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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20220217BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20220217BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220217BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H04N5/225 400
G02B1/115
G02B5/26
H04N5/225 800
H04N5/232 290
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021121797
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507200938
【氏名又は名称】株式会社タナカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆義
(72)【発明者】
【氏名】石井 太
(72)【発明者】
【氏名】佐野 俊幸
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538526(JP,A)
【文献】特開2014-185917(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131052(WO,A1)
【文献】特開2017-011504(JP,A)
【文献】特開2019-211664(JP,A)
【文献】実開昭53-024636(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G02B 1/115
G02B 5/26
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの光を集光する集光部と、
前記集光部を介して入射する光を可視光を含む第1の光と遠赤外光とに分離する第1のビームスプリッターと、
前記第1の光を受光すると、前記第1の光のうちの近赤外光に応じた近赤外光信号と前記第1の光のうちの可視光に応じた可視光信号とを生成する生成部と、
前記第1のビームスプリッターによって分離された遠赤外光を受光すると、前記遠赤外光に応じた遠赤外光信号を生成する遠赤外光センサーと、
前記可視光信号に応じた可視光画像を生成する可視光画像処理部と、
前記近赤外光信号に応じた近赤外熱画像を生成する近赤外熱画像処理部と、
前記遠赤外光信号に応じた遠赤外熱画像を生成する遠赤外熱画像処理部と、
前記可視光画像と前記近赤外熱画像と前記遠赤外熱画像とを合成した合成画像を生成する合成処理部と、を備え
前記合成処理部は、
前記可視光画像の輝度成分を示す第1輝度信号、前記近赤外熱画像の輝度成分を示す第2輝度信号及び遠赤外熱画像の輝度成分を示す第3輝度信号を加算して合成画像輝度信号を生成する処理と、
前記合成画像輝度信号によって輝度成分が示されるとともに前記可視光画像の色成分を示す色信号によって色成分が示される合成画像を生成する処理と、を実行し、
前記合成画像輝度信号を生成する処理は、前記第1輝度信号及び前記第2輝度信号の高周波成分を強調する処理を含み、
前記合成画像を生成する処理は、
前記合成画像輝度信号のコントラストを補正する処理と、
前記コントラストを補正した合成画像輝度信号によって示される輝度に応じて前記色信号の強度を調整する処理と、を含み、
前記合成画像は、前記色信号の強度が調整された色信号によって色成分が示される、ことを特徴とする、
撮像装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記第1の光を可視光と近赤外光とに分離するプリズム型の第2のビームスプリッター
と、
前記第2のビームスプリッターによって分離された前記可視光を受光すると、受光した前記可視光に応じた可視光信号を生成する可視光センサーと、
前記第2のビームスプリッターによって分離された前記近赤外光を受光すると、受光した前記近赤外光に応じた近赤外光信号を生成する近赤外光センサーと、を含む、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記第1の光を受光すると、前記第1の光を示す第1信号を生成する第1センサーと、
前記第1信号が入力されると、前記第1信号を可視光を示す可視光信号と近赤外光を示す近赤外光信号とに分離する分離部と、を含む、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
検知対象を可視光で撮影した第1画像、前記検知対象を近赤外光で撮影した第2画像及び前記検知対象を遠赤外光で撮影した第3画像を教師データとして構築された学習モデルに対して前記合成画像及び前記遠赤外熱画像を入力して前記外部に前記検知対象が存在するか否かを判定する判定部、をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記判定部は、検知対象ごとに構築された複数の学習モデルを含み、
前記判定部は、前記複数の学習モデルのうちユーザによって指定された検知対象に応じた学習モデルを選択する、
請求項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記集光部は、複数のレンズを含む透過光学系である、
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記集光部は、複数の凹面鏡を含む反射光学系である、
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1のビームスプリッターは、
ケイ素、ゲルマニウム、セレン化亜鉛及びカルコゲナイドガラスのうちの少なくともいずれかを含み、波長8μmから12μmの遠赤外光を透過させる基板と、
前記基板上に設けられ、硫化亜鉛及びセレン化亜鉛のうちの少なくともいずれかを含む高屈折率膜と、フッ化物誘電体を含む低屈折率膜とを交互に積層し、波長0.4μmから0.7μmまでの可視光及び波長0.7μmから3μmまでの近赤外光を反射させる誘電体多層膜と、を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記基板は、前記遠赤外光に対する屈折率が3以上である、
請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記誘電体多層膜は、前記遠赤外光に対する屈折率が3未満である、
