(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】水石鹸供給装置
(51)【国際特許分類】
A47K 5/12 20060101AFI20220217BHJP
A47K 5/14 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A47K5/12 A
A47K5/14
(21)【出願番号】P 2017163927
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】川名 宏平
(72)【発明者】
【氏名】田邉 正也
(72)【発明者】
【氏名】永井 悟
(72)【発明者】
【氏名】勝力 啓示
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-289216(JP,A)
【文献】特開平07-177998(JP,A)
【文献】実開昭52-022913(JP,U)
【文献】国際公開第2011/158881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 5/12
A47K 5/14
B65D 83/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水石鹸をムース状にして吐出させる水石鹸供給装置であって、
水石鹸を加圧して送り出す液体ポンプと、
空気を加圧して送り出す空気ポンプと、
上記液体ポンプによって送り出された水石鹸と上記空気ポンプによって送り出された空気を混合して、水石鹸をムース状にする混合室と、
この混合室において生成されたムース状の水石鹸を水石鹸吐出口へ導く水石鹸通路が形成されたスパウト部材と、
このスパウト部材の上記水石鹸通路内に配置され、上記水石鹸通路内に、上記水石鹸通路よりも流路断面積が狭い狭小流路を形成する流路縮小部材と、
を有
し、
上記流路縮小部材は、上記水石鹸通路内の、上記水石鹸吐出口の側の端部には配置されていないことを特徴とする水石鹸供給装置。
【請求項2】
水石鹸をムース状にして吐出させる水石鹸供給装置であって、
水石鹸を加圧して送り出す液体ポンプと、
空気を加圧して送り出す空気ポンプと、
上記液体ポンプによって送り出された水石鹸と上記空気ポンプによって送り出された空気を混合して、水石鹸をムース状にする混合室と、
この混合室において生成されたムース状の水石鹸を水石鹸吐出口へ導く水石鹸通路が形成されたスパウト部材と、
このスパウト部材の上記水石鹸通路内に配置され、上記水石鹸通路内に、上記水石鹸通路よりも流路断面積が狭い狭小流路を形成する流路縮小部材と、
を有し、
上記混合室の出口は上記水石鹸通路の上流側端部の側面に連通され、上記流路縮小部材は、上記水石鹸通路の入口を閉塞しないように、その上流側の端部が細く形成されていることを特徴とする水石鹸供給装置。
【請求項3】
上記スパウト部材の上記水石鹸通路は、内部に配置された上記流路縮小部材よりも下流側で湾曲されている請求項
1又は2に記載の水石鹸供給装置。
【請求項4】
上記流路縮小部材によって上記水石鹸通路内に形成される上記狭小流路は、その少なくとも一部が、下流側が高くなるように傾斜している請求項1乃至3の何れか1項に記載の水石鹸供給装置。
【請求項5】
上記流路縮小部材は外周面に螺旋状の溝が形成された棒状の部材であり、上記水石鹸通路の内壁面と上記流路縮小部材との間に螺旋状の狭小流路が形成される請求項4記載の水石鹸供給装置。
【請求項6】
上記流路縮小部材は外周面に複数本の溝が長手方向に形成された棒状の部材であり、上記水石鹸通路の内壁面と上記流路縮小部材との間に複数の狭小流路が形成される請求項1乃至4の何れか1項に記載の水石鹸供給装置。
【請求項7】
上記流路縮小部材は、その上流側の端部と同様に、下流側の端部も細く形成されている請求項
2記載の水石鹸供給装置。
【請求項8】
上記水石鹸通路の内部には、上記流路縮小部材が複数配置されている請求項
7記載の水石鹸供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水石鹸供給装置に関し、特に、水石鹸をムース状にして吐出させる水石鹸供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-13846号公報(特許文献1)には、吐出容器が記載されている。この吐出容器においては、使用者がノズルヘッドを押圧操作することにより、容器本体内に収容されたシャンプー、ボディーソープ、ハンドソープ等の内容液が、内容液用ポンプによって汲み上げられる。また、使用者が押圧操作することにより空気が加圧され、汲み上げられた内容液と加圧された空気が合流空間内で混合され、混合物が泡状にされて吐出口から吐出される。特許文献1記載の装置のようにシャンプー等の液体状の石鹸(水石鹸)を泡状にして吐出させる水石鹸供給装置を使用すると、少量の水石鹸で体積の大きなムース状の泡を生成することができるので、使用者は少量の水石鹸でも十分な使用感を得ることができる。このため、水石鹸供給装置がパブリックユースの手洗器等で使用された場合、水石鹸の消費量が少なくなり、水石鹸の補充等のメンテナンスの頻度を下げることが可能になる。
【0003】
