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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ワイヤーロープストッパー
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/06 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
E01F15/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017187081
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019060180
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第20回無限の会((株)ネクスコ・メンテナンス北海道社内発表会)にて工藤秀司らが発表した(開催日:平成29年7月7日、開催場所:札幌市白石区北郷2条14条目3-18((株)ネクスコ・メンテナンス北海道本社内))。
(73)【特許権者】
【識別番号】510226783
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・メンテナンス北海道
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀司
(72)【発明者】
【氏名】溝口 真一
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053209(JP,A)
【文献】実開昭60-190804(JP,U)
【文献】実開昭60-100414(JP,U)
【文献】特開2011-058574(JP,A)
【文献】実開昭54-101806(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0130775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01F 13/00-15/14
E04H 17/00-17/26
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて配置された複数本の中間支柱に複数本のワイヤーロープを上下に並べて挿通し所定のテンションをかけることにより展張されてなるワイヤーロープ式防護柵において、所定の前記中間支柱を境界として片側のテンションを維持しつつ反対側のテンションのみを解除するために使用するワイヤーロープストッパーであって、
前記中間支柱と別体であって、地面に固定させずに前記中間支柱の軸線に沿ってテンション解除側の側面に配置されるとともに前記各ワイヤーロープをそれぞれ保持するロープ保持部と、
一端を前記ロープ保持部に対して回動自在に連結されているとともに、他端を前記中間支柱と交差させてテンション維持側の地面に接地しうる長さに形成されており、前記中間支柱が引張力によって傾倒するのを防止する傾倒防止脚部と
を有する、前記ワイヤーロープストッパー。
【請求項2】
前記傾倒防止脚部の連結端部は、前記ロープ保持部を前記中間支柱のテンション解除側側面に配置した際に前記中間支柱と接触しない位置で前記ロープ保持部に連結されており、前記傾倒防止脚部の途中位置には、当該傾斜防止脚部をワイヤーロープ側に近接させるとともに前記ワイヤーロープのテンション方向に沿って地面に接地可能にするための屈曲部が形成されている、請求項1に記載のワイヤーロープストッパー。
【請求項3】
前記傾倒防止脚部には、テンション維持側の地面に接地される際にテンションがかかっているいずれかのワイヤーロープに連結可能なロープ連結部が設けられている、請求項1または請求項2に記載のワイヤーロープストッパー。
【請求項4】
前記ロープ保持部は、各ワイヤーロープを一体的に保持する保持部本体と、各ワイヤーロープの間隔に合わせて前記保持部本体に並設されており各ワイヤーロープを収めるロープ受部と、前記各ロープ受部に収められた前記ワイヤーロープを狭持するための複数のJ形ボルトとを有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤーロープストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロープ式防護柵において所定の中間支柱を境界として片側のテンションを維持しつつ、反対側のテンションのみを解除するためのワイヤーロープストッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路には、4車線で計画された道路のうちの2車線のみを暫定的に供用する、いわゆる暫定2車線区間というものがある。この暫定2車線区間では、将来的に4車線とすることができるように、中央分離帯として簡易な樹脂製ポールが用いられている。しかしながら、このような樹脂製ポールは、反対車線を防護する機能は皆無であり、居眠り運転等によって車両が反対車線に飛び出す事故を防止することはできない。
