(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】部材表面の地衣類を除去するブラスト処理方法
(51)【国際特許分類】
B24C 11/00 20060101AFI20220217BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20220217BHJP
B24C 1/04 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B24C11/00 Z
B24C3/32 Z
B24C1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019117631
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2021-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515148882
【氏名又は名称】株式会社グランドライン
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(74)【代理人】
【識別番号】100076576
【氏名又は名称】佐藤 公博
(72)【発明者】
【氏名】早川 悟
(72)【発明者】
【氏名】早川 潤
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075706(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178361(WO,A1)
【文献】特開2006-326821(JP,A)
【文献】特開2000-042001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアからなり、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアの粒子状植物系ブラストメディアを用い、駆動流体として気体を用いて、表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の表面をブラスト処理することを特徴とする、前記石像又は土器類の表面を荒らさずに前記地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項2】
気乾比重が0.5より大きい植物材料が胡桃、桃若しくはアプリコット種子殻又はトウモロコシの穂芯である請求項1に記載の
地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項3】
粒子状植物系ブラストメディアとして、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアを含み、更に他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアも含有する
ブラストメディアを用い、駆動流体として気体を用いて、表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の表面をブラスト処理することを特徴とする、前記石像又は土器類の表面を荒らさずに前記地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項4】
前記他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアが、気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアである請求項3に記載の
地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項5】
前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である請求項3又は請求項4に記載の
地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項6】
前記他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの含有量が30重量%以下である請求項3~5のいずれか1項に記載の
地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【請求項7】
前記粒子状植物系ブラストメディアの粒子径が、メジアン径の平均値で0.02~0.8mmである請求項1~6のいずれか1項に記載の
地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石像あるいは土器類の表面に付着している地衣類を除去するための植物系ブラストメディア及び前記物品表面の地衣類を除去するための当該植物系ブラストメディアを用いたブラスト処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
