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特許7025856回生制動回路付き電動アクチュエータと緊急遮断弁用電動回転弁並びに緊急遮断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】回生制動回路付き電動アクチュエータと緊急遮断弁用電動回転弁並びに緊急遮断システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220217BHJP
   H02P 3/08 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
F16K31/04 A
H02P3/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017148388
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019027527
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 仁
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-111295(JP,U)
【文献】特開昭60-91882(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160802(JP,U)
【文献】実開平7-41145(JP,U)
【文献】特開2006-161855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
H02P 3/08- 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCモータと、このDCモータにより開閉操作される回転弁が少なくとも全閉位置に達したことを検知する検知手段を有する電動アクチュエータにおいて、前記検知手段が少なくとも前記全閉位置に達したことを検知した際に電源と前記DCモータとの接続を切り、前記DCモータと回生抵抗とを接続して回生制動回路を形成する回生制動切り替えリレーを備えるとともに、前記回生制動切り替えリレーのコイルに流す電流の通電を制御するリレー動作点閾値回路手段を備え、前記リレー動作点閾値回路手段は、この回路手段にかかる電圧を分圧する分圧回路と、前記回生制動切り替えリレーのコイルに流れる電流の通電を制御するスイッチングトランジスタとを備え、前記分圧回路で分圧した電圧を前記スイッチングトランジスタに印加してその導通を制御して前記回生制動切り替えリレーを切り替えることにより、早期に前記回生制動回路を形成することができるように構成されていることを特徴とする回生制動回路付き電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項に記載の回生制動回路付き電動アクチュエータを搭載した緊急遮断用電動回転弁。
【請求項3】
請求項2に記載の緊急遮断用電動回転弁において、前記電動回転弁は、シートゴムを用いた中心型バタフライバルブであり、前記リレー動作点閾値回路は、全閉位置に達した弁体がシートゴムによる押し戻しを生じない程度に前記回生制動切り替えリレーの動作点閾値が設定されていることを特徴とする緊急遮断用電動回転弁。
【請求項4】
請求項又は請求項に記載の緊急遮断用電動回転弁と、この緊急遮断用電動回転弁を感震器の作動により全閉状態とする制御部とを有する緊急遮断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生制動回路付き電動アクチュエータとこの電動アクチュエータを搭載した緊急遮断弁用電動回転弁並びにこの緊急遮断弁用電動回転弁を用いた緊急遮断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、マンション等では、水道管からポンプにより揚水した水を貯留して内部に貯える給水タンクが屋上に設置されており、給水タンク内に貯えた水を建物内に分配給水している。この給水タンクの吐出部には緊急遮断弁が設置されていて、通常は開弁位置に維持され、給水タンク内に貯えた水を建物内に分配給水しているが、大規模地震が発生した緊急時には、短時間で閉弁して配管の損傷による給水タンク内の水の流出を防止し、飲料水等の生活用水を確保できるように設計的に配慮されている。
【0003】
緊急遮断弁は給水タンクの吐出部に設置され、大流量の確保と圧損の低減に対応する必要があるため、口径の大きなバタフライバルブ又はボールバルブ等の回転弁が使用されている。
【0004】
緊急時には商用電源が停電することが予想されるため、緊急遮断弁は商用電源によることなく閉弁することが求められており、電動アクチュエータは、二次電池(バッテリー、電気二重層コンデンサ)に電力を蓄えておき、緊急時にこの電力を使用してモータを駆動し、弁体を全閉弁位置に回転させるようにしている。また、二次電池を用いた電動アクチュエータでは、回路構成の簡素化、コストの観点からDCモータが採用されていることが一般的であり、このDCモータは、ギア部を介して緊急遮断弁の弁体を回転するバルブステムに接続されている。
【0005】
図4において、現在、緊急遮断弁用バタフライバルブに使用されている電動アクチュエータの回路図を示す。この電動アクチュエータの回路1は、ブラシ構造のDCモータ2と、DCモータの回転方向を操作する操作スイッチ3と、全開位置リミットスイッチ4、全閉位置リミットスイチ5、手動操作時にDCモータ2と電源(二次電池)との接続を切るインターロックスイッチ6とから構成されている。また、端子7、8は操作スイッチ3とDCモータ2を接続するための端子であり、ダイオード9、10は、全開位置リミットスイッチ4、全閉位置リミットスイッチ5が切れた場合にDCモータ2の逆回転を可能とするため、全開位置リミットスイッチ4、全閉位置リミットスイッチ5をバイパスさせるためのダイオードである。
