(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】薬液注入容器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/152 20060101AFI20220217BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A61M5/152
A61M5/168 500
(21)【出願番号】P 2017204631
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591129025
【氏名又は名称】株式会社塚田メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】塚田 修
(72)【発明者】
【氏名】小林 由香里
(72)【発明者】
【氏名】仲佐 昭彦
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-068383(JP,A)
【文献】特開2005-288158(JP,A)
【文献】特開平11-169458(JP,A)
【文献】特開平04-061867(JP,A)
【文献】国際公開第1998/000841(WO,A1)
【文献】特表2011-527212(JP,A)
【文献】特開2002-239003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/152
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された薬液を注入するための薬液注入容器において、
弾性力で収縮して貯留している薬液を吐出させる本体部と、
吐出する前記薬液の流量を制御する流量制御部と、
を備え
、
前記本体部は、蛇腹形状を有して前記薬液を貯留する貯留部と、筒形状を有して前記貯留部を囲み、前記貯留部の蛇腹形状が延びる方向に弾性力で収縮して前記貯留部を収縮させる収縮部とを備えたことを特徴とする、薬液注入容器。
【請求項2】
請求項
1に記載の薬液注入容器において、前記本体部は、前記薬液に侵されないためのコーティングを前記薬液と接触する内面に有することを特徴とする、薬液注入容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填された薬液を注入するための薬液注入容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充填された薬液を注入するための薬液注入容器が知られている(例えば、引用文献1参照)。この種の薬液注入容器は、点滴スタンドに引っ掛けられて重力により薬液を吐出させたり、電動ポンプを用いて薬液を吐出させたりして、患者の体に薬液を供給していた。薬液注入容器に充填される薬液は、使用する際に充填されるため、充填される薬液によっては医療従事者に対して肌に付着しないように細心の注意を求めており、特に抗がん剤等の薬液では被曝を防止する必要があった。
【0003】
また、薬液が予め充填されたプレフィルドシリンジも提案されていた。このプレフィルドシリンジは、シリンジに薬液が充填されたものであるため、点滴スタンドや電動ポンプを用いることなく薬液を吐出することができ、医療現場での利便性が向上した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術による薬液注入容器では、薬剤部や看護部等で薬液調整が必要であったり、薬液の吐出に用いる点滴スタンドや電動ポンプを駆動させるための電力供給源を必要とする等、使用環境に投与方法が大きく影響を受けていた。
【0006】
また、プレフィルドシリンジは、薬液が予め充填されているが、プランジャをシリンジに押し込んで薬液を吐出させるため、手動の場合は人手が必要であり、シリンジポンプ等を用いる場合はシリンジポンプ等を駆動させるための電力供給源が必要であった。
【0007】
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、点滴スタンドや電力を要することなく薬液を吐出させる事のできる使用環境を選ばない薬液注入容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、充填された薬液を注入するための薬液注入容器において、弾性力で収縮して貯留している薬液を吐出させる本体部と、吐出する前記薬液の流量を制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記本体部は、閉曲面を有していてもよい。前記本体部は、前記薬液を貯留する貯留部と、弾性力で前記貯留部を収縮させる収縮部とを有していてもよい。前記本体部は、蛇腹形状を有して前記薬液を貯留する貯留部と、筒形状を有して前記貯留部を囲み、前記貯留部の筒形状が延びる方向に弾性力で収縮して前記貯留部を収縮させる収縮部とを備えていてもよい。前記本体部は、筒形状を有し、蛇腹形状を有して前記薬液を貯留する貯留部と、前記貯留部を弾性力で押し潰して収縮させるばねとを備えていてもよい。前記本体部は、前記薬液に侵されないためのコーティングを前記薬液と接触する内面に有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、点滴スタンドや電力を要することなく薬液を吐出させる事のできる使用環境を選ばない薬液注入容器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る薬液注入容器を示す模式図である。