【0003】
そこで、近年、暫定2車線区間の新たな簡易中央分離帯として、複数本のワイヤーロープと、これら各ワイヤーロープの両端をそれぞれ固定するロープ固定基礎と、これらロープ固定基礎の間に立設されており前記各ワイヤーロープを挿通させて上下方向に所定の間隔をもって架設する複数本の中間支柱と、前記各ワイヤーロープの張力を調整する張力調整具とを有するワイヤーロープ式防護柵が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。このワイヤーロープ式防護柵は、強度の弱い中間支柱を用いることで、車両が衝突した際に変形して車両乗員の衝撃を緩和するとともに、ワイヤーロープの張力によって反対車線への飛び出しを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5156845号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所、”ワイヤーロープ式防護柵整備ガイドライン(案)、平成28年3月発行、[平成29年9月15日検索]、インターネット<URL:http://www.e-nexco.co.jp/bids/info/public_notice/search_service/data2/5000/5593/5593502.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1および非特許文献1に記載のワイヤーロープ式防護柵では、緊急時、例えば、高速道路上の事故による患者を乗せた救急車を反対車線から搬送したい場合に、非特許文献1の第12頁の写真3で示されているように、ワイヤーロープに設けられた張力調整具、例えばターンバックルを外し、前記ワイヤーロープを途中で切り離して反対車線への出入口を形成するようになっている。また、車両が衝突したことにより破損した中間支柱を交換する際にも同様に前記ワイヤーロープが途中で切り離される。
【0007】
しかしながら、ワイヤーロープには、常に大きなテンションがかかっているため、例えばターンバックルを緩めて前記ワイヤーロープを切り離す場合、油断するとそのテンションでワイヤーロープが跳ね上がり、非常に危険である。そこで、これまでは、上述した写真3に示すように、複数の作業者がワイヤーロープの端部を押さえて跳ね上がるのを防ぎながら、ワイヤーロープを一本毎に慎重に切り離す作業を行っている。このため、ワイヤーロープ式防護柵に緊急車両を通すための出入口をあけるために多くの人手と時間が必要となっていた。
【0008】
また、切り離したワイヤーロープを繋ぎ直すには、テンションが解除されたワイヤーロープの端部同士をチェーンブロック等によって引っ張り、互いに引き寄せた上で、ターンバックル等により連結しなければならない。つまり、一度切り離してしまうと復旧にも多くの人手と時間が必要である。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、ワイヤーロープ式防護柵において、緊急車両の通行や中間支柱の交換等のようにワイヤーロープのテンションを解除すべき事態が生じた場合に、迅速かつ簡単にワイヤーロープのテンションの解除および付加の作業を行うことができるワイヤーロープストッパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイヤーロープストッパーは、所定の中間支柱を境界として片側のテンションを維持しつつ片側のテンションのみを解除するとともに、前記中間支柱が維持されるテンションによって傾倒するのを防止するという課題を解決するために、所定の間隔を隔てて配置された複数本の中間支柱に複数本のワイヤーロープを上下に並べて挿通し所定のテンションをかけることにより展張されてなるワイヤーロープ式防護柵において、所定の前記中間支柱を境界として片側のテンションを維持しつつ反対側のテンションのみを解除するために使用するワイヤーロープストッパーであって、前記中間支柱の軸線に沿ってテンション解除側の側面に配置されるとともに前記各ワイヤーロープをそれぞれ保持するロープ保持部と、一端を前記ロープ保持部に対して回動自在に連結されているとともに、他端を前記中間支柱と交差させてテンション維持側の地面に接地しうる長さに形成されており、前記中間支柱が引張力によって傾倒するのを防止する傾倒防止脚部とを有する。
【0011】