【0006】
図4の電動アクチュエータの回路1において、全開位置に回転させる場合には、操作スイッチ3を開側に切り替えると、端子7の+端子からインターロックスイッチ6、全開位置リミットスイッチ4、DCモータ2、ダイオード10を経由して端子8のマイナス(-)端子に回路が構成され、弁体が開方向に回転する。回転に伴って全閉位置リミットスイッチ5は作動を終了してNC端子に切替わる。弁体が全開位置に達すると全開位置リミットスイッチ4が作動してNO端子側に切替わり、DCモータ2と電源(二次電池)との接続が切られ、バルブが全開位置にて停止する。
【0007】
全閉位置に回転させるために操作スイッチ3を再度閉側に切り替えると、端子8のプラス(+)端子から全閉位置リミットスイッチ5、DCモータ2、ダイオード9、インターロックスイッチ6を経由して、端子7のマイナス(-)端子に回路が構成され、弁体が閉方向に回転する。回転に伴って全開位置リミットスイッチ4は作動を終了してNC端子に切替わり、弁体が全閉位置に達すると全閉位置リミットスイッチ5が作動して、DCモータ2と電源(二次電池)との接続が切られ、バルブが全開位置にて停止する。
【0008】
また、バルブが全閉位置の場合に、手動操作でバルブを開放しようとすると、弁体を開方向に回転させた際に全閉位置リミットスイッチ5が通電状態、すなわち、作動を終了してNC端子に切替わり、DCモータ2と電源が接続された状態となって弁体を閉方向に回転させてしまうので、このような不具合を防止するために、電源とDCモータとの接続を切るためインターロックスイッチ6を備えている。
【0009】
このような回路1を有する電動アクチュエータが弁体を全開位置又は全閉位置に回転させると、全開位置リミットスイッチ4あるいは全閉位置リミットスイッチ5が全開位置あるいは全閉位置で作動した場合、DCモータ2と電源との接続が切られるので、DCモータ2は電磁トルクを消失し、回転の駆動力を失うが、回転していたDCモータ2のロータ(電機子)は慣性モーメントによるフライホイール効果により直ちに停止することなく、オーバーラン(惰走回転)することになる。
【0010】
停止時にこの様な特性を有するDCモータを備えた電動アクチュエータを中心型バタフライバルブに搭載し、特に弁体を全閉位置に回転させた場合には、DCモータ2のロータのオーバーランが原因となって、弁体が全閉位置で微開度の開閉を繰り返すハンチングが発生する。このハンチングは、DCモータ2のオーバーランにより弁体が全閉位置で停止できずにシートゴムに食い込み、この食い込みにより生じるシートゴムの反発力で弁体が開方向に押し戻され、この押し戻しにより全閉位置リミットスイッチ5が通電してDCモータ2が閉弁方向に再び回転し、その後、全閉位置で全閉位置リミットスイッチ5が作動してDCモータ2への電源の接続が断たれた後、DCモータ2のオーバーランにより弁体がシートゴムに食い込んで押し戻される動作を繰り返すために発生する。特に中心型バタフライバルブでは、円盤状の弁体外周を円筒状のシートゴムの内周に密着させて弁座シールを行う構造であることから、弁閉となる過程で弁体の回転トルクが変化しやすく、ハンチングが生じやすい。
【0011】
例えば、バタフライバルブを緊急遮断弁として使用する給水タンクにこのハンチング現象が発生すると、シート漏れ、無駄な二次電池の電力消費が発生し、結果的にはバタフライバルブのタイトシャット状態を維持できなくなり、給水タンクが漏水状態となるという問題が発生する。
【0012】
また、バタフライバルブの全閉位置においてオーバーランが過剰に発生すると、弁体のバルブシートゴムへの食い込みが深く生じ、弁開復旧時にアクチュエータが過負荷となり、開動作が不能となったり、弁開復旧時にバルブステム等の機構連結部品に捻じれが生じる結果、急に開動作が発生するジャンピングが発生し、電動アクチュエータにダメージを与えたりする問題もある。
【0013】
これらハンチング、起動障害、ジャンピングは、DCモータを使用することによるギア部の保持トルクの不足、及びロータのオーバーランの発生が複合的な原因となって発生するものである。
【0014】
DCモータを使用した電動アクチュエータのギア部の保持トルクの不足とモータのオーバーラン発生へ対処するため、特許文献1には、電気的制動によりDCモータを使用した電動アクチュエータのギア部の保持トルクの不足とモータのオーバーラン発生に対応する電動弁が開示されている。この電動弁は、弁体が所定位置に達して全開リミットスイッチあるいは全閉リミットスイッチが作動し、DCモータへの電源の接続が断たれると同時に、リレースイッチによりDCモータのロータと抵抗とを短絡させて回生制動回路を形成し、電源との接続が断たれたDCモータを発電機として作用させることによってロータの惰走回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、抵抗での発熱により瞬時に消費させてロータを停止させ、オーバーランを防止するようにしている。
【0015】
この電動弁は、電動アクチュエータの制動機構としてDCモータとリレー、抵抗を組み合わせた回生制動回路を構成するだけであり、従来のギア機構をそのまま流用して若干の回路を追加するだけで簡単かつ安価に回生制動を備えた電動アクチュエータを実現することができる特長があり、また電動アクチュエータの形状寸法が大型化することもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】実開昭53-162423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に開示された電動アクチュエータをバタフライバルブに搭載して使用した場合、閉弁時におけるハンチングの発生を完全に解消することができなかった。ハンチングが解消されなかった原因を探求した結果、原因はリレーの作動特性にあることを突き止めた。
