(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】歩行支援機
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
A61H3/04
(21)【出願番号】P 2017100429
(22)【出願日】2017-05-20
【審査請求日】2020-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591117413
【氏名又は名称】株式会社菊池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180080
【氏名又は名称】坂本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知正
(72)【発明者】
【氏名】浅野 滋
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀伸
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010863(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3160724(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0261569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歩行を支援するための歩行支援機であって、
使用者が着座するためのサドルと、
前記サドルを、その一端部で支持するサドルフレームと、
前記サドルフレームの他端部で回動自在に支持される
1つのメインホイールとを備え、
前記サドルフレームにより支持される前記サドルの支持点が、前記メインホイールが回動する仮想の回動平面上において、前記メインホイールの回動軸の上方であって、かつ、前記メインホイールの回動軸を通る垂直線に対し前方側に偏位した位置にあり、
前記回動平面を挟み、前記メインホイールの接地点よりも前方に位置する一対のキャスタと、
垂直方向に延び互いに離間する左右一対のキャスタフレームであって、該キャスタフレームの各上端部に、
垂直に立設されるグリップ部をそれぞれ設け、該キャスタフレームの各下端部に前記キャスタをそれぞれ設けた左右一対のキャスタフレームと、
前方側が開放して平面視U字状をなす上フレームであって、該上フレームの各前端部に、互いに離間する前記一対のキャスタフレームの上部がそれぞれ接合する上フレームと、
前記サドルフレームから延設され前記上フレームの後部に接合して該上フレームを支持する連結フレームと
を備えた、歩行支援機。
【請求項2】
使用者が前記サドルに着座した状態で該使用者の体重を免荷しつつ、該使用者が二足で歩行面上を漕ぐ動作をすることで移動が可能とされている、請求項1に記載の歩行支援機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行を支援するための歩行支援機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超高齢化社会の訪れとその深刻化に伴い、高齢者に対する支援が必要不可欠となっている。高齢者が寝たきりや要介護状態に陥る3大要因の一つとして運動器の衰えがある。また、高齢者における転倒・転落を原因とする死亡者数は交通事故による死亡者数よりも多いという統計もある。これらの事故を未然に防止するためには日々の運動が不可欠となり、歩行を支援する技術が必要となる。
【0003】
歩行を支援する技術として、様々な技術が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。特許文献1に開示の装置は、立体状の昇降機能を有するフレームとフレーム下部に設けられた移動機構(前輪、中間輪、後輪)を有し、使用者がフレーム上部に覆い被さるように荷重を預け移動するようになっている。特許文献2に開示の技術では、下部に4つの車輪を設けたフレームに、リンク機構で昇降自在に設けられた座部が設けられ、車椅子と歩行支援機を両立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-299420号公報
