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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】形状記憶ハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/54 20060101AFI20220217BHJP
   C08L 33/24 20060101ALI20220217BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20220217BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20220217BHJP
   C08F 12/36 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C08F220/54
C08L33/24
C08K3/20
C08F220/20
C08F12/36
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017214334
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2019085483
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月6日に高分子学会予稿集66巻2号〔2017〕にて発表 平成29年9月21日に第66回高分子討論会発表番号2Pf110ポスターにて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 智之
(72)【発明者】
【氏名】東 信行
(72)【発明者】
【氏名】富森 琴葉
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03396030(US,A)
【文献】米国特許第03452182(US,A)
【文献】特開2012-251171(JP,A)
【文献】特開2000-086729(JP,A)
【文献】特開2007-262388(JP,A)
【文献】LIU, Fangyao et al.,A Non-ionic Thermophilic Hydrogel with Positive Thermosensitivity in Water and Electrolyte Solution,Macromolecular Chemistry and Physics,215,2014年,1466-1472,DOI:10.1002/macp.201400155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルであって、
前記高分子マトリックスが、式(1)で示される化合物と、
【化1】
架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとの共重合体からなる、下記式(2)で示されるハイドロゲル(R及びR2はH又はメチル基を表す。)であって(ここでaは0.1~10である。)
【化2】
前記架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHは下記式で示されるポリエチレングリコールジアクリレート(ここでnは1~100である。)であることを特徴とするハイドロゲル。
【化3】
【請求項2】
高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルであって、
前記高分子マトリックスが、式(1)で示される化合物と、
【化4】
架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとの共重合体からなる、下記式(2)で示されるハイドロゲル(R及びR2はH又はメチル基を表す。)であって(ここでaは0.1~10である。)
【化5】
前記架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHにおいて、-X-は下記構造式の何れかであることを特徴とするハイドロゲル(m又はnは各々1~100を表す。)。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶機能を有するハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子の三次元ネットワーク構造からなるハイドロゲルは、基本的に水との親和性の高いポリマーが水系溶媒中で膨潤したものである。ハイドロゲルは、高い含水性に基づく生体適合性や柔軟性、透明性、物質内包性を有しており医学から工学まで幅広い分野で応用されている。
【0003】
近年、自己修復性や刺激応答性等の機能を付与したハイドロゲルの開発も進んでいる。例えば温度やpH変化に応答してゲルゾル転移を示す高分子材料等が既に実用化されている。
【0004】
例えば特許文献1には、親水性高分子とアクリルアミド系高分子のマトリックス中に多価アルコールと水を含有してなる粘着性ゲルが開示されている。この粘着性ゲルは、含水量が低下した場合にも、粘着性を維持して生体表面に貼付できるという特性をもつ。
【0005】
特許文献2には、重合性単量体としてのアクリルアミド(AAm)と、架橋性単量体としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)とを共重合させた高分子マトリックス内に水溶性高分子と水とが保持された粘着性ゲルが開示されている。この粘着性ゲルは、低皮膚刺激性を有し、また電解質塩の含有により導電性を有する。
【0006】
一方、ハイドロゲルは大部分が水で構成されているため、その構造柔軟性により、プラスチックのように形状を変形・固定し記憶させることは難しい。最初に与えられた形状を記憶し、変形後、pHや温度等の外部刺激により元の形状に回復するという特異な性質を有するハイドロゲルは新しい高機能ソフト材料として魅力的である。
【0007】
非特許文献1及び非特許文献2には、アクリル酸メチルとアクリル酸ステアリルの共重合体を架橋して得られる形状記憶高分子ゲルが記載されているが、含水率が低く透明性に乏しい等、形状記憶性ハイドロゲルとしては十分に機能しているとはいい難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-107120号公報
