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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】EGR装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20220217BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20220217BHJP
   F02M 26/44 20160101ALI20220217BHJP
【FI】
F02M26/35 D
F02M26/50 321
F02M26/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017184062
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2019060260
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 武志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 篤史
(72)【発明者】
【氏名】坂井 敦紘
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-011227(JP,A)
【文献】特開2016-118121(JP,A)
【文献】特開2015-132234(JP,A)
【文献】米国特許第07131263(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102015005041(DE,A1)
【文献】特開2008-212927(JP,A)
【文献】特開2014-185618(JP,A)
【文献】特開2012-207633(JP,A)
【文献】特開2008-280945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/35
F02M 26/50
F02M 26/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続され、吸気が流通する吸気管と、
前記エンジンに接続され、前記エンジンから排出される排気ガスが流通する排気管と、
前記排気管に排出された前記排気ガスを、EGRガスとして前記吸気管に還流させるEGR管と、
前記EGR管において前記EGRガスが前記吸気管へと還流する連結位置の下方側に設けられ、前記EGRガスから発生する凝縮水を貯留する凝縮水貯留部と、
を備え、
前記EGR管は、前記凝縮水貯留部を挿入および抜去可能な開口を有し、
前記凝縮水貯留部は、前記EGR管の前記開口を通じて前記EGR管の内部に対して挿入および抜去可能であり、
前記EGR管の内部挿入された前記凝縮水貯留部の上面側は、前記吸気管の下面側と接触しており、
前記吸気管の下面側に設けられた開口部と、前記凝縮水貯留部の上面側において前記吸気管の前記開口部と対向する位置に設けられた開口部とを通じて、前記吸気管と前記凝縮水貯留部とが連通している、EGR装置。
【請求項2】
前記EGR管の内部に挿入された前記凝縮水貯留部の底部は、前記EGR管の底部と当接しており、
前記EGR管の内部に挿入された前記凝縮水貯留部の壁部は、前記EGR管の壁部と当接している請求項1に記載のEGR装置。
【請求項3】
前記凝縮水貯留部は、
前記EGR管における前記凝縮水貯留部が設けられていない部分の底部よりも鉛直方向下方側に位置する底部を有する請求項1または2に記載のEGR装置。
【請求項4】
前記EGR管は、前記吸気管におけるインテークマニホールドに連通される請求項1から3のいずれか1項に記載のEGR装置。
【請求項5】
前記EGR管は、前記インテークマニホールドにおける各吸気ポートへと前記吸気を分岐させる吸気ブランチに連通される請求項1からのいずれか1項に記載のEGR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出された排気ガスをエンジンの吸気管に還流させるEGR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)装置は、排気ガス(EGRガス)を吸気流路内に還流する。EGRガスは、吸気流路内で吸気と合流する際に、吸気流路を流通する吸気によって冷却される。このとき、EGRガス中に含まれている水分が凝縮し、凝縮水が発生することがある。この凝縮水が、吸気とともにシリンダ内に吸い込まれると、水撃(所謂ウォーターハンマ)が生じ、燃焼室の破損を招くおそれがある。