請求項またはに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びビームスプリッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視システムでは、夜間や暗所においては照明を設置して監視対象の領域を明るくしたり、被写体の熱を検知する遠赤外光カメラを監視カメラとして採用したりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-232606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
夜間において監視カメラと照明を設置する場合、夜間環境の悪化や照明を設置するコストの増加等の課題が生じ得る。また、照明を設置しない場合、可視光で撮影する可視光カメラを用いた画像認識技術では、夜間や暗所における検知精度が極めて低く、また、昼間であっても影の影響で誤検知することがあった。遠赤外光カメラを監視に用いる場合、遠赤外光カメラは、可視光カメラ程の高精細な画像を得ることができないため監視における視認性の低下が生じ得るとともに、監視カメラを含む監視システムのシステム構成を複雑にする虞がある。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、暗所での撮影においても視認性の高い画像を生成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような撮像装置によって例示される。本撮像装置は、外部からの光を集光する集光部と、上記集光部を介して入射する光を可視光を含む第1の光と遠赤外光とに分離する第1のビームスプリッターと、上記第1の光を受光すると、上記第1の光のうちの近赤外光に応じた近赤外光信号と上記第1の光のうちの可視光に応じた可視光信号とを生成する生成部と、上記第1のビームスプリッターによって分離された遠赤外光を受光すると、上記遠赤外光に応じた遠赤外光信号を生成する遠赤外光センサーと、上記可視光信号に応じた可視光画像を生成する可視光画像処理部と、上記近赤外光信号に応じた近赤外熱画像を生成する近赤外熱画像処理部と、上記遠赤外光信号に応じた遠赤外熱画像を生成する遠赤外熱画像処理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記撮像装置によれば、外部からの光を近赤外光、可視光及び遠赤外光に分離し、近赤外光に応じた近赤外熱画像、可視光に応じた可視光画像及び遠赤外に応じた遠赤外熱画像を生成することができる。すなわち、上記撮像装置は、近赤外熱画像、遠赤外熱画像及び可視光画像を同一光軸上で生成することができる。同一光軸上で生成できることから、可視光カメラと遠赤外光カメラとを個別に設けて撮影する場合とは異なり、近赤外熱画像、遠赤外熱画像及び可視光画像の夫々における被写体の位置を同じにすることができる。そのため、近赤外熱画像、遠赤外熱画像及び可視光画像を互いに比較することが容易になる。
【0008】
また、近赤外熱画像及び遠赤外熱画像は、上記外部の熱を感知して生成される画像であるため、暗所であっても上記外部を画像としてとらえやすい。可視光画像は、上記外部の
色も含む。その一方で、近赤外熱画像及び遠赤外熱画像は、熱を感知して生成される画像であることから、上記外部が明瞭には映らない。このような傾向は、近赤外熱画像よりも遠赤外熱画像で顕著である。上記撮像装置であれば、近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を生成できるため、目的や上記外部の環境に応じてこれらの画像を使い分けることもできる。例えば、明るい場所であれば可視光画像を用い、暗い場所であれば近赤外熱画像や遠赤外熱画像を用いることができる。そのため、上記撮像装置によれば、暗所での撮影においても視認性の高い画像を生成することができる。
【0009】
上記撮像装置において、生成部は、上記第1の光を可視光と近赤外光とに分離するプリズム型の第2のビームスプリッターと、上記第2のビームスプリッターによって分離された上記可視光を受光すると、受光した上記可視光に応じた可視光信号を生成する可視光センサーと、上記第2のビームスプリッターによって分離された上記近赤外光を受光すると、受光した上記近赤外光に応じた近赤外光信号を生成する近赤外光センサーと、を含んでもよい。また、生成部は、上記第1の光を受光すると、上記第1の光を示す第1信号を生成する第1センサーと、上記第1信号が入力されると、上記第1信号を可視光を示す可視光信号と近赤外光を示す近赤外光信号とに分離する分離部と、を含んでもよい。
【0010】
上記撮像装置は、次の特徴を備えてもよい。上記撮像装置は、上記可視光画像と上記近赤外熱画像とを合成した合成画像を生成する合成処理部を備えてもよい。ここで、上記合成画像は、さらに、上記遠赤外熱画像も合成されたものであってもよい。そして、合成処理部による合成画像の生成は、例えば、上記可視光画像の輝度成分を示す第1輝度信号、上記近赤外熱画像の輝度成分を示す第2輝度信号及び遠赤外熱画像の輝度成分を示す第3輝度信号を加算して合成画像輝度信号を生成する処理と、上記合成画像輝度信号によって輝度成分が示されるとともに上記可視光画像の色成分を示す色信号によって色成分が示される合成画像を生成する処理と、を含むものであってもよい。
【0011】
また、上記合成画像輝度信号を生成する処理は、上記第1輝度信号及び上記第2輝度信号の高周波成分を強調する処理を含んでもよい。上記合成画像を生成する処理は、上記合成画像輝度信号のコントラストを補正する処理と、上記コントラストを補正した合成画像輝度信号によって示される輝度に応じて上記色信号の強度を調整する処理と、を含んでもよい。そして、上記合成画像は、上記色信号の強度が調整された色信号によって色成分が示されてもよい。上記撮像装置は、このような処理を行うことで、よりコントラスト感及び解像感の高い合成画像を生成することができる。
【0012】
上記撮像装置は、検知対象を可視光で撮影した第1画像、上記検知対象を近赤外光で撮影した第2画像及び上記検知対象を遠赤外光で撮影した第3画像を教師データとして構築された学習モデルに対して上記合成画像及び上記遠赤外熱画像を入力して上記外部に上記検知対象が存在するか否かを判定する判定部、をさらに備えてもよい。可視光画像、近赤外熱画像及び遠赤外熱画像には、それぞれ上記のような特徴がある。上記合成処理部によって可視光画像と近赤外熱画像とが合成されることで、近赤外熱画像よりも明瞭で色の情報を含んだ合成画像を生成することができる。上記撮像装置は、このような合成画像と上記外部の熱分布を反映した遠赤外熱画像を上記判定部に入力することで、暗所であっても検知対象を好適に検知することができる。
【0013】
上記撮像装置において、上記判定部は、検知対象ごとに構築された複数の学習モデルを含み、上記判定部は、複数の学習モデルのうちユーザによって指定された検知対象に応じた学習モデルを選択してもよい。上記撮像装置は、このような特徴を備えることで、指定された検知対象を好適に検知することができる。