【文献】特開2003-96431号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Y.Osada and A.Matsuda: "Shape-Memory Gel with Order-Disorder Thansition" Nature. 376. 219- (1995)
【文献】長田義仁・梶原莞爾ゲルハンドブック,エヌ・ティー・エス,pp400-403 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、温度応答性アミノ酸由来ビニルポリマーを利用することで、ハイドロゲルの持つ優位性(柔軟性/透明性/物質内包性/生体適合性等)を維持しながら、形状記憶性を十分に発現するユニークな高分子材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるハイドロゲルは、高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルであって、その高分子マトリックスが、式(1)で示される化合物と、
【0012】
【化1】
【0013】
架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとの共重合体からなる、式(2)で示されることを特徴とするハイドロゲルである(ここでaは0.1~10である。)。ここでR及びR2はH又はメチル基を表す。
【0014】
【化2】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハイドロゲルの持つ優位性を維持しつつ、形状記憶性を十分に発現するハイドロゲルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)の透過率の温度依存性を示す図である。
図2】(A)は10℃および70℃における各周波数でのハイドロゲルpoly(AAm-co-MBA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)であり、(B)はハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)であり、(C)はハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)である。
図3】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)と、比較例にかかるpoly(AAm-co-MBA)についての温度による粘弾性変化(6 rad/sにおける)を示す図である。
図4】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についてモノマー濃度(x M)・架橋率(y %)変化による粘弾性(10℃、6 rad/sにおける)の変化を示す図である。
図5】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての室温での応力-ひずみ曲線を示す図である。
図6】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についてのヤング率、破断強度及び破断伸度を示す図である。
図7】ハイドロゲルの形状記憶性の測定方法を示す概略図である。
図8】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての形状固定率F(%)を示す図である。
図9】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての形状回復率R(%)の温度依存性を示す図である。
図10】ハイドロゲルの形状記憶性の別の測定方法を示す概略図である。
図11】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)(2M/1%)についての形状記憶性を示す写真図であり、そのうち(A)はS字状に成形された最初の形状であり、(B)は棒状に形状固定させたハイドロゲルを水温を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃と上昇させていった場合に徐々に形状が棒状から最初の形状であるS字状に回復する状態を示す写真図である。
図12】ハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)の膨潤率及び含水率の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0018】
本発明にかかるハイドロゲルは、高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルである。
【0019】
高分子マトリックスは、式(1)で示される化合物と、架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとの共重合体からなり、式(2)で示される(ここでaは0.1~10である。)。ここでR及びR2はH又はメチル基を表す。
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
式(2)において、式(1)で示される化合物のモル数と、架橋性ジビニル化合物のモル数との割合(架橋率)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1~10%であることが好ましく、0.5~5.0%であることがより好ましい。架橋率が0.1%未満であると架橋密度が低くなりゲルの形状安定性が乏しくなるおそれがあり、10%を超えると硬くて脆いゲルとなりやすい。
【0023】
本発明のハイドロゲルにおいて、高分子マトリックスの含有量と、水の含有量との割合は、特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロゲルの全量100重量部に対して、高分子マトリックスの含有量が5~50重量部の範囲内であることが好ましく、10~30重量部の範囲内であることがより好ましい。高分子マトリックスの含有量がハイドロゲルの全量100重量部に対して5重量部未満であると、ハイドロゲルの保形性が不十分となるおそれがあり、柔らかすぎ又は千切れやすくなるおそれがあり、またハイドロゲルの全量100重量部に対して50重量部を超えると、ハイドロゲルが硬くなり柔軟性が損なわれたり、透明性が失われてしまうおそれがある。
【0024】