一方、水石鹸供給装置が手洗器等の近傍に設置された場合、合流空間内で空気と混合され、泡状にされた水石鹸は、吐出された水石鹸が手洗器の中に落下するよう、比較的長い管状のスパウト部材を通って吐出口から吐出される。このように比較的長いスパウト部材を有する水石鹸供給装置の場合には、スパウト部材の中の水石鹸の通路が長いため、使用者による一回のポンプ操作により合流空間から押し出された泡は吐出口まで到達しない。しかしながら、前の使用者の操作により合流空間から押し出された泡がスパウト部材内の水石鹸通路に残留している場合には、使用者の今回の操作により合流空間から押し出された泡が、水石鹸通路内に残留していた泡を押し出すため、一回のポンプ操作で吐出口から泡が吐出される。以降、ポンプ操作の度に、スパウト部材内の水石鹸通路に残留していた泡が順に押し出され、一回のポンプ操作毎に水石鹸の泡が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水石鹸供給装置の前回の使用から長い時間が経過すると、以前のポンプ操作により合流空間から押し出され、水石鹸通路内に残留していた泡が水石鹸に戻ってしまう。このように、水石鹸の泡が水石鹸に戻ると、体積が大幅に減少する。例えば、水石鹸がムース状の泡にされると、混合された空気により体積は10倍程度になるため、水石鹸の泡が水石鹸に戻ると、体積は1/10程度に縮小する。このため、充填されていた泡が水石鹸に戻ると、スパウト部材の水石鹸通路内はほぼ空の状態となる。このような状態になった水石鹸供給装置が使用された場合、使用者がポンプ操作を行っても一回の操作では水石鹸の泡が吐出されないこととなる。この場合、使用者は水石鹸が切れていると誤解するか、又は複数回のポンプ操作を余儀なくされ、水石鹸供給装置は使い勝手の悪いものとなってしまう。
【0006】
従って、本発明は、前回の使用から長時間経過した場合であっても、使用感が低下しない水石鹸供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、水石鹸をムース状にして吐出させる水石鹸供給装置であって、水石鹸を加圧して送り出す液体ポンプと、空気を加圧して送り出す空気ポンプと、液体ポンプによって送り出された水石鹸と空気ポンプによって送り出された空気を混合して、水石鹸をムース状にする混合室と、この混合室において生成されたムース状の水石鹸を水石鹸吐出口へ導く水石鹸通路が形成されたスパウト部材と、このスパウト部材の水石鹸通路内に配置され、水石鹸通路内に、水石鹸通路よりも流路断面積が狭い狭小流路を形成する流路縮小部材と、を有し、流路縮小部材は、水石鹸通路内の、水石鹸吐出口の側の端部には配置されていないことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、液体ポンプによって送り出された水石鹸と空気ポンプによって送り出された空気が混合室において混合され、水石鹸がムース状にされる。混合室においてムース状にされた水石鹸は、スパウト部材に形成された水石鹸通路によって水石鹸吐出口へ導かれ、吐出される。スパウト部材の水石鹸通路の中には流路縮小部材が配置されることにより、水石鹸通路よりも流路断面積が狭い狭小流路が形成される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、水石鹸通路の中に流路縮小部材を配置することにより水石鹸通路の中に狭小流路が形成され、水石鹸通路内の流路の容積が減少する。この結果、水石鹸通路として所要の長さを確保しながら、水石鹸通路内の流路の容積が小さくなり、混合室から少量のムース状の水石鹸を送り込むだけで水石鹸を早期に水石鹸吐出口から吐出させることができる。また、水石鹸通路内に残留していたムース状の水石鹸が液体状に戻り、体積が減少した場合でも、混合室から少量のムース状の水石鹸を水石鹸通路に送り込むだけで、液体状に戻った水石鹸が早期に水石鹸吐出口から押し出される。このため、使用者が水石鹸供給装置を操作しても水石鹸が吐出されず、水石鹸が切れていると誤解するのを防止することができる。
【0010】
また、スパウト部材の水石鹸通路全体を細く形成することにより、水石鹸通路内の流路の容積を小さく構成した場合には、使用者が水石鹸供給装置の操作を終えた後にも水石鹸が吐出されてしまう所謂「あとだれ」の原因となる。これに対し、本発明のように、流路縮小部材を使用して水石鹸通路内の流路の容積を減少させることにより「あとだれ」を抑制することができる。さらに、スパウト部材自体を細く形成することによって水石鹸通路内の流路の容積を小さく構成した場合には、スパウト部材の十分な強度を確保することが困難となる。これに対し、本発明のように、流路縮小部材を使用して水石鹸通路内の流路の容積を減少させることにより、スパウト部材に十分な強度を確保しながら水石鹸通路内の流路の容積を小さくすることができる。また、ある程度の太さを有するスパウト部材の内部に細長い水石鹸通路を形成することは困難であり、製造コストが高くなる。これに対し、本発明のように、流路縮小部材を使用して水石鹸通路内の流路の容積を減少させることにより、所要の太さを有するスパウト部材に、容積の小さい水石鹸通路を容易に構成することができる。
さらに、このように構成された本発明によれば、流路縮小部材によって形成された流路断面積が狭い狭小流路を通過したムース状の水石鹸は、流路縮小部材が配置されていない、流路断面積が広い水石鹸通路を通って水石鹸吐出口から吐出される。このため、狭小流路を通過したムース状の水石鹸の流速を、水石鹸吐出口から吐出される前に低下させることができ、この結果、流速の高いムース状の水石鹸が吐出され、これが使用者の掌で跳ねて、使用者に不快感を与えるのを防止することができる。
【0011】
また、本発明は、水石鹸をムース状にして吐出させる水石鹸供給装置であって、水石鹸を加圧して送り出す液体ポンプと、空気を加圧して送り出す空気ポンプと、液体ポンプによって送り出された水石鹸と空気ポンプによって送り出された空気を混合して、水石鹸をムース状にする混合室と、この混合室において生成されたムース状の水石鹸を水石鹸吐出口へ導く水石鹸通路が形成されたスパウト部材と、このスパウト部材の水石鹸通路内に配置され、水石鹸通路内に、水石鹸通路よりも流路断面積が狭い狭小流路を形成する流路縮小部材と、を有し、混合室の出口は水石鹸通路の上流側端部の側面に連通され、流路縮小部材は、水石鹸通路の入口を閉塞しないように、その上流側の端部が細く形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材は、その上流側の端部が細く形成されているので、流路縮小部材が水石鹸通路内に如何なる回転位置で配置された場合でも、水石鹸通路の入口が流路縮小部材によって閉塞されてしまうことがない。この結果、組み立ての不良による不具合の発生を防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、スパウト部材の水石鹸通路は、内部に配置された流路縮小部材よりも下流側で湾曲されている。