【0014】
また、上記撮像装置において、上記集光部は、上記集光部として複数のレンズを含む透
過光学系を採用する場合、撮像装置の小型化が容易である。また、上記集光部として複数の凹面鏡を含む反射光学系を採用する場合、レンズを採用する場合よりも廉価に撮像装置を製造することが可能となる。なお、反射光学系は凸面鏡を含んでもよい。
【0015】
また、上記撮像装置において、上記第1のビームスプリッターは、ケイ素、ゲルマニウム、セレン化亜鉛及びカルコゲナイドガラスのうちの少なくともいずれかを含み、波長8μmから12μmの遠赤外光を透過させる基板と、上記基板上に設けられ、硫化亜鉛及びセレン化亜鉛のうちの少なくともいずれかを含む高屈折率膜と、フッ化物誘電体を含む低屈折率膜とを交互に積層し、波長0.4μmから0.7μmまでの可視光及び波長0.7μmから3μmまでの近赤外光を反射させる誘電体多層膜と、を含むものであってよい。ここで、フッ化物誘電体としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化ランタン、フッ化カリウムを挙げることができる。上記撮像装置のビームスプリッターは、このような構成を採用することで、可視光及び近赤外光を透過させずに高い反射率で反射させるとともに、遠赤外光を反射させずに高い透過率で透過させるものとすることができる。
【0016】
上記撮像装置において、上記第1のビームスプリッターの基板は、上記遠赤外光に対する屈折率が3以上であることが好ましい。また、上記第1のビームスプリッターの誘電体多層膜は、上記遠赤外光に対する屈折率が3未満であることが好ましい。
【0017】
また、開示の技術は、上記ビームスプリッターとして把握することもできる。
【発明の効果】
【0018】
開示の技術によれば、暗所における視認性を高めることができる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態における近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を模式的に示す図である。
図3図3は、合成処理部による合成処理の第1のバリエーションを示すフローチャートである。
図4図4は、合成処理部による合成処理の第2のバリエーションを示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る撮像装置が備えるコンピューターの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態における第1ビームスプリッターの特性を例示する図である。
図7図7は、実施形態に係る撮像装置による検知対象を検知する処理フローの一例である。
図8図8は、第1変形例に係る撮像装置による検知対象を検知する処理フローの一例である。
図9図9は、第2変形例に係る撮像装置の構成を示す図である。
図10図10は、第1適用例を模式的に例示する図である。
図11図11は、第2適用例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係る撮像装置1の構成を示す図である。撮像装置1は、例えば、屋外や屋内に設置される監視カメ
ラである。撮像装置1は、静止画を撮影するものであっても動画を撮影するものであってもよい。撮像装置1は、コンピューター100と光学部200とを備える。
【0021】
光学部200は、被写体Mからの被写体光を撮像装置1内に入射させ、入射させた被写体光を電気信号に変換する。光学部200は、レンズ11、第1ビームスプリッター121、第2ビームスプリッター122、近赤外光センサー131、可視光センサー132及び遠赤外光センサー133を含む。レンズ11、第1ビームスプリッター121、第2ビームスプリッター122、近赤外光センサー131、可視光センサー132及び遠赤外光センサー133は、同一光軸上に配置される。
【0022】
レンズ11は、可視光、近赤外光及び遠赤外光を含む被写体Mからの被写体光を透過させるとともに、透過させた被写体光を集光する光学部材である。レンズ11は、「レンズ」及び「集光部」の一例である。図1には2つのレンズ11が例示されているが、レンズ11の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。複数のレンズ11は、透過光学系ということもできる。
【0023】
第1ビームスプリッター121は、板状に形成されたビームスプリッター(波長分離素子)である。第1ビームスプリッター121は、レンズ11の後方(撮像装置1において、レンズ11と遠赤外光センサー133との間)に配置される。第1ビームスプリッター121は、レンズ11を介して入射した被写体光を可視光及び近赤外光を含む第1の光と遠赤外光に分離する。被写体光が第1ビームスプリッター121に入射すると、第1の光は反射し、遠赤外光は透過する。第1ビームスプリッター121によって反射された第1の光は、第2ビームスプリッター122に入射する。第1ビームスプリッター121を透過した遠赤外光は、遠赤外光センサー133に入射する。第1ビームスプリッター121は、「第1のビームスプリッター」の一例である。
【0024】
第1ビームスプリッター121は、透明基板1212上に可視光及び近赤外光を反射する誘電体多層膜1211を設けることで作製される。誘電体多層膜1211は、例えば、高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜である。誘電体多層膜における誘電体の積層は、例えば、蒸着やスパッタリングによって行われる。屈折率n、波長λ、誘電体膜夫々の膜厚dの関係は、例えば、nd=λ/4とすることができる。そして、高屈折率の誘電体膜及び低屈折率の誘電体膜の遠赤外光(波長8μmから12μm)に対する屈折率nは、例えば、「n<3」である。高屈折率の誘電体膜は、「高屈折率膜」の一例である。低屈折率の誘電体膜は、「低屈折率膜」の一例である。
【0025】
高屈折率の誘電体としては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)及びセレン化亜鉛(ZnSe)等を挙げることができる。また、低屈折率の誘電体としては、例えば、フッ化物誘電体を挙げることができる。フッ化物誘電体としては、例えば、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化カリウム(KF)等を挙げることができる。透明基板1212は、少なくとも遠赤外光を透過可能な基板である。透明基板1212は、例えば、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、カルコゲナイドガラス等によって形成される。透明基板1212の屈折率は、遠赤外光に対して透明である。透明基板1212の遠赤外光に対する屈折率nは、例えば、「n>=3」である。透明基板1212は、例えば、遠赤外光に対して透明であり、かつ、遠赤外光に対する屈折率nが「n>=3」である材料を両面光学研磨して形成される。透明基板1212の屈折率の方が誘電体多層膜1211の屈折率よりも大きくなるため、透明基板1212による遠赤外光の反射が抑制される。第1ビームスプリッター121は、誘電体多層膜1211をレンズ11に向けた状態で配置される。