史跡や寺社などにおいて保持されている時代を経て古くなり表面が風化などにより脆くなっている石像(本発明においては、石像は、磨崖仏、地蔵その他の石仏、狛犬、稲荷神社の狐像、石碑などの石材から形成された造形物を含む意味である。石材は、いわゆる軽石のような多孔質の岩石からなる石材をも含む)は表面に地衣類が発生しこびりついているものが多く見受けられる。また近年、遺跡などにおける文化財の調査などの対象物である土器類(本発明においては、土器類は瓶、皿、椀、注口土器その他の器のみでなく、円筒埴輪や、家形埴輪、器財埴輪、人物埴輪、動物埴輪などの形象埴輪、土偶を含む意味。)を収集及び展示することが広く行われており、これらの土器類にも表面に地衣類が発生しているものが見受けられる。
【0003】
上述の様に、時代を経て、古くなったこれらの石像や土器類は表面が風化して脆くなっており、それらの表面に地衣類が発生してこびりついているものが多く見受けられる。従来、地衣類を除去するには、紫外線防止剤などを地衣類が付着している部分に必要に応じて塗布して、地衣類を枯れさせた後か、紫外線防止剤などを塗布することに問題がある場合には、紫外線防止剤などを塗布することなくそのまま、柔らかいブラシを用いるか指で丁寧に除去する方法が採用されている。古くなった石像や土器類は、その表面が劣化して脆くなっており、ブラシや指でこすって地衣類を除去する場合に、石像表面の岩石や土器類表面部分の構成素材がぽろぽろ剥がれ落ちてしまうという問題があり、これを防止するのに慎重に作業する必要がある。そのため、例えば、1m2あたりの処理に半日ほどかかるという多くの時間を要するという問題と、地衣類には根に相当する偽根があり、劣化した石像表面の岩石や土器類表面部分の細かな凹凸の凹部にも偽根が入り込んでおり除去しにくく、また、石像や土器類の表面の細かな凹凸の凹部の地衣類が完全に除去されずに残ってしまう(完全に除去しようとするともろくなった石像表面や土器類表面部分を荒らしてしまう)という問題があり、それ故、処理コストが非常に高価になるという問題や、石像などの管理者や土器類などの管理者などには大変な労力と時間がかかってしまうという問題があった。それゆえ、これらの表面を崩したり傷つけたりせずに地衣類をより簡便に除去し、且つ、好ましくは汚れも除去し、これらの表面をきれいにする方法などが求められていた。
【0004】
上記のような薬品類を用いる方法は、安全性が高いものでも、文化庁は何世代にわたっても周辺の生態系に異常が生じないことの確証がない限り、採用できないとしている。
【0005】
ところで、古い塗膜の除去方法として、クルミ殻などの粉砕物をブラストメディアとして用いて木部塗装を除去するブラスト処理方法が提案されている(下記特許文献1)。クルミ殻などは、生分解性であるので、周辺の生態系に異常を与えない。そこで本発明者等はこの方法をテストするため、古い磨崖仏などと同様に表面が劣化し、比較的もろい凝灰岩(流紋岩質凝灰岩)で地衣類が付着している岩石類の破片や同様に地衣類が付着して表面が劣化している不要な土器類の破片などをもらいうけ、これらのブラストメディアを用いて岩石類や土器類の表面をブラスト処理してみたが、これらの表面が劣化している岩石類や土器類の破片は、地衣類を除去できても、その表面の一部がぽろぽろ剥がれ落ちるなど表面が荒れてしまうという問題があることがわかった。
【0006】
すなわち、歴史的文化財などにおいては、できる限り原型を保持して保管する必要がある石像や土器類の劣化した表面を傷つけずに地衣類や汚れを除去するのに対しては、不適当であることがわかった。
【0007】
このように、従来のブラストメディアを用いたブラスト処理方法では、地衣類を除去できても、表面が劣化している石像や土器類の露出される表面を荒らすことなく、表面に付着している地衣類を除去することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者等は、従来、汚れた木材表面や、複数層の塗膜で装飾された建造物や彫刻類の塗膜を一層ずつ剥がすことができるブラストメディアとして注目されている粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアを少なくとも含む植物系ブラストメディア(下記特許文献2)を用いることにより、劣化した石像表面の岩石や土器類表面部分の細かな凹凸の凹部に根(基底菌糸)を張る点で地衣類と似ているが、地衣類(菌類と藻類の共生生物)とは異なるいわゆるカビの生えた土器や岩石類に対し、テスト的に当該カビ類除去のため、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアを少なくとも含む粒子状植物系ブラストメディアをエアーブラストしてみたが、意外にも表面が劣化している石像や土器類の露出される表面を荒らすことなく、表面に付着しているカビ類を除去しがたいという結果が得られた。この様な状況にもかかわらず、本発明者等は、鋭意検討した結果、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアを少なくとも含む粒子状植物系ブラストメディアを用いることにより、表面が劣化している石像や土器類の表面を荒らすことなく、表面に付着している地衣類を極めて短時間で除去することが可能であることを見出し、本発明に到達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-115717号公報