【0003】
そこで、吸気流路を形成する吸気管の鉛直方向下方に、容積体が設けられ、凝縮水を容積体に貯留させるEGR装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-190268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のEGR装置は、凝縮水を捕集することで、凝縮水がシリンダ内に吸い込まれることを防ぎ、水撃(ウォーターハンマ)による燃焼室の破損等の不具合を低減することができる。しかし、この凝縮水には、EGRガス(および排気ガス)中の酸性物質が含まれている。容積体は、樹脂で形成されている場合、凝縮水中の酸性物質によって腐食して破損するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、凝縮水による吸気管の破損を抑制することができるEGR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のEGR装置は、エンジンに接続され、吸気が流通する吸気管と、エンジンに接続され、エンジンから排出される排気ガスが流通する排気管と、排気管に排出された排気ガスを、EGRガスとして吸気管に還流させるEGR管と、EGR管においてEGRガスが吸気管へと還流する連結位置の下方側に設けられ、EGRガスから発生する凝縮水を貯留する凝縮水貯留部と、を備え、また、EGR管は、凝縮水貯留部を挿入および抜去可能な開口を有し、凝縮水貯留部は、EGR管の開口を通じてEGR管の内部に対して挿入および抜去可能であり、EGR管の内部挿入された凝縮水貯留部の上面側は、吸気管の下面側と接触しており、吸気管の下面側に設けられた開口部と、凝縮水貯留部の上面側において吸気管の開口部と対向する位置に設けられた開口部とを通じて、吸気管と凝縮水貯留部とが連通している。
また、EGR管の内部に挿入された凝縮水貯留部の底部は、EGR管の底部と当接しており、EGR管の内部に挿入された凝縮水貯留部の壁部は、EGR管の壁部と当接しているとよい。
【0008】
また、凝縮水貯留部は、EGR管における凝縮水貯留部が設けられていない部分の底部よりも鉛直方向下方側に位置する底部を有するとよい。
【0009】
また、EGR管は、吸気管におけるインテークマニホールドに連通されるとよい。
【0010】
また、EGR管は、インテークマニホールドにおける各吸気ポートへと吸気を分岐させる吸気ブランチに連通されるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で、凝縮水による破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】EGR装置を備えたエンジンの概略図である。
図2】(a)は、下流側EGR管が連結されるインテークマニホールドを車両の前方側から見た図であり、(b)は、図2(a)の部分断面図である。
図3】インテークマニホールドおよび下流側EGR管を車両の下方側から見た図である。
図4】凝縮水貯留部の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るEGR装置100を備えたエンジン1の概略図である。まず、エンジン1の概略構成について説明し、次にEGR装置100の構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、エンジン1は、クランクシャフト2を挟んで2つのシリンダブロック3にそれぞれ形成されたシリンダボア3aが対向して配された水平対向4気筒エンジンである。
【0016】
シリンダブロック3には、クランクケース4が一体形成されるとともに、クランクケース4とは反対側にシリンダヘッド5が固定されている。クランクシャフト2は、クランクケース4によって形成されたクランク室6内に回転自在に支持される。
【0017】
シリンダボア3aには、コネクティングロッド7を介してクランクシャフト2に連結されたピストン8が摺動可能に収容されている。そして、エンジン1では、シリンダボア3aと、シリンダヘッド5と、ピストン8の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室9として形成される。
【0018】
シリンダヘッド5には、吸気ポート10および排気ポート11が燃焼室9に連通するように形成される。吸気ポート10と燃焼室9との間には、吸気弁12の先端が位置し、排気ポート11と燃焼室9との間には、排気弁13の先端が位置している。
