(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】塗布ガン
(51)【国際特許分類】
B05C 5/04 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
B05C5/04
(21)【出願番号】P 2018141465
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 猛史
(72)【発明者】
【氏名】洞戸 翔太
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-201673(JP,A)
【文献】特開昭62-117660(JP,A)
【文献】特開昭56-040456(JP,A)
【文献】特開平11-188292(JP,A)
【文献】特開2003-200092(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1678644(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第2000-0017963(KR,A)
【文献】米国特許第06415958(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00 - 1/06
B05C 5/00 - 5/04
B05C 17/00 - 17/015
B05B 5/00 - 5/16
B05B 7/00 - 7/32
B05D 1/00 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔
と、
前記ガン本体の内部空間を介して前記排気孔と連通する吸気孔とを備え、
前記ノズルを水平に向けた状態、斜め下方に向けた状態、及び下方に向けた状態では、前記排気孔が前記吸気孔よりも高い位置にあることを特徴とする塗布ガン。
【請求項2】
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔とを備え、
前記ヒーターが前記ガン本体の前端部に配され、
前記排気孔が前記ガン本体の後端部に配されていることを特徴とす
る塗布ガン。
【請求項3】
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔と、
前記ガン本体の外面から突出した形態であって、固定部材に引っ掛けることが可能なフックとを備えており、
前記排気孔が前記フックに形成されていることを特徴とす
る塗布ガン。
【請求項4】
前記ガン本体の内部空間を介して前記排気孔と連通する吸気孔を備えていることを特徴とする
請求項2又は請求項3に記載の塗布ガン。
【請求項5】
前記ノズルを水平に向けた状態、斜め下方に向けた状態、及び下方に向けた状態では、前記排気孔が前記吸気孔よりも高い位置にあることを特徴とする
請求項4に記載の塗布ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホットメルト用のハンドタイプの塗布ガンが開示されている。ガン本体内には、供給されたホットメルトの溶融状態を保持するため、又はホットメルトの粘度を調節するためのヒーターが設けられている。ガン本体に設けたトリガを操作すると、ヒーターで加熱されて溶融状態となったホットメルトが、ノズルから吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒーターを備えた塗布ガンは、ホットメルトだけでなくガン本体も加熱されるため、ガン本体が過熱状態になることが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ガン本体の過熱を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の塗布ガンは、
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔と、
前記ガン本体の内部空間を介して前記排気孔と連通する吸気孔とを備え、
前記ノズルを水平に向けた状態、斜め下方に向けた状態、及び下方に向けた状態では、前記排気孔が前記吸気孔よりも高い位置にあることを特徴とする。
第2の発明の塗布ガンは、
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔とを備え、
前記ヒーターが前記ガン本体の前端部に配され、
前記排気孔が前記ガン本体の後端部に配されていることを特徴とする。
第3の発明の塗布ガンは、
塗布剤が供給されるガン本体と、
前記ガン本体内に設けられ、前記塗布剤を加熱するヒーターと、
前記ガン本体の前端部に設けられ、溶融状態の前記塗布剤を吐出可能なノズルと、
前記ガン本体に形成され、前記ガン本体内の空気を前記ガン本体の外部へ排出可能な排気孔と、