【0018】
電動アクチュエータの制動機構として、DCモータ、抵抗、リレースイッチを組み合わせた回生制動回路を採用した場合、全閉位置リミットスイッチの作動によってDCモータと電源との接続が断たれた直後においては、DCモータのロータは慣性モーメントによって回転(惰走)を続けており、この回転によって生じた起電力(惰走起電力)により生じた電流が配線を通じてリレーコイルに供給されるため、リレーコイルは保持状態を保って切替わらない。このためDCモータのロータと抵抗は短絡された状態とならず、回生制動回路は形成されていない。
【0019】
一般的には、リレーコイルは、定格電圧の80%以上で作動し、定格電圧の10%以下で復帰する。このことは、DCモータのロータの惰走起電力がリレーの定格電圧の10%以下まで低下しないとリレーが復帰せず、それまでの間は回生制動回路が形成されないことを意味する。リレーがこのような作動特性を有しているため、リレー接点が回生制動回路側への切替わり、回生制動回路が形成されるまでの間はロータの惰走回転が続き、その結果、バタフライバルブの弁体にハンチングを発生させるのである。
【0020】
以上のハンチング発生の問題に加え、回生制動回路を形成してDCモータを停止させた状態では、常時回生制動がかかった状態が維持されるため、手動でアクチュエータを操作することができない。このため、緊急時に商用電源が停電している際に、制御装置の故障、二次電池の消耗等の不測の事態となった場合には、手動で緊急遮断弁の開閉操作を行って、給水タンク内の水を取出し等が行えないという問題もある。
【0021】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、全閉位置リミットスイッチが作動した際に早期にDCモータの回生制動回路を形成してオーバーランを極少化してハンチングの発生を防止するとともに、手動操作時にDCモータの回生制動回路を解除して操作トルクを軽減することができる回生制動回路付き電動アクチュエータ及び緊急遮断弁用電動回転弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、DCモータと、このDCモータにより開閉操作される回転弁が少なくとも全閉位置に達したことを検知する検知手段を有する電動アクチュエータにおいて、検知手段が少なくとも全閉位置に達したことを検知した際に電源とDCモータとの接続を切り、DCモータと回生抵抗とを接続して回生制動回路を形成する回生制動切り替えリレーを備えるとともに、回生制動切り替えリレーのコイルに流す電流の通電を制御するリレー動作点閾値回路手段を備え、リレー動作点閾値回路手段は、この回路手段にかかる電圧を分圧する分圧回路と、回生制動切り替えリレーのコイルに流れる電流の通電を制御するスイッチングトランジスタとを備え、分圧回路で分圧した電圧をスイッチングトランジスタに印加してその導通を制御して回生制動切り替えリレーを切り替えることにより、早期に回生制動回路を形成することができるように構成されていることを特徴とする回生制動回路付き電動アクチュエータである。
【0025】
請求項2に係る発明は、回生制動回路付き電動アクチュエータを搭載した緊急遮断用電動回転弁である。
【0026】
請求項3に係る発明は、電動回転弁は、シートゴムを用いた中心型バタフライバルブであり、リレー動作点閾値回路は、全閉位置に達した弁体がシートゴムによる押し戻しを生じない程度に回生制動切り替えリレーの動作点閾値が設定されていることを特徴とする緊急遮断用電動回転弁である。
【0027】
請求項4に係る発明は、回生制動回路付き電動アクチュエータを搭載した緊急遮断用電動回転弁と、この緊急遮断用電動回転弁を感震器の作動により全閉状態とする制御部とを有する緊急遮断システムである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る発明によると、検知手段が、回転弁が全開閉位置に達したことを検知した際に電源とDCモータとの接続を切り、DCモータと回生抵抗とを接続して回生制動回路を形成する回生制動切り替えリレーを備えるとともに、回生制動切り替えリレーのコイルに流す電流の通電を制御するリレー動作点閾値回路手段を備え、このリレー動作点閾値回路手段を介して回生制動切り替えリレーを制御し、早期に回生制動回路を形成するようにしているため、電源とDCモータとの接続が切られた直後にリレー動作点閾値回路手段を介して回生制動切り替えリレーを復帰させ、早期に回生制動回路を形成することができる。
【0029】
この回生制動回路が構成されることにより、ロータの惰走回転により発生する惰走電力が回生抵抗で熱に変換され、ロータの回転エネルギーを瞬時に消滅させることができるので、DCモータのオーバーランを極少化してDCモータを停止させることができる。
【0030】
また、回生制動回路が形成された状態ではDCモータの回転が強固に回生制動される結果、アクチュエータの出力軸も固定されるので、DCモータを使用した場合のギア部の保持トルクの不足を補って弁体を全開位置あるいは全閉位置に維持することができる。
【0031】
これに加え、リレー動作点閾値回路手段は、この回路手段にかかる電圧を分圧する分圧回路と、回生制動切り替えリレーのコイルに流れる電流の通電を制御するスイッチングトランジスタとを備え、分圧回路で分圧した電圧をスイッチングトランジスタに印加してその導通を制御して回生制動切り替えリレーを切り替えることにより、早期に回生制動回路を形成することができるように構成されているため、DCモータのロータの惰走回転が回転抵抗により減速し、惰走起電力が自然に低下することを待つことなく、スイッチングトランジスタにより回生制動切り替えリレーのコイルを流れる電流の通電を切って早期に回生抵抗回路を形成し、DCモータのオーバーランを極少化することができる。