【0019】
また、エンジン1では、シリンダヘッド5およびヘッドカバー14に囲まれたカム室内に、吸気弁用カム15および排気弁用カム16が設けられる。吸気弁用カム15は、吸気弁12の他端に当接されており、回転することで吸気弁12を軸方向に移動させる。これにより、吸気弁12は、吸気ポート10と燃焼室9との間を開閉する。排気弁用カム16は、排気弁13の他端に当接されており、回転することで排気弁13を軸方向に移動させる。これにより、排気弁13は、排気ポート11と燃焼室9との間を開閉する。
【0020】
吸気ポート10の上流側には、インテークマニホールド17を含む吸気管18が接続される。また、排気ポート11の下流側には、エキゾーストマニホールド19を含む排気管20が接続される。
【0021】
インテークマニホールド17は、エンジン1の上方に配置されている。インテークマニホールド17は、樹脂製の射出成形品であり、略箱形状のインテークコレクタ21と、複数の吸気ブランチ22とを有している。インテークコレクタ21は、吸気ブランチ22に接続されている。吸気ブランチ22は、上流側がインテークコレクタ21と接続され、下流側がエンジン1の各吸気ポート10に接続されている。
【0022】
吸気管18には、エアクリーナ23およびスロットル弁24が上流側から順に設けられる。エアクリーナ23は、吸気に含まれる塵や埃などの異物を除去し、吸気を下流側へ供給する。スロットル弁24は、不図示のアクチュエータによって開度が調整されることで、インテークマニホールド17に供給される吸気の流量を可変する。
【0023】
スロットル弁24により流量が調整された吸気は、インテークマニホールド17のインテークコレクタ21に流入した後、吸気ブランチ22へと分配され、吸気ポート10を介して燃焼室9へ導かれる。
【0024】
そして、燃焼室9に導かれた吸気と、不図示のインジェクタから噴射された燃料との混合気が、シリンダヘッド5に設けられた不図示の点火プラグによって所定のタイミングで点火されて燃焼される。かかる燃焼により、ピストン8がシリンダボア3a内で往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド7を通じてクランクシャフト2の回転運動に変換される。
【0025】
また、燃焼により発生した排気ガスは、排気ポート11、エキゾーストマニホールド19を介して排気管20に導かれ、排気管20に設けられた触媒25で浄化された後、車外へ排出される。
【0026】
(EGR装置100)
EGR装置100は、インテークマニホールド17を含む吸気管18、排気管20およびEGR管26を含んで構成される。EGR管26は、排気管20と吸気管18とに接続されている。EGR管26は、排気管20に流通する排気ガスの一部を、吸気管18に還流させる。以下では、EGR管26を介して吸気管18に還流される排気ガスをEGRガスと称する。EGRガスは、吸気管18から流入する吸気とともに、インテークマニホールド17、吸気ポート10を介して燃焼室9に供給される。このように、EGRガスを吸気とともに燃焼室9に供給することで、酸素濃度を低下させて、燃料の燃焼温度を低減し、NOx(窒素酸化物)などの生成を抑制する。
【0027】
EGR管26は、上流側であって金属で形成された上流側EGR管26aと、下流側であって樹脂で形成された下流側EGR管26bとによって構成されている。上流側EGR管26aには、EGRクーラ27およびEGRバルブ28が上流側から順に設けられている。EGRクーラ27は、EGRガスを冷却する。EGRバルブ28は、開度が調整されることで、上流側EGR管26aを流通するEGRガスの流量を可変する。下流側EGR管26bには、凝縮水貯留部110が設けられている。凝縮水貯留部110は、詳しくは後述するように、凝縮水を貯留する。
【0028】
図2(a)は、下流側EGR管26bが連結されるインテークマニホールド17を車両の前方側から見た図であり、図2(b)は、図2(a)の部分断面図である。また、図3は、インテークマニホールド17および下流側EGR管26bを車両の下方側から見た図である。なお、図2(a)、図2(b)および図3において、鉛直上方向を上方向とし、鉛直下方向を下方向とし、車両の進行方向に対して右方向を右方向とし、車両の進行方向に対して左方向を左方向とし、車両の進行方向を前方向とし、車両の後進方向を後方向として説明する。以下では、まず、インテークマニホールド17の構成について簡単に説明し、次に凝縮水貯留部110の形状について詳しく説明する。
