IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソマロジック・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】5位修飾ピリミジンとその使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/073 20060101AFI20220217BHJP
   C07H 19/10 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C07H19/073 CSP
C07H19/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018034436
(22)【出願日】2018-02-28
(62)【分割の表示】P 2016041782の分割
【原出願日】2011-04-12
(65)【公開番号】P2018109050
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2018-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】61/323,145
(32)【優先日】2010-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510016254
【氏名又は名称】ソマロジック・オペレイティング・カンパニー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ローロフ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンジク,ネボジャ
(72)【発明者】
【氏名】カーター,ジェフリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー,キャサリン
【合議体】
【審判長】村上 騎見高
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/012418(WO,A2)
【文献】J.AM.CHEM.SOC.,2010年,Vol.132,pp.4141-4151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を持つC-5修飾アミノカルボニルピリミジン:
【化1】
式中、
R’は、-H、-Ac、-Bz、-C(O)CHOCHおよび-SiMetBuからなる群より選択され;
R”は、H、DMT、及び三リン酸(-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH))又はその塩からなる群より選択され;
Xは、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドからなる群より選択され;
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【化2】
からなる群より選択され;
*は、RX1基の(CHへの付加点を示し;
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)からなる群より選択され;そして、
n=0~10である。
【請求項2】
以下の構造を持つC-5修飾アミノカルボニルピリミジン:
【化3】
式中、
R’は、-H、-Ac、-Bz、-C(O)CHOCHおよび-SiMetBuからなる群より選択され;
R”は、H、DMT、及び三リン酸(-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH))又はその塩からなる群より選択され;
Xは、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドからなる群より選択され;
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【化4】
からなる群より選択され;
*は、RX1基の(CHへの付加点を示し;
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)からなる群より選択され;そして、
n=0~10である。
【請求項3】
以下の構造を持つC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの3’-ホスホロアミダイト:
【化5】
式中、
R”は、H、DMT、及び三リン酸(-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH))又はその塩からなる群より選択され;
Xは、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドからなる群より選択され;
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【化6】
及び
【化7】
からなる群より選択され;
*は、RX1基の(CHへの付加点を示し;
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)からなる群より選択され;そして、
n=0~10である。
【請求項4】
以下の構造を持つC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸:
【化8】
式中、
R’は、-H、-Ac、-Bz、-C(O)CHOCHおよび-SiMetBuからなる群より選択され;
Xは、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドからなる群より選択され;
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【化9】
及び
【化10】
からなる群より選択され;
*は、RX1基の(CHへの付加点を示し;
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)からなる群より選択され;そして、
n=0~10である。
【請求項5】
n=0、1又は2である、請求項1または2に記載されるC-5修飾アミノカルボニルピリミジン、または請求項3に記載されるC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの3’-ホスホロアミダイト、または請求項4に記載されるC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願 [0001] 本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願シリアル番号61/323,145(2010年4月12日出願)の利益を主張する。)
技術分野
[0002] 本開示は、核酸化学の分野に、具体的には、5位修飾ウリジン、並びにそのホスホロアミダイト及び三リン酸誘導体に関する。本開示はまた、それらを作製して使用する方法に関する。本開示には、この修飾されたヌクレオシドの、オリゴヌクレオチド又はアプタマーの一部としての使用が含まれる。
【背景技術】
【0002】
[0003] 以下の記載は、本開示に関連した情報の概要を提供するものであって、本明細書において提供される情報又は参照される刊行物のいずれもが本開示の先行技術であるとする自認ではない。
【0003】
[0004] 修飾ヌクレオシドを治療薬剤、診断薬剤として、及びオリゴヌクレオチドへの取込み用に開発することには、かなりの関心がある。例えば、AZT、ddI、d4Tのような修飾ヌクレオシドと他のものは、AIDSを治療するために使用されてきた。5-トリフルオロメチル-2’-デオキシウリジンは、疱疹性角膜炎に対して有効であり、5-ヨード-1-(2-デオキシ-2-フルオロ-b-D-アラビノフラノシル)シトシンは、CMV、VZV、HSV-1、HSV-2、及びEBVに対して活性がある(「医薬品の設計及び開発教程(A Textbook of Drug Design and Development)」 Povl Krogsgaard-Larsen and Hans Bundgaard(監修)、Harwood Academic Publishers(1991),15
章)。
【0004】
[0005] 修飾ヌクレオシドは、診断応用において有用性を示している。これらの応用では、ヌクレオシドがDNA中へ決定可能な位置で取り込まれて、様々な診断法を使用して、この修飾ヌクレオシドの位置を決定する。これらの方法には、放射性標識法、蛍光標識法、ビオチニル化、及び鎖切断が含まれる。鎖切断の例は、ヌクレオシドをヒドラジンと反応させて尿素ヌクレオシドを生成する工程と、次いでこの尿素ヌクレオシドをピペリジンと反応させて鎖切断を引き起こす工程(マキサム-ギルバート法)に関わる。
【0005】
[0006] 修飾ヌクレオシドはまた、オリゴヌクレオチド中へ取り込まれてきた。オリゴヌクレオチドが治療薬剤として有用であり得る、いくつかのやり方がある。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、生体中の特定の遺伝子コード領域へ結合して、タンパク質の発現を阻止するか又は様々な細胞機能を妨害することができる。さらに、SELEX法、又は「指数的濃縮のためのリガンドの系統進化法(Systematic Evolution of Ligands for Exponential Enrichment)」として知られている方法は、標的分子へ選択的に結合するオリゴヌクレオチド(「アプタマー」と呼ばれる)を同定して産生することを可能にする。SELEX法については、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,270,163号に記載されている。
【0006】
[0007] SELEX法は、候補品の混合物より、結合のアフィニティー及び選択性について所望される判定基準を事実上全て達成するオリゴヌクレオチドの選択に関わる。オリゴヌクレオチドのランダム混合物より始めて、この方法は、結合(又は相互作用)に好ましい条件の下で、その混合物を標的と接触させる工程、標的分子へ結合した(又は、それと相互作用した)オリゴヌクレオチドより未結合オリゴヌクレオチドを分別する工程、そ
のオリゴヌクレオチド-標的の対を解離させる工程、オリゴヌクレオチド-標的の対より解離したオリゴヌクレオチドを増幅して、リガンド濃縮されたオリゴヌクレオチドの混合物を産生する工程、次いで、この結合、分別、解離、及び増幅の工程を所望されるだけ多くのサイクルを介して反復する工程に関わる。
【0007】
[0008] 修飾ヌクレオシドは、SELEX法において使用されるか又はそれによって同定される、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、及びオリゴヌクレオチドの中へ取り込むことができる。これらのヌクレオシドは、エンド及びエクソヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドの in vivo 及び in vitro 安定性を付与する、その分子の電荷
、疎水性、又は親油性を変化させる、及び/又は三次元構造中の差異を提供することができる。
【0008】
[0009] これまでに記載されてきたヌクレオシドの修飾には、2’位の糖修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンでの修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモ又は5-ヨード-ウラシルの置換、骨格修飾、及びメチル化が含まれる。修飾には、キャッピングのような3’及び5’修飾も含まれてきた。参照により本明細書に組み込まれる、PCT WO91/14696は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを化学的に修飾して、細胞中への移行を高めるための方法について記載する。
【0009】
