整流部材と、前記吐水口形成部材の内部であって前記整流部材に対して前記吐水口側に設けられ、当該吐水口側に露出された露出整流部材と、前記整流部材の上流側に水を供給する給水路と、を備え、前記露出整流部材は、前記吐水口側の外周領域に環状の整流空間を有しており、前記露出整流部材は、前記吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水を環状の水流として前記環状の整流空間から吐水するように形成されていることを特徴とする吐水装置である。
【0034】
このような態様でも、吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水が環状の水流として吐水されるため、吐水口の外周部において整流性の高い吐水を行うことができる。このため、整流部材に対して吐水口側に別体の露出整流部材を設けることで吐水口の中心部の整流性が低下したとしても、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0035】
このような態様においても、好ましくは、前記環状の整流空間は、円環状であり、前記環状の整流空間の水の流れ方向の長さは、前記環状の整流空間の下流端の径方向の幅より大きい。
【0036】
このような条件が満たされる場合、水流が環状の整流空間に入って縮流したとしても当該整流空間内で十分に整流されるため、全体としての整流性能を維持することができる。
【0037】
また、好ましくは、前記露出整流部材は、前記環状の整流空間に対して内周側に、水の流れの方向に延設された隔壁によって分離された複数の筒状の中空空間を有している。複数の筒状の中空空間は、断面視で同心の円環状の領域の各々が更に周方向に複数に分割された態様であってもよい。特に、前記隔壁は、平面視において交線部を有する格子状であることが好ましい。
【0038】
この場合、前記環状の整流空間の内周を規定する前記露出整流部材の部分の最下流端における肉厚よりも、当該肉厚方向に見た前記環状の整流空間の幅の方が大きいことが、更に好ましい。
【0039】
このような条件が満たされる場合、環状の整流空間から吐水される水流の量を比較的多く維持することができるため、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持されるため、整流性能を更に向上させることができる。
【0040】
また、好ましくは、前記環状の整流空間の少なくとも下流端側の領域は、下流端に向けて先細状(切頭円錐状)になっている。
【0041】
この場合、環状の整流空間の内周を規定する露出整流部材の部分の最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に低減することができる。
【0042】
また、好ましくは、前記露出整流部材と前記整流部材とは、前記整流部材の下流側の面と前記露出整流部材の上流側の面との間の間隙が前記露出整流部材を弾性変形させた際に前記整流部材にあたる程度に近接して設けられている。
【0043】
これによれば、露出整流部材が弾性部材によって形成されている場合、露出整流部材のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材を変形させることで当該露出整流部材が整流部材にあたり擦れることで整流部材に析出したカルシウム等の等の固着物を除去することができるため、当該整流部材のメンテナンスを同時に実施することができる。
【0044】
また、好ましくは、前記環状の整流空間の外周を規定する前記露出整流部材の部分は、前記吐水口とは反対側の領域において、複数の離散的に設けられたブリッジ部を介して、前記環状の整流空間の内周を規定する前記露出整流部材の部分に固定されている。
【0045】
これによれば、環状の整流空間を効果的に形成することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、吐水口から吐水される水のうち外周部に位置する水が環状の水流として吐水されるため、吐水口の外周部において整流性の高い吐水を行うことができる。このため、整流部材に対して吐水口側に別体の露出整流部材を設けることで吐水口の中心部の整流性が低下したとしても、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0047】
例えば、弾性材料によって形成された露出整流部材の吐水口側の領域に、筒状の外周整流面が設けられていて、当該外周整流面と吐水口形成部材との間に環状の整流空間が形成されている場合、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。そして、露出整流部材が弾性材料で形成されている場合、当該露出整流部材をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、メンテナンスを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図である。
図2図1の吐水装置の要部の分解斜視図である。
図3図1の吐水装置の露出整流部材を上から見た斜視図である。