前記ガン本体の外面から突出した形態であって、固定部材に引っ掛けることが可能なフックとを備えており、
前記排気孔が前記フックに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ヒーターの熱によってガン本体内の温度が上昇すると、ガン本体内の高温の空気が排気孔を通って外部に排出されるので、ガン本体が過熱状態になることを防止できる。第1の発明によれば、ガン本体の外部の空気が吸気孔を通ってガン本体内に供給されるので、ガン本体内の空気の排出効率に優れている。ガン本体内の高温の空気は上昇しようとするので、排気孔が吸気孔より上方に位置するようにすることで、排気効率が高まる。第2の発明によれば、ノズルを下向きにして塗布剤を吐出する状態において、排気効率を高めることができる。第3の発明によれば、フックを固定部材に引っかけた状態では、ガン本体が自重によりフックより下方に位置するので、ガン本体内の空気をフックの排気孔から効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】ホースと外部ケーブルをガン本体の下方へ導出させた状態をあらわす塗布ガンの一部切欠側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第2及び第3の発明は、前記ガン本体の内部空間を介して前記排気孔と連通する吸気孔を備えていてもよい。この構成によれば、ガン本体の外部の空気が吸気孔を通ってガン本体内に供給されるので、ガン本体内の空気の排出効率に優れている。
【0010】
第2及び第3の発明は、前記ノズルを水平に向けた状態、斜め下方に向けた状態、及び下方に向けた状態では、前記排気孔が前記吸気孔よりも高い位置にあってもよい。この構成によれば、ガン本体内の高温の空気は上昇しようとするので、排気孔が吸気孔より上方に位置するようにすることで、排気効率が高まる。
【0011】
第1及び第3の発明は、前記ヒーターが前記ガン本体の前端部に配され、前記排気孔が前記ガン本体の後端部に配されていてもよい。この構成によれば、ノズルを下向きにして塗布剤を吐出する状態において、排気効率を高めることができる。
【0012】
第1及び第3の発明は、前記ガン本体の外面から突出した形態であって、固定部材に引っ掛けることが可能なフックを備えており、前記排気孔が前記フックに形成されていてもよい。この構成によれば、フックを固定部材に引っかけた状態では、ガン本体が自重によりフックより下方に位置するので、ガン本体内の空気をフックの排気孔から効率的に排出することができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図5を参照して説明する。本実施例1の塗布ガンGは、ホットメルトR(請求項に記載の塗布剤)を被塗物(図示省略)の表面に塗布するためのハンドガンである。塗布ガンGは、ガン本体10と、ホットメルトRを吐出するノズル14と、ヒーター18と、トリガ27とを備えて構成されている。尚、以下の説明における前後及び上下の方向については、塗布ガンGが、ホットメルトRを水平方向前方へ吐出する向きとなっている状態を基準とする。
【0014】
図2,5に示すように、ガン本体10は、前後方向に長いボディ11と、ボディ11の後端部から下方へ延出したグリップ25とを備えている。ボディ11の前端面からはノズル14が突出している。
図4に示すように、ボディ11内の前端部には、前後方向に細長い流路15が形成され、流路15には、トリガ27の手動操作によって開閉するニードル弁16が設けられている。ニードル弁16が開弁すると流路15の前端とノズル14とが連通し、流路15内のホットメルトRがノズル14へ圧送されるようになっている。
【0015】
図2,5に示すように、ボディ11は、ノズル14が取り付けられた前側部材12と、グリップ25と一体をなす後側部材13との2つの部品を組み付けて構成されている。前側部材12には、ノズル14の他に、流路15とニードル弁16が設けられている。前側部材12の外面には、流路15と連通する接続部17が設けられている。接続部17には、ホットメルトRの材料を流路15(ガン本体10)に供給するためのホースHが、接続可能となっている。接続部17の軸線方向は、ノズル14からのホットメルトRの吐出方向(前後方向)に対して斜めに交差する方向である。
【0016】
前側部材12は、後側部材13に対し、
図1,2に示す上出し形態と
図5に下出し形態のうちいずれか一方の形態で選択的に組み付けることができる。下出し形態は、上出し形態に対して前側部材12を上下反転させた形態である。上出し形態では、接続部17が前側部材12の上面に配され、ホースHが前側部材12から斜め上後方へ延出する。下出し形態では、接続部17が前側部材12の下面面に配され、ホースHが前側部材12から斜め下後方へ延出する。