[0010] その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,428,149号、5,591,843号、5,633,361号、5,719,273号、及び5,945,527号は、パラジウムカップリング反応によりピリミジンヌクレオシドを修飾することについて記載する。いくつかの態様では、ピリミジン環の5位に脱離基を含有するピリミジンヌクレオシドへ求核体と一酸化炭素をカップリングさせて、好ましくはエステル及びアミドの誘導体を生成する。
【0010】
[0011] エクソヌクレアーゼによる分解に対してオリゴヌクレオチドを抵抗性にするために、様々な方法が使用されてきた。PCT WO90/15065は、2以上のホスホロアミダイト、ホスホロモノチオネート、及び/又はホスホロジチオネート連結をオリゴヌクレオチドの5’及び/又は3’端で取り込むことによって、エクソヌクレアーゼ抵抗性のオリゴヌクレオチドを作製するための方法について記載する。PCT WO91/06629は、隣接ヌクレオシド間の1以上のホスホジエステル連結が、RNA又はDNAへ結合することが可能であるアセタール/ケタール型の連結を形成することによって置き換えられたオリゴヌクレオチドを開示する。
【0011】
[0012] 新しいヌクレオシドを治療及び診断の応用のために、そしてオリゴヌクレオチド中での包含のために提供することは、有利であろう。オリゴヌクレオチドに取り込まれる場合は、天然に存在するヌクレオシドより製造されるオリゴヌクレオチドより、標的分子への異なる高アフィニティー結合を示す、及び/又はエクソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼに対して増加した抵抗性を示す新たなオリゴヌクレオチドを提供することが有利であろう。エンドヌクレアーゼ及びエクソヌクレアーゼ抵抗性以外の、又はそれに加えた生物学的活性を付与する修飾があるヌクレオチドを提供することも有用であろう。
【発明の概要】
【0012】
[0013] 本開示は、以下の一般式:
【0013】
【化1】
【0014】
[式中、
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【0015】
【化2】
【0016】
{式中、
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);ハロゲン(F、Cl、Br、I);ニトリル(CN);ボロン酸(BO);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX2);一級アミド(CONH);二級アミド(CONHRX2);三級アミド(CONRX2X3);スルホンアミド(SONH);N-ア
ルキルスルホンアミド(SONHRX2)からなる群より選択され;
ここでRX2、RX3は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);フェニル(C);RX4置換フェニル環(RX4)(ここでRX4は、上記に定義される);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX5)(ここでRX5は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)である);及びシクロアルキル(ここでRX2=RX3=(CHである)からなる群より独立して選択される}からなる群より選択され;
ここで、n=0~10であり;
式中、
Xは、限定されないが、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドが含まれる群より選択され;
式中、
R’は、限定されないが、-Ac;-Bz、及び-SiMetBuが含まれる群より選択され;
式中、
R”は、限定されないが、H、DMT、及び三リン酸(-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH))又はその塩が含まれる群より選択され;そしてここで、
【0017】
【化3】
【0018】
は、炭素環状糖類似体、α-アノマー糖、アラビノース、キシロース、又はリキソースのようなエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状類似体、並びにメチルリボシドのような非塩基性ヌクレオシド類似体で置き換えることができる]の5位修飾ウリジンを提供する。
【0019】
[0014] 含まれるのは、以下の一般式:
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、すべての部分は上記に定義される通りである]をそれぞれ有する、前記化合物の3’-ホスホロアミダイト誘導体と5’-三リン酸誘導体、又はそれらの塩である。
[0015] 本開示の化合物は、そのような化合物を製造する標準的な合成法又は酵素法を使用して、オリゴヌクレオチド又はアプタマーへ取り込むことができる。
【0022】
[0016] 本開示にまた提供されるのは、本開示の化合物を生成するための方法と、前記方法によって生成される化合物である。
[0017] 1つの態様では、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンを製造するための方法が提供され、前記方法は、5位がトリフルオロエトキシカルボニルで修飾されたピリミジンを塩基の存在下にアミンと反応させる工程;及び、前記C-5修飾アミノカルボニルピリミジンを単離する工程を含んでなる。
【0023】
[0018] 別の態様では、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンの3’-ホスホロアミダイトを製造するための方法が提供され、前記方法は、前記C-5修飾アミノカルボニルピリミジンを塩基の存在下にシアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトと反応させる工程;及び前記3’-ホスホロアミダイトを単離する工程を含んでなる。
【0024】
[0019] なお別の態様では、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸塩を製造するための方法が提供され、前記方法は:
a)以下の式:
【0025】
【化5】
【0026】
[式中、
RとXは、上記に定義される通りである]を有するC-5修飾アミノカルボニルピリミジンを塩基の存在下に無水酢酸と反応させることに続く、5’-DMT基の酸での切断で、以下の構造:
【0027】
【化6】
【0028】
の3’-アセテートを生成する工程;
b)工程a)の3'-アセテートに対してルートヴィヒ-エックシュタイン(Ludwig-Eckstein)反応に続いてアニオン交換クロマトグラフィーを実施する工程;及び
c)以下の構造:
【0029】
【化7】
【0030】
を有するC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸又はその塩を単離する工程を含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0020] これから本発明の代表的な態様へ詳しく言及する。列挙される態様に関連して本発明について記載するが、本発明は、その態様に限定されるわけではないことが理解されよう。むしろ、本発明には、特許請求項によって明確化される本発明の範囲内に含まれ得る、すべての代替態様、変更態様、及び等価物が含まれると企図される。
【0032】
[0021] 当業者は、本開示の実践の範囲で使用し得てその範囲内にある、本明細書に記載されるものと同様又は等価な多くの方法及び材料を認められよう。本開示は、記載される方法及び材料に決して限定されない。
【0033】
[0022] 他に定義されなければ、本明細書において使用する技術及び科学の用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は等価であるどの方法、デバイス、及び材料も本発明の実践又は検証に使用し得るが、好ましい方法、デバイス、及び材料についてこれから記載する。
【0034】
[0023] 本開示で引用するすべての刊行物、公開特許文献、及び特許出願は、本開示が関連する技術分野(複数)の最高水準を示している。本明細書で引用するすべての刊行物、公開特許文献、及び特許出願は、それぞれ個別の刊行物、公開特許文献、又は特許出願が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
[0024] 付帯の特許請求項が含まれる本開示に使用されるように、単数形の冠詞(「a」、「an」及び「the」)には、その内容が明らかに他のことを指定しなければ、複数の言及が含まれ、「少なくとも1つ」及び「1以上の」と可換的に使用される。従って、「アプタマー(an aptamer)」への言及には、アプタマー(aptamers)の混合物が含まれる、といった具合である。
【0036】
[0025] 本明細書に使用するように、「約」という用語は、数値が関連する項目の基本機能が不変であるような、その数値の些細な変更又は変化を表す。
[0026] 「それぞれの」という用語は、本明細書において複数の項目に言及するために使用されるとき、その項目の少なくとも2つに言及すると企図される。その複数性を形成する必ずしもすべての項目が関連する追加の限定条件を満たすことが求められるわけではない。
【0037】
[0027] 本明細書に使用するように、「~を含む」、「~を含んでなる」、「~が含まれる」、「~が含まれている」、「~を含有する」、「~を含有している」という用語とこれらの変形には、ある要素又は要素のリストを含む、それらが含まれる、又はそれらを
含有するプロセス、方法、プロセスによる製品、又は材料の組成物には、その要素だけが含まれるのではなくて、明白には収載されない他の要素、又はそのようなプロセス、方法、プロセスによる製品、又は材料の組成物に固有の他の要素も含まれる場合があるように、非排他的な包含が含まれると企図される。
【0038】
[0028] 本明細書に使用するように、「ヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド、又はこれらの修飾型、並びにこれらの類似体を意味する。ヌクレオチドには、プリン(例、アデニン、ヒポキサンチン、グアニン、及びこれらの誘導体及び類似体)、並びにピリミジン(例、シトシン、ウラシル、チミン、及びこれらの誘導体及び類似体)が含まれる分子種が含まれる。
【0039】
化合物
[0029] 1つの態様において、本開示は、以下の式化合物を提供する:
【0040】
【化8】
【0041】
式中、
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【0042】
【化9】
【0043】
{式中、
X4は、限定されないが、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);ハロゲ
ン(F、Cl、Br、I);ニトリル(CN);ボロン酸(BO);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX2);一級アミド(CONH);二級アミド(CONHRX2);三級アミド(CONRX2X3);スルホンアミド(SONH);及びN-アルキルスルホンアミド(SONHRX2)が含まれる群より選択され;
ここでRX2、RX3は、限定されないが、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);フェニル(C);RX4置換フェニル環(RX4)(ここでRX4は、上記に定義される);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX5)(ここでRX5は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)である);及びシクロアルキル(ここでRX2=RX3=(CHである)が含まれる群より独立して選択される}からなる群より選択され;
ここで、n=0~10であり;
式中、
Xは、限定されないが、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドが含まれる群より選択され;
式中、
R’は、限定されないが、-H、-Ac;-Bz、-C(O)CHOCH、及び-SiMetBuが含まれる群より選択され;
