(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】積層体、反射防止構造体及びカメラモジュール搭載装置
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20220217BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20220217BHJP
【FI】
B32B7/023
G02B1/118
(21)【出願番号】P 2017214809
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】須賀田 宏士
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 俊一
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-098864(JP,A)
【文献】特開2012-252224(JP,A)
【文献】特開2012-30597(JP,A)
【文献】特開2015-231725(JP,A)
【文献】特開2014-71292(JP,A)
【文献】特開2016-112804(JP,A)
【文献】特開2017-146467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示板と、該表示板上に設けられた遮光膜と、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体とを備えた積層体であって、
前記遮光膜は、その一部に、遮光膜のない非遮光部を有し、
前記反射防止構造体は、前記非遮光部に接着層を介して形成され、前記微細凹凸構造が、可視光線の波長以下の凹凸周期を有し、
以下の式で表される、前記遮光膜の反射光と前記反射防止構造体の反射光との色差(ΔE)が、1.5以下であることを特徴とする、積層体。
【数1】
(式中、a
1及びb
1は、遮光膜の反射光のCIE1976(L
*a
*b
*)表色系におけるa
*値及びb
*値を表したものであり、a
2及びb
2は、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L
*a
*b
*)表色系におけるa
*値及びb
*値を表したものである。)
【請求項2】
前記反射防止構造体及び前記接着層の合計厚さが、30μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着層は、紫外線硬化性接着剤からなる層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記微細凹凸構造の平均凹凸高さが、190nm以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記遮光膜の視感反射率と前記反射防止構造体の視感反射率との差(ΔY)が、0.5以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体と、該積層体中の反射防止構造体と相対する位置に設けられたカメラモジュールと、を備えることを特徴とする、カメラモジュール搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜化が図られているとともに、反射防止性能に優れ、反射色度をニュートラルに保つことができる、積層体、反射防止構造体及びカメラモジュール搭載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示装置や、カメラ等の光学装置は、外部からの光の反射による視認性や画質の悪化(色ムラ、ゴースト等の発生)を回避するため、表示板やレンズ等の基材における光の入射面に対し、反射防止膜を形成する等の、反射防止処理が施されることが多い。
ここで、従来の反射防止処理の一つとして、光の入射面に微細凹凸構造を形成することで、反射率を低減する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、半導体基板に入射した光を光電変換して画像を構築する固体撮像装置において、半導体基板の光入射面に微細凹凸構造を形成し、この微細凹凸構造に対して所定厚みの反射防止膜を成膜することにより、光入射面における光の反射の発生を抑制することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した反射防止膜処理技術を、小型電子機器等の分野へ適用することを考えた場合、薄型化(例えば、15μm以下)が求められる。しかしながら、特許文献1の技術では、微細凹凸構造を問題なく形成するために、最表層及び中間層の合計厚さを25μm以上とする必要があり、薄型化の観点からは、改良の余地があった。
【0006】
さらに、特許文献1のような多層膜反射防止構造を用いた場合には、反射光に色付きが発生することがあり、周辺の部分と比較して、反射色の違いが生じ、色合いの一体感が失われるという問題があった。