このように構成された本発明によれば、水石鹸通路が、その内部に配置された流路縮小部材よりも下流側で湾曲されているので、流路縮小部材によって形成された狭小流路を通過したムース状の水石鹸が水石鹸通路の内壁面に衝突し、吐出される水石鹸の流速を更に低下させることができる。これにより、流速の高いムース状の水石鹸が吐出され、これが使用者の掌で跳ねて、使用者に不快感を与えるのを防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、流路縮小部材によって水石鹸通路内に形成される狭小流路は、その少なくとも一部が、下流側が高くなるように傾斜している。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材によって水石鹸通路内に形成される狭小流路の少なくとも一部が、下流側が高くなるように傾斜しているので、狭小流路内に残留しているムース状の水石鹸が液体状に戻った場合でも、水石鹸が水石鹸吐出口から液だれするのを抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、流路縮小部材は外周面に螺旋状の溝が形成された棒状の部材であり、水石鹸通路の内壁面と流路縮小部材との間に螺旋状の狭小流路が形成される。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材により螺旋状の狭小流路が形成されるので、形成された狭小流路の少なくとも一部は、常に下流側が高くなるように傾斜する。この結果、狭小流路内に残留しているムース状の水石鹸が液体状に戻った場合でも、水石鹸が水石鹸吐出口から液だれするのを抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、流路縮小部材は外周面に複数本の溝が長手方向に形成された棒状の部材であり、水石鹸通路の内壁面と流路縮小部材との間に複数の狭小流路が形成される。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材により複数の狭小流路が形成されるので、一部の狭小流路が詰まった場合でもムース状の水石鹸の流路を確保することができ、狭小流路の詰まりによる不具合を回避することができる。また、複数の狭小流路を形成することにより、流路の容積に対し、流路を形成する壁面の面積が広くなる。これにより、狭小流路の内部に残留しているムース状の水石鹸に作用する表面張力が大きくなり、ムース状の水石鹸が液状に戻るのを抑制することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、流路縮小部材は、その上流側の端部と同様に、下流側の端部も細く形成されている。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材は、その下流側の端部も細く形成されているので、流路縮小部材が水石鹸通路内でどちら向きに配置された場合でも、水石鹸通路の入口が流路縮小部材によって閉塞されてしまうことがない。この結果、組み立ての不良による不具合の発生を防止することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、水石鹸通路の内部には、流路縮小部材が複数配置されている。
このように構成された本発明によれば、流路縮小部材が水石鹸通路の内部に複数配置されているので、1種類の流路縮小部材を、水石鹸通路の長さが異なる複数の水石鹸供給装置に適用することができる。また、流路縮小部材の上流側及び下流側の端部が夫々細く形成されているので、1つの流路縮小部材によって形成された狭小流路と、隣接して配置された流路縮小部材によって形成された狭小流路が常に連通される。このため、複数の流路縮小部材によって夫々形成された狭小流路が途中で閉塞されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水石鹸供給装置によれば、前回の使用から長時間経過した場合であっても、使用感が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置全体の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置の上部を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置を分解して示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の水石鹸供給装置に使用されている流路縮小部材の斜視図である。
【
図5】流路縮小部材をスパウト部材の水石鹸通路内に配置した状態を示す断面図であり、(a)は流路縮小部材の下流側端部における断面を示し、(b)は流路縮小部材の中央部における断面を示し、(c)は流路縮小部材の上流側端部における断面を示している。
【
図6】本発明の第2実施形態による水石鹸供給装置の断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態による水石鹸供給装置に使用されている流路縮小部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置全体の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置の上部を拡大して示す断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置を分解して示す分解斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の水石鹸供給装置1は、水石鹸を収容したタンク2と、カウンターボードCの上側に固定された本体部4と、この本体部4の上側に設けられ、使用者によって押圧操作される操作部6と、を有する。