式中、
R”は、限定されないが、-H、4,4-ジメトキシトリチル(DMT)、及び三リン酸(-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-O-P(O)(OH))又はその塩が含まれる群より選択され;そしてここで、
【0044】
【化10】
【0045】
は、炭素環状糖類似体、α-アノマー糖、アラビノース、キシロース、又はリキソースのようなエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状類似体、並びにメチルリボシドのような非塩基性ヌクレオシド類似体で置き換えることができる。
【0046】
[0030] 別の態様において、本開示は、以下の式の化合物又はその塩を提供する:
【0047】
【化11】
【0048】
式中、R、R”、及びXは、上記に定義される通りである。この一般式の化合物は、修飾
ヌクレオシドの化学合成によるオリゴヌクレオチドへの取込みに有用である。
[0031] なお他の態様において、本開示は、以下の式の化合物又はその塩を提供する:
【0049】
【化12】
【0050】
式中、R、R’、及びXは、上記に定義される通りである。この一般式の化合物は、修飾ヌクレオシドの酵素合成によるオリゴヌクレオチドへの取込みに有用である。
[0032] 本明細書に使用されるように、「C-5修飾カルボキシアミドウリジン」又は「C-5修飾アミノカルボニルウリジン」という用語は、限定されないが、上記に例示した(R)部分が含まれる、ウリジンのC-5位でのカルボキシアミド(-C(O)NH-)修飾があるウリジンを意味する。C-5修飾カルボキシアミドウリジンの例には、米国特許第5,719,273号及び5,945,527号、並びに、「ヌクレアーゼ抵抗性のオリゴヌクレオチド(Nuclease Resistant Oligonucleotides)」と題した米国仮特許
出願シリアル番号61/422,957(’957出願)(2010年12月14日出願)に記載されるものが含まれる。代表的なC-5修飾ピリミジンには、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、又は5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)が含まれる。
【0051】
[0033] 例示だけの目的のために本明細書に記載されるC-5修飾アミノカルボニルウリジンの具体例には、以下の化合物、並びに前記化合物の5’-三リン酸及び3’-ホスホロアミダイトとそれらの塩が含まれて、これらの合成については実施例1~5で記載する。
【0052】
【化13】
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
[0034] 本明細書に記載のC-5修飾ウリジンの化学修飾はまた、単独で、又はどの組合せでも、2’位の糖修飾、環外アミンでの修飾、及び4-チオウリジンの置換、等と組み合わせることができる。
【0058】
塩類
[0035] 化合物の対応する塩、例えば、医薬的に許容される塩を製造、精製、及び/又は処理することが簡便であるか又は望ましい場合がある。医薬的に許容される塩の例については、Berge et al.「Pharmaceutically Acceptable Salts(医薬的に許容される塩)」 (1977) J. Pharm. Sci. 66: 1-19 に考察されている。
【0059】
[0036] 例えば、化合物がアニオン性であるか又はアニオン性になり得る官能基(例えば、-COOHは、-COOになり得る)を有するならば、好適なカチオンとともに塩が生成され得る。好適な無機カチオンの例には、限定されないが、Na及びKのようなアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+のようなアルカリ土類カチオン、及びAl+3のような他のカチオンが含まれる。好適な有機カチオンの例には、限定されないが、アンモニウムイオン(即ち、NH )と置換アンモニウムイオン(例、NHx+、NH 、NHR 、NR )が含まれる。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンのようなアミノ酸より誘導されるものである。一般的な四級アンモニウムイオンの例は、N(CH である。
【0060】
[0037] 化合物がカチオン性であるか又はカチオン性になり得る官能基(例えば、-NHは、-NH になり得る)を有するならば、好適なアニオンとともに塩が生成され得る。好適な無機アニオンの例には、限定されないが、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及び亜リン酸より誘導されるものが含まれる。
【0061】
[0038] 好適な有機アニオンの例には、限定されないが、以下の有機酸:2-アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸
、及び吉草酸より誘導されるものが含まれる。好適なポリマー有機アニオンの例には、限定されないが、以下のポリマー酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースより誘導されるものが含まれる。
【0062】
[0039] 他に特定しなければ、特別な化合物への言及には、その塩型も含まれる。
オリゴヌクレオチドの製造
[0040] 1つの側面において、本開示は、本明細書に記載の修飾ヌクレオシドを、単独で、又は他の修飾ヌクレオシド及び/又は天然に存在するヌクレオシドと組み合わせて使用して、修飾オリゴヌクレオチドを製造する方法を提供する。オリゴデオキシヌクレオシドの自動合成は、多くの研究室で定型的な作業である(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Matteucci, M. D. and Caruthers, M. H., (1990) J. Am. Chem. Soc., 103: 3185-3191 を参照のこと)。オリゴリボヌクレオシドの合成についてもよく知られている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Scaringe, S. A., et al., Nucleic Acids Res. 18: 5433-5441 (1990) を参照のこと)。上記で注目されるように、
ホスホロアミダイトは、修飾ヌクレオシドをオリゴヌクレオチドへ化学合成によって取り込むのに有用であって、三リン酸塩は、修飾ヌクレオシドをオリゴヌクレオチドへ酵素合成によって取り込むのに有用である(例えば、Vaught, J. V., et al. (2010) J. Am. Chem. Soc., 132, 4141-4151; Gait, M. J. 「オリゴヌクレオチド合成:実践アプローチ(Oligonucleotide Synthesis a practical approach)」(1984)IRLプレス(イギリス、オックスフォード); Herdewijn, P. 「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(2005)(ヒュマナ・プレス、ニュージャージー州トトワ)を参照のこと。これ
らのいずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0063】
[0041] 本明細書に使用されるように、「修飾する」、「修飾(された)」、「修飾」という用語とそのあらゆる変形は、オリゴヌクレオチドに関連して使用されるとき、オリゴヌクレオチドの4つの構成ヌクレオチド塩基(即ち、A、G、T/U、及びC)の少なくとも1つが天然に存在するヌクレオチドの類似体又はエステルであることを意味する。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ抵抗性を付与する。追加の修飾には、骨格修飾、メチル化、イソ塩基のイソシチジン及びイソグアニジンのような異常な塩基対合の組合せ、等を含めることができる。修飾には、キャッピングのような3’及び5’修飾も含めることができる。他の修飾には、天然に存在するヌクレオチドの1以上を類似体で置換すること、例えば、非荷電連結(例、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート、等)及び荷電連結(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、等)での修飾のようなヌクレオチド間の修飾、挿入剤(例、アクリジン、ソラレン、等)での修飾、キレート形成剤(例、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属、等)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、及び修飾連結(例、α-アノマー核酸、等)での修飾を含めることができる。さらに、通常はヌクレオチドの糖に存在するヒドロキシル基のいずれも、ホスホネート基又はリン酸基に置き換える;標準的な保護基によって保護する;又は、追加のヌクレオチド又は固体支持体への追加の連結を製造するために活性化することができる。5’及び3’末端OH基も、リン酸化し得るか、又はアミン、約1~約20の炭素原子の有機キャッピング基の部分、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー(1つの態様では、約10~約80kDaの範囲に及ぶ)、PEGポリマー(別の態様では、約20~約60kDaの範囲に及ぶ)又は、他の親水性又は疎水性の生体又は合成ポリマーで置換し得る。
【0064】
[0042] ポリヌクレオチドはまた、当該技術分野で一般的に知られている、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-O-エチル、2’-O-プロピル、2’-O-CHCHOCH、2’-フルオロ-、又は2’-アジド、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖(アラビノース、キシロース、又はリキソースのような)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体
(メチルリボシドのような)が含まれる、リボース又はデオキシリボース糖の類似形態を含有することができる。上記に注目されるように、1以上のホスホジエステル連結を代替的な連結基に置き換えてよい。これらの代替連結基には、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR (「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH(「ホルムアセタール」)[ここでそれぞれのR又はR’は、独立して、Hであるか、又はエーテル(-O-)連結を含有してもよい置換又は未置換アルキル(C1-C20)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、又はアラルジル(araldyl)である]によって置き換えられた態
様が含まれる。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。糖、プリン、及びピリミジンの類似形態の置換は、最終産物を設計するときに有利であり得る(例えば、ポリアミド骨格のような代替的な骨格構造が有利であり得るように)。
【0065】
[0043] 存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組立ての前でも後でも付与することができる。ヌクレオチドの配列を非ヌクレオチド成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションによるように、ポリマー化の後でさらに修飾することができる。
【0066】