そのため、センサーの前面に設置するカバーフィルムや、カメラモジュールセンサーの前面に設置するカバーフィルムへ適用することを考えると、反射防止処理技術が施された表面とその周辺の表面とで反射色に違いがない(以下、「反射色度がニュートラルに保たれる」という。)、反射防止処理技術の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、薄膜化が図られているとともに、反射防止性能に優れ、反射色度をニュートラルに保つことができる、積層体及び反射防止構造体を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、かかる積層体を用い、薄膜化が図られ、色ムラが抑制された撮像画像を得ることができる、カメラモジュール搭載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体を、接着層を介して形成するとともに、微細凹凸構造の凹凸周期を可視光線の波長以下とすることによって、薄膜化を図りつつ、高い反射防止性能を実現でき、さらに、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差を小さく(具体的には、1.5以下)に設定することによって、反射防止処理技術が施された表面とその周辺の表面との間で反射色度をニュートラルに保つことができることを見出した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)表示板と、該表示板上に設けられた遮光膜と、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体とを備えた積層体であって、
前記遮光膜は、その一部に、遮光膜のない非遮光部を有し、
前記反射防止構造体は、前記非遮光部に接着層を介して形成され、前記微細凹凸構造が、可視光線の波長以下の凹凸周期を有し、
以下の式で表される、前記遮光膜の反射光と前記反射防止構造体の反射光との色差(ΔE)が、1.5以下であることを特徴とする、積層体。
【数1】
(式中、a1及びb1は、遮光膜の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値を表したものであり、a2及びb2は、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値を表したものである。)
上記構成によって、薄膜化が図られているとともに、反射防止性能に優れ、反射色度をニュートラルに保つことができる。
(2)前記反射防止構造体及び前記接着層の合計厚さが、30μm以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の積層体。
(3)前記接着
層は、紫外線硬化性接着剤からなる層であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)前記微細凹凸構造の平均凹凸高さが、190nm以上であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)前記遮光膜の視感反射率(以下、「Y値」ともいう。)と前記反射防止構造体の視感反射率(Y値)との差(ΔY)が、0.5以下であることを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれかに記載の積層体。
(
6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の積層体と、該積層体中の反射防止構造体と相対する位置に設けられたカメラモジュールと、を備えることを特徴とする、カメラモジュール搭載装置。
上記構成によって、薄膜化が図られ、色ムラが抑制された撮像画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄膜化が図られているとともに、反射防止性能に優れ、反射色度をニュートラルに保つことができる、積層体及び反射防止構造体を提供することが可能となる。また、本発明によれば、上記積層体を用い、薄膜化が図られ、色ムラが抑制された撮像画像を得ることができる、カメラモジュール搭載装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の積層体の一実施形態を模式的に説明した断面図である。
【
図2】(a)は、本発明の積層体の反射防止構造体及び接着層の一実施形態を、拡大し、模式的に示した断面図であり、(b)は、本発明の積層体の反射防止構造体及び接着層の他の実施形態を、拡大し、模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る積層体の反射防止構造体を製造するための、製造工程の一例を示す概要図である。
【
図4】本発明のカメラモジュール搭載装置の一実施形態のうち、カメラモジュール及び積層体を模式的に説明した断面図である。
【
図5】実施例1-1及び比較例1-1~1-3の積層体の、波長に応じた反射率(%)を示したグラフである。
【
図6】実施例2
及び比較例
1-1~1-3の積層体の、波長に応じた反射率(%)を示したグラフである。
【
図7】(a)は、比較例1-4~1-7の積層体の、波長に応じた反射率(%)を示したグラフであり、(b)は、実施例1-1~1-7の積層体の、波長に応じた反射率(%)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について、必要に応じて図面を用いながら具体的に説明する。なお、
図1~
図3の中で開示した各部材については、説明の便宜のため、実際とは異なる縮尺及び形状で模式的に表しているものもある。
【0013】
<積層体>
まず、本発明の積層体の一実施形態について説明する。
本発明の積層体は、
図1に示すように、表示板10と、該表示板10上に設けられた遮光膜20と、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30とを備えた積層体1である。