【0032】
また、分圧回路を構成する抵抗を適宜に算定することにより、小型で信頼性が高く、スイッチングトランジスタのリレー動作点電圧(ON・OFF切り替え電圧)に対応した分圧回路を簡単に構成することができる。
【0034】
また、インターロックスイッチをDCモータへの直流電源の供給を遮断することができるとともに、DCモータと回生抵抗の接続を遮断して回生制動の解除が行える位置に設けたので、1個のインターロックスイッチにより、通常の点検作業を安全に行うことができるとともに、緊急時には回生制動回路を解除して手動操作を行うことができる。
【0035】
請求項2に係る発明によると、DCモータのロータの惰走起電力の影響を排除して回生制動切り替えリレーを復帰させ、早期に回生制動効果を発揮することができる回生制動回路付き電動アクチュエータを回転に搭載して緊急遮断弁用電動回転弁を構成しているため、回生制動回路付き電動アクチュエータをバタフライバルブに搭載した場合には、DCモータのオーバーランが原因となる弁体の全閉位置におけるハンチングを防止し、給水タンク内の水の流出を最小限に防ぎ、飲料水等の生活用水を確保することができる。
【0036】
また、同様にDCモータのオーバーランが原因となる弁体のバルブシートゴムへの食い込みによる起動障害、開弁時のジャンピングを防止することができるので、アクチュエータへのダメージを防ぐことができる。
【0037】
これらに加え、回生制動回路付き電動アクチュエータをボールバルブに搭載した場合には、DCモータのオーバーランが原因となる全開位置におけるボール弁体のオーバシュートを防止することができる。
【0038】
請求項3に係る発明によると、リレー動作点閾値回路は、全閉位置に達した弁体がシートゴムによる押し戻しを生じない程度に回生制動切り替えリレーの動作点閾値を設定しているため、全閉位置リミットスイッチが作動した際に電源とDCモータとの接続を切るとともに、速やかにDCモータと回生抵抗とを接続してDC-モータのオーバーランを極少化することができるので、シートゴムを用いた中心型バタフライバルブを使用した電動回転弁であっても、全閉位置における弁体のハンチングの発生を防止して確実にバタフライバルブのタイトシャット状態を維持することができ、給水タンクが漏水状態となることがない。
【0039】
請求項4に係る発明によると、大規模地震が発生した緊急時には、制御装置に設けた感震器が地震の発生を感知すると直ちに、又は商用電源が停電すると直ちに制御装置から緊急遮断弁用電動回転弁に閉弁指令が発せられ、給水タンクの吐出部が緊急遮断されるので、排水管の破損に伴う給水タンク内の生活用水の流出を防止し、ライフライン復旧までの間、生活用水を確保することができる。
【0040】
特に、回転弁としてバタフライバルブを使用した場合には、弁体が全閉位置に達した際にDCモータのオーバーランが原因となって弁体が全閉位置で微開度の開閉を繰り返すハンチングの発生を防止することができるので、大規模地震発生直後に給水タンクの吐出部を確実に遮断して給水タンク内の水の流出を防ぎ、生活用水を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明における回生制動付き電動アクチュエータの回路の一実施形態を説明する図面である。
図2】本発明における回生制動付き電動アクチュエータの一実施形態を説明する図面である。
図3】本発明における緊急遮断システムの構成を説明する図面である。
図4】従来の電動アクチュエータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明における回生制動付き電動アクチュエータの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、回生制動付き電動アクチュエータの回路図を示している。図1に示すように、回生制動付き電動アクチュエータの回路11は、DCモータ12と、検知手段としての全開位置リミットスイッチ13及び全閉位置リミットスイッチ14と、リレー動作点閾値回路手段15と、回生制動切り替えリレー16と、回生制動抵抗17と、これらの間を接続する配線とから構成されている。この図1では、全閉状態を示している。
【0043】
端子20、21は、直流電源(図示せず)から操作スイッチ(図示せず)を介して回路11に直流電力を供給するための端子である。端子20と回生制動切り替えリレー16との間は配線22で接続されており、端子20と回生制動切り替えリレー16との間に全開位置リミットスイッチ13を設けている。端子21と回生制動切り替えリレー16との間は配線23で接続されており、端子21と回生制動切り替えリレー16との間に全閉位置リミットスイッチ14を設けている。
【0044】
また、全開位置リミットスイッチ13の二次側の配線22から配線24を分岐するとともに、全閉位置リミットスイッチ14の二次側の配線23から配線25をダイオードブリッジ26の一次側に接続し、ダイオードブリッジ26の二次側を配線30、31を介してリレー動作閾値回路手段15に接続している。これらに加え、DCモータ12と回生制動切り替えリレー16の間にインターロックスイッチ27を設けている。
【0045】
リレー動作点閾値回路手段15と回生制動切り替えリレー16との間は、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aに電流を供給する配線28、29により接続されている。
【0046】