【0026】
第2ビームスプリッター122は、プリズム型に形成されたビームスプリッターである。第2ビームスプリッター122は、第1ビームスプリッター121によって反射された第1の光を可視光と近赤外光とに分離する。第1の光が第2ビームスプリッター122に入射すると、可視光は反射し、近赤外光は透過する。第2ビームスプリッター122によって反射された可視光は、可視光画像処理部142に入射する。第2ビームスプリッター122を透過した近赤外光は、近赤外熱画像処理部141に入射する。
【0027】
第2ビームスプリッター122は、側面が四角形に形成され、底面が直角三角形に形成された三角プリズム24a、24bを含む。第2ビームスプリッター122の作製は、例えば、以下のように行われる。三角プリズム122bの側面のうちのひとつに、可視光反射体1221が設けられる。三角プリズム122aの側面のひとつと、三角プリズム122bにおいて可視光反射体1221が設けられた側面とが張り合わされることで、第2ビームスプリッター122は作製される。このように作製された第2ビームスプリッター122は、第1ビームスプリッター121によって反射された光に対して可視光反射体1221が斜めになるように配置される。第2ビームスプリッター122は、「第2のビームスプリッター」の一例である。
【0028】
近赤外光センサー131は、例えば、入射した近赤外光に応じた電気信号を生成する撮像素子である。すなわち、近赤外光センサー131は、被写体Mの熱を検知して電気信号に変換する撮像素子ということもできる。近赤外光センサー131は、例えば、波長0.7μmから3μmの光に感度のピークを有する。近赤外光センサー131は、例えば、近赤外光に対する感度を有するCCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーである。近赤外光センサー131は、「近赤外光センサー」の一例である。近赤外光に応じた電気信号は、「近赤外光信号」の一例である。
【0029】
可視光センサー132は、例えば、入射した可視光に応じた電気信号を生成する撮像素子である。可視光センサー132は、被写体Mの色を検知して電気信号に変換する撮像素子ということもできる。可視光センサー132は、例えば、波長0.4μmから0.7μm以下の光に感度のピークを有する。可視光センサー132は、例えば、可視光に対する感度を有するCCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーである。可視光センサー132は、「可視光センサー」の一例である。可視光に応じた電気信号は、「可視光信号」の一例である。
【0030】
遠赤外光センサー133は、例えば、入射した遠赤外光に応じた電気信号を生成する撮像素子である。遠赤外光センサー133は、被写体Mの熱を検知して電気信号に変換する撮像素子ということもできる。遠赤外光センサー133は、例えば、波長8μmから12μmの光に感度のピークを有する。遠赤外光センサー133は、例えば、遠赤外光に対する感度を有するCCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、サーモパイル、ボローメーター、焦電センサーである。遠赤外光センサー133は、「遠赤外光センサー」の一例である。遠赤外光に応じた電気信号は、「遠赤外光信号」の一例である。
【0031】
コンピューター100は、近赤外光センサー131、可視光センサー132、遠赤外光センサー133から入力される電気信号を基に、近赤外熱画像、可視光画像、遠赤外熱画像を生成し、被写体Mの監視処理を行う。コンピューター100は、近赤外熱画像処理部141、可視光画像処理部142、遠赤外熱画像処理部143、合成処理部15、学習機能指示器16及び機械学習器17を含む。
【0032】
近赤外熱画像処理部141は、近赤外光センサー131から入力される電気信号を基に近赤外熱画像(図中では、「IR画像」と記載)を生成する処理部である。すなわち、近赤外熱画像処理部141が生成する近赤外熱画像は、近赤外光で撮影した画像である。近
赤外熱画像処理部141は、「近赤外熱画像処理部」の一例である。
【0033】
可視光画像処理部142は、可視光センサー132から入力される電気信号を基に可視光画像を生成する処理部である。すなわち、可視光画像処理部142が生成する可視光画像は、可視光で撮影した画像である。可視光画像処理部142は、「可視光画像処理部」の一例である。近赤外光センサー131、可視光センサー132、近赤外熱画像処理部141及び可視光画像処理部142は、「生成部」の一例である。
【0034】
遠赤外熱画像処理部143は、遠赤外光センサー133から入力される電気信号を基に遠赤外熱画像(図中では、「FIR画像」と記載)を生成する処理部である。すなわち、遠赤外熱画像処理部143が生成する遠赤外熱画像は、被写体Mを遠赤外光で撮影した画像である。遠赤外光は、主に物体の熱によって放射されることから、遠赤外熱画像は、撮像装置1の撮影範囲の熱分布を示す画像ということができる。遠赤外熱画像処理部143は、「遠赤外熱画像処理部」の一例である。
【0035】
図2は、実施形態における近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を模式的に示す図である。図2(A)は、近赤外熱画像処理部141によって生成される近赤外熱画像を例示する。図2(B)は、可視光画像処理部142によって生成される可視光画像を例示する。図2(C)は、遠赤外熱画像処理部143によって生成される遠赤外熱画像を例示する。
【0036】
近赤外熱画像処理部141によって生成される近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成される可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成される遠赤外熱画像には、夫々特徴がある。近赤外光や遠赤外光を基に生成される近赤外熱画像及び遠赤外熱画像は、被写体Mの熱を感知して生成される画像であるため、暗所であっても被写体Mを画像としてとらえやすい。また、可視光を基に生成される可視光画像は、被写体Mの色も含む。その一方で、近赤外熱画像及び遠赤外熱画像は、熱を感知して生成される画像であることから、被写体Mが明瞭には映らない。このような傾向は、近赤外熱画像よりも遠赤外熱画像で顕著である。そこで、撮像装置1は、合成処理部15によって近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を合成した合成画像を生成することで、これらの画像の欠点を補完する。
