(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】吊下条体カバー用筒状体
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20220217BHJP
A63J 5/02 20060101ALI20220217BHJP
B66C 23/88 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
B66C13/00 G
A63J5/02
B66C23/88 R
(21)【出願番号】P 2017215140
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517351754
【氏名又は名称】三精工事サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】笠井 孝光
(72)【発明者】
【氏名】中島 康忠
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170074(JP,A)
【文献】実開昭49-096737(JP,U)
【文献】特開平11-030056(JP,A)
【文献】米国特許第04638611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
A63J 5/02
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に被吊下物を吊り下げて上下動し得る吊下条体の、下部から当該下部よりも上方にわたる部分に外嵌して当該吊下条体をカバーし、そのようにカバーした状態において、当該吊下条体と共に上下動するための筒状体であって、
中心軸線が上下方向をなし、
上部の外周が上方に向かって漸次縮小する筒状をな
し、
前記筒状体の周壁部の下端部における前記中心軸線を挟んで相対する位置に、前記被吊下物に対し嵌合して位置決めするための、下方に開口する一対の切欠部を有することを特徴とする吊下条体カバー用筒状体。
【請求項2】
上記筒状体における、上方に向かって漸次縮小する筒状をなす上部よりも下方の部分は、ほぼ一定の外周形状の筒状をなすものである請求項1記載の吊下条体カバー用筒状体。
【請求項3】
上記筒状体が、上記中心軸線を含む所定の仮想的平面にほぼ沿った一方の分割縁部と他方の分割縁部において一方の分割片と他方の分割片に分割された二分割状をなす筒状体であって、
前記一方の分割片と他方の分割片は、
前記一方の分割縁部同士において、ヒンジ部を介し、前記中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と前記他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結されると共に、
前記他方の分割縁部付近に、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態を保持するための保持機構部を備えるものである請求項1又は2記載の吊下条体カバー用筒状体。
【請求項4】
下部に被吊下物を吊り下げて上下動し得る吊下条体と、
前記吊下条体の下部から当該下部よりも上方にわたる部分に外嵌して当該吊下条体をカバーする筒状体を有し、
前記筒状体は、
中心軸線が上下方向をなし、上部の外周が上方に向かって漸次縮小する筒状をなすものであり、
前記筒状体は、前記吊下条体の下部から当該下部よりも上方にわたり外嵌して当該吊下条体をカバーした状態において、前記吊下条体と共に上下動し、
隣接する吊下条体又は吊り下げられた幕類、機器類等との間で生じ得る接触により、前記上下動を円滑に行うことや上下動自体が困難になることが、前記吊下条体をカバーした筒状体によって防がれることを特徴とする筒状体外嵌カバー上下動吊下条体。
【請求項5】
上記筒状体における、上方に向かって漸次縮小する筒状をなす上部よりも下方の部分は、ほぼ一定の外周形状の筒状をなすものである請求項4記載の筒状体外嵌カバー上下動吊下条体。
【請求項6】
上記筒状体が、上記中心軸線を含む所定の仮想的平面にほぼ沿った一方の分割縁部と他方の分割縁部において一方の分割片と他方の分割片に分割された二分割状をなす筒状体であって、
前記一方の分割片と他方の分割片は、
前記一方の分割縁部同士において、ヒンジ部を介し、前記中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と前記他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結されると共に、
前記他方の分割縁部付近に、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態を保持するための保持機構部を備えるものである請求項4又は5記載の筒状体外嵌カバー上下動吊下条体。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1項に記載の筒状体外嵌カバー上下動吊下条体と、