また、本発明の一態様として、傾倒防止脚部をワイヤーロープのテンション方向に沿って地面に接地させることで安定的な支持力を得るという課題を解決するために、前記傾倒防止脚部の連結端部は、前記ロープ保持部を前記中間支柱のテンション解除側側面に配置した際に前記中間支柱と接触しない位置で前記ロープ保持部に連結されており、前記傾倒防止脚部の途中位置には、当該傾斜防止脚部をワイヤーロープ側に近接させるとともに前記ワイヤーロープのテンション方向に沿って地面に接地可能にするための屈曲部が形成されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、傾倒防止脚部の支持方向をより安定させて確実な支持力を得るという課題を解決するために、前記傾倒防止脚部には、テンション維持側の地面に接地される際にテンションがかかっているいずれかのワイヤーロープに連結可能なロープ連結部が設けられていてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様として、各ワイヤーロープの固定を迅速かつ容易に行うという課題を解決するために、前記ロープ保持部は、各ワイヤーロープを一体的に保持する保持部本体と、各ワイヤーロープの間隔に合わせて前記保持部本体に並設されており各ワイヤーロープを収めるロープ受部と、前記各ロープ受部に収められた前記ワイヤーロープを狭持するための複数のJ形ボルトとを有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイヤーロープ式防護柵において、緊急車両の通行や中間支柱の交換等のようにワイヤーロープのテンションを解除すべき事態が生じた場合に、迅速かつ簡単にテンションの解除および再付与の作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るワイヤーロープストッパーの一実施形態を示す側面図である。
図2】本実施形態におけるロープ保持部を示す正面図である。
図3】本実施形態のワイヤーロープストッパーを示す平面図である。
図4】本実施形態のワイヤーロープストッパーをワイヤーロープ式防護柵に固定した状態を示す模式図である。
図5】本実施形態のワイヤーロープストッパーをワイヤーロープ式防護柵に固定した状態を示す斜視図である。
図6】本実施形態のワイヤーロープストッパーが固定されたワイヤーロープ式防護柵のワイヤーロープを中央で切り離した状態を示す模式図である。
図7】ワイヤーロープ式防護柵の構成を示す模式図である。
図8】ワイヤーロープ式防護柵の中間支柱を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るワイヤーロープストッパーの一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本実施形態のワイヤーロープストッパー1は、ワイヤーロープ式防護柵2におけるワイヤーロープ21のテンションを解除する際に使用されるものである。
【0018】
ここで、ワイヤーロープ式防護柵2は、高速道路の中央分離帯等において複数本のワイヤーロープ21を上下に並べて略水平に展張させることで反対車線への車両の進入を防止するものであり、高速道路のいわゆる暫定2車線区間において使用されている。このワイヤーロープ式防護柵2は、図7に示すように、主に、複数本のワイヤーロープ21と、これら各ワイヤーロープ21の両端をそれぞれ固定するロープ固定基礎22と、これらロープ固定基礎22の間に立設されており前記各ワイヤーロープ21を挿通させて上下方向に所定の間隔をもって架設する複数本の中間支柱23と、前記各ワイヤーロープ21の張力を調整する張力調整具24とを有する。
【0019】
ワイヤーロープ21は、金属製の素線を束ねて形成されたロープであり、例えば、JIS G 3525に準拠したワイヤーロープが用いられている。また、当該ワイヤーロープ21には、錆び等の腐食を防ぐため亜鉛メッキが施されている。
【0020】
ロープ固定基礎22は、複数本のワイヤーロープ21の両端をそれぞれ固定するためのものであり、鋼管杭基礎やコンクリート基礎等、設置場所に応じて種々の基礎から適宜選択することができる。
【0021】
中間支柱23は、複数本のワイヤーロープ21を挿通させて上下方向に所定の間隔をもって架設するためのものであり、ロープ固定基礎22同士の間に所定の間隔を隔てて立設されている。この中間支柱23は、図8に示すように、柱状に形成されており、上下の軸線方向に沿ってワイヤーロープ21を挿通させる複数の挿通孔25を有する。各挿通孔25は、各ワイヤーロープ21を上下方向に所定の間隔をもって保持するものであり、前記各ワイヤーロープ21を挿通させているのみであって固定はしていない。つまり、中間支柱23にワイヤーロープ21のテンションを維持する機構は設けられていない。
【0022】
張力調整具24は、各ワイヤーロープ21のテンション(張力)を調整するものであり、いわゆるターンバックル等からなる。ターンバックルの場合、一方に軸回転させると両端に設けられた雄ネジが相互に近接し、テンションを付与するとともに、逆方向に回転させると前記雄ネジが相互に離れて弛み、最終的には両端から外れる構成になっている。本実施形態では、張力調整具24の雄ネジにワイヤーロープ21の端部が連結されており、前記雄ネジが外れることで前記ワイヤーロープ21を切り離すことができるようになっている。ワイヤーロープ式防護柵2において、前記張力調整具24は、一般的にワイヤーロープ21に対して100m~200m程度の間隔毎に設けられている。