【0017】
図2,4,5に示すように、前側部材12の内部には、ヒーター18が取り付けられている。ヒーター18は、流路15内に供給されたホットメルトRの樹脂材料を加熱して溶融状態にするため又はホットメルトRの粘度を調節するための電気機器であり、流路15の近傍に配置されている。
図2,5に示すように、ヒーター18からは、ヒーター18に給電するための給電回路を含む内部ケーブル19が導出されている。内部ケーブル19は、給電回路の他に、ホットメルトRの温度を検出する温度センサ(図示省略)の検知信号伝達回路、アース回路、過熱時にヒーター18への給電を遮断する遮断回路を含んでいる。
【0018】
図2,5に示すように、内部ケーブル19の導出端にはレセプタクル20が取り付けられている。レセプタクル20には、ガン本体10の外部に配索された外部ケーブルCが接続されるようになっている。外部ケーブルCは、レセプタクル20を介して内部ケーブル19と導通可能に接続されるようになっている。外部ケーブルCは、内部ケーブル19と同様、ヒーター18への給電回路、温度センサの検知信号伝達回路、アース回路、及び遮断回路を含んでいる。
【0019】
図1,2,5に示すように、後側部材13(ボディ11)の上面には、引っ掛け孔22を有するフック21が一体に形成されている。塗布作業を中断又は終了したときには、
図5に示すように、塗布ブースに設けたブラケット等の固定部材Bにフック21(引っ掛け孔22)を引っ掛けると、塗布ガンGを被塗物に接触させることなく吊り下げ状態で保管することができる。フック21は、ボディ11の上面の前後方向における略中央部から斜め上後方へ突出した筒状部23を有している。筒状部23の上端部には上部取付部24が形成されている。上部取付部24には、レセプタクル20を取り付けることが可能である。
【0020】
図1,2,5に示すように、グリップ25には、トリガ27が前後方向への揺動可能に取り付けられている。トリガ27を引き操作すると、ニードル弁16が開弁してノズル14から溶融状態のホットメルトRが吐出されるようになっている。グリップ25には、グリップ25の下端面に開口する下部取付部26が形成されている。下部取付部26には、レセプタクル20を取り付けることが可能である。
【0021】
図2,5に示すように、ガン本体10の内部には内部空間30が形成されている。内部空間30は、ボディ11のうち後側部材13の内部に形成されたボディ内空間31と、フック21の筒状部23の内部に形成されたフック内空間32と、グリップ25の内部に形成されたグリップ内空間33とから構成されている。ヒーター18の後端部は、ボディ内空間31の前端部には臨んでいる。フック内空間32の下端部は、ボディ内空間31のうち前端部の近傍位置の上面に連通位置している。グリップ内空間33の上端部は、ボディ内空間31のうち後端部の下面に連通している。
【0022】
ボディ内空間31とフック内空間32は、内部ケーブル19を配索するための配索スペースとしての機能と、ヒーター18が発する熱やヒーター18により加熱されて高温となった部材や部位から発せられる熱を流動させるための流動スペースとしての機能を兼ね備えている。グリップ内空間33は、内部ケーブル19を配索するための配索スペースとしての機能を備えている。
【0023】
ノズル14を前方(水平方向)又は斜め下方に向けてホットメルトRを塗布する際には、
図1~3に示すように、前側部材12を上出し形態としてボディ11の上面の接続部17にホースHを接続するとともに、内部ケーブル19をボディ内空間31とフック内空間32に屈曲状態で配索してレセプタクル20を上部取付部24に取り付け、レセプタクル20に外部ケーブルCを接続する。
【0024】
ノズル14を下方に向けてホットメルトRを塗布する際には、
図5に示すように、前側部材12を下出し形態としてボディ11の下面の接続部17にホースHを接続するとともに、内部ケーブル19をボディ内空間31とグリップ内空間33に屈曲状態で配索してレセプタクル20を下部取付部26に取り付け、レセプタクル20に外部ケーブルCを接続する。
【0025】
本実施例の塗布ガンGは、ガン本体10内に収容されたヒーター18が、ホットメルトRを加熱するだけでなく、ガン本体10も加熱するため、ガン本体10が過熱状態になることが懸念される。そこで、ガン本体10の過熱を防止する手段として、ガン本体10には、ガン本体10の熱をガン本体10の外部へ排出するための上部排気孔35(請求項に記載の排気孔)と後部排気孔36(請求項に記載の排気孔)が形成されている。さらに、排気効率を向上させるために、ガン本体10には吸気孔37が形成されている。
【0026】
