(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】鋼管杭回転圧入装置
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018118199
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士光
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-068112(JP,A)
【文献】実開昭50-044405(JP,U)
【文献】特開平11-323931(JP,A)
【文献】特開平07-259464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191313(US,A1)
【文献】実開昭55-118051(JP,U)
【文献】登録実用新案第3191635(JP,U)
【文献】特開2008-240503(JP,A)
【文献】特開2015-206208(JP,A)
【文献】特開2007-197967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状のリーダに昇降可能に取り付けられたスイベルヘッドと、
前記スイベルヘッドに回転可能に軸支され、回転駆動装置によって略垂直軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、
前記スピンドルの軸心に形成された貫通孔と、
前記スピンドルを軸支する下側軸受けよりも下側のスピンドルの軸心に形成され、前記貫通孔よりも大径のヤットコ嵌合孔と、
前記ヤットコ嵌合孔に若干の隙間を空けて内嵌する大径軸部を有する中空筒状のヤットコと、
前記ヤットコの大径軸部の軸心に形成されたアタッチメント嵌合孔と、
前記アタッチメント嵌合孔に内嵌する軸部を上側に有し、下側に鋼管杭上端部との係合部を有する鋼管杭アタッチメントとを備えた
ことを特徴とする鋼管杭回転圧入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭回転圧入装置において、
前記アタッチメント嵌合孔と前記鋼管杭アタッチメントの軸部は多角形に形成されている
ことを特徴とする鋼管杭回転圧入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鋼管杭回転圧入装置において、
前記ヤットコの大径軸部と前記鋼管杭アタッチメントの軸部を連結するピンを備えた
ことを特徴とする鋼管杭回転圧入装置。
【請求項4】
請求項3に記載の鋼管杭回転圧入装置において、
前記ヤットコの上部に形成され前記スピンドルの貫通孔に内嵌する小径軸部と、
前記スピンドルの上部に取り付けられ、前記ヤットコの小径軸部を前記スピンドルに固定する油圧チャックとを備えた
ことを特徴とする鋼管杭回転圧入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ち機の鋼管杭回転圧入装置に関する。さらに詳しくは、スイベルヘッドの回転駆動装置によって回転駆動されるスピンドルに取り付けて、スピンドルの回転を鋼管杭に伝達する鋼管杭アタッチメントを有する杭打ち機の鋼管杭回転圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭回転圧入装置は、鋼管の先端部に回転羽根を備えた鋼管杭を回転させて、回転羽根の推進力と鋼管杭の自重で地中に埋め込む工法に使用される。この工法では、工事に応じて種々の直径の鋼管杭が必要になる。直径の異なる鋼管杭を鋼管杭回転圧入装置のスピンドルに固定するために、種々のチャック装置が使用される(特許文献1、特許文献2)。従来のチャック装置は、スピンドルの下端に取り付けられ、スピンドルの下端よりも下方に大きく突出した位置で鋼管杭の上端をチャックしている。従って、鋼管杭の上端からスイベルヘッドの重心までの距離が上方に大きく離れるため、鋼管杭の圧入動作が不安定になる不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-197967号公報
【文献】特開2015-206208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下の目的を達成するものである。本発明の目的は、鋼管杭の上端からスイベルヘッドの重心までの距離を短くして、鋼管杭の圧入動作を安定させるようにした鋼管杭回転圧入装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、スピンドルを軸支する下側軸受けよりも下側のスピンドルの軸心に、スピンドル貫通孔よりも大径のヤットコ嵌合孔を形成して、ヤットコと鋼管杭アタッチメントとの接続部分をスピンドルの下端よりも上方に入り込ませるようにした鋼管杭回転圧入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の鋼管杭回転圧入装置は、柱状のリーダに昇降可能に取り付けられたスイベルヘッドと、前記スイベルヘッドに回転可能に軸支され、回転駆動装置によって略垂直軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、前記スピンドルの軸心に形成された貫通孔と、前記スピンドルを軸支する下側軸受けよりも下側のスピンドルの軸心に形成され、前記貫通孔よりも大径のヤットコ嵌合孔と、前記ヤットコ嵌合孔に若干の隙間を空けて内嵌する大径軸部を有する中空筒状のヤットコと、前記ヤットコの大径軸部の軸心に形成されたアタッチメント嵌合孔と、前記アタッチメント嵌合孔に内嵌する軸部を上側に有し、下側に鋼管杭上端部との係合部を有する鋼管杭アタッチメントとを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明2の鋼管杭回転圧入装置は、本発明1において、前記アタッチメント嵌合孔と前記鋼管杭アタッチメントの軸部は多角形に形成されていることを特徴とする。