DCモータ12は、電源の極性を反対にすることで回転方向を変更できるブラシ構造のDC(直流)モータである。本図に示した回路11において、電動アクチュエータを全開方向に作動させるためにDCモータ12を回転させる場合には、図示しない操作スイッチを介して端子20がプラス(+)、端子21がマイナス(-)の極性となるように直流電源に接続する。また、電動アクチュエータを全閉方向に作動させるためにDCモータ12を回転させる場合には、図示しない操作スイッチを介して端子20がマイナス(-)、端子21がプラス(+)の極性となるように直流電源に接続する。
【0047】
全開位置リミットスイッチ13と、全閉位置リミットスイッチ14は、弁体が全開位置あるいは全閉位置に達した時点で直流電願からDCモータ12への通電を切り、DCモータ12の作動を停止させるためのスイッチである。なお、全開位置リミットスイッチ13及び全閉位置リミットスイッチ14と並列に設けられているダイオードD1、D2は、全開位置リミットスイッチ13又は全閉位置リミットスイッチ14が作動して開いている場合に、電流を流すためのものである。
【0048】
リレー動作点閾値回路手段15は、全開位置リミットスイッチ13あるいは全閉位置リミットスイッチ14が作動して電源とDCモータ12との接続が切られた際、又は停電時において、電源と回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aへ通電を切り、直ちに回生制動切り替えリレー16を復帰させるための回路である。
【0049】
本実施例では、配線30を分岐点30aで分岐して抵抗15a、15bにより分圧回路を構成し、配線30、31間の電圧Vbを降圧した後、抵抗15aと抵抗15bとの間の分岐点30bからダイオード15c、15dを経由してスイッチングトランジスタ15eのベース(B)に印加して、このベース(B)に印加する電圧により、コレクタ(C)とエミッタ(E)との間の導通を制御して、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aを流れる電流のON/OFFを制御している。
【0050】
分岐点30aで分圧回路に分岐しなかった側の配線は、配線30、配線29を介して回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aに接続されており、更に配線28を介して前記スイッチングトランジスタ15eのコレクタ(C)に接続されている。スイッチングトランジスタ15eのエミッタ(E)には、配線31、ダイオードブリッジ26を経由して配線24が接続されている。
【0051】
スイッチングトランジスタ15eは、ベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧が規定値以上の場合にベース(B)に電流が流れてコレクタ(C)とエミッタ(E)との間が導通し、規定値より低い場合には導通しないので、このように構成することにより、ベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧が規定値を下回った場合には、直ちにスイッチングトランジスタ15eがOFF状態となり、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aを流れる電流を停止させることができる。
【0052】
また、抵抗15a、15bにより分圧回路を構成したことにより、抵抗15aの抵抗値と抵抗15bの抵抗値を適宜に設定することにより、スイッチングトランジスタ15eのON・OFF状態が切り替わる電圧値である動作バイアス点(閾値)に近づけて配線30、31間の電圧Vbを降圧し、スイッチングトランジスタ15eのベース(B)に印加することができる。配線30、31間の電圧Vbは、配線24、25間の電圧からダイオードブリッジ26の順方向電圧を引いた電圧となる。
【0053】
本実施例においては、抵抗15aと抵抗15bの各抵抗値を9:1の比率で設定することにより、例えば、電源24V仕様の場合に、電源定格電圧の75%である18V以上となった場合に、スイッチングトランジスタ15eがONとなるようにVb(リレー動作点閾値電圧)を設定することができる。
【0054】
なお、本実施例においては、Vbを抵抗15a15bにより分圧した回路を構成しているが、さらに、抵抗15bと並列に構成される、スイッチングトランジスタ15eのベース(B)に接続する配線に二つのダイオード15c、15dを直列に接続し、これらのダイオードの順方向電圧をそれぞれ0.6Vと0.6V(計1.2V)に設定の上、スイッチングトランジスタ15eにおけるベース(B)、エミッタ(E)間の電圧0.6Vを加えた合計1.8Vでスイッチングトランジスタ15eの動作点閾値を設けることにより、後述するように、DCモータの接続を電源から回生抵抗17に切り替える際などの過渡時におけるノイズによる誤動作を防止し、安定した動作を実現させている。
【0055】
回生制動切り替えリレー16は、全開位置リミットスイッチ13あるいは全閉位置リミットスイッチ14が作動してDCモータ12への通電が切られた際に、内部に設けた接点16b及び接点16cを切り替え、DCモータ12の接続を電源から回生抵抗17に切り替え、回生抵抗回路を形成するための回路切り替え手段である。
【0056】
回生制動切り替えリレー16は、電源から回路11に直流電力が供給されている間にはリレーコイル16aに電流が流れ、回生制動切り替えリレー16は作動状態となり、直流電源とDCモータ12との接続が維持される。直流電源から回路11に直流電力が供給されなくなると、回生制動切り替えリレー16は復帰し、回生抵抗回路を形成する。なお、前述したように、一般的には、リレーは定格電圧の80%以上で作動し、定格電圧の10%以下で復帰する。
【0057】
回生抵抗17は、回生制動切り替えリレー16によりDCモータ12に回生抵抗17が接続される回生抵抗回路が形成された際に、DCモータ12のロータの惰走起電力により生じる電流を熱エネルギーに変換してロータの惰走回転エネルギーを消滅させ、ロータの惰走回転を極少化させてDCモータのオーバーランを防止するための電気抵抗である。