【
図2】第2実施形態に係る薬液注入容器を示す模式図である。
【
図3】第3実施形態に係る薬液注入容器及び貯留部を示す模式図であり、
図3(a)は、薬液注入容器を示しており、
図3(b)は収縮前の貯留部を左側に示しているとともに収縮後の貯留部を右側に示している。
【
図4】第4実施形態に係る薬液注入容器を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る薬液注入容器を示す模式図である。
薬液注入容器10は、本体部1と、チューブ2と、流量制御部3とを備えている。
本体部1は、シリコーンゴム、イソプレンゴム等の弾性体で楕円形形状断面の閉曲面を有するように形成されており、必要に応じて点滴スタンド等に吊るすためのリングや取手が一体で形成されている。この本体部1は、内部に薬液Sを貯留するようになっており、本実施形態に係る本体部1は、予め薬液Sが充填されている。本体部1に充填される薬液Sは、例えば、補液、麻酔薬、抗がん剤、胃ろう等に用いられる栄養剤等である。本体部1は、弾性力で収縮するときに圧力P1が薬液Sに付与され、貯留している薬液Sをチューブ2に吐出させて、接続された別の器具に薬液Sを注入するようになっている。
【0013】
また、本体部1は、薬液Sと接触する内面1aに、内部に貯留される薬液Sに本体部1が侵されないためのコーティングが施されているとともに、ガスバリア性を有している。
【0014】
チューブ2は、本体部1の薬液Sの流出口(不図示)と流量制御部3とを流体的に連通させており、図中矢印Fで示すように、本体部1から吐出された薬液Sを流量制御部3に送るようになっている。このチューブ2は、シリコーンゴム、イソプレンゴム等の弾性体で湾曲自在に形成されている。
【0015】
流量制御部3は、樹脂で形成された弁である。この流量制御部3は、一端がチューブ2に接続されているとともに、他端が図示せぬ別のチューブを介して外部器具に接続されるようになっている。流量制御部3は、チューブ2から流れてきた薬液Sが流通する量を調節可能に設けられており、流通を完全に遮断することもできるように設けられている。これにより、流量制御部3は、本体部1から吐出する薬液Sの流量を制御するようになっている。
【0016】
以下、薬液注入容器10の使用方法について説明する。
薬液注入容器10は、予め薬液Sが本体部1内に充填されており、流量制御部3の弁は完全に閉じた状態になっている。薬液注入容器10は、患者に薬液Sを供給する際には、使用者が流量制御部3を操作して弁を開く。これにより、チューブ2は流量制御部3を介して別のチューブと流体的に連通されてチューブ2から別のチューブに薬液Sが流出可能になる。すなわち、本体部1に充填されていた薬液Sは、本体部1が弾性力で収縮して圧力P1が薬液Sに付与されることによりチューブ2に吐出され、チューブ2に吐出された薬液Sは、図中矢印Fで示すように、流量制御部3を流通して別のチューブに流出するようになっている。
【0017】
本実施形態に係る薬液注入容器10は、弾性力で収縮して貯留している薬液Sを吐出させる本体部1と、吐出する薬液Sの流量を制御する流量制御部3とを備えている。これにより、本体部1が収縮するように常に弾性力がはたらいており、流量制御部3を開いて外部と連通させただけで、本体部1内に貯留していた薬液Sはチューブ2及び流量制御部3を通って外部に吐出される。このため、点滴スタンドや電力を要することなく薬液Sを吐出させる事ができ、点滴スタンドや電力源の有無といった使用環境を選ばずに使用することができる。
【0018】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る薬液注入容器を示す模式図である。なお、第2実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0019】
本実施形態に係る薬液注入容器20は、本体部11が第1実施形態に係る本体部1(
図1参照)と異なっている。
【0020】
本体部11は、収縮部11aと貯留部11bとからなる二重の積層構造を有している。
【0021】
収縮部11aは、第1実施形態に係る本体部1と同様に、シリコーンゴム、イソプレンゴム等の弾性体で形成されており、必要に応じて点滴スタンド等に吊るすためのリングや取手が一体で形成されている。収縮部11aは、弾性力で収縮するときに圧力P2が貯留部11bに付与されるようになっている。
【0022】
貯留部11bは、内部に薬液Sを貯留するようになっており、本実施形態に係る貯留部11bは、予め薬液Sが充填されている。貯留部11bは、流量制御部3が開くと、収縮部11aが収縮して圧力P2が付与され、貯留している薬液Sをチューブ2に吐出させるようになっている。
【0023】
また、貯留部11bは、薬液Sと接触するため、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、及びPVC(ポリ塩化ビニル)等で形成されている。これにより、貯留部11bは、内部に貯留される薬液Sに侵されないようになっているとともに、ガスバリア性を有している。なお、本実施形態では、収縮部11aと貯留部11bとの間に空気層Aによる隙間が形成されており、空気層Aに充填された空気の量に応じて貯留部11bへの圧力P2の伝わり方を調整することができる。なお、収縮部11aと貯留部11bとは間に隙間を設けずにぴったりと密着させてもよい。
【0024】