図4図3の露出整流部材を下から見た斜視図である。
図5図1の吐水装置の下面図である。
図6図1の吐水装置のA-A線断面図である。
図7】環状の整流空間の幅と長さとの関係について説明する図である。
図8】環状の整流空間の幅と露出整流部材の最外周の下流端の肉厚との関係について説明する図である。
図9】吐水口の内面の傾斜について説明する図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図である。
図11図10の吐水装置の要部の分解斜視図である。
図12図10の吐水装置の下面図である。
図13】本発明の更に他の実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図である。
図14図13の吐水装置の要部の分解斜視図である。
図15図13の吐水装置の露出整流部材を上から見た斜視図である。
図16図15の露出整流部材を下から見た斜視図である。
図17図13の吐水装置の下面図である。
図18図13の吐水装置のA-A線断面図である。
図19】環状の整流空間の幅と長さとの関係について説明する図である。
図20】環状の整流空間の幅と当該環状の整流空間の内周を規定する前記露出整流部材の部分の最下流端の肉厚との関係について説明する図である。
図21】先細状(切頭円錐状)の環状の整流空間について説明する図である。
図22】本発明の更に他の実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図である。
図23図22の吐水装置の要部の分解斜視図である。
図24図22の吐水装置の下面図である。
図25】露出整流部材の下流端にブリッジ部が存在する場合の吐水割れについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図であり、図2は、図1の吐水装置の要部の分解斜視図であり、図3は、図1の吐水装置の露出整流部材を上から見た斜視図であり、図4は、図3の露出整流部材を下から見た斜視図であり、図5は、図1の吐水装置の下面図であり、図6は、図1の吐水装置のA-A線断面図である。
【0051】
図1乃至図6に示すように、本実施形態の吐水装置1は、吐水口2(図1において下方側に開口している)を形成する吐水口形成部材21を備えている。吐水口形成部材21の内部には、吐水口2の上流側において水の流れを整流する整流部材として、第1整流部材4と第2整流部材5とが設けられている。
【0052】
特に図2に示すように、第1整流部材4は、ディスク状部材によって構成されており、中心部分が遮蔽部43となっていて、外周領域に水の流れ方向に延びる16個の通水孔44が周方向に整列するように設けられ、略半分の直径の同心円上に水の流れ方向に延びる8個の通水孔45が周方向に整列するように設けられている。
【0053】
また、図2に示すように、第2整流部材5は、メッシュの網からなる4枚の整流網51が積層されることによって構成されている。第2整流部材5は、第1整流部材4の下流側に隣接するように配置されている。
【0054】
一方、図1に示すように、第1整流部材4の上流側には、水を供給する給水路3が設けられている。本実施形態では、吐水口形成部材21の上流側に隣接して配置された給水路形成部材31の内部に給水路3が形成されている。吐水口形成部材21と給水路形成部材31とは、例えばネジ固定やスナップフィッティングや接着や溶着といった方法で、互いに固定することができる。
【0055】
また、図1に示すように、給水路3と第1整流部材4との間に第1滞留室41が形成されていて、第1整流部材4と第2整流部材5との間に第2滞留室42が形成されている。そして、給水路3の下流端は、遮蔽部43の領域に収まり重なるように配置されている。従って、給水路3から供給される水は、遮蔽部43に衝突して第1滞留室41に滞留することができるようになっている。
【0056】
そして、図1乃至図6に示すように、吐水口形成部材21の内部であって、第2整流部材5に対して吐水口2側(図1における下方側)に、弾性材料によって形成された露出整流部材6が配置されている。弾性材料の例としては、シリコンゴム、NBR(二トリルブチルラバー)、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0057】
露出整流部材6は、吐水口2側(図1における下方側)の領域に、筒状の外周整流面61を有している。本実施形態では、外周整流面61は、円筒状の面である。逆に、露出整流部材6は、吐水口2とは反対側(図1における上方側)の領域において、周方向に略等間隔に設けられた7個のブリッジ部62を介して、大径の円環フランジ部63を有している。この円環フランジ部63が、吐水口形成部材21の内面に設けられた段差部21sと第2整流部材5との間に挟まれることで、露出整流部材6は吐水口形成部材21に固定されている。
【0058】
この態様により、露出整流部材6は、7個の離散的に設けられたブリッジ部62を介して、吐水口形成部材21に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0059】
