(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6471 20110101AFI20220217BHJP
H01R 12/73 20110101ALI20220217BHJP
【FI】
H01R13/6471
H01R12/73
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017200688
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】201610918088.4
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508079120
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ユ,クラレンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン,リャン
(72)【発明者】
【氏名】リユウ,シウェイ
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211271(JP,A)
【文献】特開2008-041656(JP,A)
【文献】特開2007-115707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/646-13/6471
H01R 12/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、
前記絶縁体内に保持された少なくとも2つのコンタクト列(R1、R2)とを備え、
2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)のうちの一方の列
は、第1のコンタクト(S)と第2のコンタクト(G)を少なくとも備え、
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)のうちの他方の列
は、前記第1のコンタクト(S)と同種である第3のコンタクト(S)と前記第2のコンタクト(G)と同種である第4のコンタクト(G)を少なくとも備え、前記第3のコンタクト(S)および前記第4のコンタクト(G)は、前記第1のコンタクト(S)および前記第2のコンタクト(G)の配列にそれぞれ対応するように配置され、
各コンタクト列(R1、R2)が、
前記コンタクトの配列方向である第1の方向(Y)に配置され、
前記第1のコンタクト(S)は、1対の高速差動信号コンタクト(S、S)
であり、
少なくとも前記第1のコンタクト(S)の一方の部分および前記第3のコンタクト(S)の一方の部分が、前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)間の共振を抑制するように、
前記第1の方向(Y)に所定の距離をあけて互い違いに配置され、
少なくとも前記第1のコンタクト(S)の他方の部分および前記第3のコンタクト(S)の他方の部分は、互い違いに配置されず、または前記所定の距離より小さい距離をあけて前記第1の方向(Y)に互い違いに配置されており、
少なくとも前記第1のコンタクト(S)の前記他方の部分および前記第3のコンタクト(S)の前記他方の部分は、回路基板の表面に直交する第3の方向に間隔をあけて少なくとも部分的に重なり合っており、
、
前記第1の方向(Y)における前記所定の距離は、各コンタクト列(R1、R2)
の前記第1のコンタクト、前記第2のコンタクト、前記第3のコンタクトおよび前記第4のコンタクトの内の
前記第1の方向(Y)に隣接する2つのコンタクト間のコンタクトピッチ(P)の1.20~1.80倍になるように設定されている、
コネクタ。
【請求項2】
前記所定の距離は、前記コンタクトピッチ(P)の1.35~1.65倍になるように設定されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記所定の距離は、前記コンタクトピッチ(P)の1.5倍になるように設定されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記所定の距離は、理論上、前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)間の共振がゼロになるように設定されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
各コンタクト列(R1、R2)内の
前記高速差動信号コンタクト(S、S)の各対のそれぞれの側に、
前記第2のコンタクト(G)および前記第4のコンタクト(G)である接地コンタクト(G)を備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
各コンタクト列(R1、R2)内に少なくとも1対の低速差動信号コンタクト(T、T)を
さらに備え、各コンタクト列(R1、R2)内の低速差動信号コンタクト(T、T)の各対のそれぞれの側に、接地コンタクト(G)を備える、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
各コンタクト列(R1、R2)の各コンタクトが、その一方の端部に位置する溶接部分と、その他方の端部に位置するコンタクト部分と、前記溶接部分および前記コンタクト部分を接続するための接続部分とを備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記溶接部分は、前記第1の方向(Y)に前記所定の距離をあけて互い違いに配置され、
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記コンタクト部分は、前記第1の方向(Y)に互い違いに配置されていない、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記コンタクト部分は、前記第1の方向(Y)に前記所定の距離をあけて互い違いに配置され、
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記溶接部分は、前記第1の方向(Y)に互い違いに配置されていない、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項10】
各コンタクト列(R1、R2)内の各コンタクトが、回路基板(10)に溶接するように適合された溶接部分と、相手側コネクタ(200’)と電気的に接触するように適合されたコンタクト部分と、前記溶接部分および前記コンタクト部分を接続するための接続部分とを備え、前記接続部分は、前記回路基板(10)の表面に実質的に直交する第1の接続部分(1a、2a)と、前記回路基板(10)の前記表面に実質的に平行する第2の接続部分とを備える、請求項