[0044] 本明細書に使用されるように、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーに言及するのに可換的に使用されて、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、及び上記の種類の核酸、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドの修飾物が含まれて、ここでは、様々な実体又は部分をどの位置でもヌクレオチド単位へ付加することが含まれる。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸」という用語には、二本鎖又は一本鎖の分子だけでなく、三本鎖のらせん分子も含まれる。核酸、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドは、アプタマーという用語より広義の用語であるので、核酸、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドという用語には、アプタマーであるヌクレオチドのポリマーが含まれるが、核酸、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドという用語は、アプタマーに限定されない。
【0067】
[0045] 本明細書に使用されるように、「少なくとも1つのヌクレオチド」という用語は、核酸の修飾に言及するとき、核酸中の1つ、数個、又はすべてのヌクレオチドを意味して、核酸中のありとあらゆるA、C、T、G又はUのありとあらゆる出現物が修飾されていてもいなくてもよいことを示す。
【0068】
[0046] 他の側面において、本開示は、本明細書に記載の修飾ヌクレオシドを単独で、又は他の修飾ヌクレオシド及び/又は天然に存在するヌクレオシドと組み合わせて使用して、アプタマー及びSOMAマー(下記に記載する)を製造するための方法を提供する。具体的な態様では、下記に記載のような一般的なSELEX又は改良SELEX法を使用して、アプタマー及びSOMAマーを製造する。
【0069】
[0047] 本明細書に使用されるように、「核酸リガンド」、「アプタマー」、「SOMAマー」、及び「クローン」は、可換的に使用されて、標的分子に対して望まれる作用を有する、天然に存在しない核酸を意味する。望まれる作用には、限定されないが、標的に結合すること、標的を触媒的に変化させること、標的又は標的の機能活性を修飾するか又は改変させるやり方で標的と反応すること、標的へ共有結合的に付加すること(自殺阻害剤におけるように)、及び標的と別の分子の間の反応を促進することが含まれる。1つの態様において、この作用は、標的分子に特異的な結合アフィニティーであり、そのような標的分子は、ワトソン/クリック塩基対合又は三重らせん形成とは無関係である機序を介して核酸リガンドへ結合する、ポリヌクレオチド以外の三次元化学構造体であり、ここでアプタマーとは、標的分子によって結合される既知の生理学的機能を有する核酸ではない。所与の標的へのアプタマーには、(a)標的と候補混合物を接触させること(ここでは
、候補混合物中の他の核酸に比べて標的への増加したアフィニティーを有する核酸をその候補混合物の残りより分別することができる);(b)アフィニティーが増加した核酸をその核酸混合物の残りより分別すること;及び(c)このアフィニティーが増加した核酸を増幅して、リガンド濃縮された核酸の混合物を産生すること(これにより、標的分子のアプタマーを同定する)を含んでなる方法によって、核酸の候補混合物より同定される核酸が含まれ、ここでアプタマーは、標的のリガンドである。アフィニティーの相互作用は、程度の問題であると認識されているが、本文脈では、その標的に対するアプタマーの「特異的な結合アフィニティー」とは、アプタマーがその標的に対して、一般的には、混合物又は試料中の他の非標的成分へ結合するよりずっと高い度合いのアフィニティーで結合することを意味する。「アプタマー」、「SOMAマー」、又は「核酸リガンド」は、特別なヌクレオチド配列を有する一定又は一種の核酸分子のコピーのセットである。アプタマーには、どの好適な数のヌクレオチドも含めることができる。「アプタマー」は、1より多いそのような分子のセットを意味する。異なるアプタマーは、同数のヌクレオチドを有しても、異数のヌクレオチドを有してもよい。アプタマーは、DNAでもRNAでもよく、一本鎖、二本鎖であっても、二本鎖又は三本鎖の領域を含有してもよい。
【0070】
[0048] 本明細書に使用されるように、「SOMAマー」又は「遅いオフ速度修飾アプタマー(Slow Off-Rate Modified Aptamer)」は、改善されたオフ速度特性を有するアプタマーを意味する。SOMAマーは、「オフ速度が改善されたアプタマーを産生するための方法(Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates)」と題した米国特許出願公開公報20090004667号に記載の改良SELEX法を使用して産生することができる。
【0071】
[0049] 本明細書に使用されるように、「タンパク質」は、「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「ペプチド断片」と同義的に使用される。「精製(された)」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又はペプチド断片は、そのアミノ酸配列が入手される細胞、組織、又は無細胞供給源に由来する細胞材料も他の混在タンパク質を実質的に含まないか又は、化学的に合成されるときは、化学前駆体も他の化学品も実質的に含まない。
【0072】
SELEX法
[0050] 「SELEX」及び「SELEX法」という用語は、本明細書において可換的に使用されて、(1)標的分子と望ましいやり方で相互作用する(例えば、高いアフィニティーでタンパク質へ結合する)核酸の選択と、(2)そのような選択された核酸の増幅の組合せを一般に意味する。SELEX法を使用して、特定の標的分子又はバイオマーカーへの高いアフィニティーがあるアプタマーを同定することができる。
【0073】
[0051] SELEXには、一般に、核酸の候補混合物を製造すること、この候補混合物を所望の標的分子へ結合させてアフィニティー複合体を生成すること、このアフィニティー複合体を未結合の候補核酸より分離させること、このアフィニティー複合体より結合核酸を分離して単離すること、その核酸を精製すること、及び特異的なアプタマー配列を同定することが含まれる。この方法には、選択されるアプタマーのアフィニティーをさらに純化させるために、多数のラウンドを含めてよい。この方法には、この方法中の1以上の時点で増幅工程を含めることができる。例えば、「核酸リガンド(Nucleic Acid Ligands)」と題した米国特許第5,475,096号を参照のこと。SELEX法を使用して、その標的へ共有結合するアプタマーだけでなく、その標的へ非共有的に結合するアプタマーも産生することができる。例えば、「指数的濃縮による核酸リガンドの系統進化法:Chemi-SELEX(Systematic Evolution of Nucleic Acids Ligands by Exponential Enrichment: Chemi-SELEX)」と題した、米国特許第5,705,337号を参照のこと。
【0074】
[0052] SELEX法を使用して、例えば、改善された in vivo 安定性又は改善され
た送達特性のような改善された特性をアプタマーに付与する修飾ヌクレオチドを含有する高アフィニティーアプタマーを同定することができる。そのような修飾の例には、リボース及び/又はリン酸及び/又は塩基の位置での化学的な置換が含まれる。修飾ヌクレオチドを含有する、SELEX法で同定されるアプタマーについては、ピリミジンの5’及び2’位で化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドについて記載する、「修飾ヌクレオチドを含有する高アフィニティー核酸リガンド(High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides)」と題した米国特許第5,660,985号に記載されている。米国特許第5,580,737号(上記参照)は、2’-アミノ(2’-NH)、2’-フルオロ(2’-F)、及び/又は2’-O-メチル(2’-OMe)で修飾された1以上のヌクレオチドを含有するきわめて特異的なアプタマーについて記載する。拡張された物理及び化学特性を有する核酸ライブラリーとSELEX及び光SELEXにおけるそれらの使用について記載する、「SELEXと光SELEX(SELEX and PHOTOSELEX)」と題した米国特許出願公開公報20090098549号も参照のこと。
【0075】
[0053] SELEXはまた、望ましいオフ速度特性を有するアプタマーを同定するために使用することができる。標的分子へ結合し得るアプタマーを産生するための改善されたSELEX法について記載する、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「オフ速度が改善されたアプタマーを産生するための方法(Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates)」と題した米国特許出願公開公報20090004667号を参照のこと。そのそれぞれの標的分子からの解離速度がより遅いアプタマー及び光アプタマーを産生するための方法が記載されている。この方法は、候補混合物を標的分子と接触させること、核酸-標的複合体の形成が生じることを可能にすること、及び遅いオフ速度濃縮法を実施することを伴うが、ここでは解離速度が速い核酸-標的複合体が解離して再形成されない一方で、解離速度が遅い複合体はインタクトなままである。その上、この方法には、オフ速度性能が改善されたアプタマーを産生する、候補核酸混合物の産生における修飾ヌクレオチドの使用が含まれる。(「SELEXと光SELEX(SELEX and PHOTOSELEX)」と題した米国特許出願公開公報20090098549号も参照のこと)。(また、米国特許第7,855,054号と米国特許出願公開公報20070166740号も参照のこと)。上記出願のいずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
[0054] 「標的」又は「標的分子」、又は「標的」は、本明細書において、核酸が望ましいやり方で作用することができるあらゆる化合物を意味する。標的分子は、限定なしに、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、病原体、有毒物質、基質、代謝産物、遷移状態類似体、補因子、阻害剤、薬物、色素、栄養素、増殖因子、細胞、組織、及び上述のいずれものあらゆる部分又は断片、等であり得る。ほとんどどの化学品も生体エフェクターも好適な標的であり得る。どの大きさの分子も、標的として役立つ可能性がある。また標的をあるやり方で修飾して、標的と核酸の間の相互作用の可能性又は強度を高めることができる。標的には、タンパク質の場合、例えば、アミノ酸配列のわずかな変異、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は他のあらゆる操作又は修飾(分子の同一性を実質的には改変しない、標識成分とのコンジュゲーションのような)といった、特別な化合物又は分子のあらゆるわずかな変種も含めることができる。「標的分子」又は「標的」は、アプタマーへ結合することが可能である分子又は多分子構造の1種又は数種のコピーのセットである。「標的分子」又は「標的」は、1より多いそのような分子のセットを意味する。標的がペプチドであるSELEX法の態様については、「精製タンパク質を伴わない修飾SELEX法(Modified SELEX Processes Without Purified Protein
)」と題した米国特許第6,376,190号に記載されている。
【0077】
化学合成
[0055] 本開示に提供する化合物の化学合成の方法について本明細書に記載する。これらの、及び/又は他のよく知られた方法を既知のやり方で修飾及び/又は適用して、本開示で提供する追加の化合物の合成を促進してよい。
【0078】
[0056] スキーム1に言及すると、1つのアプローチで、5位がトリフルオロエトキシカルボニルで修飾されたピリミジンを塩基の存在下にアミンと反応させる工程;及び、前記C-5修飾アミノカルボニルピリミジンを単離する工程によって、本開示のC-5位修飾アミノカルボニルピリミジンを製造する。