【0023】
以上のようなワイヤーロープ式防護柵2において、本実施形態のワイヤーロープストッパー1は、所定の中間支柱23を境界として片側のテンションを維持しつつ反対側のテンションのみを解除するためのものであり、図1に示すように、主に、各ワイヤーロープ21を保持するロープ保持部3と、一端を前記ロープ保持部3に対して回動自在に連結させた傾倒防止脚部4とを有している。以下、各構成について詳細に説明する。
【0024】
ロープ保持部3は、中間支柱23の軸線方向に沿ってテンション解除側の側面に配置されて各ワイヤーロープ21を保持するためのものである。本実施形態では、図1および図2に示すように、保持部本体31と、この保持部本体31に複数設けられるロープ受部32と、このロープ受部32とともに各ワイヤーロープ21を狭持する複数のJ形ボルト33と、傾倒防止脚部4を回動自在に連結する脚部連結部34とを有する。
【0025】
保持部本体31は、複数本のワイヤーロープ21を一体的に保持するためのものであり、本実施形態では、断面L字状のアングル材からなる。この保持部本体31は、中間支柱23に支持されている各ワイヤーロープ21を一体的に保持するために、前記中間支柱23で支持されている最上段のワイヤーロープ21から最下段のワイヤーロープ21までの間隔よりも長い寸法に形成されている。また、本実施形態における保持部本体31には、図2および図3に示すように、上下両端部およびそれらの途中位置の2箇所に、略直角三角形状に形成された補強用のリブ311が固定されている。さらに、中間支柱23に当接する面側には、上下両端部およびそれらの途中位置の2箇所に緩衝用のゴムパッキン312が設けられている。
【0026】
ロープ受部32は、ワイヤーロープ21を収めるとともに前記ワイヤーロープ21をJ形ボルト33とともに挟持するものであり、本実施形態では、図2に示すように、前記ワイヤーロープ21を保持可能な略U字状に形成されている。このロープ受部32は、中間支柱23に支持されている各ワイヤーロープ21の間隔に合わせて保持部本体31に並設されており、前記各ワイヤーロープ21を水平方向から収められるように、開口している側(U字の頭側)を水平方向に向けた状態で固定されている。また、ロープ受部32および保持部本体31には、図1に示すように、前記ロープ受部32のU字に対向するように配置されるJ形ボルト33を挿通させるためのボルト挿通孔321が上下2箇所ずつ、貫通して開口されている
【0027】
J形ボルト33は、図2に示すように、ロープ受部32により保持されているワイヤーロープ21を前記ロープ受部32とともに挟持するものである。このJ形ボルト33は、金属製の棒材を略180度方向に湾曲させて各直線状の部分をそれぞれ異なる長さ寸法にすることで略J形状に形成されている。本実施形態では、長尺側の直線状端部の外周面に雄ネジ溝331が形成されている。このJ形ボルト33は、ロープ受部32および保持部本体31に形成された上下2箇所のボルト挿通孔321にそれぞれの直線状部分を前記ロープ受部32側から挿通されているとともに、長尺側の前記雄ネジ溝331にはナット332が螺合されている。つまり、前記ナット332を締結することで、J形ボルト33をロープ受部32側に引きつけ、ロープ受部32に保持されているワイヤーロープ21を挟持するようになっている。
【0028】
脚部連結部34は、傾倒防止脚部4を回動自在に連結するものである。この脚部連結部34は、中間支柱23と接触しない位置で傾倒防止脚部4の一端(連結端部)と連結されている。
【0029】
すなわち、ロープ保持部3が中間支柱23のテンション解除側の側面に沿って配置されるのに対して、傾倒防止脚部4が前記中間支柱23に交差されてテンション維持側に配置される。また、中間支柱23がワイヤーロープ21にかかるテンションによって傾倒するのを防止するには、傾倒防止脚部4がワイヤーロープ21のテンション方向と平行な方向に沿って地面に接地し、反力を付与することが望ましい。しかし、ロープ保持部3に対してワイヤーロープ21のテンション方向には中間支柱23が存在するため邪魔となり、傾倒防止脚部4が前記中間支柱23に接触してテンション維持側に配置できない。
【0030】
そこで、脚部連結部34は、ロープ保持部3が前記中間支柱23の軸線に沿ってテンション解除側に配置された際に、傾倒防止脚部4の連結端部41を前記中間支柱23と接触しない位置で連結できるようにしたものである。具体的には、脚部連結部34は、図3に示すように、ワイヤーロープ21(一点鎖線)と直交する前記中間支柱23(破線)の側面よりも外側に配置されるように形成されている。
【0031】
本実施形態における脚部連結部34は、図1および図2に示すように、連結部本体341と、この連結部本体341に回動自在に連結された通しボルト342とを有する。