【文献】特開2004-8464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高齢者等の外出を支援する機器として、シルバーカーや電動車椅子などがあり、上述のように各種の技術が提案されている。しかし、電動車椅子のように動力を持った移動支援機器では、移動範囲が広がる利点はあるが、自身の筋肉を利用した移動でないため、運動器の機能維持・向上の観点では、必ずしも全ての場合に勧められるわけではない。また、コストの観点でも気軽に利用できない。一方、杖などのような安価な歩行支援具もあるが、肉体にかかる負荷を低減する効果は低いとうい課題がある。特許文献1の技術は、基本的にはシルバーカー(手押し車)と同様の構造であって、着座する部分(下から支える部分)がなく、使用者がフレーム上部に覆い被さるように荷重を預け移動する構成であるため、歩行姿勢が不自然になってしまい、また、移動の自由度が低く又使用者の上肢側の負担が大きいとういう課題がある。特許文献2の技術は、車椅子の機能を前提としているため、構造が複雑になり、そのような機能を必要としない人に取っては無駄が多く、また、機動性に欠け、気軽に利用できないとい課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであって、運動器に衰えや障害がある使用者であっても、健常者同様の歩行姿勢や歩行動作が可能となる等の歩行支援技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、使用者の歩行を支援するための歩行支援機であって、使用者が着座するためのサドルと、前記サドルを、その一端部で支持するサドルフレームと、前記サドルフレームの他端部で回動自在に支持されるメインホイールとを備え、前記サドルフレームにより支持される前記サドルの支持点が、前記メインホイールが回動する仮想の回動平面上において、前記メインホイールの回動軸の上方であって、かつ、前記メインホイールの回動軸を通る垂直線に対し一側に偏位した位置にあり、前記回動平面を挟み、前記メインホイールに対して前記サドルの支持点が偏位する側に少なくとも一対のキャスタが更に設けられている歩行支援機である。
【0008】
上記構成の歩行支援機は、使用者が把持するためのグリップ部を有するグリップフレームと、前記グリップフレームが取り付けられ一側が開放してU字状をなす上フレームと、前記サドルフレームから延設され前記上フレームに連結して該上フレームを支持する連結フレームと、前記キャスタをその下端部に設ける一対のキャスタフレームとを備え、前記一対のキャスタフレームの上端部が前記上フレームの各開放端部にそれぞれ連結しているものでもよい。
【0009】
上記構成の歩行支援機は、使用者が把持するためのグリップ部をその上端部に有し前記キャスタをその下端部に設ける一対のキャスタフレームと、一側が開放してU字状をなしその各開放端部に前記一対のキャスタフレームがそれぞれ連結する上フレームと、前記サドルフレームから延設され前記上フレームに連結して該上フレームを支持する連結フレームとを備えているものでもよい。
【0010】
上記構成の歩行支援機は、使用者が移乗するために、前記一対のキャスタフレームが離間して開放していることが好ましい。
【0011】
上記構成の歩行支援機は、使用者が前記サドルに着座した状態で該使用者の体重を免荷しつつ、該使用者が二足で歩行面上を漕ぐ動作をすることで移動が可能とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歩行支援機によれば、サドルに着座した使用者の体重を免荷しつつ、メインホイール及びキャスタに体重を分散させ、自然な二足歩行動作を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態による前向き移乗タイプの歩行支援機の側面図である。
【
図3】
図1の歩行支援機による二足歩行動作を説明するための図である。
【
図4】本発明の第二実施形態による後向き移乗タイプの歩行支援機の側面図である。
【
図6】
図4の歩行支援機による二足歩行動作を説明するための図である。
【0014】
以下、本発明に係る歩行支援機の実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態による、前向き移乗タイプの歩行支援機10の側面図である。また、
図2は、その歩行支援機10の斜視図である。歩行支援機10は、使用者Uが着座するためのサドル20と、サドル20の下部を支持するサドルフレーム30と、サドルフレーム30の他端部で回動自在に支持されるメインホイール40と、メインホイール40の横への傾倒又は転倒を防止するための一対のキャスタ80を備えたサポートフレーム部とを備えている。サポートフレーム部を含めた歩行支援機10の全体の大きさは、例えば、高さ約100cm×約幅80cm×長さ約80cmである。
【0016】
サドルフレーム30は、その一端部がサドル20に接合するポスト31と、ポスト31の下部から二股に延びるフォーク32とが、管材により一体に形成されたフレーム部材である。サドルフレーム30のフォーク32先端部に、メインホイール40の回動軸(ハブ)が軸支されている。サドルフレーム30の素材としては、例えば、アルミニウム合金若しくはスチールなどの金属又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂を用いることができる。