1に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記第1の接続部分(1a、2a)および前記溶接部分は、前記第1の方向(Y)に前記所定の距離をあけてそれぞれ互い違いに配置され、
前記2つの隣接するコンタクト列(R1、R2)の
前記第1のコンタクト(S)および前記第3のコンタクト(S)の前記第2の接続部分(1b、2b)および前記コンタクト部分は、互い違いに配置されず、または前記所定の距離より小さい距離をあけて前記第1の方向(Y)に互い違いに配置されている、請求項
10に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、中国国家知識産権局に2016年10月21日に出願された中国特許出願第CN201610918088.4号の利益を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、一般にコネクタに関し、詳細には、2列以上のコンタクト列を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0003】
概して、2列以上のコンタクト列を有する既存のコネクタ(単に多列コネクタと呼ぶ)では、2つの隣接するコンタクト列間の共振(または列間共振と呼ぶ)は、コネクタの電気性能を制限する重要な要因である。2つの隣接するコンタクト列間の列間共振が強い場合、2つの隣接するコンタクト列間の周波数領域クロストークがピークに達し、時間領域の衝撃および他の問題を引き起こすことがある。したがって、隣接するコンタクト列間の共振をどのように低減または除去するかは、多列コネクタの設計中の重要な面になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、コネクタの体積を低減させるために、2つの隣接するコンタクト列は一般に、比較的近くなるように設計され、その結果、2つの隣接するコンタクト列間に比較的強い電気的結合が生じ、その結果、2つの隣接するコンタクト列間に比較的強い共振が生じる。したがって、コネクタの体積を過度に増大させることなく、2つの隣接するコンタクト列間の共振を低減または除去することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、コネクタの体積を過度に増大させることなく、2つの隣接するコンタクト列間の共振を低減または除去することができるコネクタを提供する。
【0006】
本開示の一態様によれば、絶縁体と、絶縁体内に保持された少なくとも2つのコンタクト列とを備えるコネクタが提供される。2つの隣接するコンタクト列のうちの一方の列のコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列のうちの他方の列のコンタクトにそれぞれ対応するように配置され、各コンタクト列は、第1の方向に配置され、少なくとも1対の高速差動信号コンタクトを備え、2つの隣接するコンタクト列内の任意の2つの対応するコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列間の共振を抑制するように、第1の方向に所定の距離をあけて少なくとも部分的に互い違いに配置され、所定の距離は、各コンタクト列内の2つの隣接するコンタクト間のコンタクトピッチの1.20~1.80倍になるように設定される。
【0007】
本開示の例示的な実施形態によれば、所定の距離は、コンタクトピッチの1.35~1.65倍になるように設定される。
【0008】
本開示の例示的な実施形態によれば、所定の距離は、コンタクトピッチの1.5倍になるように設定される。
【0009】
本開示の例示的な実施形態によれば、所定の距離は、理論上、2つの隣接するコンタクト列間の共振がゼロになるように設定される。
【0010】
本開示の例示的な実施形態によれば、各コンタクト列内の高速差動信号コンタクトの各対のそれぞれの側に、接地コンタクトを備える。
【0011】
本開示の例示的な実施形態によれば、各コンタクト列内に少なくとも1対の低速差動信号コンタクトを備え、各コンタクト列内の低速差動信号コンタクトの各対のそれぞれの側に、接地コンタクトを備える。
【0012】
本開示の例示的な実施形態によれば、各コンタクト列の各コンタクトは、その一方の端部に位置する溶接部分と、その他方の端部に位置するコンタクト部分と、溶接部分およびコンタクト部分を接続するための接続部分とを備える。
【0013】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分、接続部分、およびコンタクト部分はすべて、第1の方向に所定の距離をあけて互い違いに配置される。
【0014】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分は、第1の方向に所定の距離をあけて互い違いに配置され、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトのコンタクト部分は、第1の方向に互い違いに配置されない。
【0015】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトのコンタクト部分は、第1の方向に所定の距離をあけて互い違いに配置され、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分は、第1の方向に互い違いに配置されない。
【0016】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの部分はすべて、第1の方向に所定の距離をあけてそれぞれ互い違いに配置される。
【0017】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの一方の部分は、第1の方向に所定の距離をあけて互い違いに配置され、他方の部分は、互い違いに配置されず、または所定の距離より小さい距離をあけて第1の方向に互い違いに配置される。
【0018】
本開示の例示的な実施形態によれば、各コンタクト列内の各コンタクトは、回路基板に溶接するように適合された溶接部分と、相手側コネクタと電気的に接触するように適合されたコンタクト部分と、溶接部分およびコンタクト部分を接続する接続部分とを備え、接続部分は、回路基板の表面に実質的に直交する第1の接続部分と、回路基板の表面に実質的に平行する第2の接続部分とを備える。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によれば、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの第1の接続部分および溶接部分は、第1の方向に所定の距離をあけてそれぞれ互い違いに配置され、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの第2の接続部分およびコンタクト部分は、互い違いに配置されず、または所定の距離より小さい距離をあけて第1の方向に互い違いに配置される。
