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特許7025850農業用ハウス内の地盤構造及び前記地盤構造の施工方法
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  • 特許-農業用ハウス内の地盤構造及び前記地盤構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】農業用ハウス内の地盤構造及び前記地盤構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
A01G9/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017120977
(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2019004710
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】家坂 正史
(72)【発明者】
【氏名】與那覇 耕伸
(72)【発明者】
【氏名】石垣 竜一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 博重
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-113423(JP,A)
【文献】特開2002-339341(JP,A)
【文献】特開2009-185497(JP,A)
【文献】特開2014-122537(JP,A)
【文献】特開平11-100803(JP,A)
【文献】特開平09-266730(JP,A)
【文献】特開2013-117089(JP,A)
【文献】特開平06-280267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内の地盤構造であって、
農業用ハウス内の基礎地盤に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材の展張されたセル内に充填材を有するハニカム構造体による層を含む農業用ハウス内の地盤構造。
【請求項2】
前記ハニカム構造体による層の下に不織布による層を含む請求項1記載の農業用ハウス内の地盤構造。
【請求項3】
前記不織布が排水溝まで略水平に延設している請求項2記載の農業用ハウス内の地盤構造。
【請求項4】
前記充填材が農業に適した土壌である請求項1から3のいずれかに記載の農業用ハウス内の地盤構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の地盤構造の上に、畝が載置されてなる農業用ハウス内の地盤構造。
【請求項6】
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内に、複数枚ストリップ材を一定間隔の結合部位にて結合した多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展帳して充填材を充填してなるハニカム構造体を施工する施工方法であって、
農業用ハウスの躯体及び躯体を支える基礎を侵さないように当該農業用ハウスの躯体の内側を設置する前記ハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削し、
当該レベルにハニカム状立体補強材を展張してセルを形成して設置し、
当該展張したハニカム状立体補強材の当該セルに充填材を充填してハニカム構造体を形成する農業用ハウス内の地盤構造の施工方法。
【請求項7】
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内に、複数枚ストリップ材を一定間隔の結合部位にて結合した多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展帳して充填材を充填してなるハニカム構造体を施工する施工方法であって、
農業用ハウスの躯体及び躯体を支える基礎を侵さないように当該農業用ハウスの躯体の内側を設置する前記ハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削し、
当該レベルに不織布を敷設し、
当該不織布の上にハニカム状立体補強材を展張してセルを形成して設置し、
当該展張したハニカム状立体補強材の当該セルに充填材を充填してハニカム構造体を形成する農業用ハウス内の地盤構造の施工方法。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載の工程を経て前記ハニカム構造体を形成後、当該ハニカム構造体の上に土を搬入して畝を形成する工程を含む、農業用ハウス内の地盤構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の地盤構造および前記地盤構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業生産者の高齢化や農業の効率化のために農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使うケースが増えている。農業用ハウス内で農業機械を運転した際に農業機械の自重による轍掘れが発生し、農業機械をうまく活用することができない。このため、ハウス内の畝と畝の間の谷間部に、コンクリート板を敷き詰めたり、不織布等を敷設したりする対応が取られている。一方、育苗ハウスや水耕栽培のハウスなどの土壌部分を露出する必要のないハウスの場合には、直接地面にコンクリートを打設し、コンクリート製の土間をつくってしまう場合もある。
【0003】