【0017】
メインホイール40は、歩行面に外周が接した状態で回動することにより、歩行面上を円滑に移動することができる要素である。また、メインホイール40は、その場での旋回を容易かつ円滑にするということに鑑みて、ユニサイクルホイール(一輪車)であることが好ましい。
【0018】
この歩行支援機10においては、メインホイール40が回動する回動平面上において、サドルフレーム30により支持されるサドル20の支持点31aが、メインホイール40の回動軸40aの上方であって、かつ、メインホイール40の回動軸40aを通る垂直線に対し後方側に偏位した支持位置にある。ここで、メインホイール40の「回動平面」とは、回動軸40aに直交し、メインホイール40のホイール幅における中心を通る仮想の垂直平面をいう。そして、サドル20が前記支持位置となるように、所定角度(キャスタ角)を有して後方に傾倒したサドルフレーム30を介して、サドル20がメインホイール40の回動軸40aに連結されている。サドル20がメインホイール40に対して若干後方に傾いて設置されているので、使用者Uが歩行支援機10の後方から前向きで移乗するのを容易にしている。
【0019】
また、歩行支援機10において、一対のキャスタ80は、メインホイール40に対してサドル20が偏位する(傾く)後方側であって、メインホイール40の前記回動平面を挟む左右に配置されている。このような構成により、サドル20に着座した使用者Uの体重を免荷しつつ、メインホイール40及び2つのキャスタ80に体重を分散させることができ、歩行支援機10の接地を安定させることができる。
【0020】
また、メインホイール40は、ユニサイクルホイールであることから、サドル20に着座して跨る使用者Uの足がメインホイール40に干渉しない。また、メインホイール40と歩行面とが1点で接するため、そこを中心に旋回を円滑に行うことができる。したがって、メインホイール40と使用者Uの足との干渉の観点及び所望の旋回性を確保できる構成であれば、メインホイール40は、ユニサイクルホイールに限定されない。
【0021】
キャスタ80を備えるサポートフレーム部は、複数の管材を要素とする枠体として形成される。サポートフレーム部を構成する管材の素材としては、例えば、アルミニウム合金若しくはスチールなどの金属又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを用いることができる。
【0022】
サポートフレーム部の構造を更に詳細に説明する。前向き移乗タイプの歩行支援機10の場合、使用者Uが歩行支援機10の後方から移乗可能とするために、サポートフレーム部の後方が開放している。
【0023】
より詳細に、サポートフレーム部は、一対のグリップフレーム51、上フレーム52、2本の連結フレーム53及び一対のキャスタフレーム54を備えている。
【0024】
グリップフレーム51は、直角に曲げ加工がされた管部材からなり、垂直方向に延びるグリップフレーム垂直部511と、水平方向に延びるグリップフレーム水平部512とを有している。グリップフレーム垂直部511の上端部に、歩行支援機10に搭乗する使用者Uが手で把持するためのグリップ部51aが設けられている。
【0025】
上フレーム52は、上から見た場合に略U字状を呈する管部材からなる。すなわち、上フレーム52は、上フレーム前部521と、上フレームサイド部522、522を有するように略U字状に曲げ加工されて形成される。上フレームサイド部522、522は、使用者Uの両腕が届く程度の幅だけ離間し、その後方側が開放している。
【0026】
上フレームサイド部522の前方部分には、グリップフレーム51のグリップフレーム水平部512が溶接等により接合している。これにより、上フレーム前部521と上フレームサイド部522とが連結する上フレーム52の屈曲部から、グリップフレーム垂直部511が垂直上向きに延びるようにして、グリップフレーム51が上フレーム52に取り付けられている。なお、グリップフレーム51は、グリップフレーム垂直部511が上フレーム52の屈曲部から若干上前向きに傾斜する態様で、上フレーム52に取り付けられてもよい。
【0027】
一対の連結フレーム53は、それぞれ90度以上の鈍角に曲げ加工がされた管部材からなる。連結フレーム53、53は、互いに平行にサドルフレーム30から延設され、他端部が上フレーム52の上フレーム前部521に連結して、上フレーム52を支持している。
【0028】