また、露出整流部材6は、水の流れの方向に延設された隔壁64によって分離された複数の筒状の中空空間65を有している。複数の筒状の中空空間65は、本実施形態では、断面視で同心の円環状の領域の各々が更に周方向に複数に分割された態様となっている(図3乃至図6参照)。
【0060】
隔壁64は、平面視において交線部を有する格子状である。ここで、本明細書における「格子状」という表現は、直線同士が交差する態様に限定されないで、直線と曲線とが交差する態様や、曲線同士(曲率が異なっていてもよい)が交差する態様をも含む。更に、本明細書における「格子状」という表現は、4つの辺(線分に限定されず円弧等の曲線でもよい)が区画をなす態様に限定されないで、3つの辺や5つ以上の辺が区画をなす態様をも含む。6つの等辺が区画をなす態様は、ハニカム状と呼ばれる。更に、本明細書における「格子状」という表現は、円や楕円など、「辺」を認識できないような形状全体として区画をなす態様をも含む。
【0061】
そして、外周整流面61は、吐水口形成部材21との間に、環状の整流空間66を形成している。本実施形態では、環状の整流空間66は、円環状であって、図7(a)に示すように、当該環状の整流空間66の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間66の下流端の径方向の幅aより大きくなっている。
【0062】
このような寸法条件が採用されることにより、水流が環状の整流空間66に入って縮流したとしても、当該整流空間66内で十分に整流されるため、全体としての整流性能を維持することができる。すなわち、図7(b)に示すように、例えばb>aの関係が成り立つ程に十分にbの長さがあれば、縮流後、整流されて吐水される。(図7(c)は、縮流後、整流されずに吐水される状態を示している。)
【0063】
また、本実施形態では、図8(a)に示すように、露出整流部材6の最外周且つ最下流端における肉厚cよりも、当該肉厚方向に見た環状の整流空間66の幅aの方が大きくなっている。
【0064】
このような寸法条件が採用されることにより、環状の整流空間66から吐水される水流の量を比較的多く維持することができるため、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口2から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持されるため、整流性能を更に向上させることができる。すなわち、図8(b)に示すように、aの長さが十分でない場合には、環状の整流空間66が狭く吐水後の水流が粒化してしまって、整流性能が良くない。(流路幅が狭い(流量が少ない)と、吐水後に粒化しやすい。すなわち、水流の外周部が粒化してしまうため、吐水が乱れてしまう。)
【0065】
また、本実施形態では、図9に示すように、吐水口2の内面の少なくとも下流端側の領域が、下流端に向けて先細状(切頭円錐状)になっている。このため、露出整流部材6の最外周且つ最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に抑制することができる。(スリット部を流れた水は中央に向かうため、水流の割れが抑制される。)
【0066】
その他、図1に示すように、第1整流部材4の上流側面と給水路形成部材31との間には、リングシール32が設けられている。また、第2整流部材5の(最下流側の整流網51の)下流側の面と露出整流部材6の上流側の面との間の間隙は、露出整流部材6を弾性変形させた際に第2整流部材5にあたる程度である。すなわち、露出整流部材6と第2整流部材5とは、互いに近接して設けられている。
【0067】
このため、露出整流部材6のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材6の変形を介して第2整流部材5をも変形させることができ、当該第2整流部材5のメンテナンスを同時に実施することができる。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0069】
給水路3から供給される水は、第1整流部材4の遮蔽部43(もしくは当該遮蔽部43に衝突して逆流してくる水)と衝突した後、第1滞留室41内に一旦滞留する。これにより、第1滞留室41内部に水圧が篭るような状態となる。その後、第1滞留室41に滞留した水は、上流方向からの水に押し出され、通水孔44及び通水孔45を介して下流側へ流出していく。
【0070】
通水孔44及び通水孔45から流出した水は、第2整流部材5を経て吐水口2へ直進する流れと、表面張力や内部に発生する負圧により第2滞留室42の中心方向へ向かう流れと、に分かれる。後者の中心方向への流れは、中心部で集約された後、第2整流部材5を経て吐水口2へと流出していく。
【0071】
第2整流部材5の4枚の整流網51を通過する際、水流の速度ベクトルは進行方向に揃えられる。その後、水流は、露出整流部材6の複数の筒状の中空空間65と露出整流部材6の外周の環状の整流空間66とを経て、吐水口2から吐水される。この結果、吐水口2から吐水される水は、一本の水流となる。本実施形態が例えばオーバーヘッドシャワーとして用いられる場合、このような水流は、着水時に人体に沿って水膜を形成し、全身を包み込み、水流が温水流である場合には深部体温の上昇に効果的である。