タンク2は、被取付面であるカウンターボードCの下側に配置された概ね円筒形の容器であり、吐出すべき水石鹸が内部に収容されている。また、メンテナンス時においては、操作部6を取り外すことにより、カウンターボードCの上からタンク2内に水石鹸が補充できるようになっている。
【0023】
本体部4は、カウンターボードCに固定される概ね円柱形の部材であり、内部にはタンク2内の水石鹸を汲み上げる液体ポンプと、外気を吸い込み加圧する空気ポンプが内蔵されている。また、液体ポンプから送り出された水石鹸と空気ポンプから送り出された空気は、本体部4内に設けられた混合室によって混合され、水石鹸がムース状にされる。
【0024】
操作部6は、本体部4の上側に、上下に摺動可能に取り付けられた概ね円柱形の部材であり、その側面から横方向に突出するように、ムース状の水石鹸を吐出させるスパウト部材8が延びている。
また、スパウト部材8は、水石鹸吐出口8aから吐出された水石鹸が水石鹸供給装置1の近傍に設けられた手洗器(図示せず)の中に落下するよう、十分な長さを備えている。
【0025】
本実施形態の水石鹸供給装置1は、使用者が操作部6を押圧操作すると操作部6が下方に摺動し、この摺動により本体部4に内蔵された液体ポンプが作動してタンク2内の水石鹸を吸い上げるように構成されている。吸い上げられた水石鹸は、本体部4に内蔵された空気ポンプによって加圧された外気と混合されてムース状となり、スパウト部材8先端の水石鹸吐出口8aから吐出される。
【0026】
次に、
図2及び
図3を参照して、水石鹸供給装置1の本体部4及び操作部6の内部構造を説明する。なお、
図3においては、操作部6の外観部分を一部破断して示している。
図2に示すように、本体部4は、外殻部材10と、この内部に収容されたベース部材12と、このベース部材12の上側に配置されたポンプ受け部材14と、ポンプ受け部材14の内側に収容された下側ポンプ室部材16と、を有する。さらに、本体部4の内部には、上側ポンプ室部材18と、上側ポンプ室部材18と共に移動する水石鹸室部材20と、水石鹸室部材20の内部に配置された水石鹸弁体22と、水石鹸室部材20の上側に配置された摺動部形成部材24と、この摺動部形成部材24の内側に配置された混合室形成部材26が内蔵されており、これらの部材は使用者の押圧操作により操作部6と共に上下に摺動する。また、外殻部材10の内側には、摺動部形成部材24の摺動を円滑にするための摺動スリーブ28が配置されている。
【0027】
まず、操作部6は、円柱状の外観を有する金属製の部材であり、その下端面は開放されており、内側に外殻部材10の上部を受け入れるように構成されている。使用者により操作部6が押下されると、操作部6は下方に移動し、外殻部材10の上部が操作部6の内側に入り込むようになっている。さらに、操作部6の内部には筒状の挿入部6aが設けられ、操作部6は全体として二重筒状に形成されている。この挿入部6aの外周面は、円形を2本の平行な弦で切断した概ね長円形に構成されている(
図3)。挿入部6aは、外殻部材10上端の挿入開口10a(
図3)の中に挿入されており、使用者により操作部6が押下されると、挿入部6aの先端が挿入開口10aの中に更に入り込むようになっている。
【0028】
また、操作部6の側面上部には、操作部6に取り付けられる管状のスパウト部材8を受け入れる円形断面の受入ボア6bが形成されており、この受入ボア6bにスパウト部材8の基端部(上流側の端部)を挿入することにより、スパウト部材8が操作部6に取り付けられる。また、操作部6の挿入部6aの内側の空間は、受入ボア6bの内部と連通している。
【0029】
スパウト部材8は、操作部6から延びる細長い金属製の円管であり、その内部にはムース状の水石鹸を導く水石鹸通路8bが設けられ、水石鹸を吐出する先端の水石鹸吐出口8aまで延びている。この水石鹸通路8b内には、水石鹸通路8b内に水石鹸通路8bよりも流路断面積が狭い狭小流路32(
図5)を形成する流路縮小部材30が配置されている。この流路縮小部材30の構成については後述する。また、スパウト部材8は、円柱形の操作部6の側面から水平よりもやや上方に向けて延び、スパウト部材8の先端部は、水石鹸吐出口8aが斜め下方に向くように、下方に向けて「へ」の字形に湾曲されている。また、スパウト部材8の基端部(上流側端部)の側面には、水石鹸通路8bの入口である貫通穴8cが形成され、スパウト部材8の中の水石鹸通路8bは、貫通穴8cを介して挿入部6aの内側の空間と連通されている。
【0030】
次に、外殻部材10は、本体部4の外観を構成する概ね円筒状の金属製の部材であり、その内部には、ベース部材12、ポンプ受け部材14、下側ポンプ室部材16、上側ポンプ室部材18、水石鹸室部材20、水石鹸弁体22、摺動部形成部材24及び摺動スリーブ28が収容されている。また、外殻部材10の上部には段部が設けられ、上部の直径が基部の直径よりも僅かに小さくなっている。また、外殻部材10の上端面には、操作部6の一部が挿入される挿入開口10a(
図3)が形成されている。この挿入開口10aは、円形を2本の平行な弦で切断した概ね長円形の断面を有し、操作部6の挿入部の6aの外周面と概ね相似形に構成されている。
【0031】
図2に示すように、ベース部材12は、金属製の段付き円筒形部材であり、その大径部12aはカウンターボードC上に配置され、小径部12bはカウンターボードCに形成された取り付け穴に挿入される。大径部12aは、その外周が外殻部材10の下端部の内周とほぼ同一の直径に形成されており、外殻部材10の中に挿入され、固定される。小径部12bの外周面には雄ねじ山が形成され、この雄ねじに取り付けナット12cを螺合させることにより、本体部4がカウンターボードCに固定される。
【0032】
ポンプ受け部材14は、外殻部材10の中で、ベース部材12の上に配置される概ね段付き円筒状の部材であり、その下端の小径部がベース部材12の内部に挿入される。また、ポンプ受け部材14の内側には空気ポンプ及び液体ポンプの一部を構成する下側ポンプ室部材16が配置される。