【0037】
図1に戻り、合成処理部15は、例えば、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成された可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像を基に、合成画像を生成する処理部である。合成処理部15は、近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を合成することで、夫々の画像の欠点を補完した合成画像を生成する。合成処理部15は、例えば、可視光画像によって近赤外熱画像を補正することで、近赤外熱画像の被写体Mをより明瞭に補正するとともに、色の情報を近赤外熱画像に付加した第1補正画像を生成する。そして、合成処理部15は、第1補正画像によって遠赤外熱画像を補正することで、遠赤外熱画像をより明瞭に補正するとともに色の情報を付加した合成画像を生成する。合成処理部15は、「合成処理部」の一例である。
【0038】
ここで、合成処理部15によって合成される各画像を示す信号について説明する。可視光画像は色の情報を含む。そのため、可視光画像を示す信号は、各画素の色を示す色信号と各画素の輝度を示す輝度信号を含む。近赤外熱画像及び遠赤外熱画像は色の情報を含まない。そのため、近赤外熱画像を示す信号及び遠赤外熱画像を示す信号は、各画素の輝度を示す輝度信号を含む一方で、色信号は含まない。このような信号によって示される各画像を合成する合成処理のバリエーションについて図面を参照して説明する。
【0039】
図3は、合成処理部15による合成処理の第1のバリエーションを示すフローチャートである。以下、図3を参照して、合成処理部15による合成処理の第1のバリエーションについて説明する。
【0040】
G11では、合成処理部15は、遠赤外熱画像の一部を切り出し、切り出した画像をリサイズすることで遠赤外熱画像の画素数及び画像のサイズを近赤外熱画像及び可視光画像に揃えるリサイズ処理を行う。なお、遠赤外光センサー133の画素数が、近赤外光センサー131の画素数及び可視光センサー132の画素数と等しい場合には、G11の処理は省略されてもよい。
【0041】
G12では、合成処理部15は、可視光画像の輝度信号、近赤外熱画像の輝度信号及び遠赤外熱画像の輝度信号を加算して合成画像輝度信号を生成する。ここで、G11の処理が実行されている場合には、G11の処理が行われた後の遠赤外熱画像の輝度信号が合成画像輝度信号の生成に用いられる。合成画像輝度信号の生成は、例えば、各画素において夫々の輝度信号が示す輝度値を加算することで行われる。
【0042】
G13では、合成処理部15は、G12で生成した合成画像輝度信号に対して可視光画像の色信号を合成することで、合成画像を生成する。すなわち、合成画像の色成分は可視光画像の色信号によって示され、合成画像の輝度成分は合成画像輝度信号によって示される。
【0043】
続いて、合成処理部15による合成処理の他のバリエーションについて説明する。図4は、合成処理部15による合成処理の第2のバリエーションを示すフローチャートである。図3と同一の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図4を参照して、合成処理部15による合成処理の第2のバリエーションについて説明する。
【0044】
G21では、合成処理部15は、近赤外熱画像の輝度信号及び可視光画像の輝度信号の夫々における高周波成分を強調する処理を実行する。高周波成分を強調する処理では、近赤外熱画像の輝度信号及び可視光画像の輝度信号の夫々の高周波成分に対して所定値を加算してもよいし、所定値を積算してもよい。高周波成分の周波数範囲及び所定値は適宜決定すればよい。G21の加算処理によって、可視光画像や近赤外熱画像と比較して低画素数のセンサーによって生成されることが多い遠赤外熱画像の高解像度化を図ることができる。
【0045】
G22では、合成処理部15は、遠赤外熱画像の輝度信号、G21で高周波成分が強調された近赤外熱画像の輝度信号及び可視光画像の輝度信号を加算して加算後輝度信号を生成する。
【0046】
G23では、合成処理部15は、G22で生成した加算後輝度信号に対してコントラストを補正するコントラスト補正処理を行うことで合成輝度信号を生成する。コントラスト補正処理に用いる手法には限定はなく、公知の様々な手法を採用可能である。
【0047】
G24では、合成処理部15は、G23で生成された合成輝度信号の高周波成分を強調する処理を実行することで、合成画像輝度信号を生成する。高周波成分を強調する処理では、G21と同様の手法を採用することができる。
【0048】
G25では、合成処理部15は、可視光画像の輝度信号とG23で生成した合成輝度信号との輝度の比に応じて、可視光画像の色信号の強度を補正する。合成処理部15は、例えば、合成輝度信号の各画素の輝度が可視光画像の輝度信号の同じ画素の輝度よりも大きいほど可視光画像の色信号の強度を高めてもよい。
【0049】
G26では、合成処理部15は、G24で生成した合成画像輝度信号とG25で補正した可視光画像の色信号を合成して、合成画像を生成する。すなわち、合成画像の色成分はG25で補正された色信号によって示され、合成画像の輝度成分はG24で生成した合成画像輝度信号によって示される。
【0050】
なお、合成処理部15による合成処理は図3及び図4を参照して説明した処理に限定されない。合成処理部15は、他の手法によって合成処理を行ってもよい。
【0051】
学習機能指示器16は、撮像装置1が撮影した画像から検知対象とする被写体を機械学習器17に対して指示する。検知対象としては、例えば、人、動物、車両等を挙げることができる。学習機能指示器16には、例えば、撮像装置1のユーザーインターフェースを介したユーザからの指示によって、検知対象が指定される。
【0052】
機械学習器17は、予め検知対象を撮影することで近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成される可視光画像、遠赤外熱画像処理部143によって生成される遠赤外熱画像及び合成処理部15によって生成される合成画像を教師データとして、上記検知対象の検知に用いる学習モデルを構築する。機械学習器17は、複数の検知対象夫々に対応する学習モデルを複数構築してもよい。また、機械学習器17は、構築した学習モデルを用いて、近赤外熱画像処理部141から入力される近赤外熱画像、可視光画像処理部142から入力される可視光画像、遠赤外熱画像処理部143から入力される遠赤外熱画像及び合成処理部15から入力される合成画像を基に、指定された検知対象の検知を行う。機械学習器17は、検知対象を検知するとサーバ装置等の上位装置へ通知を行ってもよい。機械学習器17は、「判定部」の一例である。
【0053】