【0079】
[0057] いくつかの態様において、このトリフルオロエトキシカルボニルピリミジンは、限定されないが、以下の構造の化合物が含まれる化合物群より選択される:
【0080】
【化18】
【0081】
式中、
Xは、限定されないが、-H、-OH、-OMe、-O-アリル、-F、-OEt、-OPr、-OCHCHOCH、及び-アジドが含まれる群より選択され;そしてここで、
【0082】
【化19】
【0083】
は、炭素環状糖類似体、α-アノマー糖、アラビノース、キシロース、又はリキソースのようなエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状類似体、並びにメチルリボシドのような非塩基性ヌクレオシド類似体で置き換えることができる。いくつかの態様において、このアミンは、限定されないが、式:RNHの化合物が含まれる群より選択され、式中、
Rは、-(CH-RX1からなる群より選択され;
X1は:
【0084】
【化20】
【0085】
からなる群より選択され、ここで、、
X4は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);ハロゲン(F、Cl、Br、I);ニトリル(CN);ボロン酸(BO);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX2);一級アミド(CONH);二級アミド(CONHR
X2);三級アミド(CONRX2X3);スルホンアミド(SONH);N-アルキルスルホンアミド(SONHRX2)からなる群より選択され;
ここで、RX2、RX3は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20);フェニル(C);RX4置換フェニル環(RX4)(ここでRX4は、上記に定義される);カルボン酸(COOH);カルボン酸エステル(COORX5)(ここでRX5は、分岐鎖又は直鎖の低級アルキル(C1-C20)である);及びシクロアルキル(ここでRX2=RX3=(CHである)からなる群より独立して選択され;
ここで、n=0~10である。
【0086】
[0058] 特定の態様において、このアミンは:
【0087】
【化21】
【0088】
からなる群より選択される。
[0059] いくつかの態様において、この塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、等からなる群より選択される三級アミンである。
【0089】
[0060] スキーム1に言及すると、本開示はまた、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンの3’-ホスホロアミダイトの合成の方法を提供し、該方法は、前記C-5修飾アミノカルボニルピリミジンを塩基の存在下にシアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトと反応させる工程;及び前記3’-ホスホロアミダイトを単離する工程を含んでなる。いくつかの態様において、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンは、以下の構造:
【0090】
【化22】
【0091】
を有し、式中、RとXは、上記に定義される通りである。いくつかの態様において、塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、等からなる群より選択される三級アミンである。
【0092】
[0061] スキーム1に再び言及すると、本開示はまた、以下の工程を含んでなる、C-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸塩の合成方法を提供する:
a)式:
【0093】
【化23】
【0094】
[式中、
RはとXは、上記に定義される通りである]を有するC-5修飾アミノカルボニルピリミジンを、塩基の存在下に無水酢酸と反応させることに続き、5’-DMT基の酸での切断で、以下の構造:
【0095】
【化24】
【0096】
の3’-アセテートを生成する工程;
b)工程a)の3'-アセテートに対してルートヴィヒ-エックシュタイン反応を、続
いてアニオン交換クロマトグラフィーを実施する工程;及び
c)以下の構造:
【0097】
【化25】
【0098】
を有するC-5修飾アミノカルボニルピリミジンの5’-三リン酸又はその塩を単離する工程。
[0062] 使用する塩基は、限定されないが、三級アミンが含まれる群より選択される。いくつかの態様において、塩基は、ピリジンである。工程a)において使用する酸は、限定されないが、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールが含まれる群より選択される。
【0099】
[0063] 代わりのアプローチにおいて、トリフルオロエトキシカルボニルピリミジンは、以下の構造:
【0100】
【化26】
【0101】
を有する。スキーム2に言及すると、この化合物は、パラジウム触媒及び塩基の存在下での一酸化炭素及びトリフルオロエタノールとスキーム2の化合物(7)の反応によって生成される。塩基は、限定されないが、トリエチルアミン、等より選択される三級アミンが含まれる群より選択される。
【0102】
[0064] 本開示には、上記に記載の方法のそれぞれによって製造される化合物が含まれる。
【実施例
【0103】
[0065] 以下の実施例は、例解の目的のためにのみ提供されるのであって、付帯の特許請求項によって規定されるような本出願の範囲を制限することを企図しない。本明細書に記載のすべての実施例は、当業者によく知られていて定型的である標準技術を使用して行った。以下の実施例に記載される定型的な分子生物学の技術は、Sambrook et al.,「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第3版、
コールドスプリングラボラトリープレス、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2001)のような標準実験マニュアルに記載のように行うことができる。
【0104】
[0066] 以下の一般手順を利用して、実施例1~3及び5に記載される修飾ヌクレオシドを生成した。本明細書で使用する命名法は、Matsuda et al. Nucleic Acids Research 1997, 25: 2784-2791 に記載される体系に基づく。
【0105】
【化27】
【0106】
実施例1.5’-O-DMT-dU-5-カルボキサミド(3a~e)の合成
[0067] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(4-フルオロベンジルアミノカルボニ
ル)-2’-デオキシウリジン(3a)。出発材料の5’-O-ジメトキシトリチル-5-トリフルオロエトキシカルボニル-2’-デオキシウリジン(1)は、Matsuda et al (Nomura, Y.; Ueno, Y.; Matsuda, A. Nucleic Acid Research 1997, 25: 2784-2791; Ito, T., Ueno, Y.; Matsuda, A. Nucleic Acid Research 2003, 31: 2514-2523)の手順
によって製造した。(1)(9.85g,15ミリモル)、4-フルオロベンジルアミン(2a)(2.25g,18ミリモル、1.3当量)、トリエチルアミン(4.2mL,30ミリモル)、及び無水アセトニトリル(30mL)の溶液を不活性雰囲気下に60~70℃で2~24時間加熱した。薄層クロマトグラフィー(シリカゲル60,5%メタノール/ジクロロメタン)又はHPLCによって、(1)のアミド(3a)への定量的な変換を確認した。この反応混合物を真空で濃縮して、1%トリエチルアミン/99%酢酸エチル中0~3%メタノールの溶出液を使用するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(Still, W. C.; Kahn, M.; Mitra, A. J. Org. Chem. 1978, 43: 2923)によって残渣を精製した。純粋な生成物を含有する画分を合わせて、蒸発させた。無水アセトニトリルとの同時蒸発によって微量の残留溶媒を除去して、高真空下での乾燥を続けて、(3a)(6.57g,収率64%)を白色の固形物として得た。1H-NMR (300 MHz, CD3CN) δ 2.20-2.40 (2H, m), 3.28 (2H, d, J = 4.3 Hz), 3.76 (6H, s), 4.01 (1H, dd, J = 3.8, 4.2 Hz), 4.26-4.30 (1H, m), 4.48 (2H, bd, J = 6.1 Hz), 6.11 (1H, t, J = 6.5 Hz), 6.85-7.46 (13H, m), 7.03-7.36 (4H, m), 8.58 (1H, s), 9.01 (1H, t, J = 6.1 Hz)。MS (m/z) C38H36FN3O8, の計算値:681.25;実測値:680.4 [M-H]-
【0107】
[0068] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-((R)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン(3b)。化合物(3b)は、(R)-2-フルフリルメチルアミン(2b)を使用して(3a)に記載のように製造して、白色の固形物として単離した(9.3g,収率94%)。クロマトグラフィーの溶出液は、1%トリエチルアミン/4%メタノール/95%酢酸エチルであった。1H-NMR (CD3CN) δ 1.51-1.57 (1H, m), 1.84-1.94 (3H, m), 2.18-2.38 (2H, m), 3.25-3.52 (4H, m 重複), 3.66-3.93 (3H, m 重複), 3.78 (6H, s), 3.97-4.02 (1H, m), 4.24-4.29 (1H, m), 6.12 (1H, t, J = 6.5), 6.86-7.47 (13H, m), 8.54 (1H, s), 8.83 (1H, bs)。MS (m/z) C36H39N3O9
の計算値:657.27;実測値:656.5 [M-H]-
【0108】
[0069] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-((S)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン(3c)。化合物(3c)は、(S)-2-フルフリルメチルアミン(2c)を使用して(3b)に記載のように製造して、白色の固形物として単離した(9.9g,収率99%)。1H-NMR (CD3CN) δ 1.50-1.59 (1H, m), 1.84-1.95 (3H, m), 2.18-2.40 (2H, m), 3.24-3.50 (4H, m 重複), 3.69-3.97 (3H, m 重複), 3.78 (6H, s), 3.98-4.02 (1H, m), 4.25-4.30 (1H, m), 6.14 (1H, t, J = 6.5), 6.87-7.47 (13H, m), 8.54 (1H, s), 8.84 (1H, bs)。MS (m/z) C36H39N3O9 の計算値:657.27;実測値:656.5 [M-H]-
【0109】
[0070] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(2-(4-モルホリノ)エチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン(3d)。化合物(3d)は、2-(4-モルホリノ)-エチルアミン(2d)を使用して(3a)に記載のように製造して、白色の固形物として単離した(8.2g,収率80%)。クロマトグラフィーの溶出液は、5%メタノール/2%トリエチルアミン/93%ジクロロメタンであった。1H-NMR (CD3CN) δ 2.21-2.39 (2H, m), 2.39-2.41 (4H, m), 2.48 (2H, t, J = 6.2 Hz), 3.27-3.29 (2H, m),