キャスタフレーム54は、概ね垂直に延びる管部材からなり、その下端部にキャスタ80が取り付けられている。キャスタ80は、その小さな転がり摩擦抵抗により回動自在であり、また各車軸が垂直軸まわりに旋回して進行方向を向くように操舵される。なお、キャスタ80は、ストッパ機能を有していることが好ましい。
【0029】
一対のキャスタフレーム54は、歩行支援機10において使用者Uが移乗可能な程度の幅だけ左右に離間した2本の管部材から構成される。キャスタフレーム54の上端部は、上フレーム52の上フレームサイド部522の後端部に溶接等により接合している。キャスタフレーム54と上フレームサイド部522とは略直交して接合されている。
図1及び2に示すように、キャスタフレーム54と上フレームサイド部522との間に掛け渡して、補強フレーム55を設けることが好ましい。また、キャスタフレーム54の下部を連結するキャスタフレーム連結部541を設けてもよい。キャスタフレーム連結部541は、使用者Uが歩行支援機10に移乗する際の妨げにならないように、
図2に示すように、その中央部が歩行面に向けて若干湾曲していることが好ましい。
【0030】
なお、図示はしないが、上フレームサイド部522の上に、適宜のひじ掛け部を設けてもよい。
【0031】
このような構成の歩行支援機10を利用する場合、使用者Uは、上フレーム52及びキャスタフレーム54の後方の開放部分から前向きで移乗することができる。上フレーム52の内部に進入した使用者Uは、中央のメインホイール40を跨いでサドル20に着座することができる。
【0032】
サドル20に着座した使用者Uは、
図3に示すように、歩行面S(床面、地面)を足で漕ぐ動作で、前後方向に移動することができる。すなわち、「前に出した足に体重をかけ、後ろ足で地面を蹴って前に降り出す動作」である二足歩行の動作を行うことができる。また、使用者Uは、自分の足を使って、メインホイール40を中心にその場で旋回(向きを変える)ことができる。したがって、足などの運動器に衰えや障害がある使用者Uであっても、健常者同様の歩行姿勢や歩行動作を支援することができ、運動器の機能向上を効果的に実現できる。また、着座により体重免荷も同時に機能しているため、使用者Uは長時間使用しても疲れが少なくてすみ、一層の機能向上が期待できる。
【0033】
また、サドル20の高さが調整可能である場合、使用者Uのそのときの歩行能力によって調整可能となり、体重免荷の程度を調整することができる。その結果、例えば、リハビリ時の負荷を調整することができる。
【0034】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態による、後向き移乗タイプの歩行支援機11の側面図である。また、
図5は、その歩行支援機11の斜視図である。歩行支援機11は、使用者Uが着座するためのサドル20と、サドル20の下部を支持するサドルフレーム30と、サドルフレーム30の他端部で回動自在に支持されるメインホイール40と、メインホイール40の横への傾倒又は転倒を防止するための一対のキャスタ80を備えたサポートフレーム部とを備えている。
【0035】
例えば欧米においては、「椅子に座る」習慣が根付いており、そのような習慣や文化を持つ使用者にとっては、後向きでの移乗動作がむしろ自然の場合がある。そこで、第二実施形態による歩行支援機11は、使用者が歩行支援機11に前方から後向きで移乗可能とするために、サポートフレーム部の前方が開放している構造を採用している。
【0036】
なお、第二実施形態による歩行支援機11のサドル20及びメインホイール40その他の構造は、第一実施形態による歩行支援機10のそれぞれと同様である。そのため、
図4~6において、第一実施形態と共通又は対応する構成要素には同一の符号が付され、これらの構造の詳細は、第一実施形態における説明が参照される。
【0037】
この歩行支援機11においては、メインホイール40が回動する回動平面上において、サドルフレーム30により支持されるサドル20の支持点31aが、メインホイール40の回動軸40aの上方であって、かつ、メインホイール40の回動軸40aを通る垂直線に対し前方側に偏位した支持位置にある。そして、サドル20が前記支持位置となるように、所定角度(キャスタ角)を有して前方に傾倒したサドルフレーム30を介して、サドル20がメインホイール40の回動軸40aに連結されている。サドル20がメインホイール40に対して若干前方に傾いて設置されているので、使用者Uが歩行支援機11の前方から後向きで移乗するのを容易にしている。
【0038】
また、歩行支援機11において、一対のキャスタ80は、メインホイール40に対してサドル20が偏位する(傾く)前方側であって、メインホイール40の前記回動平面を挟む左右に配置されている。このような構成により、サドル20に着座した使用者Uの体重を免荷しつつ、メインホイール40及び2つのキャスタ80に体重を分散させることができ、歩行支援機11の接地を安定させることができる。