近赤外熱画像処理部141、可視光画像処理部142、遠赤外熱画像処理部143、合成処理部15、学習機能指示器16及び機械学習器17は、例えば、Central Processing Unit(CPU)とメモリを備えるコンピューターによって実現される。図5は、実施形態に係る撮像装置1が備えるコンピューター100の一例を示す図である。コンピューター100は、撮像装置1が備える情報処理装置である。
【0054】
CPU101は、マイクロプロセッサユニット(MPU)、プロセッサとも呼ばれる。CPU101は、プロセッサと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。コンピューター100では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を行うことで、近赤外熱画像処理部141、可視光画像処理部142、遠赤外熱画像処理部143、合成処理部15、学習機能指示器16及び機械学習器17が実現される。
【0055】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0056】
補助記憶部103は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブルや機械学習器17によって構築された学習モデル等が格納される。
【0057】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0058】
通信部104は、近赤外光センサー131、可視光センサー132及び遠赤外光センサー133からの電気信号の入力を受け付けるインターフェースである。CPU101は、通信部104を介して、近赤外光センサー131、可視光センサー132及び遠赤外光センサー133からの電気信号を取得する。
【0059】
コンピューター100は、例えば、ユーザ等からの操作指示等を受け付ける入力部をさらに備えてもよい。このような入力部として、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、加速度センサーあるいは音声入力装置といった入力デバイスを例示できる。
【0060】
(ビームスプリッターの特性)
図6は、実施形態における第1ビームスプリッター121の特性を例示する図である。図6では、比較のため、誘電体多層膜1211を備えない透明基板1212の特性も例示する。図6の縦軸は透過率または反射率を例示し、横軸は波長を例示する。図6において、反射率を示す曲線には「反射率」の表示を付し、透過率を示す曲線には「透過率」の表示を付す。また、図6のうち実線の曲線は第1ビームスプリッター121の特性を例示し、点線の曲線は透明基板1212の特性を例示する。
【0061】
透明基板1212の波長0.6μm以下の可視光や波長1.2μm以下の近赤外光に対する透過率は略0%であり、反射率は70%以下である。また、透明基板1212の波長10μm以上の遠赤外光に対する透過率は30%以下であり、反射率は40%以下である。その一方で、第1ビームスプリッター121の波長0.6μm以下の可視光や波長1.2μm以下の近赤外光に対する透過率は略0%であり、反射率は70%以上である。また、第1ビームスプリッター121の波長10μm以上の遠赤外光に対する透過率は略100%であるとともに、反射率は略0%である。すなわち、透明基板1212上に誘電体多層膜1211を設けることで、可視光及び近赤外光の反射率を高めることができるとともに、遠赤外光の透過率を高めることができる。すなわち、透明基板1212上に誘電体多層膜1211を設けた第1ビームスプリッター121は、可視光及び近赤外光を透過させずに高い反射率で反射させるとともに、遠赤外光を反射させずに高い透過率で透過させることができる。
【0062】
(検知対象の検知フロー)
図7は、実施形態に係る撮像装置1による検知対象を検知する処理フローの一例である。以下、図7を参照して、実施形態に係る撮像装置1による検知対象を検知する処理フローについて説明する。
【0063】
T1では、合成処理部15は、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成された可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像を基に、合成画像を生成する。
【0064】
T2では、機械学習器17は、予め機械学習器17によって生成された学習モデルに対して、T1で生成された合成画像を入力することで、検知対象の検知を行う。検知対象を検知した場合(T2でYES)、処理はT3に進められる。検知対象を検知しない場合(T2でNO)、処理は終了する。
【0065】
T3では、検知対象を検知したことにより、機械学習器17はアラートを出力する。ア
ラートの出力は、例えば、上位装置への通知であって良い。また、機械学習器17は、撮像装置1が備えるスピーカー(図示省略)からの警告音を出力してもよく、撮像装置1が接続されたディスプレイ(図示省略)への警告メッセージの出力を行ってもよい。
【0066】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る撮像装置1では、レンズ11を介して入射する被写体光を第1ビームスプリッター121によって可視光及び近赤外光を含む第1の光と遠赤外光とに分離される。第1ビームスプリッター121によって被写体光から分離された第1の光は、第2ビームスプリッター122に入射し、第2ビームスプリッター122によって可視光と近赤外光とに分離される。第2ビームスプリッター122によって分離された近赤外光は近赤外光センサー131に入射し、第2ビームスプリッター122によって分離された可視光は可視光センサー132に入射する。また、第1ビームスプリッター121によって被写体光から分離された遠赤外光は、遠赤外光センサー133に入射する。レンズ11、近赤外光センサー131、可視光センサー132、遠赤外光センサー133は同一光軸上に配置されており、近赤外光センサー131、可視光センサー132、遠赤外光センサー133に入射する光はレンズ11から入射した同一の被写体光から分離されたものである。そのため、実施形態に係る撮像装置1は、被写体Mについての近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を同時に取得することができる。
【0067】
実施形態に係る撮像装置1では、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成された可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像を合成処理部15によって合成する。そのため、実施形態に係る撮像装置1は、近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像夫々が有する欠点を補完した明瞭な合成画像を生成することができる。