【0032】
連結部本体341は、接触した際に裂傷などの怪我をするのを防止するため角部を円弧状に丸めた略矩形状の板材からなる。この連結部本体341は、傾倒防止脚部4によって高い位置で支持できるように保持部本体31の上端部で、かつ連結する傾倒防止脚部4が中間支柱23と接触するのを回避できるようにロープ受部32とは逆側に固定されている。また、本実施形態における連結部本体341の上端には、持ち運ぶ際に把持しやすい環状のハンドル343が備えられている。
【0033】
通しボルト342は、連結部本体341に挿通されており、二重ナット344によって回動自在に固定されている。この通しボルト342の頭部には傾倒防止脚部4を嵌入させる脚部嵌入部345を備えている。脚部嵌入部345は、管状に形成されており、次に説明する傾倒防止脚部4の上端側を嵌め入れ、溶接等によって固定することで、前記傾倒防止脚部4を回動自在に連結するようになっている。
【0034】
また、この通しボルト342は、前記二重ナット344を取り外すことで連結部本体341から取り外すことができるようになっており、これによって、ロープ保持部3と傾倒防止脚部4とを分解して持ち運ぶことができるようになっている。
【0035】
次に、傾倒防止脚部4について説明する。傾倒防止脚部4は、中間支柱23の軸線に沿ってテンション解除側の側面に配置されたロープ保持部3を前記中間支柱23のテンション維持側で支持することにより、前記中間支柱23がテンションによって傾倒するのを防止するものである。この傾倒防止脚部4は、図1および図3に示すように、長尺状の棒状部材からなり、一端(連結端部)がロープ保持部3に対して回動自在に連結されているとともに、前記ロープ保持部3が中間支柱23に配置されている状態において、他端が前記中間支柱23と交差してテンション維持側の地面に接地しうる長さに形成されている。
【0036】
また、本実施形態における傾倒防止脚部4は、その下端をワイヤーロープ21のテンション方向に沿って地面に接地可能に構成するため、その長手方向の途中位置からワイヤーロープ21側に近接させるための屈曲部41が形成されている。図3に示すように、屈曲部41は、傾倒防止脚部4を、中間支柱23(破線)を回避する位置からワイヤーロープ21(一点鎖線)側に屈曲させ、さらに前記ワイヤーロープ21の近傍位置から当該ワイヤーロープ21に沿うように再度逆側に屈曲されている。
【0037】
また、傾倒防止脚部4は、中間支柱23にかかるテンションを地面で支持しているときに、下端が地面に対して滑って支持力が失われたり、位置がずれてしまうことがある。そこで、本実施形態では、テンション維持側の地面に接地される際にテンションがかかっているいずれかのワイヤーロープ21に連結可能なロープ連結部5を有する。本実施形態におけるロープ連結部5は、主として、前記傾倒防止脚部4に対し摺動可能に挿通される摺動管部51と、この摺動管部51から延出された板状の連結板52と、この連結板52に締結されるJ形ボルト53とを有する。
【0038】
連結板52には、前記J形ボルト53の雄ネジ溝が形成された長い直線部分を挿通させる連結用ボルト挿通孔521と、短い直線部分を配置させる切欠部522とが形成されている。この切り欠きは、傾倒防止脚部4とワイヤーロープ21と交差角度が地面の高さなどによって変動するためであり、短い直線部分が前記交差角度にかかわらず配置できるようにするためである。
【0039】
次に、本実施形態のワイヤーロープストッパー1の各構成における作用について説明する。
【0040】
本実施形態では、緊急車両の通行や中間支柱23の交換等のようにワイヤーロープ21のテンションを解除すべき事態が生じた場合に、ワイヤーロープストッパー1によって、所定の中間支柱23を境界として片側のみテンションを解除し、反対側のテンションを維持する。具体的には、まず、ロープ保持部3を前記中間支柱23のテンション解除側の側面に沿って配置する。本実施形態では、図4に示すように、ワイヤーロープ21の中央位置に設けられた張力調整具24に近接する左右の中間支柱23の前記張力調整具24側にそれぞれ配置する。
【0041】
次に、ロープ保持部3にワイヤーロープ21を保持させる。具体的には、ロープ受部32を各ワイヤーロープ21に収めて当該各ワイヤーロープ21を保持させる。このときJ形ボルト33を締結するナット332は弛めておくか、またはJ形ボルト33を外しておく。
【0042】
次に、J形ボルト33をナット332で締結してロープ受部32側に引きつけ、保持しているワイヤーロープ21を前記ロープ受部32とともに挟持する。J形ボルト33は、長尺側の直線状端部の外周面に形成された雄ネジ溝331をナット332で締結するだけでワイヤーロープ21を挟持することができる。よって、例えば、U形ボルト等のように2つのナットにより締結する場合に比べて1/2の作業量でワイヤーロープ21の保持を完了させることができる。