【0020】
本開示の上記の様々な実施形態で、2つの隣接するコンタクト列内の任意の2つの対応するコンタクトは、所定の距離をあけて少なくとも部分的に互い違いに配置され、それによって、コネクタの体積を過度に増大させることなく、2つの隣接するコンタクト列間の共振を低減または除去する。
【0021】
本開示の上記その他の特徴について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】コネクタに嵌合された相手側コネクタをも示す、本開示の一実施形態によるコネクタの概略斜視図である。
【
図3】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離がコンタクトのコンタクトピッチの1.2倍である、
図1に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の平面図である。
【
図4】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離がコンタクトのコンタクトピッチの1.35倍である、
図1に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の平面図である。
【
図5】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離がコンタクトのコンタクトピッチの1.5倍である、
図1に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の平面図である。
【
図6】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離がコンタクトのコンタクトピッチの1.65倍である、
図1に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の平面図である。
【
図7】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離がコンタクトのコンタクトピッチの1.8倍である、
図1に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の平面図である。
【
図8】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトが互い違いに配置されていない場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図9】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.2倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図10】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.35倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図11】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.5倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図12】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.65倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図13】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.8倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフである。
【
図14】コネクタに嵌合された相手側コネクタをも示す、本開示のさらなる実施形態によるコネクタの概略斜視図である。
【
図15】
図14に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の概略斜視図である。
【
図16】
図14に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の溶接部分のフットプリントの平面図である。
【
図17】
図14に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列のうちの一方の列のコンタクト部分の平面図である。
【
図18】2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトが互い違いに配置されていない場合の
図14に示すコネクタの2つの隣接する列の2つの対応するコンタクト間の周波数領域クロストークのグラフ、および2つの隣接するコンタクト列の溶接部分の2つの対応するコンタクトがコンタクトのコンタクトピッチの1.5倍の距離をあけて互い違いに配置されている場合のコネクタの2つの隣接する列の2つの対応するコンタクト間の周波数領域クロストークのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の技術的解決策について、添付の図面と併せて以下の実施形態を参照して、さらに詳細に説明する。本明細書では、同じまたは類似の参照が、同じまたは類似の構成要素を示す。添付の図面を参照する本開示の実施形態の以下の説明は、本開示の発明の一般概念について説明することを意図しており、本開示を限定すると解釈するべきではない。
【0024】
以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示する実施形態を十分に理解するために、多数の特有の詳細について述べる。しかし、1つまたは複数の実施形態は、これらの特有の詳細なしに実施できることが明らかであろう。他の場合には、周知の構造およびデバイスは、図面を簡略化するために、概略的に示す。
【0025】