【0068】
本実施形態では、例えば、図4のG21の加算処理によって、可視光画像や近赤外熱画像と比較して低画素数のセンサーによって生成されることが多い遠赤外熱画像の高解像度化を図ることができる。また、図4のG23及びG24の処理によって、合成画像のコントラスト感及び解像感が改善される。本実施形態によれば、このような処理によって合成画像が生成されることで、コントラスト感及び解像感が一層改善された合成画像を生成することができる。
【0069】
実施形態に係る撮像装置1では、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成された可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像及び合成処理部15によって生成された合成画像を教師データとして機械学習器17が機械学習を行い、検知対象の検知に用いられる学習モデルが構築される。ここで、検知対象とする被写体は、ユーザによって学習機能指示器16に対して指示され、学習機能指示器16は指示された検知対象を検知するよう機械学習器17に指示する。機械学習器17は、指定された検知対象に対応する学習モデルを選択して検知を行う。そのため、実施形態に係る撮像装置1によれば、ユーザ所望の被写体を検知することができる。
【0070】
実施形態に係る撮像装置1が備える第1ビームスプリッター121は、図6を参照して説明したように、可視光及び近赤外光を透過させずに高い反射率で反射させるとともに、遠赤外光を高い透過率で透過させるとともに反射させない。そのため、第1ビームスプリッター121は、高精度で可視光及び近赤外光を含む第1の光と遠赤外光とを分離することができる。また、撮像装置1は、第1ビームスプリッター121によって高精度で第1の光と遠赤外光とを分離することができるため、第1の光が遠赤外光センサー133に入射されることを抑制される。ひいては、遠赤外光センサー133の画質低下が抑制される。
【0071】
また、実施形態に係る撮像装置1は、同一光軸上で近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を生成する。そのため、近赤外光で撮影する近赤外光カメラ、可視光で撮影する可視光カメラ及び遠赤外光で撮影する遠赤外光カメラの夫々を用意して被写体Mを撮影する場合(異なる位置から被写体Mを撮影する場合)とは異なり、近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像間における被写体Mの位置ずれが生じない。そのため、撮像装置1では、合成画像においても被写体Mの位置を高精度に示すことができる。
【0072】
<第1変形例>
実施形態では、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像、可視光画像処理部142によって生成された可視光画像及び遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像を合成処理部15によって合成された。第1変形例では、合成処理部15が、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像と可視光画像処理部142によって生成された可視光画像の合成画像を生成する場合の処理について説明する。なお、この場合、遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像は合成処理部15に入力されなくともよい。以下、図面を参照して、第1変形例について説明する。
【0073】
(検知対象の検知フロー)
図8は、第1変形例に係る撮像装置1による検知対象を検知する処理フローの一例である。図8において、図7と同一の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図8を参照して、第1変形例に係る撮像装置1による検知対象を検知する処理フローについて説明する。
【0074】
T1aでは、合成処理部15は、T1では、合成処理部15は、近赤外熱画像処理部141によって生成された近赤外熱画像及び可視光画像処理部142によって生成された可視光画像を基に、合成画像を生成する。
【0075】
T2aでは、機械学習器17は、あらかじめ機械学習器17によって生成された学習モデルを用いて、検知対象の検知を行う。機械学習器17には、T1aで生成された合成画像と遠赤外熱画像処理部143によって生成された遠赤外熱画像が入力される。機械学習器17は、合成画像と遠赤外熱画像を学習モデルに入力することで、検知対象の検知を行う。検知対象を検知した場合(T2aでYES)、処理はT3に進められる。検知対象を検知しない場合(T2aでNO)、処理は終了する。
【0076】
<第2変形例>
実施形態に係る撮像装置1では、被写体光を集光する光学部材としてレンズ11が採用された。第2変形例では、レンズ11に代えて凹面鏡を備える撮像装置について説明する。実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、第2変形例について説明する。
【0077】
図9は、第2変形例に係る撮像装置1aの構成を示す図である。撮像装置1aは、光学部200に代えて光学部200aを備える点で撮像装置1とは異なる。光学部200aは、レンズ11に代えて凹面鏡11aを備え、近赤外光センサー131及び可視光センサー132に代えて近赤外光・可視光センサー131aを備える。また、光学部200aは、RGB/IR分離素子132bをさらに備えるとともに、第2ビームスプリッター122は省略される。
【0078】
凹面鏡11aは、入射した被写体光を入射方向とは別の方向に反射する。凹面鏡11aに入射した被写体光は、凹面鏡11aによって光路を屈曲されて第1ビームスプリッター
121に入射される。図9では、3つの凹面鏡11aが例示されているが、凹面鏡11aの数は3つに限定されるものではない。3つの凹面鏡11aは、反射光学系ということもできる。
【0079】
近赤外光・可視光センサー131aは、入射した可視光及び近赤外光に応じた電気信号を生成する撮像素子である。近赤外光センサー131aは、波長2.5μm以下の光に感度のピークを有する。近赤外光・可視光センサー131aは、例えば、波長2.5μm以下の光に対する感度を有するCCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーである。近赤外光・可視光センサー131aが生成した電気信号は、RGB/IR分離素子132bに入力される。近赤外光・可視光センサー131aは、「第1センサー」の一例である。可視光及び近赤外光に応じた電気信号は、「第1信号」の一例である。
【0080】