そして、本発明の積層体1では、前記遮光膜20は、その一部に、遮光膜20のない非遮光部21を有し、前記反射防止構造体30は、前記非遮光部21に接着層40を介して形成され、
前記微細凹凸構造30が、可視光線の波長以下の凹凸周期P(
図2を参照。)を有し、
以下の式で表される、前記遮光膜の反射光と前記反射防止構造体の反射光との色差(ΔE)が、1.5以下であることを特徴とする。
【数2】
(式中、a
1及びb
1は、遮光膜の反射光のCIE1976(L
*a
*b
*)表色系におけるa
*値及びb
*値を表したものであり、a
2及びb
2は、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L
*a
*b
*)表色系におけるa
*値及びb
*値を表したものである。)
【0014】
表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30を、接着層40を介して形成するとともに、微細凹凸構造30の凹凸周期Pを可視光線の波長以下とすることによって、薄膜化を図りつつ、高い反射防止性能を実現できる。さらに、遮光膜20の反射光と反射防止構造体30の反射光との色差ΔEを1.5以下と小さくすることによって、反射防止処理技術が施された表面(
図1では、反射防止構造体30の表面)とその周辺の表面(
図1では、遮光膜20の表面)との間で反射色度をニュートラルに保つことができる。
【0015】
(表示板)
本発明の積層体1は、
図1に示すように、表示板10を備える。
前記表示板10は、本発明の積層体1の基板や支持板としての役目を果たす部材である。前記表示板10を構成する材料については、特に限定はされず、積層体の使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
例えば、前記表示板の材料として、ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、これらの表面を、任意の有機材料(ポリイミド等)でコーティングしたものなどが挙げられる。また、前記表示板は、透明であることが好ましい。液晶ディスプレイ、タッチパネルなどとして用いられることから、光を透過させるためである。
なお、本明細書において「透明」とは、可視光帯域(おおよそ360nm~830nm)に属する波長の光の透過率が高いことを意味し、例えば、当該光の透過率が70%以上であることを意味する。
【0017】
さらに、前記表示板の形状についても、板状であること以外は特に限定されず、積層体の使用目的に応じて適宜選択することができる。また、前記遮光膜及び前記反射防止構造体が積層される表面(
図1では、表示板10の下面)は、これらを形成しやすくするため、例えば平坦面とすることができる。
【0018】
(遮光膜)
本発明の積層体1は、
図1に示すように、表示板10上に、遮光膜20をさらに備える。
前記遮光膜20は、遮光性を高め、薄膜化された前記表示板10が光(特に波長800nm以上の光)を透過させた場合であっても、固体撮像素子へ到達する光を遮断するための部材である。
【0019】
前記遮光膜を構成する材料については、特に限定はされず、用途に応じて公知の遮光膜を適宜用いることができる。
前記遮光膜を構成する材料としては、例えば、バインダー樹脂に、遮光性粒子、充填材、その他添加剤等を含んだ、遮光膜用組成物を用いることができる。
【0020】
前記バインダー樹脂については、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステルなどを挙げることができ、(メタ)アクリル系樹脂、又は、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等を有することもできる。
【0021】
また、前記遮光性粒子については、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、タングステン化合物、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、沈降性硫酸バリウム及びバライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、ジルコングレー、プラセオジムイエロー、クロムチタンイエロー、クロムグリーン、ピーコック、ビクトリアグリーン、紺青(プルシアンブルーとは無関係)、バナジウムジルコニウム青、クロム錫ピンク、陶試紅、サーモンピンク等の無機顔料が挙げられる。また、黒色顔料として、Co、Cr、Cu、Mn、Ru、Fe、Ni、Sn、Ti及びAgからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属元素を含む金属酸化物、金属窒素物或いはそれらの混合物等を用いることもできる。
さらに、前記遮光性粒子については、例えば、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、インモニウム色素、アミノウム色素、キノリウム色素、ピリリウム色素、又は、Ni錯体色素などの金属錯体色素等の遮光性染料を含むこともできる。
なお、前記遮光膜組成物における前記遮光性粒子の含有量については、特に限定はされないが、全固形分に対して、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましく、45~55質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