本開示の一般概念によれば、絶縁体と、絶縁体上に保持された少なくとも2つのコンタクト列とを備えるコネクタが提供される。2つの隣接するコンタクト列のうちの一方の列のコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列のうちの他方の列のコンタクトにそれぞれ対応するように配置される。各コンタクト列は、第1の方向に配置され、少なくとも1対の高速差動信号コンタクトを備える。2つの隣接するコンタクト列内の任意の2つの対応するコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列間の共振を抑制するように、第1の方向に所定の距離をあけて少なくとも部分的に互い違いに配置される。所定の距離は、各コンタクト列内の2つの隣接するコンタクト間のコンタクトピッチの1.20~1.80倍になるように設定される。
【0026】
第1の実施形態
本開示の第1の実施形態によるコネクタ100について、
図1~13を参照して以下に説明する。
【0027】
図1および
図2に示すように、図示の実施形態では、コネクタ100は主に、絶縁体と、絶縁体内に保持された少なくとも2つのコンタクト列R1、R2とを備える。
【0028】
図3に示すように、図示の実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1、R2のうちの一方の列のコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列R1、R2のうちの他方の列のコンタクトにそれぞれ対応するように配置される。各コンタクト列R1、R2は、第1の方向Yに配置され、少なくとも1対の高速差動信号コンタクトS、Sを備える。
図3に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2は、3対の高速差動信号コンタクトS、Sを備える。
【0029】
本開示の一実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1、R2内にそれぞれ配置された任意の2つの対応するコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の共振を抑制するように、第1の方向Yに所定の距離をあけて少なくとも部分的に互い違いに配置される。
【0030】
図3~7に示すように、図示の実施形態では、所定の距離は、各コンタクト列R1、R2内の2つの隣接するコンタクト間のコンタクトピッチPの1.20~1.80倍になるように設定することができる。
【0031】
本開示の別の実施形態では、所定の距離は、コンタクトピッチPの1.35~1.65倍になるように設定することができる。
【0032】
図3に示すように、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトは、第1の方向Yに1.2Pの距離をあけて互い違いに配置される。
図4に示すように、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトは、第1の方向Yに1.35Pの距離をあけて互い違いに配置される。
図5に示すように、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトは、第1の方向Yに1.5Pの距離をあけて互い違いに配置される。
図6に示すように、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトは、第1の方向Yに1.65Pの距離をあけて互い違いに配置される。
図7に示すように、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトは、第1の方向Yに1.8Pの距離をあけて互い違いに配置される。
【0033】
図8~13は、2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトがそれぞれ、互い違いに配置されていない場合、1.2Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合、1.35Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合、1.5Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合、1.65Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合、および1.8Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合の、
図1に示すコネクタの2つの隣接する列間の周波数領域クロストークのグラフを示す。
【0034】
図示の実施形態では、列間周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクは、列間共振に対応する。
図8~13に示すように、2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトが1.5Pの距離をあけて互い違いに配置されているとき、列間周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクの振幅は最も小さくなる。2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトが互い違いに配置されていないとき、すなわち2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクトが互いに位置合わせされているとき、列間周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクの振幅は最も大きくなる。
図9~11に示すように、コネクタの2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離が1.2Pから1.5Pへ変動するとき、列間周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクの振幅は徐々に減少する。
図11~13に示すように、コネクタの2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の互い違いに配置された距離が1.8Pから1.5Pへ変動するとき、列間周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクの振幅は徐々に減少する。
【0035】
図3に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2内の高速差動信号コンタクトS、Sの各対のそれぞれの側には、接地コンタクトGを備える。