畝と畝の間の谷間部にコンクリートブロックを敷き詰めた場合、下地盤の沈み方の差によりコンクリート板に不陸が発生したり、農業機械の自重でコンクリート板自体が割れてしまうというトラブルが多発し、またコンクリート板を敷き詰める際に人力による労力がかかった。畝と畝の間の谷間部に不織布等を敷き詰めた場合には、農業機械の自重や車輪等の動きのために不織布等がよれたり、破れたりすることがあった。水を多く含む土壌に於いては不織布が常に水を吸いあげ、畝と畝の間の谷間部分が水浸しになるケースがあった。
【0004】
さらに、直接地面にコンクリートを打設し、コンクリート製の土間をつくってしまった場合には、コンクリート土間が太陽熱を吸収してしまい、ハウス内が高温になるという問題があった。また、一度コンクリートを打設してしまうと、もとの土壌にもどすことが大変難しいという問題があった。さらに、ハウス内にコンクリートを打設すると、当該ハウスが建つ土地が農地扱いにならずに宅地並みに課税されるケースも見られた。
【0005】
特許文献1においては、トラクタ、耕耘機等の農作業車が出入りすることのできる、農業用温室、農業用温室の敷居材、農業用温室の施工方法が開示されているが、農業用温室の入口に鴨居材を用いて温室を構成する入口の下部レールの保護のみに主眼が置かれており、温室内の農作業車の轍掘れ等の問題については検討されていない。
【0006】
【文献】特開2011-24533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使う場合に農業機械による轍掘れを防止する農業用ハウス内の地盤構造及び地盤構造の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、農業用ハウス内の地盤構造に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展張し土砂、砕石や農業に適した土壌などの充填材を充填してなるハニカム構造体を用いることで、農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使う場合に農業機械による轍掘れを防止することができることを見いだした。
【0009】
請求項1記載の発明は、
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内の地盤構造であって、
農業用ハウス内の基礎地盤に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材の展張されたセル内に充填材を有するハニカム構造体による層を含む農業用ハウス内の地盤構造である。
【0010】
農業用ハウスの支柱の内側の地盤部分にハニカム状立体補強材を展張してセル状にしたうえで、当該セル部分に土砂、砕石や農業に適した土壌などの充填材を充填して、ハニカム構造体からなる地盤を形成することが本発明の要旨である。当該ハニカム構造体の地盤拘束効果により農業用ハウス内の地盤が強固となり、農業用ハウス内で農業機械を運転しても轍掘れなどの地盤の乱れが生じない。
【0011】
請求項2記載の発明は、
前記ハニカム構造体による層の下に不織布による層を含む請求項1記載の農業用ハウス内の地盤構造である。
【0012】
農業用ハウス内の当該ハニカム構造体の層の下に、不織布による層を設けることで、農業機械の荷重をハニカム構造体の層が受け、さらにその下の不織布による層が受けることで、地盤に不均一に荷重がかかることがない。さらに、不織布による層が排水層の役割をするため、上に載置されたハニカム構造体層に水が残らず、より安定になる。
【0013】
請求項3記載の発明は、
前記不織布が排水溝まで略水平に延設している請求項2記載の農業用ハウス内の地盤構造である。
【0014】
農業用ハウス内の当該ハニカム構造体の層の下の不織布による層は、排水溝まで延設していると、当該ハニカム構造体に溜まる水を効率よく排水することができ、好適である。
【0015】
請求項4記載の発明は、
前記充填材が農業に適した土壌である請求項1から3のいずれかに記載の農業用ハウス内の地盤構造である。
【0016】
ハニカム状立体補強材を展張してセル状にしたうえで、当該セル部分に充填材を充填する際、充填材は農業に適した土壌を用いることが好適である。それは、充填材に砕石などを用いると、当該ハニカム構造体を撤去して普通の農地にもどす際に農地利用の障害になることを避ける為である。農業に適した土壌とは、黒ボク土、腐植土、赤色土、黄色土、低地水田土、グライ土、褐色森林土などが挙げられる。
【0017】
請求項5記載の発明は、
請求項1から4のいずれかに記載の地盤構造の上に、畝が載置されてなる農業用ハウス内の地盤構造である。
【0018】
ハニカム構造体の上に畝を設置して当該畝で農作物を栽培することが可能である。この場合、畝の下の地盤が安定し、さらに当該ハニカム構造体の下の排水層が適度に排水するために、農作物の根腐れなどを起こしにくくなる。
【0019】
請求項6記載の発明は、
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内に、複数枚ストリップ材を一定間隔の結合部位にて結合した多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展帳して充填材を充填してなるハニカム構造体を施工する施工方法であって、
農業用ハウスの躯体及び躯体を支える基礎を侵さないように当該農業用ハウスの躯体の内側を設置する前記ハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削し、
当該レベルにハニカム状立体補強材を展張してセルを形成して設置し、
当該展張したハニカム状立体補強材の当該セルに充填材を充填してハニカム構造体を形成する農業用ハウス内の地盤構造の施工方法である。
【0020】
請求項7記載の発明は、
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内に、複数枚ストリップ材を一定間隔の結合部位にて結合した多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展帳して充填材を充填してなるハニカム構造体を施工する施工方法であって、