【0072】
特に、露出整流部材6の吐水口側2の領域に、筒状の外周整流面61が設けられていて、当該外周整流面61と吐水口形成部材21との間に環状の整流空間66が形成されているため、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0073】
また、本実施形態では、環状の整流空間66は円環状であり、環状の整流空間66の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間66の下流端の径方向の幅aより大きくなっているため(図7(a)参照)、水流が環状の整流空間66に入って縮流したとしても、当該整流空間66内で十分に整流され、全体としての整流性能を維持することができる。
【0074】
また、本実施形態では、露出整流部材6の最外周且つ最下流端における肉厚cよりも、当該肉厚方向に見た環状の整流空間66の幅aの方が大きくなっているため(図8(a)参照)、環状の整流空間66から吐水される水流の量を比較的多く維持することができ、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口2から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持され、整流性能を更に向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、吐水口2の内面の少なくとも下流端側の領域が、下流端に向けて先細状になっている(図9参照)。このため、露出整流部材6の最外周且つ最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に抑制することができる。
【0076】
また、露出整流部材6が弾性材料で形成されていることにより、当該露出整流部材6をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、露出整流部材6のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0077】
特に、本実施形態の露出整流部材6は、7個の離散的に設けられたブリッジ部62を介して、吐水口形成部材21に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0078】
更に、本実施形態の露出整流部材6は、第2整流部材5に対して近接して設けられている。これにより、露出整流部材6のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材6の変形を介して第2整流部材5をも変形させることができ、当該第2整流部材5のメンテナンスを同時に実施することができる。
【0079】
また、本実施形態では、露出整流部材6は、吐水口2とは反対側の端部において、ブリッジ部62及び円環フランジ部63を介して吐水口形成部材21に固定されている。このことにより、吐水口形成部材21と共に環状の整流空間66を提供するための筒状の外周整流面61を効果的に形成している。
【0080】
なお、本実施形態では、第1整流部材4と第2整流部材5との水流通過の方向が同一に揃えられているため、速度ベクトルを効率的に揃えることができる。また、整流網51の枚数を更に多くしたり、各整流網51の厚みを厚くしたり、各整流網51の網目を細かくしたりすることで、整流効果を更に大きくすることもできる。
【0081】
次に、図10は、本発明の他の実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図であり、図11は、図10の吐水装置の要部の分解斜視図であり、図12は、図10の吐水装置の下面図である。
【0082】
図10乃至図12に示すように、本実施形態の吐水装置1’では、図1乃至図9を用いて説明した実施形態と異なり、第1整流部材4’、第2整流部材5’(整流網51’)、及び、露出整流部材6’が円環状になっていて、それらを固定部7が貫いている。固定部7は、保持リング71を介して第1整流部材4’に支持されている。
【0083】
特に図10に示すように、本実施形態の露出整流部材6’は、固定部7の大径部72によって支持された中央縮径部67’を有しており、ブリッジ部62及び円環フランジ部63を有していない。(露出整流部材6’は、固定部7及び第1整流部材4を介して、吐水口形成部材21に固定されている。)そして、吐水口形成部材21の段差部21sには、第2整流部材5(の整流網51)が載置されている。
【0084】
また、露出整流部材6’の複数の筒状の中空空間65’は、本実施形態では、断面視でいわゆるハニカム状となっている(図12参照)。
【0085】
なお、本実施形態では、露出整流部材6’の最外周且つ最下流端における肉厚cと、当該肉厚方向に見た環状の整流空間66’の幅aとが、略等しくなっている。また、本実施形態では、吐水口2の内面が円筒状で、下流端に向けて先細状になっていない。
【0086】