【0036】
本開示の一実施形態では、
図3に示す構造を有する2つの隣接するコンタクト列R1、R2の場合、少なくとも2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの部分は、理論上、2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の共振がゼロになるように、第1の方向Yに各コンタクト列R1、R2内の2つの隣接するコンタクト間のピッチPの1.5倍の所定の距離をあけて互い違いに配置される。
【0037】
しかし、少なくとも2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの部分が第1の方向に互い違いに配置される所定の距離は、必ずしも各コンタクト列内の隣接する2つのコンタクト間のピッチPの1.5倍に等しいとは限らないことに留意されたい。たとえば、上記の実施形態では、少なくとも2つの隣接するコンタクト列からの任意の2つの対応するコンタクトの部分が第1の方向に互い違いに配置される所定の距離が、1.2P、1.35P、1.65P、または1.8Pに等しくなるように設定されたとき、2つの隣接するコンタクト列R1およびR2間の共振も抑制される。
【0038】
図3に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2には、少なくとも1対の低速差動信号コンタクトT、Tを備える。図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2に、2対の低速差動信号コンタクトT、Tを備える。
【0039】
図3に示すように、図示の実施形態では、低速差動信号コンタクトT、Tの各対のそれぞれの側には、接地コンタクトGを備える。したがって、各コンタクト列R1、R2内の任意の隣接する2対の差動信号コンタクトは、接地コンタクトGによって分離される。
【0040】
図1および
図2に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2の各コンタクトは、回路基板10に溶接するように適合された溶接部分と、相手側コネクタ100’と電気的に接触するように適合されたコンタクト部分と、溶接部分およびコンタクト部分を接続するための接続部分とを備える。
図1および
図2に示す実施形態では、接続部分は、回路基板10の表面に実質的に直交する。
【0041】
図1および
図2に示すように、図示の実施形態では、相手側コネクタ100’は、別の回路基板10’上へ溶接するように適合される。したがって、回路基板10および回路基板10’は、コネクタ100および相手側コネクタ100’を介して互いに電気的に接続することができる。
【0042】
図1および
図2に示すように、図示の実施形態では、第1の方向Yに直交しかつ回路基板10の表面に平行する第2の方向における2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の距離が比較的小さいため、隣接する2つのコンタクト列R1、R2間の電気的結合は比較的強い。そのような場合、隣接する2つのコンタクト列R1およびR2間の共振を実質的に抑制するために、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトのすべての部分が、第1の方向Yに所定の距離をあけて互い違いに配置されること、すなわち2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分、接続部分、およびコンタクト部分が、第1の方向Yに所定の距離をあけて互い違いに配置されることが必要である。
【0043】
第2の実施形態
本開示のさらなる実施形態によるコネクタ200について、
図14~18を参照して以下に説明する。
【0044】
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、コネクタ200は主に、絶縁体と、絶縁体内に保持された少なくとも2つのコンタクト列R1、R2とを備える。
【0045】
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1、R2のうちの一方の列のコンタクトは、2つの隣接するコンタクト列R1、R2のうちの他方の列のコンタクトにそれぞれ対応するように配置される。各コンタクト列R1、R2は、第1の方向Yに配置され、少なくとも1対の高速差動信号コンタクトS、Sを備える。
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2は、3対以上の高速差動信号コンタクトS、Sを備えることができる。
【0046】
図14および
図15に示すように、本開示の一実施形態では、少なくとも2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの部分は、2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の共振を抑制するように、第1の方向Yに所定の距離をあけて互い違いに配置される。所定の距離は、各コンタクト列R1、R2内の2つの隣接するコンタクト間のコンタクトピッチPの1.20~1.80倍になるように設定することができる。
【0047】
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2内の高速差動信号コンタクトS、Sの各対のそれぞれの側には、接地コンタクトGを備える。したがって、各コンタクト列R1、R2内の任意の隣接する2対の高速差動信号コンタクトは、接地コンタクトGによって分離される。
【0048】
本開示の一実施形態では、
図15に示す構造を有する2つの隣接するコンタクト列R1、R2の場合、少なくとも2つの隣接するコンタクト列R1、R2からの任意の2つの対応するコンタクトの部分は、理論上、2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の共振がゼロになるように、第1の方向Yに各コンタクト列R1、R2内の2つの隣接するコンタクト間のピッチPの1.5倍の所定の距離をあけて互い違いに配置される。
【0049】
しかし、少なくとも2つの隣接するコンタクト列からの任意の2つの対応するコンタクトの部分が第1の方向に互い違いに配置される所定の距離は、必ずしも各コンタクト列内の隣接する2つのコンタクト間のピッチPの1.5倍に等しいとは限らないことに留意されたい。たとえば、上記の実施形態では、少なくとも2つの隣接するコンタクト列からの任意の2つの対応するコンタクトの部分が第1の方向に互い違いに配置される所定の距離が、1.2P、1.35P、1.65P、または1.8Pに等しくなるように設定されたとき、2つの隣接するコンタクト列R1およびR2間の共振も抑制することができる。