【0043】
傾倒防止脚部4は、図4および図5に示すように、下端が中間支柱23のテンション維持側における地面に接地するように、通しボルト342を中心として回動させる。本実施形態における傾倒防止脚部4の連結端部は、前記中間支柱23のワイヤーロープ21と直交する側面よりも外側位置に配置された脚部連結部34において連結されているため、中間支柱23に接触せずに地面に接地させることができる。
【0044】
また、屈曲部41によって、地面に接地されるている傾倒防止脚部4の下端側はワイヤーロープ21側に近接されている。そこで、本実施形態では、ロープ連結部5を傾倒防止脚部4に沿って摺動させ、最下段に張設されているワイヤーロープ21に連結する。なお、連結させるワイヤーロープ21は、最下段のものに限定されるものではなく、テンションがかかっているワイヤーロープ21から適宜選択してよい。
【0045】
この状態でロープ保持部3が配置されている側の張力調整具24を取り外す。これによりワイヤーロープ21は、図6に示すように、前記張力調整具24で連結されていた位置で切り離され、テンションが解除される。一方、ロープ保持部3はテンション維持側に引っ張られるが中間支柱23のテンション解除側でワイヤーロープ21を保持しているため、前記中間支柱23に係止される。よって、テンション維持側のワイヤーロープ21のテンションが維持される。このとき、ゴムパッキン312が、保持部本体31と中間支柱23との間に設けられているため、保持部本体31が前記中間支柱23に当接する際の緩衝材となり、前記中間支柱23を傷つけることがない。
【0046】
傾倒防止脚部4では、下端が地面と接地することにより、ロープ保持部3にかかるテンション維持側の引張力を支持する。本実施形態では、図3および図5に示すように、屈曲部41によって、傾倒防止脚部4の下端側をワイヤーロープ21側に近接させているため、ワイヤーロープ21のテンション方向と、傾倒防止脚部4による支持方向とがほぼ一致する。この傾倒防止脚部4には、圧縮方向の力が加わることになるが、棒材は一般的に曲げ方向に比べて軸方向に対する力には強い。よって、傾倒防止脚部4は、ワイヤーロープ21によるテンションのかかった中間支柱23を安定的に支持することができる。
【0047】
さらに、傾倒防止脚部4がロープ連結部5によってワイヤーロープ21に連結されており、ワイヤーロープ21から離れることがない。よって、傾倒防止脚部4が地面に対してずれたり、滑ったりすることを防止し、より安定的な支持力を発揮する。
【0048】
また、ワイヤーロープ21を再び繋ぐ際には、テンションを解除させた側のワイヤーロープ21を互いに引き寄せればよく、簡単に張力調整具24によって繋ぎ直すことができる。
【0049】
以上のような本実施形態のワイヤーロープストッパー1によれば、以下の効果を得ることができる。
1.ワイヤーロープ式防護柵2において、所定の中間支柱23を境界として片側のテンションを維持しつつ反対側のテンションのみを解除して、緊急車両の通行や中間支柱23等の交換を迅速かつ簡単に行うことができる。
2.片側のみテンションを解除された中間支柱23が傾倒するのを防止することができる。
3.中間支柱23にかかるテンションの方向と傾倒防止脚部4による支持方向とを一致させることにより前記中間支柱23を安定的に支持することができる。
4.傾倒防止脚部4をテンションのかかっているワイヤーロープ21に連結することができるため、より安定的な支持力を得られる。
5.テンションを解除する側のワイヤーロープ21の保持手段としてJ形ボルト33を用いることにより作業時間を大幅に短縮することができる。
6.切り離したワイヤーロープ21を簡単に繋ぎ直すことができるため、復旧までの時間も短縮することができる。
【0050】
なお、本発明に係るワイヤーロープストッパーは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、図示しないが、傾倒防止脚部4にもハンドルを設けて、ロープ保持部3と傾倒防止脚部4とを分解して持ち運ぶ際に持ち運びやすいようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ワイヤーロープストッパー
2 ワイヤーロープ式防護柵
3 ロープ保持部
4 傾倒防止脚部
5 ロープ連結部
21 ワイヤーロープ
22 ロープ固定基礎
23 中間支柱
24 張力調整具
25 挿通孔
31 保持部本体
32 ロープ受部
33 J形ボルト
34 脚部連結部
311 リブ
312 ゴムパッキン
321 ボルト挿通孔
331 雄ネジ溝
332 ナット
341 連結部本体
342 通しボルト
343 ハンドル
344 二重ナット
345 脚部嵌入部
41 屈曲部
51 摺動管部
52 連結板
53 J形ボルト
521 連結用ボルト挿通孔
522 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8