その筒状体外嵌カバー上下動吊下条体との間で、一方又は両方の揺れ等によって接触し得る、隣接する吊下条体又は吊り下げられた幕類、機器類等を有する隣接吊下構造であって、
前記筒状体外嵌カバー上下動吊下条体と隣接する吊下条体又は吊り下げられた幕類、機器類等との間で生じ得る接触により、前記筒状体外嵌カバー上下動吊下条体の上下動を円滑に行うことや上下動自体が困難になることが、上記吊下条体をカバーした筒状体によって防がれることを特徴とする隣接吊下構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトン等を吊り下げるワイヤロープ等の吊下条体をカバーするための吊下条体カバー用筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-315611号公報には、吊り物装置を設置する際の照明装置や垂幕等を取り付けるバトンとワイヤとの連結において、容易に各ワイヤにかかる荷重を略均等にすることができる吊り物装置について、照明装置や垂幕等を取り付けるバトン3と、バトンを吊り下げるワイヤWa,Wb,Wcと、ワイヤを巻取り/送り出すための複数のモータ1a,1b,1cと、各々のモータを駆動するドライバ5a,5b,5cと、各々のドライバを制御するドライバ制御部6とを有し、前記ドライバ制御部は、各々のワイヤにかかる荷重に基づいて各ワイヤにかかる荷重を略均等にするために必要な各モータの回転量である調整量を算出する調整量設定部6bを有し、バトンとワイヤとの連結時には、ドライバ制御部は調整量に従って各々のドライバを制御する吊り物装置の発明が記載されている。
【0003】
バトン等を吊り下げるワイヤロープの端末付近には、例えば特開平8-315611号公報の
図3に示されるように、バトンを直接吊り下げるように折り返してクリップ止めを行ったり、バトン吊り下げ用部品と連結したターンバックルを吊り下げるように折り返してクリップ止めを行う等の処理を施す。
【0004】
舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトンは、舞台等の奥行き方向に近接した状態で複数平行に吊り下げられることも多く、隣接するバトンを吊り下げるワイヤロープの端末付近同士や、ワイヤロープの端末付近と吊り下げた幕類や機器類等が、空調の空気流を始めとする様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより、互いに引っかかって、上下動を円滑に行うことや上下動自体が困難になること、或いは、吊下条体のクリップ止め等に悪影響を生じることがある。
【0005】
バトンは、その軸線方向における複数箇所においてワイヤロープにより吊り下げられるので、一箇所においてこのようなことが発生すると、特開平8-315611号公報に記載のような吊り物装置を用いても適切な取り扱いが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、幕類や機器類等を吊るバトン等を吊り下げるワイヤロープ等の吊下条体及びバトン等に吊られる幕類や機器類等が揺れ等によって接触して悪影響を及ぼし合うことが防がれる吊下条体カバー用筒状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吊下条体カバー用筒状体は、次のように表すことができる。
【0009】
(1) 中心軸線が上下方向をなし、前記中心軸線を含む所定の仮想的平面にほぼ沿った一方の分割縁部と他方の分割縁部において一方の分割片と他方の分割片に分割された二分割状をなす筒状体であって、
前記一方の分割片と他方の分割片は、
前記一方の分割縁部同士において、ヒンジ部を介し、前記中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と前記他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結されると共に、
前記他方の分割縁部付近に、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態を保持するための保持機構部を備え、
筒状を構成する状態において、上部は、外周が中心軸線を中心として上方に向かって漸次縮小する筒状をなし、上部よりも下方の部分は、ほぼ一定の外周形状の筒状をなすことを特徴とする吊下条体カバー用筒状体。
【0010】
筒状体を構成する一方の分割片と他方の分割片が、それぞれの一方の分割縁部同士において、ヒンジ部を介し、筒状体の中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と、その他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結されているため、開筒状をなす状態で舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトン等を吊り下げるワイヤロープの端末付近(例えばクリップ止め部分等の折り返し部分やターンバックル等)等の吊下条体に外嵌し、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態として保持機構部によりそれを保持させる作業を容易に行い得る。