図1,2,5に示すように、上部排気孔35は、フック21の筒状部23の上端部に配されており、筒状部23(フック内空間32)の内周面から外周面に貫通した形態である。上部排気孔35は、前後方向に細長い2本(複数本)のスリットを、上下に並列配置して構成されている。上部排気孔35は、筒状部23の左右両側面においてガン本体10の外部へ開口させた形態である。筒状部23の内周面のうち上部排気孔35の形成領域は、上部取付部24に取り付けたレセプタクル20の外周面に対して径方向に間隔を空けている。したがって、上部取付部24にレセプタクル20を取付けた状態でも、フック内空間32とガン本体10の外部空間は上部排気孔35を介して連通している。
【0027】
図1~3に示すように、後部排気孔36は、ボディ11の後端部に配されており、後側部材13の後壁部を前後方向に貫通した形態である。後部排気孔36は、左右方向に長い3本(複数本)のスリットを、上下に並列配置して構成されている。後部排気孔36は、ボディ11の後端面においてガン本体10の外部後方へ開口させた形態である。ボディ内空間31の後端部は、後部排気孔36を介してガン本体10の外部空間と連通している。
【0028】
図1,2,5に示すように、吸気孔37は、後側部材13の前端部に配されており、後側部材13の左右両側壁部を左右方向に貫通した形態である。吸気孔37は、上下方向に細長い2本(複数本)のスリットを、前後に並列配置して構成されている。吸気孔37は、後側部材13の左右両側面においてガン本体10の外部側方へ開口させた形態である。ボディ内空間31の前端部は、吸気孔37を介してガン本体10の外部空間と連通している。
【0029】
吸気孔37は、ヒーター18の後方近傍で、且つ後部排気孔36より前方に配されている。換言すると、吸気孔37は、前後方向に関してヒーター18と後部排気孔36との間のうちヒーター18に近い位置に配されている。また、吸気孔37は、上部排気孔35よりも前方で、且つ上部排気孔35よりも下方の位置に配されている。側面視において、上部排気孔35と吸気孔37はフック21の軸線上に間隔を空けて並ぶように配置され、上部排気孔35よりも吸気孔37の方がヒーター18に近い位置に配置されている。
【0030】
ノズル14が水平方向を向いた状態でホットメルトRを塗布する際には、吸気孔37が、ヒーター18とほぼ同じ高さでヒーター18の近傍後方に位置する。塗布中は、ガン本体10のうちヒーター18が収容されている前側部材12が最も高温となる。前側部材12の熱は、前側部材12の外面から大気中(ガン本体10の外部)に放出されるだけでなく、ボディ内空間31とフック内空間32に生成される空気流に乗じて上部排気孔35から大気中に排出される。また、ボディ内空間31の空気の一部は、後部排気孔36から大気中に排出される。
【0031】
ボディ内空間31及びフック内空間32の高温の空気は上昇しようとするのであるが、ノズル14を水平に向けた状態では、上部排気孔35が、吸気孔37、前側部材12及びヒーター18より高い位置にあるので、ボディ内空間31(ガン本体10)内の高温の空気は、上部排気孔35から効果的にガン本体10の外部へ排出される。尚、
図2に示すように、ボディ内空間31の後端側部分には、トリガ27の上端部が収容されているのであるが、トリガ27のうちボディ内空間31に収容されている部分には、トリガ27を前後方向に貫通する通気孔28が形成されている。したがって、ボディ内空間31における空気の流動が妨げられる虞はない。
【0032】
また、ノズル14が斜め下方向き又は下方向を向いた状態でホットメルトRを塗布する際には、吸気孔37がヒーター18の上方近傍に位置し、上部排気孔35と後部排気孔36の両方が、吸気孔37、前側部材12及びヒーター18より高い位置にある。塗布中、前側部材12が高温になると、前側部材12の熱は、前側部材12の外面から大気中(ガン本体10の外部)に放出されるだけでなく、ボディ内空間31とフック内空間32に生成される空気流に乗じて上部排気孔35から大気中に排出されるとともに、ボディ内空間31内に生成される空気流に乗じて後部排気孔36から大気中に排出される。また、この場合も、ボディ内空間31では、空気流がトリガ27の通気孔28を通過するので、排気効率が低下する虞はない。
【0033】
また、前側部材12から上部排気孔35と後部排気孔36に至る空気流の流動経路のうちヒーター18の近傍の上流端部(ボディ内空間31の前端部)には、前側部材12より低温の空気が、吸気孔37を通って流入する。これにより、ボディ内空間31の前端部と上部排気孔35との間で温度差が生じると同時に、ボディ内空間31の前端部と後部排気孔36との間で温度差が生じるので、前側部材12から上部排気孔35と後部排気孔36に至る空気の流れが良好となる。したがって、上部排気孔35と後部排気孔36からの排熱効率が向上する。
【0034】