【0033】
下側ポンプ室部材16は、空気ポンプのポンプ室を構成する大径部16aと、液体ポンプのポンプ室を構成する小径部16bを有する段付きの円筒状の部材である。また、下側ポンプ室部材16の大径部16aと小径部16bの接続部は、小径部16bが大径部16aの内側に入り込んでおり、一部が二重管構造となっている。下側ポンプ室部材16の小径部16bの下端は直径が更にすぼまっており、先端には吸入管15が接続されている。この吸入管15は、下側ポンプ室部材16から下方へ、タンク2の底面まで延びている。また、小径部16bの中の下端部には、ボール弁体16cが配置されており、小径部16b下端の入口を開閉するようになっている。
【0034】
上側ポンプ室部材18は、空気ポンプのポンプ室を構成する大径部18aと、水石鹸室部材20を受け入れる小径部18bを有する段付きの円筒状の部材である。また、上側ポンプ室部材18の大径部18aは、下側ポンプ室部材16の大径部16aの内側に摺動可能に挿入されている。この上側ポンプ室部材18が下側ポンプ室部材16に対して摺動することにより、これらの間に形成される空気ポンプの空気ポンプ室17の容積が変化する。このように、本実施形態においては、下側ポンプ室部材16の大径部16a、及び上側ポンプ室部材18の大径部18aが、空気ポンプとして機能している。
【0035】
水石鹸室部材20は円筒状の部材であり、その内側に液体ポンプの液体ポンプ室21が形成される。また、水石鹸室部材20の下端部は下側ポンプ室部材16の小径部16bに摺動可能に受け入れられ、上端部は上側ポンプ室部材18の小径部18bに摺動可能に受け入れられている。さらに、水石鹸室部材20の下端部と下側ポンプ室部材16の小径部16bの下端部との間にはコイルばね19が配置され、水石鹸室部材20はコイルばね19により上方に向けて付勢される。また、水石鹸室部材20の外周面にはフランジ部20aが設けられ、このフランジ部20aと上側ポンプ室部材18が係合することにより、水石鹸室部材20は上側ポンプ室部材18と共に押し下げられる。
【0036】
水石鹸弁体22は、水石鹸室部材20を貫通するように配置された棒状の部材であり、その上端部は逆円錐形状に拡径している。この水石鹸弁体22の上端の拡径部は、水石鹸室部材20が上方に押し上げられる際、水石鹸室部材20の上端部と当接し、水石鹸室部材20の上端を閉塞するように構成されている。このように、本実施形態においては、下側ポンプ室部材16の小径部16b、水石鹸室部材20、水石鹸弁体22、及びボール弁体16cが、液体ポンプとして機能している。
【0037】
摺動部形成部材24は概ね円筒状の部材であり、その下部に、上側ポンプ室部材18の小径部18bを受け入れている。また、摺動部形成部材24の上部は操作部6の挿入部6aの中に受け入れられ、摺動部形成部材24上端に設けられた爪部により、操作部6にスナップ止めされている。
【0038】
混合室形成部材26は、上側ポンプ室部材18の上方、且つ摺動部形成部材24の内側に配置された円筒状の部材であり、その内部に混合室26aが形成される。また、混合室形成部材26の上端及び下端の開放部には、夫々、網部材(図示せず)が配置されている。液体ポンプにより送り込まれた水石鹸、及び空気ポンプにより送り込まれた空気は、混合室形成部材26の内部で混合され、水石鹸がムース状にされる。また、混合室形成部材26上端の出口は、操作部6に設けられた挿入部6aの中を通って、スパウト部材8の貫通穴8cに連通している。
【0039】
摺動スリーブ28は、外殻部材10の上端部内側に配置される樹脂製の筒状の部材であり、内側に、摺動部形成部材24、及び操作部6の挿入部6aが受け入れられる。
図3に示すように、この摺動スリーブ28の上端の開口は、外殻部材10の挿入開口10aと相似形の概ね長円形断面に形成されている。また、
図2に示すように、摺動スリーブ28の上端部は、操作部6の挿入部6aの外周面と、外殻部材10の挿入開口10aの内周面との間の隙間を埋めるように配置されている。この挿入部6aの外周面と挿入開口10aの内周面との間の隙間は、全周に亘りほぼ一定に形成されており、この隙間にほぼ一定の肉厚に形成された摺動スリーブ28の先端部が配置されている。このように、金属製の挿入部6aと外殻部材10との間に、樹脂製の摺動スリーブ28を配置することにより、操作部6は、本体部4(外殻部材10)に対して円滑に摺動することができる。
【0040】
次に、
図4及び
図5を参照して、スパウト部材8の内部に配置されている流路縮小部材30の構成を説明する。
図4は、流路縮小部材30の斜視図である。
図5は、流路縮小部材30をスパウト部材8の水石鹸通路8b内に配置した状態を示す断面図であり、(a)は流路縮小部材30の下流側端部における断面を示し、(b)は流路縮小部材30の中央部における断面を示し、(c)は流路縮小部材30の上流側端部における断面を示している。
【0041】
図4に示すように、流路縮小部材30は、全体として、円形断面の段付きの棒状の部材であり、直径が大きい中央部30a、直径が小さい上流側端部30b、及び下流側端部30cから形成されている。また、上流側端部30b及び下流側端部30cは、同一の直径及び同一の長さに形成されており、流路縮小部材30は、その長手方向中央に対して左右対称である。さらに、流路縮小部材30の中央部30aの外径は、スパウト部材8の内径(水石鹸通路8bの直径)とほぼ同一に形成されており、流路縮小部材30はスパウト部材8の中に殆ど隙間がない状態で挿入される。なお、流路縮小部材30はスパウト部材8に対して固定されていないが、スパウト部材8の先端部が湾曲されている(
図2)ので、流路縮小部材30が先端の水石鹸吐出口8aから抜け落ちることはない。
【0042】