【0029】
インテークマニホールド17は、図2(a)、図2(b)および図3に示すように、樹脂からなる上側分割体17aと下側分割体17bとが圧着接合(溶着)されることで、インテークコレクタ21および吸気ブランチ22が一体的に形成されている。
【0030】
インテークマニホールド17は、インテークコレクタ21を挟んで左右方向に、2つの吸気ブランチ22がそれぞれ形成されている。また、吸気ブランチ22は、上流側から下流側にかけて、水平方向(図中、左右方向)に延在するとともに、途中から下方向に屈曲するように形成されている。
【0031】
また、インテークコレクタ21には、後方向側に吸気孔21aが形成されており、吸気孔21aには吸気管18が接続されている。
【0032】
下側分割体17bの下方には、樹脂からなる下流側EGR管26bが設けられている。下流側EGR管26bは、上方向が開口したコの字型に断面が形成されており、下側分割体17bに対して圧着接合(溶着)される。そして、下流側EGR管26bと、下側分割体17bの下面との間で、EGRガスが流通するEGR流路210を形成する。
【0033】
また、下側分割体17bにおける下流側EGR管26bに対向する前方面17cには、EGR流路210と連通するEGR孔17dが形成されている。そして、EGR孔17dには、上流側EGR管26aが接続される。
【0034】
下流側EGR管26bは、インテークコレクタ21および吸気ブランチ22に沿って左右方向に直線的に延在するとともに、下流端部において各吸気ブランチ22に沿って分岐するように形成されている。なお、下流側EGR管26bは、吸気ブランチ22のうち、水平方向に延在する部分に沿って設けられている。
【0035】
また、下側分割体17b(吸気ブランチ22)における下流側EGR管26bと対向する位置であって、EGR流路210の最下流の位置には、吸気ブランチ22内で吸気が流通するブランチ流路(吸気流路)220と、EGR流路210とを連通させる開口部22cが形成されている。
【0036】
また、下流側EGR管26bには、下流端部であって、開口部22cの下方向にそれぞれ凝縮水貯留部110が設けられる。言い換えると、凝縮水貯留部110は、下流側EGR管26bにおいてEGRガスが吸気ブランチ22に還流する連結位置の下方向に設けられる。凝縮水貯留部110は、下流側EGR管26bを介して流通したEGRガスが吸気ブランチ22内で吸気によって冷却されたときに生じる排気凝縮水(以下、単に凝縮水と称する)を貯留する。以下、凝縮水貯留部110の詳細な構成について説明する。
【0037】
凝縮水貯留部110は、4つの締結部材120によって下流側EGR管26bに締結される、取り外しが可能な部材である。締結部材120は、例えば、プレート部材120aおよびボルト120bで構成される。
【0038】
凝縮水貯留部110は、インテークマニホールド17および下流側EGR管26b同様、樹脂からなり、約150℃までの耐熱性を有している。
【0039】
また、凝縮水貯留部110は、内部に、凝縮水を貯留するための窪みを有する。窪みは、凝縮水貯留部110の内部の下方向に形成される。窪みの容積は、エンジン1の排気量(排気ガスあるいはEGRガス)に応じた容量(サージ容量)を持つ。
【0040】
ここで、凝縮水貯留部110の形状について、図2(b)および図4を用いて、詳しく説明する。図4は、凝縮水貯留部110の形状を説明するための図である。図4は、図2(a)のIV-IV線における略断面図である。
【0041】
図2(b)および図4に示すように、下流側EGR管26bの下流端部は、凝縮水貯留部110を挿入および抜去が可能なように側面が開口している。具体的には、前方側に位置する下流側EGR管26bの下流端部は、前方側が開口しており、後方側に位置する下流側EGR管26bの下流端部は、後方側が開口している。
【0042】
凝縮水貯留部110は、内部に、EGR流路210の一部として機能する空洞空間を有する。凝縮水貯留部110は、底部112と、壁部114と、第1開口部(開口部)116と、第2開口部(開口部)118とを有する。底部112は、下流側EGR管26bの底部26cに当接して設置される。壁部114は、下流側EGR管26bの壁部26dに当接して設置される。
【0043】
第1開口部116は、凝縮水貯留部110内を流通するEGRガスの上流側(下流側EGR管26bとの連接箇所)に設けられる。すなわち、第1開口部116は、下流側EGR管26bに向けて、水平方向に開口されている。第2開口部118は、下側分割体17bの開口部22cと対向する位置に設けられる。すなわち、第2開口部118は、吸気ブランチ22に向けて、鉛直方向上方に開口されている。