【0050】
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、各コンタクト列R1、R2の各コンタクトは、回路基板10に溶接するように適合された溶接部分1d、2dと、相手側コネクタ200’と電気的に接触するように適合されたコンタクト部分1c、2cと、溶接部分およびコンタクト部分を接続するための接続部分とを備える。
図14および
図15に示す実施形態では、接続部分は、回路基板10の表面に実質的に直交する第1の接続部分1a、2aと、回路基板10の表面に実質的に平行する第2の接続部分1b、2bとを備える。
【0051】
図14および
図15に示すように、図示の実施形態では、第1の方向Yに直交しかつ回路基板10の表面に平行する第2の方向における2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第1の接続部分1a、2aの間の距離が比較的小さいため、隣接する2つのコンタクト列R1、R2間の電気的結合は比較的強い。しかし、
図14および
図15に示す図示の実施形態では、回路基板10の表面に直交する第3の方向における2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第2の接続部分1b、2b間の距離は比較的大きく、したがって隣接する2つのコンタクト列R1、R2の第2の接続部分1b、2b間の電気的結合は比較的弱い。
【0052】
図15に示す場合、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第2の接続部分1b、2bは遠く離れており、第2の接続部分1b、2b間の電気的結合は比較的弱い。このようにして、図示の実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1およびR2の任意の2つの対応するコンタクトのすべての部分が所定の距離をあけて互い違いに配置されることを必要とすることなく、単に2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第1の接続部分1a、2aおよび溶接部分1d、2dを、所定の距離をあけて第1の方向Yに互い違いに配置することによって、隣接する2つのコンタクト列R1およびR2間の共振を実質的に低減または除去することができる。
【0053】
したがって、
図14および
図15に示す図示の実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第1の接続部分1a、2aおよび溶接部分1d、2dだけが、第1の方向Yに所定の距離をあけてそれぞれ互い違いに配置され、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第2の接続部分1b、2bおよびコンタクト部分1c、2cは、互い違いに配置されず(互いに位置合わせされる)、または所定の距離より小さい距離をあけて第1の方向Yに互い違いに配置される。
【0054】
図16に示すように、図示の実施形態では、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分1d、2dは、第1の方向Yに1.5Pの距離をあけて互い違いに配置され、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトのコンタクト部分1c、2cは、第1の方向Yに互い違いに配置されず、すなわち2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトのコンタクト部分1c、2cは、第1の方向Yに互いに位置合わせされる。
【0055】
図18で、グラフL1は、任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分の2つの対応するコンタクトが1.5Pの距離をあけて互い違いに配置されている場合の
図15に示すコネクタの2つの隣接するコンタクト列の2つの対応するコンタクト間の周波数領域クロストークのグラフを示し、グラフL2は、2つの隣接するコンタクト列の任意の2つの対応するコンタクトの溶接部分の2つの対応するコンタクトが第1の方向に互い違いに配置されていない(すなわち、互いに位置合わせされている)場合の周波数領域クロストークのグラフを示す。グラフL1とグラフL2を比較すると、2つの隣接するコンタクト列R1およびR2の2つの対応するコンタクトが1.5Pの距離をあけて互い違いに配置されているとき、コンタクト列間の周波数領域クロストークのグラフ内のスパイクの振幅を実質的に低減させることができ、すなわち2つの隣接するコンタクト列間の共振が実質的に抑制されることをはっきりと見ることができる。
【0056】
しかし、本開示は、図示の実施形態に限定されるものではなく、2つの隣接するコンタクト列R1、R2の任意の2つの対応するコンタクトの第2の接続部分1b、2bおよびコンタクト部分1c、2cもまた、所定の距離をあけて第1の方向に互い違いに配置することができ、それにより、2つの隣接するコンタクト列R1、R2間の共振を低減または除去することもできる。
【0057】
上記の実施形態は例示を意図することが、当業者には理解されよう。当業者であれば、構成または原理上矛盾することなく、上記の実施形態に多くの修正を加えることができ、異なる実施形態に記載した様々な特徴を互いに自由に組み合わせることができる。
【0058】
本開示について、添付の図面を参照して説明したが、図面に開示する実施形態は、本発明の好ましい実施形態の例示を意図するものであり、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0059】
いくつかの例示的な実施形態について図示し、説明したが、本開示の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更または修正を加えることができることが、当業者には理解されよう。本開示の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの均等物に定義される。
【0060】
本明細書では、「comprises(備える、含む)」および/または「comprising(備える、含む)」という用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数形も同様に含むことが意図されることに留意されたい。加えて、特許請求の範囲内のいかなる参照番号も、本開示の範囲に対する限定として理解されるべきではない。