さらに、流路縮小部材30の外周面には、長手方向に延びる4本の溝30dが形成されている。これらの溝30dは、流路縮小部材30の上流端から下流端まで直線状に延びている。また、各溝30dは概ね矩形の断面を有しており、流路縮小部材30の鉛直方向の直径に対して左右対称に2本ずつ、水平方向の直径と平行な方向に切り欠かれている。
【0043】
さらに、流路縮小部材30がスパウト部材8の中に挿入された状態では、
図5(b)に示すように、流路縮小部材30の中央部30aの外周面と、スパウト部材8の水石鹸通路8bの内壁面との間には殆ど隙間がない。このため、水石鹸通路8bに流入した水石鹸は、流路縮小部材30に形成された各溝30dと水石鹸通路8bの内壁面によって形成される4本の狭小流路32(
図5)を通って流れる。
【0044】
一方、
図5(c)に示すように、水石鹸通路8の基端部には、流路縮小部材30の上流側端部30bが位置する。ここで、流路縮小部材30の上流側端部30bは、中央部30aよりも直径が小さく、細く形成されているため、水石鹸通路8の基端部においては、流路縮小部材30の上流側端部30bの外周面と、水石鹸通路8bの内壁面との間には、環状の隙間が存在する。この環状の隙間が存在することにより、流路縮小部材30が水石鹸通路8bの中に如何なる回転位置で配置された場合でも、スパウト部材8の上流側端部側面に形成された貫通穴8cが流路縮小部材30によって閉塞されることはない。貫通穴8cを通って水石鹸通路8bに流入した水石鹸は、環状の隙間を通って流路縮小部材30の上流側端部30bの周囲に到達し、各溝30d(狭小流路32)の中を通って下流側に流れる。
【0045】
図5(a)に示すように、流路縮小部材30の下流側端部30cも、上流側端部30bと同様に中央部30aよりも直径が小さく、細く形成されているので、流路縮小部材30の下流側端部30cの外周面と、水石鹸通路8bの内壁面との間には、環状の隙間が存在する。このように、流路縮小部材30の下流側端部30cの外周面と、水石鹸通路8bの内壁面との間にも隙間が形成されるため、流路縮小部材30を水石鹸通路8bに何れの向きで挿入した場合でも(下流側端部30cがスパウト部材8の上流側端部に配置された場合でも)、貫通穴8cが流路縮小部材30によって閉塞されることはない。
【0046】
次に、
図2を参照して、本発明の第1実施形態による水石鹸供給装置1の作用を説明する。
まず、使用者が水石鹸供給装置1の操作部6を押下すると、本体部4に内蔵されている上側ポンプ室部材18、水石鹸室部材20、水石鹸弁体22、摺動部形成部材24、及び混合室形成部材26は、コイルばね19の付勢力に抗して操作部6と共に押し下げられた状態となる。この状態では、下側ポンプ室部材16と上側ポンプ室部材18の間に形成される空気ポンプ室17、及び水石鹸室部材20の中に形成される液体ポンプ室21は、容積が縮小された状態となる。
【0047】
次いで、使用者が操作部6を押下している手指を離すと、コイルばね19の付勢力により、操作部6は
図2に示す状態まで上方に押し戻される。この際、コイルばね19の付勢力により水石鹸室部材20の上端部が水石鹸弁体22上端の拡径部に押しつけられるので、水石鹸室部材20の上端が閉塞される。また、水石鹸室部材20が上昇することにより、液体ポンプ室21の容積が増大し、内部の圧力が低下する。これにより、タンク2内の水石鹸が吸入管15を通って液体ポンプ室21内に吸い上げられる。この際、下側ポンプ室部材16の小径部16b下端に配置されたボール弁体16cは、水石鹸の流れにより押し上げられ、水石鹸の流入が許容される。
【0048】
一方、コイルばね19の付勢力により、操作部6が
図2に示す状態まで押し戻されると、上側ポンプ室部材18も上方に移動されるため、空気ポンプ室17の容積が増大する。この際、下側ポンプ室部材16に形成された吸気口(図示せず)を通って、外殻部材10の空気が空気ポンプ室17内に吸入される。
【0049】
次いで、使用者が操作部6を再び押下すると、液体ポンプ室21の容積が縮小するので、液体ポンプ室21内に充填されていた水石鹸が、水石鹸室部材20の上端から流出する。(この際、液体ポンプ室21下端の流入口は、ボール弁体16cにより閉弁されている。)水石鹸室部材20から流出した水石鹸は、上側ポンプ室部材18の小径部18bを通って混合室形成部材26の中の混合室26aに流入する。
【0050】
一方、使用者による操作部6の押下により、空気ポンプ室17の容積も縮小され、空気ポンプ室17内の空気は、水石鹸室部材20の上端部外周面と、上側ポンプ室部材18の小径部18b内周面の間の隙間を通って、小径部18bの中に流入する。(この際、下側ポンプ室部材16に形成された吸気口(図示せず)は閉鎖されている。)上側ポンプ室部材18の小径部18bに流入した空気は、上端の開口から流出し、混合室形成部材26の中の混合室26aに流入する。
【0051】
このように、使用者の押圧操作により、混合室26a内に水石鹸及び空気が同時に流入すると、水石鹸は混合室26a内で多数の気泡を含むムース状にされ、混合室形成部材26上端の混合室出口から流出する。なお、混合室26aに流入する水石鹸と空気は、体積比で約1:9であり、液体状の水石鹸は混合室26aにおいて約10倍の体積を有するムース状にされる。混合室26aから流出したムース状の水石鹸は、混合室26aの上方に位置する貫通穴8cを通ってスパウト部材8の水石鹸通路8b内に流入する。貫通穴8cから流入した水石鹸は、水石鹸通路8b内に配置された流路縮小部材30の上流側端部30bの周囲に流れた後、流路縮小部材30の各溝30dによって形成された4本の狭小流路32(
図5)に流入する。
【0052】
各溝30dによって形成される狭小流路32は流路断面積が狭くされているため、流入した水石鹸は、高い流速で狭小流路32を通って下流側に流れ、流路縮小部材30の下流側に到達する。また、