架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHは、特に限定されるものではないが、例えば式(3)に示される化合物が好ましい。ここでRはH又はメチル基、Rは-O-又はNH-、Rは炭素原子数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基又は(CHCHO)n-(但しn=1~100)を表す。
【0025】
【化5】
【0026】
また架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHにおいて、-X-は下記構造式の何れかとすることも可能である。ここでm又はnは各々1~100を表す。
【0027】
【化6】
【0028】
なお、本発明のハイドロゲルには、必要に応じて、水溶性高分子が含有されることも可能である。使用可能な水溶性高分子は、特に限定されないが、例えば、ビニルピロリドンの単独重合体(即ち、ポリビニルピロリドン);ビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、エーテル変性されたビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体等のようなビニルピロリドン共重合体;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、各種タンパク質、核酸等が挙げられる。
【0029】
また、本発明のハイドロゲルには、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、防腐剤、殺菌剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等その他の薬効成分を適宜添加してもよい。これら添加剤は、単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。 以下に本発明にかかるハイドロゲルの製造方法について記載する。
【0030】
本発明のハイドロゲルは、式(1)で示される化合物と、架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとを、水に均一に混合溶解させた配合液を用い、この配合液中にて共重合させる製造方法によって製造することができる。配合液には、必要に応じて、前述の水溶性高分子や各種添加物を包含させることが可能である。反応温度は、速やかに共重合が進むものであれば特に限定されるものではないが例えば50℃~80℃である。
【0031】
【化7】
【0032】
なお、本発明のハイドロゲルは、予め式(1)で示される化合物と、架橋性ジビニル化合物CHCR-X-CRCHとを重合させることによって形成された高分子マトリックスに、水及び必要に応じて、前述の水溶性高分子や各種添加物を含浸させる製造方法によっても製造可能である。なお重合溶媒は水に限定されるものではなく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の有機溶媒も重合溶媒として使用可能である。
【0033】
前述の配合液には重合開始剤を含有させることが好ましい。重合開始剤は、特に限定されず、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。
【0034】
熱重合開始剤としては、熱により開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロリド等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミンを組み合わせたレドックス重合開始系等でもよい。
【0035】
光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミドや2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロリド等のアゾ系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン、α-ケトンカルボン酸、α-アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
重合開始剤の使用量は、ハイドロゲルの製造に用いる単量体の全量(100重量部に対して、0.01~1.0重量部であることが好ましい。重合開始剤の使用量が単量体の全量(上記配合液の全量)100重量部に対して0.01重量部より少ないと重合反応が十分に促進されず、得られるハイドロゲル中に架橋性ジビニル化合物等が残存する可能性があり、1.0重量部よりも多いと得られるハイドロゲル中に残存する重合開始剤が発生したり、高分子量化しにくくなる虞がある。
【0037】
本発明のハイドロゲルでは、ハイドロゲルの持つ優位性(柔軟性/透明性/物質内包性/生体適合性等)を維持しながら、形状記憶性を発現するユニークな高分子材料である。そのため、本発明のハイドロゲルは、例えば、生体材料、医療用材料、化粧品、医薬部外品、工業用材料、ホビー材料として好適に用いることができる。
【実施例
【0038】
(実施例1)本発明にかかるハイドロゲルの合成
N-アクリロイルグリシンアミドを下記方法により合成した。
【0039】
【化8】
【0040】
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)を下記方法により合成した。なお、NAGAmはN-アクリロイルグリシンアミドであり、MBAはN,N’-メチレンビスアクリルアミドであり、APSは過硫酸アンモニウムである。
【0041】
【化9】
【0042】
また本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)を下記方法により合成した。なお、PEGDAはポリエチレングリコールジアクリレートである。
【0043】
【化10】
【0044】
(実施例2)ハイドロゲルの温度応答性挙動
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及び比較例にかかるpolyNAGAm水溶液(1 wt%)を測定セルに移し、透過率の温度依存性を評価した。透過スペクトルの測定は分光光度計を使用した。測定温度は恒温水槽を用いて0℃~50℃とした。図1はハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)の透過率の温度依存性を示す図である。polyNAGAmは水中で上限臨界溶液温度(UCST)型の温度応答性を示す。図1に示されるように本発明のハイドロゲルは、低温域においても非常に透過率(透明性)が高いものであった。
【0045】
(実施例3)ハイドロゲルの粘弾性測定