【0044】
また、凝縮水貯留部110の鉛直方向の長さは、下流側EGR管26bにおける凝縮水貯留部110が設けられていない部分の鉛直方向の長さよりも長く形成される。言い換えれば、凝縮水貯留部110の底部112は、下流側EGR管26bにおける凝縮水貯留部110が設けられていない部分の底部よりも鉛直方向下方に位置する。このことにより、凝縮水貯留部110の内部には、窪みが形成されることとなる。
【0045】
ここで、EGRガスは、EGR孔17dから、下流側EGR管26bへと導入される。そして、EGRガスは、水平方向に流通され、第1開口部116を介し、凝縮水貯留部110へと導入される。凝縮水貯留部110へと導入されたEGRガスは、第2開口部118へと上方向に流通され、吸気ブランチ22(ブランチ流路220)に導入される。
【0046】
上述したように、一方で、吸気は、吸気管18、吸気孔21a、インテークコレクタ21、吸気ブランチ22、吸気ポート10の順に導入される。よって、凝縮水貯留部110の鉛直方向上方におけるブランチ流路220において、吸気とEGRガスは、合流する(混ざりあう)。
【0047】
このとき、EGRガスは、吸気よりも高い温度を有するとともに、水分を含んでいる。そのため、EGRガスと吸気が混ざりあう(合流する)際に、EGRガスは冷却される。EGRガスが冷却される際に、EGRガスに含まれる水分が凝縮され、凝縮水が発生する。つまり、EGRガス(暖かい空気)と吸気(冷たい空気)が交わることで、凝縮水(水)が発生する。上述したように、EGRガスは、開口部22cおよび第2開口部118の近傍で吸気と合流する。そのため、凝縮水は、開口部22cおよび第2開口部118の近傍で発生する。
【0048】
ここで、凝縮水には、EGRガス中に含まれていた酸性物質が混入している。そのため、凝縮水に含まれる酸性物質によって、樹脂が腐食するおそれがある。そこで、本実施形態のEGR装置100は、取り換え(取り外し)の可能な凝縮水貯留部110を、凝縮水が発生しやすい箇所(EGRガスと吸気の合流箇所)の鉛直方向下方に設けている。
【0049】
凝縮水貯留部110は、上述したように、吸気ブランチ22が水平に形成されている部分の鉛直方向下方に設けられている。そのため、開口部22cおよび第2開口部118の近傍で発生した凝縮水は、自重により、凝縮水貯留部110に向かって流れ落ちる。凝縮水貯留部110に流れ落ちた凝縮水は、凝縮水貯留部110の底部112に貯留される。
【0050】
凝縮水貯留部110に貯留される凝縮水は、例えば、車両の走行中など、EGRガスがEGR管26内を流通している際は、EGRガスの風圧によって蒸発(気化)される。しかし、例えば、車両の停止中など、EGRガスがEGR管26内を流通していない際は、凝縮水は、凝縮水貯留部110に貯留されたままになる。
【0051】
凝縮水が、所定の時間以上凝縮水貯留部110に貯留されている(浸漬されている)と、凝縮水貯留部110は樹脂によって形成されているため、腐食してしまう。しかし、凝縮水貯留部110は、取り外しが可能なため、腐食によって破損してしまう前に交換することができる。よって、インテークマニホールド17やEGR管26は、凝縮水によって腐食したり、亀裂が生じたり、破損したりすることを回避することが可能になる。
【0052】
このように、本実施形態のEGR装置100は、インテークマニホールド17内で発生する凝縮水を貯留する凝縮水貯留部110を備える。また、凝縮水貯留部110はボルト120bで下流側EGR管26bに締結され、取り換えが可能に備えられる。これにより、EGR装置100は、取り換えが可能な簡易な構成で、凝縮水による吸気管18等の破損を抑制することができる。
【0053】
また、EGR装置100は、凝縮水貯留部110の底部112が、隣接する下流側EGR管26bの底部26cよりも鉛直方向下方に位置している。加えて、凝縮水貯留部110の第2開口部118内の面積が、凝縮水貯留部110内の底部112の面積よりも狭くなるように形成されている。このことにより、凝縮水貯留部110に貯留した凝縮水が、下流側EGR管26b内へ流入(逆流)すること、および吸気ブランチ22へと流入(進入)することを防止することができる。
【0054】