また、前記遮光膜用組成物は、必要に応じて、充填材やその他の添加剤を含むことが可能である。充填材については、反射率を高めるものであれば特に限定はされず、例えば、有機フィラー、無機フィラー、無機-有機複合フィラーを用いることができる。
前記有機フィラーとしては、例えば、合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂粒子が挙げられる。
前記無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、シリカ、雲母化合物、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。
前記その他の添加剤については、例えば、重合性化合物、重合開始剤、分散剤、増感剤、架橋剤効果促進剤、界面活性剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0023】
前記遮光膜20の平均厚さについては、特に限定はされないが、積層体1の薄膜化の観点から、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。さらに、高い遮光効果を維持する点からは、前記遮光膜20の厚さを、3μm以上とすることが好ましい。
なお、前記遮光膜20の平均厚さについては、後述する非遮光部21の厚さを除いた、前記遮光膜20が形成されている部分の平均をとって算出した厚さである。例えば、前記遮光膜20の任意の5カ所の厚さを測定し、平均することで得ることができる。
【0024】
そして、本発明の積層体1では、
図1に示すように、前記遮光膜20が、その一部に、遮光膜20が形成されていない非遮光部21を有する。後述する反射防止構造体30を、該非遮光部21に設けることで、積層体1の薄膜化に寄与しつつ、反射防止作用を十分に発揮できるようにするためである。
なお、前記非遮光部21については、前記遮光膜20のうち、遮光膜が形成されていない部分のことである。前記非遮光部21については、
図1に示すように、貫通孔となっていてもよいし、一部透明の材料を充填することも可能である。
【0025】
前記非遮光部21の大きさについては特に限定はされず、前記反射防止構造体30のサイズに応じて、適宜変更することができる。
ただし、前記反射防止構造体30が形成されていない部分はできるだけ小さくすることが好ましい。固体撮像素子へ到達する光を確実に遮断するためである。具体的には、前記遮光膜及び前記非遮光部21を正面から見た場合に、前記非遮光部21の面積(つまり、前記遮光膜20の開口面積)の好ましくは50%、より好ましくは100%の範囲に前記反射防止構造体30が形成されていることが好ましい。
【0026】
なお、前記遮光膜20を形成する方法については特に限定はされず、遮光膜20の厚さや製造施設等の条件に応じて、公知の形成方法を適宜使用することが可能である。
例えば、前記表示板10に、上述した遮光膜組成物を、スピンコート法、スプレーコート法、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等によって、塗布した後、光照射処理や加熱処理等の硬化処理を施すことによって、前記遮光膜20を形成することができる。
【0027】
(反射防止構造体)
本発明の積層体1は、
図1に示すように、前記非遮光部21に、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30を備える。
前記反射防止構造体30は、表面に形成された表面の微細凹凸構造によって、積層体1の反射防止性能を高めることができる。
【0028】
ここで、
図2(a)は、前記反射防止構造体30及び接着層40の一実施形態を示したものである。
前記反射防止構造体30の微細凹凸構造の、凸部及び凹部は、
図2(a)に示すように、周期的(例えば、千鳥格子状、矩形格子状)に配置してもよく、また、ランダムに配置することも可能である。さらに、凸部及び凹部の形状についても特に制限はなく、砲弾型、錐体型、柱状、針状などであってもよい。なお、凹部の形状とは、凹部の内壁によって形成される形状を意味する。
【0029】
前記反射防止構造体30の微細凹凸構造は、可視光線の波長以下(例えば、830nm以下)の凹凸周期(凹凸ピッチ)Pを有する。さらに、前記凹凸周期Pの上限については、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは280nm以下であり、凹凸周期Pの下限については、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上である。
前記微細凹凸構造の凹凸周期Pを可視光波長以下とする、言い換えれば、前記微細凹凸構造をいわゆるモスアイ構造とすることによって、優れた反射防止性能を実現できる。
【0030】
ここで、前記凹凸構造の凹凸周期Pは、隣り合う凸部間及び凹部間の距離の算術平均値である。なお、前記凹凸周期Pは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)などによって観察可能である。
また、隣り合う凸部間及び凹部間の距離の算術平均値を導出する方法としては、例えば、隣り合う凸部の組み合わせ、及び/又は、隣り合う凹部の組み合わせをそれぞれ複数個ピックアップし、各組み合わせを構成する凸部間の距離および凹部間の距離を測定し、測定値を平均する方法が挙げられる。
【0031】
また、前記微細凹凸構造の平均凹凸高さ(凹部の深さ)Hは、190nm以上であることが好ましい。より確実に、反射色度をニュートラルに保つことができるためである。また、前記微細凹凸構造の平均凹凸高さPは、積層体の薄膜化の観点から、320nm以下であることが好ましい。なお、前記微細凹凸構造の凹凸高さHについては、