【0058】
ダイオードブリッジ26は、回生制動切り替えリレー16を動作させるための電源を確保するためのダイオードブリッジであり、端子20、21に供給される電源の極性に関わらず直流電源を得るためのものである。
【0059】
インターロックスイッチ27は、通常時の点検作業の際には電源とDCモータ12との間の接続を切り離し、また緊急時に回生制動回路が形成されている際には、DCモータ12と回生抵抗17との間を切り離し、回生制動回路を無効にする。
【0060】
次いで、本発発明における回生制動回路付き電動アクチュエータの一実施形態を図面により説明する。
図2に示すように、アクチュエータ本体32は、カバー33とベース体34とを有し、この内部には、DCモータによる回転駆動源35と、回転駆動源35からの動力を減速回転する減速歯車機構36とを有している。
【0061】
図示しないボルト等の固着手段によりベース体34の上面に固定されたDCモータの出力軸には、図示しないピニオンギアが設けられており、モータの回転を減速歯車機構36に伝達している。減速歯車機構36は、平歯車列等により構成された減速機構を有しており、減速歯車機構36には出力軸37が取り付けられ、減速歯車機構36を介して回転駆動源35から伝達されるDCモータの回転をバルブのステムに伝達し、バルブの弁体を回転させるようになっている。
【0062】
また、出力軸37の上部には、全開位置リミットスイッチ13及び全閉位置リミットスイッチ14を取り付けた制御軸38が取り付けられており、バルブの弁体が全開位置又は全閉位置に達すると、電源から回転駆動源35(DCモータ)への通電を切るようになっている。
【0063】
これらに加え、アクチュエータ本体32には、アクチュエータを手動操作するための手動ハンドル39が設けられており、手動操作する際にはこの手動ハンドル39を上部に引くと、手動ハンドル39の図示しない軸の下端に設けた図示しないギアが減速歯車機構36のギアと係合するとともに、手動ハンドル39の軸に取り付けた図示しない突起部と係合しているインターロックスイッチ27が開いてOFF状態となり、緊急時に回生制動回路が形成されている際には、DCモータ12と回生抵抗17との間を切り離し、また、通常時の点検作業の際には電源とDCモータ12との間の接続を切り離す。
【0064】
このインターロックスイッチ27を設けたことにより、回生制動回路が形成されている場合に回生制動回路とDCモータとの接続を解除することができるので、アクチュエータの手動操作トルクが軽減され、容易に手動操作することができる。また、回生制動回路が形成されていない通常時においては、電源とDCモータとの通電を切ることができるので、手動操作時やアクチュエータのカバー33を開放して点検などを行う際に、DCモータが回転動作することによる怪我の危険を排除することができる。
【0065】
なお、図示していないが、アクチュエータ本体32内には二次電源として電気二重層キャパシタが収納されており、緊急時に商業電源が停止した際にDCモータに直流電源を供給し、弁体を閉弁位置に回転させることができるように構成されている。
【0066】
次に、本発発明における緊急遮断弁用電動回転弁と緊急遮断システムの一実施形態を図面により説明する。
図3に示すように、緊急遮断弁用電動回転弁41は、アクチュエータ本体32と、このアクチュエータ本体32を搭載した中心型バタフライバルブ42とから構成されており、アクチュエータ本体32によりバタフライバルブ42のステム43を介してバタフライバルブ42の弁体44を駆動し、弁体44を全開位置又は全閉位置へと回動させる。弁閉位置に対した円盤状の弁体44は、略円筒状のバルブシートゴム48に密着することで環状のシート部を形成し、弁座シールを行う。
【0067】
緊急遮断システム45は、緊急遮断弁用電動回転弁41と制御装置46とから構成されており、制御装置46の図示しない操作部を通じて緊急遮断弁用電動回転弁41の開閉操作をすることができるとともに、緊急時のアクチュエータ本体32の作動条件を設定することができる。また、制御装置46は感震器47を備えており、感震器47が事前に設定された震度以上の震度を検知した場合には、アクチュエータ本体32に閉弁指令を送信してバタフライバルブ42の弁体44を全閉位置へと回転させ、バタフライバルブ42を緊急遮断する。なお、感震器は電動アクチュエータに内蔵するようにしてもよい。
【0068】
次いで、本発明における回生制動付き電動アクチュエータの動作について、このアクチュエータ本体32をバタフライバルに搭載した緊急遮断用電動回転弁とこの緊急遮断用電動回転弁を使用した緊急遮断システムを例として、図1及び図3により詳細に説明する。
【0069】
先ず、緊急遮断弁が給水タンクの吐出部を緊急遮断する動作について説明する。大規模地震が発生した緊急時には、商業電源が停電するか、あるいは地震を感知した制御装置46からアクチュエータ本体32に閉弁指令が発せられ、アクチュエータ本体32の電源は商業電源からアクチュエータ本体32自体が有する直流電源(二次電池)に切換えられると同時に、事前の設定に従ってアクチュエータ本体32は弁体44を閉弁位置に向けて回転させる全閉操作を開始する。
【0070】
この時点では、全開位置リミットスイッチ13は開状態であり、全閉位置リミットスイッチ14は閉状態(導通)である。この状態では、端子21から全閉位置リミットスイッチ14、配線25、ダイオードブリッジ26、配線30、リレー動作閾値回路手段15を経由し、配線31、ダイオードブリッジ26、配線24、ダイオードD1、端子20に至る回路が構成され、配線30と配線31間の電圧Vbは、直流電源の電圧からダイオードブリッジ26の順方向電圧を引いた値に等しい。なお、手動操作を行う場合以外では、インターロックスイッチ27は通電状態に維持されている。
【0071】