【0011】
筒状を構成する状態において、上部は、外周が中心軸線を中心として上方に向かって漸次縮小する筒状をなし、上部よりも下方の部分は、ほぼ一定の外周形状の筒状をなすので、上端の中央部に吊下条体が位置し、上部の外周は、吊下条体、すなわち上下方向の吊下条体を中心として、下方に向かって漸次拡大する筒状をなし、上部よりも下方の部分は、ほぼ一定の外周形状の筒状をなす。
【0012】
筒状体がこのような態様で吊下条体に外嵌されることにより、隣接するバトン等を吊り下げる吊下条体同士が、所定の上下方向位置に吊り下げた状態又は上下に移動させる状態において、吊下条体同士又は吊下条体と幕類や機器類等が、空調の空気流を始めとする様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより、互いに引っかかって、上下動を円滑に行うことや上下動自体が困難になること、或いは、吊下条体のクリップ止め等に悪影響を生じること、筒状体が吊下条体に対し上方に移動してカバー対象部分から離脱してしまい、カバーの役割を果たさなくなること等が効果的に防がれる。
【0013】
(2) 上記筒状体が、上部よりも下方の部分は外径が一定のほぼ円筒形状で、上部は上方に向かって外径が縮径する略円錐台筒状である上記(1)記載の吊下条体カバー用筒状体。
【0014】
(3) 筒状を構成する状態における上記筒状体の全部又は少なくとも上部よりも下方の部分の外周が、中心軸線方向において平滑である上記(1)又は(2)記載の吊下条体カバー用筒状体。
【0015】
(4) 上記保持機構部が、上記一方の分割片における上記他方の分割縁部から突起する保持突起部と、その保持突起部に係合し得るように上記他方の分割片における前記他方の分割縁部付近に設けられた係合保持部からなる上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の吊下条体カバー用筒状体。
【0016】
(5) 上記保持機構部が、保持の解除が可能なものである上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の吊下条体カバー用筒状体。
【0017】
(6) 何れかの分割片における上記他方の分割縁部から突起し、別の分割片における上記他方の分割縁部の内周面にほぼ接する開筒防止用爪部を有する上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の吊下条体カバー用筒状体。
【0018】
(7) 上記筒状体の周壁部の下端部に、筒状を構成する状態において、中心軸線を挟んで相対する位置に、下方に開口する一対の切欠部を有する上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の吊下条体カバー用筒状体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吊下条体カバー用筒状体は、舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトン等を吊り下げるワイヤロープの端末付近等の吊下条体に外嵌し、他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態として保持機構部によりそれを保持させる作業を容易に行い得、吊下条体に外嵌されることにより、隣接するバトン等を吊り下げる吊下条体同士が、所定の上下方向位置に吊り下げた状態又は上下に移動させる状態において、吊下条体同士又は吊下条体と幕類や機器類等が、空調の空気流を始めとする様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより、互いに引っかかって、上下動を円滑に行うことや上下動自体が困難になること、或いは、吊下条体のクリップ止め等に悪影響を生じること、筒状体が吊下条体に対し上方に移動してカバー対象部分から離脱してしまい、カバーの役割を果たさなくなること等が効果的に防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図8】180度開筒状をなす状態の吊下条体カバー用筒状体の正面図である。
【
図11】
図8におけるXI-XI拡大断面図である。
【
図12】
図8におけるXII-XII拡大断面図である。
【
図13】
図8におけるXIII-XIII拡大断面図である。
【
図14】
図4におけるXIV-XIV部分拡大図である。
【
図15】
図5におけるXV-XV部分拡大図である。
【
図16】
図8におけるXVI-XVI部分拡大図である。
【
図17】吊下条体カバー用筒状体の使用状態の概要を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図面は本発明の吊下条体カバー用筒状体の実施の形態の一例に関するものである。
【0023】