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)と、比較例にかかるpoly(AAm-co-MBA)につき、レオメーターを使用して10℃及び70℃における貯蔵弾性率G’を測定した。図2(A)はpoly(AAm-co-MBA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)であり、(B)はpoly(NAGAm-co-MBA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)であり、(C)はpoly(NAGAm-co-PEGDA)の貯蔵弾性率G’(1M/1%)である。なお1M/1%との記載は、モノマー濃度1Mであり架橋率1%という意味であり、また例えば2M/0.5%との記載は、モノマー濃度2Mであり架橋率0.5%という意味である。
【0046】
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)と、比較例にかかるpoly(AAm-co-MBA)につき、温度による粘弾性変化を測定した。図3は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)と、比較例にかかるpoly(AAm-co-MBA)についての温度による粘弾性変化を示すものである。
【0047】
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)につき、モノマー濃度・架橋率変化による粘弾性の変化を測定した。図4は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についてモノマー濃度・架橋率変化による粘弾性の変化を示すものである。図2図3及び図4の結果から本発明にかかるハイドロゲルは非常に丈夫であり、粘弾性もモノマー濃度や架橋率で様々に調節でき、さらにUCST型の温度応答性を示すことが示された。
【0048】
(実施例4)ハイドロゲルの伸縮性測定
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)につき、引張試験機を使用して伸縮性を測定した。図5は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての室温(27℃)での応力-ひずみ曲線である。図6は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についてのヤング率、破断強度及び破断伸度を示す図である。図5及び図6の結果から本発明にかかるハイドロゲルは非常に伸縮性に富むことが示された。
【0049】
(実施例5)ハイドロゲルの形状記憶性その1
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)につき形状記憶性を測定した。図7は形状記憶性の測定方法を示す概略図である。ハイドロゲルをガラス管内で棒状に調製する。次に75℃の水中でθ=180度にて曲げる。次に4℃にてその曲げた状態を固定する。次に固定状態を取り除き維持した角度をθiとし、形状固定率F(%)=(θ-θi)/θ×100にて規定される。次にこれを各温度の水中に浸した場合の角度をθfとする。形状回復率R(%)=θf×100にて規定される。
【0050】
図8は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての形状固定率F(%)を示す表である。また、図9は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)についての形状回復率R(%)の温度依存性を示す図である。図9に示されるように本発明にかかるハイドロゲルは、固定された形状が温度上昇に伴い形状が回復することが示された。低温領域では高分子間の水素結合が効果的に働き形状が固定され、高温領域では徐々に水素結合が解除されて元の記憶された形状に回復したものである。またモノマー濃度や架橋率、架橋剤の種類によって、ゲルの形状固定率F(%)が制御できることが示された。
【0051】
(実施例6)ハイドロゲルの形状記憶性その2
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)につき形状記憶性を測定した。図10は形状記憶性の別の測定方法を示す概略図である。ハイドロゲルをチューブ内でS字状に調製する。次に75℃の水中で棒状に変形させる。次に4℃にてその棒状の形状を固定する。次に固定状態を取り除き、水温を上昇させつつ形状を回復させる。
【0052】
図11は本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)(2M/1%)についての形状記憶性を示す写真図であり、そのうち(A)はS字状に成形された最初の形状であり、(B)は形状を棒状に変形・固定させた後、水温を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃と上昇させていった場合に徐々に形状が棒状から最初の記憶された形状であるS字状に回復する状態を示す写真図である。図11に示されるように本発明にかかるハイドロゲルは、固定された形状が温度上昇に伴い元の形状に回復することが示された。また、温度による形状変化は瞬時に生じることも示された。
【0053】
(実施例7)ハイドロゲルの膨潤率・含水率変化
本発明にかかるハイドロゲルpoly(NAGAm-co-MBA)及びハイドロゲルpoly(NAGAm-co-PEGDA)につき温度による膨潤率・含水率変化を測定した。
【0054】
膨潤率と含水率は以下の方法により測定した。試料ゲル(厚さ1mm、1cm角)を4℃の純水中に浸して一晩膨潤させた。その後、各温度で純水に 1時間浸漬させ、ゲルの質量 (Ws) を測定した。また、ハイドロゲルを凍結乾燥させ、乾燥質量 (Wd) を 測定した。これらの測定値より、各温度におけるゲルの膨潤率 (Swelling ratio :SR) 及び含水率を算出した。膨潤率SR=(Ws - Wd) / Wd ×100にて規定される。また、含水率 (%)=(Ws - Wd) / Ws×100にて規定される。図12に示されるように本発明にかかるハイドロゲルは、温度上昇に伴い膨潤率及び含水率が上昇することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
医用材料、工学材料、化粧品、医薬部外品、ホビー材料等に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12