【文献】特開2018-75706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の状況をふまえ、本発明は、表面が劣化していて、表面に地衣類が付着している石像や土器類の露出される表面を荒らすことなく、表面に付着している地衣類を除去するための生分解性の粒子状植物系ブラストメディア及び前記粒子状植物系ブラストメディアを用いた表面が劣化して且つ地衣類が付着している石像や土器類の表面を荒らさずに前記地衣類を除去するためのブラスト処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、下記の粒子状植物系ブラストメディア及び当該ブラストメディアを用いたブラスト処理方法に関するものである。
【0012】
(1)表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の前記地衣類を前記石像又は土器類の表面を荒らさずに除去するためのブラスメディアであって、
前記ブラスメディアは、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアからなり、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディア。
【0013】
(2)前記(1)項に記載の粒子状植物系ブラストメディアにおいては、気乾比重が0.5より大きい植物材料が胡桃、桃若しくはアプリコット種子殻又はトウモロコシの穂芯であることが好ましい。
【0014】
(3)前記(1)項又は(2)項のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアを含み、更に他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアも含有することを特徴とする表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の前記地衣類を前記石像又は土器類の表面を荒らさずに除去するための粒子状植物系ブラストメディア。
【0015】
(4)前記(3)項に記載の粒子状植物系ブラストメディアにおいては、前記他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアが、気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアであることが好ましい。
【0016】
(5)前記(3)項又は前記(4)項のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアにおいては、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上であることが好ましい。
【0017】
(6)前記(3)~(5)項のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアにおいては、 前記他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの含有量が30重量%以下であることが好ましい。
【0018】
(7)前記(1)~(6)項のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアにおいては、前記粒子状植物系ブラストメディアの粒子径が、メジアン径の平均値で0.02~0.8mmであることが好ましい。
【0019】
(8)本発明のブラスト処理方法は、前記(1)~(7)項のいずれか1項に記載の粒子状植物系ブラストメディアを用い駆動流体として気体を用いて、表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の表面をブラスト処理することを特徴とする、前記石像又は土器類の表面を荒らさずに前記地衣類を除去するためのブラスト処理方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粒子状植物系ブラストメディア及びそれを用いたブラスト処理方法は、表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の前記地衣類を前記石像又は土器類の表面を荒らさずに除去するのに好適で周囲の生態系に悪影響を及ぼさない生分解性のブラストメディア及びそれを用いたブラスト処理方法を提供できる。しかも、表面が劣化して脆くなって地衣類が付着している石像や土器類の地衣類について、従来の除去方法に比べてより短時間で(例えば、1m2あたり約1分で地衣類の除去処理可能)簡便に地衣類を除去するのに好適な、ブラストメディア及びそれを用いたブラスト処理方法を提供できる。更に、地衣類を除去しても従来法では、地衣類の付着していた跡などの汚れがとりきれないことが多いが、本発明においては、汚れも除去可能な生分解性のブラストメディア及びそれを用いたブラスト処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に用いるエアーブラスト装置の一例の構成を示す模式図。