図2(a)に示すように、凹部の底から凸部の頂点までの距離のことであり、平均凹凸高さについては、いくつか(例えば5カ所)の凹凸高さHを測定し、平均を算出することで得ることができる。
また、前記反射防止構造体30の微細凹凸構造が形成されていない微細凹凸構造下の支持部分(以下、反射防止構造体30の「ベース部」という。)の厚みは、特に制限されず、500~9000nm程度とすることができる。
【0032】
ここで、前記反射防止構造体30の微細凹凸構造については、
図2(a)に示すように、少なくとも接着層40と接しない側の表面に有する必要があるが、他の実施形態として、
図2(b)に示すように、両面に微細凹凸構造を設けることも可能である。
【0033】
また、前記反射防止構造体30を構成する材料については、特に限定はされない。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物、電子線硬化性樹脂組成物)、熱硬化性樹脂組成物等の、硬化反応により硬化する樹脂組成物であって、例えば重合性化合物と重合開始剤とを含有する樹脂組成物が挙げられる。
【0034】
重合性化合物としては、例えば、(i)1モルの多価アルコールに対して、2モル以上の比率の(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られるエステル化物、(ii)多価アルコールと、多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、等を使用できる。
上記(i)としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、アクリロイモノフォリン、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
上記(ii)としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれる多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られるエステル化物等が挙げられる。
これら重合性化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
さらに、前記樹脂組成物が光硬化性の場合には、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド;などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0036】
電子線硬化性の場合には、電子線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7-ビスアクリジニルヘプタン、9-フェニルアクリジンなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0037】
熱硬化性の場合には、熱重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0038】
これらの光重合開始剤、電子線重合開始剤、熱重合開始剤は単独で使用してもよく、これらを所望に組み合わせて用いてもよい。
また、重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対し0.01~10質量部が好ましい。このような範囲であると、硬化が充分に進行するとともに、硬化物の分子量が適切となって充分な強度が得られ、また、重合開始剤の残留物等のために硬化物が着色するなどの問題も生じない。
【0039】
さらに、前記樹脂組成物には、必要に応じて、非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分を含むことができ、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤を含むこともできる。
【0040】
前記反射防止構造体30を製造するための方法については、特に限定はされない。例えば、
図3(a)~(c)に示すように、挟持圧着工程、硬化工程及び剥離工程を経ることによって、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30を得ることができる。
【0041】
挟持圧着工程については、
図3(a)に示すように、表面に微細凹凸構造を有する保持フィルムと平坦な表面を有する保持フィルムとで、反射防止構造体用樹脂組成物を挟持し、圧着する工程である。
具体的には、まず、表面に微細凹凸構造を有する保持フィルム(第1保持フィルム201a)と平坦な表面を有する保持フィルム(第2保持フィルム201b)を準備する。次いで、
図3(a)に示すように、反射防止構造体用樹脂組成物151を、上述の第1保持フィルム201aと第2保持フィルム201bとで、向かい合うようにして挟持する。なお、微細凹凸構造を表面に有する保持フィルム201aは、例えば、透明で且つ破断しにくい材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース等)からなるベース基材の上に、所定の凹凸パターンを有する微細凹凸層を形成することにより作製することができる。その後、
図3(a)に示すように、ロールラミネータ等の圧着装置160により、挟持体を挟持方向に圧着する。ここで、挟持圧着工程では、圧着時の圧力を調節することにより、最終的に得られる反射防止構造体30の厚みを調整することができる。