(1) この例の吊下条体カバー用筒状体は、舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトンBを吊り下げるワイヤロープW(10mm径)のクリップ止め部分L及びターンバックルT等に外嵌するためのものであって、二分割状をなす合成樹脂製の筒状体Pである。
【0024】
(2) 筒状体Pは、中心軸線が上下方向をなす。
【0025】
筒状体Pを構成する外周壁部のうち、中心軸線を含む仮想的な垂直面(分割面)に交差する一方の分割縁部E1と他方の分割縁部E2において、一方の分割片D1と他方の分割片D2に分割された二分割状をなす。
【0026】
(3) 一方の分割片D1と他方の分割片D2は、一方の分割縁部E1同士において、ヒンジ部Hを介し、中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、他方の分割縁部E2同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と他方の分割縁部E2同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結される。
【0027】
筒状を構成する状態の筒状体Pの形状は、上部P1よりも下方の部分P2は外径が一定のほぼ円筒形状で、上部P1は上方に向かって外径が縮径する略円錐台筒状である。
【0028】
筒状体Pの上端開口の内径は、ワイヤロープWの径よりもやや大きい。
【0029】
筒状体Pの外周は、ヒンジ部Hを除いて全体が平滑面である。
【0030】
ヒンジ部Hは、上部P1よりも下方の部分P2(筒状を構成する状態において外径が一定のほぼ円筒形状をなす部分)の一方の分割縁部E1同士にわたり、中心軸線方向における等間隔おきに複数箇所に設けられている。
【0031】
同じく上部P1よりも下方の部分P2の他方の分割縁部E2同士にわたり、他方の分割縁部E2同士がほぼ相接して筒状を構成する状態を保持するための保持機構部Fが、中心軸線方向における等間隔おきに複数箇所に設けられている。
【0032】
保持機構部Fは、一方の分割片D1における前記他方の分割縁部E2から周方向に突起して端部に係合突部Faが設けられた保持突起部F1と、その保持突起部F1の係合突部Faに係合し得るように他方の分割片D2における他方の分割縁部E2付近の内周側に設けられた係合保持部F2からなる。保持突起部F1と係合保持部F2の係合及び係合解除は、中心軸線から見て主として径方向の変形(すなわち、係合時には概ね保持突起部F1が径方向内方に、係合保持部F2が径方向外方に変位し、係合解除時には概ね保持突起部F1が径方向内方に変位する変形)により行われる。
【0033】
分割片D1の上部のうち内周側の両側には嵌合凹部Gがそれぞれ設けられ、分割片D2の上部のうち内周側の両側には、嵌合凹部Gに嵌合する嵌合凸部Jがそれぞれ設けられている。
【0034】
ヒンジ部H、保持機構部F、嵌合凹部G及び嵌合凸部Jは、合成樹脂により両分割片D1・D2と一体的に形成されている。
【0035】
(4) 筒状体Pの上部P1よりも下方の部分P2の内周側(一方の分割片D1と他方の分割片D2のそれぞれ内周側における中心軸線方向の互いに同一位置)には、リブ状の周方向補強部R1・R2が、中心軸線方向の等間隔おき設けられている。筒状体Pが筒状を構成する状態において、一方の分割片D1の周方向補強部R1と他方の分割片D2の周方向補強部R2がほぼ円形となる。なお、一方の分割片D1における周方向補強部R1は、両端部に両分割縁部から周方向に突起する周方向突起部Raを有し、他方の分割片D2における周方向補強部R2は、両端部がそれぞれ両分割縁部E1・E2よりも周方向に短縮しており、筒状体Pが筒状を構成する状態において、一方の分割片D1における周方向補強部R1の両端部の周方向突起部Raが他方の分割片D2における周方向補強部R2の両端部の周方向外側に位置することとなる。
【0036】
(5) 一方の分割片D1における他方の分割縁部E2から周方向に突起し、他方の分割片D2における他方の分割縁部E2の内周面にほぼ接する開筒防止用爪部C1と、他方の分割片D2における他方の分割縁部E2から周方向に突起し、一方の分割片D1における他方の分割縁部E2の内周面にほぼ接する開筒防止用爪部C2が、それぞれ中心軸線方向における等間隔おきに複数箇所(周方向補強部R1・R2に対し、筒状体Pの中心軸線方向の両側)に設けられている。
【0037】
このうち、他方の分割片D2に設けられた開筒防止用爪部C2が、保持機構部Fのうち一方の分割片D1に設けられた保持突起部F1が径方向内方に変位することを妨げ、意図せずに保持機構部Fによる保持が解除されて筒状体Pが開筒状となってしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0038】
(6) 筒状体Pの周壁部の下端部には、筒状を構成する状態において、中心軸線を挟んで相対する位置である両分割縁部E1・E2をそれぞれ中心とする位置に、下方に開口する一対の上に凸の弓形状切欠部Nを有する。
【0039】