【
図2】
図1の噴出しノズル(平ノズル)を
図1の矢印A側から見た概略模式図。
【
図3】
図1の噴出しノズル(平ノズル)を
図1の矢印B側から見た端面の形状を示す概略端面図。
【
図4】本発明で好ましく用いられる角が丸みを帯びている胡桃の種子殻のブラストメディアの電子顕微鏡写真。
【
図5】粉砕しただけの状態で角の丸みを帯びさせる処理をしていない胡桃の種子殻のブラストメディアの電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の粒子状植物系ブラストメディアは、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアからなり、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアである。
【0023】
ここで、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上ということは、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で100%の場合であってもよいことを意味する。
【0024】
通常、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアのうち、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率は、粒子の個数で30%以上であればよいが、35~90%のものが頻繁に用いられる。
【0025】
粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアとは、
図4に示す様な、角が尖った角や角ばった角でなく、粒子の角が丸みを帯びている粒子であることを意味するものであり、粒子状植物系ブラストメディアの形状は千差万別であるので、丸みの形状や曲率などは特に数学的に規定するものではなく、粒子の角が尖った角や角ばった角ではなく、丸みを帯びていればよい。
【0026】
丸みを帯びているかどうかの判定は、ブラストメディアを電子顕微鏡などで撮影して、各ブラストメディアの最長径がおよそ3cm~8cm程度の大きさになるように拡大して写真を撮影した場合、その顕微鏡写真で判定して、粒子の数で、少なくとも30%、が角ばった角がほとんどないブラストメディアであるということを意味している。なお、上記の判定は、顕微鏡写真で粒子の数が最低50個以上を撮影して判定する。従って、下記
図4や後述する
図5に示す電子顕微鏡写真のように、1つの電子顕微鏡写真で撮影された粒子の数が50個に満たない場合には、更に別の視野に入る電子顕微鏡写真も撮影し、合計の粒子の数が50個以上になるまで複数枚の電子顕微鏡写真を集めて、粒子の数基準で、少なくとも30%の粒子が丸みを帯びた角を有する粒子であるか否かを判定すればよい。
【0027】
図4に、本発明で用いる胡桃の種子殻のブラストメディアの電子顕微鏡写真を示した。また、
図5には比較のため、前記特許文献1で言及されたやや粒子径が大きく粉砕された状態で角の丸みを帯びさせる処理をしていない胡桃の種子殻のブラストメディアの電子顕微鏡写真を示した。
【0028】
通常、粉砕して細粒状にした場合の気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粉砕物、例えば胡桃の種子殻、ピーチの種子殻、アプリコットの種子殻、トウモロコシの穂芯などの気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粉砕物は、上記倍率に拡大して見た場合、
図5に示されるように、とがったような角を有している。このような粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアを粒子の個数で30%以上含まない粒子の角が角ばったり尖ったりしている気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを使用すると、表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の前記地衣類を除去することはできるが前記石像又は土器類の表面を荒らしてしまう。従って、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアからなり、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用いることが必要である。
【0029】