3.41 (2H, dt, J = 5.8, 6.2 Hz), 3.61-3.64 (4H, m), 3.78 (6H, s), 3.98-4.02 (1H,
m), 4.25-4.30 (1H, m), 6.10 (1H, t, J = 6.4), 6.86-7.47 (13H, m), 8.55 (1H, s),
8.79 (1H, bt, J ~6 Hz)。MS (m/z) C37H42N4O9の計算値:686.30;実測値:685.7 [M-H]-
【0110】
[0071] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(2-(N-ベンゾイミダゾロニル)エチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン(3e)。化合物(3e)は、N-ベンゾイミダゾロニル-2-エチルアミン(2e)(CASRN64928-88-7)を使用して(3a)に記載のように製造した。クロマトグラフィーの溶出液は、2%メタノール/1%トリエチルアミン/97%ジクロロメタンであった。純粋な生成物(8.2g,収率74.5%)を黄褐色の固形物として単離した。1H-NMR (CD3CN) δ 2.20-2.36 (2H, m), 3.27-3.29 (2H, m), 3.60 (2H, q, J = 6.5 Hz), 3.758 (3H, s), 3.762 (3H, s), 3.97 (2H, t, J = 6.5 Hz),3.98-4.02 (1H, m), 4.27-4.30 (1H, m), 6.09 (1H, t, J = 6.5 Hz), 6.86-7.48 (13H, m), 6.91-7.10 (4H, m), 8.52 (1H, s), 8.76 (1H, t, J = 6.1 Hz)。MS (m/z) C40H39N5O9の計算値:733.27;実測値 732.0 [M-H]-
【0111】
実施例2.5’-O-DMT-ヌクレオシドCE-ホスホロアミダイト(4a~4e)の合成
[0072] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(4-フルオロベンジルアミノカルボニル)-3’-O-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル]-2’-デオキシウリジン(4a)。DMT-保護化ヌクレオシド(3a)(4.00g,5.9ミリモル)の無水ジクロロメタン(40mL)溶液を乾燥アルゴンの雰囲気下にほぼ-10℃へ冷やした。ジイソプロピルエチルアミン(3.1mL,17.6ミリモル、3当量)を加え、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(1.7mL,7.7ミリモル、1.3当量)の滴下を続けた。この溶液を1時間撹拌して、薄層クロマトグラフィー(シリカゲル60,酢酸エチル/ヘキサン)によって完全な反応を確認した。この反応混合物を氷冷2%重炭酸ナトリウム溶液(200mL)と酢酸エチル(200mL)の間で分配した。有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、濃縮した。この残渣を、1%トリエチルアミン/99%酢酸エチルの移動相を使用するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物を含有する画分を合わせて、真空(<30℃)で蒸発させた。微量の残留クロマトグラフィー溶媒を無水アセトニトリルとの同時蒸発によって除去し、高真空で乾燥させて、(4a)(4.10g,収率80%)を白色の固体フォームとして得た。1H-NMR (CD3CN, 2
つの異性体) δ 1.02-1.16 (12H, m), 2.27-2.57 (2H, m), 2.51/2.62 (2H, 2t, J = 6.0/6.0 Hz), 3.25-3.37 (2H, m), 3.50-3.79 (4H, m 重複), 3.738 (3H, s), 3.742 (3H, s), 4.13/4.16 (1H, 2q, J = 3.5/3.7 Hz), 4.37-4.43 (1H, m), 4.44-4.47 (2H, m), 6.09/6.10 (1H, 2t, J = 6.4/7.1 Hz), 6.83-7.44 (13H, m), 7.01-7.30 (4H, m), 8.58/8.60 (1H, 2s), 8.98 (1H, b, J~5.5 Hz), 9.24 (1H, bs)。31P-NMR (CD3CN) δ 148.01 (s), 148.06 (s)。19F-NMR (CD3CN) δ -117.65 (m)。MS (m/z) C47H53FN5O9P の計算値:881.36;実測値:880.3 [M-H]-
【0112】
[0073] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-((R)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-3’-O-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル]-2’-デオキシウリジン(4b)。化合物(4b)は、(4a)に記載のように製造した。ジアステレオマーのホスホロアミダイトの1:1混合物(3.15g,収率62%)を白色の固体フォームとして単離した。クロマトグラフィーの溶出液は、1%トリエチルアミン/20%ヘキサン/79%酢酸エチルであった。1H-NMR (CD3CN, 2
つの異性体) δ 1.14-1.27 (12H, m), 1.51-1.59 (1H, m), 1.86-1.94 (3H, m), 2.27-2.59 (2H, m), 2.54/2.65 (2H, 2t, J = 6.0/5.7 Hz), 3.27-3.38 (2H, m), 3.44-3.97 (9H, m 重複), 3.782 (3H, s), 3.786 (3H, s), 4.11-4.18 (1H, m), 4.39-4.48 (1H, m), 6.11/6.13 (1H, 2t, J = 5.6/6.1 Hz), 6.96-7.47 (13H, m), 8.58/8.60 (1H, 2s), 8.75 (1H, bt, J~5.4 Hz), 9.36 (1H, bs)。31P-NMR (CD3CN) δ 148.09 (s), 148.13 (s)。MS
(m/z) C45H56N5O10P の計算値:857.38;実測値:856.6 [M-H]-
【0113】
[0074] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-((S)-2-フルフリルメチルアミノ
カルボニル)-3’-O-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル]-2’-デオキシウリジン(4c)。化合物(4c)は、(4b)に記載のように製造した。ジアステレオマーのホスホロアミダイトの1:1混合物(3.74g,収率74%)を白色の固体フォームとして単離した。1H-NMR (CD3CN, 2つの異性体) δ 1.14-1.27 (12H, m), 1.51-1.59 (1H, m), 1.86-1.94 (3H, m), 2.28-2.51 (2H, m), 2.53/2.65 (2H, 2t, J = 6.0/6.0 Hz), 3.25-3.41 (2H, m), 3.44-4.14 (9H, m 重複), 3.783 (3H, s), 3.786 (3H, s), 4.12-4.19 (1H, m), 4.40-4.49 (1H, m), 6.11/6.13 (1H, 2t, J = 6.3/6.3 Hz), 6.86-7.48 (13H, m), 8.58/8.60 (1H, 2s), 8.75 (1H, bt, J~5.4 Hz), 9.36 (1H, bs)。31P-NMR (CD3CN) δ 148.09 (s), 148.13 (s)。MS (m/z) C45H56N5O10P の計算値:857.38;実測値:856.5 [M-H]-
【0114】
[0075] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(2-(4-モルホリノ)エチルアミノカルボニル)-3’-O-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル]-2’-デオキシウリジン(4d)。化合物(4d)は、精製に1%トリエチルアミン/5%無水エタノール/94%酢酸エチルのクロマトグラフィー溶出液を使用すること以外は、(4a)に記載のように製造した。ジアステレオ異性体のホスホロアミダイトの1:1混合物(3.9g,収率75%)を白色の固体フォームとして単離した。1H-NMR (CD3CN, 2つの異性体) δ 1.04-1.19 (12H, m), 2.28-2.59 (2H, m), 2.43-2.47
(6H, m 重複), 2.53/2.64 (2H, 2t, J = 6.2/6.2 Hz), 3.27-3.76 (8H, m 重複), 3.61-3.65 (4H, m), 3.781 (3H, s), 3.789 (3H, s), 4.12-4.19 (1H, m), 4.39-4.49 (1H, m), 6.11/6.13 (1H, 2t, J = 5.2//5.2), 6.86-7.48 (13H, m), 8.58/8.60 (1H, 2s), 8.78
(1H, bt, J~5.3 Hz), 9.78 (1H, bs)。31P-NMR (CD3CN) δ 148.08 (s), 148.11 (s)。MS (m/z) C46H59N6O10P の計算値:886.4;実測値:885.7 [M-H]-
【0115】
[0076] 5’-O-ジメトキシトリチル-5-(2-(N-ベンゾイミダゾロニル)エチルアミノカルボニル)-3’-O-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル]-2’-デオキシウリジン(4e)。化合物(4e)は、精製に1%トリエチルアミン/10%無水メタノール/89%酢酸エチルのクロマトグラフィー溶出液を使用すること以外は、(4a)に記載のように製造した。ジアステレオマーのホスホロアミダイトの1:1混合物(1.6g,収率31%)を白色の固体フォームとして単離した。1H-NMR (CD3CN, 2つの異性体) δ 1.03-1.18 (12H, m), 2.27-2.57 (2H, m),
2.52/2.63 (2H, 2t, J = 6.0/6.0), 3.27-3.37 (2H, m), 3.49-3.80 (6H, m 重複), 3.732 (3H, s), 3.735/3.738 (3H, 2s), 4.00 (2H, bt, J~6.0 Hz), 4.12-4.18 (1H, m), 4.30-4.47 (1H, m), 6.08/6.10 (1H, 2t, J = 6.3/6.3 Hz), 6.85-7.48 (13H, m), 6.93-7.09 (4H, m), 8.57/8.60 (1H, 2s), 8.82/8.83 (1H, 2bt, J~4.3/4.3 Hz), 9.48 (1H, bs)。31P-NMR (CD3CN) δ 148.07 (s), 148.10 (s)。
【0116】
実施例3.3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5a~5e)の合成
[0077] 5-(4-フルオロベンジルアミノカルボニル)-3’-O-アセチル-2’-デオキシウリジン(5a)
【0117】
【化28】
【0118】