図2に示すように、流路縮小部材30は、水石鹸通路8b内の、水石鹸吐出口8aの側の端部には配置されていない。このため、流路縮小部材30の下流側では流路断面積が広くなり、水石鹸の流れはここで減速された後、ムース状の状態でスパウト部材8先端の水石鹸吐出口8aから吐出される。また、スパウト部材8内の水石鹸通路8bは、流路縮小部材30の下流側の先端部で下方に向けて湾曲されているので、水石鹸が狭小流路32から非常に高い流速で流出した場合でも、水石鹸は水石鹸通路8bの内壁面に当たって減速され、水石鹸が水石鹸吐出口8aから高い流速のまま吐出されることはない。なお、水石鹸供給装置1からの水石鹸の吐出が終了した状態では、スパウト部材8内部の水石鹸通路8bは、ムース状にされた水石鹸により満たされている。
【0053】
この状態で、操作部6が再び押下されると、この操作により、ムース状の水石鹸が混合室26aから水石鹸通路8b内に送り込まれる。これにより、水石鹸通路8b内に充満していたムース状の水石鹸は、水石鹸吐出口8aから押し出され、吐出される。
【0054】
一方、使用者が水石鹸供給装置1を使用した後、長時間が経過すると、水石鹸通路8b内に充満していたムース状の水石鹸は、気泡内の空気が次第に抜けて液体状に戻る。ムース状の水石鹸は、液体状に戻ることにより体積が約1/10に減少するので、水石鹸通路8b内の空間は殆ど空気で満たされるようになる。
【0055】
図2に示すように、スパウト部材8は操作部6から水石鹸吐出口8aに向けて上方に傾斜するように配置されているので、その中に配置された流路縮小部材30によって形成される狭小流路32も同様に、下流側が高くなるように傾斜している。このため、水石鹸通路8や、その狭小流路32内で液体状に戻った水石鹸は、スパウト部材8の中を基端部に向けて逆流する。これにより、スパウト部材8内で液体状に戻った水石鹸が水石鹸吐出口8aから流出するのを抑制することができる。また、スパウト部材8の中に流路縮小部材30を配置することにより、水石鹸通路8bの容積が減少されているので、使用後に水石鹸通路8b内に充満しているムース状の水石鹸の体積も少なくなっている。
【0056】
このように、水石鹸通路8b内の水石鹸が液体状に戻った後、操作部6が押下された場合には、ムース状の水石鹸が混合室26aから水石鹸通路8b内に送り込まれるものの、水石鹸通路8bの内部は殆ど空であるため、水石鹸通路8b内に残留していたムース状の水石鹸が押し出されることはない。しかしながら、スパウト部材8内に流路縮小部材30を配置することにより、水石鹸通路8bの容積が小さくされているので、新たに水石鹸通路8b内に送り込まれたムース状の水石鹸は早期に水石鹸吐出口8aに到達し、吐出される。
【0057】
好ましくは、操作部6への1回の押圧操作によって水石鹸通路8b内に送り込まれるムース状の水石鹸により、水石鹸通路8b内に残留していた液体状に戻った水石鹸の一部が水石鹸吐出口8aから吐出されるように、液体ポンプ、空気ポンプ、及び流路縮小部材30を構成する。さらに好ましくは、1回の押圧操作によって水石鹸通路8b内に送り込まれるムース状の水石鹸の一部が水石鹸吐出口8aから吐出されるように、液体ポンプ、空気ポンプ、及び流路縮小部材30を構成する。これにより、使用者が操作部6を1回押圧操作しただけでは水石鹸が吐出されなかったり、水石鹸が吐出されないことにより、使用者が、水石鹸が切れていると勘違いしたりするのを防止することができる。
【0058】
本発明の第1実施形態の水石鹸供給装置1によれば、水石鹸通路8bの中に流路縮小部材30を配置することにより水石鹸通路8bの中に狭小流路32(
図5)が形成され、水石鹸通路8b内の流路の容積が減少させることができる。この結果、水石鹸通路8bとして所要の長さを確保しながら、水石鹸通路8b内の流路の容積が小さくなり、混合室26aから少量のムース状の水石鹸を送り込むだけで水石鹸を早期に水石鹸吐出口8aから吐出させることができる。また、水石鹸通路8b内に残留していたムース状の水石鹸が液体状に戻り、体積が減少した場合でも、混合室26aから少量のムース状の水石鹸を水石鹸通路8bに送り込むだけで、液体状に戻った水石鹸が早期に水石鹸吐出口8aから押し出される。このため、使用者が水石鹸供給装置1を操作しても水石鹸が吐出されず、水石鹸が切れていると誤解するのを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、流路縮小部材30は、水石鹸通路8b内の、水石鹸吐出口8aの側の端部には配置されていない(
図2)。このため、流路縮小部材30によって形成された狭小流路32を通過したムース状の水石鹸は、流路縮小部材30が配置されていない、流路断面積が広い水石鹸通路8bを通って水石鹸吐出口8aから吐出される。これにより、狭小流路32を通過したムース状の水石鹸の流速を、水石鹸吐出口8aから吐出される前に低下させることができ、この結果、流速の高いムース状の水石鹸が吐出され、これが使用者の掌で跳ねて、使用者に不快感を与えるのを防止することができる。
【0060】
さらに、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、水石鹸通路8bが、その内部に配置された流路縮小部材30よりも下流側で湾曲されているので、流路縮小部材30によって形成された狭小流路32を通過したムース状の水石鹸が水石鹸通路8bの内壁面に衝突し、吐出される水石鹸の流速を更に低下させることができる。これにより、流速の高いムース状の水石鹸が吐出され、これが使用者の掌で跳ねて、使用者に不快感を与えるのを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、流路縮小部材30によって水石鹸通路8b内に形成される狭小流路32が、下流側が高くなるように傾斜しているので、狭小流路32内に残留しているムース状の水石鹸が液体状に戻った場合でも、水石鹸が水石鹸吐出口8aから液だれするのを抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、流路縮小部材30により複数の狭小流路32が形成されるので(