その他の構成は、図1乃至図9を用いて説明した前記実施形態の吐水装置1と略同様である。図10乃至図12において、前記実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施形態によっても、吐水口2から吐水される水は、一本の水流となる。本実施形態が例えばオーバーヘッドシャワーとして用いられる場合、このような水流は、着水時に人体に沿って水膜を形成し、全身を包み込み、水流が温水流である場合には深部体温の上昇に効果的である。
【0088】
特に、本実施形態によれば、弾性材料によって形成された露出整流部材6’の側面全体が筒状の外周整流面61’となっていて、当該外周整流面61’と吐水口形成部材21との間に環状の整流空間66’が形成されている。これにより、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0089】
また、本実施形態でも、環状の整流空間66’は円環状であり、環状の整流空間66’の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間66’の下流端の径方向の幅aより大きくなっているため(図7(a)参照)、水流が環状の整流空間66’に入って縮流したとしても、当該整流空間66’内で十分に整流され、全体としての整流性能を維持することができる。
【0090】
また、露出整流部材6’が弾性材料で形成されていることにより、当該露出整流部材6’をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、露出整流部材6’のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0091】
特に、本実施形態の露出整流部材6’は、固定部7を介して、吐水口形成部材21に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0092】
更に、本実施形態の露出整流部材6’は、第2整流部材5’に対して近接して設けられている。これにより、露出整流部材6’のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材6’の変形を介して第2整流部材5’をも変形させることができ、当該第2整流部材5’のメンテナンスを同時に実施することができる。
【0093】
なお、以上の各実施形態では、露出整流部材6、6’が第2整流部材5、5’とは別体に設けられていることにより、第2整流部材5、5’を異物等による接触から有効に保護することができる。この効果を得るために、露出整流部材6、6’が弾性部材である必要はない。換言すれば、以上の各実施形態において露出整流部材6、6’を非弾性部材によって形成した構成も、本発明の開示内容に含まれる。例えば、露出整流部材6、6’は、第2整流部材5、5’よりも変形し難い部材、例えば硬質のプラスチック等、で形成され得る。この場合、露出整流部材6、6’が第2整流部材5、5’を効果的に保護することができる。
【0094】
また、以上の各実施形態では、露出整流部材6、6’が吐水口側の領域に筒状の外周整流面61、61’を有していて、当該外周整流面61、61’が吐水口形成部材21との間に環状の整流空間66、66’を形成している。しかしながら、これに代えて、露出整流部材の吐水口側の外周領域が環状の整流空間を有していてもよい。その場合、例えば、露出整流部材の外周面が吐水口形成部材の吐水口側の領域に嵌合されるようになっている。
【0095】
図13は、そのような実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図であり、図14は、図13の吐水装置の要部の分解斜視図であり、図15は、図13の吐水装置の露出整流部材を上から見た斜視図であり、図16は、図15の露出整流部材を下から見た斜視図であり、図17は、図13の吐水装置の下面図であり、図18は、図13の吐水装置のA-A線断面図である。
【0096】
図13乃至図18に示すように、本実施形態の吐水装置101においては、吐水口形成部材121の内部であって、第2整流部材5に対して吐水口102側(図13における下方側)に、弾性材料によって形成された露出整流部材106が配置されている。弾性材料の例としては、シリコンゴム、NBR(二トリルブチルラバー)、フッ素ゴム等が挙げられる。もっとも、段落0093において説明した通り、露出整流部材106は非弾性材料によって形成されていてもよい。
【0097】
露出整流部材106の外周領域は、吐水口102側(図13における下方側)の領域に、環状の整流空間166を有している。本実施形態では、環状の整流空間166は、円環状の空間である。環状の整流空間166の外周を規定する露出整流部材106の部分は、吐水口102とは反対側(図13における上方側)の端部領域において、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分に対して、周方向に略等間隔に設けられた7個のブリッジ部162を介して固定されている。また、環状の整流空間166の外周を規定する露出整流部材106の部分は、吐水口102とは反対側(図13における上方側)の端部において、更に外周側に向かって延びて大径の円環フランジ部163を形成している。この円環フランジ部163が、吐水口形成部材121の内面に設けられた段差部121sと第2整流部材5との間に挟まれることで、露出整流部材106は吐水口形成部材121に固定されている。また、露出整流部材106の外周面は、吐水口形成部材121の吐水口側の領域に嵌合されている。