また、本発明においては、上記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアだけでなく、これら以外の他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを混合して用いてもよい。他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを混合して用いる場合、その使用割合は、粒子状植物系ブラストメディア全量中30重量%以下であることが好ましい。他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアとしては、気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアであることが好ましい。これら気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアは、一般的に、気乾比重が0.5より大きい植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアよりも、通常、柔らかい性質を有しているので、ブラスト処理の対象物の表面劣化が激しいもの、脆いものなどのブラスト処理には、気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる粒子状植物系ブラストメディアを混合して用いることも好ましい。
【0030】
なお、このように記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアに、上述した他の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを混合して用いる場合においても、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率は、混合物全体の粒子の個数で30%以上であることが好ましい。
【0031】
粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物形ブラストメディアの数が30%未満になると本発明の方法による表面がもろくなっていて表面に地衣類が付着している石像又は土器類の前記地衣類を前記石像又は土器類の表面を荒らさずに除去することが不可能になる傾向になる。ブラストメディアが含有する粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの数が多いほど前記石像又は土器類の緻密かつ滑らかなブラスト処理が行いやすくなるため好ましい。
【0032】
通常、粉砕したままのブラストメディアは、電子顕微鏡で写真を撮影するといずれも尖ったような角を有している(
図5)。このような従来型の植物からなるブラストメディアを使用すると表面が劣化している被処理物等の外表面を荒らしてしまう恐れがあるため好ましくない。
【0033】
角が丸みを帯びた粒子状植物系ブラストメディアの作製は、粉砕したままの気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状ブラストメディアの粒子の角が丸みを帯びた状態になるよう処理することによって行う。特に限定するものではないが、例えば、粉砕したままの気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状ブラストメディアをステンレス等の金属製攪拌用タンブラーで内面にブレードなどや突起を有し、回転軸がほぼ水平ないしそれより斜め上方方向に向いたタンブラーなどに入れて、ブラストメディアの粒子の量やブラストメディアの硬さにもよるが、例えば、回転速度60~100r.p.m程度で20~30分程度回転攪拌するなどの方法が好適に用いられる。当該粒子の角が丸みを帯びた粒子状のブラストメディアの作製においては、粉砕ブラストメディアの粒子の個数で30%以上が粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアになる方法であれば特に上記方法に限定されるものではない。粉砕ブラストメディアの粒子の個数で30%以上が粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアかどうかを確認するには、上述した電子顕微鏡観察が適用できる。
【0034】
上記攪拌処理後、ミクロンメッシュ(網枠)を装着した振動ふるい機を用いて粒度を選別し、粒子含有植物系ブラストメディアに含まれる各粒子のメジアン径の平均値が0.02mmから0.08mmのものを粒子径毎に分離して回収する。より好ましくは、0.06mmから0.6mm、さらに好ましくは0.1mmから0.5mmのものを分離して回収するのが良い。粒子状植物系ブラストメディアに含まれる各粒子のメジアン径の平均値が0.02mm以上であるとブラスト処理を行う際の圧送、加速及び噴出を容易に行うことができ、粒子含有植物系ブラストメディアに含まれる各粒子のメジアン径の平均値を0.8mm以下とすることにより、被処理物によってはブラスト処理によりその表面が荒れてしまうという問題を容易に避けることができ好ましく、被処理物の表面状態や地衣類の付着状態を勘案して、粒子含有植物系ブラストメディアに含まれる各粒子のメジアン径の平均値を調整することによって好適なブラスト処理が可能になる。
【0035】
本発明で用いる植物系ブラストメディアにおいて、比重は、植物からなるブラストメディアが木材の場合には通常用いられている気乾比重(水分量がほぼ15重量%時の見掛け比重、すなわち水分量がほぼ15重量%時の木材の重さと同体積の水の重さとの比)であり、木材以外の植物からなるブラストメディアは、水分量が5重量%以上10重量%以下で使用する際の個別の水分量で比重が0.5より大きいものに属するか、比重が0.1~0.5に属するのか決めれば良い。