図5)、一部の狭小流路32が詰まった場合でもムース状の水石鹸の流路を確保することができ、狭小流路32の詰まりによる不具合を回避することができる。また、複数の狭小流路32を形成することにより、流路の容積に対し、流路を形成する壁面の面積が広くなる。これにより、狭小流路32の内部に残留しているムース状の水石鹸に作用する表面張力が大きくなり、ムース状の水石鹸が液状に戻るのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、流路縮小部材30は、その上流側の端部(上流側端部30b)が細く形成されているので、流路縮小部材30が水石鹸通路8b内に如何なる回転位置で配置された場合でも、水石鹸通路8bの入口である貫通穴8cが流路縮小部材30によって閉塞されてしまうことがない。この結果、組み立ての不良による不具合の発生を防止することができる。
【0064】
さらに、本実施形態の水石鹸供給装置1によれば、流路縮小部材30は、その下流側の端部(下流側端部30c)も細く形成されているので、流路縮小部材30が水石鹸通路8b内でどちら向きに配置された場合でも、水石鹸通路8bの入口が流路縮小部材30によって閉塞されてしまうことがない。この結果、組み立ての不良による不具合の発生を防止することができる。
【0065】
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態による水石鹸供給装置を説明する。
本実施形態の水石鹸供給装置は、スパウト部材の内部に流路縮小部材が複数配置されている点が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0066】
図6は、本発明の第2実施形態による水石鹸供給装置の断面図である。
図6に示すように、本発実施形態の水石鹸供給装置100においては、スパウト部材108の長さが、第1実施形態の水石鹸供給装置におけるスパウト部材よりも長く構成されている。さらに、スパウト部材108の内部には、2つの流路縮小部材130が2つ並べて直列に配置されている。また、各流路縮小部材130は、第1実施形態における流路縮小部材30と同様に、両側の端部が細く形成されているので、貫通穴108cが流路縮小部材130によって閉塞されることがない。
【0067】
また、各流路縮小部材130の両側の端部が細く形成されていることにより、流路縮小部材130の両端部と、水石鹸通路108bの内壁面との間に環状の空間が形成される。このため、上流側の流路縮小部材130によって形成された狭小流路から流出した水石鹸は、上流側の流路縮小部材130周囲の環状の空間内に流入した後、下流側の流路縮小部材130周囲の環状の空間内に流入し、下流側の流路縮小部材130によって形成された狭小流路に流入する。これにより、上流側の流路縮小部材130によって形成された狭小流路と、下流側の流路縮小部材130によって形成された狭小流路が整合していない場合でも、水石鹸は各流路縮小部材130によって形成された狭小流路を通って水石鹸吐出口108aに到達することができる。
【0068】
このように、スパウト部材108が長い場合であっても、水石鹸通路108b内に、短い流路縮小部材130を複数配置することにより、スパウト部材108内の水石鹸通路の容積を十分に縮小することができる。また、流路縮小部材を複数使用することにより、1種類の流路縮小部材を準備しておくだけで、種々の長さのスパウト部材に適用することができ、水石鹸通路の容積を減少させることができる。
【0069】
次に、
図7を参照して、本発明の第3実施形態による水石鹸供給装置を説明する。
本実施形態の水石鹸供給装置は、スパウト部材の内部に配置されている流路縮小部材の構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0070】
図7は、本発明の第3実施形態による水石鹸供給装置に使用されている流路縮小部材の斜視図である。
図7に示すように、本実施形態の水石鹸供給装置に使用されている流路縮小部材230は、丸棒状の部材であり、その外周面には、1本の螺旋状の溝230dが形成されている。本実施形態においては、流路縮小部材230がスパウト部材の水石鹸通路内に配置されることにより、溝230dと水石鹸通路の内壁面との間に1本の螺旋状の狭小流路が形成される。
【0071】
また、本実施形態においては、流路縮小部材230により螺旋状の狭小流路が形成されるので、狭小流路の一部は、常に、下流側に向かって上方に傾斜した流路となる。このため、流路縮小部材230を配置するスパウト部材が、本発明の第1実施形態のように全体として上方に向かって傾斜していない場合であっても、水石鹸通路内に形成される狭小流路に、上方に向かう傾斜を持たせることができる。これにより、狭小流路内でムース状から液体状に戻った水石鹸が、水石鹸吐出口から流出するのを抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、液体ポンプ及び空気ポンプは、使用者の操作力により直接作動される手動式のポンプであったが、電気駆動式の液体ポンプ及び空気ポンプを備えた水石鹸供給装置に、本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 水石鹸供給装置
2 タンク
4 本体部
6 操作部
6a 挿入部
6b 受入ボア
8 スパウト部材
8a 水石鹸吐出口
8b 水石鹸通路
8c 貫通穴(水石鹸通路の入口)
10 外殻部材
10a 挿入開口
12 ベース部材
14 ポンプ受け部材
15 吸入管
16 下側ポンプ室部材
16a 大径部
16b 小径部
16c ボール弁体
17 空気ポンプ室
18 上側ポンプ室部材
18a 大径部
18b 小径部
19 コイルばね
20 水石鹸室部材
21 液体ポンプ室
22 水石鹸弁体
24 摺動部形成部材
26 混合室形成部材
26a 混合室
28 摺動スリーブ
30 流路縮小部材
30a 中央部
30b 上流側端部
30c 下流側端部
30d 溝
32 狭小流路
100 水石鹸供給装置
108 スパウト部材
108a 水石鹸吐出口
108b 水石鹸通路
108c 貫通穴
130 流路縮小部材
230 流路縮小部材
230d 溝