【0098】
この態様により、露出整流部材106の環状の整流空間166よりも内周側の部分は、7個の離散的に設けられたブリッジ部162を介して、露出整流部材106の環状の整流空間166の外周を規定する部分及び吐水口形成部材121に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0099】
また、露出整流部材106は、環状の整流空間166に対して内周側に、水の流れの方向に延設された隔壁164によって分離された複数の筒状の中空空間165を有している。複数の筒状の中空空間165は、本実施形態では、断面視で同心の円環状の領域の各々が更に周方向に複数に分割された態様となっている(図15乃至図18参照)。
【0100】
隔壁164は、平面視において交線部を有する格子状である。前述のように、本明細書における「格子状」という表現は、直線同士が交差する態様に限定されないで、直線と曲線とが交差する態様や、曲線同士(曲率が異なっていてもよい)が交差する態様を含み、4つの辺(線分に限定されず円弧等の曲線でもよい)が区画をなす態様に限定されないで3つの辺や5つ以上の辺が区画をなす態様を含み、円や楕円など「辺」を認識できないような形状全体として区画をなす態様をも含む。
【0101】
そして、本実施形態では、図19(a)に示すように、環状の整流空間166の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間166の下流端の径方向の幅aより大きくなっている。
【0102】
このような寸法条件が採用されることにより、水流が環状の整流空間166に入って縮流したとしても、当該整流空間166内で十分に整流されるため、全体としての整流性能を維持することができる。すなわち、図19(b)に示すように、例えばb>aの関係が成り立つ程に十分にbの長さがあれば、縮流後、整流されて吐水される。(図19(c)は、縮流後、整流されずに吐水される状態を示している。)
【0103】
また、本実施形態では、図20(a)に示すように、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分の最下流端における肉厚cよりも、当該肉厚方向に見た環状の整流空間166の幅aの方が大きくなっている。
【0104】
このような寸法条件が採用されることにより、環状の整流空間166から吐水される水流の量を比較的多く維持することができるため、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口102から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持されるため、整流性能を更に向上させることができる。すなわち、図20(b)に示すように、aの長さが十分でない場合には、環状の整流空間166が狭く吐水後の水流が粒化してしまって、整流性能が良くない。(流路幅が狭い(流量が少ない)と、吐水後に粒化しやすい。すなわち、水流の外周部が粒化してしまうため、吐水が乱れてしまう。)
【0105】
また、本実施形態では、図21に示すように、環状の整流空間166の少なくとも下流端側の領域が、下流端に向けて先細状(切頭円錐状)になっている。このため、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分の最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に抑制することができる。(スリット部を流れた水は中央に向かうため、水流の割れが抑制される。)
【0106】
第2整流部材5の(最下流側の整流網51の)下流側の面と露出整流部材106の上流側の面との間の間隙も、露出整流部材106を弾性変形させた際に第2整流部材5にあたる程度である。すなわち、露出整流部材106と第2整流部材5とは、互いに近接して設けられている。このため、露出整流部材106のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材106の変形を介して第2整流部材5をも変形させることができ、当該第2整流部材5のメンテナンスを同時に実施することができる。もっとも、前述の通り、露出整流部材106は非弾性材料によって形成されていてもよい。
【0107】
その他の構成は、図1乃至図9を用いて説明した実施形態の吐水装置1と略同様である。図13乃至図22において、前記実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0108】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0109】
本実施形態においても、給水路3から供給される水は、第1整流部材4の遮蔽部43(もしくは当該遮蔽部43に衝突して逆流してくる水)と衝突した後、第1滞留室41内に一旦滞留する。これにより、第1滞留室41内部に水圧が篭るような状態となる。その後、第1滞留室41に滞留した水は、上流方向からの水に押し出され、通水孔44及び通水孔45を介して下流側へ流出していく。