本発明では、これらもすべてまとめて気乾比重と称する。
【0036】
本発明の粒子含有植物系ブラストメディアの材料として、気乾比重が0.5より大きい植物材料としては、木材では、ウリン(比重0.84~1.14)、ブビンガ(比重0.80~0.96)、樫(比重0.83)、紫檀[ローズウッド] (比重0.82)、サイブレス(比重0.70)、欅(比重0.69)、山桜(比重0.68)、ミズナラ(比重0.68)、イタヤカエデ(比重0.68)、真樺(比重0.67)、ブナ(比重0.65)、ヤチダモ(比重0.65)、アガチス(比重0.40~0.64)、桑(比重0.62)、栗(比重0.60)、チーク(比重0.60)、ホワイトメランチ(比重0.51~0.60)、レッドメランチ(比重0.51~0.60)、黒胡桃[ブラックオールナット] (比重0.59)、米松[ダグラスファー] (比重0.55)、銀杏(比重0.55)、クロマツ[雄松](比重0.54)、胡桃(比重0.53)、カヤ(比重0.53)、赤松[雌松](比重0.53)、唐松[落葉松](比重0.51~0.53)、栃(比重0.52)、一位(比重0.51)、シベリヤカラマツ(比重0.51)、米桧[オーソンヒノキ] (比重0.51)があり、種子殻や穂芯では、胡桃の種子殻(比重0.58;水分量9.57重量%)、アプリコットの種子殼(比重0.70;水分量9.43重量%)、桃の種子殻(比重0.74;水分量8.73重量%)、トウモロコシの穂芯(比重0.53;水分量5.88重量%)などが挙げられる。
【0037】
本発明で用いる上記の気乾比重が0.5より大きい粒子状植物系ブラストメディアは、上述の比重が硬さの目安となり、比重の大きいものほど硬さが硬い傾向にある。本発明で用いる上記の気乾比重が0.5より大きい粒子状植物系ブラストメディアとしては、種子殻又は穂芯であることが好ましく、より好ましくは胡桃の種子殻(比重0.58;水分量9.57重量%)、アプリコットの種子殼(比重0.70;水分量9.43重量%)、桃の種子殻(比重0.74;水分量8.73重量%)、トウモロコシの穂芯(比重0.53;水分量5.88重量%)が挙げられる。
【0038】
気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる植物系のブラストメディアとしては、米ヒバ(比重0.50)、桂(比重0.49)、シナノキ(比重0.48)、ホオノキ(比重0.48)、米栂(比重0.46)、キハダ(比重0.45)、スプルース(比重0.41)、檜(比重0.41)、杉(比重0.38)、米杉(比重0.37)、桐(比重0.30)などがあり、檜、杉又は桐等が好適に利用される。比重が小さい植物材料のブラストメディアとの混合割合を変更することによって植物系ブラストメディアの硬さを被処理物の硬さに適切に合わせることが可能になり、より好適なブラスト処理が行えるようになる。
【0039】
本発明のブラスト処理方法は、ブラスト処理装置のブラストメディアタンクに粒子状植物系ブラストメディアを充填してここに圧力を加え、駆動流体によって圧送及び加速させ噴出し、ノズルから被処理物の外表面に向けて植物系ブラストメディアを噴出することにより、被処理物の外表面の地衣類を除去するものである。
【0040】
本発明のブラスト処理方法では、ブラストメディアの駆動流体にブラストされる被処理物を容易に変質させない気体を用いて行う。かかる気体としては、通常は空気が用いられるが、ブラスト処理される被処理物と直ちに反応して変質させない他の気体である窒素ガス又はアルゴンガス等も利用することができる。この様に液体を用いたスラリーによるブラスト処理ではなく、ブラストメディアの駆動流体として気体を用いて固体を噴出する本発明のブラスト方法を乾式ブラスト処理と言う。
【0041】
本発明のブラスト処理方法では、例えば特許文献2で提案されているブラスト処理装置を使用して処理することができる。
【0042】
図1に示すように、ブラストメディアの駆動流体としての気体として空気を使用する場合を例にとって説明すると、エアーブラスト装置は、圧縮空気を生成するエアーコンプレッサー1と、ブラストメディアを貯留するブラストメディアタンク2と噴出口6の形状が平たい噴出口6(
図3参照)を有する噴出ノズル5(ここでは平ノズルを示したが、平ノズルがブラスト効率などの点から好ましいが、平ノズルに限定されるものではない。本発明のブラスト処理が可能であれば、噴出口6の形状は、丸形、楕円形、正方形、三角形など適宜他の形状でもよい。)を備えており、エアーコンプレッサー1とブラストメディアタンク2並びにブラストメディアタンク2と噴出ノズル5は、ホースで連結されており、ホース11aのエアーコンプレッサー1への接続は特に限定するものではないが、いわゆるエアーホースアタッチメント7aで接続され、ホース11aの他端部は、エアーホースアタッチメント7bを介してブラストメディアタンク2の上部に連結されている。なお、エアーホースアタッチメントはエアーホースワンタッチカップラーなどとも言われ、例えば、エアーコンプレッサー1に当該アタッチメントの雌部が取り付けられ、当該雌部に接続される側のホース11aの端部には、当該アタッチメントの雄部が取り付けられ、当該雌部と雄部をつなげると、圧縮空気流通性が確保され、当該アタッチメントの雌部と雄部の接続を外すことにより、圧縮空気の流通が阻止され当該アタッチメント部からの圧縮空気の噴出がストップできる構造のアタッチメントで、市販されているので市場より容易に入手できる。