薬液注入容器20は、流量制御部3の弁が開いて本体部11の収縮部11aが収縮すると、収縮部11aは空気層Aを介して貯留部11bを収縮させ、チューブ2に吐出された薬液Sは、図中矢印Fで示すように、流量制御部3を流通して別のチューブに流出するようになっている。
【0025】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る薬液注入容器及び貯留部を示す模式図である。この図において、
図3(a)は、薬液注入容器を示しており、
図3(b)は収縮前の貯留部を左側に示し、収縮後の貯留部を右側に示している。なお、
図3(a)ではチューブ2及び流量制御部3の図示を省略している。
【0026】
本実施形態に係る薬液注入容器30は、本体部21が第1実施形態に係る本体部1(
図1参照)と異なっている。本体部21は、収縮部21aと貯留部21bとを備えている。
【0027】
収縮部21aは、第1実施形態に係る本体部1と同様に、円筒形状部分がシリコーンゴム、イソプレンゴム等の弾性体で形成されており、円筒形状部分の両端は硬板22,23で挟まれている。一方の硬板22は、図示せぬ流出口が中心に形成されており、この流出口は貯留部21bの内部とチューブ2(不図示)とを流体的に連通させている。他方の硬板23の中央には、必要に応じて点滴スタンド等に吊るすためのリングや取手が一体で形成されている。
【0028】
貯留部21bは、
図3(b)に示すように、蛇腹形状に形成されており、内部が収縮部21aの硬板22に形成された流出口と流体的に連通している。この貯留部21bは、内部に薬液Sを貯留するようになっており、本実施形態に係る貯留部21bは、予め薬液Sが充填されている。貯留部21bは、第2実施形態に係る貯留部11bと同様に、薬液Sと接触するため、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、及びPVC(ポリ塩化ビニル)等で形成されている。貯留部21bは、
図3(b)に示すように、通常時は図中左側に示す状態にあるが、外圧を受けると図中右側に示すように蛇腹形状に形成された部分が折りたたまれて収縮するようになっている。
【0029】
本体部21は、
図3(a)に示すように、流量制御部3(不図示)の弁が開くと、収縮部21aの円筒形状部分が弾性力で収縮して円筒形状が延びる方向の圧力P3が貯留部21bに付与され、貯留部21bが収縮して貯留している薬液Sをチューブ2に吐出させるようになっている。
【0030】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る薬液注入容器を模式的に示す斜視図である。なお、
図4ではチューブ2及び流量制御部3の図示を省略している。
【0031】
本実施形態に係る薬液注入容器40は、貯留部31bが第3実施形態の貯留部21b(
図3参照)と同様の構成を備えているが、本体部31が第3実施形態の本体部21(
図3参照)と異なった構成を有している。
【0032】
本実施形態に係る本体部31は、円筒形状に形成されており、一端の内部にばね31aが取り付けられている一方、円筒形状の他端を塞ぐ円形形状部分の中心には流出口32が形成されている。本体部31は、ばね31aが取り付けられた一端、すなわち流出口32の反対側に、必要に応じて点滴スタンド等に吊るすためのリングや取手が一体で形成されている。ばね31aと流出口32との間には、貯留部31bが組み込まれており、貯留部31bの内部は流出口32と流体的に連通している。貯留部31bは、カートリッジ式になっており、使用後は新たな貯留部31bと詰め替えられるようになっている。
【0033】
ばね31aは、例えば、コイルばねであり、貯留部31bを流出口32側に押し付けて収縮させるようになっている。
【0034】
本体部31は、流量制御部3(不図示)の弁が開くと、円筒形状が延びる方向の圧力P4をばね31aが貯留部31bに付与して貯留部31bを弾性力で押し潰して収縮させ、貯留部31bに貯留されている薬液Sをチューブ2(不図示)に吐出させるようになっている。
【0035】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。上記第3実施形態及び第4実施形態では、本体部21,31を円筒形状としているが、これに限定されず、貯留部21b、31bを収縮させることができれば矩形断面の筒形状等にしてもよい。
【0036】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、本体部1,11は楕円形形状断面を有するように形成されているが、これに限定されず、閉曲面を有する形状に形成されていれば円形形状断面を有する球形状の本体部であってもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、流量制御部3として樹脂製の弁を用いているが、これに限定されず、ガラス、PVC、セラミックス等の中空糸や、点滴のルートに使用されるようなローラ式のクレンメであってもよい。また、チューブ2自体を流量制御部とし、チューブ2の管抵抗により流量を制御してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 本体部
2 チューブ
3 流量制御部
10 薬液注入容器
11 本体部
11a 収縮部
11b 貯留部
20 薬液注入容器
21 本体部
21a 収縮部
21b 貯留部
22 硬板
23 硬板
30 薬液注入容器
31 本体部
31a ばね
31b 貯留部
32 流出口
40 薬液注入容器
S 薬液