農業用ハウスの躯体及び躯体を支える基礎を侵さないように当該農業用ハウスの躯体の内側を設置する前記ハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削し、
当該レベルに不織布を敷設し、
当該不織布の上にハニカム状立体補強材を展張してセルを形成して設置し、
当該展張したハニカム状立体補強材の当該セルに充填材を充填してハニカム構造体を形成する農業用ハウス内の地盤構造の施工方法である。
【0021】
請求項8記載の発明は、
請求項6または7のいずれかに記載の工程を経て前記ハニカム構造体を形成後、当該ハニカム構造体の上に土を搬入して畝を形成する工程を含む、農業用ハウス内の地盤構造の施工方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により農業用ハウス内の地盤構造に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展張し土砂、砕石や農業に適した土壌などの充填材を充填してなるハニカム構造体を用いることで、農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使う場合に農業機械による轍掘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ハニカム状立体補強材の展張前の斜視図である。
図2】ハニカム状立体補強材を展張した際の斜視図である。
図3】農業用ハウスの内側にハニカム構造体を設置した際の断面斜視図である。
図4】農業用ハウスの内側を設置する前記ハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削した際の断面斜視図である。
図5】掘削した農業用ハウスの内側に、不織布及び展張したハニカム状立体補強材を設置する際の断面斜視図である。
図6】農業用ハウスの内側にハニカム構造体を設置後、ハニカム構造体の上に畝作製した際の断面斜視図である。
図7】ハニカム構造体及び排水溝まで延設した不織布を設置した農業用ハウスの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0025】
〔第1の実施形態〕
本発明は、農業用ハウス内の地盤構造に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展張し土砂、砕石や農業に適した土壌などの充填材を充填してなるハニカム構造体を用いることで、農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使う場合に農業機械による轍掘れを防止することができる旨を発明の要旨としているが、このような事例はこれまで知られていない。
【0026】
すなわち本発明は、
農業用ハウス内で耕耘機や車両などの農業機械を使用する際に当該農業機械による轍掘れを防止するための農業用ハウス内の地盤構造であって、
農業用ハウス内の基礎地盤に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材の展張されたセル内に充填材を有するハニカム構造体による層を含む農業用ハウス内の地盤構造である。
【0027】
本願発明に使用するハニカム状立体補強材及びハニカム構造体を説明する。
図1は、本願発明に使用するハニカム状立体補強材(3セル)の展張前の斜視図である。本実施形態では3セルのハニカム状立体補強材を例示したが、ハニカム状立体補強材のセル数は3セルに限らず何セルあってもよい。以下、当該ハニカム状立体補強材から作成されるハニカム構造体についても同様である。また、ハニカム状立体補強材同士はタッピングビス等で接続することでセル数を無限に増やすことが可能である。ハニカム状立体補強材1は、複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材2を幅方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に一定間隔の結合部位4にて結合したものである。このハニカム状立体補強材1は展張方向aに展張してハニカム状のセル構造を形成する。ハニカム状立体補強材に利用される素材は樹脂が好ましく、樹脂の中でも高密度ポリエチレンが好適である。
【0028】
ストリップ材2にはセル内に溜まる水を排出するために孔3を設ける場合がある。孔の大きさや形状はどのようなものでもよい。孔の数は多い方が良いが、多すぎるとストリップ材の強度が低下するため、ストリップ材の面積の40%を越えない程度の数がよい。また孔の配置は直列でも千鳥配置でもよい。
【0029】
図2は、図1で示したハニカム状立体補強材(3セル)を展張した際の斜視図である。ハニカム状立体補強材1を展張すると、ハニカム状のセル5が形成される。一般的なハニカム状立体補強材1の使用方法としては、ハニカム状立体補強材セル5内にセルの高さまで充填材を充填して締め固めを行うことにより、剛性のあるハニカム構造体6を形成させる。
【0030】
展帳したハニカム状立体補強材のセル5に充填する充填材としては、砂、土砂、砕石や農業に適した土壌などどのような土質材料のものでも使用できる。とりわけ、農業用途で用いられる農業用ハウス内には、農業に適さない充填材に置き換えてしまうと後に農地転用する場合に不具合が生じる恐れがあるため、農業に適した土壌を充填材に用いることが好ましい。農業に適した土壌とは、黒ボク土、腐植土、赤色土、黄色土、低地水田土、グライ土、褐色森林土などが挙げられる。
【0031】
図3は、農業用ハウスの内側にハニカム構造体を設置した際の断面斜視図である。図中、z断面は図2図6において共通した断面であり、また視線方向bも図2図6において共通した視線方向である。