【0043】
ブラストメディアタンク2の上部には蓋3が設けられており、ブラストメディアタンク2中にブラストメディアを充填する場合に蓋3を外してブラストメディアを充填し、ブラストメディアの噴出作業をする場合には、圧縮空気が逃げないよう蓋3を閉めておく。したがって蓋3は、蓋を閉めた場合に気密になるような蓋で、タンク内部に圧縮空気が供給された場合に、圧縮空気が漏れたり、圧縮空気の圧力で浮き上がったり外れたりしない構造の蓋であれば任意である。ブラストメディアタンク2の脇には圧力ゲージ12を有し、ブラストメディアタンク2のブラストメディア供給口4には、ホース11bがエアーホースアタッチメント7cを介して接続され、ホース11bの他端はエアーホースアタッチメント7dを介して噴出ノズル5に連結されている。
【0044】
噴出ノズル5(この図は平ノズルを採用した場合を示している)は、
図1の矢印A側から見た図(レバー9が
図2では図の左側で下側になるような向きで
図1の噴出ノズル5を見た図)を
図2に示した様に、噴出しノズル(平ノズル)5近傍にブラストメディアの噴出速度の調整用レバー9を設けているようなエアーブラスト装置を用いる場合などにおいては、ブラストされる被処理物に応じて、ブラストメディアタンク内の圧力が強すぎる場合や弱すぎる場合など、あるいはブラストメディア供給速度が速すぎたり遅すぎたりする場合などに、このレバーでブラストメディアの噴出速度等を調整してもよい。前記レバー9の代わりにノズル5の根元近傍に同様の機能を発揮するバルブを用いてもよい。なお、このレバー9は、レバーを引いていない場合には、ブラストメディア供給が停止できる構造にしている。尚、
図2において10は平ノズル把持部である。また、圧縮空気圧力の調整はエアーコンプレッサー1においても可能であるが、更に必要に応じて、図示していないが、エアーコンプレッサー1とホース11aなどの間などに圧力調整用のレギュレーターを設けておいてもよい。
【0045】
また、
図3は、
図1の平ノズルを矢印B側から見たノズル開口端面の形状を示す概略端面図である。これらの図において、図面の紙面を平面と仮定した場合、
図1中、平ノズルのみは、平ノズルを平面に置いた場合のレバー9の存在する側が紙面より上側に突出している状態に置かれたノズルの位置で記載されており、
図3は
図1の平ノズルを
図1の紙面から90度回転させた状態で描いている。
【0046】
本発明においては、ブラストメディアタンクの内面が帯電防止処理された、例えば帯電防止剤を含有したフッ素樹脂コーティング処理がなされているブラスト処理装置を使用することによって、例えば、静電気の発生や植物系ブラストメディアの相互作用による付着等を防止でき安定的に粒子状植物系ブラストメディアを噴出することができ好ましい。さらに、当該ブラストメディアタンクの内外を断熱性の物質でコーティングしたり、植物系ブラストメディア攪拌用のバイブレータや撹拌器を設けたりすると、より安定的に植物系ブラストメディアを噴出させることができ好ましい。
【0047】
当該装置を用いて、被処理物をエアーブラストする場合には、ブラストメディアタンク2内に所定のブラストメディアが貯留されている状態で、エアーコンプレッサー1より圧縮空気をブラストメディアタンク2内に送り込み、噴出ノズル5のレバーを開いて(引いて)、被処理物をブラスト処理する。
【0048】
ブラストメディアタンク2は、金属製で、通常、鉄製やステンレス製、チタン製のものが好適であるが、強度的に問題がない金属であれば他の金属でもよい。そして図示していないが、ブラストメディアタンク2内壁は帯電防止剤を含有したフッ素樹脂コーティングなどが施されていることが好ましい。帯電防止剤は、特に限定はなく、例えば、フッ素樹脂に混入して帯電防止剤をブラストメディアタンクの内面にほどこす場合など、樹脂コーティングによる帯電防止剤付与の場合でも帯電防止機能が発揮できるものであれば良い。
【0049】
なお、ブラストメディアとして、気乾比重が0.5より大きい粒子状植物系ブラストメディアと比重が0.1~0.5の植物系のブラストメディアの混合物を用いる場合には、あらかじめ所望の割合で混合した植物系ブラストメディアを施行現場まで自動車に乗せて運ぶとその運搬道中の振動で比重の大きいものが容器下方に移動して均一なブラストメディア混合物を供給できない恐れがある。
【0050】
そこで、施工現場では次のようにして混合することが好ましい。 すなわち、
図1に示した装置を利用してブラストメディアを混合する。