【0110】
通水孔44及び通水孔45から流出した水は、第2整流部材5を経て吐水口102へ直進する流れと、表面張力や内部に発生する負圧により第2滞留室42の中心方向へ向かう流れと、に分かれる。後者の中心方向への流れは、中心部で集約された後、第2整流部材5を経て吐水口102へと流出していく。
【0111】
第2整流部材5の4枚の整流網51を通過する際、水流の速度ベクトルは進行方向に揃えられる。その後、水流は、露出整流部材106の外周領域の環状の整流空間166と、当該環状の整流空間166より内周側の複数の筒状の中空空間165とを経て、吐水口102から吐水される。この結果、吐水口102から吐水される水は、一本の水流となる。本実施形態が例えばオーバーヘッドシャワーとして用いられる場合、このような水流は、着水時に人体に沿って水膜を形成し、全身を包み込み、水流が温水流である場合には深部体温の上昇に効果的である。
【0112】
特に、露出整流部材106の吐水口側102の外周領域に環状の整流空間166が形成されているため、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0113】
また、本実施形態では、環状の整流空間166は円環状であり、環状の整流空間166の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間166の下流端の径方向の幅aより大きくなっているため(図19(a)参照)、水流が環状の整流空間166に入って縮流したとしても、当該整流空間166内で十分に整流され、全体としての整流性能を維持することができる。
【0114】
また、本実施形態では、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分の最下流端における肉厚cよりも、当該肉厚方向に見た環状の整流空間166の幅aの方が大きくなっているため(図20(a)参照)、環状の整流空間166から吐水される水流の量を比較的多く維持することができ、膜状の(円環状の)吐水を実現することができる。その結果、吐水口102から吐水される水流の全体の形状が、当該膜状の吐水に引っ張られて維持され、整流性能を更に向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態では、環状の整流空間166の少なくとも下流端側の領域が、下流端に向けて先細状になっている(図21参照)。このため、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分の最下流端における肉厚の存在によって吐水割れが生じる可能性を、効果的に抑制することができる。
【0116】
また、露出整流部材106が弾性材料で形成されていることにより、当該露出整流部材106をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、露出整流部材106のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0117】
特に、本実施形態の露出整流部材106の環状の整流空間166よりも内周側の部分は、7個の離散的に設けられたブリッジ部162を介して、露出整流部材106の環状の整流空間166の外周を規定する部分及び吐水口形成部材121に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0118】
更に、本実施形態の露出整流部材106は、第2整流部材5に対して近接して設けられている。これにより、露出整流部材106のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材106の変形を介して第2整流部材5をも変形させることができ、当該第2整流部材5のメンテナンスを同時に実施することができる。もっとも、前述の通り、露出整流部材106は非弾性材料によって形成されていてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、環状の整流空間166の外周を規定する露出整流部材106の部分が、吐水口102とは反対側の端部領域において、環状の整流空間166の内周を規定する露出整流部材106の部分に対して、周方向に略等間隔に設けられた7個のブリッジ部62を介して固定されている。このことにより、環状の整流空間166を効果的に形成している。
【0120】
なお、本実施形態でも、第1整流部材4と第2整流部材5との水流通過の方向が同一に揃えられているため、速度ベクトルを効率的に揃えることができる。また、整流網51の枚数を更に多くしたり、各整流網51の厚みを厚くしたり、各整流網51の網目を細かくしたりすることで、整流効果を更に大きくすることもできる。
【0121】
次に、図22は、本発明の更に他の実施形態に係る吐水装置の概略縦断面図であり、図23は、図22の吐水装置の要部の分解斜視図であり、図24は、図22の吐水装置の下面図である。
【0122】