RGB/IR分離素子132bは、近赤外光・可視光センサー131aから入力された電気信号を、可視光を示す電気信号と近赤外光を示す電気信号に分離する。RGB/IR分離素子132bによって分離された近赤外光を示す電気信号は、近赤外熱画像処理部141に入力される。RGB/IR分離素子132bによって分離された可視光を示す電気信号は、可視光画像処理部142に入力される。RGB/IR分離素子132bは、「分離部」の一例である。近赤外光・可視光センサー131a、RGB/IR分離素子132b、近赤外熱画像処理部141及び可視光画像処理部142は、「生成部」の一例である。
【0081】
第2変形例に係る撮像装置1aは、レンズ11に代えて凹面鏡11aを採用することで、撮像装置1よりも安価に製造が可能となる。一方、撮像装置1は、レンズ11を採用することで、撮像装置1aよりも小型化が容易である。
【0082】
<その他の変形例>
実施形態では、誘電体多層膜1211を備える第1ビームスプリッター121について説明した。しかしながら、誘電体多層膜1211は第1ビームスプリッター121を備えなくともよい。例えば、第1ビームスプリッター121は、誘電体多層膜1211に代えて可視光の波長よりも小さいピッチの周期的な溝を形成することによっても、可視光及び近赤外光を反射することができる。この周期的な溝は、遠赤外光の波長よりもはるかに小さい構造となる。そのため、このような構造によっても、第1ビームスプリッター121は遠赤外光を透過することができる。
【0083】
<適用例>
以上で説明した実施形態や各変形例に係る撮像装置は、様々なシステムに適用可能である。以下、図面を参照して、実施形態や各変形例に係る撮像装置の適用例について説明する。
【0084】
(第1適用例)
図10は、第1適用例を模式的に例示する図である。第1適用例では、実施形態に係る撮像装置1を車両800の監視カメラとして採用する。図10は、道路を走行する車両800を上から見た図である。図10の例では、1台の撮像装置1が、車両800の進行方向を撮影するように設けられる。
【0085】
第1適用例では、撮像装置1が車両の進行方向(例えば、監視領域W1)を撮影する。夜間やトンネル内等の暗所においては、対向車両810のヘッドライト光811等の影響で横断歩道を渡る通行人M1の視認性が低下する。上記の通り、暗所においては可視光画像で通行人M1を検知することは困難であり、近赤外熱画像や遠赤外熱画像では検知対象とする通行人M1を明瞭に撮像することは困難である。撮像装置1は、近赤外光で撮影し
た近赤外熱画像、可視光で撮影した可視光画像及び遠赤外光で撮影した遠赤外熱画像を同一光軸上で取得する。そして、撮像装置1は、近赤外熱画像、可視光画像及び遠赤外熱画像を合成することで、これらの画像の欠点を補完した合成画像を生成する。換言すれば、撮像装置1は、合成画像を用いることで、通行人M1を可視光及び熱分布の双方の観点から検知する。撮像装置1は、このような合成画像を用いることで、暗所における通行人M1の検知精度を高めることができる。また、撮像装置1の機械学習器17は、通行人M1を検知した場合には、車両800に対してブレーキ制御を指示してもよい。
【0086】
(第2適用例)
撮像装置1は、入退室管理システムに適用することもできる。図11は、第2適用例を模式的に示す図である。第2適用例では、サーバールーム850の入退室管理に撮像装置1が採用される。図11は、サーバールーム850を上から見た図である。図11の例では、サーバールーム850の入退室扉851の脇に1台の撮像装置1が設けられる。撮像装置1の撮影方向は、サーバールーム850の外部に向けられている。
【0087】
撮像装置1は、サーバールーム850内で作業を行おうとする作業者を撮影し、その撮影画像を上位装置へ送信する。上位装置は、撮像装置1から受信した可視光画像を用いて顔認証を行うことができる。また、上位装置は、撮像装置1から受信した遠赤外熱画像を基に作業員の体温を測定し、測定した体温が所定の体温以上である場合には、体調不良であるとしてサーバールーム850への入室を拒否(入退室扉851の開錠を行わない)としてもよい。なお、第2適用例ではサーバールーム850への入退室管理として撮像装置1を用いたが、新型コロナ(COVID-19)等への対策として、店舗への入店時における顧客の顔認識や体温測定に撮像装置1を用いてもよい。
【0088】
(その他の適用例)
以上説明した撮像装置1、1aは、撮影対象とする領域の明暗によらず好適な画像を撮影できることから、他にも様々な用途に適用することができる。撮像装置1、1aは、例えば、可視光のみならず熱によっても撮影を行うことができることから、森林火災の監視カメラに適用することもできる。また、撮像装置1、1aは、撮影対象とする領域の明暗によらず好適な画像を撮影できることから、昼夜、雨、霧、雪等の様々な環境に対応した防災監視カメラ、自然環境監視カメラ、昼夜対応セキュリティカメラとして用いることもできる。
【0089】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0090】
1・・撮像装置
1a・・撮像装置
11・・レンズ
11a・・凹面鏡
15・・合成処理部
16・・学習機能指示器
17・・機械学習器
100・・コンピューター
200・・光学部
200a・・光学部
101・・CPU
102・・主記憶部
103・・補助記憶部
104・・通信部
121・・第1ビームスプリッター
122・・第2ビームスプリッター
131・・近赤外光センサー
131a・・近赤外光・可視光センサー
132・・可視光センサー
132b・・RGB/IR分離素子
133・・遠赤外光センサー
141・・近赤外熱画像処理部
142・・可視光画像処理部
143・・遠赤外熱画像処理部
800・・車両
810・・対向車両
811・・ヘッドライト光
850・・サーバールーム
851・・入退室扉
1221・・可視光反射体
122a・・三角プリズム
122b・・三角プリズム
1211・・誘電体多層膜
1212・・透明基板
M・・被写体
W1・・監視領域
【要約】
【課題】暗所における撮像装置の視認性を高める。
【解決手段】本撮像装置は、外部からの光を集光する集光部と、上記集光部を介して入射する光を可視光を含む第1の光と遠赤外光とに分離する第1のビームスプリッターと、上記第1の光を受光すると、上記第1の光のうちの近赤外光に応じた近赤外光信号と上記第1の光のうちの可視光に応じた可視光信号とを生成する生成部と、上記第1のビームスプリッターによって分離された遠赤外光を受光すると、上記遠赤外光に応じた遠赤外光信号を生成する遠赤外光センサーと、上記可視光信号に応じた可視光画像を生成する可視光画像処理部と、上記近赤外光信号に応じた近赤外熱画像を生成する近赤外熱画像処理部と、上記遠赤外光信号に応じた遠赤外熱画像を生成する遠赤外熱画像処理部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
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