図1のホース11bと噴出ノズル5をブラストメディアタンク2のブラストメディア供給口4から外す。次に、エアーコンプレッサー1に接続されているホース11aのブラストメディアタンク2側に接続されている端部をエアーホースアタッチメント7bにおいてはずし、それをエアーホースアタッチメントを介してブラストメディア供給口4に接続する。エアーコンプレッサー1とブラストメディアタンク2をホース11aを介して接続することにより、圧縮空気がブラストメディア供給口4からブラストメディアタンク2の上方に向けて噴射できるようにする。この状態で、所定の混合したい割合になる量ずつの粒子含有植物系ブラストメディアと比重が0.1~0.5の植物系のブラストメディアとをブラストメディアタンク2内に入れ、
図1のブラストメディアタンク2の蓋3の代わりに、空気は通過可能であるが、ブラストメディアの通過は不可であるメッシュ状の蓋(図示せず)でブラストメディアタンク2の上方に蓋をし、次いで、エアーコンプレッサー1を作動させ、ブラストメディア供給口4からブラストメディアタンク2内に圧縮空気を噴射することにより、粒子含有植物系ブラストメディアと比重が0.1~0.5の植物系のブラストメディアを均一に混合できる。なお、この混合を行う際の供給する圧縮空気圧の調整が必要な場合には、エアーコンプレッサー1自体で調整するか、圧力調整用のレギュレーターがある場合にはそれで調整してもよい。そして、この混合したブラストメディアを用いて目的のエアーブラスト処理を行う場合には
図1に示した状態に戻して処理を実行すればよい。
【0051】
ブラスト処理する際の駆動流体(気体)の圧力としては特に限定されるものではないが、ブラストメディアタンク内のゲージ圧を0.098MPaから0.98MPaの範囲にすることが好ましい。例えば、
図1及び
図2に示した噴出しノズル5近傍に粒子状植物系ブラストメディアの噴出速度を微調整し得るレバー9を設けているブラスト処理装置を用いると、被処理物に応じてブラストメディアタンク内の圧力を調整したり、植物系ブラストメディアの供給速度を調整したりすることが可能であり、より緻密で滑らかなブラスト処理を可能にする。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
表面に地衣類が付着していて表面がやや脆くなった花崗岩(御影石)からなる狛犬の地衣類の除去と表面の美麗化を依頼され、狛犬を工房に持ち帰り、植物系ブラストメディアに胡桃の種子殻の粒子含有植物系ブラストメディア(メジアン径0.5mm、粒子数で約40%の粒子の角が丸みを帯びているもの)を用い、前述したブラスト処理装置を使用して、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.6MPaから0.8MPaの範囲(レバー9で調整)の空気でブラスト処理した。処理時間はおよそ5分であった。その結果、狛犬の劣化表面を損傷することなく、地衣類を除去でき、且つ、地衣類の付着していた部分の汚れも除去できた。
【0054】
[実施例2]
大分県大分市の遺跡における文化財の調査現場で表面に地衣類が付着していて表面がやや脆くなった土器(つぼの破片と推定される)をテスト用にもらい受け、当該破片を胡桃の種子殻の粒子状ブラストメディア(メジアン径0.2mm、粒子数で約45%の粒子の角が丸みを帯びているもの)90重量%と、杉から得られる粉砕したままの粒子状ブラストメディア(メジアン径0.2mm)10重量%を混合したブラストメディアを用い、前述したブラスト処理装置を使用して、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.6MPaから0.8MPaの範囲(レバー9で調整)の空気でブラスト処理した。その結果、およそ15秒間の処理で、当該時の破片の劣化表面を損傷することなく、地衣類を除去でき、且つ、地衣類の付着していた部分の汚れも除去できた。
【0055】
[実施例3]
表面に地衣類が付着していて表面がやや脆くなった流紋岩質凝灰岩の破片を九州の石材屋から地衣類除去のテスト用に提供を受け、工房内で、植物系ブラストメディアに胡桃の種子殻の粒子含有植物系ブラストメディア(メジアン径0.09mm、粒子数で約50%の粒子が角が丸みを帯びているもの)を用い、前述したブラスト処理装置を用いて、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.6MPaから0.8MPaの範囲(レバー9で調整)の空気でブラスト処理した。その結果、およそ15秒間の処理で、流紋岩質凝灰岩の破片の劣化表面を損傷することなく、地衣類を除去でき、且つ、地衣類の付着していた部分の汚れも除去できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の粒子状植物系ブラストメディア及びブラスト処理方法によれば、表面が劣化している石像や土器類の表面を荒らすことなく、現時点での形成されている表面状態を保持して表面に付着している地衣類を極めて短時間で除去することが可能となるので、本発明は世界遺産や重要文化財、国宝等に指定されている石像や遺跡などにおける文化財の調査などの対象物である土器類等において特に有効に使用される。
【符号の説明】
【0057】
1 エアーコンプレッサー
2 ブラストメディアタンク
3 蓋
4 ブラストメディア供給口
5 噴出ノズル
6 噴出口
7a,7b,7c,7d エアーホースアタッチメント
9 噴出速度の調整用レバー
10 平ノズル把持部
11a、11b ホース
12 圧力ゲージ