また、ボディ内空間31及びフック内空間32の高温の空気は上昇しようとするのであるが、ノズル14を水平に向けた状態では、上部排気孔35が、吸気孔37、前側部材12及びヒーター18より高い位置にあるので、ボディ内空間31(ガン本体10)内の高温の空気は、上部排気孔35から効果的にガン本体10の外部へ排出される。さらに、ノズル14を斜め下向きにした状態とノズル14を下向きにした状態では、上部排気孔35と後部排気孔36の両方が、吸気孔37、前側部材12及びヒーター18より高い位置にあるので、ボディ内空間31(ガン本体10)内の高温の空気は、上部排気孔35と後部排気孔36の両方から効果的にガン本体10の外部へ排出される。
【0035】
また、ガン本体10には、後側部材13の外面(上面)から突出した形態であって、固定部材Bに引っ掛けることが可能なフック21が一体に設けられている。フック21を構成する筒状部23には、排気孔が形成されている。この構成によれば、フック21を固定部材Bに引っかけた状態では、ガン本体10が自重によりフック21より下方に位置し、ノズル14が斜め下方向を向くとともに、上部排気孔35と後部排気孔36が前側部材12より上方に位置する。したがって、高温になっている前側部材12の熱(ガン本体10内の熱)は、ボディ内空間31とフック内空間32を通って、上部排気孔35と後部排気孔36の両方から効率的に排出される。
【0036】
本実施例の塗布ガンGは、ホットメルトRが供給されるガン本体10と、ガン本体10内に設けられ、ホットメルトRを加熱するヒーター18と、ガン本体10の前端部に設けられ、溶融状態のホットメルトRを吐出可能なノズル14と、上部排気孔35及び後部排気孔36を備えている。上部排気孔35と後部排気孔36は、ガン本体10に形成され、ガン本体10内の高温の空気をガン本体10の外部へ排出させる機能を有する。したがって、ヒーター18の熱によってガン本体10内の温度が上昇すると、ガン本体10内の高温の空気が上部排気孔35と後部排気孔36を通って外部に排出されるので、ガン本体10が過熱状態になることを防止できる。
【0037】
また、ガン本体10のボディ11を構成する後側部材13の前端部には、吸気孔37が形成されている。吸気孔37は、内部空間30(ボディ内空間31とフック内空間32)を介して上部排気孔35と連通しているともに、内部空間30(ボディ内空間31)を介して後部排気孔36と連通している。この構成によれば、ガン本体10の外部の空気が吸気孔37を通ってガン本体10内に供給されるので、ガン本体10内の空気の排出効率に優れている。
【0038】
また、上部排気孔35と後部排気孔36は、ホットメルトRをノズル14から吐出している状態で吸気孔37より上方に位置するように配されている。ガン本体10内の高温の空気は上昇しようとするのであるが、上記構成によれば、上部排気孔35と後部排気孔36が吸気孔37より上方に位置するようにしたので、排気効率が高まる。また、ヒーター18はガン本体10の前端部に配されており、後部排気孔36はガン本体10の後端部に配されている。この構成によれば、ノズル14を下向きにしてホットメルトRを吐出する状態において、排気効率を高めることができる。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、吸気孔をヒーターの近傍に設けたが、吸気孔はヒーターから離れた位置(ヒーターと排気孔との中間位置等)に設けてもよい。
(2)上記実施例では、吸気孔をガン本体のボディに設けたが、吸気孔はグリップに設けてもよい。
(3)上記実施例では、ガン本体の後端部に配した後部排気孔が、ボディの後端面において後方に開口するが、ガン本体の後端部に配する後部排気孔は、ボディの側面において側方に開口させてもよく、ボディの上面において上方へ開口させてもよい。
(4)上記実施例では、ガン本体の後方に開口する形態の後部排気孔を、ボディの後面に配したが、ガン本体の後方に開口する後部排気孔は、グリップの後面に配してもよい。
(5)上記実施例では、上部排気孔がフックの筒状部の側面に開口するが、上部排気孔は、筒状部の前面や後面に開口させてもよく、フックのうち筒状部以外の部位に開口させてもよい。
(6)上記実施例では、排気孔をボディとフックに設けたが、排気孔は、ボディのみに設けてもよく、フックのみに設けてもよく、グリップのみに設けてもよく、ボディとグリップに設けてもよく、フックとグリップに設けてもよく、ボディとフックとグリップに設けてもよい。
(7)上記実施例では、塗布ガンが手動のトリガ操作によって塗布を行うハンドガンであるが、本発明は、制御プログラムやセンサの情報等に基づいて自動的に塗布を行う自動ガン(ロボット)にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
B…固定部材
G…塗布ガン
R…ホットメルト(塗布剤)
10…ガン本体
14…ノズル
18…ヒーター
21…フック
30…ガン本体の内部空間
35…上部排気孔(排気孔)
36…後部排気孔(排気孔)
37…吸気孔