また、EGR装置100は、下流側EGR管26bが、4つの各吸気ブランチ22へと分岐するように設けられている。よって、EGR装置100には、凝縮水貯留部110が、4つ設けられている。そして、各吸気ブランチ22に設けられている凝縮水貯留部110は、別々に取り外すことができる。このことにより、凝縮水貯留部110は、劣化(腐食)によって破損しそうなものだけを交換することができ、コストの削減を図ることができる。
【0055】
例えば、下流側EGR管26bは、各気筒に均一にEGRガスを分配するように設けられている。しかし、必ずしも各凝縮水貯留部110に均一に凝縮水が貯留するわけではない。例えば、定期点検(例えば、12か月に1度)で、4つのうちの1つの凝縮水貯留部110の劣化(腐食)が始まっていることが見受けられたら、その1か所だけを交換することができ、交換不要な箇所まで交換することは無い。そのため、コストの削減へとつなげることができる。
【0056】
なお、通常、車両は、例えば10万キロ走行すると、乗り換えられることが多い。インテークマニホールド17は、例えば、約25万キロまで走行可能に設計されている。そして、凝縮水貯留部110は、例えば、約7万キロまで走行可能に設計されている。よって、凝縮水貯留部110は、約1度の交換で、インテークマニホールド17を凝縮水による破損から防ぐことができる。
【0057】
また、凝縮水貯留部110は、その配置および形状で、凝縮水を貯留することができるものである。よって、構造的にシンプル(簡易)に形成されている。また、新たに付け加える部品も必要としない。そのため、電力を消費することがないため、燃費の向上へとつなげることができる。
【0058】
また、下流側EGR管26bが、水平な位置で吸気管18(インテークマニホールド17)と接続される。エンジン1において、インテークマニホールド17は、縦置きされたエンジン1の上方に配置されている。そのため、凝縮水貯留部110は、エンジン1において、車両の上側に位置することとなる。よって、凝縮水貯留部110の前側および後側は、アクセス(取り換え作業)がしやすい。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、本実施形態では、EGR装置100を水平対向4気筒エンジンに適用した例を説明した。しかし、本発明はこれに限らず、V型エンジンや直列エンジンにも適用することができる。例えば、直列4気筒のエンジンでも、EGRガスを車両の下からインテークマニホールドに導入する形状のエンジンなど、凝縮水を貯留できる条件をもつエンジンに適用することができる。
【0061】
また、本実施形態では、EGR管26(下流側EGR管26b)がインテークマニホールド17のインテークコレクタ21に連結するとともに、吸気ブランチ22の鉛直方向下方側に凝縮水貯留部110を設けた例を説明した。しかし、EGR管26が連結する箇所はこれに限らず、インテークコレクタ21よりも上流側で吸気管18に連結していてもよい。
【0062】
また、その場合、凝縮水貯留部110は、吸気管18においてEGR管26が連結する箇所の鉛直方向下方側に設けられていればよい。あるいは、凝縮水貯留部110は、EGR管26が吸気管18と連結する箇所よりも吸気の流れ方向の下流側における、吸気管18の鉛直方向下方側に設けられていればよい。
【0063】
また、本実施形態では、締結部材120は、プレート部材120aと、ボルト120bとで構成される場合について説明した。しかし、凝縮水貯留部110が、吸気ブランチ22および下流側EGR管26bと締結されれば、締結部材120は、プレート部材120aとボルト120b以外の部材であってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、凝縮水貯留部110がプレート部材120aと、ボルト120bとによって、吸気ブランチ22およびEGR管26と締結される場合について説明した。しかし、凝縮水貯留部110が、吸気ブランチ22および下流側EGR管26bと締結されればよく、例えば、樹脂製の吸気ブランチ22と、EGR管26と、凝縮水貯留部110とに穴を開けて、直接締結部材120(例えば、ボルト120b)で締結されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エンジンから排出された排気ガスをエンジンの吸気管に還流させる、EGR装置に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
17 インテークマニホールド
18 吸気管
20 排気管
22 吸気ブランチ
26 EGR管
26c 底部
100 EGR装置
110 凝縮水貯留部
112 底部
118 第2開口部(開口部)
図1
図2
図3
図4