[0078] ヌクレオシド(3a)(3.00g,4.4ミリモル)を無水ピリジン(30mL)及び無水酢酸(3mL)の溶液に溶かした。この溶液を一晩撹拌して真空で濃縮して、3’-O-アセチル-ヌクレオシドを得た。残留溶媒を無水トルエン(10mL)との同時蒸発によって除去した。この残渣を無水ジクロロメタン(10mL)に溶かして、ジクロロメタン中3%トリクロロ酢酸(58mL)で処理した。この赤色の溶液を一晩撹拌すると、この時間の間に生成物が結晶化した。このスラリーを-20℃へ冷やし、濾過して、ジエチルエーテルで洗浄した。この残渣を真空で乾燥させて、(5a)(1.10g,収率59%)を灰白色の固形物として得た。1H-NMR (CD3CN) δ 2.07 (3H, s), 2.33-2.38 (1H, m), 2.50-2.52 (1H, m), 3.63-3.64 (2H, m), 4.10 (1H, bdd, J = 3.1, 5.1
Hz), 4.46 (2H, d, J = 6.0 Hz), 5.19-5.26 (2 H, m 重複), 6.15 (1H, t, J = 7.0 Hz), 7.15 (2H, tt, J = 2.2, 9.0 Hz), 7.31-7.38 (2H, m), 8.79 (1H, s), 9.14 (1H, bt, J = 6.1 Hz), 11.95 (1H, bs). 19F-NMR (CD3CN) δ -116.02 (tt, J = 5.5, 9.0 Hz))。MS (m/z) C19H20FN3O7の計算値:421.13;実測値:419.8 [M-H]-
【0119】
[0079] 5-((R)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-3’-O-アセチル-2’-デオキシウリジン(5b)
【0120】
【化29】
【0121】
[0080] 化合物(5b)は、(4b)より、(5a)について記載の手順によって製造して、ジクロロメタン及び酢酸エチルの混合物からの沈殿によって白色の固形物として単離した(1.27g,収率73%)。1H-NMR (CDCl3) δ 1.57-2.02 (4H, m), 2.12 (3H,
s), 2.46-2.50 (2H, m), 3.03 (1H, bs), 3.43-3.64 (2H, m), 3.75-3.97 (2H, m), 3.78-4.10 (3H. m), 4.20-4.21 (1H, m), 5.40-5.42 (1H, m), 6.35 (1H, dd, J = 6.5, 7.7
Hz), 8.91 (1H, t, J = 5.5 Hz), 9.17 (1H, s), 9.44 (1H, bs)。MS (m/z) C17H23N3O8
の計算値:397.15;実測値:396.1 [M-H]-
【0122】
[0081] 5-((S)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-3’-O-アセチル-2’-デオキシウリジン(5c)
【0123】
【化30】
【0124】
[0082] 化合物(5c)は、(4c)より、(5a)について記載の手順によって製造して、ジクロロメタン及びジエチルエーテルの混合物からの沈殿によってやや橙色の固形物として単離した(1.35g,収率77%)。1H-NMR (CDCl3) δ 1.57-2.03 (4H, m),
2.12 (3H, s), 2.47-2.51 (2H, m), 2.98 (1H, bs), 3.40-3.68 (2H, m), 3.78-3.95 (2H, m), 3.90-4.12 (3H. m), 4.20-4.21 (1H, m), 5.39-5.42 (1H, m), 6.33 (1H, dd, J = 6.7, 7.4 Hz), 8.90 (1H, t, J = 5.5 Hz), 9.15 (1H, s), 9.37 (1H, bs)。MS (m/z) C17H23N3O8 の計算値:397.15;実測値:395.9 [M-H]-
【0125】
[0083] 5-(2-(4-モルホリノ)エチルアミノカルボニル)-3’-O-アセチル-2’-デオキシウリジン(5d)
【0126】
【化31】
【0127】
[0084] ヌクレオシド(3d)(1.00g,1.37ミリモル)を無水ピリジン(10mL)及び無水酢酸(1mL)の溶液に溶かした。この溶液を一晩撹拌して真空で濃縮して、3’-O-アセチル-ヌクレオシドを得た。残留溶媒を無水トルエン(10mL)との同時蒸発によって除去した。この残渣を1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(20mL)(Leonard, N. J. Tetrahedron Letters, 1995, 36: 7833)に溶かして、ほぼ50℃で3時間加熱した。DMT基の完全な切断をtlcによって確かめた。この赤色の溶液混合物を、十分に撹拌したメタノール(200mL)へ注ぐことによって反応停止させた。生じる黄色の溶液を真空で濃縮して、残渣を熱い酢酸エチル(20mL)に溶かした。冷やすとすぐに生成物が結晶化して、生じるスラリーを-20℃で維持して、濾過と酢酸エチルでの洗浄を続けた。この3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5d)(0.46g,収率79%)を白色の固形物として単離した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.07 (3H, s), 2.32-2.45 (7H, m 重複), 2.49-2.52 (1H, m), 3.33-3.40 (2H, m), 3.57 (4H, t, J = 4.5 Hz), 3.60-3.63 (2H, m), 4.09 (1H, bdd, J = 3.2, 5.2 Hz), 5.17-5.25 (2H, m), 6.14 (1H, t, J = 7.0 Hz), 8.74 (1H, s), 8.89 (1H, bt, J = 5.4
Hz), 11.90 (1H, bs)。MS (m/z) C18H26N4O8 の計算値:426.18;実測値:425.0 [M-H]-
【0128】
[0085] 5-(2-(1-(3-アセチル-ベンゾイミダゾロニル))エチルアミノカルボニル)-3’-O-アセチル-2’-デオキシウリジン(5e)
【0129】
【化32】
【0130】
[0086] 化合物(5e)は、DMT-切断反応物をメタノールへ注ぐときに生成物をすぐに結晶させること以外は、(5d)に記載のように製造した。このジアセチルヌクレオシド(5e)(0.55g,収率78%)は、濾過によって白色の固形物として単離した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.07 (3H, s), 2.30-2.37 (1H, m), 2.49-2.52 (1H, m), 2.63 (3H, s) 3.33 (1H, bs), 3.55-3.64 (4H, m 重複), 3.99 (2H, t, J = 6.4 Hz), 4.09 (1H, bdd, J = 2.3, 5.2 Hz), 5.15-5.25 (2H, m), 6.13 (1H, dd, J = 6.3, 7.6 Hz), 7.11
(1H, ddd, J = 1.2, 7.6, 7.9 Hz), 7.22 (1H, ddd, J = 1.2, 7.6, 7.9 Hz), 7.33 (1H, dd, J = 0.8, 7.9 Hz), 8.02 (1H, dd, J = 0.8, 8.0 Hz), 8.05 (1H, bs), 8.83 (1H,
bt), 8.71 (1H, s), 11.87 (1H, bs)。MS (m/z) C23H25N5O9 の計算値:515.17;実測値:513.9 [M-H]-
【0131】
実施例4.3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5a~5d)の代替合成法
[0087] 3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5a~d)はまた、出発材料の3’-O-アセチル-5’-O-ジメトキシトリチル-5-ヨード-2’-デオキシウリジン(7)(Vaught, J. D., Bock, C., Carter, J., Fitzwater, T., Otis, M., Schneider, D.,
Rolando, J., Waugh, S., Wilcox, S. K., Eaton, B. E. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 4141-4151)より、代替経路(スキーム2)によって合成した。簡潔には、スキーム2に言及すると、このヨウ化物のパラジウム(II)-触媒化トリフルオロエトキシカルボニル化によって、活性化エステル中間体(8)を得た。アミン(2a~d)(1.3当量)、トリエチルアミン(3当量)、アセトニトリルと(8)の縮合(60~70℃,2~24時間)に続く、5’-O-DMT-保護基の切断(3%トリクロロ酢酸/ジクロロメタン又は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、室温)によって、中間体(3a~d)(スキーム1)より製造される生成物に一致した(5a~d)を得た。
【0132】
【化33】
【0133】
[0088] 3’-O-アセチル-5’-O-ジメトキシトリチル-5-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)-2’-デオキシウリジン(8)。500mLの厚肉ガラス圧力反応器をアルゴンで充たして、3’-O-アセチル-5’-O-ジメトキシトリチル-5-ヨード-2’-デオキシウリジン(7)(15.9g,22.8ミリモル)、無水アセトニトリル(200mL)、トリエチルアミン(7.6mL,54.7ミリモル)、及び2,2,2-トリフルオロエタノール(16.4mL,228ミリモル)を入れた。生じる溶液を激しく撹拌して、100mmHg未満まで2分間の真空化によって脱気した。このフラスコをアルゴンで充たして、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)(175mg,0.46ミリモル)を加えた。生じる黄色の溶液を再び脱気してから、中間ヘッダー(gas manifold)からの一酸化炭素(99.9%)(有毒ガスに注意!)で充たした。1~10psiのCO圧力を維持しながら、この反応混合物を激しく撹拌して、60~65℃で12時間加熱した。冷やした反応混合物を濾過して(有毒ガスに注意)黒色の沈殿を除去して、真空で濃縮した。橙色の残渣をジクロロメタン(120mL)と10%重炭酸ナトリウム(80mL)で分配した。有機層を水(40mL)で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濃縮すると、橙色のフォーム(17g)が残った。この粗生成物は、そのまま使用し得るか又は30%ヘキサン/1%トリエチルアミン/69%酢酸エチルの溶出液でのシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによってさら
に精製して、(8)(12.7g,収率80%)を無色の固体フォームとして得る。1H-NMR (CD3CN)) δ 2.03 (3H, s), 2.37-2.56 (2H, m), 3.36-3.38 (2H, m), 3.78 (6H, s),
4.15-4.19 (1H, m), 4.37-4.55 (2H, m), 5.21-5.26 (1H, m), 6.09 (1H, t, J = 6.1 Hz), 6.84-7.46 (13H, m), 8.53 (1H, s). 19F-NMR (CD3CN) δ -74.07 (t, J = 8.8 Hz)。MS (m/z) C35H33F3N2O10 の計算値:698.21;実測値:697.4 [M-H]-
【0134】
実施例5.ヌクレオシド5’-O-三リン酸塩の合成
[0089] 5-(4-フルオロベンジルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン-5’-O-三リン酸塩(トリス-トリエチルアンモニウム塩)(6a)。この三リン酸塩(6a)は、3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5a)より、ルートヴィヒ及びエックシュタインの手法(Ludwig, J. and Eckstein, F. J. Org. Chem. 1989, 54: 631)によって500マイクロモルスケール(5x)で合成した。この粗製の三リン酸塩生成物は、アンモニア分解と蒸発の後で、一般手順(下記)に記載のように、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。