【0042】
前記硬化工程は、
図3(b)に示すように、挟持された反射防止構造体用樹脂組成物151をUV光等の活性エネルギー線の照射により硬化させ、
片面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30を形成する工程である。
具体的には、
図3(b)に示すように、挟持された反射防止構造体用樹脂組成物151に対して活性エネルギー線を照射し、反射防止構造体用樹脂組成物151を硬化する。反射防止構造体用樹脂組成物151が硬化することで、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30を含んだ保持フィルム積層体250が得られる。なお、硬化工程は、前記挟持圧着工程と同じタイミングで行ってもよい。
【0043】
前記剥離工程は、
図3(c)に示すように、保持フィルム積層体250から、保持フィルム201a、201bを剥離し、反射防止構造体30を得る工程である。
得られた反射防止構造体30については、必要に応じて、洗浄等の処理が施される。
【0044】
また、前記反射防止構造体30を製造する方法については、上述した、挟持圧着工程、硬化工程及び剥離工程を経る方法(
図3(a)~(c))には限定されず、例えば、前記反射防止構造体用樹脂組成物を硬化させた後、スパッタリング等によって、微細凹凸構造を形成することで、反射防止構造体30を作製することも可能である。
【0045】
(接着層)
本発明の積層体1では、
図1に示すように、前記反射防止構造体30を前記非遮光部21に接合するための接着層40をさらに備える。
【0046】
ここで、前記接着層とは、前記反射防止構造体30を前記非遮光部21に接合するべく、接着剤から構成されるが、前記反射防止構造体30の反射防止性能を低下させないような材料を用いる必要がある。
具体的な材料については、特に限定はされず、硬化反応により硬化する樹脂組成物を適宜用いることができる。その中でも、前記接着層40は、紫外線硬化性接着剤からなることが好ましい。高い接合性を実現できるためである。前記紫外線硬化性樹脂については、例えば、紫外線硬化性アクリル系樹脂、紫外線硬化性エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0047】
なお、前記接着層の形成方法については、特に限定はされない。例えば、前記接着層40が紫外線硬化性接着剤からなる層である場合には、前記非遮光部21において、前記紫外線硬化性接着剤を前記反射防止構造体30と圧着させた状態で、紫外線を照射することによって、接着層40を形成できる。
【0048】
また、前記接着層は、積層体の薄膜化の観点から、高い接合性を維持できる範囲で、薄くすることが好ましい。
具体的には、前記反射防止構造体及び前記接着層の合計厚さが、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0049】
(遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差:ΔE)
そして、本発明の積層体1では、以下の式で表される、前記遮光膜20の反射光と前記反射防止構造体30の反射光との色差(ΔE)が、1.5以下であることを特徴とする。
【数3】
前記前記遮光膜20の反射光と前記反射防止構造体30の反射光との色差ΔEを、1.5以下に設定することによって、反射防止構造体30の表面とその周辺の表面(
図1では、遮光膜20の表面)との間で反射色度をニュートラルに保つことが可能となり、本発明の積層体をカメラモジュール搭載装置に用いた際、色ムラが抑制された撮像画像を得ることができる。
【0050】
ここで、上記式中の、a1及びb1は、遮光膜20の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値を表したものである。また、a2及びb2は、反射防止構造体30の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値を表したものである。CIE1976(L*a*b*)表色系とは、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつであり、明度指数:L、及び、クロマティクネス指数:a*、b*の三次元直交座標を用いる色空間をL*a*b*色空間といい、この色空間を用いた表色系である。
【0051】
また、前記ΔEについては、1.5以下とする必要があるが、反射防止構造体30の表面とその周辺の表面との反射色度をよりニュートラルにする観点からは、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。
【0052】
なお、前記遮光膜20の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、並びに、前記反射防止構造体30の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値については、市販の測定装置を用いることで得ることが可能である。
また、上述したCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値や、色差ΔEの調整については、前記遮光膜20の材料、形状、厚さ、また、前記反射防止構造体30の材料や、凹凸構造の凹凸周期P、凹凸構造の凹凸高さH等を変更することによって、行うことが可能である。
【0053】