リレー動作点閾値回路手段15では、分圧回路により電圧Vbを降圧してスイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加しているが、この印加された電圧は動作バイアス点よりも高いので、この時点ではスイッチングトランジスタ15eのコレクタ(C)とエミッタ(E)との間は通電している。このため、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aには、直流電源から電圧Vbの電圧が供給され、回生制動切り替えリレー16は作動状態にある。すなわち、接点16bはDCモータ12と配線22を接続する側に、接点16cはDCモータ12と配線23とを接続する側にあるため、直流電源とDCモータ12は、端子21、全閉位置リミットスイッチ14、配線23、回生制動切り替えリレー16、配線22、ダイオードD1、端子20に至る回路により接続されており、DCモータ12は事前の設定に従って弁体を全閉位置に向けて回転させる。
【0072】
弁体44が全閉位置に達すると全閉位置リミットスイッチ14が図1に示すように作動して導通状態を終了した開状態となり、直流電源とDCモータ12との接続が切られるが、DCモータ12のロータは、慣性モーメントによるフライホイール効果により直ちに停止することなく惰走回転を行う。このロータの惰走回転によりDCモータ12は直流発電機として機能することになり、惰走回転によって生じた起電力(惰走起電力)は、配線22、23、24、25、ダイオードブリッジ26、配線30、31を介してリレー動作点閾値回路手段15と回生制動切り替えリレー16に供給される。
【0073】
ここで、本発明の緊急遮断用電動回転弁とは異なり、リレー動作点閾値回路手段15を備えていない場合には、惰走起電力は配線22、23を介し、回生制動回路に切り替えるためのリレーに直接供給されることになる。一般的にリレーは、定格電圧の80%以上で作動し、定格電圧の10%以下で復帰するため、DCモータのロータの慣性モーメントによる惰走起電力が定格電圧の10%以下、言い換えると、DCモータの回転数が回転抵抗により自然に定格回転数の10%以下まで低下するまでの間は、リレーの作動状態が継続し、回生制動回路への切り替えが行われず、DCモータのオーバーランが発生する。
【0074】
このDCモータのオーバーランに伴ってバタフライバルブを使用した緊急遮断用電動回転弁では、弁体は全閉位置に達してもなお回転を続け、弁体のバルブシートゴム48への食い込みが生じる。DCモータがある程度オーバーランした段階で、DCモータのロータの惰走回転はエネルギーを失って停止するが、DCモータを使用したアクチュエータのギア機構は保持トルクが不足しているため、食い込みにより圧縮されたバルブシートゴム48の弾性力による弁体44の押し戻しに対抗し、弁体44をその位置で保持することができないので、弁体44は弁開方向に押し戻される。
【0075】
このため、全閉位置リミットスイッチ14が再び導通してDCモータ12に電源が供給され、弁体44が全閉位置に向けて回転し、全閉位置で全閉位置リミットスイッチ14が作動して導通状態が終了し、DCモータ12のオーバーランが発生する動作を繰り返し、弁体44が全閉位置で微開度の開閉を繰り返すハンチングが発生する。
【0076】
前述したように、ハンチングが発生すると、給水タンクが漏水状態になる重大な問題が発生するが、DCモータのオーバーランが過度に発生すると、起動障害、ジャンピングが発生する原因にもなり、電動アクチュエータの故障原因にもなる。
【0077】
これに対し、本発明における緊急遮断用電動回転弁では、DCモータ12のロータの惰走回転により発生した惰走起電力を配線22、23から分岐した配線24、25、ダイオードブリッジ26、配線30、31を介してリレー動作点閾値回路手段15に供給し、動作点閾値回路手段15の分圧回路で降圧した電圧をスイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加している。このスイッチングトランジスタ15eは、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aに流れる電流の接続を制御しており、ベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧が動作バイアス点以上である場合には、コレクタ(C)とエミッタ(E)との間は導通し、リレーコイル16aに電流が流れて回生制動切り替えリレー16を動作状態(直流電源とDCモータとが接続され、DCモータ12と回生抵抗17が接続されていない状態)を維持する。
【0078】
このように、リレー動作点閾値回路手段15では、配線22、23間に印加される電圧
をダイオードブリッジ26を介した電圧Vbとし、このVbを分圧回路で降圧してスイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加するようにしているため、直流電源とDCモータ12との接続が切れた場合、ロータの惰走回転が回転抵抗により減速し、惰走起電力が電源定格電圧よりやや低下した時点でスイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧が動作バイアス点(リレー動作点閾値電圧)以下となってコレクタ(C)とエミッタ(E)との導通が切られ、リレーコイル16aを流れる電流を早期に遮断することができる。
【0079】
本実施例では、スイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧が電源定格電圧の75%以上である場合にスイッチングトランジスタ15eのコレクタ(C)とエミッタ(E)との間が導通するようにリレー動作点閾値回路手段15を構成している。
【0080】