【0135】
[0090] ヌクレオシド三リン酸のアニオン交換HPLC精製の一般手順。分取用HPLCシステムに取り付けた、Source Q 樹脂(GE Healthcare)充填HPLCカラムを278nmでの検出で使用するアニオン交換クロマトグラフィーによって、ヌクレオシド三リン酸を精製した。この線形溶出勾配は、2種の緩衝液(緩衝液A:10mM重炭酸トリエチルアンモニウム/10%アセトニトリル、及び緩衝液B:1M重炭酸トリエチルアンモニウム/10%アセトニトリル)を、溶出の経過にわたって低含量の緩衝液Bから高含量の緩衝液Bへ周囲温度で操作する勾配で利用した。所望される生成物は、典型的には、このカラムより溶出される最終の物質であって、ほぼ10分~12分の保持時間に及ぶブロードピークとして観測された(早期溶出生成物には、多様な反応副生成物が含まれて、最も重要なものは、ヌクレオシド二リン酸であった)。生成物溶出の間にいくつかの画分を採取した。Waters Symmetry カラム(PN:WAT054215)の付いた Waters 2795 HPLC での逆相HPLCによって画分を分析した。純粋な生成物含有画分(典型的には>90%)をGenevac VC 3000D エバポレータで蒸発させて、無色~淡褐色の樹脂を得た。画
分を脱イオン水に戻して、最終分析用にプールした。ヒューレット・パッカード8452Aダイオードアレイ分光光度計を278nmで使用する分析によって、生成物の定量を実施した。生成物の収量を式:A=εCL(ここでAは、UV吸光度であり、εは、推定吸光係数であって、Lは、路程(1cm)である)より計算した。
【0136】
[0091] 粗生成物(6a)をほぼ5mLの緩衝液Aに溶かした(表1:分取用HPLC条件1)。それぞれの精製注入は、この溶液のほぼ1mLの濾過アリコートを Resource Q 6mLカラム(GE Healthcare 製品コード:17-1179-01)を取り付けた486検出器付き Waters 625 HPLC へ注入して、0%~100%緩衝液Bの移動相勾配によ
り12mL/分で50分溶出することとした。(6a)[εest.13,700cm-1-1]では、単離した精製生成物は、130マイクロモル(収率26%)であった。1H-NMR (D2O) δ1.15 (27H, t, J = 7.3 Hz), 2.32-2.37 (2H, m), 3.07 (18H, q, J = 7.3 Hz), 4.06-4.17 (3H, m 重複), 4.42 (2H, bd, J~0.7 Hz), 4.49-4.53 (1H, m), 4.70
(>7H, bs, HOD), 6.12 (1H, t, J = 6.8 Hz), 6.96-7.26 (4H, m), 8.45 (1H, s). 19F-NMR (D2O) δ -116.18 (m)。31P-NMR (D2O) δ -10.58 (d, J = 20 Hz), -11.45 (d, J =
20 Hz), -23.29 (t, J = 20 Hz)。MS (m/z) C17H21FN3O15P3の計算値:619.02;実測値
:618.0 [M-H]-
【0137】
【表1】
【0138】
[0092] 5-((R)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン-5’-O-三リン酸塩(トリス-トリエチルアンモニウム塩)(6b)。この三リン酸塩(6b)は、3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5b)より、(6a)について記載のように合成した。この粗生成物(6b)は、196mLの Source 15Q 樹脂(GE
Healthcare 製品コード:17-0947-05)を充填した Waters AP-5 カラム(Waters PN:WAT023331,50mmx100mm)を使用する Waters 2489 検出
器付きの Waters 2767 分取用システムへの単回注入で精製した。上記と同じ緩衝液を使
用したが、溶出勾配は、50mL/分で90分の溶出において25%~80%の緩衝液Bへ変更した(表2:分取用HPLC条件2)。C18 HPLCカラムで二回目の精製を実施して、残留不純物を除去した(表4:分取用HPLC条件4)。(6b)[εest.10,200cm-1-1]では、単離した精製生成物は、325マイクロモル(収率65%)であった。1H-NMR (D2O) δ1.17 (27H, t, J = 7.3 Hz), 1.49-1.63 (1H, m),
1.77-2.02 (3H, m), 2.34-2.39 (2H, m), 2.85-3.83 (5H, m 重複), 3.08 (18H, q, J =
7.3 Hz), 4.01-4.19 (3H, m 重複), 4.52-4.56 (1H, m), 4.70 (>7H, bs, HOD), 6.15 (1H, t, J = 6.8 Hz), 8.48 (1H, s)。31P-NMR (D2O) δ -10.50 (d, J = 20 Hz), -11.51
(d, J = 20 Hz), -23.25 (t, J = 20 Hz)。MS (m/z) C15H24FN3O16P3の計算値:595.04
;実測値:594.1 [M-H]-
【0139】
【表2】
【0140】
[0093] 5-((S)-2-フルフリルメチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン-5’-O-三リン酸塩(トリス-トリエチルアンモニウム塩)(6c)。この三リン酸塩(6c)は、3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5c)より、(6a)について記載のように合成した。この粗生成物(6c)は、196mLの Source 15Q 樹脂(GE
Healthcare 製品コード:17-0947-05)を充填した Waters AP-5 カラム(Waters PN:WAT023331,50mmx100mm)を使用する Waters 2489 検出
器付きの Waters 2767 分取用システムへの単回注入で精製した。上記と同じ緩衝液を使
用したが、溶出勾配は、50mL/分で90分の溶出において25%~80%の緩衝液Bへ変更した(表2:分取用HPLC条件2)。C18 HPLCカラムで二回目の精製を実施して、残留不純物を除去した(表4:分取用HPLC条件4)。(6c)[εest.10,200cm-1-1]では、単離した精製生成物は、255マイクロモル(収率51%)であった。1H-NMR (D2O) δ1.17 (27H, t, J = 7.3 Hz), 1.49-1.63 (1H, m),
1.78-2.01 (3H, m), 2.34-2.39 (2H, m), 2.85-3.82 (5H, m 重複), 3.09 (18H, q, J =
7.3 Hz), 4.01-4.19 (3H, m 重複), 4.52-4.56 (1H, m), 4.70 (>7H, bs, HOD), 6.15 (1H, t, J = 6.7 Hz), 8.48 (1H, s)。31P-NMR (D2O) δ -10.60 (d, J = 20 Hz), -11.42
(d, J = 20 Hz), -23.25 (t, J = 20 Hz)。MS (m/z) C15H24FN3O16P3の計算値:595.04
;実測値:594.1 [M-H]-
【0141】
[0094] 5-(2-(4-モルホリノ)エチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン-5’-O-三リン酸塩(ビス-トリエチルアンモニウム塩)(6d)。この三リン酸塩(6d)は、3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5d)より、(6a)について記載のように合成した。この粗生成物(6d)は、(6a)で使用したのと同じ機器及び緩衝液で精製したが、勾配は、生成物の分割を改善するために、50分の溶出の間に15%~60%の緩衝液Bを操作するように変更した(表3:分取用HPLC条件3)。(6d)[εest.10,200cm-1-1]では、単離した精製生成物は、54マイクロモル(収率11%)であった。1H-NMR (D2O) δ1.17 (18H, t, J = 7.3 Hz), 2.37-2.41 (2H, m), 2.91-2.98 (2H, m), 3.09 (12H, q, J = 7.3 Hz), 3.20-3.27 (4H, m), 3.87-3.90 (4H, m), 3.63-3.68 (2H, m), 4.10-4.18 (3H, m 重複), 4.56-4.60 (1H, m), 4.70 (>7H, bs, HOD), 6.15 (1H, bt, J = 6.3 Hz), 8.48 (1H, s)。31P-NMR (D2O) δ -9.99 (d, J = 21 Hz), -11.90 (d, J = 20 Hz), -23.19 (t, J = 20 Hz)。MS (m/z) C16H27N4O16P3の計算値:624.06;実測値 623.1 [M-H]-
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
[0095] 5-(2-(N-ベンゾイミダゾロニル)エチルアミノカルボニル)-2’-デオキシウリジン-5’-O-三リン酸塩(ビス-トリエチルアンモニウム塩)(6e)。この三リン酸塩(6e)は、3’-O-アセチル-ヌクレオシド(5e)より、(6a)について記載のように合成した。この粗生成物(6e)は、(6a)で使用したのと同じ機器及び緩衝液で精製したが、勾配は、生成物の分割を改善するために、50分の溶出の間に15%~60%の緩衝液Bを操作するように変更した(表3:分取用HPLC条件3)。(6e)[εest.13,700cm-1-1]では、単離した精製生成物は、101マイクロモル(収率20%)であった。1H-NMR (D2O) δ1.17 (18H, t, J = 7.3
Hz), 2.17-2.36 (2H, m), 3.09 (12H, q, J = 7.3 Hz), 3.60-3.73 (2H, m), 4.01 (2H,
t, J = 5.4 Hz), 4.03-4.15 (3H, m), 4.45-4.50 (1H, m), 4.70 (>7H, bs, HOD), 6.04
(1H, t, J = 6.6 Hz), 6.95-7.12 (4H, m), 8.02 (1H, s)。31P-NMR (D2O) δ -10.35 (d, J = 20 Hz), -11.40 (d, J = 20 Hz), -23.23 (t, J = 20 Hz)。MS (m/z) C19H24N5O16P3の計算値:671.04;実測値 670.1 [M-H]-
【0145】
[0096] 上述の態様及び実施例は、例としてのみ企図されている。どの特別な態様も、実施例も、そして特別な態様又は実施例の要素も、特許請求項のいずれもの決定的、必須的、又は本質的な要素又は特徴として解釈してはならない。さらに、本明細書に記載のどの要素も、「本質的」又は「決定的」と明確に記載されなければ、付帯の特許請求項の実施に必須ではない。開示の態様に対しては、付帯の特許請求項によって規定される、本出願の範囲より逸脱することなく、様々な改変、修飾、代替、及び他の変更を施すことができる。実施例が含まれる本明細書は、制限的なやり方ではなくて、例示的なやり方で考慮されるべきなので、そのようなすべての変更態様及び代替態様は、本出願の範囲内に含まれると企図される。従って、本出願の範囲は、上記に示した実施例によってではなくて、付帯の特許請求項とその法的等価物によって決定されるべきである。例えば、方法又はプロセスの特許請求項のいずれでも引用される工程は、どの実行可能な順序で実行してもよく、態様、実施例、又は特許請求項のいずれでも提示される順序に限定されるものではない。