さらに、本発明の積層体1では、前記遮光膜20の視感反射率(Y値)と前記反射防止構造体30の視感反射率(Y値)との差(ΔY)が、0.5以下であることが好ましい。色度図上における明度をほぼ同じ条件とすることができるため、反射防止構造体30の表面とその周辺の表面との反射色度をよりニュートラルに維持することができるためである。
ここで、前記視感反射率(Y値)とは、眼の感じる明るさが視感度によって変化することを考慮に入れた反射率のことであり、正反射光の色をCIE1931 XYZ色空間にて表した際の(X,Y,Z)、又は、CIE xyY色空間で表した際の(x,y,Y)であり、市販の分光光度計(例えば、日本分光株式会社製V650等)によって測定することができる。
【0054】
なお、前記遮光膜及び前記反射防止構造体30のそれぞれの視感反射率及び反射率差については、例えば、微細凹凸構造の粗密や、凹凸高さを変更することによって、調整することができる。
【0055】
<カメラモジュール搭載装置>
本発明のカメラモジュール搭載装置300は、
図4に示すように、本発明の積層体1と、該積層体中の反射防止構造体30と相対する位置に設けられたカメラモジュール310と、を備えることを特徴とする。
本発明のカメラモジュール搭載装置によれば、カメラモジュールの撮像素子により、本発明の積層体を介して静止画や動画を撮影することができるので、光の反射が抑えられ、得られる撮像画像において色ムラ等の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1-1)
図1に示すように、表示板10と、該表示板10上に設けられた遮光膜20と、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30とを備えた積層体1のモデルを作製した。そして、遮光膜20及び反射防止構造体30については、それぞれ反射光の色度(照射角:5°)を算出した。
ここで、表示板10はガラス基板とし、遮光膜20は、カーボンブラックを含有し、酢酸ブチル、酢酸エチル、ニトロセルロース、ジイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、イソブタノール等を含んだスプレー塗料をガラス基板表面に塗布することで形成した。また、反射防止構造体30は、東亞合成株式会社製「UVX-6366」(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイドからなる紫外線硬化性樹脂)から形成し、微細凹凸構造の凹凸周期は150~250nm、凹凸高さは220nm、微細凹凸構造のないベース部の厚さは1000nm、屈折率n=1.520とした。さらに、接着層40については、紫外線硬化性樹脂を用い、厚さを3000nmとした。反射防止構造体30と接着層40の合計厚さは、4220nm(約4.2μm)である。
表1に、反射防止構造体の構造、反射防止構造体と接着層の合計厚さ(μm)、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値(a2及びb2)、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0058】
(比較例1-1)
比較例1-1では、反射防止技術として、微細凹凸構造を有する反射防止構造体30に代えて、NbOXとSiO2とを交互に計4層積層してなる反射防止膜(Dry-AR直接形成)を形成したこと以外は、実施例1-1と同様の条件によって、積層体を作製した。
表1に、反射防止構造体の構造、反射防止膜と接着層の合計厚さ(μm)、反射防止膜の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止膜の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0059】
(比較例1-2)
比較例1-2では、反射防止技術として、屈折率n=1.340の材料をコーティングしてなる反射防止膜(Wet-AR直接コート)を形成したこと以外は、実施例1-1と同様の条件によって、積層体を作製した。
表1に、反射防止構造体の構造、反射防止膜と接着層の合計厚さ(μm)、反射防止膜の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止膜の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0060】
(比較例1-3)
比較例1-3では、反射防止技術として、高屈折率材料(屈折率n=1.700)と低屈折率材料(屈折率n=1.250)との貼り合わせてなる反射防止膜(Wet-ARフィルム貼合)を形成したこと以外は、実施例1-1と同様の条件によって、積層体を作製した。
表1に、反射防止構造体の構造、反射防止膜と接着層の合計厚さ(μm)、反射防止膜の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止膜の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0061】
(実施例1-2~1-7、比較例1-4~1-7)
実施例1-2~1-7及び比較例1-4~1-7では、反射防止構造体30の微細凹凸構造について、凹凸高さを変えたこと(具体的な凹凸高さの値については、表2を参照。)以外は、実施例1-1と同様の条件によって、積層体を作製した。
表3に、反射防止構造体の凹凸高さ(nm)、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止膜(Dry-AR直接形成)の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0062】