本発明において、ハニカム構造体6を農業用ハウスの内側の地盤部分に設置する。この際、ハニカム構造体6の天頂部分が農業用ハウスの地盤レベルと同程度の高さになるように設置するのが好ましい。
【0032】
ハニカム構造体は農業用ハウスの躯体を支える基礎に密着しないように設置するのが好ましい。これは農業用機械の走行などの際にハニカム構造体の上から荷重が掛かった場合、ハニカム構造体の特性上の上から荷重は地盤の水平方向に分力されるため、農業用ハウス躯体を支える基礎にハニカム構造体による横からの応力がかかる可能性がある。この応力の影響を最小限にするため、ハニカム構造体と農業用ハウス躯体を支える基礎との間に少なくとも5cm程度の距離を設けることが好ましい。
【0033】
ハニカム構造体の敷設方向は特にどちらでもよいが、ハニカム構造体の特性上、ハニカム構造体の上から掛かる荷重によりハニカム構造体は主にストリップ材と直交する方向(展張方向a)に広がる傾向があるため、ストリップ材と直交する方向(展張方向a)は農業用ハウスの短辺になるように設置(図3に図示)することが好ましい。
【0034】
さらに、ハニカム構造体6による層の下に不織布による層を設けることが好ましい。当該不織布にはハニカム構造体6のセル内に水が溜まることを防止する排水材と役目と、ハニカム構造体6による層に上からかかる力を下地盤に均等にかかることを補助する役目との、ふたつの機能を有する。
【0035】
次に、本発明の施工手順について述べる。
図4は、農業用ハウスの内側を設置するハニカム状立体補強材のストリップ材の幅と略同じ深さのレベルまで掘削した際の断面斜視図である。
まず、既設の農業用ハウスの内側を設置するハニカム状立体補強材のストリップ材の幅、すなわち設置するハニカム構造体6の高さと同程度のレベルになるように掘削(床掘り8)し、整地する。これはハニカム構造体を設置した際にハニカム構造体6の天頂部分が農業用ハウスの地盤レベルと同程度の高さになるように設置するためである。
【0036】
図5は、掘削した農業用ハウスの内側に、不織布及び展張したハニカム状立体補強材を設置する際の断面斜視図である。
農業用ハウス内の床掘りされた面に不織布9及び展張したハニカム状立体補強材1を設置する(載置方向cのように上から設置する)。不織布については省略可能であるが、設置するほうが好ましい。
【0037】
床掘り8された設置面にまず不織布9をたわみがないように広げて敷き詰める。不織布はアンカーピンや固定具等で固定することが好ましい。不織布を設置後、その上よりハニカム状立体補強材1を展張しながら敷設する。また、ハニカム状立体補強材の一製品の大きさ(広さ)が施工範囲に満たない場合は、ハニカム状立体補強材の製品同士をタッピングビス等で接続することで(ストリップ材同士を重ね、ビスで接続する)施工範囲全体にわたりハニカム状立体補強材が敷設されるようにする。ハニカム状立体補強材1は農業用ハウスの内側全面に設置してもよいし(図5参照)、また農業用機械が移動する部分のみに設置してもよい。ハニカム状立体補強材1を設置に際にも、アンカーピンや固定具などを用いて地盤に固定してもよい。
【0038】
展張したハニカム状立体補強材1を設置後、当該ハニカム状立体補強材1のセル内に充填材を充填して、ハニカム構造体6を作製する。充填材を充填して本発明の施工を完了した際の断面斜視図は図3に示した。充填材としては、砂、土砂、砕石や農業に適した土壌などどのような土質材料のものでも使用できる。とりわけ、農業用途で用いられる農業用ハウス内には、農業に適さない充填材に置き換えてしまうと後に農地転用する場合に不具合が生じる恐れがあるため、農業に適した土壌を充填材に用いることが好ましい。農業に適した土壌とは、黒ボク土、腐植土、赤色土、黄色土、低地水田土、グライ土、褐色森林土などが挙げられる。
【0039】
図6は、農業用ハウスの内側にハニカム構造体を設置後、ハニカム構造体の上に畝作製した際の断面斜視図である。
農業用ハウス内にハニカム構造体6を設置後には、当該ハニカム構造体の上に畝を作ったり、または高設栽培施設を作ったり、また、育苗用のトレイを静置したりすることが可能である。図6に示したのは、ハニカム構造体の上に畝を作った例であるが、このようにハニカム構造体の上に直接畝を作った場合においても、ハニカム構造体の充填材が土砂、砕石や農業に適した土壌などであるため問題はない。
【0040】
〔第1の実施形態の変形例〕
図7は、ハニカム構造体及び排水溝まで延設した不織布を設置した農業用ハウスの断面斜視図である。
ハニカム構造体の下に設置される不織布9の端部を排水溝まで延設する以外は、前述の第1の実施形態と同様である。すなわち、不織布9及びハニカム構造体6の設置範囲よりも外側にあらかじめ設置された排水溝(設置箇所は農業用ハウスの内側でも外側でもよい)まで不織布9の端部を延設することで、当該不織布9に到達した水が排水溝へと排出されるため、不織布9及びハニカム構造体6の中の余剰水分がなくなり農作物の根腐れやハウス内のぬかるみなどを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の農業用ハウス内の地盤構造に、複数枚ストリップ材が一定間隔の結合部位にて結合された多数のセルからなるハニカム構造をしたハニカム状立体補強材を展張し土砂、砕石や農業に適した土壌などの充填材を充填してなるハニカム構造体を用いることで、農業用ハウス内において耕耘機や車両などの農業機械を使う場合に農業機械による轍掘れを防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハニカム状立体補強材
2 ストリップ材
3 孔
4 結合部位
5 セル
6 ハニカム構造体
7 農業用ハウス
8 床掘り
9 不織布
10 畝
11 排水溝
a 展張方向
b 断面斜視図の視線方向
c 載置方向
z 断面図断面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7