(7) 筒状体Pを、他方の分割縁部E2同士が離隔して開いた開筒状とし、幕類や種々の機器類を吊るためのバトンB(略円形断面であって水平状をなす)を吊り下げるワイヤロープWの下端部であるクリップ止め部分L及びターンバックルT等に筒状体Pの上部P1よりも下方の部分P2を外嵌するように閉じて筒状を構成する状態とした上で、バトンBの上側に一対の弓形状切欠部Nを上方から嵌合させることにより、筒状体Pの上端開口がワイヤロープWとほぼ同心状となり、筒状体Pの下端部は、バトンBに対し、両分割縁部E1・E2を水平に結ぶ線がバトンBの軸線を含む仮想的な垂直面にほぼ一致するように位置決めされる。
【0040】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0041】
(1) 本発明の吊下条体カバー用筒状体は、二分割状をなす筒状体である。
【0042】
筒状体は、合成樹脂製であることが好ましいが、これに限るものではない。筒状体は、舞台・ステージ・各種会場等において幕類や種々の機器類を吊るバトン等を吊り下げるワイヤロープ(例えば10mm径のものであるが、これに限らない。)の端末付近(クリップ止め部分やターンバックル等)に外嵌した状態等の環境における温度や作用し得る外力により大きく変形することがなくほぼ所定の外形を維持し得るものとすることが好ましい。
【0043】
(2) 本発明における筒状体は、中心軸線が上下方向をなし、前記中心軸線を含む所定の仮想的平面にほぼ沿った一方の分割縁部と他方の分割縁部において一方の分割片と他方の分割片に分割された二分割状をなす。
【0044】
上下方向の中心軸線を含む所定の仮想的平面にほぼ沿った一方の分割縁部と他方の分割縁部としては、例えば、上下方向の中心軸線を含む所定の仮想的な垂直面を分割面として(或いは、前記仮想的な垂直面にほぼ沿った仮想的な面を分割面として)、筒状体を構成する外周壁部のうち、このような分割面に交差する一方の分割縁部と他方の分割縁部を挙げることができる。
【0045】
(3) 一方の分割片と他方の分割片は、一方の分割縁部同士において、ヒンジ部を介し、中心軸線と平行状をなす回動軸線のまわりに互いに相対的に回動することにより、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態と前記他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状をなす状態をなし得るように連結されると共に、
前記他方の分割縁部付近に、前記他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態を保持するための保持機構部を備える。
【0046】
ヒンジ部は、例えば、中心軸線方向における間隔おきに複数箇所に設けることができる。
【0047】
保持機構部も、例えば、中心軸線方向における間隔おきに複数箇所に設けることができる。
【0048】
ヒンジ部及び保持機構部の両方又は一方は、合成樹脂等により両分割片と一体的に形成することができるが、これに限るものではない。
【0049】
ヒンジ部及び保持機構部は、それぞれ、筒状体の外周側にできるだけ食み出さないこと(できれば実質上食み出さないこと)が好ましい。
【0050】
また、筒状体が吊下条体に外嵌された状態において、一方の分割縁部と他方の分割縁部(すなわちヒンジ部及び保持機構部の中心軸線まわりの角度位置)は、隣接する幕類や機器類等に相対しないよう位置すること(例えば吊り下げるバトンの軸線方向一方及び他方を向くこと)が好ましい。吊下条体同士又は吊下条体と幕類や機器類等が、様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより、互いに引っかかって悪影響を及ぼし合うことを、より確実に防ぐためである。
【0051】
(4) 保持機構部は、例えば、前記一方の分割片における前記他方の分割縁部から突起する保持突起部と、その保持突起部に係合し得るように前記他方の分割片における前記他方の分割縁部付近(好ましくは内周側)に設けられた係合保持部からなるものとすることができる。なお、同様の保持突起部と係合保持部を、他方の分割片と一方の分割片にも有するものとすることもできる。
【0052】
(5) 保持機構部は、保持の解除が可能なものであることが好ましい。
【0053】
その場合に、他方の分割縁部同士がほぼ相接して筒状を構成する状態が保持機構部により保持され、前記他方の分割縁部同士が離隔して開いた開筒状となってはならない状況において、意図せずに保持機構部による保持が解除されて開筒状となってしまうことを効果的に防いで筒状を効果的に保持する上で、保持機構部に加えて、開筒防止用爪部を設けることが好ましい。
【0054】
開筒防止用爪部は、何れかの分割片における前記他方の分割縁部から突起し、別の分割片における前記他方の分割縁部の内周面にほぼ接するものとすることができる。これにより、何れかの分割片又は両分割片に外力が加わった場合等において、分割片の変形等により保持機構部による保持が解除されることが防がれる。特に、保持突起部と係合保持部の係合及び係合解除が中心軸線から見て主として何れか又は両方の分割片の径方向の変形により行われるものである場合に、その変形を防ぐように開筒防止用爪部が設けられることが効果的である。