(実施例2)
図1に示すように、表示板10と、該表示板10上に設けられた遮光膜20と、表面に微細凹凸構造を有する反射防止構造体30とを備えた積層体1を実際に作製した。そして、遮光膜20及び反射防止構造体30については、それぞれ反射光の色度(照射角:5°)を測定した。
ここで、表示板10はガラス基板とし、遮光膜20は、カーボンブラックを含有し、酢酸ブチル、酢酸エチル、ニトロセルロース、ジイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、イソブタノール等を含んだスプレー塗料をガラス基板表面に塗布することで形成した。また、反射防止構造体30は、東亞合成株式会社製「UVX-6366」(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイドからなる紫外線硬化性樹脂)から形成し、微細凹凸構造の凹凸周期は150~250nm、凹凸高さは220nm、微細凹凸構造のないベース部の厚さは1000nmとした。さらに、接着層40については、紫外線硬化性樹脂を用い、厚さを3780nmとした。反射防止構造体30と接着層40の合計厚さは、5000nm(5μm)である。
表2に、反射防止構造体の構造、反射防止構造体と接着層の合計厚さ(μm)、反射防止構造体の反射光のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差ΔE、の算出結果を示す。
【0063】
(評価)
各実施例及び各比較例で得られた積層体の各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
(1)反射防止性能
(a)実施例1-1及び比較例1-1~1-3のサンプルについて、計算ソフト「TFCalc」を用い、分光波長及び反射率(5°)を算出した。波長と反射率との関係を
図5に示す。なお、参考として、遮光膜部分の波長と反射率との関係も
図5に示す。
図5の結果から、420~620nmの波長領域では、実施例1-1の積層体の反射防止性能が最も優れていることがわかった。
(b)実施例2のサンプルについて、日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計「V-650」を用い、分光波長及び反射率(5°)を測定した。波長と反射率との関係を
図6に示す。なお、参考として、比較例1-1~1-3のサンプル及び遮光膜部分の波長と反射率との関係も
図6に示す。
図6の結果から、420~660nmの波長領域では、実施例1-1の場合と同様に、実施例2の実際に作製した積層体の反射防止性能についても優れた結果を示すことがわかった。
【0065】
(2)反射色度のニュートラル性
(a)実施例1-1及び比較例1-1~1-3のサンプルについて、計算ソフト「TFCalc」を用い、反射防止構造体のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差ΔEを算出した。算出結果は表1に示す。
表1の結果から、実施例1-1のΔEが最も小さく、反射色度がニュートラルに保たれていることがわかった。
(b)実施例2のサンプルについて日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計「V-650」を用い、分光スペクトルを取得し、そこから反射防止構造体のCIE1976(L*a*b*)表色系におけるa*値及びb*値、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差ΔEを算出した。測定結果を表2に示す。
表2の結果から、実施例2のΔEは実施例1-1と同様に、ΔEが小さく抑えられており、反射色度がニュートラルに保たれていることがわかった。
【0066】
(3)凹凸構造の凹凸高さとΔEとの関係
実施例
1-1~1-7及び比較例1-4~1-7のサンプルについて、計算ソフト「TFCalc」を用い、分光波長及び反射率(5°)を算出し、波長と反射率との関係を
図7(a)及び(b)に示す。さらに、反射防止構造体のCIE1976(L
*a
*b
*)表色系におけるa
*値及びb
*値、遮光膜の反射光と反射防止構造体の反射光との色差ΔEも算出し、算出結果を表3に示す。なお、算出の結果得られた色差ΔEについては、本発明の範囲内である1.5以下の場合は「○」、1.5を超えると「×」として、判定を行った。判定結果を表3に示す。
図7及び表3の結果から、凹凸構造の凹凸高さが190nm以上であれば、ΔEを本発明の範囲内(判定結果を○)に収めることができ、優れた反射防止性能を実現し、反射色度をニュートラルに保てることができた。
【0067】
【0068】
【0069】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、薄膜化が図られているとともに、反射防止性能に優れ、反射色度をニュートラルに保つことができる、積層体及び反射防止構造体を提供することが可能となる。また、本発明によれば、本発明の積層体を用い、薄膜化が図られ、色ムラが抑制された撮像画像を得ることができる、カメラモジュール搭載装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 積層体
10 表示板
20 遮光膜
21 非遮光部
30 反射防止構造体
40 接着層
201a 第1保持フィルム
201b 第2保持フィルム
250 保持フィルム積層体
300 カメラモジュール搭載装置
310 カメラモジュール