本発明3の鋼管杭回転圧入装置は、本発明2において、前記ヤットコの大径軸部と前記鋼管杭アタッチメントの軸部を連結するピンを備えたことを特徴とする。
本発明4の鋼管杭回転圧入装置は、本発明3において、前記ヤットコの上部に形成され前記スピンドルの貫通孔に内嵌する小径軸部と、前記スピンドルの上部に取り付けられ、前記ヤットコの小径軸部を前記スピンドルに固定する油圧チャックとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の鋼管杭回転圧入装置は、鋼管杭の上端からスイベルヘッドの重心までの距離を短くすることが可能となるため、鋼管杭の圧入動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の鋼管杭回転圧入装置を有する杭打ち機を示す全体正面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2のスピンドルの下端近傍を示す縦断面図、
図3(b)は
図3(a)のA-A断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のスピンドル上端の油圧チャックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の鋼管杭回転圧入装置を有する杭打ち機を示す全体正面図である。
図2は
図1のスイベルヘッドを示す縦断面図、
図3(a)は
図2のスピンドルの下端近傍を示す縦断面図、
図3(b)は
図3(a)のA-A断面図である。
図1に示すように、杭打ち機1は、クローラ装置11によって走行する車体12と、車体12に起立及び傾倒可能に取り付けられた柱状のリーダ13を有している。リーダ13にはスイベルヘッド2が昇降可能に取り付けられ、図示しない送りモータによって昇降される。
図2に示すように、スイベルヘッド2にはスピンドル3が下側軸受け41と上側軸受け42によって回転可能に軸支されている。リーダ13を起立した状態では、スピンドル3は略垂直軸線回りに回転する。
【0010】
スピンドル3の外周には、スピンドル3の軸方向の長さのほぼ中間位置に平歯車31が取り付けられ、油圧モータ43、43の出力軸44、44に取り付けられたピニオン45、45が平歯車31に噛み合っている。
図1では、一方の油圧モータ43だけが見えている。従って、スピンドル3は、油圧モータ43、43、ピニオン45、45、平歯車31で構成される回転駆動装置によって回転駆動される。スピンドル3の軸心には貫通孔32が形成されている。また、スピンドル3の軸心には、下側軸受け41よりも下側に、貫通孔32よりも大径のヤットコ嵌合孔33が形成されている。スピンドル3の軸心には、中空筒状のヤットコ5が内嵌している。
【0011】
ヤットコ5の下側には、ヤットコ嵌合孔33に若干の隙間を空けて内嵌する大径軸部51が形成されている。また、ヤットコ5には、大径軸部51の上側に、スピンドル3の貫通孔32に密に内嵌する小径軸部52が形成されている。小径軸部52はスピンドル3の貫通孔32を超えて上方に延びて配置されている。スピンドル3の貫通孔32の内周面、ヤットコ5の小径軸部52の外周面は正六角形に形成されて、密に嵌合し、スピンドル3の回転トルクがヤットコ5に伝達される。ヤットコ5の大径軸部51の軸心にはアタッチメント嵌合孔53が形成されている。従って、アタッチメント嵌合孔53はスピンドル3の下端34よりも上方に入り込んで配置される。アタッチメント嵌合孔53には、鋼管杭アタッチメント6の上側に形成された軸部61が内嵌している。
【0012】
図3(a)、
図3(b)に示すように、アタッチメント嵌合孔53の内周面、軸部61の外周面は正六角形に形成されて、ヤットコ5の回転トルクが鋼管杭アタッチメント6に伝達される。鋼管杭アタッチメント6は、鋼管杭7の直径に応じて交換する。すなわち、鋼管杭アタッチメント6の下側には、鋼管杭7の直径に応じた内径寸法の嵌合孔62が形成されている。また、鋼管杭アタッチメント6の下側には、縦溝63と横溝64と係止段部65が形成されている。鋼管杭7を鋼管杭アタッチメント6の嵌合孔62に挿入すると、鋼管杭7の上端に溶接された係合板71が横溝64と係止段部65に係合して、鋼管杭アタッチメント6の回転トルクが鋼管杭7に伝達される。鋼管杭7の下端には、
図1に示すように、回転羽根72が取り付けられていて、鋼管杭7が回転すると、回転羽根72の推進力と鋼管杭7等の自重で鋼管杭7を地中に埋め込むことができる。
【0013】
図2に示すように、スピンドル3の上端には、中空筒状のチャック取付スリーブ81がボルトで固定されている。チャック取付スリーブ81の上端には、円盤状のチャックボディ82がボルトで固定されている。
図4は
図2のスピンドル3の上端の油圧チャックを示す斜視図である。
図2、
図4に示すように、チャックボディ82には、スピンドル3の軸心に対して直交する方向に摺動可能に3個の把持爪83が取り付けられている。