以上のようにリレー動作点閾値回路手段15が構成されているため、直流電源とDCモータ12との接続が切られた場合に発生するDCモータ12の惰走起電力は、リレー動作点閾値回路手段15に供給され、分圧回路で降圧された電圧がスイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される。
【0081】
直流電源とDCモータ12との間の接続が切られた直後は、DCモータ12のロータの惰走回転は転がり摩擦抵抗等の影響により低下し、その結果、リレー動作点閾値回路手段15に供給される電圧も低下する。スイッチングトランジスタ15eのベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧は、分圧回路で降圧されているため、ベース(B)とエミッタ(E)との間に印加される電圧は直ちに動作バイアス点以下に低下し、コレクタ(C)とエミッタ(E)との間が導通しなくなり、回生制動切り替えリレー16のリレーコイル16aに電流が流れなくなる。
【0082】
リレーを用いた一般的な回路では、前述のように、DCモータの回転数が定格回転数の10%以下まで低下しなければリレーの作動状態が継続するところ、本実施では、DCモータの回転数が定格回転数の75%以下に低下した時点で、リレーコイルに電流が流れなくなる。
【0083】
このため、直ちに回生制動切り替えリレー16は復帰動作を行い、接点16bはDCモータ12と回生抵抗17とを接続する側に、接点16cもDCモータ12と回生抵抗17とを接続する側に切替わる。これにより、DCモータ12と回生抵抗17との間には回生制動回路が形成され、ロータの惰走回転により発生した電気エネルギーが回生抵抗17での発熱により瞬時に消費され、ロータの惰走回転を極少化してDCモータ12のオーバーランが防止される。
【0084】
従って、本発明における緊急遮断用電動回転弁では、バタフライバルブを使用した場合には、弁体44がバルブシートゴム48へ食い込むことにより生じるハンチング、起動障害、ジャンピングの発生を防止することができる。
【0085】
さらに、回生制動回路を形成した場合の回生制動力は極めて大きいため、DCモータを使用したアクチュエータのギア機構は保持トルクが不足するという欠点を補うことができる。
【0086】
次に、緊急遮断用電動回転弁を手動操作する場合について説明する。緊急時に緊急遮断用電動回転弁が作動し、回生制動回路が形成されている場合に、制御装置46の故障や二次電池の消耗等の不測の事態が発生し、手動操作でバルブを全開位置に回転しようとすると、手動操作に伴ってDCモータ12のロータが回転して起電力が発生するため、回生制動力が作用する。この回生制動力が極めて大きく、手動操作でバルブを全開位置に戻すことは困難である。このような場合には、インターロックスイッチ27によりDCモータ12と回生抵抗17との間の接続を切り離すと回生制動回路が解消されるため、アクチュエータ本体32の手動操作トルクを軽減させ、容易に手動操作することができる。
【0087】
さらに、回生制動回路が形成されていない通常時に、手動操作する際やアクチュエータ本体32のカバー33を開放して点検などを行う際に、インターロックスイッチ27により直流電源とDCモータ12との通電を切ることができるので、DCモータが回転動作することによる怪我の危険を排除することができる。
【0088】
このようにインターロックスイッチ27をDCモータ12への直流電源の供給を遮断することができるとともに、DCモータ12と回生抵抗17の接続を遮断して回生制動の解除が行える位置に設けているので、1個のインターロックスイッチ27を操作することにより、通常の点検作業を安全に行うことができるとともに、緊急時には回生制動回路を解除して手動操作を容易に行うことができる。
【0089】
以上のとおり、本発明における緊急遮断用電動回転弁は、全開位置リミットスイッチあるいは全閉位置リミットスイッチが作動して直流電源とDCモータとの接続が切られた後、DCモータのロータの惰走起電力が原因となってリレーの復帰動作が遅れ、そのために回生制動回路の形成が遅くなることを突き止め、この不具合を解決したものである。
【0090】
すなわち、直流電源とDCモータとの接続が切られた後に、DCモータの回転数が転がり摩擦により低下することを待つことなく、分圧回路とスイッチングトランジスタにより回生制動回路を形成するリレーの作動を速やかに制御し、早期に回生制動効果を発揮させてDCモータの惰走回転を極少化し、DCモータのオーバーランによるハンチング等が生じる不具合の解決を図っている。
【0091】
以上は、本発明における電動アクチュエータをバタフライバルに搭載した緊急遮断用電動回転弁について説明したが、本発明における電動アクチュエータはバタフライバルブと同様の回転弁であるボールバルブについても使用することができる。本発明における電動アクチュエータをボールバルブ搭載して使用した場合には、特に回転軸回りの慣性モーメントが大きい比較的大口径のボール弁体を開弁位置に誤差を極少化して回転させることができる。
【0092】
本発明の回生制動回路付き電動アクチュエータと緊急遮断弁用電動回転弁及び緊急遮断システムは、緊急遮断弁として好適であるだけでなく、DCモータのオーバーランを極少化して回転弁の全開位置、全閉位置を正しく制御することができるので、その適用範囲と利用価値は非常に大きいものがある。
【符号の説明】
【0093】
1 電動アクチュエータ
11 回生制動付き電動アクチュエータの回路
12 DCモータ
13 全開位置リミットスイッチ
14 全閉位置リミットスイッチ
15 リレー動作点閾値回路手段
16 回生制動切り替えリレー
17 回生抵抗
27 インターロックスイッチ
32 アクチュエータ本体
41 緊急遮断弁用電動回転弁
42 バタフライバルブ
45 緊急遮断システム
46 制御装置
47 感震器
図1
図2
図3
図4