【0039】
また、メインホイール40は、ユニサイクルホイールであることから、サドル20に着座して跨る使用者Uの足がメインホイール40に干渉しない。また、メインホイール40と歩行面とが1点で接するため、そこを中心に旋回を円滑に行うことができる。したがって、メインホイール40と使用者Uの足との干渉の観点及び所望の旋回性を確保できる構成であれば、メインホイール40は、ユニサイクルホイールに限定されない。
【0040】
キャスタ80を備えるサポートフレーム部は、複数の管材を要素とする枠体として形成される。サポートフレーム部を構成する管材の素材としては、例えば、アルミニウム合金若しくはスチールなどの金属又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを用いることができる。
【0041】
次に第二実施形態による歩行支援機11のサポートフレーム部の構造を更に詳細に説明する。後向き移乗タイプの歩行支援機11の場合、使用者Uが歩行支援機11の前方から移乗可能とするために、サポートフレーム部の前方が開放している。
【0042】
より詳細に、サポートフレーム部は、一対のキャスタフレーム61、上フレーム62及び2本の連結フレーム63を備えている。
【0043】
一対のキャスタフレーム61は、歩行支援機11において使用者Uが移乗可能な程度の幅だけ左右に離間した2本の管部材から構成される。具体的には、キャスタフレーム61は、キャスタフレーム傾斜部611と、キャスタフレーム傾斜部611の下部で屈曲し下方に延びるキャスタフレーム下縦部612とを有している。キャスタフレーム下縦部612の下端部にはキャスタ80が取り付けられている。キャスタ80は、その小さな転がり摩擦抵抗により回動自在であり、また各車軸が垂直軸まわりに旋回して進行方向を向くように操舵される。なお、キャスタ80は、ストッパ機能を有していることが好ましい。キャスタフレーム61の上端部には、歩行支援機11に搭乗する使用者Uが手で把持するためのグリップ部61aが設けられている。
【0044】
キャスタフレーム61に連結する上フレーム62は、上から見た場合に略U字状を呈する管部材からなる。すなわち、上フレーム62は、上フレーム後部621と、上フレームサイド部622、622を有するように略U字状に曲げ加工されて形成される。上フレームサイド部622、622は、使用者Uの両腕が届く程度の幅だけ離間し、その前方側が開放している。
【0045】
上フレームサイド部622の前端部には、キャスタフレーム61の上部(詳細には、グリップ部61aの近接下部)が溶接等により接合している。
図4及び5に示すように、キャスタフレーム61と上フレームサイド部622との間に掛け渡して、補強フレーム64を設けることが好ましい。なお、図示はしないが、一対のキャスタフレーム61、61の下部を連結するキャスタフレーム連結部を設けてもよい。キャスタフレーム連結部は、使用者Uが歩行支援機11に移乗する際の妨げにならないように、その中央部が歩行面に向けて若干湾曲していることが好ましい。
【0046】
一対の連結フレーム63は、それぞれ90度以上の鈍角に曲げ加工がされた管部材からなる。連結フレーム63、63は、互いに平行にサドルフレーム30から延設され、他端部が上フレーム62の上フレーム後部621に連結して、上フレーム62を支持している。
【0047】
また、図示はしないが、上フレームサイド部622の上に、適宜のひじ掛け部を設けてもよい。
【0048】
このような構成の歩行支援機11を利用する場合、使用者Uは、上フレーム62及びキャスタフレーム61の前方の開放部分から、後向きで歩行支援機11に移乗することができる。
図6に示すように、サドル20に着座した使用者Uは、歩行面S(床面、地面)を足で漕ぐ動作で、前後方向に移動することができる。また、使用者Uは、自分の足を使って、メインホイール40を中心にその場で旋回(向きを変える)ことができる。したがって、足などの運動器に衰えや障害がある使用者Uであっても、健常者同様の歩行姿勢や歩行動作を支援することができ、運動器の機能向上を効果的に実現できる。
【0049】
以上、実施形態として説明した歩行支援機10、11は、従来よりも簡素な構成でありながら、機動性が高く、使用者が気軽に利用できる等のメリットがある。
【符号の説明】
【0050】
10、11 歩行支援機
20 サドル
30 サドルフレーム
31 ポスト
31a 支持点
32 フォーク
40 メインホイール
40a 回動軸
51 グリップフレーム
51a グリップ部
52 上フレーム
53 連結フレーム
54 キャスタフレーム
55 補強フレーム
61 キャスタフレーム
61a グリップ部
62 上フレーム
63 連結フレーム
64 補強フレーム
80 キャスタ
S 歩行面
U 使用者