図4では、2個の把持爪83だけが見えている。チャック取付スリーブ81の外周面には、円盤状のスライドスリーブ84がスピンドル3の軸心に対して平行な方向に摺動可能に外嵌している。スライドスリーブ84の上端には、把持爪83に各々係合するくさびブロック85がボルトで固定されている。
【0014】
くさびブロック85は把持爪83の両側面に配置されている。把持爪83の両側面には傾斜溝831、831が形成され、くさびブロック85に形成された傾斜突起851が傾斜溝831、831に係合している。スライドスリーブ84の外周面には環状溝841が形成されている。
図2に示すように、スイベルヘッド2には、チャック取付スリーブ81を囲むように、6個の油圧シリンダ86が固定されている。
図2では、2個の油圧シリンダ86だけが見えている。油圧シリンダ86のピストンロッド861には取付ブロック862を介してローラ863が回転可能に軸支されている。ローラ863がスライドスリーブ84の環状溝841に嵌合している。スピンドル3が回転すると、チャック取付スリーブ81、スライドスリーブ84、チャックボディ82が一緒に回転し、油圧シリンダ86、ピストンロッド861、取付ブロック862、ローラ863は回転しない。
【0015】
油圧シリンダ86を作動すると、ローラ863を介してスライドスリーブ84、くさびブロック85がスピンドル3の軸心に対して平行な方向に摺動する。くさびブロック85がスピンドル3の軸心に対して平行な方向に摺動すると、3個の把持爪83がスピンドル3の軸心に対して直交する方向に摺動する。
図2は、油圧シリンダ86のピストンロッド861が後退端(
図2の下方への移動端)にある状態を示し、この状態では3個の把持爪83がスピンドル3の軸心に最も接近した状態にある。この状態では、ヤットコ5の小径軸部52の外周に形成された環状溝54に3個の把持爪83が嵌入する。この時、把持爪83の先端と環状溝54の溝底との間には、若干の隙間が形成される。従って、ヤットコ5はスピンドル3に対して上下方向の移動が固定される。
【0016】
チャックボディ82、把持爪83、スライドスリーブ84、油圧シリンダ86、ローラ863等によって油圧チャックを構成している。油圧シリンダ86のピストンロッド861を前進端(
図2の上方への移動端)まで移動し、ヤットコ5の環状溝54から把持爪83を離脱させた状態で、ヤットコ5をスピンドル3に着脱する。ヤットコ5は小径軸部52を上にして、スピンドル3の下端34からスピンドル3の貫通孔32に挿入される。
図2、
図3に示すように、ヤットコ5を把持爪83でスピンドル3に固定した後、ヤットコ5のアタッチメント嵌合孔53に鋼管杭アタッチメント6の軸部61を挿入する。次に、ピン55、55をスピンドル3の軸心に直交する方向から挿入して、ヤットコ5の大径軸部51と鋼管杭アタッチメント6の軸部61を結合し、ヤットコ5の大径軸部51から鋼管杭アタッチメント6が下方に外れないように固定する。
【0017】
軸部61の外周面には、対向する2辺に、ピン55挿入用の半円状の溝66が形成されている。また、ヤットコ5の大径軸部51にはピン55挿入用の円形孔56が形成されている。この状態で、鋼管杭7を鋼管杭アタッチメント6の嵌合孔62に挿入する。本発明の実施の形態では、スイベルヘッド2、スピンドル3、ヤットコ5、鋼管杭アタッチメント6等で鋼管杭回転圧入装置が構成される。
図3(a)に示すように、本発明の実施の形態では、ヤットコ5のアタッチメント嵌合孔53の上端531、鋼管杭アタッチメント6の軸部61の上端611をスピンドル3の下端34よりも上方に配置することが可能となる。従って、鋼管杭7の上端からスイベルヘッド2の重心までの距離を従来よりも短くすることが可能となるため、鋼管杭7の圧入動作が安定する。
【0018】
また、ヤットコ5の大径軸部51の外径をスピンドル3の貫通孔32の内径よりも大きく形成することが可能となるため、鋼管杭アタッチメント6の軸部61の外径を大きくすることができ、大きな回転トルクを鋼管杭7に伝達することが可能となる。また、スピンドル3の上部でヤットコ5をスピンドル3に固定するため、スピンドル3の下部にヤットコ5の大径軸部51を配置するスペースを確保することが可能となる。
【0019】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されることはない。例えば、前述した実施例では、アタッチメント嵌合孔53、軸部61は正六角形に形成されているが、多角形であればよい。
【符号の説明】
【0020】
1…杭打ち機
11…クローラ装置
12…車体
13…リーダ
2…スイベルヘッド
3…スピンドル
31…平歯車
32…貫通孔
33…ヤットコ嵌合孔
34…スピンドルの下端
41…下側軸受け
42…上側軸受け
43…油圧モータ
44…出力軸
45…ピニオン
5…ヤットコ
51…大径軸部
52…小径軸部
53…アタッチメント嵌合孔
531…アタッチメント嵌合孔の上端
54…環状溝
55…ピン
56…円形孔
6…鋼管杭アタッチメント
61…軸部
611…軸部の上端
62…嵌合孔
63…縦溝
64…横溝
65…係止段部
66…半円状の溝
7…鋼管杭
71…係合板
72…回転羽根
81…チャック取付スリーブ
82…チャックボディ
83…把持爪
831…傾斜溝
84…スライドスリーブ
841…環状溝
85…くさびブロック
851…傾斜突起
86…油圧シリンダ
861…ピストンロッド
862…取付ブロック
863…ローラ