図22乃至図24に示すように、本実施形態の吐水装置101’では、図13乃至図21を用いて説明した実施形態と異なり、第1整流部材4’、第2整流部材5’(整流網151’)、及び、露出整流部材106’が円環状になっていて、それらを固定部107が貫いている。固定部107は、保持リング171を介して第1整流部材4’に支持されている。
【0123】
特に図22に示すように、本実施形態の露出整流部材106’は、固定部107の大径部172によって支持された中央縮径部167’を有しており、円環フランジ部163を有していない。(露出整流部材106’は、固定部107及び第1整流部材104を介して、吐水口形成部材121に固定されている。)そして、吐水口形成部材121の段差部121sには、第2整流部材5(の整流網51)が載置されている。
【0124】
また、露出整流部材106’の複数の筒状の中空空間165’は、本実施形態では、断面視でいわゆるハニカム状となっている(図24参照)。また、環状の整流空間166’の外周を規定する露出整流部材106’の部分は、吐水口102とは反対側の端部領域において、環状の整流空間166’の内周を規定する露出整流部材106’の部分に対して、周方向に略等間隔に設けられた3個のブリッジ部162’を介して固定されている。
【0125】
なお、本実施形態では、環状の整流空間166’の内周を規定する露出整流部材106’の部分の最下流端における肉厚cと、当該肉厚方向に見た環状の整流空間166’の幅aとが、略等しくなっている。また、本実施形態では、環状の整流空間166’が円筒状で、下流端に向けて先細状になっていない。
【0126】
その他の構成は、図13乃至図21を用いて説明した前記実施形態の吐水装置101と略同様である。図22乃至図24において、前記実施形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0127】
本実施形態によっても、吐水口102から吐水される水は、一本の水流となる。本実施形態が例えばオーバーヘッドシャワーとして用いられる場合、このような水流は、着水時に人体に沿って水膜を形成し、全身を包み込み、水流が温水流である場合には深部体温の上昇に効果的である。
【0128】
特に、本実施形態によれば、弾性材料によって形成された露出整流部材106’の外周領域に環状の整流空間166’が形成されている。これにより、吐水割れの発生が顕著に抑制され、極めて高い整流性能を実現することができる。
【0129】
また、本実施形態でも、環状の整流空間166’は円環状であり、環状の整流空間166’の水の流れ方向の長さbは、環状の整流空間166’の下流端の径方向の幅aより大きくなっているため(図19(a)参照)、水流が環状の整流空間166’に入って縮流したとしても、当該整流空間166’内で十分に整流され、全体としての整流性能を維持することができる。
【0130】
また、露出整流部材106’が弾性材料で形成されていることにより、当該露出整流部材106’をユーザが手動で押圧変形させることで、そこに析出したカルシウムを容易に除去することができる。すなわち、露出整流部材106’のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0131】
特に、本実施形態の露出整流部材106’の環状の整流空間166’よりも内周側の部分は、3個の離散的に設けられたブリッジ部162’を介して、露出整流部材106’の環状の整流空間166’の外周を規定する部分及び吐水口形成部材121に対して浮いたように固定されているため、ユーザによる押圧操作時に十分に変形することができる。
【0132】
更に、本実施形態の露出整流部材106’は、第2整流部材5’に対して近接して設けられている。これにより、露出整流部材106’のメンテナンス(手動による押圧変形)の際に、当該露出整流部材106’の変形を介して第2整流部材5’をも変形させることができ、当該第2整流部材5’のメンテナンスを同時に実施することができる。もっとも、前述の通り、露出整流部材106’は非弾性材料によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1、1’ 吐水装置
2 吐水口
21 吐水口形成部材
3 給水路
31 給水路形成部材
32 シールリング
4、4’ 第1整流部材
41 第1滞留室
42 第2滞留室
43 遮蔽部
44、44’ 通水孔
45、45’ 通水孔
5、5’ 第2整流部材
51、51’ 整流網
6、6’ 露出整流部材
61、61’ 外周整流面
62 ブリッジ部
63 円環フランジ部
64、64’ 隔壁
65、65’ 中空空間
66、66’ 環状の整流空間
67’ 中央縮径部
7 固定部
71 保持リング
72 大径部
101、101’ 吐水装置
102 吐水口
121 吐水口形成部材
106、106’ 露出整流部材
162、162’ ブリッジ部
163 円環フランジ部
164、164’ 隔壁
165、165’中空空間
166、166’環状の整流空間
167’ 中央縮径部
107 固定部
171 保持リング
172 大径部
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