【0055】
なお、同様の開筒防止用爪部を、前記別の分割片にも有するものとすることが、開筒防止及び筒状保持上、一層効果的である。
【0056】
(6) 本発明における筒状体は、筒状を構成する状態において、前記中心軸線方向の上部は、外周が中心軸線を中心として上方に向かって漸次縮小する筒状をなす。そのため、筒状体が吊下条体に外嵌されることにより、筒状体の上端の中央部に吊下条体が位置するものとなる。
【0057】
筒状体の上部よりも下方の部分は、外周が中心軸線を中心として上下方向にほぼ一定の筒状をなす。
【0058】
例えば、筒状体の上下長さのうち上端から下方に5乃至50%程度までの部分を、中心軸線方向の上部とすることができる。但し、これに限るものではない。
【0059】
筒状を構成する状態の筒状体の形状としては、上部よりも下方の部分は外径が一定のほぼ円筒形状で、上部は上方に向かって外径が縮径する略円錐台筒状であるものが好ましいが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、上部よりも下方の部分は外形がほぼ一定形状(略楕円形状、多角形状[例えば正6乃至20角形状]等)の筒状で、上部は外周が中心軸線を中心として上方に向かって漸次縮小する錐台筒状(略楕円錐台筒状、正多角錐台筒状その他の多角錐台筒状等)であるものを挙げることができる。
【0060】
(7) 筒状を構成する状態における筒状体の全部又は少なくとも上部よりも下方の部分の外周は、中心軸線方向において平滑であることが好ましい。更に、筒状体の外周は、中心軸線に直交する横断面形状が例えば円形状又は楕円形状であるもののように、周方向においても滑らかであることが好ましい。より好ましくは、筒状体の外周面全体が滑らかであることである(例えば、上部よりも下方の部分は外径が一定のほぼ円筒形状で、上部は上方に向かって外径が縮径する略円錐台筒状であるもの、又は、上部よりも下方の部分は外形が略楕円形状でほぼ一定形状の筒状で、上部は外周が中心軸線を中心として上方に向かって漸次縮小する略楕円錐台筒状であるもの等)。吊下条体同士又は吊下条体と幕類や機器類等が、様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより、互いに引っかかって悪影響を及ぼし合うことが一層効果的に防がれるからである。
【0061】
(8) 筒状体の内周側、すなわち、一方の分割片と他方の分割片のそれぞれ内周側には、周方向のリブ状又は畝状をなす周方向補強部を、中心軸線方向の間隔おき(例えば等間隔おき)に有することが好ましい。より好ましくは、一方の分割片と他方の分割片のそれぞれ内周側に、周方向補強部を、中心軸線方向の互いに同一位置に有するものである。
【0062】
周方向補強部により、何れかの分割片又は両分割片に外力が加わった場合等において、分割片の変形等により保持機構部による保持が解除されることが防がれる。特に、保持突起部と係合保持部の係合及び係合解除が中心軸線から見て主として径方向の変形により行われるものである場合に効果的である。
【0063】
また、吊下条体の所定箇所に外嵌された筒状体同士又は筒状体と幕類や機器類等が、様々な要因による揺れ等によって接触し合うことにより互いに引っかかり、筒状体が吊下条体の所定箇所から上方に引き上げられてしまうことが、筒状体の内周側に中心軸線方向の間隔おきに有する周方向補強部が吊下条体のクリップ止め部分等の折り返し部分等に接して上方動の妨げとなることにより防がれ得る。
【0064】
(9) 筒状体の周壁部の下端部に、筒状を構成する状態において、中心軸線を挟んで相対する位置に、下方に開口する一対の切欠部(上に凸の[例えば弓形状の]切欠部等)を有するものとすることができる。
【0065】
吊下条体が吊り下げるバトン等の水平棒や水平パイプの上側に前記一対の切欠部が上方から嵌合することにより、バトン等の水平棒や水平パイプ及び吊下条体に対する筒状体の位置決めが可能である。
【0066】
(10) 筒状体の内周側、すなわち、一方の分割片と他方の分割片のそれぞれ内周側における、中心軸線方向の1又は2以上の箇所に、柔軟押圧材(スポンジ状材等)を配置するか又は小内径部を設けることにより、吊下条体のクリップ止め部分等の折り返し部分等に外嵌した筒状体が、隣接する幕類や機器類等によって筒状体が吊下条体の所定箇所から上方に引き上げられてしまうことが防がれ得る。前記柔軟押圧材や小内径部が、筒状体の上方動の妨げとなり得るからである。
【符号の説明】
【0067】
B バトン
C1 開筒防止用爪部
C2 開筒防止用爪部
D1 分割片
D2 分割片
E1 分割縁部
E2 分割縁部
F 保持機構部
F1 保持突起部
F2 係合保持部
Fa 係合突部
G 嵌合凹部
H ヒンジ部
J 嵌合凸部
L クリップ止め部分
N 弓形状切欠部
P 筒状体
P1 上部
P2 下方の部分
R1 周方向補強部
R2 周方向補強部
Ra 周方向突起部
T ターンバックル
W ワイヤロープ